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コラム13.Blue and White宣言

 青一色で比較的簡素な絵付け(手描きのものも、転写印刷のものもありますが)が施された"Blue and White"作品は、その素朴な味わいと、日常品的な存在への愛着とがあいまって、多色彩のエナメル絵付け作品とは異なる、独特の魅力を持っています。中国では「青花」と呼ばれ、日本でも「染付」として古くから親しまれているほか、アジア地域で広く愛好されている磁器です。欧州でも同様で、広い地域で多様な図柄の作品が作られてきました。初期の英国磁器窯にあっても、ボウ、ウースター、リバプールなどをはじめとして、多くの窯がそれぞれ魅力あふれるBlue and White作品を残しています。

 しかしながら、こと収集対象となると、英国では最近になるまでBlue and White作品群はあまり高い関心を持たれていなかったというのが実情のようです。例えば、稀代のBlue and Whiteコレクター兼研究者だったギルバート・ブラッドリー(Gilbert Bradley)は、「第二次大戦前には、青で描かれた英国磁器にはほとんど関心が払われておらず、多くのアンティーク店や「ジャンク」店でそうした作品はアジアの作品と混ぜられていた。おそらく、あまりにたくさんあったため、アジアの硬質磁器と英国の軟質磁器との区別はほとんど行われなかったのだろう」と述べています(*1)。

 1933年にW.B. ハニー(W.B. Honey)は、「Blue and White作品、一般的な品質で小型のものは、何シリングかしかしない(注:当時の通貨単位は1ポンド=20シリングですから、少し乱暴ですが今の為替レートで考えると「何10円」という感じでしょうか。)」と書いたそうですが、ジェフリー・ゴッデン(Geoffrey Godden)はそれを引用し、その後20年間はほとんど価格は変わらなかったとした上で、「そうした状況は、バーナード・ワットニー(Bernard Watney)、ギルバート・ブラッドリー、サイモン・スペロー(Simon Spero)、そして私自身(ゴッデン)といった数少ないコレクターには幸いで、主要コレクターたちが好まない作品に集中でき、希少作品への理解を深めることができた」と述べています(*2)。

 現在ではBlue and Whiteの愛好家は多いですし、価格もそれほど安いというわけではありません。でも、優れた参考書もあって収集する環境は以前よりも格段によくなっています。私自身も、まずエナメル絵付けの作品から磁器の世界に入りましたが、最近ではBlue and White作品のシンプルな美しさにどんどん惹かれるようになってきました。そして実際に少しずつ収集を始めています(上の写真はそうした作品のいくつかです)。「宣言」というにはおこがましいですが、遅ればせながら、少し真面目にBlue & White作品を勉強してみたいと思っています。


*1 Gilbert Bradley "Obituary: Dr Bernard Watney" (1998)
*2 Geoffrey A. Godden "Godden's Guide to English Blue and White Porcelain" (2004) Preface


(2010年9月掲載)