こういう話とは思わなかったな。
カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」みたいな、近未来というかパラレルワールドでの物語。
センシングという舞台装置の説明はすんなりと、そして伏線も巧妙。
繰り返し、センシングと現実との混同について触れられる。
初めて浩市と部屋で対面した時、あれ?と思う。そしてなるほどと思う。
しかし更にどんでん返しは待っている。
どんでん返しは鮮やかだった。辻村深月の名前オチのような一瞬での反転。
マグリットの絵『光の帝国』を引き合いに出していたけど、『光の帝国』と言えば恩田陸。
『胡蝶の夢』もそうだし、例えば夢の中の夢は、恩田陸の入れ子構造の作中劇みたいなもの。
どの階層が現在の視点なのか読み解くのが難しいから、
最近では翻弄されながら漂流するのも一興かなと思う。
自分の人生が、実は自分のモノではなく、神様が弄ぶコマの一つなのではと言うのは
山本弘「神は沈黙せず」にも通じる部分があるかな。これも近未来パラレルワールドだったし。
次に読もうとしている伊藤計劃「虐殺器官」もそんな話なんだろうか。