新作映画 試写室日記

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ほぼ毎日更新 掲示版

クラシック・シネクラブ 第30回福岡アジア映画祭2016・7月6日〜7月10日 プレイベント5月21日

 このホームページでは、毎日のように試写室でこれから公開される新作映画を見ている筆者たちによる批評を掲載していきます。時には辛口の、時には思いやりのコメントをお楽しみ下さい。                                     執筆:前田秀一郎(映画評論家)、今村ミヨ(シネマ・コメンテーター)

2017年1月1日 あけましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。

10月11日(火)プサン映画祭から帰ってきました。開幕パーティーを始め、連日のパーティーで、韓国の俳優アン・ソンギ、カン・スヨン、ユ・ジテ、キム・ギドク監督、イ・ジェヨン監督などと談笑してきました。

10月6日から11日まで、第21回プサン国際映画祭にゲストとして、出席します。

9月16日(金)日本映画「ボクの妻と結婚して下さい。」Will You Marry My Wife?

 TVのバラエティ番組の売れっ子放送作家の三村修治は、ある日、医者から余命6ヶ月を宣告されてしまう。そこで、残された家族のために何ができるのか?と真剣に考えた修治は、妻の再婚相手を探すというとんでもない行動に出るが、…。まるで韓国ドラマのような突拍子もないストーリーだが、死を病院で苦しみながら迎えるというのが絶えられない人も増えてきているのだろう。「湯を沸かすほどの熱い愛」の宮沢りえも、残されるダメ夫と愛娘のために、死ぬまでにすることリストを作って、行動するというのが、共通するものがある。(ヴィスタ・114分・16年11月5日)

9月14日(水)日本映画「湯を沸かすほどの熱い愛」Her Love Boils Bathwater

 1年前に、夫の一浩が出奔したため、銭湯・幸の湯(スコープ・124分・16年10月29日)

8月24日(水)日本映画「SCOOP!」SCOOP!

 かつては、数々のスクープ写真を撮ってきた敏腕キャメラマン、都城静は、今や、借金まみれの中年パパラッチになってしまっていた。しかし、そんな彼の元に、写真週刊誌「SCOOP!」に配属されたばかりのド新人記者・行川野火の教育係というとんでもない役目を負わされることになる。案の定、全く噛み合わず、ケンカばかりの静と野火の二人だったが、過酷な取材をしていくうちに、次第に分かりあえるよう変化をし始める。福山雅治が、無精髭にパーマ、アロハシャツに革ジャンというこれまでにない奇抜な格好で、中年パパラッチを楽しそうに演じている。原作映画「盗写1/250秒」では、原田芳雄が演じていた静と、宇崎竜童が演じていたキャラ、2人分を1人に集約させるというアイデアで、福山は、シリアスな部分とおちゃらけな部分を両方演じ分けなければならず、大変だったようだが、それが逆に本当に楽しそう。そんな主人公を、「バクマン。」の大根仁監督が自由に親がセている。それにしても、リリー・フランキーのチャラ源のキャラが異常にリアルだ。(スコープ・120分・16年10月1日)

7月21日(木)アメリカ映画「ゴーストバスターズ」Ghostbusters

1984年に大ヒットとなった名作をリブート。しかも、今回の4人は、理系女子(リケジョ)。コロンビア大学の素粒子物理学博士エリン・ギルバートは、昔ゴースト本を出したことがあり、それで、オルドリッジ家に住む幽霊の調査を依頼される。その本を一緒に書いた旧友アビーが、勝手に電子書籍化してネット上で拡散していることに怒ったエリーは、アビーの大学を訪ねる。そして、アビーの若き助手ジリアンと3人で、オルドリッジ家の屋敷へ乗り込むと、そこには、ホンモノのゴーストがいた!その映像が評判を呼んだことから、3人は、幽霊退治(ゴーストバスター)の会社を起業することに、…。リブートなので、ストーリーは、1作目とほぼ同じなのだが、デジタルCGなどの技術がめざましく進歩しているので、ゴーストの出方も驚異的だ。オリジナルで出ていたメンバーたちのカメオ出演も楽しい。3Dフラットで、はみ出す3Dになっている。

(3D・スコープ・116分・16年8月11日先行公開、8月19日ロードショー)

7月15日(金)日本映画「怒り」Rage

 夏の暑い日に東京の八王子で夫婦殺人事件が起こる。現場の壁には、「怒」の文字が血で書かれていた。犯人は、顔を整形し、逃亡を続けている。事件から1年後、千葉と東京と沖縄に、素性の知れない3人の男が現れる。千葉では、3ヶ月前、突然家出した娘・愛子を父親の洋平が連れ戻していた。そして、そこには、2ヶ月前から漁港で働いている田代がいた。東京では、大手通信会社に勤めるエリート社員の優馬が、同性愛用サウナで、直人に出会い、マンションに連れ帰る。一方、沖縄では、母親と共に離島に夜逃げしてきた高校生の泉が、無人島でバックパッカーの田中に出会う。3人の男たち、それぞれが他人に言えない過去の秘密を持っていた。果たして、誰が殺人事件の犯人なのか!?3つの場所で、3つの物語が同時進行していく。吉田修一原作・李相日監督という「悪人」コンビが6年ぶりにタッグを組んだ重厚なクライムサスペンスで、とにかく、細かいディテールにこだわった演出がスタッフのレベルの高さを証明している。キャストも3本の作品ができるほどの豪華さで、贅沢きわまりない!(スコープ・142分・16年9月17日)

7月6日(水)〜10日(日)、第30回福岡アジア映画祭2016の開催です。ゲストの監督も多数参加します。直接話すことのできる貴重なチャンスです。ぜひ、参加して下さい。

5月23日(月)イギリス映画「疑惑のチャンピオン」The Program

 1993年、過酷な自転車競技として知られる<ツール・ド・フランス>にデビューした若きアメリカ人、ランス・アームストロングは、見事レースで優勝するが、その直後に吐血する。重度の精巣ガンだった。しかし、過酷な大手術の後、(スコープ・103分・16年7月2日)

5月12日(水)日本映画「高台家の人々」The Kodai Family

 平野木絵は、“妄想”が趣味の地味なOL。そんな彼女が勤める会社に、ある日、名家・高台家の長男・光正が海外の支店から転勤してくる。オックスフォードに留学経験もある長身のイケメン“王子”とは全く無縁だった木絵だったが、いきなり食事に誘われ、次第に仲良くなっていく。しかし、“王子”には他人に言えない“秘密”があった。それは、イギリスにいる光正の祖母・アンからの隔世遺伝で備わった人の心を読める“テレパス”の力だった。果たして、木絵と“王子”の恋は実を結ぶことができるのか!?まるで「ホタルノヒカリ」を彷佛させるかのような自由奔放なおとぼけキャラの綾瀬はるかの天然ぶりが主人公の“妄想”とぴったりマッチ。さらに、いかにもという感じの高台家のメンバーが異色だ。それにしても、NHK朝ドラのメンバーをよく揃えたものだ。(ヴィスタ・116分・16年6月4日)

4月13日(水)西南学院大学で「フランス映画論I」の講議スタート。例年、後期で行っていたが、今年は前期。117名と多くて、教室が変更になった。

4月8日(金)西南学院大学での「社会科学総合講座」の講議スタート。

3月18日(金)香港から帰ってきました。向こうでは、香港や台湾、中国、韓国、ネパールの監督や映画人たちと会い、情報交換してきました。

3月14日(月)〜18日(金)第40回香港国際映画祭&香港フィルマートに出席します。

2月23日(火)アメリカ映画「スポットライト 世紀のスクープ」Spotlight

祝!アカデミー賞作品賞・脚本賞。2001年7月、ボストン・グローブ社に新しい編集局長マーティ・バロンが就任した。彼は、最初の編集会議で“ゲーガン事件”を詳しく探れという指示を出す。それは、地元ボストンのゲーガンという神父が、30年の間に80人もの児童に性的虐待を加えたという疑惑だった。この調査を命じられたのが、《スポットライト》という特集記事を担当する4人の記者たちだった。そして、取材を始めた彼らの前に、当時のカトリック教会の信じがたい実態が明らかになっていく。数十人もの神父による児童への性的虐待を、教会が組織ぐるみで隠ぺいしてきたのだ。4人の記者たちは、カトリックという保守的な宗教の壁が大きくのしかかるが、(ヴィスタ・128分・16年4月15日)

1月28日(木)アメリカ映画「アーロと少年」The Good Dinosaur

 6500万年前、地球に巨大隕石が接近するが、衝突しなかった。その後、絶滅を免れた恐竜たちは文明を持ち、言葉を話せるようになっていた。そんな恐竜の一家の3兄姉の末っ子アーロは、極端な恐がりで鳥にエサをやることさえ出来ず、仕事をやり遂げた証としての足跡をサイロの壁に付けられないでいた。そんなアーロが川に流されてしまい、見知らぬ土地で目を覚ます。そんな彼の前に現れた小さな“生き物”が人間の少年だった。臆病なアーロとは対照的に、少年は勇敢で怖い者知らずだった。二人は、アーロの家族が待つ故郷を目指すが、その行く手には様々な困難が待ち受けていた…。喋る恐竜とちょっと“野蛮な”人間という組み合わせが新鮮だ。人生や家族を深く考えさせてくれるストーリーは、さすがディズニー。特筆すべき点は、背景となっている大自然の描写がとんでもなく美しいこと。まるで、実写のようにリアルだ。(スコープ・短編「ボクのスーパーチーム」を含めて101分・16年3月12日)

1月27日(水)日本映画「64ーロクヨンー後編」64 Part2

(スコープ・119分・16年6月11日)

1月27日(水)日本映画「64ーロクヨンー前編」64

 昭和64年は、天皇の崩御のため、わずか7日間でその幕を閉じた。その7日間に起きた少女誘拐事件、通称「ロクヨン」。当時、刑事部の刑事として、事件に関わっていた三上は、その後、警務部の広報官になっていた。ひき逃げ事件容疑者の実名を隠す警察に対して徹底抗議する県警記者クラブと対立する広報室。その頃、警視庁長官が時効が迫った「ロクヨン」事件のことで、県警に視察に来ることになり、三上は、被害者遺族宅への慰問を命じられる。(スコープ・121分・16年5月7日)

1月26日(火)日本映画「ちはやふるー上の句ー」Chihayafuru

1月19日(火)日本映画「エヴェレスト 神々の山嶺」Everest : The Summit of the Gods

(スコープ・122分・16年3月12日)

1月8日(金)アメリカ映画「クーパー家の晩餐会」Love the Coopers

 クーパー家では、毎年クリスマスイブの夜、家族皆んなで集まって、食事をするのが習わしだった。ところが、集まって来た家族には、それぞれが問題や悩みを抱えていた。母親のシャーロットは、定年退職した夫サムとの離婚を隠して、家族のための完璧なクリスマスにしようと決意していた。一方、娘のエレノアは、空港で出会った軍人のジョーをニセモノの婚約者として連れて来た。また、息子のハンクはリストラされて失業中だった。完璧主義で娘や妹から煙たがられるシャーロットを演じるダイアン・キートンを始め、ジョン・グッドマン、アラン・アーキン、エド・ヘルムズ、マリサ・トメイ、アマンダ・セイフライドなど性格俳優揃いの見事なアンサンブルキャストだ。さらに、皆んな楽器が弾けて、歌えるというのにビックリ!(スコープ・107分・16年2月19日)

2016年1月1日(金)新年あけましておめでとうございます。今年は、福岡アジア映画祭30周年の年です。どうぞ宜しくお願い致します。

12月11日(金)アメリカ映画「ザ・ウォーク」The Walk

 8歳の時にサーカスの綱渡りを見て感激したフィリップは、独学で綱渡りを学び、“その”サーカスに入団するが、座長パパ・ルディと対立し、飛び出してしまう。1973年、パリに上京したフィリップは、大道芸人として生活していた。しかし、ある日、歯科の待合室で雑誌に載っていた写真が彼の運命を変える。それは、現在建設中のワールドトレードセンターだった。“そのツインタワーにワイヤーを架けて歩く”というとんでもない夢が始まる…。絶対不可能だと思われたその夢が周囲の人々を巻き込みながら、次第に現実化していくプロセスが丁寧に描かれていく。アメリカの象徴だったワールドトレードセンター、そして当時のニューヨークを見事に再現した美術に目を見張るものがある。3Dなので、バランス棒が上から落ちてきた時は、思わず仰け反って避けてしまった。高所恐怖症の私には、とても怖い作品だった。(3D・スコープ・123分・16年1月23日)

12月3日(木)アメリカ映画「クリード チャンプを継ぐ男」Creed

 6作品作られた「ロッキー」シリーズのスピンオフ作品。フィラデルフィアでレストラン「エイドリアン」を営むロッキーの元へ、かつての宿敵であり、親友でもあるアポロ・クリードの息子が現れ、コーチをして欲しいと頼んでくる。最初は断るロッキーだったが、孤独にたった一人で我流のボクシングをするアドニスに、亡きアポロの面影を見た彼は、ミッキーのジムを訪れ、コーチを始める。そして、二人の新たなトレーニングと葛藤が始まる…。まさか、あのアポロに息子がいたなんてアイデアは誰が思いついたんだろうと思っていたら、監督が大学の映画学科の時に考えたものだという。銅像や有名なフィラデルフィア美術館の長い階段でのシーンなど、シリーズへのリスペクトぶりが半端ない感動の作品だ。さらに壮絶なボクシング・シーンのリアルさも凄い!(スコープ・132分・15年12月23日)

11月26日(木)アメリカ映画「スティーブ・ジョブズ」steve jobs

 1984年、アップル新製品の発表会40分前、パソコンMacintoshが「ハロー」と挨拶するはずが、黙ったままだ。「直せ!」と激怒するスティーブ・ジョブズ。マーケティング担当のジョアンナが省こうと提案するが、ジョブズが絶対に譲らない。さらに、そこへジョブズの元カノのクリスアンが娘のリサを連れてやって来る。あの伝説のプレゼンの前40分間に舞台裏で、こんなことが起こっていたのか!?ここには、天才ジョブズではなく、人間ジョブズがいた。マシンガンのように放たれる膨大な会話の数。怪優マイケル・ファスベンダーのセリフの量が半端ない。入念なリハーサルの準備の元、会話のバトルが展開されていく。この会話の洪水をダニー・ボイル監督は、手持ちのカメラを駆使して、まるでアクション映画のように盛り上げる。16ミリ、35ミリのフィルム、そして最新鋭のデジタルカメラを使い分けたのも監督のこだわりだ。(スコープ・122分・16年2月12日)

11月17日(火)アメリカ・イギリス合作「007 スペクター」Spectre

 メキシコシティは、“死者の日”の祭りで、ドクロの仮装をした人々で賑わっていた。ベランダから屋上づたいに走ったボンドは、向かいのビルの男たちに狙いを定める。そして、銃口が火を吹いた瞬間、…。追っていたスキアラという男を殺し、その葬式に参列するというのが、前任のMの指令だったのだ。ローマで行われる葬儀に参列したボンドは、スキアラの妻ルチアを誘惑し、「ペイル・キング」が属する組織の会議が行われる場所を探り出す。そしてその会議に潜入するが、…。今回のボンドは、前作で失ってしまったMの弔い合戦とも言うべき非情さで敵を冷酷に倒していく。だが、恋愛的なところでは、人間的な部分も現実的だ。過去の作品、特にショーン・コネリー時代をリスペクトするサム・メンデス監督の遊び心が満載。フィルム撮影、長回しにこだわった世界各地のロケ地の乾いた空気感が見事だ。(スコープ・148分・15年12月4日)

11月9日(月)日本映画「ピンクとグレー」Pink and Gray

 NEWSの加藤シゲアキが2012年に書いた大人気小説をHey! Say! JUNPの中島裕翔の主演で映画化。人気スター俳優の白木蓮吾の突然の死。第一発見者となったのは、蓮吾の幼い頃からの親友・河田大貴だった。彼は、6通の遺書を並べて残していて、大貴にその中から蓮吾らしいものを選んでほしいというメモがあった。果たして、蓮吾に何があったのか!?14年前、蓮吾が、11歳の「鈴木真吾」だった時に、同じ団地に引っ越してきたのが、大貴だった。それから、2人は、いつも一緒で、同じ青春時代を過ごしていた。高校に進んだ2人は、(ヴィスタ・119分・16年1月9日)

11月4日(水)カナダ・ドイツ・オーストラリア合作「ディーン、君がいた瞬間(とき)」LIFE

 マグナム・フォトに所属する写真家のデニス・ストックは、ニコラス・レイ監督のパーティーで、どこか陰りのある若い新人俳優と出会う。彼こそがジェームズ・ディーンだった。彼に誘われて、翌朝「エデンの東」の試写を見たデニスは、ジミーの迫真の演技に唖然となる。まだ誰も気付いていないジミーの魅力を写真に撮りたいと熱望したデニスは、マグナム・フォトのNY支局長ジョン・モリスに電話して、LIFE誌への売り込みを依頼し、ジミーに密着撮影を持ちかけるが、…。LIFE誌への締め切りのプレッシャーに揺れるデニス、映画界の大人たちと衝突するジミー。お互いに様々な悩みにぶつかり合いながらも、次第に2人の思いが通じ合うようになっていくプロセスが丁寧に描き出されていく。わずか3本の主演作でハリウッドの伝説のスターとなり、24歳の若さで急死したジミー。死の直前、「エデンの東」プレミアを控えた時期、故郷インディアナに帰ったジミーの本当の気持ちが明らかになる。貴重な実話だ。(スコープ・112分・15年12月 日)

10月28日(水)フランス・ドイツ合作「リトルプリンス 星の王子さまと私」The Little Prince

 よい学校に入るために、お母さんが立てた人生設計どおり、毎日勉強漬けの9歳の女の子。名門校の学区内に引っ越してくるが、隣りの家には風変わりな老人が住んでいた。家をめちゃくちゃにした老人の行為に怒っていた少女だったが、隣から飛んで来た紙飛行機を開いてみると、そこには(スコープ・107分・15年11月21日)

10月21日(水)日本映画「劇場版 媚空-ビクウ-」Bikuu the Movie

 熱狂的なファンを持つ「牙狼〈GARO〉」シリーズに登場する媚空を主人公にした劇場版。媚空は、闇に堕ちた魔戒騎士や魔戒法師を退治する闇斬師(やみぎりし)。ある日、代知という青年が現れ、魔戒法師のウサミが闇に堕ちているかどうかを確かめよ、という元老院からの指令を伝える。媚空は、入心の術を使って、ウサミの心の中に入るが、そこには想像とは違った状況になっていて、…。雨宮慶太総監督独特のSF世界の中で、次々に謎が明らかになり、巧みに構成されたストーリーが展開されていく。秋元才加のアクションもかなり堂に入ってきた。(ヴィスタ・78分・15年11月14日)

10月19日(月)日本映画「レインツリーの国」Country of Raintree

 東京の食品会社で営業マンをやっている伸行は、大阪の実家で自分の部屋の片付けをしている時に、大好きだった小説「フェアリーゲーム」の下巻がないことに気付く。そして、どんな結末だったかをネットで検索をしていた時に見つけたのが「レインツリーの国」というブログだった。ブログの管理人であるひとみとメールのやり取りを始めた伸行は、次第に彼女の「言葉」に惹かれていく。そして、“会いたい”というメールを送ってしまう。しかし、ひとみには、直接会えない秘密があった…。その秘密のことで、お互いに傷つけあう2人だったが、そのやり取りが、かなり現代的。メールやLINEの画面への出し方も効果的で分かりやすい。相手の思いにとまどうKis-My-Ft2の玉森裕太のゆれる演技がなかなかリアルだ。(ヴィスタ・108分・15年11月21日)

10月14日(水)今日から毎週、九州大学での「映画を通じて見るアジアと日本」の講議スタート。

10月8日(木)アメリカ・イギリス合作「黄金のアデーレ 名画の帰還」Woman in Gold

 1998年、ロサンゼルスに住むオーストリア人のマリア・アルトマンは、共に苦労してきた姉のルイーゼを亡くし、彼女の意志を継いで、ナチスに没収された伯母の肖像画の返還を求めようとしていた。友人の息子である新人の弁護士に依頼したのは、オーストリア政府の訴訟だった。しかも、取り戻したいという絵画とは、クリムトの名画「黄金のアデーレ」だった。“オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に展示されている名画をオ−ストリア政府が返すはずがなかった。それから、長い裁判の日々が始まる…。1938年のヒトラー率いるナチスによるオーストリア併合で、人生を狂わされてしまった人々の思いは、想像を絶するものだ。マリアと組んだ弁護士で、今も健在なシェーンベルク本人の協力で、法廷での駆け引きがリアルに再現される。クリムトの名画返還にこんな裁判があったことは全く知らずに、2000年にウィーン国際映画祭に出席した時に、ベルベデーレ美術館で、「黄金のアデーレ」を見た。(スコープ・109分・15年11月27日)

10月5日(月)プサン映画祭から帰って来ました。初日は、あいにくの雨模様でしたが、開幕式の席が右側だったので、最後まで濡れずに済みました。パーティーでは、イ・ヨングヮン委員長を始め、アン・ソンギ、カン・スヨン、キム・ギドク監督、侯孝賢(ホウ・シャオシエン)監督、ジャ・ジャンクー監督、クリストファー・ドイルなどと再会し、杯を酌み交わしました。

10月1日(木)〜5日(月)第20回プサン国際映画祭にゲストとして出席しますので、不在させていただきます。

9月30日(水)日本映画「劇場霊」Kekijyourei

 「AKB48」グループの全メンバーを対象にしたオーディションで主演を勝ち取った島崎遥香の初主演作。役に恵まれず、あせりを感じ始めた若手女優・水樹沙羅は、オーディションを受け、「鮮血の叫び声」という舞台に小さな役で出ることになる。主演のエリザベートは、同じ事務所の人気女優・篠原葵だった。準備が進む中、ある球体関節人形が持ち込まれて以来、次々と事故が起こり始める。そして、…。「女優霊」から20年、中田秀夫監督お得意の女優ホラーが復活。デジタル撮影全盛の中、画面の質感にこだわったフィルムによる撮影を敢行し、その怖さがじわりじわりと迫って来る。これこそが、“ジャパニーズ・ホラー”だ。(ヴィスタ・99分・15年11月21日)

9月29日(火)アメリカ・イギリス合作「サバイバー」Survivor

 ロンドンのアメリカ大使館に派遣されたエリート外交官ケイトの任務は、イギリスを経由してアメリカへの不正入国するテロリストを阻止すること。ある日、彼女は、不審な入国者に気付き、捜査を始めるが、爆弾テロに巻き込まれてしまい、その犯人として、警察に追われる羽目になってしまう。さらに、“時計屋”と呼ばれる最強のテロリストがケイトを狙ってくる…。主演は、ミラ・ジョヴォヴィッチ。「バイオハザード」シリーズなどSFが多かったミラだが、今回は、スーツを着た現代女性の役。でも、ちゃんと軍隊経験があるという設定なので、キレのいいアクションを見せてくれる。高そうなオーダーメイドのスーツを着て、テロリスト“時計屋”を演じるピアーズ・ビロスナンの非情さもなかなかだ。(スコープ・97分・15年10月17日)

9月28日(月)アメリカ・イギリス・オーストラリア合作「PAN ネバーランド、夢のはじまり」Pan

 ロンドンの孤児院で暮らす少年ピーターがある日、地下室で母が残した手紙を見つけた時、ネバーランドへの旅が幕を開ける。夢のようにカラフルで美しいネバーランドで、妖精ティンカーベルや人魚と出会い、心が高揚するピーター。しかし、ネバーランドを踏みにじる海賊・黒ひげの陰謀が動き始める。果たして、ピーターたちは、妖精の王国を救うことができるのか!?ひとりの少年がピーターパンになるまでの物語が派手で絢爛豪華で壮大なセットの中で繰り広げられていく。フック船長がピーターの味方で、一緒にネバーランドを脱出しようとしていたというのも驚きの斬新ストーリー!古臭いお伽話ではなく、現代のファンタジーとして生まれ変わった《新生》ピーターパンだ。黒ひげに扮したヒュー・ジャックマンの悪役ぶり&鍛え抜かれたアクションが素晴らしい!(スコープ・111分・15年10月31日)

9月18日(金)日本映画「罪の余白」Crime's Blank

 名門女子高で、一人の少女・安藤加奈が教室のベランダから落ちて死亡した。クラスメートたちの証言によると、加奈は自ら手すりに登り、落ちたという。父親の安藤聡は、幸せだったはずの加奈の死を受け入れられなかった。娘は、なぜ死んだのか?加奈の異変に気づけなかった自分を責めて、酒浸りになっている安藤のところに、位牌を拝みたいという笹川と名乗る同級生が現れ、加奈が日記をつけていたことを知る。その日記には、咲という少女に追い詰められていく過程が書かれていた。事実を明らかにしようとする安藤に対して、咲は巧妙な罠を仕掛けてくるが、…。同級生の心だけでなく、安藤や、他の人間までもマインドコントロールしようとする女子高生の狡猾さが怖い。そんな難役をクールに演じた吉本実憂の今後に注目!(スコープ・120分・15年10月3日)

9月16日(水)アメリカ映画「ジョン・ウィック」John Wick

 キアヌ・リーブスが復活した!亡くなった妻からの最後のプレゼントである子犬を殺されたジョン・ウィックは、復讐の鬼となり、犯人であるロシアンマフィアを次々と殺していく。彼は、かつてロシアンマフィアの殺し屋だった。それも、殺し屋を殺す“最強の殺し屋”だったのだ。ジョンを知るマフィアのボス、ウィゴは、犯人である息子を守るために、別な殺し屋を雇って、ジョンの命を狙うが、…。「マトリックス」でキアヌのスタントダブルをやったチャド・スタエルスキが初監督。だから、徹底したスタントを重視した場面作りで、少々の無理は承知のアクションに次ぐアクション。それでも、銃の弾が切れたら、ちゃんと何回も弾倉を入れ替えてるし、1発で死なない相手にはしっかりトドメの1発を撃ち込んでいるという現実的こだわりは満載で、殺した数は数えきれない。さらに、死体を回収し、部屋を掃除してくれる裏のクリーナーの存在も理屈にかなっている。3部作ということなので、キアヌの新しいシリーズの誕生だ。(スコープ・101分・15年10月16日)

9月15日(火)日本映画「図書館戦争 THE LAST MISSION」Library Wars : The Last Mission

 ただ1冊しか現存しない“自由の象徴”「図書館法規要覧」が“芸術の祭典”会場で一般公開されることになる。武力に伴うメディア規制を激化させている検閲実行部隊「メディア良化隊」が襲ってくるのは確実で、関東図書基地に所属するライブラリータスクフォース54名全員が警備に着くことになる。しかし、この事態には“裏”があった。図書隊壊滅を目論んだ犯人が仕組んだ巧妙な罠が明らかになっていく。そして、「良化隊」の急襲を受けたタスクフォースたちは、次々と倒されていく…。自衛隊の全面協力のもと、壮絶な銃の撃ち合いを見ていると、ゲームのような感覚になってくるが、本当はそれではいけないのだ。(スコープ・120分・15年10月10日)

9月10日(木)ドイツ映画「ピエロがお前を嘲笑う」WHO AM I - Kein System Ist Sicher

 警察に出頭した天才ハッカー、ベンヤミンは、女性捜査官を指名し、これまでのいきさつを告白し始める。大学では、全く存在感のない“透明人間”のベンヤミンだったが、コンピューターの技術だけは、ずば抜けていた。社会奉仕活動の際に知り合ったマックスに誘われたベンヤミンは、さまざまな管理システムをハッキングしていく。やがて、ハッカー集団“CRAY”を名乗り、世間を混乱に落とし込んでいくが、…。とにかく、次から次へのコンピューターのハッキングで、展開が目まぐるしいし、パソコンの専門用語を勉強し直したい感じ。ドイツで大ヒットになり、ハリウッドでのリメイクが決まったということだが、確かによく計算されたシナリオで、なかなか楽しませてくれる。ネタバレになるので、トリックについては詳しく書けないが、とにかく頭がめちゃスマートな主人公の設定にビックリさせられる。(スコープ・106分・東京15年9月12日、福岡)

9月9日(水)日本映画「心が叫びたがってるんだ。」Beautiful Word Beautiful World

 成瀬順がとてもお喋りだった幼い頃、何気なく発した言葉によって父親が家を出て行ってしまった。そして突然現れた“玉子の妖精”の呪いによって、お喋りを封印されてしまう。高校2年生になった順は、口だけでなく、心も閉ざしていた。そんな順が、ある日担任の城島先生から「地域ふれあい交流会」の実行委員を命じられる。皆んなが委員になるのを嫌がるなか、順は、委員を引き受ける。一緒に任命されたは、何事もやる気のない少年・坂上拓実、野球部の元エース・田崎大樹、チアリーダー部の優等生・仁藤菜月の3人。最初は面倒な仕事を押し付けられたと実行委員を辞退しようとする4人だったが、話し合いをしていくうちに、次第に皆んなの心が打ち解けてくる。そして、出し物はミュージカルに決定するが、…。伝説的名作「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」のスタッフが再び結集して贈る青春アニメ。それぞれに家庭や学校の問題を抱え、そのことを語ることが出来ないティーンエイジャーたちのもどかしさが等身大のセリフで描き出されていく。思っていることを勇気を持って、口に出すことの大切さに感動!(ヴィスタ・119分・15年9月19日)

9月8日(火)アメリカ映画「マジック・マイクXXL」Magic Mike XXL

 2012年大ヒットを記録した男性ストリッパー映画「マジック・マイク」の続編。ストリッパーを辞めたマイクは、オリジナルの家具を作る小さな会社を営んでいた。ところが、そんな彼の元にタンパにいるはずの“ザ・キングズ・オブ・タンパ”のメンバーがやってくる。サウスカロライナ州マートル・ビーチで開催されるストリッパー大会に参加するというのだ。今の生活にパッションを失っていたマイクは、彼らと共に大会への参加を決めるが、…。道は容易ではなく、次から次へとトラブルが続き、その寄り道がメンバーの結束を固めていく。1作目から3年経っているが、まだまだダンスの切れは衰えていない。チャニング・テイタムを始めとするマッチョマンたちのストリップダンスはセクシーの域を越えている。(スコープ・115分・15年10月17日)

9月7日(月)日本映画「バクマン。」BUKUMAN。

 部活も受験勉強もせず、志望校もない高校3年生の二人、真城最高(サイコー)と高木秋人(シュージン)は、マンガ家を目指すことにする。シュージンがストーリーを考え、サイコーが作画をして、週刊少年ジャンプへの連載を目標にする。やっと1作目が出来上がり、念願の少年ジャンプに持ち込むが、それからが彼らの戦いの始まりだった。編集者との戦い、編集長との戦い、ライバルたちとの戦い、…、そして、自分たちとの戦いが待っていた。漫画家になるということは、一体どうゆうことなのか!?サイコーを演じる佐藤健の作画ぶりがソーゼツだ。集英社の編集部や、それぞれの漫画家たちの部屋の美術が凝り過ぎの感あり。漫画作りという割と地味な作業をプロジェクションマッピングなどの映像を駆使して、アクションにする大根仁監督の手腕が見事だ。少年の頃、ただ読んで何も考えずに無責任にアンケートはがきを出していたことを思い出し、“悪かったなあ”と反省した。(ヴィスタ・120分・15年10月3日)

9月4日(金)アメリカ映画「ピッチ・パーフェクト2」Pitch Perfect 2

 バーデン大学の女子大生アカペラチーム《バーデン・ベラーズ》は、全米大会を3連覇し、絶好調だったが、オバマ大統領の誕生日を祝う祭典で大失態を犯し、国内大会への出場禁止処分を受けてしまう。落ち込んでしまうメンバーたちだったが、リーダーのベッカは、“国内はダメでも世界大会だったら出場は自由なはず”と必死に連盟を説得する。しかし、彼女たちの前に、ドイツから史上最強のライバル、DSM(ダス・サウンド・マシーン)が現れて、ベラーズは窮地に追い込まれてしまう…。1作目のキャストを再び結集させた続編は、舞台が国内から世界大会へとグレードアップされているだけではなく、出演者たちのレベルも確実にアップしている。2012年に全米で大ヒットした第1作が日本では今年5月に公開になり、DVDが10月にリリースされるので、その勢いに乗ってのパート2のロードショー。アメリカではパート2も大ヒットになり、同じメンバーでの第3作の製作も決まっている。(ヴィスタ・115分・東京15年10月9日、福岡10月16日)

9月3日(木)韓国・チェコ・日本合作「ラスト・ナイツ」Last Knights

 「忠臣蔵」を中世のヨーロッパを舞台にアレンジしたゴシックアクション。皇帝に取り入って自らの懐を潤わせている悪徳大臣ギザ・モットに呼び出された領主バルトーク卿だったが、献上したのは、たった一枚の布だった。賄賂を拒絶されて激怒したギザ・モットは、バルトークを足蹴にし、バルトークの剣で手を切ったことで、刃傷沙汰を起こしたと皇帝に訴える。その結果、バルトークは死刑が宣告されてしまう。領地はすべて没収され、ライデン率いる騎士団も解散させられてしまう。それから1年後、バラバラになった騎士団のメンバーたちは、密かに仇討ちの機会を狙って、綿密な計画を練っていた。毎日酒浸りのライデン隊長も合流し、いよいよ復讐の戦いが始まる…。チェコのプラハで10週間にわたってロケされたということで、壮大な背景で、騎士たちの壮絶なバトルが繰り広げられる。アクションを監督したのは「ベルリン・ファイル」などのチョン・ドゥホン。刀や弓矢を使った武峡アクションを見せてくれる。これまでの2作が不評だった紀里谷和明監督だが、これでやっと世界に認められるのか!?(スコープ・115分・15年11月14日)

9月2日(水)アメリカ映画「マイ・インターン」The Intern

 会社を退職し、愛する妻に先立たれたベンは、ファッションサイト会社の福祉事業としてシニア・インターンに採用される。そんなベンに与えられた仕事は、その会社を一人で立ち上げたバリバリのキャリアウーマンである社長ジュールズの助手。40歳も年上の“インターン”のベンに最初はイラつくジュールズだったが、ベンの適格な助言を聞き、次第に彼を頼りにするようになる。そんな時、ジュールズは仕事とプラアイベートの両方で思わぬ危機を迎えてしまい、…。70歳のシニア・インターンというアイデアは、老人が急増している現代社会にピッタリだ。飛ぶ鳥を落とす勢いのヒロインと、年老いたインテリとの組み合わせは、いささかステレオタイプではあるが、安心して見られる大人のラブコメだ。ロバート・デ・ニーロのために、アクション・シーンも用意してあって、監督の扱いがハンパない。男性がハンカチを何のために持っているのか、初めて知った!(ヴィスタ・121分・15年10月10日)

9月1日(火)中国・香港合作「カンフー・ジャングル」一個人的武林/Kung Fu Jungle

 警察の武術教官でありながら私的試合で殺人を犯してしまったハーハウ・モウは、刑務所に服役していた。ある夜、南拳王と言われる洪拳の武術家がトンネルで殺される。この事件の裏にあるものを察したモウは、仮釈放を条件に捜査協力を申し出る。モウの予言どおり、次の殺人が起こり、ロク警部は、仕方なくモウの協力を浴びることにするが、…。現代劇だが、基本のストーリーは、香港の伝統的なカンフーもの。現代の最強アクションスター、ドニー・イェンが最初から最後までカンフーアクションで突っ走る。そして、それに対する仇役には、香港ではなく、中国大陸から少林寺出身のワン・バオチャンを連れてきて、壮絶な死闘を繰り広げる。「アイスマン」(2014)で共演したドニー・イェンの推薦だったそうだ。もともと、喜劇俳優として有名なワンだが、彼にとっても代表作になった。香港アクション映画界を背負って来た監督、プロデューサー、俳優、アクション監督、スタントマンなどもカメオ出演も楽しい!(スコープ・100分・15年10月17日)

8月18日(火)アメリカ・アラブ首長国連邦合作「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」A Most Violent Year

 一代でオイル会社を築いた移民のアベルは、事業拡大のために、ユダヤ人が持っている土地を購入しようと全財産を頭金として、投入する。しかし、オイルを積んだトラックが強奪される事件が次々と起こる。さらに、脱税の疑惑で検事から告発される。ブルックリンのギャングを父に持つ妻のアナは、兄に相談しようとするが、裏社会の力を借りたくないアベルは、きっぱりと制止する。しかし、オイル強奪は、さらに急増する。強奪現場に居合わせたアベルは、犯人を捕まえ、オイルの売り先を突き止めるが、…。1981年のニューヨークというのは、こんな物騒な時代だったということにビックリ!しかし、その街で小さな事業を立ち上げ、大きく成長させていった移民の人々もいた。そんな起業のチャンスに満ちた時代だったのだ。もちろん、危険と隣り合わせだが。(スコープ・125分・15年10月1日)

8月7日(金)日本映画「S -最後の警官- 奪還 Recovery of Our Future」S : The Last Policeman : Recovery of Our Future

 2014年に放送されたTVシリーズの完結編的映画版。SST(海上保安庁所属特殊警備隊)の倉田隊長の息子を乗せたスクールバスがアジア系外国人たちにバスジャックされる。そして同じ頃、そのSSTが警備をしている巨大なプルトニウム輸送船第二あかつき丸も外国人たちによってシージャックされる。首相を初め緊急召集された閣僚が集まる官邸にかかってきた犯人からの電話は、“因縁のあの男”の声だった…。果たして、NPS(警視庁特殊急襲捜査班)の神御蔵一號(かみくらいちご)と、SAT(警視庁特殊部隊)の蘇我伊織(そがいおり)は、この巨大な陰謀を防ぐことができるのか!?映画版ならではのスケールの大きさで、迫力あるアクションの連発だ。それにしても、「海猿」や「図書館戦争」など、自衛隊や海上保安庁協力の“戦争アクションもの”は北九州ロケが多い。(スコープ・120分・15年8月29日)

8月6日(木)アメリカ映画「死霊高校」The Gallows

 明日に公演が迫った演劇「絞首台」の公演を中止にするために、深夜の高校に忍び込み、セットを壊す3人の高校生たち。と、そこへ舞台でヒロインを演じるファイファーが現れる。ところが、鍵が壊れて開きっぱなしだったドアだけでなく、すべての出口が開かなくなってしまう。そして、閉じ込められた4人を不思議な出来事が襲ってくる。さらに、20年前に演劇「絞首台」で起こった事件の真相も明かになっていく。「パラノーマル・アクティビティ」的な低予算ホラーものだが、計算されたビデオカメラの使い方がうまい!“こんな時にビデオなんか撮ってる場合じゃないだろ!”とツッコミを入れたいシーンが満載だが、その部分をゴリ押しできるパワーを持ったカメラの使い方だ。(ヴィスタ・81分・15年8月22日)

8月5日(水)アメリカ・イタリア合作「パパが遺した物語」Fathers & Daughters

 1989年、ニューヨークに住む小説家のジェイク・デイヴィスは、7歳の娘ケイティを溺愛する良き父親だった。ところが、突然の交通事故で、妻を失い、自分自身も長期入院することになり、仕方なくケイティは、妻の姉エリザベスに預けられる。7ヶ月後、退院したジェイクは、ケイティを迎えに来るが、裕福なエリザベス夫妻は、ケイティを養女に迎えたいと言われる。何とか、ケイティの世話をしながら、生活のために新作小説を書くジェイクだったが、症状は回復した訳ではなく、ひどい麻痺の発作が起きる回数が増えていく…。現代、大学院で心理学を学ぶケイティは、過去のトラウマから人を愛せなくなっており、自暴自棄な生活を送っていた。ある夜、父の小説の大ファンという青年キャメロンに会い、付き合い始めるが、…。父親が最愛の娘のために遺したもの、それが小説だった。ラッセル・クロウがまるで自分のために造り出したようなシナリオで、感動して、プロデューサーも買ってでている。だから、アマンダ・セイフライド、ダイアン・クルーガー、「バスタブ島〜」のクヮヴェンジャネ・ウォレス、オクタヴィア・スペンサーなどキャストが豪華!ジェーン・フォンダまで出ている。(スコープ・116分・15年10月3日)

8月4日(火)日本映画「天空の蜂」The Big Bee

 日本最大の超大型ヘリコプターが何者かに乗っ取られ、原子力発電所の真上に静止した。犯人の要求は、“日本全国の原発の破棄”。燃料がなくなるまで、あと8時間。果たして、ビッグBは、どうなるのか!?ヘリの設計士・湯原と、旧友であり、原発の設計士である三島たちがヘリ墜落を防ぐために奔走するが、…。とても20年前に書かれたとは思えない内容で、映画では原作にはなかった2011年に起きた東日本大震災の救助活動のシーンも付け加えられている。震災、原発事故のあった日本で、今一番真剣に考えられなければいけないことだ。さまざまな意見が飛び交い、映画化するのは本当に勇気のいる行為だったと想像に固く無いが、よくぞこのテーマに挑んだと、感動した。(スコープ・138分・15年9月12日)

7月31日(金)アメリカ映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」Mission: Impossible Rogue Nation

 化学兵器押収の任務を受けたイーサン・ハントは、滑走し始めた巨大な軍用飛行機A400に飛び乗る。といっても、乗ったのは、外側。ドアの外に手を掛けたまま、飛行機は離陸する。そして、時速400キロで、1500mの上空へ…。冒頭からとんでもないシーンで始まるのが、このシリーズの売りだ。トム・クルーズは、このスタントを自身で8回もやったというから、凄い!この混乱を起こした一件もあって、ワシントンの聴問会では、CIAのアラン・ハンリー長官から、IMFが諸悪の根源だと非難され、議会はIMFの解体を指示する。その頃、多国籍スパイ組織<シンジケート>を追跡していたイーサンは、敵に捕らえられてしまうが、…。とにかく、次から次に事件が起こっていき、めまぐるしく画面が変わっていく。メイキングで見ると、カー・チェイスのシーンなどもトム・クルーズ自身でこなしているのがよく分かる。大変な撮影だ。そんな身体を張ったチャレンジが“本物のアクション”を見せてくれる。(スコープ・132分・15年8月7日)

7月29日(水)日本映画「アンフェア the end」Unfair the end

 雪平が4年ぶりに帰ってきた!前作「the answer」で闘った東京地検特捜部の村上克明検事がビルから突き落とされて殺害され、現場には、例の“アンフェアなのは誰か”のしおりが残されていた。さらに、閉鎖されていた“×(罰)サイト”が復活していた。容疑者として拘束されたシステムエンジニアの津島は、雪平を取調官に指名する。彼は、警察の暗部を知ったがために、無実の罪に嵌められたと主張し、警察の中で信じられるのは、雪平だけだと話す。津島の言っていることは真実なのか!?さらに、最高検察庁の武部が、村上親子が不正な組織に属していた疑いがあると打ち明け、雪平に情報協力を求めてくる。果たして、敵は誰なのか!?味方は誰なのか!?さらに、雪平の父を殺したのは誰なのか?さすが完結編というだけあって、これまで明らかにされていなかった謎が解けて、スッキリ(!)できた。(ヴィスタ・108分・15年9月5日)

7月13日(月)日本映画「進撃の巨人 前編」Attack On Titan

 100年以上前に、巨人たちに人類の多くは喰われ、生き残った者たちは、巨大な壁を三重に築き、その中で暮らしていた。ところが、突然現れた超大型巨人によって壁を破壊され、壊れた穴から多数の巨人たちが侵入してきて、人々は無惨に喰われていった。それから2年後、ミカサを目の前で殺されてしまったエレンは、巨人たちを倒すべく、立体機動装置によって武装した調査兵団のメンバーに選ばれていた。そして、巨人に奪われた土地を奪い返すべく、外壁の修復作戦が始まるが、…。巨人はすべてCGで登場するんだろうと思っていたが、かなり人間的巨人が多く、そのリアルさというか、“生身さ”が相当グロテスクだ。見ていて、“そうか、こんな手があったのか!”と感心させられた。さすが、尾上特撮監督の技が冴える。そんな巨人に変化が現れていくだろう後編が楽しみだ。軍艦島の壮大で朽ち果てたビル群を効果的に使ってのアクションも、迫力の醍醐味を出すのに成功している。(スコープ・98分・15年8月1日)

7月12日(日)第29回福岡アジア映画祭2015・ファイナル。「ネパールの首飾り」のグルン・ルドラ・バハドゥール監督、「ダイビング・ベル」のイ・サンホ監督、「Oh Lucy!」の夏原健プロデューサーがゲストとして参加予定。皆さん、ぜひ参加して下さい。

いよいよ、7月3日(金)から、第29回福岡アジア映画祭2015が始まります。今年は、ネパールや韓国から監督たちが来日して、連日、観客とのティーチ・イン(質疑応答)を行います。貴重な機会ですので、ぜひ参加して下さい。 http://www2.gol.com/users/faff/faff.html

