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東洋からの影響に関する文献


英国東洋陶磁学会編、西田宏子・弓場紀知監訳 「宮廷の陶磁器 ヨーロッパを魅了した日本の芸術 1650-1750」 (1994)
 タイトルにあるとおり、欧州に存在する日本製及び中国製磁器を紹介している。ただし、日本磁器から影響を受けた欧州大陸及び英国の磁器もかなりの数が紹介されている。英国磁器では、チェルシー、ボウ、ウースター、ダービーなどの伊万里や柿右衛門図柄の作品が多い。日本のオリジナルと比較できるようになっており興味深い。冒頭に日本磁器の輸出等に関する論文が4本掲載されている他、全15章の各冒頭にもその章のテーマ概説が掲載されている。計350点以上が全作品カラー写真付きで紹介されており、各作品に関する解説もかなり丁寧である。


三杉隆敏 「マイセンへの道 東西陶磁交流史」 (1992)
 書名からするとマイセン窯に関する解説書のようだが、本書の主題は副題の方にある。土器、陶器の解説に始まり、中国とそれ以外のアジアの磁器を論じた後、東洋磁器の西洋への貿易と、マイセン及びセーブルにおける磁器製造の取組みについて詳解している。磁器作品について解説するのではなく、磁器のもつ社会的・経済的側面を論じた書物である。磁器貿易の歴史的背景などを理解するのに有益である。最後に「ヨーロッパの名窯」に関する記述があり、英国の窯もいくつか紹介されているが、あまり体系だって紹介されておらず、また記述内容に必ずしも正確でない点があるのは残念である。


Exhibition Catalogue "The Dragon and the Quail. English Kakiemon Porcelain" (2000)
 柿右衛門図柄の作品ばかりを集めた展覧会のカタログ。日本のオリジナル作品と比較できるようになっている。英国作品(チェルシー、ボウ、ウースター他)が多いが、大陸作品(マイセン、シャンティイなど)や中国作品もある。タイトルからは、龍と鶉の図柄ばかりを集めているように思われるが、実際には、花柄、人物図、柴垣(Banded Hedge)図柄、鶉(Quail)図柄、2匹の鶉(Two Quails)図柄、鳥、鶴亀(Flaming Tortoise)図柄、龍と虎、赤いパネル図柄という章立てになっている。計93作品。全作品がカラー写真と簡潔な解説付きで紹介されている。


Exhibition Catalogue "The Kakiemon Influence on European Porcelain" (1974)


"Oriental Influence on European Porcelain" (1978)


Exhibition Catalogue "18th Century English Chinoiserie Porcelain" (1990)


京都書院アーツコレクションP 「色絵古陶」 (1997)
 京都書院発行の「日本色絵古陶集」(1953)を底本として、文庫版で発行されたもの。伊万里、柿右衛門、九谷及び鍋島の作品、計200点を全てカラー写真で紹介している。個々の作品に関しては名称が記載されているのみで、解説は一切ないが、巻末に山根有三による「色絵古陶概説」という論文(1948初出)及びその英訳が掲載されており、これら日本の色絵磁器の全般的特徴が詳しく解説されている。なお、英訳論文には、柿右衛門と伊万里の欧州への影響に関する章が追加されている。


展覧会カタログ 「古伊万里・金襴手展」 (1997)
 古伊万里・金襴手を創始したのは酒井田柿右衛門家であるとの視点で組まれた展覧である。カタログの冒頭には、論文が3点掲載してあり、金襴手と柿右衛門家との関係、金襴手作品の特徴、そして金襴手の欧州への輸出について論じられている。本展覧会は、現存する主要な金襴手作品のほとんど全てを網羅したとされており、計129作品が全て美しいカラー作品で掲載されている。個々の作品に関する解説も丁寧である。


展覧会カタログ 「マリア・テレジア古伊万里コレクション展」 (1998)
 18世紀にハプスブルグ家によって収集され、その後も散逸せずに伝世した伊万里作品群を展覧したものである。金や銀の台座や枠を取り付けた作品も多い。ウィーン窯の作品20点程も含め、計100点強の作品が全てカラー写真付きで紹介されている。本コレクションの由来などが巻末に詳細に記されている。