F2 Chris & Daisuke around the world

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Patagonia/パタゴニア

(2004.01.28-2004.02.24)

 陸路最南端 RutaJにある旗の木 パタゴニアの強風でこんな形に...

翌朝、海沿いのカフェで朝食を済ませた後、最南端の街ウシュアイアへと直進するせいじくんと別れ、横江はバルデス半島へ1日寄り道する。バルデス半島は大西洋に突き出た出島のような島で、アザラシやペンギンなどの野生動物がいる。半島内部は未舗装のダートロードで、4ヶ月ぶりのダート走行である。野生動物の保護区で観光客も多く、ダートとはいえ道路は広く平らでほぼ舗装と同等のペースで走れる。しかし路面に引かれた砂利がところどころ溜まっており、久しぶりのダート走行、しかもハイペースでは突如ハンドルをとられる場面もありやや危ない。少しペースを落として、アザラシやペンギンを眺めるが、思ったほど群れてもおらずあまりぱっとしなかった。1日をかけて寄り道するほどではなかったか。

翌日、再び南へ向かう幹線道路Ruta3へ戻る。しばらく走っていると、路肩でリアカーを引いている男がいた。後ろから「ずいぶんと大きいリアカーだなぁ。旅人?」などと思い、追い越し際に振り返ってみると東洋人のようだ。ちょっと先で休憩がてら止まってみると、彼が近づいてきて「こんにちは、日本の方ですか〜」ときた。やはり日本人だった。ベネズエラから出発して、リアカーを引いたまま歩いて南米を縦断する旅なのだそうだ。世の中には実に変わった旅をしている人がいるものだ。

リアカーの永瀬さんと少し立ち話をした後、また走り出す。トレレウの町から幹線を少し外れて、ペンギンの棲息地であるプンタトンボへ向けてダートロードを進む。バルデス半島でダート慣れしていたので、ここのオフはかなりハイペースで楽しめる。途中、野生のグアナコ(らくだの顔をした鹿?)の群れを多く見かけた。プンタトンボでは波打ち際に無数のペンギンがいて、足元まで近寄ってくるので可愛くて仕方がない。バルデス半島よりもずっといい。

再び幹線に戻り、延々と南へ続く道をゆく。途中ガソリンスタンド裏キャンプで夜を過ごし、徐々に下がっていく気温に合わせてウェアを重ね着していった。南極からパタゴニア地方をぬける強い風もずいぶんと強くなってきた。久々に長い長い退屈な一本道を進み、いよいよ最南端のチリ国境へ到達する。ウシュアイアまでの道は一部チリ領をまたぐため、ここで越境が必要だ。週末の昼で少々混み合っていたが、窓口は分かり易く手続きも簡単である。チリではバイクの通関にカルネは使用せず、旧ソ諸国の時のように一時輸入の書類(イングレッソ)を別に発行してくれた。

チリ領内に入ってから道ばたのレストランで昼食をとる。アルゼンチンではずっと牛肉だったが、最南端のパタゴニアではコルデーロと呼ばれる羊の肉が主流らしい。羊の煮込み料理を食うが、これが最高に旨い。強風の中、マゼラン海峡に出た。ここは海峡を往復している輸送船を使ってフエゴ島へ渡る。わずか30分の船旅だが、風で波が高くて頭から何度も潮をかぶる。体もバイクも潮でべとべとになった。フエゴ島に入り、さらに南へ進む。フエゴ島のチリ領はほとんど未舗装のため、またがりがりとダートロードを進む。フエゴ島北部は草原地帯になっていて、グアナコの群れや羊の放牧の様子がなんとものどかである。再び国境を越え、アルゼンチン領に入る。アルゼンチンでは通関でカルネを要求された。この国境では休憩所があってそこで泊まることも可能なのだが、まだ日が沈むまで時間があったのでリオグランデの町まで行くことにした。

リオグランデは稚内のような感じの最果ての町だった。国境の掲示板にあったホステル・アルヘンティーナで宿をとるが、ここのオーナーが踊るように喋るおやじとしっかりもの奥さんでそろってスキンヘッド。かなり悪くない。ちょうどスズキDRに乗ったドイツ人ライダーもいて賑やかだった。翌日ウシュアイアに向けて出発すると、BMWの集団に出会った。チリ人のお金持ち数人とたまたま一緒になったアメリカ人の組み合わせだ。ウシュアイアへ向かうというので一緒について行こうとしたが、彼らは強風をものともせずぶっ飛んで走るものだからすぐに置いていかれた。
結局ひとりでマイペースで走る。草原地帯が終わり、南極ブナの森から山岳地帯へと入ってゆく。ノルウェーの氷河地帯で見たような景色が続く。

最後の峠を越えるとビーグル水道と世界最南端の街ウシュアイアが見えてきた。南極に最も近い大陸の街である。市街地の手前の住宅地の中にある上野山荘へ向かった。少し道に迷って犬に追いかけられるが、無事到着。南米の犬はどうもバイクを見ると、がうがう吠えて駆け寄ってくるので困る。特にアンデスでは犬と衝突したり轢いてしまったり、噛み付かれたりする人もいたらしい。