6月26日(金)アメリカ映画「ターミネーター:新起動/ジェニシス」Terminator : Genisys

 ターミネーターが帰ってきた!それも、シュワルツェネッガーと共に。2029年のロサンゼルス。人類と機械軍の長かった戦いは、終りを迎えようとしていた。しかし、敗北を悟った機械軍は、ジョン・コナーを生む前の母サラ・コナーを殺すために、ターミネーターを1984年にタイムマシンで送り込んでいた。サラ殺害を阻止するために、ジョンの右腕であるカイル・リースが過去に送られる。そこにいたサラ・コナーは、“か弱いウエイトレス”ではなく、戦う女戦士だった。しかも、彼女が“オジサン”と呼ぶTー800は、2029年から送られた殺人マシンではなく、“サラを守れ”とプログラムされたターミネーターだった。彼らが人類滅亡の「審判の日」を止めるためには、自我に目覚め暴走する人工知能《ジェニシス》の起動を阻止するしかなかった。果たして、彼らは阻止することが出来るのか、…。シリーズの続編というよりは、リブートといった感じ。これまでの時間軸がかなり整理され、分かりやすいシナリオになっている。新3部作の1作目ということだが、シュワちゃんは出続けるのか!?若いシュワちゃんと、現在のシュワちゃんと対決というのが、面白かった。連夜の3Dは目が疲れる。(3D・スコープ・126分・15年7月11日)

6月25日(木)アメリカ映画「ジュラシック・ワールド」Jurassic World

 コスタリカ沖に浮かぶ島のメインストリートに建設された「ジュラシック・ワールド」では、すべての恐竜たちがコンピューターで管理され、恐竜たちと遊ぶことの出来るアトラクションでいっぱいのテーマパークだった。そんな島のオペレーション・マネージャー、クレアの元へ、2人の甥、16歳ザックと11歳のグレイが訪ねてくる。しかし、多忙を極めるクレアは、2人にパスを渡し、アシスタントに案内を頼むが、2人は、彼女をまいて、自由に行動し始めてしまう。その頃、遺伝学者ヘンリー・ウー博士が秘密裏に造り出した大型恐竜インドミナス・レックスが厳重に隔離された施設で飼育されていた。その生態と安全性を確認するために、クレアは、恐竜行動学のエキスパートで元軍人のオーウェンを呼んでくる。ところが、知性を持ったと思われるインドミナス・レックスが逃亡した時、22年前の「ジュラシック・パーク」の悪夢が再び、甦ってくる。今回は、ワールドがすでにオープンして2万人という入場者が逃げまどう中で事件が起こるので、パニックのスケールもハンパない。さらに、実際にロケ撮影されたジャングルの背景の前を膨大な数の恐竜が走り回るので、その存在感もスゴイ。リアルのこだわった撮影は、35ミリと65ミリのフィルム、そしてデジタルが使用されていて、アスペクト比も、1:2.0と特別だ。だが、日本の劇場だとヴィスタ上映になってしまい、スクリーンが小さくなってしまうので、なるべく前の方で見たほうが迫力があると思う。(3D・ヴィスタ(正確には、1:2.0だそうだ)・125分・15年8月5日)

6月23日(火)日本映画「日本のいちばん長い日」The Emperor in August

 1945年4月、大平洋戦争の戦況が絶望的となった時、昭和天皇は、鈴木貫太郎に総理大臣を任せる。そして7月、連合国は、日本にポツダム宣言の受諾を迫る。連日連夜、閣議が開かれるが、一向に結論は出ない。徹底抗戦を唱える陸軍内部では、鈴木内閣を倒すクーデター計画が進められていく。果たして、終戦は実現できるのか!?1967年に岡本喜八監督が映画化した際には、昭和天皇の姿はロングショットと背中だけだった。しかし、この原作には昭和天皇が前面に出ないと成立しないと痛感していた原田眞人監督が戦後70年ということで、再映画化。したがって、昭和天皇がかなりのウエイトを占めている。“私の名前で始めた戦争を、私自身が終らせる”という“聖断”の重みがズッシリと応えた。政府が戦争法案を作ろうとしてる危険な時期にこそ議論しなければならない内容だ。(スコープ・135分・15年8月8日)

6月17日(水)アメリカ映画「インサイド・ヘッド」Inside Out

 11歳の少女ライリーの頭の中には、5つの感情が存在する。楽しい気持ちにさせるヨロコビ、嫌いなものを拒むムカムカ、怒りを爆発させるイカリ、危険から守ってくれるビビリ、そして、ライリーを悲しませてしまうカナシミの5つだ。そんな感情たちは、ライリーの頭の中で、彼女を毎日幸せにするために奮闘していた。ところが、父親の新しい仕事の関係で、住み慣れたミネソタを離れ、友達もいない見知らぬ町サンフランシスコへ引っ越しての新しい生活が始まる。転校先の教室で自己紹介をしている時、カナシミがミネソタでの楽しかった《思い出ボール》に触ってしまう。すると、ライリーにとって楽しかったはずの思い出が一瞬にして、悲しい思い出で変わって、泣き出してしまう。そう、カナシミがボールに触れると、中身が変わってしまうのだ。そんなカナシミの衝動は思わぬ大事件を起こしてしまう。ヨロコビとカナシミが指令部の外に放り出されてしまったのだ。二つの重要な感情を失ったライリーは、危機的状況に陥ってしまう。果たして、感情たちはライリーを救えるのか!?人間にはなぜカナシミが必要なのか?という根源的なテーマが深い!(ヴィスタ・102分(含短編「南の島のラブソング」)・15年7月18日)

6月4日(木)アメリカ映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」Avengers: Age of Ultoron

 アイアンマンとして、アベンジャーズのリーダー的役割を果たしてきたトニー・スタークだったが、メンバーには内緒で、かねてから開発してきた人工知能《ウルトロン》を起動させてしまう。ところが、ウルトロンは、平和を脅かす最大の存在は、人類だということで、人類を抹消しようとする。“すべては私の過ちだ”と事態を解決しようと躍起になるトニー。そして、再び、アベンジャーズのメンバーが結集するが、…。圧倒的に強いウルトロン、そして、スカーレット・ウィッチとクイックシルバーの存在など新たなる展開が広がっていく。九州唯一の巨大なIMAXシアターでの3D完成披露試写で、ド派手なアクションを堪能した。韓国ソウルロケが注目されていたが、漢江の橋でのアクションのほかは、ハングルの看板が出てくるぐらいで、それほど長い時間ではなかった。(IMAX 3D・スコープ・141分・15年7月4日)

5月22日(金)日本映画「極道大戦争」Yakuza Apocalypse : The Great War of the Underworld

 昭和の風景がどこか懐かしさを感させる毘沙門通りを縄張りにしている神浦組の神浦組長は、町のカタギの人々からも慕われていた。そんな神浦組長に憧れてヤクザになった影山は、自分の生き方に悩む朴訥な青年だった。ある日、伴天連と狂犬というヒットマンに襲われた神浦組長だったが、2人の圧倒的な強さに殺害されてしまう。しかし、死ぬ間際に、影山の首元に噛み付いて、“ヤクザ・ヴァンパイアの道を行け”と叫ぶ。そうして、ヤクザ・ヴァンパイアとなり、超人的な身体能力を身につけた影山は、周囲の人々をヴァンパイアに変えていき…。このところ、スター俳優やアイドル主演の大作の多かった三池崇史監督だったが、久しぶりのハチャメチャなヤクザ・ヴァンパイア映画。相当マッチョに身体を鍛え込んだ市原隼人と、インドネシアのヤヤン・ルヒアンの死闘がハンパない!(スコープ・115分・15年6月20日)

5月11日(月)日本映画「ラブ&ピース」Love & Peace

 今年公開される新作が目白押しの園子温監督の描く怪獣映画。うだつのあがらないサラリーマン・鈴木良一は、デパートの屋上で、一匹のミドリガメと目が合い、購入。それから、叶えられなかったロックミュージシャンへの夢、恋心を抱く寺島裕子への思い…などを、そのカメ・ピカドンに語りかける。ところが、ピカドンは、…。ダメダメ男のサクセス・ストーリーで、長谷川博己のよれよれぶりがハンパない。だが、主人公の心の葛藤が少し弱い。人気が出てくると、人は変わってしまうものなのか!?西田敏行がずっと地下の下水道のセットで一人芝居を続けているのは、なんとなくチャップリン作品を彷佛させてくれる。それにしても、園子温監督らしくない正攻法のファンタジー映画だ。(ヴィスタ・117分・15年6月27日)

4月24日(金)日本映画「予告犯」Yokoku-han

 新聞紙で作ったマスクを被った男“シンブンシ”は、動画投稿サイトで犯行を予告し、次々と実行していく。しかも、犯行をネットで生中継するという大胆なやり方だ。“シンブンシ”は、少なくとも4人はいると予測した警視庁サイバー犯罪対策課のキャリア刑事・吉野は、彼らの犯行の裏側にあるものを探そうとやっきになるが、…。世の中の不条理の中で虐げられ、過酷な労働に狩り出される青年たち。彼らの怒りが、サイトというメディアを駆使して、展開されていく。そんな犯人たちのリーダーであるゲイツの生い立ちが、自分と似ていることに気付いた吉野は、…。最近、過激な役があ多い生田斗真が、どこまでも理性的な犯人をクールに熱演している。ヒョロ役の高校生が面白い。本当にフィリピン人とのハーフかと思った。(スコープ・119分・15年6月6日)

4月23日(木)日本映画「愛を積むひと」The Pearls of the Stone Man

篤史と良子の夫婦は、第二の人生を過ごすために、東京下町の工場を畳んで、北海道に移住してくる。以前、外国人が住んでいたという瀟洒な家を手に入れ、花や野菜を植えたガーデニングに満喫する良子だったが、ある日、倉庫から家のスケッチを見つける。そこには、家の周囲を囲む塀の絵が描かれていた。良子は、篤史に、“石塀作り”を頼む。いやいやながら、石を積み始める篤史だったが、…。2004年に出版され、ロングセラーになっているエドワード・ムーニー・Jr.の小説「石を積むひと」の舞台をアメリカから北海道に移して映画化。「日本で最も美しい村」連合第1号に認定された北海道美瑛町に、東京ドームとほぼ同じ面積のオープンセットを建てて撮影されたスケールの大きな景色が美しい!撮影後は、町に寄贈され、観光スポットになりそうだ。(スコープ・125分・15年6月20日)

4月22日(水)日本映画「イニシエーション・ラブ」Initiation Love

 就活中の大学生・鈴木は、合コンで出会った歯科助手のマユと運命的な出会いをし、付き合うことになる。しかし、就職した鈴木は、静岡から東京本社へ転勤になり、遠距離恋愛が始まる。そして、東京本社の同僚・美弥子に愛を打ち明けられ、心が揺れ始める…。主演である松田翔太がいつまでたっても出て来ないと不思議に思って見ていたが、最後に“あんなドンデン返し”が待っていたとは、…。前田敦子の“ブリッコ演技”が怖い!大ヒットした懐かしの名曲の数々や、ブーツジョッキ、エアジョーダン、カセットテープ、パソコン、スターレットなどの車、DCブランドの衣装など堤幸彦監督お得意の80年代アイテムが懐かしい!(スコープ・110分・15年5月23日)

4月21日(火)日本映画「海街diary」Our Little Sister

 鎌倉に住む三姉妹のもとに15年前に家族を捨てて、家を出ていった父親の訃報が届く。仕方なく山形での葬儀に参列する三姉妹だったが、そこで、腹違いの妹、すずに出会う。そして、4人は、一緒に暮らし始めることに、…。長女の幸は、自分たちを捨てていった両親のことが許せない。次女の佳乃は、自由奔放に生きているが、男運が悪い。三女の千佳は、何事にもマイペースだ。そんな三姉妹の元へやってきた中学生のすずは、次第に“家族”の絆を感じていくが、…。食事のシーンがやたらに多いのは、小津作品へのオマージュなのだろうか?それぞれが結構おいしそうだ。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずという今最も旬な女優を揃えた“理想の四姉妹”が織り成す家族の絆がすばらしい!「あ〜、ビール!ビール!」とのたうち回りながら叫んでいる佳乃が面白い。(ヴィスタ・126分・15年6月13日)

4月17日(金)日本映画「ビリギャル」Biri Gal

 学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話。楽しいことばかりしていればいいという母親の考えで、全く勉強しなかった高校2年生のさやかは、学年ビリの成績。これではマズイと考えた母親・ああちゃんは、娘を学習塾に入れる。面接した講師の坪田は、さやかのあまりの無知ぶりにびっくりするが、(ヴィスタ・117分・15年5月1日)

4月17日(金)今日から西南学院大学での「社会科学総合講座」の授業スタート。

4月6日(月)韓国映画「国際市場で逢いましょう」Ode to My Father /国際市場

 1950年12月、朝鮮戦争真只中の興南波止場では、中国軍の襲撃が迫る中、アメリカ軍による大規模な海上撤収が行われ、10万人近い避難民を船で移動させていた。その中に、両親に連れられ、幼い弟妹と共に逃げまどうドクスの姿もあった。しかし、ドクスは背中に背負っていた妹マクスンの手を離してしまう。そして、彼女を探しに行った父親とも離ればなれになってしまう。その後、釜山の国際市場に辿り着いた母子たちは、そこで露店を経営する叔母のもとに身を寄せることになる。そして、1853年の休戦協定によって、ドクスたちは、「北」の故郷・興南には帰れなくなってしまう…。離ればなれになってしまった父親の代わりに、一家の“家長”として、懸命に生きるドクス。激動の時代を命がけで生き抜いてきた人々の歴史がここにある。興南撤収の壮大なスケールのデジタル合成など目を見張るシーンも多いが、人間ドラマの部分に号泣だ。(スコープ・127分・15年5月16日)

3月29日(日)香港から帰ってきました。あちらでは、アン・ホイ監督やトニー・レインズ、ポール・クラークなど多くの友人たちと再会し、歓談してきました。

3月23日〜29日、第39回香港国際映画祭、香港FILMARTに出席のため、不在します。

3月20日(金)アメリカ・イギリス合作「ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」Get On Up

 サウス・キャロライナ州の貧しい家に生まれたジェームズは、両親に捨てられ、叔母の家で暮らしているが、スーツ泥棒で刑務所へ。しかし、慰問にやってきたボビー・バードと知り合いになり、仮釈放になる。そして、彼らが組んだバンドは次第に売れてくるようになり、…。数えきれないぐらいに多くのミュージシャンに影響を与えている伝説の男、ジェームス・ブラウンの生い立ち、音楽、人生が、過去と現在を行き来しながら、描き出されていく。その実像は、数奇な運命に翻弄されてもいたようだ。ブラウンの若い頃に瓜二つのチャドウィック・ボーズマンのダンスが上手すぎる。この作品が生まれたのは、プロデューサーであるミック・ジャガーの多大なる尽力があったからだそうだ。(ヴィスタ・139分・15年5月30日)

3月19日(木)日本映画「脳内ポイズンベリー」Poison Berry in My Brain

 今年30歳になるアラサーのいちこは、ケータイ小説を書いている。ある日、飲み会で出会って気になっていた年下男子・早乙女と出会う。“さあ、話し掛けるのか!?どうする!?”いちこの頭の中で、【脳内会議】がスタートし、喧々諤々のディスカッションが繰り広げられる。天使と悪魔がバトルをするというのはよくありがちだが、いちこの脳にいるのは、〈ポジティブ〉〈ネガティブ〉〈衝動〉〈記憶〉〈理性〉の5つの思考を人格化したキャラクター。それぞれの思考が口々に意見をぶつけ、いちこの行動が決められていく。頭の中のバトルを人間で表現するというアイデアは、なかなか奇想天外で面白い!さらに、その考えが、“あるある”感覚満載で、爆笑の嵐だ。真木よう子が、アラサーの悲哀をコミカルに演じ切っていて、好感が持てる。それにしても、神木隆之介と吉田羊の長ゼリフ・バトルが凄まじい。(ヴィスタ・121分・15年5月9日)

3月19日(木)日本映画「龍三と七人の子分たち」Ryuzo and the Seven Henchmen

 北野武監督17作目の新作は、ジジイ大暴れエンターテインメント。高橋龍三、70歳は、引退した元ヤクザ。家族からも煙たがられ、むしゃくしゃしながら、余生を送っている。そんな龍三は、ある日、オレオレ詐欺に引っ掛かったことをきっかけに、“若いヤツらに勝手な真似はさせられねぇ”と昔の仲間を呼び集め、再び組を結成する。そして、現在、町を牛耳っている元暴走族の京浜連合を潰しにかかるが、…。藤竜也の龍三を始め、7人のジジイたちのキャラがとにかく濃い!そして、やることが、とにかくメチャクチャ。何かと言えば、ドスを出したり、銃を撃ったりするのは、ジョーシキでは考えられないことだが、そんな設定がマンガ的にぶっ飛んでいて、大人のコメディに仕上がっている。それにしても、こんなジジイばっかりだと、大変な撮影だったのでは!?(スコープ・111分・15年4月25日)

3月10日(火)アメリカ映画「インヒヤレント・ヴァイス」Inherent Vice

“インヒアレント・ヴァイス”とは、物事に内在される欠陥。保険会社によっては保険による引き受けが出来ない要因ともなるものだ。ロサンゼルスに住む私立探偵ドックの前に、元カノのシャスタが現れる。今は、不動産王で大富豪の愛人になったという彼女は、そのカレの妻とその恋人が悪事を実行しようとしているので、その調査を依頼する。早速、捜査に踏み出したドックだったが、殺人の濡れ衣を着せられ、大富豪もシャスタも失踪してしまう。ドックは、裏に巨大な組織の陰謀が隠されていると知り、捜査を始めるが、…。アカデミー賞常連の鬼才監督ポール・トーマス・アンダーソン監督が、謎の覆面天才作家と言われるトマス・ピンチョンの原作の映画化を実現した!時代が1970年代ということで、ドックは、ラムチョップ形の髭をしたヒッピー探偵。ずっとマリファナばかり吸っていて、どこからどこまでが現実で、どれが幻想なのか、分からない。ホアキン・フェニックスやジョシュ・ブローリンなど凄く豪華なキャスティングだが、なんとも、相当風変わりな一作。(ヴィスタ・149分・15年4月18日)

3月9日(月)アメリカ映画「君がいた証」Rudderless

 広告会社の敏腕宣伝マンだったサムは、突然の銃乱射事件で息子ジョシュを亡くしてしまう。2年後、会社を辞めて、湖に浮かべたヨットで生活しているサムのところに、別れた妻が息子の遺品を持ってくる。その中にあったCDには、ジョシュが作った曲が録音されていた。その曲を聞いていくうちに、サムは、自分が息子の気持ちを全く知らなかったことに気付く。そして、その曲を歌い始めたサムは、場末のライブバーのステージに参加する。その曲に感動した青年クエンティンは、“あの曲はもっと多くの人に聞かせるべきだ”と力説する。そして、サムは親子ほども歳の離れたクエンティンとバンドを組むことに。人気が出てきたバンド“ラダーレス”は、ジョシュの曲を次々と発表していくが、…。さまざまな傑作に出演している怪優ウィリアム・H・メイシーが初めて監督したインディーズ作品。「あの頃、ペニー・レインで」で見事なギターを披露してくれたビリー・クラダップの歌が心に刺さる!(ヴィスタ・105分・15年3月28日)

3月6日(金)アメリカ映画「シンデレラ」Cinderella

 ディズニーがアニメの名作を実写化。貿易商の父と優しい母のもとに生まれたエラは、幸せ一杯の子ども時代を過ごしていた。しかし、母が病に倒れ、亡くなってしまう。やがて父は再婚を決める。エラは、まま母とその連れ子の姉妹を快く迎え入れるが、まま母は、彼女のことを疎ましく思っていた。そして、…。誰もが知っている「シンデレラ」のストーリーに、新しい設定がふんだんに盛り込まれたシナリオが斬新だ。さらに、弱々しいヒロインではなく、勇気あるポジティヴな主人公だ。それは、亡くなった母の“勇気と優しさを忘れないで”という言葉が彼女の生き方のモットーになっているからだ。絢爛豪華なセット、ゴージャスなドレス、そして、CG合成で実現した見事な変身シーンなど、本当に贅沢な実写版が出来上がった。(スコープ・105分・15年4月25日)

3月5日(木)フランス・グルジア合作「あの日の声を探して」The Search

 1999年、ロシアに侵攻されるチェチェン共和国。両親を目の前で殺された9歳の少年ハジは、そのショックから声を失い、1人放浪する。偶然、彼に食べていたパンを分け与えたEU職員のキャロルは、彼を家に連れ帰る。しかし、ハジ少年の心の闇は深く、なかなか喋りだそうとはしない。そして、キャロル自身も、調査したことが世界に伝わらないというジレンマに悩んでいた。さらに、チェチェンから逃げ延びたハジの姉がハジのことを必死で探していた…。1948年のハリウッド映画「山河遥かなり」のリメイクだが、その設定をチェチェンに変え、戦争がいかに悲惨なものなのか、ということを様々な角度から捕えていく。アカデミー賞を取った「アーティスト」の成功で、長年撮りたかったこの作品の製作費が集まったというミシェル・アザナヴィシウス監督。こんな難しく、微妙な題材へのチャレンジ精神を賞賛したい。デジタルでなくフィルムで撮影。全編手持ちキャメラで、戦場のリアル感が怖いほどだ。(ヴィスタ・135分・15年4月24日)

3月4日(水)南アフリカ・メキシコ合作「カイト/KITE」Kite

 日本の伝説的カルトアニメを実写映画化。金融危機により崩壊した近未来。ストリートギャング集団“ナンバーズ”による少女の誘拐が横行し、エミール率いる人身売買組織に売られていた。12歳の時に両親を殺されたサワは、警官だった父親の相棒刑事アカイに特殊な訓練を受け、“暗殺者”として、エミール一味を一人ずつ殺害していた。そんなサワの前に現れた謎の青年オブリは、精神バランスを保つための薬“アンプ”の使用を止めるよう忠告するが、…。サワをスタイリッシュでセクシーに演じるインディア・アイズリーは、オリビア・ハッセーの娘。南アフリカのヨハネスブルグを荒廃した近未来に見立てて、まるで「マッドマックス」のようなど派手なSFアクションが誕生した。(スコープ・90分・15年4月11日)

3月3日(火)日本映画「忘れないと誓った僕がいた」There Was Me Who Vowed Not To Forget

 高校3年生の葉山タカシは、ある夜、見知らぬ女子とぶつかってしまう。翌日、学校で彼女を見かけたので、声をかけるタカシ。彼女の名前は、織部あずさ。たちまち、付き合いが始まり、二人の楽しい時間が過ぎていく。ところが、不思議なことに、彼女と同じクラスの同級生たちは、あずさの存在を知らない。そんな時、あずさは、“私に会った人たちは皆、数時間後に私の記憶が消えているの”とタカシに告げる。そんなバカげた話を信じられないタカシは、“俺だけは絶対あずさを忘れない”と誓うのだが、…。平山瑞穂のファンタジーノベルの映画化で、何とも不思議な設定。果たして、あずさのことを憶えている人はいるのか!?「2つ目の窓」の村上虹郎がタカシを飄々と自然に演じていて、好感が持てる。元ももクロの早見あかりのはつらつとした演技もファンタジーに合っている。(スコープ・93分・15年3月28日)

2月25日(水)アメリカ映画「ジュピター」Jupiter Ascending

 シカゴで家政婦として毎日ひたすら働いていたジュピター・ジョーンズ。彼女は、ある女性の“生まれ変わり”だ。そんな彼女のDNAを奪うために、宇宙から賞金稼ぎのハンターたちが襲ってくる。そして、そんな彼女を救ったのが、戦士ケイン・ワイズだった。宇宙の王朝では、アブラサクス家の3人の継承者たちが支配権を争っていた。その決めてになるのが、ジュピターのDNAだった。3人のうちの弟からジュピターを捕らえるために地球に送り込まれたケインだったが、その目的を知った今、彼女を守ることを決意するのだった…。ウォシャウスキー姉弟監督の作り出す映像は、ど派手で、とてもスタイリッシュだが、あまりにもゲーム感覚で、“感動”とまでは、いかない。見ている間は楽しいんだが、見終えた後、いったい何なんだろう!?という思いがいっぱい。映像技術の進歩が、ストーリーの概念を越えてしまったのか!?(スコープ・3D・127分・15年3月28日)

2月19日(木)日本映画「風に立つライオン」Lion Standing Against The Wind

 長崎大学医学部の島田航一郎は、ケニアの熱帯医学研究所に派遣される。そして、そこで、過酷な医療環境の中で、心も身体も傷付いていく多くの患者たちの姿を見て、任期を終った後も現地に残る決意をする…。1987年に、さだまさしが発表した曲「風に立つライオン」に惚れ込んだ大沢たかおが企画し、さだが小説化、そして、映画化が実現した。ケニアに1ヶ月以上も過酷なロケをし、相当大変な撮影だったらしい。自らの企画だけに、大沢たかおの力の入れようがハンパない!。“ガンバレ!”という叫びが主人公の強い決意だ。最後の主題歌は、新たに録音されたシネマ・ヴァージョン。(スコープ・139分・15年3月14日)

2月3日(火)イギリス映画「博士と彼女のセオリー」The Theory of Everything

 祝!アカデミー賞主演男優賞受賞。天才物理学者スティーヴン・ホーキング博士の知られざる半生。1963年、ケンブリッジ大学の大学院で物理を学んでいたスティーヴンは、同じ大学で詩を学ぶジェーンと出会い、たちまち恋に落ちる。しかし、スティーヴンは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され、余命2年の宣告を受ける。それでも彼と共に生きると決めたジェーンは、力を合わせて病気と闘う道を選択する…。冒頭、キャンパスで自転車を乗り回すスティーヴンの姿にびっくり。彼は、ALSを発症し、何年もかかって、今のような車イス状態になったのだ。その間、病気は進行するが、脳は変わらない。“生きる”ということを深刻に考えさせられた。ともすれば同情を買うだけの演技になってしまうところを、決して暗いだけではない演技を実現したエディ・レッドメインがすばらしい!(スコープ・124分・15年3月13日)

2月2日(月)日本映画「ストロボ・エッジ」Strobe Edge

 高校1年生の木下仁菜子は、以前から好意を持っていたイケメン同級生・一ノ瀬蓮に告ルが、すんなりフラれてしまう。蓮には、中学の時から付き合っている年上の彼女・麻由香がいた。だが、仁菜子の真っすぐな想いに触れるうちに、次第に蓮の心に変化が起き始め、…。何か、「アオハライド」に似た設定だな、と思っていたら、同じ原作者だった。福士蒼汰と有村架純という今、最も旬で勢いのある最強コンビのW主演ということで、ティーンエイジャーにウケること間違いなしの学園ラブストーリー。新潟県にある高校で、夏休みを利用してロケされたということで、高校のリアル感バッチリ。さらに、オリジナルでデザインされたチェック柄のセーラー服がとてもおしゃれで可愛い!(ヴィスタ・116分・15年3月14日)

1月29日(木)アメリカ映画「イントゥ・ザ・ウッズ」Into The Woods

 長い間子どもを授からないことに悩むパン屋の夫婦のもとに、隣の魔女が訪ねて来る。そして、子どもが出来ない原因は、呪いにあると知らされる。その呪いを解くためには、4つのアイテムが必要だと魔女から告げられた夫婦は、森の奥へ入っていくのだった…。シンデレラ、赤ずきん、ラプンツェル、ジャックと豆の木という有名なおとぎ話の“めでたし、めでたし”のその後の意外なストーリーがミュージカルで展開される。かなり奇想天外な物語だが、それをメリル・ストリープやジョニー・デップ、エミリー・ブラントなどという超ゴーカなキャスティングで映画化できるというのが、さすがハリウッドだ。カーク船長が歌って踊れるのにビックリ!(スコープ・125分・15年3月14日)

1月27日(火)中国映画「妻への家路」帰来/Coming Home

 1977年、文化大革命が終結し、囚われていたルー・イエンシーは解放され、20年ぶりに故郷に帰って来る。しかし、待っているはずの妻は、記憶喪失になって、夫の顔を忘れてしまっていた。仕方なく向かいの空家を借りたイエンシーは、妻の記憶が戻ってくることを願いながら、妻の生活を見守ることにするが、…。チャン・イーモウ監督がこれまでタブーとされていた文革問題にチャレンジしたのは、多いに認めたいことだが、今の中国では、反右派闘争のことは描くことはまだ出来ない。自由に描けるようになるのは、いつになるんだろうか!?コン・リーが記憶障害という難しいキャラクターに挑んで、女優としての円熟味を見せてくれる。(スコープ・111分・15年3月6日)

1月26日(月)アメリカ映画「アメリカン・スナイパー」American Sniper

 伝説のスナイパー、クリス・カイルの半生。彼は、イラク戦争に4回も遠征し、米軍史上最多の160人を射殺、「伝説の狙撃手」と呼ばれた。しかし、イラクの反政府武装勢力からは、2万ドルの懸賞金がかけられ、命を狙われた。だが、カイルは、“仲間たちを守りたい!”という一心で、引き金を引き続ける。また、家に帰れば、家族にとって、良き夫、良き父でありたいと願っていた。しかし、戦争の狂気は、次第に、カイルの心を蝕んでいく…。従軍経験者の多くがPTSDに悩む現代社会の大きな課題にクリント・イーストウッドが挑んだ問題作だが、主人公の評価が微妙なところだ。果たして、彼は“戦争の英雄”なのだろうか!?(スコープ・132分・15年2月21日)

1月23日(金)イギリス・アメリカ合作「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」The Imitation Game

 1939年、第二次世界大戦が始まると、ケンブリッジ大学の特別研究員アラン・チューリングは、イギリス政府の機密作戦に参加させられ、ドイツ軍の誇る暗号エニグマの解読に挑むことになる。エニグマの暗号の組み合わせの数は、159のあとに0が18個続く、1垓5900京通りという天文学的なものだった。イギリス海軍のデニストン中佐は、解読チームとして6人のメンバーをブレッチリー・パークに集めるが、チューリングだけは、一人でマシンを作り始める…。子どもの頃からずっと周囲から孤立し、唯一の友人とも悲しい別れを経験したチューリング。ベネディクト・カンパーバッジならではのクールな演技が光っている。(スコープ・115分・15年3月13日)

1月20日(火)日本映画「ジヌよさらば〜かむろば村〜」Money Farewell

 東京での銀行マンの仕事がトラウマになり、お金を一銭も使わずに生きていこうと決めたタケは、過疎化が進む東北の小さな寒村“かむろば村”にやってくる。しかし、異常に世話好きな村長・与三郎を始め、村の人々は、濃い顔ぶればかり。そんな村人たちに助けられながら、一円も使わない生活を続けるタケだったが、…。いがらしみきお原作のコミックを自らファンだという劇団「大人計画」の松尾スズキが念願の映画化。松田龍平がちょっととぼけた感じで、主人公・タケを飄々と演じていて、いかにも現代青年的だ。“お金を一銭も使わずに暮らしていけるのか?”というテーマは、さまざまな意味で混迷する現代社会の大きな問題でもあるだろう。(ヴィスタ・121分・15年4月4日)

1月14日(水)日本映画「味園ユニバース」La La La At Rock Bottom

バンド「赤犬」のライブが行われていた公園に、ふらふらと傷だらけの男が現れ、いきなりマイクを奪うと、“あの頃は〜”と「古い日記」を歌い出す。その圧巻の歌声に魅せられた「赤犬」マネージャー、カスミが家に連れて帰るが、その男は記憶喪失で、何を憶えていなかった。仕方なく、“ポチ男”と名付けて、家に住まわせることにする。ポチ男の歌の才能を確信したカスミは、交通事故にあったボーカルの代わりに「赤犬」で歌うことを命令するが、…。大阪に実際にある「味園」というビルを舞台に繰り広げられる音楽エンターテインメント。それにしても、関ジャニ∞の渋谷すばるがこんなに歌えるなんて知らなかった!和田アキ子もビックリだ。(ヴィスタ・103分・15年2月14日)

1月14日(水)アメリカ映画「アナベル 死霊館の人形」Annabelle

 「死霊館」の呪われたアナベル人形は、いかにして生まれたのか?という誕生秘話。1969年、カリフォルニア州サンタモニカ。わが子の誕生を控え、幸せの絶頂にいるジョンとミアのフォーム夫妻。ジョンは、出産のお祝いに用意していた高価なビンテージ人形を、少し早めにミアにプレゼントする。しかし、ある夜、隣家の夫婦を惨殺したカルト信者の男女に襲われる。そして、その女アナベルはミアの人形を抱いたまま、自殺したのだ。ミアは、縁起の悪い人形を捨てるようにジョンに頼む。ところが、それから奇妙な出来事が起こり始める…。実在するアナベル人形は、コネティカット州の博物館に封印され、今でも月に2回、神父の祈祷によって浄められているそうだ。前作を大ヒットさせたジェイムズ・ワン監督は、今回は製作を担当し、「死霊館」撮影のジョン・R・レオネッティが監督デビュー。撮影監督出身だけに、映像がゾクゾクする。こんな人形が家にあったらと思うと、たまったもんじゃない!(スコープ・99分・15年2月28日)

1月9日(金)日本映画「くちびるに歌を」Song on Lips

 長崎の離島・中五島中学校の合唱部は、至って平凡な部活の一つだった。そんな学校に東京で有名なピアニスト、柏木ユリが音楽の臨時教師としてやってくる。いやいやながら、合唱部の顧問になった柏木だったが、冷たい態度でかたくなにピアノを弾こうとしない。しかし次第に、合唱部の生徒たちの懸命の努力が彼女の心を動かし始める…。2008年の全国学校音楽課題曲だった「手紙〜拝啓十五の君へ〜」の作者アンジェラ・アキが、合唱コンクールに出場する五島・若松島の中学生たちと交流する様子を追ったテレビドキュメンタリーを元に書かれた小説の映画化。オーディションによって選ばれた中学生たちのコーラスが瑞々しく、すばらしい!長崎オールロケで、合宿して、それぞれの絆が生まれている。“私のピアノはあなたたちには勿体無い!”と悪態をつくガッキーのワルぶりが、なかなかイイ。(ヴィスタ・132分・15年2月28日)

2015年1月1日(祝)あけましておめでとうございます。今年も、どうぞ宜しくお願い致します。

12月25日(木)アメリカ映画「アニー」Annie

 ブロードウェイ・ミュージカルの定番で、日本でも毎年のように公演されている名作の2度目の映画化。今回は、時代がオリジナルの1933年から現代に変更されているので、古めかしさは全くなくなっている。ニューヨークに住む10歳の少女アニーは、身寄りのない子どもたち4人の少女と共に、元歌手のミス・ハニガンの家で暮らしていた。ある日、野良犬を助けようと道路に飛び出したアニーは、一人の男に助けられる。彼は、携帯電話会社のCEOで、ニューヨーク市長選に立候補しているウィル・スタックスだった。潔癖症の彼は、アニーのような子どもが大嫌いだったが、アニーを助けたことで、選挙の支持率が急上昇。選挙参謀の勧めで、アニーを里子にする。こうして、アニーとスタックスの同居生活が始まるが、…。ジェイミー・フォックスが歌えるのは有名だが、ミス・ハニガンに扮したキャメロン・ディアスがこんなに歌って踊れたというのビックリ!もちろんアニー役のクワベンジャネ・ウォレスは、「ハッシュパピー〜バスタブ島の少女〜」でアカデミー賞にノミネートされたぐらいの天才子役ぶりを遺憾なく発揮していて、さわやかな涙に繋がっている。(スコープ・118分・15年1月24日)

12月24日(水)日本映画「ソロモンの偽証 全編・事件」Solomon's Perjury Part 1

 終業式の朝、うさぎの世話に向かった中学2年生の藤野涼子と同級生の野田健一は、雪に埋まった同級生の死体を発見する。その少年、柏木卓也は、ひと月ほど前から不登校の状態だった。遺書は見つからなかったが、警察は自殺と断定した。しかし、藤野涼子のもとに1通の告発状が届く。容疑者は、同級生。いつまで経っても、事件を決着させることが出来ない大人たちに代わって、自分たちの手で“学校内裁判”を開こうとする涼子たち。果たして、裁判はどのように展開されていくのか!?そして、嘘をついているのは、いったい誰なのか!?1万人にも及ぶ候補者の中から1年近くものオーディションと研修の末、選ばれた生徒たちの演技がリアルで、新鮮に写る。「後編・裁判」の公開は、4月11日だ、(スコープ・121分・15年3月7日)

12月19日(金)日本映画「繕い裁つ人」A Stitch of Life

 神戸の坂の上にある洋風の一軒家、「南洋裁店」。二代目店主の市江は、先代が作った洋服の“お直し”をしながら、毎日をおくっていた。そんな彼女の元へ、大手デパート大丸で服飾担当をしている藤井は、ブランド化の企画書を持って来るが、市江は、頑として承諾をしない。洋服は、その人に合わせてあつらわれる、世界で一着だけの、一生もの。そんな職人の仕事にこだわった一人の女性の生き方がすごく羨ましい!久しぶりに主演の中谷美紀に飄々とした理知的な演技も好感度アップ。ただ、コミックの映画化で、あまりにも“おしゃれ”で、マーケティングの結果、こういう設定の女性が、今、ウケるというような空気が満ちて、感動的とまではいかなかった。(ヴィスタ・104分・15年1月31日)

12月17日(水)日本映画「ST赤と白の捜査ファイル」ST Scientic Investigation Squad

 スペシャルドラマ→連続ドラマに続き、異例の早さで映画化された人気シリーズ。ハッカーによる囚人の脱走事件が起こる。しかし、犯人の鏑木は、焼死体で発見される。そして、その殺人容疑で逮捕されたのは、警視庁科学捜査班STのリーダー、赤城左門だった。リーダー不在でSTは解散することに、…。ところが、赤城が留置場から脱走。警察は、赤城の行方を追跡するために、STメンバーを召集する。そして、そこに異動を2日後に控えた百合根も捜査に参加。果たして、赤城は本当に殺人犯人なのか!?映画版だけに、かなりのスケールで事件が展開されていき、アクションの迫力も充分。でも、お笑いの部分もちゃんと健在だ。(ヴィスタ・110分・15年1月10日)

12月16日(火)アメリカ映画「ジャッジ 裁かれる判事」The Judge

 シカゴのやり手弁護士ハンク・パーマーの元に母親が亡くなったという電話が入る。20年ぶりに故郷インディアナ州カーリンヴィルに帰った彼は、絶縁状態の父親や親戚から歓迎されない。厳格な父親は、42年間、裁判所の判事として、厳しい判決を下してきた。しかし、妻を亡くし、その葬儀の夜、ある事件を起こしてしまう。そして、裁かれる立場になってしまう。そんな父を弁護することになったハンクだったが、…。果たして、彼は父親を無罪放免にすることができるのか!?高齢化社会が抱える深刻な問題が、“年老いた親をどう面倒みるか!?”ということだ。特に、妻に先立たれた年老いた夫は、何を生き甲斐に生きていけばいいのだろう!?名優ロバート・デュバルの老人演技がリアルだ。(スコープ・142分・15年1月17日)

12月15日(月)日本映画「ジョーカー・ゲーム」Joker Game

 第二次世界大戦前夜、上官を殴って銃殺刑にさせられようとしていた青年は、謎の男に救われる。しかし、死んだことになった彼は、その男が作った秘密組織「D機関」でスパイになる訓練を受けることになる。苛酷な訓練を明せきな頭脳と卓越した運動能力で乗り切った男は、“嘉藤”という偽名と、世界を揺るがす新型兵器に関する機密文書《ブラックノート》を奪取するというミッションを与えられる。国際都市“魔の都”に乗り込んだ嘉藤たちD機関のメンバーは、米国大使グラハムに接近し、《ブラックノート》を奪おうとするが、…。マンガチックな展開のスパイアクションだが、インドネシアのバタム島での長期ロケを行っており、スケールの大きさは、映画的だ。深田恭子は、最近この手の役が多いな。(スコープ・108分・15年1月31日)

12月15日(月)日本映画「マエストロ!」Maestro

 若きヴァイオリニスト香坂のもとに、解散した名門オーケストラ再結成の連絡が来る。だが、練習する場所としてメンバーが集められたのは、廃工場。さらに、優秀なメンバーたちは他のオーケストラに移籍していて、集まったのは、再就職の出来ない楽団員たちだけ。そして、そこに現れたボサボサ髪の謎の指揮者、天道徹三郎。果たして、香坂たちは、オーケストラを再結成できるのか!?1ヶ月後に迫ったコンサートは出来るのか!?音楽ものということで、それぞれ楽器の演奏できる俳優たちをメインの楽団員にキャストし、演奏シーンも本格的。だが、無駄なシーンが多くて、長過ぎる。「バンクーバーの朝日」に似た長さだと思っていたら、同じ脚本家だった。監督は、脚本を短く出来ないのか!?(ヴィスタ・129分・15年1月31日)

12月12日(金)フィンランド・フランス合作「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」Muumit Rivieralla/Moomins on the Riviera

 原作者トーベ・ヤンソン生誕100周年を記念して、初めて祖国フィンランドで作られた長篇アニメ。ムーミン谷を抜け出し、地中海の島・リビエラにバカンスに行ったムーミン一家。高級ホテルで貴族と勘違いされた彼らは、スイートルームに招かれ、宿泊することになってしまう。フローレンとムーミンパパは、贅沢な暮らしの虜になってしまい、ちょっと危ない雰囲気に。そんな二人に腹を立てたムーミンとムーミンママは、ホテルを飛び出して、…。今作は、のんびりとしたムーミン谷での出来事でなく、ムーミン一家がリゾート地で贅沢な生活にとりつかれてしまうという現代的なテーマで、批判精神がしっかり詰め込まれた大人向きのストーリーだ。でも、よく思い出してみると、結構きつい批判的題材が多かった気がする。デジタルアニメでなく、全編手書きで作られていて、北欧独特の色合いがとにかく温かい!(ヴィスタ・77分・15年2月13日)

12月11日(木)アメリカ映画「ミュータント・タートルズ」Teenage Mutant Ninja Turtles

 ニューヨークの街は、シュレッダーと彼が率いる邪悪なフット軍団に牛耳られていた。そんな彼らの悪事を阻止しようと、地下道の奥から現れた4人の兄弟たち<ミュータント・タートルズ>。偶然、彼らの活躍を目撃したTVレポーターのエイプリルが彼らの後を追い、スクープしようとするが、…。1990年の映画版から25年後に生まれた新作は、マイケル・ベイ指揮の元、爆破シーンや派手なアクションシーン満載の娯楽巨編となった。モーション・キャプチャーによるタートルズ4人のリアルな動きや、デジタル合成なども革新的な進化を遂げていて、一級のアクション作品に仕上がった。シリーズ化は必至だ。(3D・スコープ・101分・15年2月7日)

12月11日(木)台湾映画「KANO〜1931海の向こうの甲子園〜」KANO

 日本統治時代の台湾。南部の嘉義の学校で会計士をしていた近藤は、かつて名門・松山商業を監督として、全国大会に出場していた。そんな彼が嘉義農林高校の野球部の監督を頼まれる。近藤は、“甲子園”を目標に掲げ、スパルタ方式で生徒たちをしごく。最初は、厳しい練習を嫌がっていた生徒たちだったが、次第に、近藤の思いに応えて、現実に“甲子園”を目指すようになる。“先住民は足が速い。漢人は打撃が強い。日本人は守備に長けている。”ということで、3民族混成のチームは、次第に力をつけ、台湾予選大会を勝ち続け、甲子園への道を歩み始める…。当時の状況を再現するということで、ほとんどのセリフが日本語。永瀬正敏も久々の主役で、演技に力が入っている。野球が出来るということがオーディションの条件だったということで、生徒たちの野球は本物。“日本を美化している”と、中国政府がいろいろ言っているようだが、そんな問題ではないだろう。(スコープ・186分・15年1月24日)

12月4日(木)アメリカ・ニュージーランド合作「ホビット 決戦のゆくえ」The Hobbit : The Battle of the Five Armies

 竜スマウグに襲われる湖の町では、統領を初め、人々が船で脱出を計っていた。しかし、弓の名手バルドは、何とか竜を撃とうと、鐘台に登るが、…。その頃、ドワーフたちは、財宝の魔力に取りつかれてしまったトーリンの暴走に苦悩していた。さらに、財宝を狙って、エルフ、ドワーフ、人間たちといういくつもの軍勢がはなれ山に押し寄せてくる。そして、その背後には冥王サウロンが放ったオークの大群も動めいていた、…。最後には、これまでの登場人物がすべて揃って、それぞれの壮大なバトルが待っている。「ロード・オブ・ザ・リング」から続いた壮大なトールキンの物語がついに完結する!「ホビット」3部作で、“生きていく中で、何が一番大切なのか?”ということを悟ったのは、主人公ビルボだけではないはずだ。(3D・スコープ・144分・14年12月13日)

