蛇行する川のほとり

恩田陸・中公文庫

テーマはズバリ女の子の嫉妬心。
もう少し広く捉えれば羞恥心ってとこか。

毬子、芳野、真魚子と視点を変えて綴られる香澄を巡る思惑。
その香澄が見ていたものは・・・
推理小説では無いのだけれど、恩田ワールドの先読みを試みるがちっとも当たらない。
萩野が一枚噛んでいるのではと疑ってかかったり、真魚子が犯人か?とかね。
香澄が愛してもおり、憎んでもいると言う辺りで、さすがにその対象が誰なのかは推測できたけどさ。

ミステリとしては相変わらず魅力的で、しっかり恩田ワールドに引き込まれ満足してる。
ただし、物語としては必然性に乏しいよな。真魚子の指摘する通り。なぜ、今。なぜ、このタイミングで?
香澄の退場はもっと主体的なものであるべきだと思うのだけれど。
芳野への愛の囁きは、もう紛れも無く「死の宣告」に他ならず、香澄の最期自体は想像し得た。ただね・・・

毬子が必要だった理由とは。
なぜ月彦や暁臣たちだけでは、香澄はそこへ至らなかったのか。
あの夜、香澄と毬子は何を語らったのか。
なるほど、このモヤモヤ感が真魚子の抱く嫉妬心か。

月彦が香澄の母に惹かれるのは、「まひるの月を追いかけて」に似たパターンだなと感じた。
こちらは女性が退場。あちらは男性が退場。
1章のラストで暁臣が毬子を追い詰めたシーンは、「木曜組曲」の静子の告白のネガポジみたい。
恩田陸の暗い世界観は、梅雨の季節に持って来いかもね。


▼終章を読んで。


(07/07/22)


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