上野山荘では平和な日々を過ごす。暖房も効いているし、五右衛門風呂もある。至極快適。ブエノスで会った人も何人かいる。先に到着していたせいじくんもいた。丘を下ったところにあるスーパーでコルデーロの肉やワイン等の食材を買ってきて、宿のみんなとわいわいと自炊をする。上野山荘にはオーブンがあるので、コルデーロが香ばしく焼ける。最高だ。漁師のオマルがトルーチャ(ます)やらウニやらを宿に売りにくる。みんなでそれを買って焼き魚や寿司、うに丼と海鮮料理もいい感じである。ちょっと季節はずれで身が細かったが、上野山荘名物のカニ料理も堪能した。夜は同じく旅人でプロミュージシャンのなおとのライブで盛り上がった。
ウシュアイア自体はそれほど面白い町ではない。ウシュアイアで動き回ったことといえば、国立公園内にあるRuta3終点と陸走世界最南端のRutaJを軽く走りに行ったくらいである。南極からの強風で大きく曲がった樹木に自然の驚異を感じる。ところがここで風でバイクが倒れ、デジタルカメラを直撃。大破、無念。

 リアカーを引く旅人 永瀬氏と遭遇 プンタトンボではペンギン達が路上を横切る マゼラン海峡を船で渡りフエゴ島へ ウシュアイア上野山荘のみんな

名残惜しみつつも上野山荘をあとにして、遠い米国を目指し北上を開始。フエゴ島内は来た道を戻り、またリオグランデで一泊する。相変わらずスキンヘッドのおやじが盛り上がっている。面白すぎる。翌日マゼラン海峡まで戻ると、先行していたチャリダーの秦さん(上野山荘で一緒だった)に追いついた。この日は風がない穏やかな日だったので、海峡沿いで一緒にキャンプをする。やはりキャンプは人が一緒のほうが楽しい。

秦さんと別れ、チリ最南端の町プンタアレーナスの免税地域でデジタルカメラを新たに購入し、プエルトナタレスへ。ここではチラの家という民宿にいたが、情報共有しているせいかやはり上野山荘で会った日本人旅行者に再会する。プエルトナタレスはトーレス・デル・パイネ国立公園観光の拠点の町だが、雨の日が続いて宿でじっとしていた。。天候に恵まれなければパイネ国立公園は意味がないので、曇天を眺めて回復を待ちつつチラの家にいた子犬とじゃれて過ごす。。

3日目の朝、回復の兆しがでてきたのでパイネ国立公園内へ移動。到着時にはほぼ晴天になった。グアナコやキツネが徘徊する公園内のダートロードを快走する。パイネの角と呼ばれる山頂付近はまだ雲に隠れていたが、氷河が創り出した大地が陽光に輝いて美しい。日が暮れる頃、公園内のキャンプ場に停泊。明けて翌日は見事な快晴!世界から雲という存在が消えていた。ということで、3本の塔を目指して約5時間のトレッキング。丘を越えて渓谷を進み、最後に岩場を登る。運動不足もあって、この岩場では膝が笑う。膝が笑ったのは高校生の時のジャンピングスクワット以来だ。最後の岩をひょいと越えると、そこには息が止まるほど美しい3本の岩の塔がそびえていた。

トレッキング地図では「片道4時間」とあったが、結局往復5時間でキャンプ場まで戻ってきた。三十路を過ぎてから体力の低下を嘆いていたものだが、まだまだ元気のようだ。その翌日パイネをあとに、再び国境を越えてチリからアルゼンチン領内のカラファテを目指す。出発の際には、また上野山荘で一緒だった仲間たちと再会した。アルゼンチン側のパタゴニア縦断ルートRuta40を北上。Ruta40は悪路・強風で有名なちょっとした冒険ルートだが、カラファテまでの道は未舗装ながらもそれほどしんどくはない。草原地帯を淡々と走り、氷河国立公園の拠点カラファテへ到着。カラファテは完全に観光の町であるため、何もかもが2、3割高くて感じが悪い。

氷の崩落が見れるというペリト・モレノ氷河へと向かった。氷河の手前30kmくらいから少し荒れたダートになる。昼食をとり、さあ氷河でも見るか!と思った矢先に突然エンジンがかからない。。氷河の一部分を見渡す坂の途中だったが、いろいろチェックしても原因が分からない。しかも工具を含めた荷物を宿に置いてきてしまったのでお手上げである。幸い通りかかったライダーに助けてもらい、再度チェックするがやはり駄目だ。坂を下ったところに昼食をとった山荘があり、そこで工具を借りてさらに原因を追求する。横江のBMWF650GSDは一般のバイクと違い、燃料タンクがシート下にある。モータで燃料をくみ上げてエンジンに吹き付ける仕組みなのだが、どうも燃料がエンジンまで行っていないということまで分かった。しかしそれ以上の原因特定作業はここではできない。カラファテでも難しいと山荘のおやじは言う。完全に原因が特定できない以上、止むを得ない。首都ブエノスアイレスのBMWディーラーまで輸送することにした。山荘のおやじがカラファテまでバイクを運んでくれ、運送会社も探してくれた。輸送期間は約1週間。泣く泣くパタゴニア縦断をあきらめて、3,000km彼方のブエノスアイレスへと出戻った。
 
 パタゴニアの至宝 トーレス・デル・パイネ国立公園の3つの塔 トーレス・デル・パイネ国立公園遠景 ペリト・モレノ氷河 パタゴニアの旅終焉の地・・・
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