ピーボディ・エセックス美術館(米国:セーラム)
Peabody Essex Museum (USA: Salem, MA)
ボストンから北に20数km行ったところに、17世紀の魔女狩りで有名なセーラムという町があります。ここにあるピーボディ・エセックス美術館は、こんな町にこんな美術館があるのかと驚くような存在で、前身となる組織は何と1799年設立という長い歴史を持つ美術館です。(ただし、中心となる美術館そのものは2003年に開館したものなので、あまり知られていないのも、もっともなところでしょう。)
美術館の名前だけでは、どのようなものが展示されているのか分かりませんが、実はアジアの工芸にかなり力点を置いた美術館です。「蔭餘堂(Yin Yu Tang)」と称する、19世紀初頭に建てられた堂々たる中国伝統家屋を移築して目玉にしているほどです。中国、韓国、日本の陶磁器は展示の主要分野を占めており、各々にいくつもの部屋が当てられています。(日本作品では、古九谷や柿右衛門などもあります。)
そうした中でも特に有名なコレクションは、中国や日本などの陶磁器人形からなる「コープランド・コレクション(Copeland Collection)」です。17〜19世紀の人間や動物をかたどった優れた陶磁器像を見ることができます。(なお、同コレクションは、William Sargent著"The Copeland Collection: Chinese and Japanese Ceramic Figures"(1991)として出版もされています。)
西洋からの特別注文に応じて、紋章入りで製造された中国磁器の作品群も要注目です。大きな部屋いっぱいに展示してありますが、これだけ大量に展示してある所はそうないでしょう。
欧州陶磁器も、数はそれほど多くないですが、優品を見ることができます。米国関連の展示室に、英国や大陸から輸入されたティーセットや壷などが展示されています。
この美術館は、地方都市を侮ってはいけないという好例で、郊外とは言えボストンから電車でも行けますので、ご関心と時間のある方にはお勧めです。(すぐ近くにある「セーラム魔女博物館(Salem Witch Museum)」とセットでどうぞ。)
(2006年1月執筆)