12月3日(水)イギリス・アイルランド・フランス合作「ジミー、野を駆ける伝説」Jimmy's Hall

 1932年、国を分断した悲劇的な内戦が終結してから10年後のアイルランド。アメリカから元活動家のジミー・グラルトンが10年ぶりに故郷リートリムに帰ってくる。年老いた母親との平穏な生活を望んでいたジミーだったが、村の若者たちから閉鎖された<ホール>の再開を訴えられる。かつてジミー自身が建設したそのホールは、人々が芸術や学問を学びながら、歌やダンスに熱中した場所だった。相変わらず、教会の監視は厳しかったが、ジミーはホールの再生を決意する。しかし、それは彼らの行動を快く思わない勢力の反対を生み出してしまい、…。当時のカトリック教会の力は強大で、村の人々が勝手に、ホールを作り、学問をやったり、ダンスをしたりすることを禁じていた。そんな時代に“自由に”生きようとした人々のリーダーがジミーだった。ケン・ローチ監督は、ジミーの伝説を高らかに賞賛するのではなく、私利私欲のないジミーの人間的行動を描き出している。(ヴィスタ・109分・15年1月17日)

11月27日(木)インド映画「ミルカ」Bhaag Milkha Bhaag

 1960年ローマ・オリンピック、インド代表のミルカ・シンは、なぜかゴール手前で後ろを振り返り、結果4位に転落してしまう。なぜ、彼は振り返ったのか!?後日、パキスタンとの親善陸上大会が計画され、そのインド側の団長に選ばれるが、彼はそれを頑に固辞する。ネルー首相から派遣された担当大臣がミルカを育てた2人のコーチと共にチャンディガルへ向かう汽車に乗るが、…。実在のアスリート、ミルカ・シンの数奇な人生を映画化。インドとパキスタンの分離独立によって、苛酷な運命に曝された人々がいるのだ。ミルカを演じているのは、「闇の帝王DON ベルリン強奪作戦」などのヒット作を監督しているファルハーン・アクタル。体脂肪率5%という驚異の肉体改造のもと、見事な肉体美を見せてくれる。スポーツものだが、インド映画だからふんだんに歌やダンスが入る。(スコープ・153分・15年1月 日)

11月20日(木)イギリス・ブラジル合作「トラッシュ! この街が輝く日まで」Trash

 巨大なゴミの山の中から売れるゴミを拾いながら暮らしている少年の一人が、ある日、サイフを拾う。その中には、お金だけでなく、様々なものと共に、コインロッカーのキーが入っていた。サイフを探す警察が謝礼を出すというのを聞いたラファエルは、そのサイフ中身が何か重要なものであることに気付き、謎を解くために行動を始めるが、…。原作は架空の国だが、プロデューサーは、舞台をオリンピックが控えるブラジルのリオデジャネイロに設定し、リアリティを出すのに成功している。「リトル・ダンサー」からずっと力強く生きる少年たちの姿をテーマとしてきたスティーブン・ダルドリー監督の真骨頂とも言える骨太の作品。謎解きミステリーとしても、かなり高いレベルだ。3人の子どもたちをサポートするマーティン・シーンとルーニー・マーラが出しゃばって出ていないのもグッド。(スコープ・114分・15年1月9日)

11月14日(金)ドイツ・イギリス合作「あと1センチの恋」love, rosie

 ロージーとアレックスは、6歳からの幼馴染みで、恋の悩みから初体験の相談まで何のわだかまりも無くできる関係。しかし、本当の思いは、違っていた。だが、ちょっとした誤解が2人の運命を変えていく。イギリスの田舎町を出て、アメリカのボストンの大学に一緒に行こうと誘うアレックス。ところが、またもや予想外の出来事が起こって、2人は離ればなれに。とにかく、見ていてじれったいほどに、何度も何度もすれ違う2人。ここまで、すれ違う男女がいるんだろうか!?パソコン通信、メール、WhatsApp、Skypeと時代と共に、連絡方法が進化するのが面白い。でも、なぜ、“あの時”は、手紙だったんだ?(スコープ・103分・14年12月27日)

11月13日(木)アメリカ映画「シン・シティ 復讐の女神」Sin City A Dame to Kill For

 9年ぶり、待望の続編。まずは、マーヴのエピソード。自動車事故の前で目を覚ますマーヴは、何が起こったのかを少しずつ思い出していく…。そして、流れ者ギャンブラー、ジョニーが、街の絶対権力者ロアークにポーカー勝負を挑んでゆく…。さらに、私立探偵ドワイトは、彼の元に現れた魔性の女エヴァの依頼で、彼女の夫を殺害するが、…。そして、今やストリッパーになってしまったナンシーだったが、自分をかばって命を落とした正義の刑事ジョンの復讐のために、ロアークの屋敷に向かう…。バー“ケイディ”で繋がる4つのエピソードが独立して描かれていくのは、前作と同じだが、9年間の技術の進歩は、レベルを数段上げた出来になっている。ドワイト役がジョシュ・ブローリンに替わったり、デヴォン青木が妊娠中で、ミホ役をジェイミー・チャンがやっているが、ほとんどが9年前と同じキャストで演じているというのは、奇跡的だ。レディ・ガガが謎のウエイトレス役でカメオ出演。(ヴィスタ・103分・15年1月10日)

11月12日(水)日本映画「寄生獣」Parasyte Part1

 宇宙からやってきた寄生生物[パラサイト]が人間に寄生し、ほかの人間を捕食し始める。平凡な高校生・泉新一もパラサイトに襲われるが、辛くも脳まで達するのは防ぐことができた。しかし、右手に寄生したパラサイトは、瞬く間に人間の言語や文化を学び、自ら“ミギー”と名乗り、新一に共同生活を持ちかけてくる。ミギーの存在を隠しながら、普段通りの高校生活をおくろうとする新一。しかし、教師として赴任して来たパラサイトの田宮良子に正体がバレてしまい、監視されることに…。パラサイトの造形がかなりグロテスクで、ほかの人間を食べているシーンなど相当に気持ちが悪い。「人間の数が100分の1になったら、たれ流される毒も100分の1になるだろうか…」というのは、頷けるテーマだ。「完結編」の公開は、来年の4月25日。半年も先だ。(スコープ・109分・14年11月29日)

11月11日(火)アメリカ映画「ベイマックス」Big Hero 6

 サンフランシスコと東京をミックスしたような架空の街サンフランソウキョウ。14歳の少年ヒロは、科学が大好きで、自作でロボットを製作したりしていた。兄タダシの通う工科大学に飛び入学したいと思ったヒロは、タダシや仲間たちの応援のもと、驚異的な<マイクロボット>の発明に成功し、研究発表会で周囲を驚嘆させる。そして、めでたく、大学への入学を許可される。ところが、発表会の会場で火災が起こり、逃げ遅れたキャラハン教授を助けようと飛び込んだタダシは亡くなってしまう。失意に打ちひしがれたヒロだったが、ある日、彼の前に不思議なロボットが現れる。それが<ベイマックス>だった…。兄タダシの死で孤独に落ち込むヒロの傷ついた心を懸命にケアしようとするのが、マシュマロのように白くて太めのケア・ロボットというアイデアがユニークで面白い!短編「愛犬とごちそう」feast 6分も動物ものでほんわか。タダシの声を担当しているのは、韓国映画やTVにも出ている、韓国系アメリカ人のダニエル・ヘニー。(スコープ・102分・14年12月20日)

11月10日(月)アメリカ・イギリス合作「インタースティラー」Interstellar

 元テスト・パイロットのクーパーは、何百エーカーものコーン畑を栽培する農場で、義父のドナルドと2人の子どもたちを育てていた。しかし、疫病が蔓延し、植物は次々と壊滅していった。さらに、巨大な砂嵐が襲って来る。もはや、人類は地球に住むことは出来なくなってきた。そこで、クーパーは、土星の近くで起きたワームホールの出現を頼りに、地球に替わる惑星を探すため、宇宙船に乗り込んだ。そこから、人類の体験したことのない宇宙空間での壮絶な旅が始まるが、…。“人類が住むことのできる別な惑星を探す”というアイデアは荒唐無稽だ。だが、公害、汚染、原発、そして大災害の続く地球は、いつまで持つのか分からない。こんな時代がやってくるのかも知れない。クリストファー・ノーラン監督の描き出す宇宙空間は、すばらしく美しいが、その反面、リアルな恐怖を常に描き出している。空気のない世界は、本当に怖い!そんな思いの映像体験だった。こんな映像をフィルムで撮ったノーランは、凄い!(スコープ・169分・14年11月22日)

11月10日(月)日本映画「海月姫」Princess Jellyfish

 イラストレーターになる夢を抱いて、鹿児島から上京してきた月海(つきみ)は、クラゲをこよなく愛するオタク女子。住んでいるボロアパート「天水館(あまみずかん」で、鉄道オタクのばんばさん、三国志オタクのまやや、和物オタクの千絵子、枯れ専のジジ様という“尼〜ず”を組んでいた。ある日、行きつけの熱帯魚でトラブルになったところをかわいい女子に助けてもらうが、なんと女装趣味の美男子。蔵之助は、月海の女友だち、蔵子ということにして、天水館に出入りするようになり、“尼〜ず”の面々の生き方に影響を及ぼしていく。さらに、町の再開発プロジェクトで天水館取り壊しの危機が迫ってくる…。テレビアニメ化もされた大ヒット漫画の映画化で、出てくるキャラが立ちまくり。ばんばさんなんか、最初誰か分からなかった。能年玲奈は、「ホットロード」のような純愛ものより、コメディが向いている。それにしても、菅田将暉の女装がヤバ過ぎる。(ヴィスタ・126分・14年12月27日)

11月5日(水)日本映画「アオハライド」Ao-Haru-Ride

 高校2年生の吉岡双葉は、周りの友だちからハズされることを気にして、本音を言えない“友人関係”を保っている。そんな彼女の前に現れたのは、中学1年の頃につきあっていた洸だった。しかし、彼は、依然の洸とは、かなり違った雰囲気になっていた。一体、洸に何があったのか!?次第に空白の4年間の秘密が明らかになっていく…。今どき珍しい正当派の青春映画。アフラックのCMなどでブレイク中の人気女優・本田翼が本当にナチュラルな感じで悩める女子高生を好演。東出昌大クンが学ランで歩くと、どうしても「クローズ EXPLODE」のイメージが強い。同じ大股歩きだ。(ヴィスタ・122分・14年12月13日)

10月30日(木)日本映画「ミタケオヤシン」Mitakuye Oyasin

 現代美術のアーティスト、加藤翼は、日本だけでなく、世界各地で、“引き興し”や“引き倒し”というアートを行っている。そんな翼が、ネイティブ・アメリカンの居留地で、“引き倒し”をやる。テーマは、先住民への同化政策で受けた、彼らの想像を絶する虐げられた歴史だ。先住民の子どもたちが収容され、教育されていたボーディングスクールを“引き倒し”の素材に決めた翼は、パートナーと二人で、木材を組み立て始める。しばらくは遠くから様子を伺っていたネイティブの若者たちが作業を手伝いにやってくる。そして、“引き倒し”は、地域の人々を巻き込んで、小さいながらも人々を“連環”させていく。「ミタケオヤシン」とは、ネイティブ・アメリカン、スー族の言葉で、「すべてのものは連環している」という意味。アートもユニークだし、テーマの取りかたもユニークなドキュメンタリーだ。(ヴィスタ・80分・東京14年12月6日、福岡15年1月10日)

10月8日(水)日本映画「バンクーバーの朝日」The Vancouver Asahi

 19世紀末から戦前にかけて、多くの日本人が一獲千金を狙って、アメリカ大陸に渡った。しかし、移民の日本人は、人種差別を受け、低賃金で苛酷な肉体労働をさせられていた。そんな中、カナダ・バンクーバーの日本人街に一つの野球チームが誕生する。名前は、“バンクーバー朝日”。最初、身体の大きい白人チームのパワープレーに全く派が立たない日系人たち。しかし、バントを中心とした“細かいプレー”を使うことによって、次第に点を入れていき始める。そしてついに、白人リーグを制するまでに成長していく…。時代は、真珠湾攻撃の直前の1941年。さまざまな苦難の中で苛酷な生活を余儀無くされていた日系人社会に、こんな野球チームの話があったのだ。戦前のバンクーバーを再現するために、栃木県足利市に東京ドーム1個分の巨大なオープンセットを作って撮られたバンクーバーの町並みや野球場のシーンが豪華だ。そして、妻夫木聡、亀梨和也、池松壮亮など今を代表する若手人気スターたちの競演も豪華。フジテレビ開局55周年記念作品ということで、かなり豪華三昧だが、感動が今一つ伝わって来ない。(スコープ・133分・14年12月20日)

10月7日(火)台風の襲来が心配されましたが、無事、プサン映画祭から帰ってきました。連日、アン・ソンギ、カン・スヨン、イム・グォンテク監督、イ・ジェヨン監督、キム・ギドク監督などの韓国映画人だけでなく、渡辺謙、行定勲監督、篠崎誠監督などと歓談してきました。

10月2日(木)から7日(火)まで、第19回プサン国際映画祭にゲストとして出席。

10月1日(水)九州大学・伊都キャンパスでの「映画を通じて見るアジアと日本」の講議スタート。

9月30日(火)アメリカ・インド・アラブ首長国連邦合作「マダム・マロリーと魔法のスパイス」The Hundred-Foot Journey

 インドのムンバイでレストランを経営していたカダム一家は、選挙がらみの反対派の焼き打ちに会い、店を失ってしまう。仕方なく、ヨーロッパを放浪した一家は、南フランスの山間で、車が故障。そこで、その街の空家を借りて、レストランを建てようとする。ところが、その店の向かいには、ミシュランで1つ星を獲得するマダム・マロリーのフレンチ・レストランがあった。マダム・マロリーの抗議も何のその、パパはインド料理のレストランをオープン。2軒のレストランのバトルが始まる。加えて、カダム家の次男ハッサンとフレンチ・レストランのスーシェフ(副料理長)の「ロミオとジュリエット」物語も繰り広げられる。A.R.ラフマーンのインド音楽が全編を覆っていて、まるで、インド映画のようなノリの、かなりテンコ盛りのストーリー展開だ。頑固なパパをインド映画界の名優オム・プリが好演。奥さん役で、ジュヒ・チャウラがカメオ出演/(スコープ・122分・14年11月1日)

9月26日(金)日本映画「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」MIRACLE : Devil Claus' Love and Magic

 漫画家をめざしながら、ブックセンターで働く山本光は、世界的な照明アーティストのソヨンと出会い、すぐに恋に落ちてしまう。彼女を“運命の人”だと思い込み、向かいの家に住む、幼馴染みの杏奈に相談するが、なんとソヨンは、杏奈の仕事仲間だった。光の片思いを応援する杏奈だったが、彼女自身も子どもの頃から光に恋心を抱いていた…。まるで少女コミックのような原作は、山下達郎の名曲「クリスマス・イブ」から生まれたそうで、クライマックスには、その名曲がかかって、どこかで見たCM映像を彷佛とさせる。相葉雅紀の単独初主演作ということで、生田斗真が助人出演。“運命の人”役には、韓国からハン・ヒョジュを連れてきた。光の心の声を代弁するデビクロくんの存在がユニークだ。(ヴィスタ・115分・14年11月22日)

9月22日(月)アメリカ映画「6才のボクが、大人になるまで。」Boyhood

 メイソンは、テキサス州に住む6才の少年。大学でキャリアアップすると決めた母についてヒューストンに引っ越した彼は、そこで多感な学生時代を過ごす。アラスカから帰ってきた離婚した父との再会、母の再婚、そして初恋。周囲の環境の変化の中で、少年は確実に成長し、大人になっていく…。「ビフォア」シリーズで、同じ俳優たちを時間を経て、3度も共演させたリチャード・リンクレイター監督が、今度は、6才の少年を12年間もの間、撮り続けた奇跡の作品。その年齢の時でしか表現できない感覚や表情がこんなにも長い期間、記録されていったというのは信じられない。さらに、12年間もかかる映画製作を引き受けた映画会社があった、というのも凄い!ドキュメンタリーならあり得る話だが、この作品はれっきとした劇映画だ。だから、メイソンを演じたコルトレーン以外のキャスト、母親役のパトリシア・アークエットや父親役のイーサン・ホーク、姉役のローレライ・リンクレイター(監督の娘)などの俳優たちも12年間、同じ役を演じ続けたのだ。(ヴィスタ・165分・14年11月14日)

9月22日(月)今日から、西南学院大学での「フランス映画論I」の講議がスタート。88人。

9月19日(金)アメリカ映画「ヘラクレス」Hercules

 神々の王ゼウスと、人間の女性の間に生まれたヘラクレスは、恐るべき怪物と戦う《12の難業》を成し遂げ、伝説となった。時は流れ、紀元前358年、過去の悲劇に傷ついたヘラクレスは、5人の仲間たちを従え、賞金稼ぎとなっていた。そんな彼のもとに、トラキア王の娘が現れ、反乱軍の討伐を依頼される。トラキアの住民を兵士にするため訓練し、反乱軍に向かって行くヘラクレスたちだったが、そこには、意外な真実が隠されていた…。これまでのギリシャ神話と違って、ヘラクレスが神の子だという事実を否定してきた普通の人間だという設定が新鮮だ。筋肉流々としたドウェイン・ジョンソンのパワーにはビックリ。3Dで槍や弓矢がびゅんびゅん飛んでくるので、思わず避けてしまった!(3D・スコープ・98分・14年10月24日)

9月17日(水)アメリカ映画「イフ・アイ・ステイ/愛が還る場所」If I Stay

 名門ジュリアード音楽院への入学を目指し、チェロを猛練習中の高校3年生のミア。親友やボーイフレンドもいて、幸せな生活をおくっていた彼女を、ある雪の朝、突然の悲劇が襲う。一家が乗った車が事故を起こしたのだ。やがて、気がついたミアが見たのは、病院のベッドで意識不明の自分の姿だった。両親を亡くし、さらに可愛がっていた幼い弟までも失った彼女は、生きる望みを失ってしまう。生きのびるのか?それとも、家族の元へ旅立ってしまうのか?それを決めるのは、ミア自身だった。難しい選択を突き付けられるヒロインの苦悩を、時には激しく、時には静かに、演じわけるクロエ・グレース・モレッツの姿に涙が溢れてくる。見ているのがつらい設定の作品だが、“死”については、いつかは考えないといけない必然のテーマだ。(スコープ・107分・14年10月11日)

9月16日(火)韓国映画「レッド・ファミリー」Red Family

 威厳のある祖父、優しい夫、貞淑な妻、そして彼らを敬う娘というまさに理想の家族のような4人家族。しかし彼らは、北朝鮮のスパイ集団だった。彼らは、ケンカの絶えない隣の韓国人家族を“資本主義の限界”とバカにしていた。しかし、そのダメ家族が起こすさまざまなトラブルに巻き込まれていくうちに、“家族”というものの存在を理解し、考えを変えていく…。キム・ギドクのシナリオは、南北が抱える問題を、時にコミカルに、そして最後はシリアスに描き出し、感動を生み出す。かなり荒唐無稽に見える設定だが、実際、韓国ではあり得る話なのかもしれない。(ヴィスタ・100分・東京14年10月日、福岡11月)

9月12日(金)韓国映画「泣く男」No Tears for the Dead

 幼い頃にアメリカの砂漠に捨てられ、プロの殺し屋として育てられたゴン。ある晩、アメリカのクラブでロシアン・マフィアと韓国人ビジネスマンを殺害した彼は、誤ってユミという幼い少女の命を奪ってしまう。虚無感に苛まれた彼は、行方をくらますが、組織のボスは、ユミの母親であるモギョンの暗殺をゴンに命令する。これを最後の仕事にすることを決意した彼は、祖国・韓国へ。(スコープ・116分・14年10月18日)

9月9日(火)アメリカ・フランス合作「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」The Expendables 3

 スワジランドで、囚人護送列車を襲撃した傭兵軍団エクスペンダブルズは、創設メンバーの1人であるドクを奪還する。そして、CIAからの武器強奪ミッションを受けてソマリアに向かったバーニーは、そこで予期せぬ男を目撃する。バーニーと一緒にエクスペンダブルズを作った相棒でありながらチームを裏切ったコンラッド・ストーンバンクスだった。彼は、16年前にバーニー自身が殺したはずの男だった。思わぬ男の出現で冷静さを失ったバーニーたちは、追い詰められ、シーザーが狙撃され、重傷を負ってしまう。今回は、スタローン、シュワルツェネッガーに加え、悪役にメル・ギブソン、ギャラの件で降版したブルース・ウィリスの代わりのCIAのエリートエージェントをハリソン・フォードが演じていて、豪華さもエスカレートし、アクションの派手さも生半可なものじゃない!とにかく、テンコ盛りのスペクタクルが炸裂する。脱税で収監されていたウェズリー・スナイプスも、めでたく復帰して、自虐ネタのセリフを喋っている。(スコープ・126分・14年11月1日)

9月8日(月)日本映画「クローバー」Clover

 中学校の頃の彼氏がいつか迎えに来てくれるという夢のようなことを思い続けている新人OLの沙耶。そんな彼女の上司である柘植(つげ)は、華やかな女性遍歴を持つ将来有望なイケメンだが、沙耶のことはボロクソに怒るばかり。しかし、ある理由で2人は付き合うことに。最初はイヤがっていた沙耶だったが、柘植のちょっとしたやさしさを感じた彼女の気持ちは、次第に変化していく。人気少女コミックを原作にした典型的なラブコメで、破たんが無い。ノリとしては、TVドラマのニュアンス。武井咲のコメディエンヌぶりが天然だ。(スコープ・120分・14年11月1日)

9月5日(金)フランス・スイス合作「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」

 ピアニストとして、世界中のその名を知られるマルタ・アルゲリッチ。彼女には、父親の違う3人の娘がいた。中国人指揮者との間に生まれた長女リダ、忙しい母の代わりに妹の面倒をみた次女のアニー、そして、このドキュメンタリーの監督である三女のステファニー。有名ピアニストを母に持った3人の娘たちが語るマルタの自由奔放で、数奇な人生。実の娘だからこそ撮影できた貴重な映像で綴られる母、娘、そして、父親。音楽ドキュメンタリーだが、上質な家族ドラマでもある。ステファニーは、この作品を撮ることで、母親の人生を深く理解した。(ヴィスタ・96分・東京14年9月27日、福岡10月4日)

9月2日(火)中国映画「西遊記〜はじまりのはじまり〜」

 チャウ・シンチーが6年ぶりに帰ってきた!物語は、三蔵法師が孫悟空、沙悟浄、猪八戒と天竺を目指す前の、4人が出会うまでのストーリー。妖怪ハンターの玄奨は、川に現れて村びとを襲う半魚半獣の妖怪を退治して、人間の姿に変える。(後の沙悟浄)ところが、妖怪を諌めるための「わらべ唄 三百首」を歌い出すが、効果がない。そんな玄奨に向かって、師匠は、“お前には少し何かが足りない。修行に励め”と説くのだった。妖怪ハンターと妖怪のバトルシーンは、かなり大掛かりなセットと本格的なCGが合成されたもので、迫力充分だ。もちろん、チャウ・シンチーならではのナンセンスギャグもたっぷりある。それにしても、こんな極悪な孫悟空は、初めて見た。広東語でなく、北京語なのは、中国大陸マーケットを意識してのことだ。(スコープ・110分・14年11月22日)

9月1日(月)日本映画「まほろ駅前狂騒曲」Rhapsody in front of Mahoro Station

 2011年の「まほろ駅前多田便利軒」の大ヒットを受けて、2013年にはTVドラマ版「まほろ駅前番外地」のシリーズがあり、再び、映画版。多田と行天が再会してから3年。大晦日の夜、電話がかかってくる。そして、新年になって、5歳の少女が事務所にやってくる。彼女こそ、かつて行天が精子を提供した娘・はるだった。慣れない子どもの世話に悪戦苦闘する2人だったが、その頃、巷では、「家庭と健康食品協会」(HHFA)を名乗る怪し気な団体がまほろの住人たちを狙っていた。瑛太と松田龍平の生き方のうまくないコンビが絶妙だ。さらに、映画版なので、共演陣も豪華だ。こんなにタバコを吸うシーンが多いと、インドでの上映は無理だ。(ヴィスタ・124分・14年10月18日)

8月29日(金)フランス・ドイツ合作「美女と野獣」La Belle et la Bete

 バラを盗んだことで命を要求された父親に替わって、野獣の城に囚われることになった娘ベル。死を覚悟していたベルだったが、野獣が求めたのは、必ず夜7時にディナーの席に着くことだけだった。その夜、ベルは、全盛期を誇ったころの城と、プリンセスの夢を見る。かつてその城で何があったのか?なぜ、王子は野獣になったのか?隠されていた秘密が次第に明らかになっていく…。今では、ディズニーのアニメ版のほうがポピュラーになってしまった感があるが、もともとは、フランスのヴィルヌーヴ夫人が1740年に書いた小説が原作で、1946年にはジャン・コクトー監督による実写版が有名だ。今作は、コクトー版をリスペクトしながら、新たなる謎を解明していく。かつて、ドイツ映画の名作を数多く生み出してきたバーベルスブルグのスタジオに巨大な城のセットを建てて、ディズニー・アニメとは全く異なる、スケールの大きなスペクタクルが生まれた。(スコープ・113分・14年11月1日)

8月27日(水)フランス・ベルギー合作「ミニスキュル〜森の小さな仲間たち〜」Miniscule : La vallee des fourmis perdues

 森の中で平和に(3D・スコープ・89分・14年10月18日)

8月22日(金)アメリカ・イギリス合作「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」Guadians of the Galaxy

 宇宙をまたにかけるトレジャー・ハンター、ピーター・クイルは、巨万の富を夢見て、パワーストーン<オーブ>を盗み出す。ところが、<オーブ>は、銀河を滅亡させるほどの恐ろしい力を持っていて、<闇の存在>は、暗殺者ガモーラに奪還を命じる。さらに、賞金稼ぎのアライグマのロケットとその相棒の樹木型ヒューマノイドのグルートにも襲われる。そして、サンダー星の警察に捕らえられた4人は、銀河一危険な刑務所に入れられる。そして、そこで出会った破壊王ドラックスと共に、共通の敵である<闇の存在>と闘うことになるが、…。(スコープ・121分・14年9月13日)

8月19日(火)アメリカ・スペイン・フランス合作「記憶探偵と鍵のかかった少女」Mindscape

 ジョン・ワシントンは、他人の記憶に潜入して、これまでに数々の難事件を解決してきたベテランの記憶探偵。しかし、妻の自殺のショックで、現場から退いていた。そんな彼の元に、上司のセバスチャンからある仕事が持ちかけられる。それは、16歳の少女アナの絶食の理由を探ること。しかし、ジョンがアナの記憶の中で見たものは、…。どこまでが<嘘>で、どこまでが<真実>なのか?アナの記憶には、さまざまな謎が秘められている。そして、次第に驚愕の真相が明らかになっていく。他人の記憶に入り込むというアイデアは、非常に映像的に効果があり、その実態もユニークだ。スペイン発の本格派ミステリー。(スコープ・99分・14年9月27日)

8月18日(月)アメリカ映画「ジャージー・ボーイズ」Jersey Boys

 イタリア移民の労働者階級が住む場所として知られるニュージャージー。その街に生まれ育った4人の若者たち。16歳のフランキーは、理髪店の見習いとして働いていたが、彼の特別な歌声は誰もが認めるものだった。場末の酒場で歌っていたトミーに誘われてバンドに加わったフランキーは、夢だったシンガーへの道を歩み始める。クリント・イーストウッド御大・監督33本目は、伝説のPOPグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の成功と挫折のプロセスを描いたブロードウェイ・ミュージカルの映画化で、かなり荒っぽい時代がリアルに丁寧に再現されている。舞台でも主役を演じ、トミー賞に輝いたジョン・ロイド・ヤングが、独特のファルセットヴォイスを聞かせてくれる。TV画面の懐かしの「ローハイド」が出てくるのは、監督の指示ではなく、シナリオライターのアイデアだそうだ。(スコープ・134分・14年9月8日)

8月9日(土)今年の「第28回福岡アジア映画祭2014」で、日本初公開した日本映画「こっぱみじん」が、福岡市・中洲大洋でロードショー公開。我妻三輪子さんは、急病のため来られなかったが、中村無何有、小林竜樹、今村美乃、田尻裕司監督が初日舞台挨拶。撮影の裏話などをいろいろと聞かせてくれた。そして、その後のロビーでのサイン会には長蛇の列が出来た。

8月5日(火)日本映画「太陽の坐る場所」The Place Where the Sun Sits

 10年前、高校中の人気者だった高間「響子」は、いわゆる<クラスの女王>だった。友だちの輪の中心にいて、誰をグループに入れるか、ということも思いのままだった。しかし、ある日、彼女の前に同じ名前を持つ同級生「今日子」が現れる。彼女は、「響子」から「リンちゃん」という名前を与えられ、常に「響子」の影のように付き添っていた。しかし、ある事件が起こり、…。そして、10年後、「響子」は地元の放送局のアナウンサーになり、「今日子」は、東京に出て、人気女優「キョウコ」として活躍していた。二人のキョウコの間に何があったのか!?卒業から10年という時を経て、真実が明かされていく…。誰もが経験したことがある思春期の出来事が、痛々しく、リアルに描き出されていく。いつもは囁くような声で、セリフが聞き取りにくい矢崎仁司監督作品だが、今作のセリフは、聞き取り易かった。原作、監督など山梨出身者による山梨ローカル作品ということで、「花子とアン」で聞き慣れた山梨ことばがいくつか出てきたが、“てっ!”や“こぴっと”は、今じゃ使わないんだろうか?(ヴィスタ・102分・14年10月4日)

7月29日(火)フランス・カナダ合作「フルスロットル」Brick Mansions

 デトロイトの一角、高さ12mの壁で隔離された<ブリック・マンション>は、犯罪者たちの巣窟だった。そんな彼らが、中性子爆弾を奪い、起動させてしまう。何とか、爆発を阻止するために、潜入捜査官ダミアンに特命が下される。リュック・ベッソン製作のフランス映画「アルティメット」の英語版リメイクだが、ビルからビルへと飛び移っったりする驚異的なパルクールができるのは、ダヴィッド・ベルしかいないということで、彼が英語を習得して、相棒リノを演じている。パルクール恐るべし!ポール・ウォーカーの新たなアクション・シリーズになるはずだったが、彼は、2013年自動車事故で急逝。この作品が最後の主演作になった。RIP。(スコープ・91分・14年9月6日)

7月17日(木)日本映画「エイトレンジャー2」Eight Ranger ∞ 2

 2012年に公開され、スマッシヒットとなった関ジャニ∞主演のヒーローものの第2弾。あれから5年、八萬市(エイトシティ)は、ヒーロー、エイトレンジャーによって平和が維持されていた。年間犯罪発生率0%という「ゼロ・プロジェクト」によって、日本を変える平和のモデル都市に成長する八萬市。しかし、その陰で年間100人を越える行方不明者が発生していた。事件にエイトレンジャーが絡んでいるのでは、と疑った記者の西郷純は、ヒーロー協会に臨時秘書として潜入する。すると、次第に思いもよらない事実が明らかになっていき、…。2作目なので、堤幸彦監督得意のナンセンス・ギャグのオンパレードにも慣れてきた感じだ。前田敦子の男言葉が面白い!(スコープ・104分・14年7月26日)

7月17日(木)日本映画「STAND BY ME ドラえもん」STAND BY ME Doraemon

 何をやっても冴えない少年のび太の将来を案じたのび太の孫の孫セワシは、ネコ型ロボット・ドラえもんを連れて、22世紀からやってくる。そうか、ドラえもんは、こうやって、のび太の家にやってきたのか!?のび太のお世話係を嫌がるドラえもんに、セワシは、<成し遂げプログラム>をセットして、のび太を幸せにしない限り、22世紀に帰れなくしてしまう。仕方なく、のび太と暮らすことになったドラえもんだったが、次第に二人は仲良くなっていく、…。のび太に幸せになって欲しいドラえもん。しかし、のび太が幸せになれば、ドラえもんは、22世紀に帰らなければならない運命だ。果たして、ドラえもんの運命は!?こうやって、最初の物語を見ると、あらためて、ドラえもんのストーリーの奥の深さがよく分かる。ジーンとさせられる大人向けのドラえもんだ。3Dの映像もきれいで、新鮮だ。(3D・ヴィスタ・95分・14年8月8日)

7月15日(火)日本映画「舞妓はレディ」Maiko, A Lady?

(ヴィスタ・135分・14年9月12日)

7月3日(木)アメリカ映画「バトルフロント」Homefront

ジェイソン・ステイサム主演の作品と言えば、車や紳士服のCMのようにスタイリッシュ。そしていつも、エキセントリックで色気のある男を演じている。ところが、今回はちょっと違う。元腕利きの麻薬潜入捜査官が、母親を失った我が娘のために、田舎での再出発をしようと決意。かつて仕事で家庭を顧みなかった生き方から脱却しようとするのだが、父親に似て勝ち気な娘が転校先でのいじめに屈しなかったことが発端となり、過去に因縁があったマフィアに居場所を知られ、次第に大ゴトになっていく…。シルベスター・スタローンが自ら演じるつもりで書いたという脚本だが、初の父親役を演じるジェイソン・ステイサムの新しい一面が新鮮だ。さらに、舞台がニューオリンズというアメリカ南部なのも、今までの彼とは違った印象を深めているようだ。ウィナノ・ライダーがマフィア側の女役で登場しているのも、珍しい。(スコープ・100分・14年8月9日)

6月24日(火)日本映画「蜩ノ記」A Samurai Chronicle

 城内で刃傷沙汰を起こしてしまった壇野床三郎は、家老・中根兵右衛門から、罪を免ずる代わりに、(ヴィスタ・129分・14年10月4日)

6月19日(木)アメリカ映画「GODZILLA ゴジラ」GODZILLA

 いろいろとあったが、やっと東宝の御墨付きをもらった「ゴジラ」映画が完成。日本の雀路羅市の原子力発電所に勤めていたブロディ夫妻は、無気味な振動と電磁波を探知、調査するが、ジャンジラ原発は倒壊する。それから15年後の2014年、ブロディ夫妻の息子フォードは、父親ジョーと共に、事故のデータを回収しようとして、放射能汚染により立入禁止区域に侵入したため、拘束され、研究施設「モナーク」に連行される。そこには、巨大な繭があって、事故が起こった時と同じ電磁波を出していた。そして、その繭から巨大生物ムートーが誕生し、飛び去ってしまう。その頃、海の底から「ゴジラ」が現れ、ムートーを目指して、動き始める。芹沢博士は、放射線をエネルギーとするムートーと戦うために、「ゴジラ」がやって来ると推測する。そして、ついに決戦の時が、…。4時間近い長さになったものを短くしたそうなので、ちょっと強引な部分もあるが、観客が見たいのは、巨大怪獣の壮絶なバトルだ。そういった意味では、ゴジラと2匹のムートーの闘いは、壮大なスペクタクルに仕上がっている。(3D・スコープ・124分・14年7月25日)

6月19日(木)イギリス映画「サンシャイン 歌声が響く街」Sunshine on Leith 

 (スコープ・100分・14年4月8日)

6月18日(水)日本映画「るろうに剣心 京都大火編」Rorouni Kenshin : Kyoto Inferno

 ある日、剣心は、内務卿の大久保利通に呼び出され、そこで、剣心から“影の人斬り役”を引き継いだ志々雄真実(ししおまこと)が京都で暗躍していることを聞く。新政府に裏切られ、身体を焼かれ殺されたはずが、全身包帯の姿で甦った志々雄は、一大兵力を形成し、クーデターを狙っていた!“志々雄を討てるのは、お前しかいない”と大久保に依頼された剣心は、(スコープ・139分・14年8月1日)

6月17日(火)日本映画「2つ目の窓」Still the Water

 ユタ神様として、島人の心の拠り所になっていた杏子の母は、病を抱え、死期を迎えつつあった。しかし、“自分の命は、杏子につながっているし、いつか杏子が生む子どもとつながっていく”と命のつながりをやさしく語りかける。一方、多感な高校生の界人は、いつも男の絶えない母・岬のけがらわしさに怒り、幼い頃に別れた父親に会いに東京に行く。カンヌ映画祭コンペ部門3本目の河瀬直美作品ということだが、彼女の作品は、いつも頭でっかちで、観念的だ。“命がつながっていく”というテーマは分かるが、かなりイメージが先行していて、感動とまではいかない。奄美大島を舞台にしたというのは、自然の力を表すのに、大いに貢献しているとは感じたが、…。(スコープ・120分・14年7月26日)

6月16日(月)アメリカ映画「マレフィセント」Maleficent

 人間界の王国に待望のロイヤル・ベビー、オーロラ姫が誕生し、お祝のパーティーが開かれる。3人の妖精たちが次々に幸運の魔法をかけていく。ところが、3人目の番になった時、邪悪な妖精マレフィセントが現れ、姫に恐ろしい呪いをかけてしまう。呪いを心配した王は、姫を3人の妖精たちに山に隠れて育てさせる。そして、姫は、問題の16歳を迎えようとしていた…。マレフィセントは、オーロラ姫に呪いをかけた悪役だ。だが、彼女は、姫の成長を温かく見守るうちに、呪いをかけたことを後悔し始める。その葛藤のプロセスをアンジェリーナ・ジョリーが見事に演じ切っている。最初は違和感のあるCG合成マレフィセントの角だが、次第にアンジーにピッタリに見えてくる。(スコープ・97分・14年7月5日)

6月12日(木)日本映画「呪怨ー終わりの始まりー」Ju-on : The Biginning of the End

 小学校の臨時教員をしていた結衣は、教頭から3年3組の担任教員が急に退職したため、担任を依頼される。しかし、クラスには、空いた机があった。さっそく、ずっと休んでいる生徒・佐伯俊雄の家を訪問するが、その家は、何か無気味な空気に満ちていた。そしてその日から結衣の身に不可解な現象が起こり始める…。シリーズ最新作ではなくて、リブートという新しい物語スタートで、「呪怨」の物語がこうして始まったんだということが改めて理解できた。佐々木希のホラー抜擢はなかなか面白い。トリンドル玲奈の高校生役ってムリがあるんじゃない!?(ヴィスタ・91分・14年6月28日)

6月2日(月)アメリカ・イギリス・中国合作「トランセンデンス」Transcendence

 人工知能の研究を行っていた天才科学者ウィルは、大学での講演会の後、テロリストに撃たれてしまう。襲ったのは、反テクノロジーを標榜するR.I.F.T.というテロ集団。幸い、傷は浅く、回復も早かったが、銃弾に放射性物質が塗られていたため、容体が急変。医師の宣告は、余命4、5週間。一緒に研究をやっていた妻エヴリンは、ウィルの頭脳をスーパーコンピュータにインストールする。コンピュータの中で再生したウィルは、予期せぬ方向に使い始める。そして、2年後、巨大なソーラーパネルが立ち並ぶハイテク施設の中心で、ウィルは、進化していた。暴走するコンピュータというアイデアは、これまでにもあったが、今作では、人間の頭脳がコンピュータの中に入ったらどうなるのか!?という一歩進んだ設定で、より現実味を帯びている。近い将来、起こりうる世界だ。(スコープ・119分・14年6月27日)

5月30日(金)アメリカ映画「her 世界でひとつの彼女」her

祝!アカデミー賞脚本賞!他人に代わって家族や恋人への手紙を書く“代筆ライター”をやっているセオドアは、妻のキャサリンと離婚調停中。同じマンションに住む友人のエイミーは、新しい女性を紹介しようとするが、キャサリンへの思いを断ち切れないでいた。そんなある日、セオドアは、最新式“AI型OS(オペレーション・システム)”を自分のPCに取り込むと、最適化されたOSが起動する。画面から聞こえてきたのは“サマンサ”のセクシーな声。セオドアは、次第にサマンサの魅力に取り付かれていき、…。チャットの相手と恋に落ちるというのは聞いたことがあるが、PCの中のOSが恋人になるというのは、かなり荒唐無稽。しかも、OSが完全にパーフェクトじゃあないというのがミソかな!?道路を歩いているエキストラがなぜか中国人が多いと思っていたら、車の走っていない未来のロサンゼルスを表現するために、上海の浦東地区でもロケをしたそうだ。なるほど。(ヴィスタ・126分・14年6月28日)

5月26日(月)アメリカ映画「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」Parkland

 1963年11月22日、テキサス州ダラス、アメリカ合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディが暗殺された。そして、搬送されたのが、パークランド・メモリアル病院だった。激しい混乱の中、新人研修医のチャールズ・“ジム”・キャリコ、チーフ研修医マルコム・ペリー、ベテラン看護師のドリス・ネルソンらが懸命に救急処置を施すが、…。ケネディ暗殺事件を病院の側という新しい方向から検証した異色作。病院内を縦横に撮り回るキャメラが、臨場感を盛り上げている。しかし、オズワルドも同じ病院で、同じ医師に診られていたとは、何たる偶然。アメリカの人にとっては、パークランドという名前は、有名なんだ。トム・ハンクスが製作に名前を連ねていて、長男のコリン・ハンクスが“遺体を州外に移動させてはならない”と主張する外傷センターのベテラン医師を演じている。(ヴィスタ・93分・14年7月5日)

5月22日(木)日本映画「ホットロード」Hot Road

 中学2年生、14歳の少女・和希は、母親のことが嫌いで仕方がなかった。それは、母が好きでもない父と無理矢理結婚させられ、父が亡くなった後、かつて好きだった男と不倫しているからだった。そんな母に反抗するために、万引きをして、補導される和希。ある日、彼女は、ガソリンスタンドで働く春山という青年と出会う。彼は、湘南を走る暴走族<NIGHTS>の切り込み隊長だった。春山に惹かれていく和希。そして、…。「あまちゃん」でブレイクした能年玲奈主演の青春作品。少女コミックの映画化だが、時代が暴走族が幅を聞かせていた1980年代で、かなり古臭い。「あまちゃん」に熱狂していた世代には、合うのだろうか!?(スコープ・119分・14年8月16日)

5月21日(水)日本映画「渇き。」The World of Kanako

 元刑事の藤島は、かなりのダメ男。そんな男に離婚した妻から、失踪した娘・加奈子を探してほしいという電話。久しぶりに家に帰り、娘のカバンから優等生に相応しくないブツと、見知らぬ少年との2ショット写真を見つけた藤島は、その写真を手に娘の捜索に乗り出す。加奈子の高校の同級生、森下と長野に会った藤島は、加奈子が松永らヤバイ連中と付き合いがあることを突き止めるが、…。娘の交友関係をたどっていく先々で、次第に明らかになっていく“知らない加奈子像”に戸惑いを隠せない藤島は、やがてとんでもない暴走を始める。役者というのは、とんでもない役もやってみたいんだろう。役所広司がよくこんなダメで凶暴な役を引き受けたものだ。さらに、共演陣のチョー豪華だ。これは、かなり物議を醸す問題作だ。(スコープ・118分・14年6月27日)

5月21日(水)アメリカ・フランス合作「ラストミッション」3 Days to Kill

 余命3ヶ月と宣告されたベテランCIAエージェントのイーサンは、残された人生を別れた家族と過ごそうとパリに行く。しかし、ワーカホリックで家にいることのほとんど無かった彼と思春期の娘ゾーイはすれ違いばかり。そんな中、女エージェントのヴィヴィが、病に効く試験役をエサに最後の仕事を持ちかけてくる。それは、凶暴で冷酷なテロリストを抹殺するという危険な仕事だった。ケヴィン・コスナーが久しぶりにスパイに扮して、渋くて強い父親を熱演。だが、リュック・ベッソンの脚本なので、随所にギャグが入っていて、ハリウッドアクションとは一味違ったテイストだ。(スコープ・117分・14年6月21日)

5月20日(火)アメリカ映画「ノア 約束の舟」NOAH

 ノアは、ある夜、驚愕の夢を見る。それは、堕落した人類を滅ぼすために神が新しい世界を創るという啓示だった。大洪水が来るとしったノアは、妻ナーマと3人の息子たち、そして養女イラと共に、罪のない動物たちを守るための巨大な箱舟を創り始める。しかし、ノアの計画を知った宿敵トバル・カインが舟を奪おうと、襲ってくるが、…。旧約聖書の「創世記」に記述されてる「ノアの箱舟」伝説を壮大なスケールで映像化。もちろん、多量のCG映像も含まれるが、リアルに創られた巨大な箱舟のセット、そして、アイスランドで撮られた大自然のスケール感が凄い。さらに、次第に明かされていくノアの本当の計画が驚愕させられる。地震、津波、さらに原発事故という日本、そして世界の未来を考えなければならない時だ。(ヴィスタ・138分・14年6月13日)

5月17日(土)日本映画「醒めながら見る夢」The undying dream we have

 演劇の演出をやっている優児には、かつて付き合っていた亜紀という女性がいたが、彼女は事故で亡くなっていた。しかし、その事実が受入れられない優児には亜紀の姿が見え、極秘に結婚したことになっていた。次第にやつれていく優児のことが心配になった劇団の竜也が様子をみにくるが、一方、五郎からの手紙を読んだ亜紀の妹・陽菜は、縄師の五郎の元を訪ねるが、…。辻仁成の2011年の音楽劇を自ら、監督したものだが、かなり観念的で、ついていくのが大変だ。陽菜役の石原杏奈が不思議な魅力を醸し出している。(ヴィスタ・110分・14年5月17日)

5月16日(金)韓国映画「怪しい彼女」Miss Granny 

 オ・マルスンは、口の悪さと頑固さでトラブルばかり起こしている70歳のおばあさん。そんな彼女が、「青春写真館」で写真を撮ると、50歳若返って、20歳の頃の麗しい容姿に戻ってしまう。最初は戸惑うマルスンだったが、“このまま死ぬのは可哀相だからと神様が機会をくれたんだ”と楽観的に考えた彼女は、チリチリパーマの髪型を変え、オシャレな服に着替えて、「オ・ドゥリ」として、新しい生活を始める。そして、ある日、シルバーカフェでカラオケを熱唱していたドゥリは、孫のジハのアマチュアバンド「半地下(パン・ジハ)」に誘われ、ボーカルをやる羽目になり、…。50歳も若返るなんて、理屈では考えられない荒唐無稽な設定だが、その設定によって、世代間のギャップがクロースアップされていく。とても笑えて、そして泣けるストーリー。韓国も50年前は、厳しい貧困の時代だったのだ。(ヴィスタ・125分・14年7月11日)

5月13日(火)日本映画「好きっていいなよ。」Say "I Love You".

