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ヴィクトリア&アルバート美術館(英国:ロンドン)
Victoria and Albert Museum (London, UK)

 世界最大の工芸美術館とされるヴィクトリア&アルバート美術館は、陶磁器に関しても質量ともに極めて豊富な収蔵品を誇っています。特に英国陶磁器については、シュライバー・コレクションやアレン・コレクションなどをはじめとする伝説的コレクションを核に、まさに充実したコレクションを築き上げており、この美術館を訪問することはコレクターにとっては、ある意味で聖地詣でのようなものかもしれません。この陶磁器ギャラリーは、改修のため事実上の閉室状態が続いていましたが、2010年に本格的に再オープンしたものです。

 今回の訪問ではあまり時間がとれなかったこともあり(何たること!)、入口横からエレベーターで陶磁器の展示室が並ぶ6階へ直行。一列に長く連なる11もの展示室のうち、ほとんど全ての時間を18世紀英国磁器が置いてある1部屋のみに(さらに言うと、この部屋の半分は欧州大陸の作品でしたので、実際には0.5部屋に)集中して観賞しました。1部屋とは言っても、かなり広大な部屋で、壁沿いと部屋中央に見上げるほどの背の高いガラスケースがずらりと並べられており、まさに壮観です。

 壁沿いの展示ケースには、分類・解説された作品が並べられており、ケースごとに、例えば「ボウとAマーク作品 1745-1770年」、「チェルシーとチャールズ・ゴウイン 1745-1760年」など、主だった窯と関連する作品がまとめられています。具体的には、Aマーク作品では特徴的なコーヒーカップがいくつか並べられている他、ティーポット、ボウル、クリーマーなどが、またチャールズ・ゴウイン(セント・ジェイムズ)作品では人形や香水瓶といった代表的作品はもちろんですが、ソースボートや砂糖入れなどの珍しい実用品も並べられています。

 もっとすごいのは、それに向かい合った、部屋の中央部にそそり立つ展示ケースです。そこには、壁沿いの展示ケースの何倍もの数の作品群が詰め込まれているのです。ここでも、窯ごと、作品の種類ごとに、おおまかに分類されてはいますが、解説は一切なしで、とにかくスペースがある限り作品を詰め込めるだけ詰め込んであるのです。有名な作品であろうが、希少な窯であろうが、まったくお構いなしで、とにかく「出しておきますから、どうぞ自由に」という感じです。しかし、この雑然さにこそ、この美術館の本分があるのでしょう。ボクソール、リバプール、ロントンホール/ウエスト・パンズ、プリマス/ブリストル等々、一般にはあまりなじみのない(でも、見る人には大いに注目されている)窯の、どれもかなりの数の作品をまとめて見ることのできる美術館が、他にどこにあるでしょう。(なお、この美術館のウェブサイトの最近の充実ぶりは素晴らしく、多くの作品が写真・解説つきで掲載されています。解説なしの膨大な作品群を堪能するためにも、事前にこのウェブサイトで予習してから訪問されることをお勧めします。)



(展示棚というより食洗機?)


 というわけで、この部屋から足を踏み出すことなく、目を皿のようにして各作品を見ながら1時間程度を費やしたように思います。他の分野の収蔵品は全く見れず、もったいなかったのですが、でも、時間が2時間あっても3時間あっても、きっと他のセクションには行かなかっただろうと思います。

 なお、ここでは展示作品は、事前予約さえしておけば、"Ceramics study room"で個別に見ることができるようになっています。私も、チェルシーやダービーの壺でいくつか確認したいものがあったのですが、今回は残念ながら叶いませんでした。次回こそは。


(2012年2月執筆)