ウースター(ドクター・ウォール期) ティーボウル (1770-75年頃)
A Worcester (Dr. Wall Period) Tea Bowl Ca.1770-75
薄く焼かれたティーボウルで、手に取ってもとても軽い。釉薬も薄く均一にかけられている。素地の色合いは、軟質磁器の温かみのある白ではあるが、しっとりした乳白色とは異なる。この独特の白さは(ウースター作品の中でも色合いが異なる作品はあるが)、ステアタイト磁器を採用したウースターに特有のものである。
装飾は、銅版転写による染付け(釉薬下の青)のプリントで、「三つの花(Three Flowers)」と呼ばれている図柄である。ウースターのプリント図柄の中でも人気が高く、最も大量に製造されたものの一つである。内側の縁には二重線が(手描きで)引かれており、見込みにも小花がプリントされている。全体的ににじみもなく、よい出来上がりである。コストを抑えた普及品ではあるが、上質な素地も含めて、この時期のウースター作品の安定した完成度を示す出来である。
裏面には、プリントの三日月マークがつけられている。三日月マーク自体は1750年代末頃から使用されたウースターを代表するマークで、フライト期に入っても1790年代まで用いられた。プリント図柄にはプリントの三日月マークが使用され、また本品の場合は、三日月の横にアルファベットの"L"が添えられている(このアルファベット自体は手書きであろう)。これはプリントを担当した職人の記号だと考えられる(幾種ものアルファベットが使用されたことが知られている)。
本品のようなプリント図柄の小型作品は現在でも市場に数多く出回っており、安価に入手できるため、18世紀ウースター入門としても最適である。(しかし侮ることなかれ。この小さい作品からでも学ぶべきことは多い。)
口径(D):7.8cm
マーク:裏面に染付けのプリントで三日月のマーク。三日月の横にアルファベットの"L"
Mark: A crecent printed underglaze blue with an "L"
(2011年9月掲載)