 小学校の時に裏切られたことがきっかけで人と向き合うことを止めてしまった16歳の女子高生・橘めい。ある日、ふとした誤解から、学校一のイケメン・黒沢大和にケガをさせてしまう。だが、大和は、めいのことが気に入って、一方的に友だち宣言し、ストーカーから守るためにキスをしてしまう。孤独で独りぼっちだっためいの世界がどんどん変わっていく。そして、大和の気持ちも変化し始める。今も連載中の“恋愛バイブル”的少女コミックの映画化で、あり得ない展開も、お約束。「あまちゃん」でブレイクした福士蒼汰と川口春奈のW主演なのでヒット間違いなし。脇を固める共演陣には、見たことがない若手も多いが、ティーンエイジャーには向いているんだろう。きっと。(ヴィスタ・103分・14年7月12日)

5月8日(木)日本映画「超高速!参勤交代」Mission Impossible: Samurai

 参勤交代とは、徳川幕府が1年おきに江戸と国元の間を往復させ、大名に将軍への忠誠を示させるもの。その目的は、大名の力を弱めることだった。1年ぶりに故郷に帰ってきた湯長谷藩の藩士たちの元へ、“5日以内に江戸に参勤せよ”とのお達しが来る。このままでは、お家はお取り潰しになってしまう。そこで、藩主・内藤政醇と7人の藩士たちは、江戸に向かって走り始める。しかし、途中には次々とピンチが待ち受けていた。果たして、彼らは、無事、江戸に参勤できるのか!?難関を奇策でくぐり抜けていく弱小貧乏藩の侍たちの姿は、いささか“うまく行き過ぎ”の感もないではないが、まさにエンターテインメントなファンタジー時代劇だ。(ヴィスタ・119分・14年6月21日)

4月23日(水)イギリス・南アフリカ合作「マンデラ-自由への長い道-」Mandela : Long Walk to Freedom

 ヨハネスブルクで弁護士として働いていたネルソン・マンデラは、友人の死をきっかけに反アパルトヘイト運動にのめり込んでいく。政府の政策がさらに強硬化する中で、ANC(アフリカ民族会議)に入党したマンデラは、ウムコント・ウェ・シズウェ(民族の槍)という軍事組織を結成し、武装闘争に走る。そして、数々のテロ行動の末、1962年に逮捕、1964年に国家反逆罪で終身刑の判決を受ける。それから、27年間の長い牢獄生活が始まる。ニュースやドキュメンタリーなどで、断片的には知っていたマンデラの人生だが、その裏には、さまざまな葛藤があった。若い頃は、かなり女性関係も激しく、3度も結婚していたのは、知らなかった。マンデラ本人と親交の厚かったボノ率いるU2が、主題歌「オーディナリー・ラブ」を進んで提供している。(スコープ・147分・14年5月24日)

4月22日(火)アメリカ映画「ニード・フォー・スピード」Need for Speed

 ニューヨーク州マウントキスコという小さな町で、父親の遺した自動車修理工場を営むトビー・マーシャルは、週末の夜になると、仲間と共に非合法のストリート・レースに繰り出す若き天才ドライバー。しかし、ライバルのディーノの誘いに乗った公道レースでトビーは親友を失い、無実の罪で投獄されてしまう。仮釈放で刑務所を出たトビーは、ディーノへの復讐のために、年1回開催される全米最大のストリート・レース・グランプリ「デレオン」に参加しようと、ニューヨークから開催地サンフランシスコを目指すが、途中には様々なトラブルが待っていた。極力CGを使わず、本物のカー・レースにこだわったシーンの連続で、まるで車に乗っているかのような迫力が味わえる。「ワイルド・スピード」に対抗して、新たなカー・アクション・シリーズの誕生か!?(スコープ・131分・14年6月7日)

4月18日(金)日本映画「私の男」My Man

 大地震による津波で家族を失った10歳の少女・花は、遠縁だと名乗る男・淳悟に引き取られる。孤独だったふたりは、北海道紋別の田舎町で寄り添うように生活をおくっていた。しかし、2人の関係は、次第に変化していく。それは、ただ寂しいからというだけの理由ではなかった。そして、事件が起きる…。流氷での危険な撮影があり、映像化不可能と言われていた桜庭一樹の原作に、「海炭市叙景」などの熊切和嘉監督が果敢にチャレンジ。最近、ソフトな役の多かった浅野忠信が骨太で不器用に生きる男を力一杯演じている。さらに、あどけない少女から大人の女性の色香までを18歳で演じ切った二階堂ふみが凄い!(スコープ・128分・14年6月14日)

4月9日(水)日本映画「MONSTERZ」MONSTERZ

 “男”は、生まれた時から、他人を操ることのできる特殊な能力を持っていた。彼は、少年の頃、母親に暴力を振るう父親を殺していた。銀行にお金を降ろしに来た人々を操り、自分のバッグにお金を入れさせる男。そんな男の前に、操ることの出来ない男、田中秀一が現れる。自分の力が通じない男の存在がどうしても許せない男は、田中が働くギター店を訪れ、田中を襲うが…。韓国映画「超能力者」のリメイクだが、韓国社会の階級問題が底辺に流れていた韓国版と違って、エンターテインメント性が強い。藤原竜也と山田孝之のバトルは、かなりホンモノ。ピタッと止る大勢のエキストラの働きがすばらしい。(スコープ・112分・14年5月30日)

4月8日(火)アメリカ映画「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」Captain America : The Winter Soldier

「アベンジャーズ」の戦いから2年、キャプテン・アメリカは、ワシントンDCにある国際平和維持組織S.H.I.E.L.D(シールド)の基地で、長官ニック・フューリーから、ある計画について明かされる。それは、平和維持のため、巨大空中母艦ヘリキャリアによって世界を監視するというものだった。しかし、何者かがその計画を利用しようとする前兆を感じた長官は、シールドの幹部アレクサンダー・ピアースに延期を進言するが、計画は続行される。そして、突然、長官の乗った車が襲撃される。そして、長官だけでなく、キャプテン・アメリカやブラック・ウィドウも、襲われる。そして、シールド全体が敵になってしまう。そして、キャプテン・アメリカに匹敵する戦闘スキルを身につけた最強の暗殺者“ウィンター・ソルジャー”が現れる…。果たして、黒幕は誰なのか!?デジタル技術を駆使したSFXが冴え渡り、追っていくのが大変な派手なアクションがすばらしい!「マイティ・ソー2」は、ロキとソーのエピソードで、「アベンジャーズ」の続編というスタンスではなかったが、こちらは、今月、韓国ソウルでのロケが始まった「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」に続く続編。ますます、シリーズは、増加していく!(スコープ・136分・14年4月19日)

3月31日(月)香港より帰国しました。毎日朝早くから夜遅くまで、新作映画を見まくりました。侯孝賢(ホウ・シャオシエン)監督、ジュニー・トー監督、ピーター・チャン監督、フルーツ・チャン監督、ポン・ジュノ監督や、チョン・ドヨンを始め、古くからの友人たちとも再会し、談笑しました。

3月24日より31日まで、第38回香港国際映画祭、香港フィルマート、アジアフィルムアワード授賞式に出席します。

3月17日(月)アメリカ映画「ブルージャスミン」Blue Jasmine

 祝!アカデミー主演女優賞。かつてはニューヨーク・セレブの花としてリッチな毎日をおくっていたジャスミン・フレンチだったが、実業家の夫ハルとの結婚生活が破たんした今は、あらゆる財産を没収されて文無し状態。仕方なく、サンフランシスコに住む妹の質素なアパートに同居を始めるが、彼女には、セレブ時代の気分が抜けていなかった。さらに、彼女には、再出発のための生活プランも全くなかった。お金のために、歯科医の受付で働き始めるジャスミンだったが、…。とにかく、セレブ気分が抜けずに、精神安定剤とウォッカが離せないジャスミンを、ケイト・ブランシェットがいかにも情緒不安定といった“病的”演技で、演じ切る。こんな姉が突然やってきたら、本当に大変だ。ウディ・アレン監督には、そんな経験があるんだろうか!?最近、群像劇形式のロマンチック・コメディの多かった監督にしては、珍しくシリアスでペシミスティックな作品だ。(スコープ・98分・14年5月10日)

3月13日(木)日本映画「闇金ウシジマくんPart2」Ushijima the Loan Shark Part 2

 TVドラマから映画になり大ヒットした前作から2年、まさかの続編。ヤンキー青年マサルは、鍵のついたままのオートバイを乗り回し、ぶつけて壊してしまう。ところが、そのバイクは、暴走族「愛沢連合」のヘッド・愛沢のもので、ボコボコにされた上、闇金「カウカウファイナンス」へ連れていかれる。必死で助命するマサルを、ウシジマは、見習いとして雇うことにする。あてが外れた愛沢だったが、彼にはどうしても金が必要だった。それは、女闇金の犀原からの借金だった。凶暴な犀原は、業界ではウシジマの最大のライバルだった。一方、「クラブ・エアー」では、新米ホストの麗が崖っぷちに立たされていた。それぞれに悩みを抱え、借金を抱えた人々の生存競争が始まる。果たして、最後まで生き残るのは誰か!?TV「Season 2」から出ている情報屋の戌亥(いぬい)役で、綾野剛が参加、一人だけマトモなキャラだ。前作が相当強烈な内容だっただけに、今回の物語は、結構マジメなウシジマくんだ。(ヴィスタ・133分・14年5月16日)

3月10日(月)アメリカ映画「8月の家族たち」August: Osage County

 父親が失踪したと知らされ、オクラホマ州オーセージ郡にある実家に久しぶりに集まった三姉妹。真面目すぎて暴走しがちな長女バーバラと、マリファナ好きな娘、別居中の夫。子どもたちの中で、ただ一人地元に残った次女アイビー。自由奔放に恋愛を続ける三女カレンと、その婚約者。そんな娘たちを、気が強く毒舌家の母バイオレットと、その妹家族が迎えるが、…。洪水のようなウィットに富んだセリフのぶつかり合いは、さすが、有名なトレイシー・レッツの舞台劇の映画化だ。共にアカデミー賞にノミネートされたメリル・ストリートとジュリア・ロバーツのバトルが激しい!(スコープ・121分・14年4月18日)

3月8日(土)日本映画「子宮に沈める」Sunk into the Womb

 2年前の福岡アジア映画祭で上映した「体温」の緒方貴臣監督の新作が福岡でもついに劇場公開。夫に一方的に別れを告げられ、主人公・由希子は、幼い娘の幸(さち)、まだ赤ん坊の息子・蒼空(そら)との3人の生活を始める。しかし、毎日の長時間労働、家事、子育て、さらに経済的に追い詰められていく。そして、夜の仕事へ。さらに、憂さ晴らしのためにホストクラブ通いが始まる。そして、ある日、由希子は、子どもたちの食事を作って、家を出ていく。2度と帰らないつもりで、…。追い詰められていくシングルマザーの育児放棄の問題は、一筋縄では語れない。上映後、緒方貴臣監督と主演の伊澤恵美子さんの舞台挨拶があり、その後、交流会にも参加して、楽しく会話することが出来た。(ヴィスタ・95分・東京13年11月9日、福岡14年3月8日)

3月7日(金)日本映画「ぼくたちの家族」Our Family

 物忘れが激しくなった母親・玲子は、長男・浩介の嫁・深雪の両親との夕食会の時、ぶつぶつ独り言を言い、突然叫び始めた。翌日、医者に行くと、脳腫瘍が見つかり、それも末期で、“余命一週間”と告げられてしまう。愕然となり、取り乱す父親と浩介に対して、いつもどおりにヘラヘアしていて、冷静を装おう次男の俊平。しかし、玲子の病状は急速に悪化し、記憶も曖昧になっていく。そして、これまで我慢してきた不満や本音が滝のように溢れ出してくる。家族は、とっくに崩壊していたのだ!「舟を編む」の石井祐也監督が、次に挑んだテーマは、「家族」。家族とは、いったい何なのか!?妻夫木聡、池松壮亮、原田美枝子、長塚京三の「家族」がリアルだ。(スコープ・117分・14年5月24日)

3月6日(木)ドイツ・カナダ・アメリカ合作「シャドーハンター」The Mortal Instruments: City of Bones

 SF、超能力、ヴァンパイアなどテンコ盛りのエンターテインメント。(スコープ・130分・14年4月19日)

3月4日(火)日本映画「クローズEXPLODE」CROWS EXPLODE

 あのヒットシリーズが新たなる展開を始める。「クローズZEROII」から1ヶ月後、新年度を迎えた鈴蘭高校では、“テッペン”の座を狙って、新3年生たちが次々と名乗りを挙げていた。まず、テッペンに一番近い男・強羅徹、そのライバルとされる高木哲次、お調子者を装おうキレ者・小岐須健一。しかし、2人の男の登場が鈴蘭の勢力図を大きく変えることになる。テッペン争いに興味を持っていない3年の転入生・鏑木旋風雄と、とにかく暴れまくる新1年生の加賀美遼平。接点がなく対照的な2人が鈴蘭史上最大の抗争の中心人物になっていく…。これから活躍していきそうな次世代若手俳優を大量に起用した新シリーズの始まりだ。TV「ごちそうさん」の西門役でブレイクした東出昌大の学ラン姿が新鮮だ。(スコープ・129分・14年4月12日)

2月21日(金)アメリカ映画「オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜」All is Lost

 出演者は、ロバート・レッドフォード、ただ一人。セリフもほとんどなく、黙々と壊れたヨットの補修や嵐からの脱出など、無言でやり続ける。まるで、ドキュメンタリーのようだが、見ているこちらも、次に何が起こるかハラハラドキドキで目が離せない。これこそ、映画の緊張感だ。スマトラ沖のインド洋を大型ヨットで航行していた男(“我らの男”ということで名前さえ出て来ない!)が浸水で起こされると、コンテナがヨットの船底にぶつかり、穴が開いてしまっていた。何とか水をくり出し、横穴を応急修理するが、無線機などは使い物にならなくなってしまう。その後、天候が悪化し、暴風雨が襲って来る。食糧や水はもつのか!?そして、助けはやって来てくれるのか!?極限状態に陥った人間には、何が出来るのか!?とにかく、“生きる”ことに執着した一人の男の究極のサバイバル・ドラマだ。76歳のロバート・レッドフォードが、こんな苛酷な撮影に挑んだ勇気に敬意を表したい。(スコープ・104分・14年3月14日)

2月21日(金)日本映画「青天の霹靂」Bolt from the Blue

 晴夫は、場末のマジックバーでバーテンをやっている売れないマジシャン、39歳。ある日、警察からの電話で、もうずっと会っていなかった父親の死を告げられる。警察に遺骨を受取りに行った晴夫は、ホームレスの父親が住んでいたという川原で、父親の遺品の箱を見つける。そして、そこで天からの稲妻のような衝撃を受け、40年前にタイムスリップする。するとそこには、若かかりし頃の父親と、自分を産む前の母親がいた!衝撃を受ける晴夫だったが、ダメ夫の父親を何とかするために、コンビを組んで、漫才マジックを始めるが、…。過去にタイムスリップして、かつての両親に会うというストーリーは、まるで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のようだが、そこまでかっこいい世界ではなく、かなり泥臭い、いかにも“日本的”内容だ。(スコープ・96分・14年5月24日)

2月19日(水)アメリカ映画「プリズナーズ」Prisoners

 感謝祭のお祝いで近くの友人のバーチ家を訪れたドーヴァー一家だったが、その家の娘ジョイと一緒に帰ったはずの6歳の娘アナが忽然と消えてしまう。バーチ夫妻と共に必死になって周囲を探すが、娘たちの姿はどこにもない。やがて、通報を受けた警察が、手配中のキャンピングカーを発見。運転席にいた挙動不振な青年・アレックスを連行し、尋問を行う。しかし、10歳児並みの知能しか持たないアレックスは、少女たちのことを知らない、と言うばかり。車の中から少女たちの指紋や持ち物などの物証は見つからなかった。48時間の拘留期限が過ぎ、釈放されるアレックス。しかし、絶対にアレックスが犯人だと確信する父親のケラーは、強行手段に出る…。何が何でも娘を救い出したい父親の暴走だが、どこまで許されるか、というのは、当事者でなければ、理解できない部分だ。舞台設定がペンシルヴェニア州となっているが、そのどんよりとした天気が、無気味な緊張感を高めるのに功を奏している。(ヴィスタ・153分・14年5月3日)

2月17日(月)日本映画「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」WOOD JOB!

 大学受験に失敗した勇気は、ふと目にしたパンフレットの表紙の女性につられて、街を抜け出して、林業研修プログラムに参加することにする。だが、ローカル線をいくつも乗り継いで降りたった駅は、ケータイの電波も届かない山奥のど田舎・神去(かむさり)村。研修所での最初の授業に付いていけず、脱落しようとする勇気だったが、表紙の女性が村に住んでいると知り、留まることにする。そして、実際の林業研修のため、中村林業に派遣された勇気は、凶暴でワイルドなヨキの苛酷な指導にパニくりながらも、少しずつ変化していく…。最近、酪農や林業などの肉体系ジョブが流行っているのか!?染谷将太のひ弱さと、伊藤英明の凶暴さの対比が面白い!それにしても、酪農牧場と林業一家の母親は、なぜ、西田尚美?(ヴィスタ・116分・14年5月10日)

2月13日(木)アメリカ映画「ロボコップ」Robocop

 1987年(日本公開1988年)に公開され大ヒットとなり、シリーズ化され、TVシリーズやアニメにまでなった作品の1作目を現代版にリブート。舞台は、未来のデトロイトと同じだが、ロボットが治安を維持しているのは、世界各地で、アメリカでのロボット配備は禁じられていた。そこで、アメリカでのロボット配備の世論を高めるために、オムニコープ社のCEOレイモンド・セラーズは、人間とロボットの融合を計画する。そこに、犯罪組織を捜査中に爆発事故に会い、身体の大部分を失ってしまった警官アレックス・マーフィが運び込まれてくる。ノートン博士は、脳と心臓、そして右手だけのマーフィを“ロボコップ”として、再生する。最初の作品が作られた80年代というのは、まだロボットというのがSFの世界だったのが、今や、ロボット工学は現実的なもので、警察の全犯罪データの転送など、非常にリアルになった。スーツは、全身ブラックで、前よりかなりスマートになったが、オリジナルへのリスペクト・シーンも多く、懐かしい気持ちにさせられた。でも、世界中がロボットに管理されるというのは、脅威だ。(スコープ・134分・14年3月14日)

2月5日(水)日本映画「ジョバンニの島」Giovanni's Island

 1945年、北方四島の色丹島に、10歳の兄・純平と7歳の弟・寛太が住んでいた。8月15日、日本は終戦を迎える。アメリカ軍がやってくると思っていた島民の前に現れたのは、ソ連の戦艦だった。島に上陸してきたソ連軍の兵士たちは、島民の財産を奪っていった。さらに、住居も奪われ、島民たちは厩舎などに追いやられ、純平たちが学んでいた小学校の教室も、ソ連の子どもたちに提供された。しかし、大人たちの事情とは関係なく、子供たちは、自然と心を通わせていく。平穏だった島が、ソ連軍に占拠され、厳しい生活を余儀無くされた島民たち。彼らには、日本本土への強制帰還命令が下り、まず樺太への悲惨な船旅が待っていた。そして、…。戦後、北方四島で、こんなことがあったのか!?なぜ、「ジョバンニの島」かというと、亡くなった母が宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」が大好きで、兄弟の名前は、ジョバンニとカンパネルラから名付けられ、ソ連から来た美しい少女ターニャに名前を聞かれた2人が、ジョバンニとカンパネルラと答えることから、兄弟は、その名で呼ばれたのだ。水墨画のようなタッチのやさしいアニメが印象的だ。(ヴィスタ・102分・14年2月22日)

2月3日(月)イギリス・アメリカ・フランス合作「あなたを抱きしめる日まで」Philomena

 ある日、年老いた母親・フィロミナが古いモノクロ写真を手に涙ぐむのを見た娘のジェーンが声をかけると、ついにフィロミナは、50年間隠し続けた秘密を語り始める。それは、1952年のアイルランドに遡っていく。10代のフィロミナは、未婚のまま妊娠し、修道院に入れられてしまう。そこでは同じような境遇の少女たちが、出産の面倒をみてもらう代わりに、一日中、洗濯や掃除などでこき使われていた。そして、50年前の今日、男の子を産んだのだ。アンソニーと名付けられた息子は、3歳の時、突然、養子に出されてしまう。そしてその後、何度修道院に問い合わせても、行方は分からなかった。娘のジェーンからこの話を記事にしないか、と誘われた元ジャーナリストのマーティンは、フィロミナと共に、ロスクレアの修道院を訪れるが、…。1940年代から70年代にかけて行われたカトリック教会による養子斡旋事業は、まぎれも無い事実だそうだ。気難しそうなジュディ・デンチ演じるフィロミナの50年間の苦悩が痛々しい!(ヴィスタ・98分・14年3月15日)

1月31日(金)日本映画「家路」The Way Home

 20年近く前に故郷を出たまま、音信不通だった弟・次郎が帰ってくる。しかし、震災で故郷は、立ち入り禁止区域となってしまい、誰もいなくなっていた。だが、次郎は、一人で田圃を耕し、一人で米を炊く。一方、兄の総一は、先祖代々受け継いできた土地を追われ、妻子と年老いた母と共に仮設住宅で不自由な生活をおくっていた。次第に明らかになっていく過去の葛藤。警戒区域である故郷で生きることを決めた弟・次郎が、バラバラになってしまった家族の心を結びつけていく。福島の苦しみというのは、簡単には分からないものだ。“しかし、人は前に進んでいかなければ、ならない”という強いメッセージを感じた。松山ケンイチの飄々としているが力強い演技に希望をもらった。(ヴィスタ・118分・14年3月1日)

1月30日(木)アメリカ映画「アナと雪の女王」Frozen

 祝!アカデミー賞。アレンデール王国の幼い姉妹、エルサとアナは、大の仲良し。しかし、エルサには触れるものを氷らせる秘密の力があり、次第に強くなるその力を制御することが出来なくなった彼女は、愛するアナを傷つけることを恐れ、部屋に閉じこもってしまう。やがて、エルサが王位を継ぐ日がやってくる。しかし、力を制御することが出来ずに、王国を永遠の冬にしてしまい、山奥に逃げ込んでしまう。アナは、エルサと王国を救うために、命がけで雪山に足を踏み入れるが、…。押し付けがましい設定でなく、すんなり入っていけるシンプルなストーリー。吹き荒れる雪や氷の細かい描写が精巧だ。そして、自然に出てくるような歌がまたいい。エルサ役のイディナ・メンデルの声量が凄い!(スコープ・短編「ミッキーのミニー救出大作戦」9分を含めて108分・14年3月14日)

1月30日(木)日本映画「白ゆき姫殺人事件」The Snow White Murder Case

 国定公園・しぐれ谷で、美人OL・三木が惨殺される。全身をめった刺しにされ、その後、火をつけて燃やされていた。そんな不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まる。被害者と同期入社の城野美姫だ。TV局のワイドショーの落ちこぼれディレクター、赤星は、彼女の行動に疑問を抱き、その足取りを追い、周囲の関係者のインタビューを元にスクープ番組を作って放送するが、…。湊かなえのベストセラー小説を「アヒルと鴨のコインロッカー」などの中村義洋監督が巧みに映画化。かなりややこしい話だが、インタビューやTwitterの投稿、ワイドショーの報道などを次々と繰り返し、次第に真実が明らかになっていく。インターネットでのブログの炎上などが盛んに報道される最近だが、うわさ話や妄想がいつのまにか本当の話になっていくさまが怖い!(スコープ・126分・14年3月29日)


1月29日(水)九州大学伊都キャンパスでの今学期の講議終了。

1月29日(水)日本映画「銀の匙 Silver Spoon」Silver Spoon

 札幌のエリート進学校に通いながらも挫折した八軒(はちけん)勇吾は、帯広の大蝦夷農業高校に入学する。農場をやっている家からやってきたクラスメートに比べ、八軒には、将来の夢が無かった。しかし、厳しい酪農実習や馬術部の活動などで、彼の考え方は次第に変化していく。そして、彼を見放した父親との関係も変わっていく。全寮制の農業高校という、エンターテインメントとは懸け離れたところを舞台に、ちょっと異色な青春ドラマが展開される。何事にもやる気のない主人公・八軒をSexy Zoneの中島健人がとぼけた感じで飄々と好演。今ドキの高校生を演じる脇役陣もなかなかリアルでいい。(ヴィスタ・111分・14年3月7日)

1月28日(火)イギリス映画「ワン・チャンス」One Chance

 ポール・ポッツの奇跡のオーディション番組の映像は、何度も見たことがある。だが、彼の人生は、こんなに不運と挫折に満ちていたとは!?ウェールズに生まれ育ったポールは、子どもの頃からイジメられっ子だった。唯一の自慢は歌声で、聖歌隊で歌いながら、オペラ歌手になることを夢見ていた。しかし、そんなチャンスは、簡単に訪れるはずはなく、大人になっても両親の家にパラサイトし、街の小さなケータイショップでバイトするポール。そんな彼にも彼女が出来、イタリアに留学するが、…。ポール・ポッツにそっくりなジェームズ・コーデンにとっても、初めて主役を張れる、文字どおり“奇跡のワン・チャンス”映画だ。(スコープ・104分・14年3月21日)

1月27日(月)アメリカ映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」The Wolf of Wall Street

 大金持ちになるという野心を持って、22歳でウォール街にやってきたジョーダン・ベルフォート。6ヶ月後、正規のブローカーの資格を得るが、取引の初日が“ブラック・マンデー”で会社は倒産。しかし、いかがわしいペニー株の仕事を得て、着々とのし上がっていく。そして、26歳で、ガレージを借りて、証券会社ストラットン・オークモントを設立。そこからは、飛ぶ鳥を落とす勢いで、会社を巨大にしていく。巨万の富を得たジョーダンたちは、その金を、ドラッグ、セックス、パーティーなどに惜しみなく使っていく。1980年代後半から90年代というのは、金融界が信じられないほど無秩序で、法律が取り締ることが出来なかった時代なのだ。あぶく銭を得てドラッグ漬けで滅茶苦茶なことをする主人公を演じるレオナルド・ディカプリオの顔が時折、ホラー映画のようになるのが、異常さを増幅させている。日常とは違う異常さを表現するのに、パーティーなどのシーンが延々登場するが、3時間は長い。(スコープ・179分・14年1月31日)

1月27日(月)アメリカ・イギリス合作「それでも夜は明ける」12 Years a Slave

 祝!アカデミー賞作品賞・助演女優賞。1841年、ニューヨークに住むバイオリニストのソロモンは、生まれた時から自由証明書で認めれた自由黒人だった。ある日、ワシントンでの演奏を終えた彼は、その成功を興行主と祝い、酔い潰れてしまう。ところが、翌朝目覚めてみると、身体を拘束されていた。そして、船に乗せられ、ニューオリンズの奴隷市場へ。そして、ソロモンは、農園主のフォードに買われ、奴隷としての生活が始まる…。11年8ヶ月と26日間の真実が突き詰めるアメリカの歴史。本当にこんな時代があったのだ。製作は、かなり難航したと聞いているが、プロデューサーとして名乗りを挙げたブラッド・ピットの力で、多くの大物俳優たちが協力してる。それも、ほとんどがアメリカ人ではない、というところが、ハリウッドがいかに保守的かということを表している。(スコープ・134分・14年3月7日)

1月23日(木)日本映画「神様のカルテ2」In His Chart 2

 一止(いちと)が勤める本庄病院に大学時代の同期だった進藤辰也が赴任してくる。かつて“医学部の良心”と言われていた辰也だったが、勤務時間が終る17時には帰ってしまい、時間外の呼び出しにも応じないと、すこぶる評判が悪い。一止は、そんな辰也の行動に疑問を感じ、かつての親友と衝突してしまう。辰也には、一止に言えない悩みがあったのだ。その頃、一止の恩師である貫田内科部長が倒れてしまい、…。大ヒットになった2011年の前作では、病院に見放された末期がんの患者に最後まで寄り添った内容だったが、今回は、医者とその家族のかかわり合いに深く入り込んでいく。櫻井翔と宮崎あおいのコンビは、今回も息ぴったり。新たな参加となる藤原竜也も力まず、スマートな演技だ。サラ・ブライトマンの主題歌は、映画のために書き下ろされたオリジナル。(スコープ・116分・14年3月21日)

1月23日(木)アメリカ映画「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」Nebraska

 (スコープ・115分・14年2月28日)

1月22日(水)日本映画「偉大なる、しゅららぼん」Great Shurara-bon

 琵琶湖から授かった特別な力を操る日出(ひので)家と棗(なつめ)家は、江戸時代から1000年以上もの間、対立してきた。そんな日出家の本家に、伝承してきた不思議な力の修業のため、分家の涼介がやってくる。本家の跡取りである淡十郎は、涼介に自分とお揃いの真っ赤な学生服を着せ、二人は、「殿」と「お供」の関係にさせられてしまう。そして、高校で同じクラスになってしまった棗広海(なつめひろみ)とのバトルも始まってしまう。絡み合う両家の因縁。そして、淡十郎のある行動が、街や歴史をも巻き込む大騒動に発展していく…。原作である万城目学の小説は、いつも荒唐無稽だが、今回は、かなりのスケールで、後半、怒濤のVFX。それにしても、濱田岳、岡田将生、渡辺大の高校生は、ふけ過ぎ。(ヴィスタ・114分・14年3月8日)

1月20日(月)日本映画「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」The Mole Song: Undercover Agent Reiji

 交番勤務の巡査・菊川玲二は、ある日突然、警察をクビになり、武闘派暴力団組織・数寄矢会に潜入し、合成麻薬MDMAの密売ルートを暴くこと、そして、数寄矢会の会長・轟周宝を挙げることを命じられる。仕方なく、闇カジノ「虎ジャガー」に潜り込み、数寄矢会傘下・阿湖義会の若頭“クレイジーパピヨン”こと、日浦匡也に気に入られ、組織に潜入した玲二だったが、そこには、次々とピンチが待っていた。冒頭から、全裸の生田斗真が車で暴走していて、後は、もう全力で、ギャグの連発。宮藤官九郎の脚本が、原作のコミックにぴったりだ。(スコープ・130分・14年2月15日)

1月20日(月)西南学院大学、「フランス映画論I」今学期の講議終了。

1月17日(金)フランス映画「17歳」Jeune & Jolie

 フランソワ・オゾン監督の新作は、17歳の少女の揺れ動く内面と外面の葛藤を描いた問題作。パリの名門高校に通い、裕福な家庭で何不自由なく育ってきたイザベル。しかし、彼女の中で、次第に何かが変化していく。夏、バカンスに訪れたリゾート地で、ボーイフレンドと初体験。だが、翌日、彼のことなどどうでもよくなっている。秋、放課後、母親のブラウスに着替えて、高級ホテルの部屋を訪れるイザベル。サイトで知り合った不特定の男たちと会っていたのだ。しかし、彼女の目的は、お金や欲情ではなかった。そして、事件が起きる…。オゾンは、17歳という微妙な時期の少女のアンバランスな状態を計算しながら、丁寧に巧みに描写していく。そんな不安定な少女イザベルをリアルに演じる“オゾンの新たなるミューズ”マリーヌ・ヴァクトの演技がまばゆい。季節の区切りにインサートされるフランソワーズ・アルディのもの悲しい歌が効果的だ。(ヴィスタ・94分・14年2月15日)

1月15日(水)日本映画「ゲームセンターCX」

(ヴィスタ・109分・14年2月22日)

1月14日(火)アメリカ映画「リディック」

1月9日(木)アメリカ・フランス合作「エヴァの告白」The Immigrant

 (スコープ・118分・14年2月14日)

1月6日(月)アメリカ・イギリス・ドイツ合作「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」Only Lovers Left Alive

 ジム・ジャームシュ監督4年ぶりの新作は、ヴァンパイア・ラブストーリー。アダムは、デトロイトのうす暗いアパートに住み、カリスマ・ミュージシャンとして活躍しているが、その実態は、吸血鬼。彼は、最近の人間の自己破壊的な行いを憂いていた。そんなある日、モロッコのタンジールに住む恋人のイヴがやってくる。久しぶりの再会で愛しあう二人だったが、イヴの破天荒な妹の登場が運命を変えていく。そして、ある夜、事件が起こり…。アダムの部屋は、クラシック・ギターやアンプ、レコードなど、レトロなアイテムがひしめき合うように展示されている。ジャームッシュ監督の音楽へのこだわりに満ち満ちているセットだ。「マイティ・ソー」や「アベンジャーズ」シリーズで邪神ロキを好演しているトム・ヒドルストンがかなり痩せて、孤高の吸血鬼を静かに演じているのが見ものだ。(ヴィスタ・123分・東京13年12月20日、福岡14年1月25日)

2014年1月1日(祝)新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。

12月26日(木)アメリカ・ニュージーランド合作「ホビット 竜に奪われた王国」The Hobbit : The Desolation of Smaug

 今年の最後を締めくくる試写は、壮大な人気シリーズ第2作の3D。ドワーフの王子として生まれたトーリン・オーケンシールドだったが、スマウグ(ドラゴン)によって、両親や故郷も失ってしまった。そんなトーリンに、ガンダルフは、“竜を倒して、王国を取り戻せ!”と激励し、東を目指す。旅の供は、12人のドワーフたちと、“忍びの者”ことホビットのビルボ・ハギンズだった。しかし、彼らの前には、次々と強敵が現れ、襲って来る。果たして、彼らは、無事に、“はなれ山”に辿り着くことができるのか!? 1作目の登場人物たちがいささか地味だったことに対して、今回は、オーランド・ブルームが10年ぶりに、エルフのレゴラス役で復活。さらに、スランドゥイル王の近衛隊長タウリエルは、映画オリジナルのキャラだ。エバンジェリン・リリーの闘いぶりが逞しく、見事にヒロインの座を掴んだ。今回の上映は、HFR(High Frame Rate:1秒48コマ撮影)ではなかったが、それでも、画質は良く、3Dもびゅんびゅん飛んでくる。HFRでも是非見たい!(3D・スコープ・161分・14年2月28日)

12月25日(水)日本映画「東京難民」Tokyo Nanmin

 半年前まで、時枝修は、普通の大学生だった。ところが、授業料の未払いで、大学を除籍。父親が借金を抱えて、失踪したのだ。家賃の滞納で、アパートを追い出された修は、仕方なくネットカフェ難民となり、日払いのバイトをしながら、生活することになる。お金のことなど何にも考えずにのうのうと生きてきた大学生が、自分の力だけで生きていなかければならなくなるのだ。楽に大金を稼ぎたいという願望は、危険なバイトに手を出すことになる。そして、その稼いだお金を…。一旦、“負のサイクル”に巻き揉まれると、そこから抜け出すのは、かなり困難だ。命を落とすような危険なことも待っている。そんな“危ない日本”を、今こそ、考える時だ。(ヴィスタ・130分・14年2月22日)

12月24日(火)アメリカ映画「大統領の執事の涙」The Butler

 綿花畑の奴隷の息子として生まれたセシル・ゲインズは、お屋敷の女主人に雇われ、ハウス・ニガー(家働きの奴隷)として、さまざまな礼儀やしきたりを身につける。しかし、そのまま、その屋敷にいては、いつか殺されると予想し、町に出る。そして、ある事件がきっかけで、見習いから高級ホテルのボーイになる。そしてさらに、その仕事ぶりを認められ、遂にはホワイトハウスの執事に抜擢される。そこには、世界を揺るがすさまざまな事件があった。キューバ危機、ケネディ暗殺、ヴェトナム戦争、そして公民権運動。7人の大統領に仕えた黒人執事が見た激動のアメリカの歴史。まるで、2時間で学ぶ“アメリカの公民権運動と近代史”といった感じの教科書的な内容だが、ただそれだけでなく、セシルと息子ルイス、妻グロリアという家族の成長の物語でもある。アメリカの公民権運動の熾烈さが凄まじい!(ヴィスタ・132分・14年2月15日)

12月20日(金)アメリカ映画「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」Thor : The Dark World

 「アベンジャーズ」の戦いから1年。重力の異常を調査するために、ロンドンに来ていた天文物理学者ジェーンは、異次元空間に迷い込み、膨大な闇のエネルギーを吸い込んでしまう。それは、数千年前に、アスガルドのオーディンたちが、ダーク・エルフから奪い、地下深くに封印していた“ダーク・エルフの力=エーテル”だった。9つの世界が一直線に並ぶ時に、この力を使って、世界中を闇で覆ってしまおうと企むダーク・エルフのマレキスが、アスガルドを襲撃してくる。アスガルドは、このまま壊滅させられてしまうのか!?そして、ジェーンの命は!?1作目では、ソーの設定を理解するのに時間がかかったが、「アベンジャーズ」に続いて3度目の登場となると、アスガルドの設定にも、すんなり入っていける。今回の戦いは、かなり壮絶だ。ロキのウエイトもさらに大きくなっていく。そして、マーベルのシリーズも、どんどん進化していく。次の「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」は、4月19日の公開。(スコープ・112分・14年2月1日)

12月16日(月)日本映画「トリック劇場版・ラストステージ」TRICK the Movie : The Last Stage

 天才物理学者・上田次郎は、村上商事の加賀美慎一から、赤道地区の秘境にあるレアアース採掘のために力を貸してほしいという依頼を受ける。その地域に住む部族が立ち退きに応じないというのだ。その理由は、“聖なる土地を他の者に渡すわけにはいかない”という呪術師の言葉だった。いつものように、上田は、天才美人マジシャン・山田奈緒子に電話して、同行させることに。そして、船に乗った一行は、ピラニアがうようよいる川を上っていく。果たして、呪術師の未来を予知し、人を呪い殺すという不思議な力は、本物なのか!?“トリック”なのか!?シリーズ完結編ということで、初の海外ロケを敢行。マレーシアのボルネオ島で3週間もロケをしていて、ジャングルの中で繰り広げられる、いつもの“トリックワールド”に、もう笑うしかない!そして、14年間も続いた「トリック」は、意外な結末でファイナルを迎える。でも、本当にこれで最後!?(ヴィスタ・112分・14年1月11日)

12月11日(水)韓国・日本合作「ゲノムハザード/ある天才科学者の5日間」無名人/Genome Hazard

 デザイン会社に勤める石神武人が、結婚記念日を祝おうと帰宅すると、妻・美由紀が死んでいた。呆然とする石神の元へ、電話が鳴る。妻の美由紀だった。いったい、彼女は生きているのか?死んでいるのか?今度は、警察官がやってくる。ところが、部屋にあった死体は、消え去っていた。不審に思った警察官に連行される石神だったが、彼らが警察官ではないと見破り、逃走。偶然ぶつかった女性記者カン・ジウォンの車に乗り込んだ石神は、彼女の助けを借りながら、妻の生死を探ろうとするが、自分自身の記憶が曖昧なことに気付いていく。果たして、何が起こっているのか!?司城志朗のサスペンス小説に惚れ込んだ韓国のキム・ソンス監督が映画化したものだが、原作が書かれたのが、1998年ということで、題材にかなり古さを感じる。追い詰められる主人公・石神をガリガリに痩せて熱演する西島秀俊は、スタントマンなしの危険なカーアクションなど、相当に頑張っている。(スコープ・120分・14年1月24日)

12月10日(火)スペイン映画「アイム・ソー・エキサイテッド」Los amantes pasajeres / I'm so Excited!

