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コラム18.コレクターの3類型

 Terence Lockett著"People & Pots" (2008)は、私が時折り本棚から取り出しては読み返す(正確には拾い読みする)本の一つです。著者はNCS (the Northern Ceramic Society)の会長も務めた研究者ですが、この本自体は彼の半生を振り返ったエッセイ的な読み物で、アンティーク陶磁器の収集と研究についての深い洞察を、軽妙な文章で楽しく読ませる稀有な書物です。

 この本の最初の章は"Collecting - Delight or Disease?"と題されているのですが(これだけで読んでみたくなりませんか?)、その中でコレクターの3類型が紹介されています。この類型は、1908年(すなわち100年前)に出版されたJames Yoxall著"The ABC About Collecting" に書かれているものだそうです。この類型自体も100年たって立派な「アンティーク」として確立しているということなのか、Lockettの解説も含めてなかなか鋭い分析だと感じるので、以下ご紹介します。みなさんも、どれかの類型にぴったり合うわけではなくても、どこかに重なる部分があるのではないでしょうか?


第1類型:マグパイ(magpie)
 何でもかでも集める人、収集自体が目的と化している人です。家はあらゆるジャンク品でいっぱいで、ガレージセールやフリーマーケットを素通りできない人です。しかしそういう人たちは少ない出費で自分の趣味を楽しんでいますし、ときにお宝を掘り当てて、そこから本格的な収集を始めることもあるとのことです。Good Luck!

第2類型:研究者(scholar)
 特定の陶磁器窯や装飾等に集中し、本を読み漁り、他のコレクターと交流し、学会に加入し、オークションカタログやeBayを調べ上げて作品を買う(キャビネットはもういっぱいなのに)という人です。そのうちに知識を蓄積して、地元のコレクタークラブで話をしたり、雑誌に記事を投稿したりする研究コレクターになるとのことです。自分がこの類型に属していると思いたがっている人は多いそうです。

第3類型:投資家(investor)
 時が来たらコレクションを売却して、自分あるいは子孫が利益を得ることを目的としている人です。トップディーラーから完品のみを購入するので、垂涎の作品が集まりますが、もちろんとても高価です。しかし時が来てみたら、世の中の好みが変わっていて、期待した価格では売れないこともあるようです。あるいは、コレクションを美術館に寄贈することもあるとか、もちろん寄贈者の名前をつけたギャラリーを設ける前提ですが。


(2021年1月掲載)