終りなき夜に生れつく

恩田陸・文春文庫

アガサ・クリスティの長編作のタイトルをそのままもらっているらしい。
何のオマージュなのか、私にはよく分からない。
「夜の底は柔らかな幻」の記憶は、ドラゴンボールのようなハチャメチャなストーリーだった。
本作がスピンオフ短編集と知り、さほど期待はせずサッと読了。

舞台設定が非常に特殊であるために面喰うのだが、短編集として4つの章でそれぞれに活躍する
キャラクターに着目するといずれも愛すべきキャラばかり。
そうなるとハチャメチャなストーリーの中で、彼らがどのように活躍していたのか振り返りたくなるというもの。

さ、「夜の底は柔らかな幻」を再読しよう。

・・・と、そうだった。
そんな話だったね。

◇砂の夜
みつきに先触れのイロがあるなら、実邦の将来もある程度見えていただろうか。

◇夜のふたつの貌
葛城と藤城有一が接近する合理性は、分からんけど。
藤城有一が悪さばかりして弱みを握られたって話か。
軍と葛城にはいろいろ曰くがあるというのは分かった。
p131に、今回の「かしらん」

◇夜間飛行
強気キャラの葛城にも、若き頃の下積みというか
御手洗と真壁から徹底的にしごかれているのは微笑ましい一面。
こういうの、人間臭くて葛城を憎めなくなるよね。
一方で同時期に神山は入国管理官を敵に回しても、超然と去っていける辺りに
格の違いを描いた訳ね。

◇終りなき夜に生れつく
その神山が東京厭世的に暮らしていた、おそらく昌子と同居していた時期。
父殺しのトラウマを引きずり、終わりなき夜を生きていた神山が
事件を追うべき記者のウチにあった破壊衝動が顕れる経過に立ち会うことで
己の破壊衝動に対して肯定的に向き合うようになったエピソード。
このあと昌子に子を宿しながら、昌子を捨てて実邦と一緒になり警察内部の情報を得ながら
いろんな破壊工作に手を染めたということなんだろうね。

読書家のレビューサイトなどで確かめ算もしたいけれど、一旦ここまで。

(20/03/06)


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