 マドリードからメキシコ・シティに向かう飛行機に片方の車輪が出ないトラブル発生。緊急着陸を要請するが、なかなか着陸できる空港が決まらず、旋回を続けるばかり。そんな緊迫した状況の中、ホセラたち3人のオネエCAたちは、緊張をほぐそうと得意のダンスを披露するが、乗客は苛立つばかり。何とか、静めようとする3人は、今度は、怪しいオリジナルカクテルを振る舞う。するとハイになった乗客たちは、さまざまな秘密を暴露し始めるのだった…。ペドロ・アルモドバルの新作は、1980年代のヒット曲に乗せて贈る抱腹絶倒のフライト・コメディ。かなりエログロなギャグも多し。だからR15。(ヴィスタ・90分・14年1月25日)

12月7日(金)韓国・アメリカ・フランス合作「スノーピアサー」雪国列車/Snowpiercer

 2014年、人工冷却物質「CW-7」によって、氷河期に陥った地球では、世界を1年かけて走る列車「スノーピアサー」に乗り込んだ者だけが生き残り、すべての生物は絶滅した。それから17年がたった2013年、テイルと呼ばれる一番後方の車両で奴隷にような苛酷な生活を強いられていたカーティスたちは、ついに先頭車両に向けて、蜂起するが、…。「グエムルー漢江の怪物ー」のポン・ジュノ監督がフランスの(コミック)を原作に描き出すSFアクション大作。チェコのバランドフ・スタジオに100メートルにも及ぶ巨大な列車のセットを作り、3ヶ月にわたって撮影したということで、その重量感が凄い!韓国人キャストは、ソン・ガンホとコ・アソンの2人だけで、もうこれは韓国映画のスケールではない!(ヴィスタ・125分・14年2月7日)

12月4日(水)フランス映画「ファイア by ルブタン」FEU: Crazy Horse Paris

 美しい裸の女性たちが華麗なダンスを見せてくれるパリ・ナイトショーの最高峰クラブ「クレイジーホース」。その伝説のクラブで、2012年3月5日から5月31日までの80日間限定で上演され伝説となったクリスチャン・ルブタンのショーを3Dで再現。歩くためではなくダンサーが踊るための靴を作ったと語るルブタン。まさに、ショーのための芸術的なヒールが次々と画面を横切っていく。見事な裸体、脚、お尻の脚線美。それにしても、よくこんなそっくりな美女たちを揃えることが出来たものだ。(3D・ヴィスタ・81分・東京13年12月21日、福岡14年2月1日)

11月30日(土)土曜日だが、西南学院大学で「フランス映画論I」の補講。

11月25日(月)日本映画「劇場版SPEC〜桔(クローズ)〜・爻ノ編」SPEC close〜Crisscross

 当麻が感染した“シンプルプラン”のウィルスは、ふつうのインフルエンザウィルスであることが分かる。正体を現せたプロフェッサーJは、警察病院で保護されていたSPECホルダーたちを殺害する。そのあまりの残虐さに激怒した当麻は、ついにSPECを使い、先人類たちの霊体であるヤタガラスと共に飛び立っていく、…。SPECホルダーたちを殲滅しようとする“シンプルプラン”を敢行しようとするセカイと謎の白い女。彼らの真の狙いは、何なのか!?警察庁屋上で、当麻とセカイの最後の戦いが始まる。最後なので、これまで登場してきたSPECホルダーたちも大集合しての大会が繰り広げられる。そして、驚きのラスト。すごく奥深い結末だ。これで、2010年から続いていた「SPEC」も本当に終り。(スコープ・92分・13年11月29日)

11月22日(金)アメリカ映画「くもりときどきミートボール2・フード・アニマル誕生の秘密」Cloudy with a Chance of Meatballs 2

 故郷スワロー・フォールズを一旦離れたフリントと仲間たちだったが、マシンがまだ動いていて、食べ物と動物をかけ合わせた“フード・アニマル”が島を占拠していると知らされ、世界を救うために再び島に戻るよう、(3D・スコープ・95分・吹替え・13年12月28日)

11月21日(木)アメリカ・フランス・イギリス・日本・ドイツ合作「ブリングリング」The Bling Ring

 2008年から2009年にかけて起きた「ブリング・リング」事件の映画化。ハリウッドスターや人気モデルの家に忍び込んで、ブランド品を片っ端から盗み出していくニッキーたち5人の少年少女。彼女たちは、インターネットでセレブたちが留守にしていることや住所などを調べて、軽い気持ちで窃盗を繰り返す。彼女たちが悪質な犯罪だと感じていないというのは、盗んできた服を着た写真をFacebookなどにupしていることからもよく分かる。だが、彼女たちの冒険は次第にエスカレートしていく。ソフィア・コッポラ監督自身、巨匠監督の娘というセレブであり、事件を起こした少女たちの思いをある程度、理解できるところもあったんだろう。悪いことをしているのだが、イキイキしているティーンエイジャーたちの表情がなんともいい。実際のパリス・ヒルトンの家の中での撮影というのもビックリだ。パリスのルブタンが、28センチというのも驚き!デカ!(ヴィスタ・90分・13年12月14日)

11月19日(火)日本映画「黒執事」Kuroshitsuji

 オファーが殺到した1600万部突破の人気コミック、待望の映画化。幻蜂清玄伯爵の執事セバスチャンは、性格の悪さ以外は、万能にして完璧な男だった。彼は、伯爵の命と引き換えに、絶対的な主従関係を誓っていた。そんな伯爵家は、女王からの密命を受ける“女王の番犬”という裏の顔を持っていた。女王から大使館員の“連続ミイラ化怪死事件”の解決を命じられた2人は、走査に乗り出すが、…。コミックが原作なので、理屈の通らない設定は、分かるが、もう少し荒唐無稽さがあってもよかった。3年ぶりに映画復帰となる水嶋ヒロがドラキュラのようなメークが異様だ。かなりハードなアクションは、どこまで本人がやっているんだろう?剛力彩芽の男装は、どう見ても女性にしか見えない。山本美月(スコープ・119分・14年1月18日)

11月11日(月)イタリア映画「鑑定士と顔のない依頼人」La migliore offerta / The Best Offer

 ヴァージル・オ−ルドマンは、高額な美術品のオークションをコントロールする天才鑑定士。ある日、彼のもとへ両親が遺した絵画や家具を査定してほしいという依頼の電話がある。(スコープ・131分・13年12月13日)

11月8日(金)アメリカ映画「47RONIN」47 RONIN

 徳川綱吉の時代。どこからともなく赤穂に流れてきた異端児カイは、盟主・浅野内匠頭に助けられ、浅野の娘・ミカにも愛されて、郊外の小屋でひとり暮らしていた。彼は、浅野父娘のためなら、命を賭けてもいいと思っていた。綱吉が赤穂を訪れていたある夜、吉良上野介の側室ミズキに妖術をかけられた浅野は、吉良に切りかかって疵を負わせてしまう。この事件に怒った綱吉は、浅野に切腹を命じ、浅野家は取り潰しされてしまう。城を明け渡し、浪人となった大石蔵助は、吉良によって、地下牢に幽閉させれるが、一年後、解放され、仲間を集めて、…。「忠臣蔵」をベースにしたストーリーだが、キアヌ・リーブスを主演にすげるために、カイなる異端の浪人を生み出したのは、かなり強引。さらに、ヒロインとして、カイを愛する浅野の娘を加え、さらに、吉良の側室が妖術を使うという荒唐無稽さ。そして、アクション映画なので、もちろん、CGで生み出された怪獣やドラゴンが出てきて、3Dの派手なバトルが繰り広げられ、かなり“異端児”的な忠臣蔵が出来上がった。(3D・スコープ・121分・13年12月6日)

11月5日(火)日本映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」The Liar and His Lover

 「僕は妹に恋をする」「僕の初恋をキミに捧ぐ」に続く青木琴美大人気コミックの映画化第3弾。絶大な人気を誇るバンド“CRUDE PLAY”の全楽曲を手掛けているサウンドクリエーターの小笠原秋は、音楽業界のビジネスの中で、音楽が容易に消費されていくことに苛立ちを感じていた。そんなある日、マッシュルームのような髪型をした小柄な女子高生・小枝理子に出会う。そして、気紛れで“一目惚れって信じますか?”と言ってしまう。その問いに本当に“一目惚れしました”と言う理子。それから、二人の不思議な恋が始まる…。これまでにも「BECK」などでミュージシャンを演じてきた佐藤健なので、天才作曲家の雰囲気は、ピッタリ。それよりも、5000人のオーディションで選ばれたという理子役の大原櫻子の澄み切った歌声がすばらしい!CD発売は、当然だ。(スコープ・117分・13年12月14日)

11月4日(月)文化の日の振替休日なのだが、西南学院大学で「フランス映画論I」の講議。

11月1日(金)日本映画「かぐや姫の物語」The Tale of the Princess Kaguya

 誰もが知っている「竹取物語」のかぐや姫の話には、これまで描かれてこなかった部分があった。それは、かぐやが月で何の罪を犯して、地球にやって来たのか?ということ。そして、なぜ、月に帰ってしまったのか?ということ。竹の中から生まれてきたかぐやは、翁と媼の手で育てられ、自然の中で村の子どもたちと伸び々々と暮らしていた。しかし、竹の中から金や美しい布が出てきたことから、翁は、かぐやを“高貴な姫”にすべく、都に大きな館を買い、引っ越す。そして、お姫様修行が始まる…。山での楽しかった日々を思い出し、心を痛めるかぐや。そんな悩みなど関係ない殿方たちは、かぐやに求婚してくる。かぐやの望みは、位の高い屋敷に嫁いで“高貴な姫”になることでは、なかった!そして、彼女は、ついに…。屋敷を抜け出して、故郷の山に急ぐかぐやの疾走感がハンパない。まるで、スケッチ画が駆け巡っているように、斬新な描写だ。(ヴィスタ・137分・13年11月23日)

10月29日(火)アメリカ映画「ゼロ・グラビティ」Gravity

 地球から60万メートル離れた大気圏外で事件は起こる。軌道を回っているシャトル“エクスプローラー”のロボットアームにベルトで固定されたライアン・ストーン博士が、ハッブル望遠鏡に新しいスキャンシステムを設定しようとしていた。一方、反対側の地球の軌道上で、使用済みの衛星が故意に破壊され、その鋭利な破片が宇宙にまき散らされてチェーン・リアクションを起こし、どんどん大きくなるデブリ(破片)フィールドとなって、猛スピードで飛んできたのだ。衝突によってシャトルは破滅的なダメージを受け、ストーン博士とマット・コワルスキーの2人だけが生き残る。しかし、ヒューストンとの交信は断絶され、救出される可能性も断ち切られてしまう。無重力(ゼロ・グラビティ)の宇宙空間に取り残されてしまった2人に助かる道はあるのか!?宇宙での作業に従事する人々の数も次第に増えている現在、こういった事故も充分起こりうる。6ヶ月前からトレーニングしていたというサンドラ・ブロックの強靱的な肉体と運動能力が凄い!それにしても、酸素が無くなるという事態は、見ているこちらも苦しい!(スコープ・3D・91分・13年12月13日)

10月21日(月)アメリカ映画「キャリー」Carrie

 狂信的な母親に育てられたことで、ケータイも持たせてもらえず、いつも一人で学校と家を往復するだけの女子高生キャリー。学校では、何かにつけ、いじめられる存在だ。そんなキャリーへの悪質ないじめを目撃した体育教師デジャルダンは、罰としてランニングを命じるが、首謀者であるクリスは、拒否して、プロム(卒業ダンスパーティー)への参加を禁止される。キャリーに対するいじめを後悔したスーが、自分のBFトミーにキャリーの相手を頼み、プロムに出席することに。ところが、参加を禁止されたクリスたちは、とんでもないことを企んでいた。IT機器の進歩によって、ケータイで撮影した動画を使ったり、ネットで“超能力”について調べたりするシーンが加わっているが、基本のストーリーは同じ。ただ、キャリーの誕生シーンを始め、彼女の母親マーガレットの女性感が強く描き出されている。(スコープ・100分・13年11月8日)

10月17日(木)アメリカ映画「キャプテン・フィリップス」Captain Philips

 アメリカのコンテナ船マースク・アラバマ号は、援助物資5000トン以上の食糧を積んでインド洋をオマーンからケニアに向かっていた。ところが、ソマリア沖に入った時、2隻の不審なモーターボートが猛スピードで追ってくる。そして、非武装のアラバマ号は、たった4人のソマリア人海賊に占拠されてしまう。さらに、船員たちの命を救うために、船長のフィリップスは、自ら人質になってしまう。2009年に起きた実話の映画化だが、トム・ハンクスのスーパーヒーローぶりがあまりにもスマート過ぎて、本当にこんな行動をしたのだろうか?という疑問も生まれてくる。また、海軍特殊部隊ネイビーシールズのプロパガンダのようでもある。(スコープ・134分・13年11月29日)

10月14日(月)体育の日で祝日なのだが、西南学院大学で「フランス映画論I」の講議。

10月11日(金)日本映画「劇場版SPEC〜桔(クローズ)〜・斬ノ編」SPEC close〜Crisscross

 入院していた瀬文の元へやって来た当麻は、青池里子が娘の潤と共に行方不明になったことを伝える。その頃、“シンプルプラン”によってSPECホルダーを殲滅させようとする世界会議が開かれているが、日本代表“卑弥呼”は突然、計画の中止を訴え、反対する者たちを消してしまう。一方、潤は、大人に成長し、SPECを発揮し、里子を閉じ込める。そして、セカイと共に、自分たちを「先人類の末裔」と称し、ヤタガラスの舞う夜明けと共に愚かな現人類に審判が下されると宣言する。果たして、彼らの目的は何なのか!?当麻と瀬文は、人類を救うことができるのか!?野々村係長は、SPECホルダーだけに感染するというウィルスを手に入れるが、…。事態は、複雑に絡み合い、次第にスケールを大きくしていく。ああ、早く、「爻の編」が見たい!(スコープ・95分・13年11月1日)

10月9日(水)アメリカ映画「ウォールフラワー」The Perks of Being a Wallflower

 チャーリーは、高校に入学しても、友達が1人もいなくて、人の輪に入れない“ウォールフラワー(壁の花)”の存在だった。しかし、自由なはみだし者であるパトリックと、美しく輝くサムの出現が、チャーリーの人生を大きく変えていく。そして、彼の過去に秘められた“ある事件”も明らかになっていく…。学校でいつも独りだったチャーリーが、二人に出会い、希望に満ちた世界に踏み出す瞬間の高揚が、見ているこちら側にも伝わってくる。傷付きやすく、繊細だった10代の青春が眩しい!スティーブン・チョボスキーは、1999年に小説を出版し、映画化の要望を断り続け、期を熟するまで待った13年後、自らの手で監督を実現した。そこまでこだわりのある、私小説なのだ。そんなこだわりが、今、輝く若手スターたちによって再現された珠玉の青春映画だ。(ヴィスタ・103分・13年11月22日)

10月8日(火)台風24号が接近してくる中、ビートルの便を午前中に変更して、なんとかギリギリ、無事に帰国。プサンでは、キム・ギドク監督やポン・ジュノ監督、カン・ウソク監督、アン・ソンギ、カン・スヨンなどの映画関係者と再会し、談笑してきました。

10月3日から8日まで、第18回プサン国際映画祭にゲストとして出席します。

10月2日(水)今日から毎週、九州大学での「映画を通じて見るアジアと日本」の講議スタート。半年間の伊都キャンパス通いが始まった。

9月25日(水)日本映画「四十九日のレシピ」Recipe of 49 Days

 夫の浮気で離婚届を置いて、家を出た百合子は、母・乙美が亡くなったばかりの実家に帰ってくる。するとそこには、派手な格好の少女イモがいた。彼女は、依存症の少女たちの更正施設でボランティアをしていた「乙美先生」に世話になった生徒で、自分が死んだら49日間、家族の手助けをし、「四十九日の大宴会」をするよう頼まれたと言うのだ。そして、乙美がとある「レシピカード」を書き遺していることを伝える。こうして、母の遺したレシピに誘われ、「四十九日の大宴会」までの奇妙な共同生活が始まるが、…。子どもを産むことが出来ないことで苦しむ百合子を演じるのは、自然な苦悩を表現できる演技派の永作博美。亡くなってしまった後で、義理の母親の愛情を知り、女としての本当の幸せに気付いていく様が感動的だ。だが、なぜ、日系ブラジル人青年役が岡田将生なのか!?(ヴィスタ・129分・13年11月9日)

9月24日(火)アメリカ映画「恋するリベラーチェ」Behind the Candelabra

 日本ではあまり有名ではないかもしれないが、1950年〜70年代にかけて、ラスベガスのショーなどで活躍したピアノ・パフォーマー、リベラーチェ。黒ダイヤモンドの付いた75万ドルのミンクのケープや重さ約90Lの衣装、ロールスロイスで登場するなど、ド派手なステージで知られるピアニストだが、彼は、ゲイであることをひた隠しに生きてきたという事実があった。そんなリベラーチェが、最後まで愛していたスコット・ソーソンとの出会いから別れまでの半生を描いた異色のゲイ映画。本当にクセのあるリベラーチェを演じるのは、まさか、このような役をやるとは予想外のマイケル・ダグラス。さらに、最近はマッチョな役の多いマット・デイモンもブロンドヘヤーで、スコットを演じ切っている。さすが、プロ。このスコットの特殊メイクを担当した矢口浩が本年度のエミー賞に輝いている。(ハイビジョン・118分・13年11月1日)

9月23日(月)祝日だというのに、今週から西南学院大学での「フランス映画論I」の講議スタート。今年の後期は、休日授業が3日もある。

9月18日(水)日本映画「清須会議」The Kiyosu Coference

 天正10年(1582年)本能寺の変で、織田信長が死ぬ。すると、跡継ぎを巡って、2人の男がぶつかり合う。筆頭家老の柴田勝家と、後に豊臣秀吉となる羽柴秀吉。勝家は、信長の三男の信孝を推し、一方、秀吉は、次男の信雄を後継者にしようとする。それぞれの思惑がうごめきあう中、“清須会議”が開かれることになる。出席したのは、4人。勝家、秀吉に加え、勝家の参謀的存在の丹羽長秀、滝川一益が来ないので、急きょ代理で参加することになった池田恒興。相手の出方を伺い、なかなか本音を出さない面々。さまざまな駆け引きの中で、歴史を動かす“会議”が繰り広げられる。実際に行われたと言われる“会議”をテーマにしているが、そこは、三谷幸喜監督だけに、抱腹絶倒の本格派時代劇に仕上がっている。それにしても登場人物の多いこと。主役を張れる大物スターをこんな役で使っていいの!?(スコープ・138分・13年11月9日)

9月17日(火)日本映画「キタキツネ物語ー35周年リニューアル版ー」The Fox in the Quest of the Northern Sun

 1978年の大ヒット作をリニューアル。オホーツクの流氷に乗ってきたキタキツネのフレップは、愛する妻レイラと出会い、5匹の子どもに恵まれるが、自然の驚異は彼らの前に容赦なくのしかかってくる…。再編集版ではなく、ストーリーは、ほとんど同じだが、西田敏行の語りがローカルっぽくなって人情味が出ている。そして、最大の違いは、キタキツネたちが喋ること。これは、蔵原惟繕監督が見たら、どう思うんだろう!?オリジナル版が114分だから、17分短くなって、コンパクトになっているし、主題歌が山崎まさよしになっているが、個人的には、町田義人が歌い上げる「赤い狩人」のイメージが強く残っている。(ヴィスタ・97分・13年10月19日)

9月16日(月)ポルトガル映画「ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」Centro Historico

 ポルトガル発祥の地、ギマランイス歴史地区をテーマにした4人の巨匠たちによるオムニバス作品。アキ・カウリスマキ監督「バーテンダー」は、お客の少ないバーを経営する孤独な男の1日を描いたコメディー。セリフなしのパントマイム的な仕草がいかにもカウリスマキらしい面白さだ。ペドロ・コスタ監督「スウィート・エクソシスト」は、アフリカ移民であるヴェントーラが、エレベーターの中で出会った革命兵士の亡霊と語り合う風変わりな会話劇。「割れたガラス」は、欧州第2の紡績工場と発展しながらも2002年に閉鎖された工場で働いていた人たちの思い出が語られていく。ビクトル・エリセ監督、待望の新作だ。そして、最後の「征服者、征服さる」は、ギマランイスの起源でもあるアフォンソ1世のエピソードをほんの数分で紹介するマノエル・ド・オリヴェイラ監督の短編!104歳とは思えないユーモアのセンスだ。(ヴィスタ・「スゥィート・エクソシスト」のみスタンダード、96分・13年10月5日)

9月11日(水)アメリカ映画「ゴースト・エージェントR.I.P.D.」R.I.P.D

 ボストン警察のエリート警官ニックは、麻薬の売人で凶悪犯ガルザ逮捕の任務の途中、相棒ボビーに撃たれ、殉職してしまう。ところが、あの世に行くはずのトンネルをくぐり、天国に召された……はずのニックが、突然連れ込まれたのは、「P.I.P.D.」の一室だった。「R.I.P.D.」とは、現世にはびこる悪霊たちを取り締まる秘密組織。ニックは、ベテラン・エージェントのロイと組み、悪霊退治を始めるが、その前に、巨大な陰謀が立ち塞がってくる…。キャッチコピーにも、「メン・イン・ブラック」×「ゴーストバスターズ」と書いてあるけど、まさに、その線を狙った娯楽アクション。ジェフ・ブリジス演じるベテラン刑事が西部開拓時代のカウボーイだというのがいかにもウエスタン好きのハリウッドらしい。もっと、はじけた変わったゴーストが見たかった。(スコープ・96分・13年10月18日)

9月9日(月)日本映画「R100」R100

 大規模家具店に勤めるサラリーマンの片山は、ある日、古びたビルの中にある「ボンデージ」という謎のSMクラブの会員になってしまう。このクラブのプレイは、その場所で行うのではなく、日常生活の中で楽しむシステムになっている。それから、様々なタイプの美女たちが、片山の日常生活の中に突然現れて、彼は、これまでに味わったことのない“快感”を感じていく。だが、行為は次第にエスカレートし、女性たちは、彼の職場や家にまで、押し掛けてくるようになり、…。松本人志監督の4作目は、人間の根源的な本質にも迫るSMをテーマにしたかなりアブナイ人々の過激な世界。常識では考えられない女性たちの行為も凄いが、それに対して何も言わない周囲の人々の描き方がシュールだ。それぞれデザインの違う女性たちの黒光りのするボンデージファッションが過激だ。(ヴィスタ・100分・13年10月5日)

9月5日(木)日本映画「くじけないで」Don't Lose Heart

 夫に先立たれて一人暮らしをしている柴田トヨは、緑内障の手術をした後、日課の散歩に出ることも出来ず、急に元気をなくしてしまう。そんな年老いた母を見かねた息子の健一は、“詩”を書くことを勧める。その日から、トヨは、詩を書き始める。何でもない日常の風景を一つひとつ言葉に置き換えていく中で、やがて彼女は、自らの人生を振り返っていく…。90歳を過ぎてから、詩を始めたというトヨ。彼女の詩は、温かく、周囲の人々を勇気づけていく。詩集から映画のシナリオを作り出していくという作業は、大変なことだ。それを、うまく繋げて、明治から平成までの時代を生きた一人の女性の半生を描き出す。彼女には、大変な時代を生きてきたからこそのやさしさがあった。そのやさしさを演じるのに、八千草薫は、ぴったりだ。(ヴィスタ・128分・13年11月16日)

9月4日(水)イギリス映画「ダイアナ」Diana

 1995年、夫であるチャールズ皇太子と別居して3年、ダイアナは、ふたりの王子とも別れ、寂しい日々をおくっていた。そんなある日、心臓外科医のハスナット・カーンと出会った彼女は、心から尊敬できる男性だと感じる。そして、恋が始まる。だが、パパラッチたちは、毎日、ダイアナを追っかけ、スキャンダルを書いていく。そんな状況の中、何とか、ハスナットとの結婚を実現させようと懸命になるダイアナ。しかし、その前には、多くの壁が立ち塞がっていた。ドキュメンタリーではないので、かなりフィクションの部分もあると思われるが、彼女が“自分の人生を歩みたい”という願いは強く伝わってくる。これまでのような有名人の伝記ものでなく、ハスナットとの2年間に絞った脚本がいい。それにしても、ナオミ・ワッツは、ダイアナにそっくりだ!(ヴィスタ・113分・13年10月18日)

9月3日(火)日本映画「劇場版 ATARU The First Love & The Last Kill」ATARU : The First Love & The Last Kill 

 ラスベガスの巨大ホテルの噴水を見ていたアタルは、何か不思議な雰囲気を感じ、ニューヨークのFBI本部にいるラリーに電話をするが、仕掛けられていた爆弾が爆発してしまう。一方、東京でも鉄道の送電線が爆破される。二つの事件には、“ウィザード”と呼ばれるコンピューターウィルスが仕掛けられていた。そのウィルスを開発したのは、謎の女性・マドカだった。彼女は、アタルと同じサヴァン症候群で、かつてアタルと同じSPBで訓練を受けていた過去を持っていた。果たして、彼女に狙いは何なのか!?TVシリーズをあまり見ていなかったので、見る前に、解説をしっかり読んでおいて正解。解説なしだと、ついていけないギャグがいっぱいだ。(ヴィスタ・120分・13年9月14日)

9月2日(月)日本映画「凶悪」The Devil's Path

 スクープ雑誌の記者・藤井は、上司から小菅の東京拘置所にいる死刑囚・須藤からの手紙を渡され、面会に行くよう命じられる。彼は、「私には、まだ誰にも話していない余罪が3件あります」と話し始める。そして、このことを記事にしてほしいと依頼する。それは、すべての事件の首謀者である“先生”が今ものうのうと娑婆で生きていることが許せいという理由からだった。上司から記事にはならないと言われる藤井だったが、須藤の話を元に、調査を始めると、意外な事実が浮かび上がってくる。信じられないほど、残忍な事件の数々が、“先生”の指示のもと、飄々と実行されていく。須藤を演じるピエール瀧の暴力性も残酷だが、笑いながら平気で老人を殺していく、リリー・フランキーの“先生”に、背筋が氷った。(ヴィスタ・128分・13年9月21日)

8月23日(金)日本映画「永遠の0」The Eternal Zero

 司法試験に落ちて進路を迷う佐伯健太郎は、祖母・松乃の葬儀で、驚くべき事実を知らされる。それは、祖父・賢一郎は、本当の祖父ではなく、宮部九蔵という男が“本当の祖父”だというのだ。早速、宮部という人物を調べるために、かつての戦友のもとを訪ね歩く健太郎。すると、“海軍一の臆病者”という悪評ばかりだ。本当に、祖父は臆病者だったのか!?宮部は、天才的な“ゼロ戦”操縦技術を持ちながらも、敵を撃ち落とす(スコープ・144分・13年12月21日)

8月22日(木)アメリカ映画「エリジウム」Elisium

 2154年、地球は、環境汚染と人口増加によって荒廃し、ひと握りの超富裕層は、地表から400キロ上空の宇宙空間に建造されたスペースコロニー、エリジウム(理想郷)に移住していた。地球に住む貧困層の中に、工場で苛酷な労働をしているマックスがいた。事故で大量の照射線を浴びてしまい、余命5日を宣告された彼は、“永遠の命”を手に入れるべく、エリジウム行きを決断するが、…。「第9地区」で一躍、世界的に有名になったニール・ブロムカンプ監督の2作目だが、今作は、「第9地区」の数十倍の製作費をかけたSFアクション大作。キャストも、マット・デイモンが主役。エリジウムを牛耳る防衛長官がジョディ・フォスターと豪華。それにしても、すごくスマートなアイデアで、細かいところまで書き込まれたシナリオだ。(スコープ・109分・13年9月20日)

8月19日(月)日本映画「凶悪」The Devil's Path

 始まって10分頃のところで、停電。復旧の見通しが立たず、中止。これまで、プリントが届かずに中止というのは何回かあったが、停電で中止というのは初めてだ。(ヴィスタ・128分・13年9月21日)

8月8日(木)日本映画「許されざる者」Unforgiven

 1880年、明治維新期の北海道の人里離れた寒村の果て。幕末の世に大勢の志士を斬りまくり、“人斬り十兵衛”と恐れられた男が住んでいた。そんな彼を、かつて幕府軍伝習歩兵隊で一緒に戦った昔の仲間、馬場金吾が現われる。鷲路まで賞金稼ぎに行こうと誘いに来たのだ。“もう二度と人は斬らない”と亡き妻に誓った十兵衛だったが、二人の子どもたちの食料にも事欠く暮らしの前に、封印していた刀を取り出すのだった。しかし、鷲路の宿場町は、初代戸長兼警察署長の大石一蔵が絶対的な権力をふるっていた。クリント・イーストウッドのアカデミー賞作品を、見事に日本の時代劇にアダプテーションした力作。渡辺謙の芝居が重厚。北海道の大地を縦横無尽に切り取る笠松則通のカメラがいい!(スコープ・135分・13年9月13日)

8月7日(水)日本映画「陽だまりの彼女」Girl in the Sunny Place

 広告代理店のモテない新人営業マンの浩介は、プレゼンに行った会社で、ステキな女性と出会う。彼女は、中学時代の同級生・真緒だった。かつて冴えないイジメられっ子だった彼女は、当時とは見違える美しい女性に成長していた。10年ぶりの運命的な再会で二人は恋に落ち、やがて結婚を決める。ところが、真緒には、誰にも知られてはいけない“不思議な秘密”があった。少女コミックが原作だとばかり思って見たが、原作は、小説のようだ。ビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」が原作にも出てくるらしいが、3回もかけるのは、使い過ぎ。理屈では説明できない“ファンタジック・ラブストーリー”ということだが、少しムリなシーンも少なくない。上野樹里の中学時代を演じた葵わかなが可愛い!(ヴィスタ・129分・13年10月12日)

8月5日(月)アメリカ映画「ウォーム・ボディーズ」Warm Bodies

 謎のウィルスの影響で、人類の大半がゾンビになって町を徘徊していた。助かったニンゲンたちは、高い壁で囲まれたシェルターの中で武装して暮らしていた。空港に住むゾンビ青年のRは、このままでいいのか?というジレンマに陥っていた。そしてある日、侵入してきたニンゲンの女子ジュリーに一目惚れしてしまう。彼女を助けて、自分の住処であるジェット機に連れていくR。果たして、彼は、ジュリーの愛をつかみ取ることができるのか!?ゾンビとニンゲンのラブ・ストーリーなんて、誰が思いついたんだろう!?ゾンビがゾンビであることを忘れて(我を忘れて)恋に突っ走るというのが、とてもユニークで面白い!さらに、ゾンビ生活にうんざりしていたほかのゾンビもいたという発想も斬新。(スコープ・98分・13年9月21日)

8月2日(金)アメリカ映画「パシフィック・リム」Pacific Rim

 地球は、巨大なKAIJUのために滅亡の危機に陥っていた。人類がそのKAIJUを倒すために開発したのが、巨大ロボット“イェーガー”だった。最初は優勢だったイェーガーだったが、KAIJUは出現のたびにパワーを増していき、人類はイェーガー計画を断念することになる。しかし、ペントコスト指令官は、独自に計画を続行し、5年前の事故で兄を失い、失踪していたローリーに再び、イェーガーに乗ることを要請する。そして、最後の決戦の時が近付いてくる。イェーガーを操縦するのは、2人というアイデアが面白い。神経ブリッジを通して互いの脳を同調させる“ドリフト”というプロセスを経て、戦闘態勢に入るのだ。だから、2人の心がピッタリ合わないとうまくいかない。日本の怪獣映画が大好きだというデル・トロ監督ならではの巨大ロボット映画だが、細部までこだわった画面作りが楽しい!菊池凛子のアクションもなかなかさまになっている。(スコープ・132分・13年8月9日)

7月30日(火)日本映画「共喰い」The Backwater

 芥川賞受賞の記者会見で「もらっといてやる!」と言い放ち、世間を賑わせた田中慎哉の「共喰い」を、青山真治が監督。高校生の遠馬は、父親の円と、その愛人の琴子と一緒に暮らしていた。円には、性行為の時に、女を殴りつける性僻があった。それで、母親の仁子は、家を出て、川1本隔てた魚屋に一人暮らしをしていた。17歳になった遠馬は、幼馴染みの千種と神社の神輿蔵の中で、関係を持つ時に、自分にも父親と同じ忌わしい血が受け継がれていることを知り、愕然とするのだった…。山口県下関市の小さな町で起こる“父と子”、そして、女たちの葛藤。荒井晴彦がシナリオを書いているだけあって、往年のロマンポルノを思い出してしまった。(スコープ・102分・13年9月7日)

7月25日(木)日本映画「そして父になる」Like Father, Like Son

 カンヌ映画祭で、10分以上ものスタンディング・オベーションをもらった話題作。大手建設会社のエリート社員である野々宮良多は、妻・みどりと6歳になる息子・慶多と3人で、満ち足りた生活をおくっていた。ところが、出産した病院で子どもの取り違えがあったことが発覚し、DNA鑑定で、慶多は、他人の子どもであることが分ってしまう。病院側の仲介で、相手方の両親と会うが、良多は、群馬で小さな電器屋をやっている斎木雄大と妻・ゆかりのガサツな態度に眉をひそめる。そして、独断で弁護士にある依頼をする。“病院側は、100%血のつながりを選んで交換する”というが、果たして、本当にそうなのだろうか!?冷静沈着で聡明そうな福山雅治の演技が良多にぴったりだ。(ヴィスタ・121分・13年9月28日)

7月23日(火)アメリカ映画「ローン・レンジャー」The Lone Ranger

 “最後の悪霊ハンター”として、一人部族から離れ、宿敵を追い続ける先住民トント。白塗りで頭上に死んだカラスを乗せたジョニー・デップの格好が異様だが、そのとぼけた考えや仕草は、面白い!彼が復讐を果たすためのパートナーとして選んだのは、瀕死の検事ジョン・リードだった。本当は堅物の検事ではなく、真の勇者である兄のダンを甦らせたかったのだが、不思議な力を持った白馬がジョンを選んだのだ。悪人を法の力で裁くと言い張るジョンと、復讐のためには手段を選ばないトントは、対立する。しかし、事態は急速に悪化していき、…。典型的な勧善懲悪もののウエスタンだが、そんなストーリーが、ジョン・フォード監督&ジョン・ウエイン、コンビが走り回ったアメリカ西部の広大な大地を舞台に繰り広げられる。CGに頼ることを極力拒んだゴア・ヴァービンスキー監督の本物志向を支持したい!「ハイヨー、シルバー!」もちゃんと出てくる。(スコープ・150分・13年8月2日)

7月23日(火)日本映画「謝罪の王様」The Apology King

 東京謝罪センターの所長・黒島譲の職業は、<謝罪師>。トラブルを起こした本人に代わって、謝罪し、さまざまな問題を解決すること。最初の依頼人は、ヤクザの車を傷付け、法外な賠償金を払う契約書にサインさせられてしまった帰国子女。黒島は、彼女に石で頭を殴らせ、血みどろの姿で、ヤクザの家に行き、死にものぐるいで謝る。そして、毎日、ヤクザの元に通っては、御機嫌取りをやって、何とか、最後は示談にしてもらう。次にやってきたのは、セクハラで訴えられた下着会社のデザイナー。この男がとんでもないダメ人間で、根性を叩き直すことからスタート。このように次から次へとやってくる6つのエピソードが次第に絡まりあっていく。“こんな話、あるある!”と言える普通の小さな<謝罪>に始まり、最後には、予想を遥かに越える<謝罪>に展開していく。宮藤官九郎のシナリオは、辛らつで、時には笑い飛ばせないものもあるが、その勢いで飛ばし捲っている。(スコープ・128分・13年9月28日)

7月22日(月)日本映画・映画「ガッチャマン」Gachaman

 壊滅状態に陥った地球を救うため、“青い石”の力を引き出せる“適合者”が集められ、特殊エージェントとして訓練を受けた。彼らは、究極の兵器“ガッチャマン”として選ばれたのだ。宿敵ギャラクターを倒すために、ISO東アジア支局のリーダー、健の元に、ジュン、甚平、竜が集合。そこへ、ISOヨーロッパからジョーが移籍してくる。健とジョーは、幼い頃から一緒に訓練を受けていた過去があった。ベルクカッツェが地球に潜入したという情報が入ってくる。さらに、彼女との覇権争いに破れたギャラクターNo2のイリヤが、ISOに亡命を希望してくるが、…。これまで、描かれることになかった子ども時代のエピソードが明らかになり、ガッチャマン自身の苦悩が出てくるのは、「バットマン」シリーズの影響か!?人工衛星から地球を攻撃するビームというのは、「G.I.ジョー バック2リベンジ」と同じアイデアか!?松坂桃李も綾野剛も“戦隊もの”の出身なので、コスチュームプレイは慣れたものだ。(スコープ・110分・13年8月24日)

7月19日(金)日本映画「夏の終り」The End of Summer

 瀬戸内寂聴が40歳の時に書いたベストセラー小説を発売50周年記念で映画化。妻子ある年上の作家・慎吾と、8年も一緒に暮らしている知子だったが、妻と別れてほしいと思ったこともなかった。しかし、かつて駆け落ちした恋人・涼太が訪ねてきたことで、平穏だった知子の生活は微妙に狂い始める。なぜ、今、昭和30年代を舞台にした作品なのだろうか?と思いを巡らせながら、ゆっくりゆっくりとした、まるで“舞台”のようなテンポで展開される3人の男女の愛の葛藤を楽しませてもらった。きっと、演じている3人もそうだったのではなかろうか!?それにしても、昭和30年代というのは、タバコを吸うのがステータスだった時代なのだろう。ずっと煙たかった。(ヴィスタ・114分・13年8月31日)

7月18日(木)日本映画「人類資金」Mankind Fund

 敗戦直前に旧日本軍の手によって隠匿された金塊などの財宝は、その後、GHQに接収され、日本の戦後復興のために使われてきたと言われている。この謎の“M資金”をネタに詐欺を繰り返していた真船の元へ、石と名乗る男が現れ、“財団”に連れていかれる。“市ヶ谷”の男たちに捕まりそうになった2人だったが、辛くも逃げ延びて、2人は、あるビルで本庄という男と出会う。そして、彼は、真船に「M資金を盗み出してほしい!」と持ちかける。そこから、前代未聞の事件が巻き起こっていく。ロシア、架空のカペラ共和国、そしてニューヨークと世界を股に賭けたスケールの大きな舞台で、“M資金”を巡るクライム・サスペンスが繰り広げられる。ただ、株などの金融操作の話は、複雑で難解だ。ヴィンセント・ギャロまで引っぱり出した凄く豪華なキャスティングだが、何で、豊川悦司の孫役がユ・ジテ!?(ヴィスタ・140分・13年10月19日)

7月16日(火)日本映画「風立ちぬ」The Wind Rises

 大正時代、田舎に育った少年・掘越二郎は、飛行機の設計者になろうと決意する。大学を卒業し、軍需産業で飛行機の設計をすることになる。その頃、二郎は、奈穂子という美しい女性と出会い、恋に落ちるが、彼女は、結核を患っていた。しかし、二郎は、一刻も早く飛行機を完成させなければならなかった。関東大震災に始まり、世界恐慌や失業、言論統制、そして戦争と、時代は、確実に破滅に向かっていた。そんな暗い時代に、“美しい”飛行機を作るという夢に人生を賭けた男のロマンに、宮崎駿監督のこだわりが強く反映されていて、いろいろなことを考えさせてくれた。暗い時代の中、イタリアのカプローニとの夢のシーンが効果的に構成されている。(ヴィスタ・126分・13年7月20日)

7月12日(金)第27回福岡アジア映画祭2013・後半戦スタート。ゲストは、蜂須賀健太郎監督、中井信介監督、尾登憲治監督、そして飛び入りで、「モンゴル野球青春記」の谷口広樹プロデューサー。珍しい作品ばかりです。

7月11日(木)日本映画「少年H」A Boy Called H

 妹尾肇少年は、“H”と刺繍されたセーターを着ていたことから“H”と呼ばれていた。父親は、洋服の仕立てをやっていた。幸せに暮らしていた一家4人だったが、近所のうどん屋の兄ちゃんが政治犯として逮捕されたり、オトコ姉ちゃんとところに召集令状がきたり、徐々に不穏な空気が漂ってくる。そして、戦争が始まり、軍事統制も一層厳しくなっていく。そういった状況の中、さまざまな事態に疑問を持ち、聞いてくるHに対して、父親は、しっかりと自分の目で、現実を見ることを教えるのだった。戦争に入り、「おかしい」ことを「おかしい」と自由に言えない時代に、信念を持って息子Hを育てた、こんな日本人がいたことが誇りだ。昭和初期の神戸を再現したセットが見事。(ヴィスタ・122分・13年8月10日)

7月10日(水)アメリカ映画「マン・オブ・スティール」Man of Steel

 地球からはるか彼方の惑星クリプトン。科学者ジョー=エルは、生まれたばかりの息子カルをカプセルに乗せ、宇宙へと送り出す。クーデターを起こしたゾッド将軍は、ジョー=エルを殺害し、逮捕され、反乱軍と共に星から追放されるが、その後、クリプトンは崩壊してしまう。時が経ち、地球では、ある男が火災を起こした油井から作業員を救おうとしていた。彼こそ、成長したカルだった。地球に落ちて来たカプセルを発見したケント夫妻は、自分たちの息子クラークとして、彼を育てた。そして青年になったクラークは、人命救助をしながら、放浪の旅をおくっていた。ある日、カナダの氷山に謎の物体が埋まっているというニュースを聞き付け、現地に駆け付けると、…。スーパーマンは、いかにして生まれたのか?という誕生秘話。クリストファー・ノーランの脚本が丁寧でうまく書き込まれている。自分の生い立ちに悩みながらも、人類のために地球に残る決意をしたスーパーマンの新たなるシリーズのスタートだ。(3D・スコープ・143分・13年8月30日)

7月7日(日)第27回福岡アジア映画祭2013の福岡グランプリは、韓国映画「パパロッティ」に決定しました。奇跡の声を持つ“高校生パヴァロッティ”の実話を映画化したこの作品は、ハン・ソッキュとイ・ジェフンの見事なアンサンブル演技によって、多くの観客を感動させてくれました。審査員の尾上克郎特撮監督から賞状、フランシーヌ・メウール アンスティチュ・フランセ九州館長からトロフィーを授与されたユン・ジョンチャン監督は、本当にうれしそうでした。

7月5日(金)からいよいよ第27回福岡アジア映画祭2013が始まります。今年は、会場の都合で、劇映画からのスタートになります。ゲストは、黄雷(ホアン・レイ)監督(中国)、瞿友寧(チュウ・ヨウニン)監督(台湾)、ユン・ジョンチャン監督(韓国)、ユク・サンヒョ監督(韓国)、シン・ドンヨプ監督(韓国)、尾上克郎特撮監督(日本)、フランシーヌ・メウール アンスティチュ・フランセ九州館長(フランス)。福岡でしか見ることの出来ない話題作をぜひ見に来て下さい。

7月4日(木)アメリカ映画「ワールド・ウォーZ」World War Z

 ブラピの新作は、今まで人類が経験したことのない伝染病の蔓延により、危機に陥る地球を描いた近未来SFものだ。今は国連の機関を辞めている二児の父親ジェリー。いつものように、妻子を車で送っていく平穏な朝、町で大渋滞に巻き込まれてしまう。ところが、それは普通の渋滞ではなかった。前方からの何やら異常な雰囲気に父親は危険を感じ、家族を守るため素早い行動に移るのだが、その異常なるものの変化は早く、街中は大パニック状態に。インパクトあるこの予告編で、一体何が主人公たちに起きているのか!?あのうねるような群像は何なのか?と想像を膨らませていた。そして、全編を見てその全貌に絶句。驚きは恐怖に変わり、今までにない体感が襲ってきた。いわゆるゾンビ化となった何ものかVS人類という話なのだが、今までのゾンビものとは全く違って、主人公は普通だったら5〜6回は死んでしまっているほどハードな展開を突き進み、人類が生き延びるための回避策と、病気の弱点を突きとめていこうとする。その行動が見ている人が体験しているような構造になっているため、本当に心臓によろしくない。そもそも病状の変化の早さと深刻さは、主人公が10をカウントする間に起きてしまう。まさに、異常事態に陥ってしまった時、機敏な判断力と決断がなければ人は生き延びれない。そう物語は言っているようだ。しかし、それにしても3Dで、あまりのCGの多さと展開の早さに眼球と頭が疲労困憊してしまった。(3D・スコープ・116分・13年8月10日)

6月28日(金)アメリカ映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」Star Trek : Into Darkness

 エンタープライズは、未開の惑星ニビルの探査中に地殻変動を察知し、噴火を鎮圧するために、副長スポックは火口へ。しかし、ロープが切れ、取り残されてしまう。そんなスポックを助けるために、重大な規則違反を犯してしまったカークは、キャプテンを解任されてしまう。その頃、ロンドンの宇宙艦隊データ基地が爆破される。犯人は、元艦隊士官のジョン・ハリソン。犯人を追ってクリンゴン人の故郷クロノスへ出撃するエンタープライズだったが、その行く手には、想像を絶する危機が待っていた。さすが、売れっ子監督のJ.J.エイブラムスだけに、巨額の製作費を贅沢に注ぎ込んで、やりたい放題の大作。3Dで、隕石や戦艦がびゅんびゅん飛んでくる。でも、昔からのトレッキーらしく、往年のシリーズへのオマージュとなる場面も多し。それにしても、ベネディクト・カンバーバッチのキャラが濃い!(スコープ・132分・13年8月23日)

6月20日(木)フランス映画「タイピスト!」Populaire

 1950年代、フランスの女性たちのあこがれの職業は、「秘書」。田舎から出て来たローズは、保険会社でルイの秘書に採用される。しかし、ドジで不器用な彼女は、一週間でクビを言い渡される。「ただし、---」と、ルイは意外な提案をもちかける。ローズの唯一の才能<タイプの早打ち>を見抜いたルイは、タイプライターのコンテストに出ることを決意させる。その日から苛酷な特訓が始まる…。「アーティスト」のスタッフが、実際にあったタイプの世界大会をモチーフに、タイプに挑む女性たちの姿を生き生きと描き出す。1950年代の女性たちのファッションが原色で華やか。そして、さまざまなフランス映画の名作を彷佛とさせるシーン満載。(スコープ・111分・13年8月17日)

6月18日(火)日本映画「劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の一日」Time Scoop Hunter the Movie

 NHKで5年もの間、5シーズン好評のうちに放送されてきた人気フェイクドキュメンタリーシリーズの満を辞しての映画化。今回の取材対象者は、幻の茶器を持つ商人を京都から博多まで護衛する命を受けた侍・矢島権之助。ところが、途中で、思わぬ敵に襲われてしまう。それは、“未来の武器”を持つ山伏だった。果たして、謎の敵の正体は何者か!?さらに、茶器の行方は!?歴史は、修復できるのか!?フェイクドキュメンタリーなので、理屈では理解しづらい部分もあるが、映画版ということで、しっかり予算のかけ、ゲスト陣も豪華だ。要潤としては、「24」のように、ライフワークとして延々と続けたいところだろう。(ヴィスタ・102分・13年8月31日)

6月13日(木)アメリカ映画「アフター・アース」After Earth

 西暦3071年、人類は、惑星<ノヴァ・プライム>に移住していた。士官学校で優秀な成績の13歳のキタイだが、その自己中心的な性格が正式レンジャーへの昇格の邪魔になっていた。そんな息子を、父親で、軍の総司令官であるサイファは、宇宙遠征の任務に同行させる。ところが、惑星嵐に巻き込まれて、見知らぬ星に不時着してしまう。そこは、1000年後の地球だった。負傷して動けないサイファの命令で、キタイは、たった一人でビーコンを探すことになるが、そこには、さまざまな難関が立ち塞がっていた。ウィル・スミスの原案で、自分は、負傷して動けない設定なので、主に動き回るのは実の息子のジェイデン・スミス。息子の成長物語を親が見守るという典型的なファミリー作品だが、ハリウッドらしく楽しめるエンターテンメントに仕上げている。(3D・スコープ・100分・13年6月21日)

