ネクロポリス

恩田陸・朝日文庫

父親の四十九日直後に読んだのも、巡り合せか。朝日文庫だしさ。
ところが、巻頭の登場人物紹介でいきなり誤植発見。(ジュンイチロ“ウ”が抜けてる)

夜中の嵐は三崎亜記の「鼓笛隊の襲来」だったり、
生と死が並存している世界観は村上春樹作品だったり、
帝国主義下に併合された日本と言うのは村上龍の「五分後の世界」を想起させる。
しかし恩田陸の場合、舞台装置を凝った時はオチが危険なんだよね。
「禁じられた楽園」「月の裏側」「MAZE」この辺と同じパターン。
こちらの読解力、想像力にも問題があるんだろうけど、恩田陸の建築物の描写もちょっと分かり辛いと思う。

鍵を握る双子についてもラインマン(しかも途中から出てきた方)に片付けられちゃうのは、余りにも他力本願と言うか肩透かし。
それでいてあのラストじゃ、それすらも虚構なのかと読後のストンに至らず。
ただ嘘がつけない『お客さん』の受け答えを工夫したところは、技巧的って事になるんだろう。
「ジミー」と問い掛けられてるシーンで「はい?」とクエスチョンマークを挟んであるのは、そう言う事でしょ。

登場人物が会話で盛り上がるシーンが多い割りに、「木曜組曲」の様な互いの腹の探り合いにはならず、
外に在る謎についての会話ではワクワクが今ひとつ。テリーを巡る恐怖も今ひとつ。
「Q&A」「ユージニア」「蛇行する川のほとり」なんかの方がゾクゾクさせたな。
謎解きに、アナザー・ヒルと言う特異な環境がトリックになるのでは、ミステリとしてはフェアじゃないよな。

恩田ファンは大人だから、この尻切れトンボ感も楽しんでるよ。
これはファンタジーだと割り切れば、取り巻き方も含めてよく描かれている。

ヒガン中だから、アナザー・ヒルには200名程度の人物がいたんだろうけど、
登場人物を絞ったのは正解で、教授の家に出入りする主要メンバーのキャラはよく描かれてた。
姉妹なんだか従姉妹なんだか最後まで明かされないマリコとハナの会話も乙。
リンデは若干影が薄い。ケントと姉弟になるんだと思うけど、ケント再来時のリアクションも薄い。
ジュンは苑子がいるにも関わらず、ハナたちがラインマンたちに加担するのを妬いたりとか
何かと細かく作者に一番可愛がられてた。
ハナが苑子のキャラを見通すシーンに描かれる、女子の慧眼にはホント恐れ入る事多し。

この先ネタバレ注意で、ストーリー整理と時系列感想を。

(09/02/01)


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