コープランド&ギャレット 「5211番図柄」ティーカップと受け皿(1835年頃)
Copeland & Garrett Pattern #5211 Tea Cup and Saucer Ca.1835
1829年にJosiah Spode三世が亡くなると、Spode社は新たな経営体制となり、1833年には新経営者の名前をとって、社名もCopeland & Garrettに変更された。しかし、製造面では従来のラインが継承された。本品の形状は、Spode最晩年の1833年に導入された「メロン型(Melon shape)」に極めて類似している。(特に、取っ手は同一と見られる。ただし、本品ではカップ下部が心持ちすぼまり気味であることと高台部分が小さなペデスタル状になっている点が、Spode社のメロン型とは若干異なる。)受け皿の中央には、カップを置くための窪みがある。図柄番号は5211番であり、これもSpode晩年の1832年頃に導入されたと見られているものである。このように、本品は外形上はSpode作品とほとんど異ならないものであるが、裏面マークはCopeland & Garrett時代(1833‐47年)のものであり、経営陣交替後それほど時を経ていない時期の作品と考えられる。
素地は、1820年以降英国のいくつかの窯で用いられたフェルスパー磁器(コールポート「CP7」参照。)で、やや厚めではあるものの、美しい白さが特徴的。抑えた色調のピンク地もその上の金彩模様とうまくマッチしている。内縁の金彩も端整である。全体にそれほど派手さはないが、英国風の素朴な魅力を持つ作品である。
*本ページ掲載後、和田泰志氏(「ヨーロッパ アンティーク・カップ銘鑑」等の著者)から、本カップは、ハンドルはスポードのものであるが、本体の形状は「ヘルム・シェイプ」と呼ばれるヒルディッチ社の意匠であること、コープランド&ギャレットはヒルディッチ社に対して支援を行っており、その見返りとして同社所有のデザインの作品を製作していた、という主旨のご指摘をいただきました。
サイズ:カップの直径9.2cm、高さ5.5cm。受け皿の直径15.2cm。
Sizes:Cup D: 9.2cm (3 5/8in), H: 5.5cm (2 1/4in). Saucer D: 15.2cm (6in).
マーク:Copeland & Garrett社Felspar Porcelainの印刷マーク、及び朱色手書きで「5211」(写真のとおり)
Mark:Printed Copeland & Garrett Felspar Porcelain Mark, and pattern #5211 painted in red. (See photo)
文献/Literature:
-Leonard Whiter"Spode" p130にSpodeの「メロン型」(あるいは「5146型」)の解説あり。
-Michael Berthoud "A Compendium of British Cups" Plate913及び914に、Copeland & Garrettのメロン型カップの写真あり。
(2006年10月更新)