6月11日(火)日本映画「真夏の方程式」Midsummer Formula

 美しい海が広がる玻璃ケ浦という海岸の町。そこでは海底資源の開発計画を推進する企業側と、環境保護グループが対立していた。開発計画の説明会にアドバイザーとして招聘された湯川は、川畑夫妻が経営する民宿「緑岩荘」に滞在する。ところが、翌朝、堤防下の岩場で男性の変死体が発見される。男は、昨夜、「緑岩荘」に宿泊していた元捜査一課の刑事・塚原だった。彼は、16年前に起きたある殺人事件の犯人で、服役後に消息を絶った仙波英俊という男を探していたらしい。現地入りした捜査一課の岸谷は、湯川に協力を依頼するが、…。いつもは、子どもに近付かれただけでジンマシンが出るほど、子ども嫌いな湯川が、川畑のおい・恭平にだけは拒否反応が現れず、少年と無邪気に実験をするというのが、“実にオモシロイ!”。(スコープ・129分・13年6月29日)

6月11日(火)日本映画「シャニダールの花」The Flower of Shanidar

 去年、10年ぶりの新作「生きているものはいないのか」で復活した石井岳龍監督が早くも新作を完成!植物学者の大瀧は、新しく研究所に入ってきたアシスタントの響子と共に、ある女性たちの胸に宿った<小さなつぼみ>ー<シャニダールの花>の研究に追われていた。<シャニダールの花>とは、イラクのシャニダール遺跡で発見された人類最初の花と言われている。その謎の花に隠された真実とは!?<謎の花>をモチーフにしたSFなのだが、その底には、人間本来の生き方が図太く流れていて、ベテラン監督ならではの落ち着いた演出で、最後まで安心して見ていられる。(ヴィスタ・105分・13年7月20日)

6月10日(月)日本映画「映画 謎解きはディナーのあとで」The After-Dinner Misteries

 シンガポールに向かう豪華客船に搭乗していた令嬢・宝生麗子と、執事の影山。久々のバカンスを楽しもうとしていた麗子だったが、シンガポールへの寄贈品の警備にあたっていた麗子の上司、風祭警部も同じ船に乗っていた。そんな彼らの前で、船から海に死体が投げ込まれる。果たして、影山は、到着するまでの5日間で、乗客・乗員3000名の中から犯人を探し出すことができるのか!? 2011年本屋大賞1位に選ばれたベストセラー小説を、櫻井翔、北川景子主演ドラマ化したものの映画版。映画版だけに、予算も大幅にアップして、アジア最大の豪華客船スーパースター・ヴァーゴで行われた。また、共演陣も豪華だが、ギャグの部分が多すぎて少々クドイと感じたのは、私だけだろうか!?(ヴィスタ・121分・13年8月3日)

6月6日(木)アメリカ映画「終戦のエンペラー」Emperor

 1945年8月、敗戦した日本に、GHQを率いたマッカーサー元帥が上陸した。そして、彼は、部下のボナー・フェラーズ准将にある極秘の調査を命じる。それは、戦争における天皇の役割を10日間で探れというものだった。連合国側は天皇の裁判を望んでいた。しかし、マッカーサーは、天皇を逮捕すれば、激しい反乱を招くと考えていた。日本文化の専門家であり、日本との深い関係を持つフェラーズは、崩壊寸前の日本を救うために、奔走し始める。マッカーサーが天皇の裁判をやらなかったというのは、有名な話だが、その裏にこんな極秘調査があったとは、ビックリだ。ドキュメンタリーではないので、フィクション部分もかなり含んでいるが、アメリカ映画だから作ることが出来た貴重な作品だ。(スコープ・107分・13年7月27日)

6月3日(月)アメリカ映画「ハングオーバー!!! 最後の反省会」The Hangover Part III

 トラブルメーカーのアランは、相変わらず、とんでもないことばかり起こして、家族を困らせていた。そしていよいよ危機的な精神状態に陥った彼を施設に入れることにした。もちろん、連れていくのは、フィル、ステュ、ダグの3人。ところが、旅の途中、彼らを待っていたのは、予想外の事件だった!今回は、バチェラー・パーティーもなければ、結婚式もない。だが、災難は次々と降り掛かり、そのスケールも加速度をつけて、大きくなっていく。アクションのスケールもかなりなものだ。果たして、彼らは、無事、生還できるのか!?ミスター・チャウの出番がかなり多い。(スコープ・100分・13年6月28日)

5月30日(木)韓国映画「ベルリンファイル」The Berlin File/ベルリン

 ベルリンの高級ホテル、ウェステンホテルの一室で行われている極秘の武器取引。ロシア人ブローカーを介してアラブ系組織の幹部に新型ミサイルを売り付けようとしているのは、北朝鮮の秘密工作員ピョ・ジョンソンだった。取引が成立しようとした時、韓国情報員のチョン・ジンスは、部下たちに突入の指令を下す。だが、そこに思わぬ横やりが入って、激しい銃撃戦になってしまう。冒頭からハードなアクションに始まった物語は、韓国、北朝鮮、そして、アラブ系組織、イスラエル情報局モサド、さらに、CIAまで巻き込んだ壮大なスパイ合戦に展開されていく。現地で2ヶ月ものロケを行っただけあって、ヨーロッパの風情をきっちり取り込んだ舞台の中で、本格的なエンターテインメント大作になっている。ハ・ジョンウの格闘がかなり本物。韓国スパイをクールに演じきっているハン・ソッキュだが、7月の福岡アジア映画祭で日本初公開する「パパロッティ」では、ユーモラスな部分も見せてくれる。(スコープ・120分・13年7月13日)

5月27日(月)イギリス映画「アンコール!!」Song for Marion

 気難しいガンコ爺のアーサーだが、毎日、愛妻のマリオンを合唱団の練習のために、近所のコミュニティセンターに送り迎えしていた。その合唱団が国際合唱コンクールに出場することになる。ところが、マリオンのガンが再発して、倒れてしまう。でも、マリオンは、練習に通い続け、いよいよコンクールがやってくる。そして、…。いかにもガンコ爺の典型のようなイギリス紳士テレンス・スタンプが演じる感動の家族ドラマ。結構、歌がうまくて、ビックリ!(スコープ・94分・13年7月5日)

5月23日(木)アメリカ映画「欲望のバージニア」Lawless

 1931年、バージニア州フランクリンに“絶対に死なない”という伝説のボンデュラント3兄弟がいた。禁酒法時代のアメリカで、最も酒の密造が盛んだったこの無法の地で、彼らは、密造酒を作りまくっていた。ビジネスばかりでなく、三男ジャックは、牧師の娘バーサに恋をし、次男フォレストは、過去のある女マギーに惹かれていく。そんな時、新しい取締官レイクスが着任。賄賂を断った3兄弟との間に熾烈な戦いが始まる!シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ガイ・ピアース、ジェシカ・ジャステイン、ミア・ワシコウスカ、ゲイリー・オールドマンなど、クセ者ぞろいの豪華キャストで繰り広げられるエンターテインメント活劇。このキャスティングは、贅沢すぎる!バージニアには、「ボンデュラント・ミュージアム」があるほど、兄弟の逸話は有名だそうだ。(スコープ・116分・13年6月29日)

5月22日(水)アメリカ映画「華麗なるギャツビー」The Great Gatsby

 証券会社に勤めるニック・キャラウェイは、隣の豪邸で毎晩開かれるゴージャスなパーティーを眺めて、憧れていた。ある日、彼のもとへ招待状が届く。豪邸の持ち主は、ジェイ・ギャツビー。どこから来たのか?どうやって大富豪になったのか?さまざまな噂が飛び交う中、ニックは、ついに“噂の主”ギャツビーに出会う。そして、彼から思わぬ依頼をされる。それは、…。1920年代の絢爛豪華なブルジョワの生活を再現した豪華なセット、きらびやかなファッション、高級シャンパンがふんだんに振る舞われる贅沢なパーティー。だが、そんなきらびやかさの裏には、暗い闇が隠されていた。1974年のロバート・レッドフォード版と比べると、デジタル技術などの進歩で、格段の映像美となっているが、ギャツビーの設定が、今の時代では、ちょっと古くさいと言えるかも知れない。ミア・ファローのデイジーの印象が強い。(スコープ・142分・13年6月14日)

5月17日(金)スペイン映画「インポッシブル」The Impossible

 2004年のスマトラ沖地震による津波で、休暇でタイのプーケットに遊びに来ていたベネット一家は、引き裂かれてしまう。大ケガをしながらの急死に一生を得た母マリアは、長男ルーカスを連れて、凄まじい被害の草むらを途方に暮れて歩いていく。果たして、夫ヘンリーと二男トマス、三男サイモンは、助かったのだろうか!?さらに、ルーカスを1人残して、自分は死んでしまうのだろうか!?という不安が重くのしかかってくる。大量の水を使ってリアルに再現された津波のシーンが恐ろしい!死に直面した母親マリアを、本当に体当たりで演じたナオミ・ワッツのアカデミー賞ノミネートがうなずける。(スコープ・115分・13年6月14日)

5月17日(金)アメリカ・香港合作「アイアン・フィスト」The Man with the Iron Fists

 クエンティン・タランティーノプレゼンツで、大好きなブルース・リーのカンフー映画を模したオープニングタイトルが懐かしい!19世紀の中国のジャングル・ヴィレッジでは、猛獅会と群狼団が対立していた。鍛冶屋は、両方のグループから特注の武器の製作を依頼され、忙しい日々をおくっていた。その頃、土地を治める総督から金塊輸送の護衛を頼まれた猛獅会のボス・金獅子だったが、…。昔懐かしいカンフー映画のセットで繰り広げられるアクションは、かなり本格的で派手。さらに、主人公アイアン・フィストの登場も、相当に奇想天外。でも、なぜ、こんなカンフー・アクションに、ラッセル・クロウが出るの!?いつもは、悪役ばかりの韓国系アメリカ人リック・ユーンが珍しく良い役。(スコープ・95分・13年8月3日)

5月10日(金)アメリカ映画「G.I.ジョー バック2リベンジ」G.I.Joe: Retaliation

 パキスタンの核兵器が敵に奪われるのを防いだG.I.ジョーのメンバーだったが、パキスタン大統領暗殺の罪を着せられて、政府軍の奇襲攻撃を受け、壊滅状態に陥ってしまう。からくも助かった3人のメンバーは、攻撃命令を出した大統領を疑うと、そこには、驚愕の事実が…。さらに、死んだと思われていたストームシャドーも復活して、G.I.ジョーの前に立ち塞がってくる。DMZ、パキスタン、ワシントンDC、東京、ロンドン、ヒマラヤと目まぐるしく世界中を駆け巡りながら、派手なアクションが繰り広げられる。手裏剣や弾丸が手前に飛び出してきて、3D効果も充分!イ・ビョンホンの出番も多い。(3D・スコープ・111分・13年6月8日)

5月10日(金)日本映画「Short Peace」Short Peace

 大友克洋ほか4人の監督によるオムニバス・アニメ。神社の入口にいる女の子の「オープニングアニメーション」に始まり、道に迷った職人が奇妙な妖怪に出会う「九十九(つくも)」、江戸の街に起こる大火事を描いた大友克洋監督の「火要鎮(ひのようじん)」、村を襲う巨大な鬼と白い熊の死闘を描いた安藤裕章監督の「GAMBO」、大友克洋が81年に出した短編漫画のアニメ化で、近未来の東京で、ロボットタンクと戦う兵士たちを描いたカトキハジメ監督の「武器よさらば」。それぞれ緻密に描き出されたハイレベルのアニメ。“大人のアニメ”ということだが、「GAMBO」のブラッディさはいかがなものか!?(ヴィスタ・68分・13年7月20日)

4月25日(木)アメリカ映画「エンド・オブ・ホワイトハウス」Olimpus Has Fallen

 ホワイトハウスでは、大統領と韓国首相との会談が行われていた。そこへ、1機の黒い輸送機がワシントン上空に侵入し、攻撃してくる。さらに、地上から訓練された特殊部隊のメンバーが、突入してくる。そして、たった13分後、ホワイトハウスは陥落する。こんな前代未聞のテロを遂行したのは、北朝鮮のテロリストたちだった。彼らは、大統領を人質に取り、日本海域と朝鮮半島軍事境界線からのアメリカ軍の撤収を要求してくる。元シークレット・エージェントのバニングは、ホワイトハウスに潜入し、ただ1人で、テロリストたちに立ち向かうことになる。本当に前代未聞の出来事だ。こんな非常事態にジェラルド・バトラーたった1人で立ち向かうというのが、さすがハリウッド映画。北朝鮮テロリストのリーダーを演じているのは、リック・ユーン。「007ダイ・アナザー・デイ」などにも出てた韓国系アメリカ人俳優だ。(スコープ・120分・13年6月8日)

4月25日(木)日本映画「100回泣くこと」

 4年前のバイク事故で、それ以前1年間の記憶を失ってしまった藤井は、それまで付き合っていた恋人、佳美のことを全く忘れ去っていた。そんな二人が、共通の友人、ムースとバッハの結婚式で再会する。そして、再び付き合い始める。しかし、佳美は、かつて二人が恋人同士であったことを話そうとはしない。そして、藤井のプロポーズに対する佳美の答は?中村航のベストセラー小説を映画化した正当派ラブストーリー。関ジャニ∞の大倉忠義の大袈裟でない淡々とした演技が、ファンには絶賛か!?もちろん、主題歌は、関ジャニ∞。最近、作品が目白押しの廣木隆一監督だが、ベテランらしい手堅い演出。(ヴィスタ・116分・13年6月22日)

4月23日(火)アメリカ映画「オブリビオン」Oblivion

 2077年、スカヴ(ハゲ鷹)と呼ばれるエイリアンの侵略によって、地球は壊滅し、人類は、別の惑星への移住計画を進めていた。荒廃した地球には、ドローンという無人偵察機が飛び回っていた。そして、そのドローンの管理をミッションにしているのが、ジャックだった。彼は、ある女性の夢を見るが、5年前に記憶を消されているので、彼女が誰なのかは分からない。そんなある日、ジャックは、墜落した宇宙船を発見するが、…。完全な正当派的SFで、スカイタワーやバブルシップ、モトバイクなどSFマシーンが「スター・ウォーズ」のように画面中を飛び交う。その本物感が半端じゃない!トム・クルーズの役名は、ジャック・ハーパー。「アウトロー」でもジャックだった。(スコープ・124分・13年5月31日)

4月19日(金)アメリカ映画「モネ・ゲーム」Gambit

 美術鑑定士のハリー・ディーンは、雇い主である大金持ちシャバンダーから受けた数多くの侮辱に復讐するために、一世一代の詐欺を計画する。親友であるネルソン少佐が書いたモネの贋作を蒐集家のシャバンダーに15億円で売り付けようというのだ。ハリーの計画には、もう1人のメンバーが必要だった。それは、モネの“夕暮れ”が忽然と姿を消した謎を知っているとされたパットン将軍の第一師団隊長の孫娘、PJ・プズナウスキーだった。テキサスのカウガールPJは、この話にあっさりのり、ロンドンにやってくるが、…。1966年「泥棒貴族」のリメイクだが、コーエン兄弟のシナリオは、貧富の差やイギリスとアメリカの文化の違いなど、かなり強烈なブラックコメディに仕上げている。キャメロン・ディアスのコメディエンヌぶりは、いつもの感じだが、あの「英国王のスピーチ」でアカデミー賞を取ったコリン・ファースのドタバタぶりが面白い。(スコープ・90分・13年5月17日)

4月19日(金)今週から西南学院大学での「社会科学総合講座」スタート!

4月18日(木)ユナイテッドシネマキャナルシティ13のIMAX劇場で、パラマウントの特別フッテージ上映&プレゼンテーション。8月23日公開の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」Star Trek Into Darkness のIMAX用に撮影された冒頭約30分のシーンがすばらしい!果たして、スポックは帰って来れるのか!?6月8日公開の「G.I.ジョー/バック2リベンジ」G.I.Joe : Retaliation の予告編は、3Dで、刀や手裏剣がびゅんびゅん飛んでくる。断崖での戦いも相当派手な演出だ。イ・ビョンホンとジョン・チュウ監督のキャンペーンが福岡でも5月31日に行われる予定。

4月15日(月)香港・中国・フランス合作「グランド・マスター」一代宗師/The Grandmaster

 ウォン・カーウァイ監督待望の新作。主人公は、ブルース・リーの師として知られる葉問(イップ・マン)。北の宗師であるパオセンは、引退を決意し、弟子の馬三(マーサン)を跡継ぎに指名する。そして、北と南の武術を統一するために、南の彿山で引退試合を開き、自分に勝った者を“真のグランド・マスター”とすることに決める。南の武術界は、詠春拳のイップ・マンを代表に送り込む。そして、闘いが始まる…。イップ・マンの映画は、3月の香港映画祭で「イップマン/ファイナル・ファイト」を見たが、かなり違ったテイスト。3年かかった撮影で撮った膨大なフィルムを編集するのが大変な作業だったことがよく分かる。(スコープ・123分・13年5月31日)

4月12日(金)日本映画「奇跡のリンゴ」

 1975年、青森県弘前のリンゴ農家に婿養子として入ってきた木村秋則は、慣れないリンゴ作りを強いられる。しかし、ある日、妻の美栄子が農薬のせいで、身体を悪くしていることを知り、無農薬でのリンゴ作りを決意する。だが、農薬を使わない栽培は、予想を遥かに越える困難さで、一家を悲惨な生活に追い込んでいく。感動の実話で号泣した。今でこそ、エコだとか無農薬だとかが流行っているが、1970年代というのは農薬万能の時代だったのだ。それにしても、リンゴ作りというのがこんなに大変なものなのかということを初めて知って驚いた。もっと大切に食べなければ。(ヴィスタ・129分・13年6月8日)

4月10日(水)日本映画「リアル〜完全なる首長竜の日〜」Real

 1年前自殺未遂を起こした漫画家の淳美(あつみ)は、昏睡状態のまま、1年が過ぎた。なんとか、彼女を覚醒させようと、恋人の浩市は、<センシング>という最新医療によって、淳美の意識の中に入っていく。漫画を書き続ける彼女に自殺の原因を問いただす浩市。しかし、淳美は、“かつて書いた首長竜の絵を探してきてほしい”と頼むばかりだった。人の意識の中に入っていくという発想は、なかなかユニークで面白いし、その意識の中に登場する“フィロソフィカル・ゾンビ”というのも、ホラー的効果を増長させてくれる。さすが、黒沢清監督らしい題材だと思って見ていたが、後半の展開は何なんだ!?原作どおり!?こんなジャンルの作品だとは思っていなかった!(ヴィスタ・127分・13年6月1日)

4月9日(火)日本映画「俺はまだ本気出してないだけ」

 大黒シズオは、バツイチで高校生の娘を持つ42歳。“本物の自分を探す”と勢いで会社を辞めるが、朝からゲーム三昧の毎日。バイト先でも失敗ばかり。そんなシズオは、本屋で立ち読みをしている時、突然ひらめき、家族に宣言する。“俺、マンガ家になるわ!”果たして、シズオは、本当にマンガ家になれるのか!?TV「勇者ヨシヒコと魔王の城」などでカルト的人気を誇る福田雄一監督の細かいギャグに大笑い。堤真一が演じる最強のダメダメ男は、本当にダメな主人公だが、見ているうちに、その無類のポジティブシンキングが愛おしく思えてくるから不思議。(ヴィスタ・105分・13年6月8日)

3月26日(火)日本映画「はじまりのみち」

 木下惠介監督生誕100周年記念映画。大平洋戦争の真只中の昭和19年、木下が監督した映画「陸軍」は、当局から睨まれ、次回作の製作を中止させられてしまう。怒った惠介は、松竹に辞表を提出し、母たまが静養している浜松に向かう。戦況は悪化の一途をたどり、惠介は、疎開することに決め、寝たきりの母をリヤカーに乗せ、山を越えていく。その道のりは険しく、同行した“便利屋”から途中何度も引き返そうと言われるが、惠介は歩き通す。木下監督の芯の強さが表れているエピソードだ。「河童のクゥと夏休み」などのアニメで有名か原恵一監督が木下監督をこよなく敬愛しているのは、よく分かるが、作品のインサートが長過ぎ。(スコープ・96分・13年6月1日)

3月25日(月)日本映画「図書館戦争」Library Wars

 時代は、平成ではなく、正化(せいか)という架空の年号の31年。メディアの検閲が厳格化され、公序良俗を乱す本は、すべて焼き払われていた。そんな時代に、読書の自由を守るため生まれた図書館の自衛組織“図書隊”に、新人として、笠原郁が入隊してくる。高校の頃、自分を助けてくれた図書隊員に憧れての入隊だった。ところが、指導教官の堂上は、鬼教官で、笠原を容赦なく猛訓練させる。そのおかげか、笠原は、女性初の図書特殊部隊に配属される。そしていよいよ、笠原たちの“メディア良化隊”との闘いが激化していく。図書館が部隊だが、戦闘は、自衛隊の全面協力で、本格装備によるかなり激しいもの。だが、こんなバトルを見せて、自衛隊に入りたいと思う若者が増えるのかどうか!?それにしても、この原作者・有川浩の映像化が、映画「県庁おもてなし課」、TV「空飛ぶ広報室」と、目白押しなのはなぜだ!?(スコープ・128分・13年4月27日)

3月24日(日)香港から帰国しました。出会ってから25年になる古くからの友人と25周年記念のディナーをするなど、多くの友人たちと再会してきました。

3月17日〜24日 第37回香港国際映画祭、香港フィルマート、アジアフィルムアワード授賞式に出席します。

3月11日(月)アメリカ映画「ジャックと天空の巨人」Jack The Giant Slayer

 「ジャックと豆の木」の世界を、「Xーメン」シリーズのブライアン・シンガー監督が3Dで、実写化。18歳のジャックは、何者かに追われている修道士に馬を譲り、数粒の豆をもらう。ところが、その豆が雨に濡れた途端にみるみる伸びていき、巨大な木が出現する。そして、ジャックの家と共にイザベラ姫は天空の彼方へ。国王の命令で、すぐさま衛兵エルモント率いる救出隊が派遣され、ジャックも隊に志願する。そして、巨大な豆の木の先には、巨人たちの国があった!CG合成に頼りきるのではなく、できる限りリアルな描写にこだわった映像は、迫力十分。だが、これで「ジャックと豆の木」童話は、相当イメージが変わることになる。(3D・スコープ・114分・13年3月22日)

2月21日(木)福岡アジア映画祭に2度もゲスト参加していただいた御法川監督の新作「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」の福岡キャンペーン。久しぶりにお会いした監督は、記者会見ということでスーツ姿。7年前からの企画がやっと映画という形で理想的な配役で実現し、全国の映画館で上映される。うれしいの一言だそうだ。夜は、主演の柴咲コウと共に、先行上映会で舞台挨拶。

2月21日(木)イギリス映画「カルテット! 人生のオペラハウス」Quartet

 イギリスの美しい田園地方に引退した音楽家たちが暮らす〈ビーチャム・ハウス〉があった。そして、ヴェルディ生誕200周年を祝うコンサートの練習に忙しい毎日をおくっていた。そこに往年の大スター、ジーン・ホートンが入所してくる。コンサートの目玉として、往年の大スターを中心としたカルテット(四重唱)復活が期待されるが、…。マギー・スミス、トム・コートネイなどのアカデミー賞クラスの大物俳優たちをコントロールするよう依頼されたのは、ダスティン・ホフマン。満を持しての監督デビューで、本物のミュージシャンたちを多数起用するなど、こだわりの演出を見せてくれる。(スコープ・99分・13年4月19日)

2月20日(水)日本映画「舟を編む」The Great Passage

 玄武書房の営業部で変わり者として持て余されていた馬締光也(まじめみつや)は、辞書編集部にスカウトされる。そこでは、新しい辞書「大渡海(だいとかい)」の編纂が始まろうとしていた。それは、見出し語だけでも24万語という計画で、完成までに15年かかるという壮大なプロジェクトだった。馬締は、辞書編纂の世界に没頭していく…。しかし、問題が次々と起こってくる。果たして、「大渡海」は完成するのか!?何事にもマジメで不器用な主人公を松田龍平がボサボサ頭で、いい感じで好演。二つの時代が、ポーンと飛ぶという構成が効果的だ。それにしても、辞書作りって時間がかかるんだね。(ヴィスタ・133分・13年4月13日)

2月19日(火)アメリカ映画「ハッシュパピー バスタブ島の少女」Beasts of the Southern Wild

 ミシシッピ川の付近にある架空の町“バスタブ”に住む6歳の少女ハッシュパピー。世間から孤立した居住区で勝手きままに過ごしてきた彼女だったが、父親のウィンクは、酔ってはバカ騒ぎばかりするダメ男だった。ある日、百年に一度というハリケーンがやってきて、“バスタブ”は壊滅し、あたり一面水浸しになってしまう。次第に状況が悪化していく中で、ハッシュパピーは、“生き残るために強くなれ”と教えられてきたことを思い出す…。とにかく、6歳のクヮヴェンジャネ・ウォレスの表情が豊かで、最年少アカデミー主演女優賞ノミネートも納得の創造力に満ちあふれたファンタジーの傑作だ。(ヴィスタ・93分・13年4月20日)

2月18日(月)アメリカ映画「ラストスタンド」The Last Stand

 シュワルツェネッガー10年ぶりの主演作。移送中の麻薬王コルテスが脱走し、メキシコ国境へ向かう。彼らが選んだのは、アリゾナ州の小さな町ソマートン。そして、その町に、元ロス市警のレイ・オーウェンズが保安官として、静かな暮らしをおくっていた。軍隊並みの装備と時速400キロで走るコルベットZR1の特別仕様車で襲ってくる凶悪犯たちに立ち向かうのは、保安官と3人の副保安官だけ。果たして、最後の砦に勝ち目はあるのか!?キム・ジウン監督の真骨頂は、飛び跳ねる血しぶき!「ジャンゴ」も結構多かったが、韓国の監督ならではの強烈さで、R-15+は当然だ。(スコープ・107分・13年4月27日)

2月13日(水)アメリカ映画「シュガー・ラッシュ」Wreck-It Ralph

 閉店後のゲームセンターで、ラルフは、毎日悪役ばかりで嫌われ者のキャラが嫌になあり、ヒーローになりたいと心から願い始める。そして、あこがれの“ゴールド・メダル”を手に入れたラルフは、<シュガー・ラッシュ>というレースゲームの世界に入り込んでしまう。そして、そこで出会った少女ヴァネロペと共に、冒険が始まる。“悪役キャラ”が主人公というアイデアが面白い!アニメならでは3D“飛び出し感”が楽しさを倍増させてくれる。同時上映のモノクロ・ダイアローグなしの短編「紙ひこうき」が、ノスタルジックな雰囲気満載ですごく良かった。祝!アカデミー短編アニメ賞!(3D・スコープ・108分(106分+2分)・13年3月23日)

2月12日(火)アメリカ映画「ジャンゴ 繋がれざる者」Django Unchained

 祝!アカデミー助演男優賞!往年の西部劇風のタイトルが出て、あの「続・荒野の用心棒(原題:ジャンゴ)」の主題歌がかかる。だが、そこから始まるストーリーは、賞金稼ぎのシュルツから自由を与えられた奴隷のジャンゴの復讐の物語。シュルツと共に賞金を稼ぎながら、売られてしまった妻の行方を追うジャンゴ。そして最後に辿り着いたのは、残忍な若き暴君カルビン・キャンディが支配するキャンディ・ランドだった。二人は、奴隷商人を装って、キャンディ・ランドに乗り込むが、…。とにかく、最初から撃ちまくるシーンが、かなり過激でブラッディな血のりが飛び散りまくる。黒人の奴隷問題という深刻なテーマを吹き飛ばす勢いのクエンティン・タランティーノ監督ならではのマンガチックな展開が過激だ。劇場での公開は、DCPがほとんどになる予定だが、フィルムにこだわったタランティーノ監督の指示で、本日のプレス試写は、フィルム。フィルムの質感が、マカロニ・ウェスタンにピッタリだ!(スコープ・165分・13年3月1日)

1月30日(水)アメリカ映画「パラノーマン ブライス・ホローの謎」ParaNorman

 300年前に“魔女狩り”の現場になったと言われている町ブライス・ホローに住む11歳の少年ノーマンは、死者と話ができるということで、すっかり変わり者扱いされてしまっていた。ある日、ノーマンは、死んだプレンダーガーストおじさんから、衝撃の事実を打ち明けられる。それは、“300年前に封印された魔女の魂が悪霊を呼び起こし、町を滅ぼす”ということだった。それを阻止できるのは、ノーマンしかいない!ところが、魔女の魂が甦らせたのは、7人のゾンビだった!?「コララインとボタンの魔女」のスタッフの新作。精巧に製作されたマペットを少しずつ動かしながら、1コマずつ撮影していくというストップモーション・アニメだが、ここまでハイレベルに技術が進歩したのか、とビックリ!しかも3D!マペットの表情が細かい!(3D・スコープ・92分・13年3月29日)

1月28日(月)フランス・ドイツ・オーストリア合作「愛、アムール」Amour

 祝!アカデミー外国語映画賞。パリの高級アパルトマンで優雅に老後の生活をおくっている音楽家の夫婦、ジョルジュとアンヌ。アンヌの愛弟子のピアニスト、アレクサンドルの演奏会に行き、疲れて帰ってきた翌朝、アンヌは、突然、動きを止めてしまう。その症状は、病による発作だということが分かり、手術を受けるが、失敗。家に帰りたいというアンヌの願いで、自宅での介護を始めるジョルジュ。最初は、穏やかな日々が過ぎていった。しかし、病気は、確実に悪化していく…。「老い」というものは、誰もが避けて通ることは出来ないものだが、見ているだけで、辛い。ミヒャエル・ハネケ監督お得意の暴力描写はないが、残酷なテーマだ。(ヴィスタ・127分・13年3月9日)

1月23日(水)アメリカ映画「世界にひとつのプレイブック」Silver Linings Playbook

 祝!アカデミー主演女優賞!妻の浮気で心のバランスを崩してしまったパットは、家も仕事も失ってしまい、実家で両親と共に暮らすことになる。頭をスッキリさせ、身体を鍛えて、“理想的な男”になれば、妻とヨリを戻せると思っているパット。しかし、妻は接近禁止命令を解いてくれない。ある日、友人宅のディナーで、挑発的な女性ティファニーと出会う。実は、彼女も事故で夫を亡くし、病んでいた。心の傷が大きく、そのことで異常な行動に出る2人。だが、次第に、2人の中に、新しい希望が生まれていく…。精神的な障害というテーマは、かなり難しく、デリケートなものだが、そんな難題にチャレンジした本作は、決して暗い展開にせず、明るく笑いとばそうとしているところが、アメリカらしい。(スコープ・123分・13年2月22日)

1月22日(火)アメリカ映画「ゼロ・ダーク・サーティ」Zero Dark Thirty

 9.11から数カ月後、CIAは巨額の予算を注ぎ込んで、ビンラディンを探すが、一向に手がかりを掴めないでいた。そんな時、パキスタンの追跡チームに、一人の若い女性が投入される。エリート情報分析官マヤだった。チームは、捕虜への過激な尋問から、ビンラディンの連絡員の存在を突き止める。しかし、アルカイーダも、さまざまな罠を仕掛けてくる。そしてついに、マヤは、連絡員を特定するが、…。ドキュメンタリーではないので、すべてが事実だとは思えないが、ビンラディン事件の裏側には、こんな作戦があったのか!という驚愕の事態が明らかになっていく。“ゼロ・ダーク・サーティ”とは、ネイビーシールズが、作戦を決行した深夜0時30分を意味するアメリカ軍事用語。(ヴィスタ・158分・13年2月15日)

1月22日(火)日本映画「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」Sue, Mai & Sawa : Righting the Girl Ship

 カフェに勤めるすーちゃんは、なかなか男性との巡り会いがなく、将来への不安がいっぱい。一方、同じ歳のまいちゃんは、妻子ある男性との不倫に悩んでいる。そして、40歳を間近に控えたさわ子さんは、母と共に祖母の介護をする日々をおくっていた。3人は、かつてのバイト仲間で、よく集まっていた。それなりに楽しい毎日を過ごしているように見える彼女たちだったが、切実な悩みを抱えていた。そんな現代女性たちの日常が、柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶという3人の旬の女優たちによって等身大に描き出されていく。4コマ漫画が原作とは思えないほどにリアルな生活感がある。すーちゃんは緑、まいちゃんは青、さわ子さんは黄色というように、御法川修監督ならではの色のこだわりが効果的だ。(ヴィスタ・106分・13年3月2日)

1月21日(月)日本映画「プラチナデータ」Platina Data

 DNAを解析し、「プラチナデータ」と照合することによって、犯人を特定できるようになった近未来。警察庁の特殊解析研究所の神楽龍平は、そのシステムを開発した天才科学者だった。ところが、新たな連続殺人事件の犯人のDNAを解析すると、出て来た答は、神楽自身だった。研究所から逃亡する神楽。しかし、各地に張り巡らされた監視カメラによって、彼の逃走先は、手に取るように分ってしまう。果たして、彼をワナにはめたのは誰なのか?東野圭吾の人気ミステリーの主人公に果敢にチャレンジしたのは、二宮和也。難しい役どころだが、よく頑張った。(スコープ・134分・13年3月16日)

1月18日(金)イギリス映画「アンナ・カレーニナ」Anna Karenina

 19世紀末のロシア。サンクトペテルブルグの政府高官カレーニンの妻アンナ・カレーニナは、モスクワの駅で、若き騎兵将校ヴロンスキーと出会い、一目で惹かれあう。必死で平常心を保とうとするアンナだったが、舞踏会で再会した2人の情熱は燃え上がっていく。そして、アンナは、欺瞞に満ちた社交界を捨て、ヴロンスキーとの愛に生きる決意をするが、…。アンナは、良妻を演じ、社交界の人々も常に“演技”をしていたというコンセプトの元、ほとんどのシーンを“舞台劇”的に演出していて、豪華なセットの中で、ち密に計算されたトルストイの演劇が展開されていく。主演の3人も熱演だが、脇の共演陣も贅沢だ。(スコープ・130分・13年3月29日)

1月18日(金)日本映画「遺体 明日への十日間」Reunion

 2011年3月11日、巨大な津波が、岩手県釜石市を襲った。まだ被害の全貌も分からない混乱状態の中、廃校となった旧釜石第二中学校の体育館が遺体安置所として使われることになる。泥だらけの遺体が次から次へと運び込まれるが、警察関係者や市の職員たちもどうしていいか分からない状態だ。そんな中、定年後、地区の民生委員として働く相葉常夫が、安置所を訪れるが、混乱した様子に驚愕する。そして、安置所の世話役として働かせてもらうよう嘆願するが、…。大災害の中で、避けて通ることができない問題だが、これまであまり報道されることのなかったテーマに正面から取り組んだスタッフや俳優たちの勇気に脱帽。(ヴィスタ・105分・13年2月23日)

1月17日(木)アメリカ映画「アウトロー」Jack Reacher

 銃の乱射事件で、5人が殺害される。犯行現場に残された指紋などから、元米軍スナイパーのジェームズ・バーが逮捕される。しかし、彼は、弁護士ではなく、“ジャック・リーチャー”を呼んでほしいと依頼する。そして、ジャック・リーチャーが現れ、捜査が始まる。すると、この事件の裏には、恐るべき陰謀が隠されていた!トム・クルーズが、イーサン・ハントに続いて、新しいキャラをゲットし、新しいシリーズが始まった。主人公がスマート過ぎて、展開にとんでもない破たんがないのが、ちょっと不満だが、今の観客は、こんな分かりやすいアクション映画が好きかも!?(スコープ・130分・13年2月1日)

1月17日(木)アメリカ映画「クラウド アトラス」Cloud Atlas

 星空の下、ザックリーは、自分の波瀾に満ちた人生を語り始める…。500年前の1849年、医者であるヘンリー・グースは、船で病気になった弁護士アダム・ユーイングの治療をするが、…。1936年、ユーイングの航海日誌を読んでいるのは、音楽家のロバート・フロビシャーだった。彼は、幻の名曲「クラウド アトラス六重奏」を作曲する。1973年、フロビシャーの恋人であったシックススミスは、物理学者となり、原子力発電所の報告書をジャーナリストのルイサ・レイに渡そうとして殺される。そして、2012年、作家ダーモット・ホギンズは、自著を酷評した書評家を殺して、カルト的ベストセラー作家になる。2144年、ネオ・ソウルでは、クローン少女・ソンミが隠れて映画を見るなどして、自我に目覚めていった。そして、2321年、地球崩壊後のハワイでは、ソンミは神として崇められていた。6つの時代の6つの物語が、壮大なパノラマ的スケールで描かれていて、その中に、《生命の謎》が見えてくる。1人の俳優が何役もやっていて、到底すべては分からない!ペ・ドゥナの出番が結構多くてビックリ!(スコープ・172分・13年3月15日)

1月16日(水)日本映画「ベルセルク 黄金時代編III 降臨」Berserk III Advent

 グリフィスがミッドランド王国に囚われてから1年。シラット率いる暗殺集団バーキラカが鷹の団を襲ってくる。女首領として団をまとめていたキャスカが危機一髪に陥った時、ガッツが現れ、彼女を救う。しかし、命を救ってくれたガッツに、“お前がすべて、壊した”と声を震わせるキャスカ。そしてついに、ガッツたちは、王女シャルロットの協力で、幽閉されていたグリフィスを見つけるが、…。いよいよやってくる黄金時代のクライマックス「蝕」。そして、R-15描写は、エスカレートしていき、最後は、…。(東京・大阪では、オリジナルのR-18バージョンも公開!)果たして、この後の断罪編は、映画化されるのか!?(スコープ・112分・13年2月1日)

1月15日(火)アメリカ映画「ムーンライズ・キングダム」Moonrise Kingdom

 ニューイングランド沖にある小さな島に住む12歳のスージーは、本を読むのが好きで、読んで自分だけの世界に入ってしまう。そんな彼女が、ボーイスカウトのキャンプから脱走してきた少年サムと、秘密の場所“ムーンライズ・キングダム”を目指して、駆け落ちしてしまう。そんな二人を追う両親、警官、福祉局、ボーイスカウトのウォード隊長&子どもたちなどが島中を巻き込んでの珍騒動を巻き起こす。「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」などの傑作で独特な空気を見せてくれるウェス・アンダーソン監督ならではのファンタジー。ブルース・ウィリス、ビル・マーレイ、エドワード・ノートンなど大物スターが、子どもたちに引っ掻き回されるのがとてもユニーク!(ヴィスタ・94分・13年2月8日)

1月15日(火)イギリス映画「ダイナソー・プロジェクト」The Dinosaur Project

イギリス未確認生物学会のメンバーである冒険家ジョナサン・マーチャント率いる調査隊は、謎の生物“モケーレ・ムベンベ”を捜索する旅に出発する。マーチャントの息子ルークは、彼らの乗ったヘリコプターに密航する。ところが、コンゴ中心部のジャングルそしてそこで、とんでもない生物と遭遇することになる…。グラグラ手ぶれする小型カメラの映像は、「ブレア・ウィッチ」を彷佛させるが、こちらは、次々とCGによる恐竜が出てくるので、かなり異色のモキュメンタリーになっている。後半、物語がちょっと2時間TVサスペンスのようになってきて、肩すかし。(ヴィスタ・83分・13年3月16日)

2013年1月1日(火)新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。

12月20日(木)日本映画「ひまわりと子犬の7日間」

 保険所に勤めている神崎彰司の仕事は、動物保護管理所で棄てられたり、捕獲された犬の世話。ある日、畑を荒らす野犬を捕まえてほしいという依頼で、山間部に向かった神崎たちは、母犬と3匹の子犬を捕獲する。母犬は、子犬を守るため、近付く人すべてを激しく威嚇する。何とか、犬たちを助けようと、懸命に努力する神崎。しかし、人になつかない犬は、“処分”するしかない。その期限は、7日間。果たして、神崎の努力は実るのか!?2007年に宮崎の保険所での実話を基にして作られた感動作。平松恵美子監督デビュー作だが、長年、山田洋次監督の助監督を勤めてきただけあって、手堅い演出でまとめ上げている。(ヴィスタ・117分・13年3月16日)

12月17日(月)アメリカ映画「ゴーストライダー2」Ghost Rider : Spirit of Vengeance

 魔王メフィストと契約したジョニー・ブレイズは、本人に意志とは関係なく、突然、ゴーストライダーに変身してしまうことに苦しんでいた。そんな彼のもとに現れた僧侶モローは、悪の化身ロアークが、次に取り憑こうとしている少年ダニーを救ってほしいと依頼する。そして、少年を助けてくれたら、ゴーストライダーの呪いから解放される方法を教えてくれるという。少年を次第に追い詰めていくロアーク。果たして、ジョニーは、少年を無事救うことができるのか!?前作では、ゴーストライダーに変身した後は、スタントマンが演じていたので、ニコラス・ケイジの出番が少なかったが、今回は、すべて自分でやっているそうで、結構迫力あるバイクの“走り”を見せてくれる。(スコープ・95分・13年2月8日)

12月13日(木)日本映画「脳男」No Otoko

 都内で起こる連続爆弾事件。精神科医・鷲谷真梨子の間の前でバスが爆破される。この爆破シーンがすごい!犯人のアジトに踏み込んだ茶屋刑事は、爆弾の破片が背中に刺さったまま、静かに立ち尽くす無気味な男を逮捕する。しかし、“鈴木一郎”と名乗る男は、異常に事件のことを語らない。精神鑑定をすることになり、刑事は、鷲谷に依頼する。鈴木一郎には、恐るべき能力が秘められていた…。設定をみると、韓国映画「超能力者」に似ているが、主人公のヘアスタイルも、かなり意識気味。生田斗真を日本のカン・ドンウォンにしたいのか!?(ヴィスタ・125分・13年2月9日)

12月12日(水)日本映画「横道世之介」A Story of Yonosuke

 斉藤由貴の巨大なポスターが貼られていた年、1987年。主人公の名前は、横道世之介(よこみちよのすけ)。長崎の港町から法政大学に入るために、上京してきた18歳。屈託のない性格の世之介は、サンバサークルに入ったり、同じ経営学部の女子と友だちになったり、高級ホテルでのバイトを始めたりと、次第に人間関係を広げていく。そして、16年後の2003年、それぞれに年を重ねた友人たちは、それぞれに世之介のことを思い出していた…。天然パーマ風なフワフワヘヤーの高良健吾が極めて頼り無いが、どこか憎めないキャラで、最後は、とても愛おしく思えてならない!不思議な空気の流れる作品だ。(ヴィスタ・160分・13年2月23日)

12月11日(火)日本映画「みなさん、さようなら」

 1981年、渡会悟が通っていた芙六小学校の生徒たち107人は、全員、同じ団地に住んでいた。しかし、かつては、“何でもそろう便利な街”と言われた団地も次第に時代の流れに押され、子どもたちの数は、減っていく。そんな中、小学校を卒業した悟は、“これから一生、団地の中で暮らす決心をする”。そして、中学校には通わず、団地の中だけでの生活を始めるのだった。最初、悟を演じる濱田岳が小学生に見えるから不思議だ。そして、悟は、成長していく。12歳から30歳を1人で演じて違和感がない濱田岳って、いったいいくつだと思って調べたら、なんと1988年生まれの24歳。隣の家に住む幼馴染みの優等生(波瑠)、そして小学校時代の初恋の同級生(倉科カナ)からモテモテの悟クンの役柄は、うらやまし過ぎる。(ヴィスタ・120分・13年1月26日)

12月10日(月)アメリカ映画「ホビット 思いがけない冒険」The Hobbit : An Unexpacted Journey

 「ロード・オブ・ザ・リング」が始まる60年前、フロドの伯父ビルボ・バギンズは、ホビット村の袋小路屋敷で、平和な日々をおくっていた。そんな彼の前に現れた灰色のガンダルフは、ビルボをドワーフたちの旅のお供に抜擢する。そして、邪竜のスマウグからドワーフたちのかつての王国エレボールを奪還する冒険の旅が始まる。目指すは、中つ国の東方にそびえる“はなれ山”だが、その行く手には、ゴブリン、オーク、ワーグなどが待ち受けていた。ガンダルフを演じるイアン・マッケラン始め、「ROTR」お馴染みのメンバーが再び結集しているのがうれしい。もちろん、ビルボやドワーフたち、新しいキャラもなかなかユニークだ。壮大なスケールで繰り広げられるバトルが3D効果で迫力満点。剣を持っても戦うことが出来ない平凡なホビットだったビルボの成長は著しい。新たなるスペクタクル・トリロジーの始まりだ。第2部「スマウグの荒らし場」は、2013年12月13日、第3部「ゆきて帰りし物語」は、2014年7月18日公開予定。(3D・スコープ・170分・12年12月14日)

