CAB DRIVER 僕らは ドラマ を独り占めにいく
What's CAB?
Next Play
Last Plays
News
Others
Links
Contact
Colum
Diary
BBS

Colum

Last Up-date '03.07.01
『点と点の連なりにつながりにすぎない。』

(2001年9月「主宰の日記」より抜粋・改訂)


「コーウちゃーん、あそびましょー」

高木さんちの塀の外からコウジ君を誘う呼び声。
その声から始まる夏休みの午後の遊び。
近所の“おともだち”を誘い、
ゴムボールの手打ち野球や、
ドロケーに飽くことなく興じた。

例にもれず、僕にもそんな季節があった。

夕方になれば、町内放送が帰宅の時間を告げる。
町内放送の音楽は唐突に鳴り響く。
唐突というより、明らかに音楽の途中の部分から鳴り始める。
なぜテープをしっかり巻き戻しておかないのかは知らない。

「この楽しい時間はもう終わりだ」と、
深くなる夕闇に追い立てられる。

そんな時いつも疑心暗鬼になる。

「じゃあ帰ろっか」
と口にしてしまうのはおともだちのうちの誰なのか。
「また明日ねぇ」
と区切りをつけてしまうのは誰なのか。
イヤもしかして、
その前に誰かんちのお母さんが迎えにきてしまうかもしれない。

そんな疑心暗鬼で内心消えそうなほど心細い。

いつの年の夏休みだったか、
サイレンもひとしきり鳴り響いたその日の夕暮れ時、
ふいにおともだちの吉村クンが言った。
「じゃあ、えーと、次はザリガニ釣りにいこうぜ。」

・・・助かった。
なんだか嬉しかった。
まだ終わりにしないでいいのだ

そう胸をなでおろした矢先。
吉村クンは続けて言った。
「あ、やっぱしもうバイバイしようよ。」

・・・バイバイ。
バイバイ、という言葉の殴られたような淋しさ。

不思議でたまらなかった。
「ザリガニを釣りにいこう」という救いの言葉の直後に、
なぜ「もうバイバイ」という最後通牒のような言葉が接続されるのか。
わからなかった。
そして恐ろしかった。

きっと 「次はゼリガニ釣りにいこうぜ。あ、やっぱしもうバイバイ。」
の真ん中にある、
「。句点」のあたりで彼の心に何かが起こってしまったのだ。
そう思うよりほかなかった。


人の気持ちのなかに、
「、読点」や「。句点」がある。
「,コンマ」や「.ピリオド」がある。

そしてその刹那、 まるでつながりのない別の気持ちがやってくる。

どれだけ深い隔たりがあり、
その奥底にどんな人間の不思議がつまっているのか。

人の人生は、その行動は、その軌跡は、
刹那せつなの、
全く別のアクションの連なりでしかない。
そう思う。

登場人物の動機や行動は、
どんなに理屈をつけても一つの線では説明しきれない。
無闇に説明しにかかることほど滑稽で無意味なものはない。
アクションの点と点をを結んだら、
たまたまキャラクターと呼ばれるものとなった。

無責任だけれど、僕はいつも、
そういうつもりでモノを創り、
そういうつもりで役を演じたりしようと思っている。
TOP
CAB DRIVER
illustration by Yashiba.

sitemap

Copyrights(C)CAB DRIVER. All rights reserved.