BuenosAires, Azul/ブエノスアイレス、アスール (2004.01.07-2004.01.27) 愛車ダカールが大西洋を渡っている間、横江は東京への一時帰国を経て、1月7日米国経由でアルゼンチンの首都ブエノスアイレスへ向かう。シカゴ、マイアミとトランジットしてゆく路線だったが、シカゴのオヘア空港でいきなりマイアミ行きの飛行機に乗り遅れた。911のテロ以降に厳重化された荷物検査等の行列がひどく、出発ゲートに着いたときには「Too Late」と言われてしまった。 それでもそこはさすが米国の航空会社、すぐに次の便に振り替えてもらいマイアミへ。1日1便しかないブエノス行きは翌日に振り替え、マイアミ空港近くのホテルに停泊。食事3回と宿泊券は航空会社から支給された。 翌日の便でブエノスアイレスへ。真冬の北半球から真夏の南半球へと舞台を移す。ブエノスのエセイサ国際空港に降り立つと、ものすごい暑気を感じる。片道の航空券だったがアルゼンチンの入国は問題なかった。逃した飛行機とともに先に到着した荷物を受け取り、日本人宿「日本旅館」へローカルバスを乗り継いでゆく。 日本旅館。南米をはじめ、世界各地には日本人バックパッカーが利用する溜まり宿がある。中南米だとたいてい数ヶ月に渡って棲みついている長期滞在者がいる。数日から数週間の滞在の人でも、旅自体は数年に渡っているのが普通だ。彼らと話をしていると、「で、横江さんはもう何年くらい旅をしているんですか?」と普通に訊かれてしまう。日本人宿の最大のメリットはなんといっても情報収集だろう。世界各地を東へ西へ北へ南へと移動してくる旅人が最新の情報を交換し合う。日本旅館ではどいうらさんという南米を2年以上旅しているライダーに会った。数時間にわたり南米のバイクを置ける宿、走って楽しいロード、観光ポイント、リスク等々を教えてもらう。彼から教えてもらった情報のおかげで、ずいぶんと南米の旅は楽になった。実に有難い。 旅の手段としてバイクを選択したわけではなく、バイクで地球を一周することでたまたま旅をしている横江にとって、バイクの到着までの時間は苦痛だった。観光目的で旅をしていないので、要するにバイクがないとつまらなくて仕方がないのだ。ブエノス入りしてからバイクを受け取るまでの10日間(!)日本旅館でゆるい日々を過ごし、たまにセントロ(街の中心)に出かけて行ってぶらぶらする。そんなに暇なら南米屈指の観光地イグアスの滝や近場の隣国ウルグアイのコロニアル都市くらい行っても良さそうなものなのだが、バイクがないとやる気がでない。だから行かない。1月2日に到着しているはずだった船は、マイアミで11日になると知らされていた。船が到着しても、コンテナ下ろしやら通関で「まだ受け取れない」「明日だ」「次の金曜」とどんどん先送りされてゆく。船便で送ったのは失敗だった。ブエノスアイレスは引揚げ港としては費用がかさむので有名だったらしく、結局船便にしてはずいぶんと高くついた。 マドリッドで南米行きの準備を始めてから1ヶ月半、旅が止まっていた。 そんなこんなで2週間ほどブエノスで過ごした後、バイクを無事受け取った。いよいよブエノスアイレスを離れて南米の旅が始まる。まずは南米最南端ウシュアイアの街を目指して約3,200kmの南下である。 国道Ruta3を300kmほど南に行ったところにAzulアスールという町がある。ここにはドイツ人ライダーMikaに教えてもらったライダークラブがあり、南米を走る日本人ライダーも数多く訪れている。南米に渡るのに1ヶ月半もかけてしまったので、すでにMikaはいない。3度目の再会は果たせなかった。アスールにはオーストラリアからのカップルのライダーと、日本旅館で一緒だったハーレー乗りのせいじくんがいた。 ここでは毎週金曜日にアサドパーティが催される。クラブハウスのオーナーJorgeとその仲間たち、停泊しているライダーたちでアルゼンチン牛肉を焼いて食いまくる。アルゼンチンではこのアサドと呼ばれる牛肉の炭火焼きが名物で、なかなか旨い。おそらく日本人ライダーの誰かが教えたのだろうが、ここでは焼いた肉に醤油をかけて食っていた。牛肉に醤油が合うというのはアルゼンチンの人にも分かるらしい。 せいじくんと一緒にアスールを出発し、Ruta3をさらに南に進む。首都ブエノスアイレスからずっと続いていた緑豊かなパンパは南に行くにつれて樹木の背が低くなり、南緯40度のパタゴニア地方の境界線を越えるとごつごつした灌木だけの荒野となってゆく。アルゼンチンではガソリンスタンドの裏で無料でキャンプをさせてくれるところが多く、長距離の移動時にはおおいに助かる。トイレも自由に使えるし、ジャワーもあったりする。南米は快適な安宿が一泊平均500円程度なので、別にキャンプをしなくてもいいのだがこれはこれで楽しい。 夜空を眺めていると真夏のオリオン座が逆さになっているのに気づく。そうか、ここは南半球なんだなぁと感じる瞬間だ。 地平線まで続く一本道を走り、パタゴニア地方最初の観光都市プエルトマドリンにやってきた。この周辺のガソリンスタンドはキャンプをさせてくれなかったので、町中の宿に停泊する。野生動物の王国バルデス半島の付け根に位置するプエルトマドリンは、けっこうなリゾートタウンで観光客が多い。ここから先はさらに何もなくなるので、また肉をしっかりと食っておく。 |
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