12月7日(金)イギリス映画「レ・ミゼラブル」Les Miserables

 パンを1個盗んだという罪で19年間も投獄されていたジャン・バルジャンは、仮釈放中に逃亡し、数十年にわたり、警官ジャベールから執拗な追跡を受ける。しかし、女工ファンテーヌの幼い娘コゼットの世話を引き受けたことで、彼の人生は、大きく変わっていく。ヴィクトル・ユゴーの古典の名作の英語版ミュージカル映画。ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライドなどの歌声がすばらしい。ラッセル・クロウが歌うのは、ちょっと違和感があるが、結構うまい。アテレコでなく、実際に歌いながら撮影されたということで、かなりライブ感に溢れるミュージカルに仕上がっている。さらに、フランスのグルドンやイギリスのチャタムなどのロケで再現された19世紀のパリが映画ならではの醍醐味となっている。(ヴィスタ・157分・12年12月21日)

12月7日(金)アメリカ映画「もうひとりのシェイクスピア」Anonymous

 16世紀末のロンドン。街では演劇が盛んになり、市民も貴族も芝居に熱中していた。しかし、エリザベス1世の宰相として権威を持ったウィリアム・セシル卿は、芝居に扇動された民衆が政治に影響を与えることを恐れ、演劇を厳しく取り締まっていた。そんな演劇に長けていたオックスフォード伯エドワード・ヴィアは、自分が書いた戯曲を、他人の名前で発表させる。そして、その作者と名乗ったのが、役者のシェイクスピアだった…。18世紀以来語られていた“シェイクスピア別人説”を大胆に描いたのは、あの「インディペンデンス・デイ」などの巨匠ローランド・エメリッヒ監督。10年以上も前から企画していたが、資金調達が難航していたそうだ。非常に計算されたシナリオ構成で、思わぬ拾い物的傑作。エリザベス1世の秘められた情事など、なかなか興味深い。若きエリザベスが、年老いたエリザベスを演じる名優ヴァネッサ・レッドグレイッヴそっくりだと思っていたら、実の娘だそうだ。(スコープ・129分・13年1月12日)

11月27日(火)日本映画「ストロベリーナイト」Strawberry Night

 日本テレビの人気ドラマの劇場版。中野東署管内で男の死体が発見される。マル害には、多数の刺し傷があり、左目が縦に切られていた。その殺害手口が、5日前の三鷹の殺人、3日前の業平橋の事件と同じことから連続殺人事件の捜査本部が立ち上げられる。3つの事件のマル害はすべて龍崎組の構成員であることから内部抗争の線で捜査が開始。しかし、偶然、タレコミの電話を受けた姫川は、上司からストップが掛けられるのを無視して、柳井健斗を追い始めるが、…。事件は、警察内部の組織の問題まで大きく絡み合っていく。姫川の過去が、彼女の人間的トラウマに深く関わっていく。1シーンを除いて、全編雨のシーンで構成された絵づくりが効果的だ。(スコープ・128分・13年1月26日)

11月26日(月)アメリカ映画「テッド」Ted

 ひとりぼっちで友だちのいない少年ジョンが、クリスマスの夜、星に願いをかけたら、テディベアのぬいぐるみが喋り始め、“サンダー・バディ”になる。それから、27年、35歳になってもうだつの上がらないジョンのそばには、中年不良グマになったテディがいた。あまりにも子どもじみたジョンの生活を変えるためには、テッドとの決別が必要だと迫る恋人ロリー。やっと、別居することに決めたジョンだったが、まだまだテッドとの腐れ縁は、延々続くのだった…。セス・マクファーレン監督自身が声を出しているテッドのセリフは、とにかく過激で下品。このセリフ群だけで、R指定は当然だ。監督は、相当な映画オタクで、80年代「フラッシュ・ゴードン」や「サタデー・ナイト・フィーバー」に熱狂した世代にはたまらないギャグが満載!(ヴィスタ・106分・13年1月18日)

11月20日(火)日本映画「綱引いちゃった」Play at tug-of-war

 市役所・広報課の千晶は、大分市の知名度を引き上げるために、女子綱引きチームを作るよう命じられてしまう。それは、かつて「大分コスモレディース」という主婦たちのチームが世界チャンピオンになっていたからだった。ちっとも集まらないメンバーに困り果てた千晶は、廃止の危機に陥っている給食センターの女性たちをメンバーに引き入れる。しかし、彼女たちは、さまざまな悩みをかかえた一癖も二癖もある女性たち。果たして、綱引きチーム“綱娘”は、うまく、綱を引くことができるのか!?大分市内でオールロケされていて、行ったことのある場所もあり、どこか身近な空気に満ちたハートウォーミングなコメディ。井上真央を始めとする8人の綱娘たちのキャラがユニークだし、玉山鉄二扮するイケメンコーチが面白い。(ヴィスタ・111分・12年11月23日)

11月16日(金)日本映画「映画 妖怪人間ベム」Humanoid Monster Bem

 ベム、ベラ、ベロの3人は、かつて暮らしたことのある北海道・室蘭にやってくる。そこで、起こった連続殺人事件には、謎の“巨大な爪痕”が残されていた。さらに、被害者たちは、すべて、大手製薬会社・MPL製薬の社員だった。社長の加賀美は、事件との関係を否定するが、その裏には、新薬開発の秘密が隠されていた。そして、3人の前に、怪物が現れるが、…。2011年にスマッシュヒットとなったTV実写シリーズの映画版で、後半は、巨大怪獣との派手なバトルが繰り広げられるが、こうなってしまうと、普通の怪獣映画のノリになってしまう。もっと、“名前にない男”とのメンタルな葛藤を中心にしてほしかった。それにしても、亀梨和也の声は、こんなだったか!?(ヴィスタ・124分・12年12月15日)

11月13日(火)日本映画「東京家族」Tokyo Family

 震災で製作を延期されていた作品を新たなシナリオ、キャストで製作。瀬戸内海の小島に暮らす老夫婦は、息子たちに会うために、東京にやってくる。郊外で病院をやっている長男の家に、美容院をやっている長女、舞台で美術の仕事をしている次男も集まってくる。久しぶりに集まり、打ち解ける家族。しかし、日が経つに連れて、老夫婦と子どもたちの間には、少しずつ溝が出来てゆく。そして、…。小津安二郎の「東京物語」に捧げる作品ということで、最初のほうは、撮り方までそっくり真似していてビックリしたが、後半のストーリーは、現代版にアレンジされている。ただ、現代版の原節子が、蒼井優というのは、若過ぎ。(ヴィスタ・146分・13年1月19日)

11月13日(火)アメリカ映画「バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!」Bachelorette

 高校時代の同級生で、とても結婚なんて出来ないと思っていたデブでブスなベッキーが結婚することになり、かつてのガールズ仲間3人がニューヨークにやってくる。美人で頭が良くてモテるのに全く結婚の気配すらないレーガン、忘れられない元カレとの再会に動揺するジェナ、セックス優先で本気の恋に巡り会えないケイティ。そんな独身女子(バチェロレッテ)3人が、結婚式前夜のバチェロレッテ・パーティーではしゃぎ過ぎて、大変なことになる。結婚式前夜に起こる大惨事というのは、「ハング・オーバー!」「ブライズメイズ」などよくある話なのだが、この3人の会話は、リアルであまりにも下品!セックスシーンもあるが、彼女たちの会話がダーティー過ぎて、R15指定は、当然。(スコープ・88分・13年2月22日)

11月13日(火)アメリカ・イギリス合作「007スカイフォール」 Skyfall

 ついにベールを脱ぐシリーズ生誕50周年記念作品。世界各地に潜入しているNATOのスパイのリストファイルが盗み出される。ボンドは、敵を追い詰めるが、列車の屋根で撃たれてしまう。ファイルを盗んだ組織は、MI6にサイバーテロを仕掛け、Mの目の前でMI6本部を爆破する。果たして、犯人は誰なのか?そして、その狙いとは?例によって、イスタンブールでの派手なアクション・チェイス・シーンに始まった今回のストーリーだが、さすが、アカデミー賞監督らしく、これまで語られることのなかったボンドの生い立ちや、Mの過去が明かされていくという“人間ドラマ”の部分にも大きなウエイトを置いていて、ただのアクション作品ではないことを見せてくれる。また、アストン・マーティンやワルサーPPK/Sなどの懐かしいアイテムが再登場してくるのもファンにはうれしい仕掛けだ。(スコープ・143分・12年12月1日)

11月9日(金)フランス映画「夢想の森」La forest des songes「火の家」Les maison de feu「恐山」La montagne de laa terreur

フランスでさまざまな映画を製作しているアントワーヌ・バロー監督が小栗康平、若松孝二、寺山修司の3監督について撮ったドキュメンタリーの上映&監督トーク。若松監督は、“戦い”の映画を作り続け、小栗監督は、映画での“調和”を表現していく。(スタンダード・53分・16分・33分)

11月6日(火)フランス映画「記憶の森」Se Souvenir des belles choses

 雷にうたれたショックで記憶障害を起こした女性クレールは、姉に連れられてサナトリウムにやってくる。そこで、自動車事故で妻子を失い、記憶を失った男フィリップに会う。お互いに、トラウマを抱えた二人は、惹かれあい、療養所の医師たちは祝福するが、…。母親と同じアルツハイマーと診断されたクレールが、次第に記憶を失っていくというのが、痛々しい。(ヴィスタ・110分)

11月2日(金)アメリカ映画「フランケンウィニー」Frankenweenie

 ヴィッキー少年が大切にしていた愛犬スパーキーが事故で死んでしまう。しかし、その死を受け入れられないヴィッキーは、“禁断の実験”によってスパーキーを甦らせてしまう…。墓場から遺体を掘り出して、屋根裏の実験室に運ぶなどというプロセスも、リアルな描写であれば、閉口するシーンだが、ストップモーション・アニメーションでパペットがチョコマカと動いていくので、笑って見ていられる。窓から上げたタコが雷からの放電をとらえ、遺体に電気を流す。そして、ついに、スパーキーが動く。ところが、継ぎはぎだらけで、首からはボルトが出ていて、とても、“普通の犬”には見えない。でも、そこが、ファンタジーのミソであって、ここに科学的な再生やリアルなサイボーグは必要ない。あくまでも、少年の“夢の世界”なのだから。
 しかし、そんな夢の世界にも、いろいろとちょっかいを出してくるクラスメイトがいて、事態は、町の人々を大騒ぎに巻き込むほど大きくなっていく。悪ガキたちが、電気ショックで甦らせていく動物がユニークだ。少年時代に、愛犬を亡くしたティム・バートン監督の自伝的作品ということだが、まさに“子どものころの夢”の映像化になっていて、スパーキーや登場人物たちが愛おしく思えてならなかった。(3D・ヴィスタ・87分・12年12月15日)

10月30日(火)日本映画「渾身」Kon-Shin

 隠岐島に暮らす多美子は、夫の英明と、病死した英明の先妻の連れ子である5歳の娘・琴世とつつましい生活をしていた。しかし、親が決めた縁談を破棄し、駆け落ちのように島を飛び出した英明は、両親に勘当され、島での評判は決して良くなかった。それでも、島が大好きな英明は、島に帰って来た。そして、島に代々伝わる古典相撲を始める。そして、懸命に練習に励む英明の姿は、周囲の人々の心を少しずつ変えていく。見事に鍛え抜かれた肉体で、相撲に挑むのは、劇団EXILEの青柳翔。「今日、恋をはじめます」にもカリスマ美容師役で出ていたが、こんなに肉体派だったとはビックリ。島根県に生まれたインディーズ映画会社「出雲ピクチャーズ」によって製作された地方映画第1弾!ぜひとも、成功してほしい!(スコープ・134分・13年1月12日)

10月24日(水)アメリカ映画「人生の特等席」Trouble with the Curve

 メジャーリーグ、アトランタ・ブレーブスのカリスマ・スカウトマンと言われたガスも、年老いて、引退の時期を迎えようとしていた。さらに、視野に見えない部分が現れ、医者には治療を勧められるが、仕事が忙しい、と受け入れない。そんな彼を心配した親友のピートは、娘のミッキーにノース・キャロライナへの旅の同行を依頼する。しかし、仕事一筋で頑固な父親とミッキーは、会った途端にケンカばかりだ。ミッキー自身も法律事務所での昇格を目指して、大事な時期だった。だが、父親の病気を気づかった彼女は、父親に同行する。そして、それまで疎遠だった父と娘は、初めて正面から対峙して過去を語り始める…。クリント・イーストウッド、82歳の頑固オヤジを好演。世の中のオヤジたちの支持を取りつけるか!?(スコープ・111分・12年11月23日)

10月23日(火)アメリカ映画「リバース」Rebirth

 福岡アメリカンセンターで行われた映画「リバース」上映&監督トーク。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの生存者、遺族に関するドキュメンタリー。現場で親友を失った消防士、母親を亡くした高校生、婚約者を亡くした女性、肉親を失いながらも跡地であるグラウンドゼロの再建に関わる建設作業員などのインタビューが生々しい。ひどい火傷を負った中国人女性の7年にわたる手術などが痛々しい。しかし、事故直後から2009年の歳月の間に、彼らは、確実にリバース(再生)していっている。ジム・ウィテイカー監督によると、インタビューしたのは、9人。映画の中に入れられなかった4人の中には、イスラム教の女性教師もいるそうで、ぜひ、彼女のパートも見たい!(ヴィスタ・108分)

10月19日(金)日本映画「今日、恋をはじめます」

 勉強だけが取り柄のマジメ女子高生・日比野つばさは、入学式の日に、学校一のイケメン・椿京汰にファースト・キスを奪われてしまう。さらに、つばさを“自分の女にする”と宣言する始末。あまりにも強引な京汰のやり方に反発するつばさだったが、次第に彼のことを好きになっていく。ところが、つばさが意を決して天文台で告った途端、京汰は、去っていってしまう。果たして、京汰に何があったのか!?人気コミックを今、一番ノッている武井咲と松坂桃李のコンビで映画化したのは、マーケティングの成せる業か!?こんなベタな純愛物語に素直に感動できるのは、女子高生か!?(ヴィスタ・121分・12年12月8日)

10月19日(金)アメリカ映画「ルーパー」Looper

 タイムマシンが開発された近未来。しかし、機械の使用は禁止され、犯罪組織だけが、敵を抹殺する目的で、相手を30年前に転送していた。そして、そこには、“ルーパー”と呼ばれる殺し屋が待っていた。次々と送られて来る人物を撃ち殺す“ルーパー”のジョー。ところが、いつものように銃を構えて待っている彼の前に送られて来たのは、“30年後の自分”だった。引き金を引くことをためらった瞬間、“未来から来た自分”は、逃げ延びてしまう。「彼を殺さなければ、自分が殺される!」と、必死に“未来の自分”を追跡するジョー。しかし、“未来の自分”を追い詰めた時、彼が現代にやって来た、本当の理由が明らかになる!「エクスぺンダブルズ2」では司令官的役柄でそれほど派手なアクションシーンは多くなかったブルース・ウィリスが、かなり大掛かりなアクションをこなしているのにビックリ!(スコープ・118分・13年1月12日)

10月18日(木)日本映画「任侠ヘルパー」Ninkyo Helper

 指定暴力団「隼會」を抜け、堅気として生きていこうとした翼彦一だったが、事件が起こり服役。刑務所の中で再会した老人・蔦井雄三のつてで、大海市の極鵬会へ。そこで指示された仕事は、老人相手の闇金と、その闇金で破産した老人たちを「うみねこの家」というひどい介護施設に入れ、生活保護や年金をせしめることだった。淡々と“金集め”をこなしていた彦一だったが、老人たちを食い物にするやり方に、次第に苛立ちが募るようになっていった。そして、彼は、「うみねこの家」の改革を始める。2009年に放送されたTVシリーズの劇場版だが、主人公の草ナギ剛以外は、すべて新しいキャストで、新たなる物語が展開される。最後のまとめが難しかったと思うが、ちょっとソフトすぎるまとめ方だった。(スコープ・134分・12年11月17日)

10月18日(木)アメリカ・スペイン合作「恋のロンドン狂騒曲」You Will Meet a Tall Dark Stranger

 ある夜、ベッドで死の恐怖に襲われた老人アルフィは、若さを取り戻すために、ジムに通い、トレーニングに励むようになり、それまで40年間連れ添っていた妻を捨て、家を出てしまう。一方、突然、夫に去られたヘレナは、睡眠薬を飲んで自殺未遂を起こし、娘サリーのやっかいに。そして、占い師のインチキ予言にはまってしまう。また、サリーの家も順調ではなかった。小説家の夫ロイは、デビュー作こそは成功したが、次回作が書けず、スランプに陥っていた。ウディ・アレンらしいソフィスティケイテッドされた4つのラブストーリーが、ロンドンの街角でテンポよく繰り広げられる。アンソニー・ホプキンス、ナオミ・ワッツなど大物スターの競演もウディ・アレンならではのもの。ロイを虜にさせる赤い服の女に「スラムドッグ&ミリオネア」のフリーダ・ピント。(ヴィスタ・98分・12年12月1日)

10月16日(火)日本映画「ねらわれた学園」School in the Crosshairs

 眉村卓原作のジュブナイル小説・初のアニメ化。始業式の朝、関ケンジや幼馴染みのナツキの通う中学に謎の転校生・京極リョウイチがやってくる。次第にクラスに溶け込んでいくように見えた京極だったが、ケンジは、何か異なる雰囲気を感じていた。そして、生徒会が携帯電話の持ち込みを禁止するなど、学園は大きく変わり始める。果たして、生徒会を操っているのは、何者なのか?そして、京極の狙いは何なのか?それぞれの思いが交錯していく。時代が現代に置き換わり、かなり弾けたSF的内容になっているので、かつての映画とはかなり異なるテイストになっている。ゲーム感覚のアニメといったところか!?(ヴィスタ・106分・12年11月10日)

10月12日(金)アメリカ映画「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」Cirque du Soleil : Worlds Away

 福岡でも「キダム」「クーザ」などの公演が行われたパフォーマンス集団“シルク・ドゥ・ソレイユ”の映画版は、「アバター」のジェームズ・キャメロン監督がプロデュースした3Dファンタジー。田舎町のサーカスによってきた少女エイミーは、空中ブランコに乗っている青年に釘付けとなる。そんな彼女の視線が気になった青年は、ブランコから落下して、地面に吸い込まれてしまう。彼を追ったエイミーも、地面の中へ。そして、全く知らない世界で目を覚ます。「O」(水)、「KA」(炎)、「LOVE」(愛)などラスベガスでしか見られない7つのショーがフューチャーされ、オリンピック級のパフォーマーたちによるスペクタクルなショーが次々に展開され、日本にいて、こんなパフォーマンスが見られるというのは、とてもお得だ。(3D・ヴィスタ・97分・12年11月9日)

10月11日(木)日本・イギリス合作「JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]」JAPAN IN A DAY

 未曾有の震災から一年、2012年3月11日の日本をさまざまな人たちが撮った映像を繋いで作られたドキュメンタリー。リドリー・スコット監督のもとには、You Tube を通して、8000本もの映像が集まってきた。1歳の誕生日を迎えた女の子、婚姻届を出す二人、角打ちの客と談笑する酒屋の店主、各地で行われたマラソン、少女が捉えた小さな黄色い花、…。どこにでもありそうなありふれた風景だ。だが、震災の起こった14時46分。被災地だけでなく、日本中が“黙とう”する。そこには、それまでとは違った時間が流れている。そして、1日の風景は、不思議な希望に繋がっていく。3月11日は、“普通の一日”であって、“普通の一日”ではない。(ヴィスタ・92分・12年11月3日)

10月10日(水)アメリカ映画「映画と恋とウディ・アレン」Woddy Allen : A Documentary

 「アニー・ホール」のアカデミー賞受賞で一躍世界の一流監督に登り上がった天才監督ウディ・アレンのドキュメンタリー。その後の彼は、「インテリア」で初のシリアスものに挑戦したり、「スターダスト・メモリー」がさんざん酷評されたり、作品も大変だったが、ダイアン・キートン、ミア・ファローなど女優たちとの浮き名も多く、かなり偏屈なイメージが強いが、その原因が幼い頃の母親との確執にあったというのは、実に興味深い。年に1本の新作を作り続けるバイタリティには驚かされるが、そこに“多くの作品を作り続ければ、傑作も生まれる”という“数量説”があるというのにもビックリだ。現在76歳、まだまだ元気なウディ・アレンだ!(ヴィスタ・113分・12年11月10日)

10月9日(火)第17回プサン国際映画祭から帰国しました。今年も、多くの監督や俳優、プロデューサーなどと交流してきました。

10月4日から9日まで、第17回プサン国際映画祭にゲストとして出席します。

10月3日(水)今週から、九州大学・伊都キャンパスでの「映画を通じて見るアジアと日本」の講議スタート。

9月25日(火)アメリカ映画「エクスペンダブルズ2」The Expendables 2

 再び、アクション映画のスターたちが終結したオールスター映画第2弾。ネパールの反乱軍の基地を急襲し、人質になっていた中国の富豪を奪還に成功した傭兵軍団<エクスペンダブルズ>のメンバーたちのもとへ、新たなる仕事が舞い込む。それは、バルカン半島に墜落した中国の輸送機の金庫からあるデータボックスを回収するというものだった。金庫のアクセスコードを解読するために、女性エージェント・マギーが軍団に同行する。危機一髪でデータを回収した軍団だったが、彼らの前に、凶悪な武装集団が現れ、事態は予期せぬ方向に転がり始める…。もちろん、派手なアクションに次ぐアクションの連続だが、そんな中に、メンバーそれぞれの人間的な悩みなども少し入れ込まれ、ドラマ部分も少し広がった。前回、カメオ出演だったシュワルツェネッガー、ウィリスも派手な戦闘シーンを見せてくれる。(スコープ・102分・12年10月20日)

9月24日(月)今週から西南学院大学での「フランス映画論I」の講議スタート。受講者数85名。

9月21日(金)イギリス映画「砂漠でサーモンフィッシング」Salmon Fishing in the Yemen

 水産学者アルフレッド・ジョーンズ博士は、“砂漠の国イエメンの川に、鮭を泳がせて釣りをする”というとんでもないプロジェクトの顧問を依頼される。「不可能だ」という返事をメールするが、事態は急変。中東情勢が悪化し、首相広報担当官が、イギリスへの批判をかわすための明るい話題作りに“イエメンで鮭釣り”を選んだのだ。投資コンサルタントのハリエットと共に、依頼人であるイエメンの大富豪シャイフの城に行くと、意外にも、富豪は、人情味に溢れた釣り人だった。意気投合する二人。しかし、道のりは、平たんではなかった。荒唐無稽でムチャな“鮭釣り”計画だが、“人生、夢を忘れずに!”という人生訓を教えてくれる。(スコープ・108分・12年12月8日)

9月19日(水)日本・イギリス・台湾合作「希望の国」The Land of Hope

 東日本大震災から数年後。酪農を営んでいる小野泰彦一家が住む架空の県・長島県をマグニチュード8.3の地震が襲う。そして、近くにある原子力発電所が爆発する。半径20キロ圏内が警戒区域に指定され、隣の鈴木一家は、避難させられてしまうが、道路ひとつ隔てた小野家は、そのまま。だが、町には、長いフェンスが張り巡らされ、立入禁止の看板が立てられる。“国はあてにならない”という泰彦は、息子の洋一夫婦を説得し、避難させるが、…。避難させれた人々は、2度と故郷に帰って来れない。そして、放射能の恐怖は、どこに行っても消えることはない。そんな日本は、果たして、「希望の国」なのだろうか?原発の恐怖をきちんと家族ドラマの中に描いた園子温監督の勇気を讃えたい!(ヴィスタ・133分・12年10月20日)

9月18日(火)アメリカ映画「モンスター・ホテル」Hotel Transylvania

 人間の放った火によって屋敷を焼かれ、最愛の妻を失ったドラキュラは、愛娘メイヴィスと仲間のモンスターたちのために、故郷トランシルバニアに巨大なホテル<モンスター・ホテル>を作った。そして、娘メイヴィスの118歳のバースデーパーティーを開催する。フランケンシュタイン夫妻、59匹の子どもを連れたおおかみ男夫妻、包帯だらけのミイラ男、めがねだけの透明人間など世界中から集まってくるモンスターたちが、それぞれ結構凝ったキャラで面白い。そんなモンスターだけのホテルに、こともあろうか、21歳の人間の若者ジョニーが迷い込んできたから、さあ大変。しかも、メイヴィスに一目惚れしてしまう!人間を恐怖のどん底に陥れるモンスターたちだが、彼らにも親としての悩みがあり、大変なのだ。アニメだけに、3Dの飛び出し具合いもちょうどいい感じで、細かいところまで楽しめるファミリー・ピクチャーだ。(3D・ヴィスタ・吹替・92分・12年9月29日)

9月14日(金)日本映画「アウトレイジ ビヨンド」Outrage Beyond

 北野武監督が初めて臨んだ続編。前作から5年後、加藤会長率いる山王会は、巨大暴力団組織となり、政治の世界にも勢力を広げていた。そんな山王会の急激な勢力拡大には警察も手を焼いていた。そんな状況を変えようと、マル暴の片岡刑事は、刑務所を訪れる。なんと、そこには、死んだと思われていた大友がいた。片岡は、大友を関西の暴力団組織<花菱会>に縁組みさせ、山王会にダメージを与えようと画策するが、…。例によって、幹部同士のどなり合いの連続で、見続けていると疲れる。組事務所など屋内のシーンが続くせいか、高速道路や屋敷に入ってくるところなど車の場面が多く、無駄な感がする。前作では、ちょっと異常なテンションの石原を演じた加瀬亮がもうけ役だあったが、今回は、無言で殺しまくる高橋克典がカッコイイ!(スコープ・112分・12年10月6日)

9月14日(金)アメリカ映画「アルゴ」Argo

 1979年11月、イスラム革命の最中、イランの過激派がアメリカ大使館を襲撃した。彼らは、アメリカに逃げた前国王の引き渡しを要求する。ところが、混乱の中、6人が裏口から脱出し、カナダ大使の家に身を隠していた。見つかれば、公開処刑になる可能性が大だ。6人を救い出すために、CIAの人質奪還のプロ、トニー・メンデスが召集される。そして、さまざまなアイデアに中から彼が選んだ“名案”は、ウソの映画製作だった!6人をロケハンに来た撮影スタッフに仕立て上げ、出国させるという前代未聞の作戦だった。ハリウッドに行ったトニーは、本物のプロデューサーを雇い、派手な製作発表を行う。そして、テヘランに乗り込むトニー。果たして、“ハリウッド作戦”は成功するのか!?まるで、スパイ映画のような展開だが、これが事実だということにただただビックリ!ベン・アフレックは、一級のサスペンス映画の監督になった。(スコープ・120分・12年10月26日)

9月12日(水)日本映画「ツナグ」Tsunagu

 死者との再会を叶えてくれる“ツナグ”という使者は、普通の男子高校生・渋谷歩美(あゆみ)だった。ガンで亡くなった母親に会いたいという製材所の畠田は、“ツナグ”の存在を怪しがり、なかなか信用しないが、実際に母親と再会して、気持ちが大きく変わっていく。そして、喧嘩別れしたまま、事故で死んでしまった親友・御薗(みその)に聞きたいことがあるのは、女子校生の嵐だった。また、サラリーマンの土谷は、プロポーズ直後に失踪した恋人・キラリのことが忘れられないでいた。そんな3組の死者との再会は、歩美の考えも大きく変えていく。“死者と再び出会える”というのは、実際には不可能なことだ。だから、かなりSF的発想なのだが、“鏡”が出てきて、古臭いお伽話か、と思いきや、再会するのが、高級ホテルの部屋という現代っぽいリアルさが入り混ざった不思議なファンタジーだ。“もし、出会えるとしたら”、誰に会いたいだろう!?(スコープ・129分・12年10月6日)

9月6日(木)日本映画「その夜の侍」The Samurai that Night

 小さな鉄工所を営む中村は、5年前に最愛の妻・久子をひき逃げ事故で失い、その痛手から立ち直れないでいた。アパートでは、留守番電話に残された妻の声を延々と再生しながら、妻に禁じられていた甘いプリンを食べ続けている。一方、久子をひき逃げしたトラック運転手の木島は、2年間の服役を終え、腐れ縁の友人・小林の家に居候していた。そんな木島のもとに、「お前を殺して俺も死ぬ。決行まであと○日」という脅迫状が毎日届くようになる。全く異なる世界に生きる2人の男たち。彼らは、運命のいたずらで出会い、その人生を絡ませていく。小さな日常がこつこつと描き込まれていき、それが次第に、観客の予想を裏切る展開になっていく。細かい日常の積み重ねが、しびれるようなリアルさを引き出していく。久々の傑作の誕生だ。(ヴィスタ・119分・12年11月17日)

9月5日(水)日本映画「黄金を抱いて翔ベ」Fly with The Gold

 20数年ぶりに故郷・大阪に帰ってきた幸田は、学生時代からの友人・北川に、隠れ家と仕事を世話してもらう。それは、銀行の地下に眠る240億円の金塊強奪計画の始まりだった。外車ショーで知り合ったエンジニアの野田、元エレベーター技師の“ジイちゃん”斉藤、さらに、爆弾のエキスパートとして、元・北朝鮮のスパイ、チョウ・リョファン、さらに計画を聞き付けた北川の弟・春樹が加わり、6人の大胆不敵な計画がスタートするが、…。北川が“札束は信用できないが、金塊は永遠だ。”というのが、なぜ、“金塊”なのか?ということなのだろうが、それにしても、今時、金塊というのは、時代錯誤ではないのだろうか!?出ている俳優たちは現代のスターたちなのだが、何か古い日本映画を見た感がある。(スコープ・129分・12年11月3日)

9月3日(月)アメリカ映画「推理作家ポー最期の5日間」The Raven

 1849年アメリカ・ボルティモアで殺人事件が起こる。殺されたのは、母と娘だったが、その殺害方法は、エドガー・アラン・ポーの推理小説「モルグ街の殺人」そのままだった。さらに続いて、今度は「落とし穴と踊り子」になぞらえた方法で、ポーの天敵である文芸評論家グリズウォルドが死体で発見される。事件を担当したフィールズ刑事は、ポーに協力を求める。果たして、ポーは、犯人からの挑戦に答えることはできるのか!?19世紀のボルティモアが舞台だが、実際のロケは、ハンガリーのブダペストやセルビアで行われており、かなりダークな雰囲気のゴシックホラーになっている。ただ、事件の中に、ポー自身を入れ込むというアイデアは、ちょっとゴチャゴチャな感じがする。(スコープ・110分・12年10月12日)

8月29日(水)日本映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」Bayside Shakedown The Final New Hope

 湾岸署の管内で開催中のエネルギーサミットの会場で、誘拐事件が起きる。数時間後に射殺された被害者が発見される。使用されたのは、6年前の事件で押収され、保管庫に保存されていた拳銃。警視庁は、拳銃の出所を隠して、湾岸署に捜査本部を作るが、所轄には、何の情報も開示されない。何かウラがあると感じた青島刑事は、独自に捜査を始めるが、…。お馴染みの“踊るメンバー”の軽快なギャグの連発に笑いながらも、警察という組織の中で翻弄される人々の悲哀が深く込められたファイナルになっている。(スコープ・127分・12年9月7日)

8月28日(火)アメリカ映画「バイオハザード・ダムネーション」Biohazard Damnation

 ゲーム「バイオハザード」のフルCGアニメ第2弾。東欧・東スラブ共和国では、反政府軍による独立運動が起こり、壮絶な戦場と化していた。生物兵器「B.O.W.」が実戦に投入されたという情報を受け、アメリカ大統領直属エージェントのレオンは、共和国に潜入する。とろこが、直後にアメリカから撤退命令が下されるが、レオンは、戦場に残り、「B.O.W.」を追う。リッカーが現れ、反政府勢力によって拉致されるレオン。政府軍の総攻撃が迫る中、果たして、レオンは脱出できるのか!?アニメなので、リッカーなどのクリーチャーがよりグロテスクに描かれ、その気持ち悪さはPG12でいいの?という感じ。ゲームよりかなりグロな展開のようだ。(ヴィスタ・100分・12年10月27日)

8月27日(月)フランス・ドイツ・ベルギー合作「チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢」Poulet aux prunes

 14歳で故国イランを離れ、ヨーロッパで波瀾の青春をおくった自伝アニメ「ペルセポリス」で一躍有名になったマルジャン・サトラビ監督が、次回作に選んだのは、自作コミックの実写映画化。天才音楽家ナセル・アリは、大切なバイオリンを壊され、死ぬことにする。1日目、彼はただベッドに横たわり、静かに死のうとする。しかし、妻のファランギースは、そんな夫を気にも留めず、腹を立ててばかり。娘のリリだけが、心配してくれる。2日目、ファランギースがナセルの弟のアブディに相談するが、やってきた弟とナセルは、兄弟ゲンカ。そんな感じで、日々が過ぎていき、ナセルは、最後の夢を見る。「ペルセポリス」同様、独特の雰囲気に満ち溢れたファンタジーだ。(スコープ・92分・12年11月10日)

8月24日(金)アメリカ映画「エージェント・マロリー」Haywire

 マロリー・ケインは、世界中で危険な秘密作戦を実行するプロのスパイ。軍事企業のトップからの依頼を受け、バロセロナで人質救出を成功させた彼女は、休む間もなくダブリンへ。ところが、そこで待っていたのは、非情な罠だった。命を守るために戦うマロリー。しつこく追ってくる敵の正体は?アメリカ総合格闘技界のカリスマスター、ジーナ・カラーノの身体能力が素晴らしい!スティーブン・ソダーバーグ監督作品だけに、ユアン・マクレガーやマイケル・ダグラス、アントニオ・バンデラスなどの共演陣が豪華だ。あのマイケル・「シェイム」ファスベンダーだって脇役だ。(スコープ・93分・12年9月28日)

8月23日(木)日本映画「のぼうの城」The Floating Castle

 豊臣秀吉は、敵である北条勢を打ち負かし、天下統一の目前だった。そこで、寵愛する家臣・石田三成に手柄をたてさせるべく、2万の軍勢を率いて、小さな田舎の城“忍城(おしじょう)”の攻略を命じる。せいぜい500名ぐらいしか戦えない忍城は、簡単に降伏すると思われていた。ところが、城を治めることになった成田長親は、ちょっと普通と変わっていた。農民たちから“のぼう様”と呼ばれる彼は、石田軍と戦うと言ってしまう。それから、20000VS500のとんでもない戦いが始まってしまう!かなり荒唐無稽な話だが、実際に起こった出来事を元に作られているというので、こんなこともあったのだろう。広大な大地に作られた巨大な“浮き城”のオープンセットで、戦国時代のユニークなバトルが繰り広げられるのは、見ていて、爽快な気持ちにさせられる。(スコープ・145分・12年11月2日)

8月21日(火)日本映画「終の信託」

 周防正行監督が「Shall we ダンス?」以来16年ぶりに、草刈民代、役所広司とタッグを組んだ社会派の問題作。総合病院の呼吸器内科に勤める折井綾乃は、患者からも評判によいエリート医師だ。しかし、不倫関係にあった同僚の医師に振られ、自殺未遂騒動を起こしてしまう。そんな彼女を癒してくれたのは、重い喘息で入退院を繰り返していた江木という初老の男性だった。綾乃と江木は、それぞれが抱えている悩みを打ち明けあい、深い絆で結ばれる。しかし、江木の病状は悪化していた。そして、死期が迫っていることを自覚した江木は、綾乃に“あること”を依頼する。延命治療とは、どこまで必要なのか!?患者に、“尊厳死”の自由はあるのか!?次々と高度な医療技術が発達する中、医師は、どこまで延命の努力をしなければならないのか!?さまざまな問題をはらみ、議論を巻き起こすのが必定だ。(ヴィスタ・144分・12年10月27日)

8月20日(月)日本映画「人生、いろどり」

 四国・徳島県の山間にある小さな町・上勝町は、高齢者が半数近くを占める過疎地だ。その年の冬は、一番の収入であるミカンが全滅し、代わりに作った野菜も全然売れない悲惨な状況だ。そんな苦しい状況を打開しようとアイデアを探していた農協職員の江田は、居酒屋で目にした光景をヒントに、料理の彩りに使う<つまもの>と呼ばれる葉っぱを売ることを思いつく。しかし、町の人々は猛反対。面白半分でのってきた花恵と薫は、家族に内緒で、葉っぱ作りを始める。出荷した“葉っぱ”は、市場では売り物にはならない。だが、花恵たちの思いは、次第に変化していく。今や、年商2億円以上にも成長した“葉っぱ”ビジネスは、実際に四国の小さな町で起こった奇跡だ。おばあちゃんたちに扮するのが、吉行和子、富司純子、中尾ミエという豪華な女優で、かなり元気だ。畑でiPadを使いながら注文を取るばあちゃんたちの姿が面白い!御法川修監督は、第23回福岡アジア映画祭で上映させていただいた「色彩の記憶」でも“色”にこだわっていたが、今作でも色をうまく使い分けている。(ヴィスタ・112分・12年9月15日)

8月17日(金)ドイツ映画「コッホ先生と僕らの革命」Der ganz grosse Traum

 1874年、ドイツのブラウンシュヴァイクのカタリネウム校に、若き英語教師コンラート・コッホが赴任してくる。しかし、フランスとの普仏戦争に勝利した帝政ドイツは、次なる敵国としてイギリスに対する嫌悪感が高まっていた。英語に対する興味を少しでも持って、楽しく授業をするために、コッホ先生は、イギリスから持ち帰ってきたサッカーボールを使うことにする。今までやったこともないサッカーのゲームに夢中になり、英語も覚えるようになる生徒たち。しかし、そのことを知った学校側は、敵国のスポーツであるサッカーを禁止にしてしまう。だが、コッホ先生は、そんなことでは落ち込まない。そして、生徒たちも、…。19世紀末のドイツでは、サッカーは、“反社会的”なゲームだったのだ。今や、サッカー大国となったドイツ。そんな“ドイツ・サッカーの父”と言われた実話を見ていると、大きな時代を深く感じる。(スコープ・114分・東京12年9月15日、福岡10月)

8月10日(金)アメリカ・フランス合作「コロンビアーナ」Colombiana

 南米コロンビア、9歳の少女カトレアは、裏社会のボス、ドン・ルイスの命令によって目の前で両親を惨殺される。父親の指示で、シカゴの叔父の元に辿りついた彼女は、成人し、美しく冷酷な殺し屋に成長していた。そして、23件もの困難な“仕事”をこなしてきた彼女は、ついに両親の仇の情報を掴む。復讐に燃えるカトレアは、動き始める。しかし、彼女の存在に気付いたドン・ルイスも応酬の命令を出す。リュック・ベッソンが長年夢見ていた「レオン」に続く“女性アクション”映画。「アバター」のゾーイ・サルダナは、“クラヴマガ”というイスラアエルの格闘技のトレーニングをしたということで、すらりとしスタイルながら、かなりハードなアクションを見せてくれる。(スコープ・108分・12年9月1日)

8月9日(木)アメリカ映画「アベンジャーズ」Mervel's The Avengers

 国際平和維持組織シールドの基地で、四次元キューブの研究が行われていた。しかし、制御不能になったキューブは、異次元世界につながるワームホールを生み出し、そこから現れたのは、アスガルドを追放された邪悪な神ロキだった。兄ソーへの復讐と地球の支配を企むロキは、セルヴィグ博士とホークアイをコズミック・スピアによって洗脳し、キューブを強奪する。地球滅亡の危機に瀕したシールドのフューリー長官は、周囲の反対を押し切って、“パワー”を持つ7人のメンバーによる“アベンジャーズ”の結成を開始する。それぞれに悩みを持ち、他人から距離を置いて穏やかに暮らすヒーローたち。一クセも二クセもあるヒーローたちは、すんなりチームを組もうとはしない。そんな彼らをどうやって説得して、結集させたのかというプロセスが丁寧に描かれていて、単なるコミックものとは一線を画している。また、ナターシャとクリント、スタークとペッパー・ポッツ、そしてソーとロキの兄弟愛など、ドラマ部分もきちんと描かれている。ホークの活躍が予想以上に多いのも見ものだ。来年GWの「アイアンマン3」、11月の「マイティ・ソー2」、2014年の「キャプテン・アメリカ2」、そして、2015年の「アベンジャー2」と、マーベルの快進撃は、まだまだ続く!(ヴィスタ・144分・12年8月14日)

8月8日(水)アメリカ映画「ボーン・レガシー」The Bourne Legacy

 ボーンとCIA内部調査局のパメラ・ランディの告発で、<トレッドストーン計画>は、明るみに出ようとしていた。国家調査研究所のリック・バイヤーは、国家が危機に陥ることを怖れ、全てのプログラムを抹消を命令する。次々と、暗殺されていく工作員たち。その頃、アーロン・クロスは、アラスカの雪山で訓練に励んでいた。彼は、CIAによる人格・肉体改造の<アウトカム計画>の暗殺者だ。「ボーン」シリーズを見ているので、主人公がCIAに作られた工作員であることは、すんなり理解できるが、今回新たに投入されたアイテムは、肉体改造のための活性ウィルス。その薬をマニラで製造しているということで、舞台はフィリピンへ。マニラの町中でのバイクによるチェイスシーンが相当大掛かりで、目まぐるしい。マット・デイモンを一躍アクションスターに踊り上げた「ボーン」3部作に続く新たなシリーズの幕開けだ。(スコープ・135分・12年9月28日)

8月2日(木)アメリカ映画「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」The Dictator

 「ボラット」のサシャ・バロン・コーエンの次なる役は、北アフリカ・ワディヤのキケンな独裁者アラジーン将軍。国連サミットで演説をするために、ニューヨークにやってきた将軍様は、何者かに拉致され、トレードマークのヒゲを奪われて、身元不明の難民になってしまう。それに対して、国連に出席した影武者が、“ワディヤは民主主義国家に生まれ変わる”と宣言してしまう。何とか、新憲法サインを阻止しようと、核開発の責任者だったかつての部下ナダルと共に、逆襲計画を進める将軍だったが、…。例によって、バロン・コーエン・ワールドは、ブラックユーモアや下品な下ネタが満載で、素直に笑い飛ばせないものも多い。だが、アメリカの政治家批判も鋭く、よくこんな映画が作れたものだ、と感心させられる部分もある。「ヒューゴ」で共演したからなのか、サー・ベン・キングズレーが側近役で出ているのもビックリだし、エドワード・ノートンのカメオ出演にも爆笑!あんなに俳優たちの実名出して、クレーム来ないんだろうか?(スコープ・83分・12年9月7日)

7月27日(金)日本映画「天地明察」Tenchi Meisatsu

 天体ゴールデンイヤーに贈る“江戸×天体”映画。江戸時代、日本は800年前の中国の暦を使っていたため、暦に大きなズレが生じ始めていた。そんな暦の間違いを正し、新しい暦を作るという一大計画のリーダーに大抜擢されたのが、安井算哲だった。彼は、碁打ちであったが、星の観測や算術に長けていた。しかし、暦の間違いを正すためには、途方もない労力と時間が必要だった…。パソコンやケータイなどの電子機器のない時代に、とにかく“人”の力で、天文や数学、そして時間に挑戦した実在の男・安井算哲。彼がいたから、今の暦がある!江戸時代に本当に夢とロマンに向かって突き進んだ、こんな男がいたんだ。算術の部分が理屈が多く、ちょっと難解で分かり辛いが、天体観測の器具などは、大掛かりなオモチャのようで、興味深い。また、裏側で糸を引く幕府の役人たちの姑息な行動は、今の政治家に通じるものがある。(スコープ・141分・12年9月15日)

7月27日(金)フランス映画「最強のふたり」Intouchables

 歴代興収No.2という大ヒットになったフランス映画。パリ郊外に住む大富豪フィリップは、ハングライダーの事故で、首から下が麻痺して動かない。そんなリッチな家に、介護人の面接にやって来たスラム出身の黒人青年ドリスは、なぜか、採用されてしまう。生まれも育ちも全く異なる2人だったが、偏屈で頑固なフィリップの命令に、全然動じずにマイペースで仕事をこなすドリスとの間に、次第に不思議な絆が芽生えていく。普通だったら全く違う世界に暮らす2人が、出会い、深い絆で結ばれていくという感動の実話なのだが、暗い話でなく、要所々々にコミカルなギャグが盛り込まれていて、ある意味、コメディになっているところが、フランス人にウケたところなのだろう。実際の話もハッピーエンドなので、映画も楽しくということだろう。(ヴィスタ・113分・12年9月1日)

7月26日(木)アメリカ・南アフリカ合作「デンジャラス・ラン」Safe House

 新米CIA職員マットの仕事は、“隠れ家”の管理人。しかし、南アフリカのケープタウンにある隠れ家は、めったに使われることはない。ところが、そんなマットの隠れ家に、ある日、大物犯罪者が護送されてくる。CIA史上最高のエリート諜報員と言われたトビン・フロストだ。今や、フロストは、世界36カ国から指名手配を受けている危険人物だった。そんなフロストの到着と同時に、隠れ家が襲撃され、マットは、フロストと共に、逃亡することになる。果たして、フロストは、何をしたのか!?そして、彼は、本当に犯罪者なのか!?共に逃亡するうちに、マットは、真実を知っていく!クルに追っ手を撃ち殺すデンゼル・ワシントンの悪役ぶりがなかなかサマになっている。(スコープ・115分・12年9月7日)

7月25日(水)アメリカ映画「THE GREY 凍える太陽」The Grey

 苛酷な石油採掘現場で働くのは、元囚人や脱走兵など世間からドロップアウトしてきた男たちばかり。そんな男たちを乗せた飛行機が、アラスカの荒野に墜落する。生き残ったのは、たったの7人。大雪原の中に取り残された男たちを縄張りを侵された野生のオオカミたちが襲って来る。野獣の攻撃から作業員を守るために雇われていた射撃の名手・オットウェイは、オオカミの習性を説明し、林への移動を提案するが、…。「凍える太陽」というぐらいだから、とにかく、すべてが氷る世界で、そんな中を地図も何もなく、ひたすら移動する男たちの姿があまりにも悲惨で、“なぜ、こんな映画を作ったのか?”という素直に疑問が頭から離れなかった。(スコープ・117分・12年8月18日)

7月25日(水)アメリカ映画「ロック・オブ・エイジズ」Rock of Ages

 シンガーになるためにオクラホマからロスに出てきたシェリーは、伝説のライブハウス「バーボンルーム」で働く青年ドリューのお陰で、店でウェイトレスをやることになる。店に集まってくる若者たちの夢は、チャンスを掴み、スターになること。かつて一世を風靡し、スターダムへと伸し上がったロックバンド“アーセナルズ”のボーカル、ステイシー・ジャックスも、そのひとりだった。しかし、“ロックの神様”と呼ばれたスチシーの人気にも陰りが見え始め、ソロでの再起も前途多難だった。ブロードウェイで今なおロングランヒット中の人気ミュージカルの映画化だが、落ちぶれたロックミュージシャンを演じるのが、トム・クルーズとあって、彼のキャラクターを中心に、大幅にストーリーをアレンジ。また、「バーボンルーム」のオーナーを演じるアレック・ボールドウィンや、市長夫人役のキャサリン・セダ=ジョーンズなど、映画ならではの豪華なキャストが歌って踊りまくる贅沢なハリウッド・ミュージカルだ。(スコープ・123分・12年9月21日)

7月19日(木)アメリカ映画「ダークナイト・ライジング」The Dark Night Rises

 ダークナイトが闇に消えてから8年。ゴードン市警本部長は、ハービー・デントの正体を明かす原稿を書いてくるが、その発表は控えてしまう。デント法のお陰で、犯罪者たちは投獄され、平穏なゴッサム・シティーになったからだ。しかし、その静けさは、一時的なものでしかなかった。覆面テロリスト、ベインは、恐るべき破壊計画を実行に移し始める。その巧妙な計画を阻止できるのは、“彼”しかいない。果たして、悲痛のもとに引退してしまっていたブルース・ウェインは、再びマスクをかぶることができるのか!?「ダークナイト」3部作が、今、完結する。IMAXキャメラで撮られた映像は、迫力満点で、スピーディー。そして、このシリーズの特徴であるブルース・ウェインの人間的な葛藤がさらに奥深い!(スコープ・165分・12年7月28日)

7月18日(水)日本映画「あなたへ」Dearest

 高倉健、6年ぶりの主演作。富山の刑務所で指導技官をやっている倉島のもとへ、亡くなった妻・洋子からの絵手紙が届く。そこには、“故郷の海を訪れ、散骨して欲しい”と書いてあった。さらに、もう1通の手紙は、故郷である長崎県平戸市の郵便局の局留めになっていて、10日以内に受取らなければ、ならなかった。倉島は、長い間勤めていた刑務所に辞表を出して、キャンピングカーで、長崎までの旅に出る。そして、その旅の途中で、さまざまな人たちと出会うことによって、倉島は、亡き妻の愛情を知ることになる。途中で出会う人たちのキャストの豪華さは、一重に高倉健の作品ということに尽きるだろう。久しぶりの撮影現場は楽しくて仕方がないといった感じで、うれしそうに演技する健さんの姿に、これまでの作品が甦ってくる。(ヴィスタ・111分・12年8月25日)

7月17日(火)アメリカ映画「白雪姫と鏡の女王」Mirror Mirror

 「スノーホワイト」とは、かなり異なるテイストの、“もう一つの「白雪姫」実写版”。継母の女王にイジメられ、18歳になっても城に閉じ込められていた白雪姫。贅沢な生活が過ぎ、破産寸前に追い込まれた女王は、リッチな隣国のハンサムな王子と結婚することで、富と愛を一気に手にいれようと企む。しかし、王子は、白雪姫に一目惚れ。怒った女王は、臣下に姫の暗殺を命令するが、…。とにかく口の悪い毒舌ワガママ女王を演じるのは、ハリウッド・アイコン、ジュリア・ロバーツ。「鏡よ、鏡」の名セリフで、鏡の精とのヒステリックなやり取りをする悪役がぴったりだ。対する白雪姫は、7人の小人たちに鍛え上げられて、闘うプリンセスに成長していく。演じるのは、歌って踊れるリリー・コリンズ。フィル・コリンズの娘だ。これまで、ダークな世界を描くことを得意としていたターセム監督だが、今回は、出身であるインドのボリウッド・ミュージカルのような華やかな世界を堪能させてくれる。(ヴィスタ・106分・12年9月14日)

7月15日(日)第26回福岡アジア映画祭2012、盛況のうちに終了。福岡グランプリ2012は、韓国映画「ネバーエンディングストーリー」。審査員の唐寅さんから賞状、ジャン=クリスチャン・ブーヴィエさんからトロフィーが贈られました。さらに、アン・ソンギ氏に、福岡アジア映画祭・終生達成賞のトロフィーが贈られました。

7月13日(金)から第26回福岡アジア映画祭2012の後半戦。ゲストは、台湾の林育賢(リン・ユーシェン)監督、ファン・インホ監督(韓国)、キム・ダルジュン監督(韓国)、チョン・ヨンジュ監督(韓国)、そして、韓国を代表する国民俳優アン・ソンギ氏。会場の明治安田生命ホールに集合!

7月11日(水)アメリカ映画「メリダとおそろしの森」Brave

 愛馬アンガスに乗って森の中を自由奔放に駆け回るのが大好きな王女メリダは、王家の伝統を重んじる厳格な母エリノアとしばしば対立する。そしてその溝は、エリノアがメリダの結婚話を強引に進めたことから決定的なものに。口論の末、城を飛び出したメリダは、森の奥で不思議な“鬼火”に導かれ、魔女に出会い、魔法で自分の運命を変えてほしいと依頼する。しかし、魔女の魔法は、とんでもない災いを招くことになる。自分のエゴのために、とんでもないことになってしまったメリダ。しかし、メリダは、ただ落ち込むことなく、この事態を変えるために、ポジティブに行動し始める。この物語は、Braveという原題が示すとおり、メリダの勇敢な闘いを描いていき、素直に感動的できる。(スコープ・108分・12年7月21日)

7月10日(火)日本映画「エイトレンジャー」Eight Ranger

 経済危機のため失業者が溢れ、治安悪化がひどい八萬市(エイトシティー)だが、警察も知らんぷり状態。そんな街で、闇金の追い立てから逃げていたニートの青年・横峯誠は、ヒーロー協会にスカウトされる。しかし、行ってみると、ほかのメンバーは、ヒーローとは名ばかりで、借金返済のためにバイトのようにやっている、やる気のない者ばかり。何とかしなければ、と“伝説のヒーロー”キャプテン・シルバーに教えを乞うが、…。そのころ、悪のテロ集団「ダーククルセイド」の恐るべき陰謀が企てられていた。監督が堤幸彦だけに、ストーリーは、「20世紀少年」のアイドル版といった感じで、軽〜く、ゆる〜く展開していく。関ジャニ∞ファンには、たまらない映画になっているのだろう!?(スコープ・112分・12年7月28日)

7月9日(月)西鉄グランドホテルで、「福岡巴里祭」祝賀会。

7月9日(月)日本映画「夢売るふたり」

 東京の下町で小料理店「いちざわ」を営むのは、料理の腕に自信がある貫也と、夫を献身的に支える里子のおしどり夫婦だった。ところが、火事で店は全焼してしまう。念願の“自分の店”を一晩で無くして失意の貫也だったが、ふとした出来事からまとまったお金を手に入れる。そして、そこから2人の結婚詐欺による資金造りが始まる。里子の指示で、次々にターゲットを落としていく貫也。別にハンサムでもないし、モテる感じでもない男が結婚詐欺!?と思うかもしれないが、彼は、女性たちを心配し、心からの正直な言葉を喋っているだけなのだ。それは演技ではなく、本音。だから、女性たちは騙される。西川美和監督は、そんな女性心理をきちっと捉えていて、リアルだ。理知的で狡猾な美人妻・松たか子と、いかにもお人良しのダメ夫・阿部サダヲのキャスティングだけでも成り立つ企画だ。(ヴィスタ・137分・12年9月8日)

7月6日(金)から8日は、福岡アジア映画祭2012の前半戦。ゲストは、竹見智恵子監督(日本)、前澤哲爾教授(日本)、中井信介監督(日本)、緒方貴臣監督(日本)。サプライズゲストで、田中あおいプロデューサー(日本)、石崎チャベ太郎(日本)、ユ・ミンソン(韓国)も参加。

7月4日(水)日本映画「るろうに剣心」Ruro ni Kenshin

 胴乱の幕末、“人斬り抜刀斎”と恐れられた男は、明治維新と共に姿を消した。あれから10年、抜刀斎は、緋村剣心と名を変えて、日本中を流浪していた。そんな彼に、少女は突然木刀を突きつける。刀を刺した剣心を抜刀斎だと疑ったのだ。しかし、穏やかな物腰の剣心を理解し、父の残した道場に連れてくる。その頃、豪商・武田観柳は、アヘンで大儲けして、世界征服のための武器を大量に買い入れていた。果たして、もう決して人は殺さない“不殺(ころさず)の誓い”を立てた抜刀斎は、再び剣を抜くのか!?伝説ともなっているベストセラーコミックの待望の映画化で、佐藤健の剣心は、ピッタリなのだが、それ以外のキャストの中に、マンネリ的でワンパターンな俳優がいて、少し斬新さが損なわれてしまった。また、スピーディーな殺陣が見どころなのだが、それも少々ムラがあった。(スコープ・134分・12年8月25日)

7月3日(火)日本映画「鍵泥棒のメソッド」Key of Life

 男が銭湯で転倒し、気絶。たまたま居合わせた貧乏役者の桜井は、男のロッカーの鍵をすり替えて、彼になりすます。ところが、その男はなんと伝説の殺し屋コンドウだった。男のもとに依頼された大金の絡んだ仕事を受けてしまった桜井は、たちまちヤバイ状況に陥っていく。一方、記憶を失った男は、自分を桜井だと思い、真面目に役者としての道を歩み始める。そんな彼に惚れ込んでしまった雑誌の編集長・香苗は、突然プロポーズ。人生が入れ替わってしまった二人の男と、婚活中の女性を巡るストーリーは、まるでハリウッド・ラブコメのように目まぐるしく展開していく。こういうシチュエーションコメディが得意な内田けんじ監督の遊び心が満載だ。(ヴィスタ・128分・12年9月15日)

6月29日(金)韓国映画「トガニ 幼き瞳の告発」Silenced

 美術教師カン・イノは、恩師の紹介で、霧で有名な田舎町ムジン(霧津)の聴覚障害者学校に赴任してくる。しかし、生徒たちのおびえたような表情に何か違和感を感じる日々が続く。そしてある日、女寮長が洗濯機の中に女生徒の頭を押し付けているところを目撃し、助ける。イノは、彼女を傷の治療のために入院させるが、そこで驚愕の事実を知らされる。複数の生徒たちが、校長を始めとする教師たちから日常的に性的虐待を受けていたのだ。イノと人権センターのユジンは、この事実を告発し、裁判に持ち込むが、その闘いは、予想外に困難なものになっていく。韓国で、昨年9月に公開され、一大センセーションを巻き起こし、ついに政府まで動かし、「トガニ法」という新たな法律を制定させ、問題を起こした学校を廃校に追い込んだ。この驚愕の事実をリアルに映画で見るのはつらいが、この映画が国を動かしたと思えば、その存在は重要だ。(スコープ・125分・12年8月4日)

6月27日(水)フランス映画「理想の出産」A HAPPY EVENT

 大学院の博士過程で勉強中のバルバラは、レンタルビデオ店で出会ったニコラと恋に落ち、一緒に暮らすことに。そして、妊娠。学生の身で出産することに少し躊躇したバルバラだったが、無事出産する。しかし、赤ん坊の世話は、思った以上に大変で、彼女の悩みは日増しに大きくなっていく。そしてついに、…。出産、子育てというものの大変さを女性だけでなく、男性にも知ってほしいというテーマだ。「アデル」のルイーズ・ブルゴワンが奮闘する母親を熱演している。(ヴィスタ・107分・12年12月12日)

6月27日(水)福岡フランス映画祭オープニングセレモニーが西鉄ホールで行われた。

6月27日(水)日本映画「アナザー」Another

 1998年春、榊原恒一は、父親の海外勤務のため、叔母がいる山間の地方都市・夜見山市にやってくる。気胸の発作で倒れた彼は、病院で、制服姿で眼帯をした美少女に出会うが、彼女は謎の言葉を残して、地下の霊安室に消えてしまう。退院した恒一は、夜見山北中学校の3年3組に転校すると、そこには、病院で会った少女・見崎鳴がいた。しかし、クラスメート全員が彼女を“いないもの”として扱っていた。果たして、彼女は幽霊なのか?恒一が真実を知ろうとし始めた時、事件が起きる。山崎賢人、橋本愛など売れっ子ティーンエイジャー俳優を主人公にした学園ホラーだが、それほど怖くはない。(ヴィスタ・109分・12年8月4日)

6月26日(火)アメリカ映画「ロラックスおじさんの秘密の種」Dr. Seuss' The Lorax

 スニードヴィルの町は、すべてが人工のものばかりで、本物の木もなくなってしまっていた。さらに大気汚染がひどく、オヘアという男がボトル入りの空気を売り、大儲けしていた。テッドは、思いを寄せる女子高生オードリーが本物の木を欲しがっていることを知り、何とか手に入れようと決める。そして、おばあちゃんから教えてもらったワンスラーという男に会いにいく。ワンスラーから聞かされたロラックスおじさんの話は、驚きの過去の出来事だった。町の外に出るために、テッドがスクーターをぶっ飛ばすシーンや急流を下っていく場面など、3D効果が充分楽しめる。環境問題が深刻な今、まさにうってつけのテーマを取り上げたタイムリーなアニメだ。(3D・ヴィスタ・86分・12年10月6日)

6月26日(火)日本映画「闇金ウシジマくん」Yami-kin Ushijima Kun

 「週間ビッグコミックスピリッツ」連載中の人気コミックを実写化した深夜の連続ドラマが大ブレイクし、ついには映画化。短髪、ひげ、ピアス、メタルフレームのメガネというコミックのイメージそっくりの丑嶋(ウシジマ)が情け容赦無しに取り立てる姿は、本当に怖い。山田孝之の代表作になるだろう。高校を卒業後、遊び暮らしている鈴木未来(みこ)は、出会いカフェでの楽なバイトにはまって、道を踏み外そうとしている。一方、未来の幼馴染みで、イベントサークルの代表、小川純は、一大イベントを成功させて、セレブに伸し上がろうとしていた。そのイベントのために、あちこちから借金し、闇金・丑島からも借金するが、踏み倒すつもりだ。ところが、丑嶋の怖さを知らない彼が仕掛けたことが意外な方向に展開していく。災難は、雪だるま式に膨らんでいく。“借金はしてはいけない!”という戒めが痛いほど分かる映画だ。新井浩文扮する肉蝮(にくまむし)のキャラが強烈!。(ヴィスタ・130分・12年8月25日)

6月26日(火)アメリカ映画「スターシップ・トゥルーパーズ:インベイジョン」Starship Troopers : Invasion

 ハリウッドからの依頼で「アップルシード」の荒牧伸志が監督したシリーズ15周年記念作品。地球連邦軍の基地フォート・ケイシーがバグに襲われて、奪還のために、強襲艦アレジア号が駆け付けるが、壊滅寸前に陥る。超能力戦略担当大臣カール・ジェンキンスは、戦艦ジョン・A・ウォーデン号を指揮下に置き、艦長であるカルメンを置いて飛び去ってしまう。その後、将軍ジョニー・リコからの指令で、消息を絶ったジョン・A・ウォーデン号を追跡し、乗り移った隊員たちを待っていたものとは?モーション・キャプチャー技術によって、生身の俳優たちの動きがそのままフルCGアニメに加工され、かなりリアルだ。また、CGだけにバグたちとの壮絶なバトルも限界知らずだ。(ヴィスタ・90分・12年7月21日)

6月25日(月)日本映画「BRAVE HEARTS 海猿」BRAVE HEARTS : Umizaru

 特殊救難隊は、海上保安庁の隊員の中から特に優れた36人のメンバーで形成されるエリート中のエリート。念願の特救隊に入ることが出来た伊崎大輔と吉岡哲也は、大阪湾のタンカーとコンテナ船の衝突事故に出動するが、全員を救出することが出来なかった。全員を救うことができなかったことを悔やむ大輔。そんな大輔を、副隊長の嶋は、冷静な判断に欠けていると避難する。理想と限界の狭間で苦悩する大輔。そんな彼らのもとに、シドニー発、羽田行きのジャンボジェット機のアクシデントが伝えられる。果たして、ジャンボ機の乗客乗員346名を救い出すことができるのか!?東京湾、博多湾などで、多くのエキストラを動員した大掛かりなロケを行っていて、そのスケールはシリーズ中1番の規模だ。(スコープ・116分・12年7月13日)

6月23日(土)韓国映画「少年勇者ギルドン」Hong Gil-dong 

 3年前、日本でフィルムが発見された韓国最初の長篇アニメ。幼い頃、屋敷から追い出されてしまった洪吉童(ホン・ギルトン)は、仙人のところで修行を重ね、武術の達人となる。仙人の紹介で、山で訓練する部隊と合流したギルトンは、捕らえら処刑されようとする両親を助けるために、都へ。そして、ついに戦いが始まる。韓国では有名な小説「洪吉童伝」を元にしたポピュラーなストーリーだが、大コウモリやドラゴンなどの描写がアニメならではの長所で、結構楽しめる。(スタンダード・74分)

6月18日(月)日本映画「桐島、部活やめるってよ」The Kirishima Thing

 朝井リョウのベストセラー小説が原作だが、かなり映画的に再構築されている。映画部の前田たちは、先生に押し付けられる台本ではなく、自分たちが書いたシナリオ「生徒会オブ・ザ・デッド」でホラー映画を撮り始める。バトミントン部のかすみは、親友・実果と放課後の練習に励む。帰宅部の女子は、なんてことはない噂話に花を咲かせる。吹奏楽部の部長・亜矢は、なぜか屋上でサックスの練習をする。帰宅部の男子たち3人は、中庭でバスケをする。そんなありふれた普通の“金曜日”だが、あることだけが違っていた。それは、スター“桐島”がバレーボール部を辞めるというニュースだった。冒頭、同じ“金曜日”が何度も繰り返される。しかし、それぞれ違った視点からのシーンで、その度に、新たな事実が明らかになっていく。これは、それぞれの登場人物たちのキャラや心情を正確に伝えることに効果大だ。現代の高校生たちが抱える悩みが少し分かるような気がする。(スコープ・103分・12年8月11日)

6月18日(月)アメリカ映画「アメイジング・スパイダーマン」Amazing Spiderman

 両親の失踪によって、ベンとメイの伯父夫妻によって育てられたピーター・パーカーは、ごく普通の高校生。しかし、父親の残したカバンの中から見つけたノートに書かれた数式をきっかけに、父のかつてのパートナーだったコナーズ博士を訪ねる。そして、そこで、父が研究していたクモに刺されてしまい、スーパーパワーを持ってしまう。予想外のパワーに戸惑うピーターだったが、次第に自分の運命を受け入れて、スパイダーマンになっていく。これまでの作品に比べて、より人間性に満ちたピーター像が描かれていき、ただのスーパーヒーローものとは、一線を画した新しいシリーズの誕生だ。3D効果も前半はそう多くはないが、後半になると、かなり飛び出してくる。(3D・スコープ・136分・12年6月30日)

6月15日(金)西南学院大学のEU九州 市民講座で「今日のヨーロッパ映画」について講演。雨にも関わらず、100人以上の受講生が熱心にメモを取っていた。

6月15日(金)日本映画「おおかみこどもの雨と雪」Wolf Children

 都会を離れて、山奥の古民家に引っ越してきた母親・花と、娘の雪、弟の雨の3人家族。一見、普通に見えるこどもたちだったが、実は、父親はおおかみで、時々、おおかみの姿になることがあった。そこで、他の人たちに知られることなく、静かに暮らそうと山奥に来たのだった。しかし、6歳になった雪は、里の小学校に行きたいと言い出す。果たして、こどもたちは、おおかみであることを隠して生きていけるのだろうか?「時をかける少女」「サマーウォーズ」で一躍大人気の細田守監督の新作は、1人の女性の成長とこどもたちの旅立ちの13年間がぎゅっと凝縮されたファンタジー・アニメ。見終わった後に、人生について深く考えさせてくれる秀作だ。(ヴィスタ・117分・12年7月21日)

6月14日(木)アメリカ映画「だれもがクジラを愛してる。」Big Miracle

1988年10月、極寒のアラスカの凍りついた北極海に、3頭のクジラが閉じ込められているという地方ニュースが報道された。グリーンピースで自然環境保護活動を行うレイチェルは、クジラを救うために、知事に州兵と砕氷船の派遣を要請するが、断られてしまう。そこへ、石油会社の社長夫人から電話があり、石油会社所有のホバーバージをバローまで運べばいいということになる。そんなクジラのニュースは、全米からさらに広がり、世界中が注目する大ニュースになっていく。そして、ついに、大統領の登場となり、…。冷戦の時代に、こんなエピソードがあった、というほんわかさせられる実話作品。(スコープ・107分・東京12年7月14日、福岡9月)

6月13日(水)アメリカ映画「崖っぷちの男」Man on a Ledge

 ニューヨーク、マディソン街に建つルーズベルト・ホテルの21階の窓の外に今にも飛び降り自殺をしようとする男ニック・キャシディ。元NY市警の警官だった彼は、30億のダイヤを盗んだ罪で刑務所に収監されていたが、脱走したのだった。大勢の野次馬が集まり。TVの実況中継も始まる。世間が注目する中、は、女性刑事リディアを交渉人に指名する。果たして、彼の狙いは何なのか!?主人公がずっとビルの崖っぷちに居座り続けるというのは、これまでには無かった設定で、それでも退屈せずに見られるのは、巧みな編集の技だ。ニックが「アバター」のサム・ワーシントン。ダメ弟を演じてるのが、ジェイミー・ベル。あの「リトル・ダンサー」の少年がこうなってしまったか!(スコープ・102分・12年7月7日)

6月6日(水)日本映画「「わたし」の人生(みち)」

 念願の大学教授への昇進が決まり、大忙しの百合子。ところが、突然、警察からの電話に驚かされる。母を失ったばかりの父・修治郎が警官を殴って、連行されたというのだ。厳格な性格の父が事件を起こすとは。警察官の勧めで、病院に行った結果は、“前頭側頭型認知症”という認知症だった。衝動の抑制が利かずに、万引きや痴漢行為を行ってしまうのだ。そんな父親の介護と仕事の両立に悩む百合子。しかし、その前には、さまざまな現実が横たわっていて、家族の間にも亀裂が入り始めるのだった。高齢化社会の中で、これから避けては通れない“介護”という現実を現役の医師である和田秀樹が原案・監督した“介護問題映画”。介護の問題は、娘にゆだねられる場合が多そうだということだが、家族全員の協力が必要だということを痛感した。父親が九州大学名誉教授という設定で、北九州オールロケ。真っ赤な若戸大橋のすぐ横下に家がある。(ヴィスタ・104分・九州先行12年7月 日)

6月1日(金)中国映画「さらば復讐の狼たちよ」譲子玉飛/Let the Bullets Fly

 政治が腐敗し、軍閥が割拠していた1920年代。赴任先に向かう県知事マーの乗った馬列車が、ギャング団に襲撃される。襲ったのは、指名手配中の“アバタのチャン”一味。命を守るために、書記になりすましたマーから、“県知事になれば儲かる”と促れたチャンは、手下を引き連れて、鵝城に向かう。しかしそこは、独裁者・ホアンがすべてを支配する街だった。こうして、ギャング団と独裁者の壮絶なバトルが始まる。ギャング一味のボスを豪快に演じるのが、監督も務める姜文(チャン・ウェン)、そして、姑息な詐欺師マーを軽妙に演じるのが、名優・葛優(グォ・ヨウ)、そして、そんな中国2大名優と相対するホアンを香港の大スター、周潤發(チョウ・ユンファ)。夢の競演といったキャスティングで、中国で新記録を作ったというのは、容易に頷ける。ただ、中国のさまざまな出来事へのシニカルな批判精神に満ちているのは、よく分かるが、理屈的で長いセリフが多すぎる。(スコープ・132分・12年7月14日)

5月31日(木)日本映画「グスコーブドリの伝記」The Life of Budori Gusuko

 宮沢堅治ワールドにどっぷり浸れるファンタジーアニメ。美しいイーハトーブの森で、両親と妹のネリと幸せな生活をおくていたブドリだったが、冷害のため、食料も無くなり、両親は家を出て、ネリは、謎の男にさらわれてしまう。ひとりぼっちになってしまったブドリは、てぐす工場の主人に助けられ、そこで働いた後、里に降りて、赤ひげと出会う。さらに、市に出ていったブドリは、クーボー博士と知り合い、火山局に勤めることになる。悲惨な運命に翻弄されるブドリだが、さまざまな人々との出会いによって彼は確実に成長していく。それは、未来を信じ、“生きる力”を持っていくということなのだろう。(ヴィスタ・134分・12年7月7日)

5月31日(木)日本映画「ひみつのアッコちゃん」Himitsu no Akko chan

 1969年、1988年、1998年と3度にわたってTVアニメシリーズになった人気漫画が50周年で初の実写映画化。ある夜、“鑑の精”から不思議なコンパクトをもらった10歳の女の子、アッコこと加賀美あつ子。魔法の呪文を唱えると、なりたいものに変身してしまう。TVの時は、小学生のシーンが多かったように覚えているのだが、今回の映画版は、綾瀬はるかがアッコちゃんを演じる“大人版”。さらに、大人になったアッコちゃんが大手化粧品会社にバイトとして雇われ、会社乗っ取り事件に巻き込まれていく。かなり、大人向きのストーリー展開で、これはきっと、かつてのアニメで育ってきた世代に向けた企画なのだろう。昭和の時代のファンタジーだ。(スコープ・120分・12年9月1日)

5月28日(月)日本映画「ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略」Berserk II

 いよいよミッドランド国とチューダー帝国の百年戦争も最終決戦に突入。戦いの最中、キャスカを助けようとしたガッツも崖から落ちてしまう。意識朦朧とする中で、グリフィスとの出会いを思い出すキャスカ。しかし、追手に見つけられ、キャスカを逃がすために、一人で百人近い兵士と戦うガッツだった。そして、グリフィスは、難攻不落と言われる城塞ドルドレイを鷹の団だけで攻撃すると国王に進言し、巧妙な作戦で、城を攻略する。そして、流れ者の傭兵集団が一国の英雄になっていくが、…。同じ鷹の団で戦うガッツとグリフィスだが、その思いに少しずつズレが生じていく。果たして、彼らの行方は!?今回は、かなりハードなセックスシーンがあり、R18か!?「黄金時代篇III 降臨」は、冬の公開だ。(スコープ・93分・12年6月23日)

5月25日(金)日本映画「劇場版 BLOOD-C THe Last Dark」BLOOD-C THE Last Dark

 地下鉄で<古きもの>に襲われた少女・柊真奈は、危機一髪なところで、小夜に救われる。そして、ネッコミュニティ・サーラットのアジトへ。彼らは、世界企業セブンスヘブンを後ろ楯にした七原文人の組織<塔>(の陰謀を探っていた。文人への復讐を誓う小夜は、彼らと共に<塔>に戦いを挑む決意をする。そして、ネットをハッカーした真奈たちは、文人が、十字学園の講演に来ることを掴む。ついに、復讐の時が来るが、…。2000年の劇場版、2005年のTVシリーズ、そして、2011年の新TVシりーズに続く劇場版第2弾は、かなり力の入った意欲作に仕上がっている。これまでのいきさつを予習して見ると、より理解も深いだろう。(ヴィスタ・110分・12年6月2日)

5月25日(金)アメリカ映画「ラム・ダイアリー」The Rum Diary

 1960年、ジャーナリスト、ポール・ケンプは、ニューヨークからはるばる南米プエルトリコのサンファンにやってくる。働く新聞社の仲間たちとラム酒を浴びるように飲む毎日が続き、トラブルの連続だが、ある日、魅惑的な女性シュノーと出会う。そして、彼女のパトロンである謎の実業家サンダーソンは、ポールをある陰謀に巻き込もうとするが、…。ジュニー・デップが敬愛する親友ハンターS・トンプソンの原作を、自身の企画・製作・主演で、映画化。とにかく、今じゃあ想像もつかないような“ブッとんだ話”だが、1960年代だったらアリかもしれない設定。でも、ジョニデは、こんな話が大好きだね!(ヴィスタ・120分・12年6月30日)

5月24日(木)アメリカ映画「スノーホワイト」Snow White & The Huntsman

 レヴュー解禁日は、28日ということなので、28日アップ。マグナス王の娘として、幸福な生活をおくっていたスノーホワイト。しかし、母の死後、新しい王妃となったラヴェンナによって平穏な日々は砕かれてしまう。王を殺した彼女は、スノーホワイトを塔の中に7年間幽閉する。しかし、王宮を脱出した彼女は、黒い森の中に逃げ込む。そして、ラヴェンナの命令で、ハンターノエリックがスノーホワイトを捕まえるために追って来る。だが、ラヴェンナに騙されていたことを知ったエリックは、スノーホワイトと共に黒い森を縦断していく。これまでの「白雪姫」とは、全く異なるイメージで実写バトルアクションとしてのストーリーが展開される。甲冑に身を包んだ“戦う「白雪姫」”だ。イアン・マクシェーン、ボブ・ホスキンス、ニック・フロストなどイギリスを代表する名優たちが、森の番人を演じているのが、豪華!(スコープ・127分・12年6月15日)

5月15日(火)アメリカ映画「メン・イン・ブラック3」Men in Black III

 レヴューは、25日解禁ということなので、25日アップ。10年ぶりに帰ってきた人気シリーズ第3弾。月にある銀河系刑務所から、極悪囚人ボリスが脱獄し、地球へやってくる。目的は、自分を捕まえたエージェントKへの復讐だ。中華料理店でエイリアンたちを退治したKは、屋上でボリスに出会う。だが、彼は、“お前は過去で死ぬ”という言葉を残して、消えてしまう。JはKにボリスについて聞こうとするが、“ヤツのことは忘れろ”と話してくれない。果たして、過去に何があったのか!?突然姿を消してしまったKを救うために、Jは、1969年にタイムスリップする。ここで、これ以上のストーリーはネタバレになるので書けないが、なかなかよく練られたシナリオだ。最初から3Dで撮られた映像は、飛び出し度も迫力十分。ジョシュ・ブローリン演じる29歳のKが、トミー・リー・ジョーンズとそっくりに無愛想なのが笑える。(3D・ヴィスタ・106分・12年5月25日)

5月15日(火)日本映画「LOVE まさお君が行く!」

 TV「ポチたまペットの旅」で一躍有名になったラブラドール犬まさお君の映画版。ペットバラエティ番組の旅企画を立てたTVディレクターとADが抜擢したのは、ギャラが一番安いダメ犬のまさお君。そして、その犬と共に旅をするのが、売れない芸人の松本君。ロケに行ってみると、まさお君のおかげで、めちゃくちゃな展開に。そして、それでも笑いを取ろうとする松本君の芸は、スベってばかり。しかし、ケガをした松本君を助けようと一番に駆けつけたのは、まさお君だった。それから、人と犬との絆は深まり、ダメ犬ながらも番組は続き、次第に評判になっていく。そして、松本君の人生も変わっていく。香取慎吾がやっていると、“売れない芸人”というイメージではないが、その分、まさお君を演じてるだいすけ(まさお君の息子)のドジが面白い。(ヴィスタ・119分・12年6月23日)

5月14日(月)イタリア・フランス合作「ローマ法王の休日」Habemus Papam

 ローマ法王の死去により、次の法王を決めるべく、コンクラーヴェ(法王選挙)が行われる。世界各国からシスティーナ礼拝堂に集められた枢機卿たちの間に緊張が走り、聖ペドロ広場には、新法王の誕生を祝うために、大勢の民衆が集まってきた。そして、新法王に選ばれたのは、ダークホース的存在だったメルヴィル。ところが、バルコニーで大観衆を前に演説をする直前、あまりのプレッシャーから泣き出してしまい、発表は延期されてしまう。さらに、精神分析医に行った帰りに、失踪してしまう。果たして、彼は、いつ帰って来るのか?“法王として生きる”とはどういうことなのか!?シニカルなコメディを得意とするナンニ・モレッティ監督が自身メンタルセラピストの役で出演しながら、楽しんで撮ったイタリアン・コメディ。原題は、“新法王が決まりました!”というラテン語。(ヴィスタ・105分・12年7月21日)

5月10日(木)アメリカ映画「一枚のめぐり逢い」The Lucky One

 イラク戦争に従軍したローガンは、一枚の写真のお陰で命拾いし、その後も奇跡的に生き延びることが出来た。数カ月後、帰国した彼は、写真に写っていた女性を探して旅をする。そしてついに、写真の女性ベスを見つける。ところが、ちょっとした誤解から、ローガンは、彼女が祖母と経営する犬舎で働くことになる。最初は、ローガンのことを警戒するベスだったが、次第に二人の間に愛が生まれていく。果たして、ローガンは、いつ写真のことを打ち明けることができるのか?「きみに読む物語」などこれまで6本が映画化されているニコラス・スパークスの原作は、典型的な“すれ違い”ドラマだ。そんなドラマがハリウッドは大好きだ。あの“カルト的高校生”ザック・エフロンも24歳、精悍な海兵隊員役を演じられるようになった。(スコープ・101分・12年6月16日)

5月10日(木)アメリカ映画「ダーク・シャドウ」Dark Shadows

 ジョニー・デップ、ティム・バートンコンビの8作目。1972年、工事現場で掘り起こされた棺の中から現れたのは、魔女であるメイドをふって、ヴァンパイアにされてしまったバーナバス・コリンズ。かつては名家だったコリンズ家も今や没落してしまっていた。何とか一家の復興を願うバーナバスだったが、200年の間に世界は大きく変わってしまっていて、やることすべてがハズしてばかり。そんな彼の前に立ち塞がってくるのが、街を牛耳っているアンジーと名を変えた魔女アンジェリークだった。果たして、バーナバスはアンジェリークに打ち勝つことができるのか!?1966から71年にかけて放送されたTV人気シリーズが元になっているだけに、当時のヒット音楽が全編にわたってかけられ、タイムスリップした感じだ。ティム・バートン監督ならではの遊び心に満ちあふれたファンタジー。ワーナーからは、シリーズ化の依頼がきているそうで、シリーズ化される可能性大だ。(ヴィスタ・113分・12年5月19日)

4月25日(水)フランス・イタリア合作「風にそよぐ草」Les Herbes Folles

 歯科医のマルグリットは、街でバッグを引ったくられてしまう。ショッピングセンターの駐車場で、そのバッグを拾ったのは、初老の紳士ジョルジュ。彼は、財布の中に入っていた飛行機の免許証の写真が気になって仕方がない。妻に促されてしぶしぶ警察に届けたジュルジュだったが、マルグリットからのお礼の電話に異常に反応するジョルジュ。それから、この二人の関係は、予想外の展開をし始める。頑固オヤジの時ならぬ“老いらくの恋”は、なかなかパワフルなもの。アラン・レネ監督、89歳、まだまだ一筋縄ではいかない恋愛映画が続きそうだ。(スコープ・104分・東京11年12月17日、福岡12年6月23日)

4月19日(木)アメリカ映画「ソウル・サーファー」Soul Surfer

 幼い頃からサーフィンに夢中だった13歳の少女ベサニーは、ハワイのコンテストでも優勝し、プロになる予定だった。ところが、ある朝、サメに襲われて、サーフボードごと左腕を噛み取られてしまう。しかし、それから2ヶ月で奇跡の復活。ただでさえ難しいサーフィンに、片腕で挑むというのは、至難の技だ。バランスを取るだけでも、普通の人の数倍の体力が必要とされる。それに、いつ襲ってくるかもしれない巨大サメの恐怖も消えてはいない。そして、周囲の期待を受けて出場したコンテストで思ったような成績を出せなかったベサニーは、一度は、サーフィンと決別する。しかし、彼女は、不屈の精神と家族の支えで、再び、海に帰って来る。巧みに撮影されたサーフィンのシーンがリアルで、迫力満点。この物語は、事故にあったベサニーのあどけない少女から自己を確立した女性への成長の感動の実話だ。(スコープ・106分・12年6月9日)

4月18日(水)アメリカ映画「ネイビーシールズ」Act of Valor

 医師を装ってコスタリカに潜入していたCIAの女性スパイが拉致される。首謀者は、麻薬や兵器密輸で莫大な富を得ている男、通称クリスト。アメリカ政府は、ただちにネービーシールズの出動を要請し、隊員たちは、敵のアジトを急襲し、女性の救出に成功する。だが、クリストと関係するイスラムのテロリストが、全世界規模のテロを計画していることが判明し、休む間もなく、次の任務へ向かう。フィクションだが、登場するネイビーシールズの隊員たちは、全員本物で、使用されている武器やヘリコプターなどもすべて本物なので、その迫力は凄まじい!大金を掛けて作られた国防相の大プロモーション映画だ。(スコープ・110分・12年6月22日)

4月17日(火)アメリカ映画「君への誓い」The Vow

 親しい友人たちに祝福され、結婚式をあげたレオとペイジの二人だったが、交通事故に合い、ペイジは記憶を失ってしまう。それも、レオと会ってからの数年間の記憶が全くなく、彼のことは全くの他人なのだ。何とか、記憶を取り戻そうと懸命になるレオ。それに反して、ペイジの思い出は、絶縁状態だった家族や過去の恋人の登場に傾いていく。これまで、考えたこともないような設定の記憶喪失もののストーリーだが、実話だということで、また、その実話の結末にびっくりだ。「ミッドナイト・イン・パリ」では、贅沢な金持ちフィアンセ役だったレイチェル・マクアダムスだが、今回は、記憶喪失の中で揺れ動くペイジを好演。(スコープ・104分・12年6月1日)

4月16日(月)イギリス・アメリカ合作「ジェーン・エア」Jane Eyre

 幼い頃に両親を亡くしたジェーン・エアは、伯父に引き取られるが、その伯父もなくなり、彼女を嫌う伯母によって寄宿学校に入れられる。そこでも教師たちから不当な扱いを受け、やっと卒業したジェーンは、名家の家庭教師の仕事を得る。そして、少女アデールにさまざまなことを教え始めるジェーンの前に、気難しい屋敷の主人ロチェスターが現れる。身分の違いを越えて、次第に惹かれ合う二人。しかし、彼には、秘密が、…。ロチェスターを演じているのが、あのマイケル・ファスベンダー。「シェイム」のイメージが強すぎて、なかなかロチェスターの感じが飲み込めない。それに対して、強いジェーンを精一杯演じているミア・ワシコウスカの頑張りがいじらしい!(ヴィスタ・120分・12年6月23日)

4月13日(金)今週から毎週、西南学院大学での「社会科学総合講座」の講議がスタート。今年は、去年より学生の数が多く、広い教室での講議だ。

4月12日(木)アメリカ映画「幸せの教室」Larry Crowne

 長年勤勉にスーパーに務めていたラリーは、急に呼び出され、クビになってしまう。理由は、大学を出ていないから。一念ふっきした彼は、短期大学(コミニティ・カレッジ)に入学する。そんな彼に前に現れたスピーチの授業の先生メルセデスは、結婚生活に破たんし、教師への情熱も見失っていた。しかし、ラリーは、これまでにない若い世代とのつき合いで、充実した新しい毎日をエンジョイし始める。そして、彼の行動が、少しずつ、メルセデスの人生を変えていく。トム・ハンクスが自分の体験を元にアイデアを練り、自ら監督・主演。確実にヒットするように、相手役は、ジュリア・ロバーツ。他の共演陣もユニークで人気のある俳優ばかりで、破たんのない100%トム・ハンクス映画だ。(スコープ・98分・12年5月11日)

4月11日(水)日本映画「映画版 ホタルノヒカリ」Hotaru no Hikari the Movie

 結婚しても相変わらず、自宅の縁側でゴロゴロ転がり、“干物女”ぶりを発揮していた蛍だったが、なんと、部長のアイデアで、イタリアへ新婚旅行に行くことになる。海外旅行なんて行ったことがないし、面倒臭いことこの上ない感じで、飛行機に乗り込む二人。だが、機内で知り合った青年にトランクを間違えられてしまう。ホテルに着いた蛍は、池のほとりに佇む“イタリア版干物女”莉央と出会う。彼女は、過去の出来事がトラウマになり、日本からエスケープして来て、外国の地で隠とん生活をおくっていた。莉央と仲良くなっていく蛍だったが、そこに事件が起きる。そして、イタリアを舞台に、二人の“干物女”の奮闘が展開されていく。今年は、なぜ、イタリア・ブーム?(ヴィスタ・109分・12年6月9日)

4月9日(月)アメリカ映画「バトルシップ」Battleship

 ハワイのオアフ島沖で、アメリカ海軍を始め、世界14カ国の環太平洋合同演習(RIMPAC)が行われる。その演習に遅刻してきたアレックスは、艦隊の総司令官シェーン提督の娘と付き合っていて、提督に結婚の許可をもらおうと思っていた。しかし、前年の演習以来、犬猿の仲である日本の自衛艦艦長ナガタと喧嘩してしまい、大目玉をくらってしまう。演習が始まると、宇宙から謎の物体が飛来し、3隻に現場を調査するという指令が下される。ところが、海中から飛び出した巨大な母船は、突如、攻撃を始める。さらに、激しく回る球体が世界各地を攻撃し始める。果たして、エイリアンの狙いは、何なのか!?バリアの中に閉じ込められたアレックスたちは、彼らを打ち負かすことができるのか!?かなりいろいろツッコメそうな地球軍とエイリアンの戦いがCGたっぷりに繰り広げられるが、それは、ノスタルジックさを出したかったのだろうか!?「マイティ・ソー」では、あまりセリフもなかった浅野忠信だったが、今作では、堂々の主役級の演技を見せてくれる。(スコープ・131分・12年4月13日)

4月5日(木)アメリカ映画「タイタンの逆襲」Wrath of the Titans

 前作「タイタンの戦い」から10年後、神々の王ゼウスと人間の間に生まれた半神半人ペルセウスは、息子のために、小さな漁村で、静かに暮らしていた。しかし、神々たちの世界では、神々たちの力が弱まり、冥界の「タルタロスの牢獄」に封じ込められていた巨神(タイタン)が力を取り戻していた。ゼウスは、ハデス、ポセイドンの3兄弟が力を合わせれば、クロノスに勝てると信じていた。しかし、ハデスが軍神アレスと共に裏切り、クロノスに寝返ってします。その結果、魔物たちが地上に現れ、壮絶なバトルが繰り広げられる。そして、息子に正体を知られてしまったペルセウスは、ペガサスにまたがって、旅立っていく。前作で、関係がある程度、頭に入っているので、物語は理解し易い。前作は、急遽3Dにしたので、それほど飛び出してこなかったが、今回は、最初からちゃんと3D化することをち密に計算して撮影されているので、モンスターや燃えた岩など結構、いろいろ飛んでくる。3Dの迫力充分なエンターテインメントに仕上がった。シリーズは、まだまだ続く。(3D・ヴィスタ・99分・12年4月21日)

4月3日(火)アメリカ映画「ミッシングID」Abduction

 郊外の高校に通うネイアンは、トレーニング好きの父親とやさしい母親と3人で幸せに暮らしていた。ところが、学校の課題レポートを書くために、児童誘拐事件のサイトで、偶然、自分の子どもの頃の写真を見つけてしまう。疑惑を大きくするネイサンだったが、事態は急速に変化していき、何者かに命を狙われ始める。そして、これまでの人生が、すべて作られた“嘘”だったという真相が明らかになっていく。失われた真実の記憶を取り戻すために奔走するというアイデアは、「ボーン」シリーズと似ているが、主人公が高校生というところが新鮮でティーンエイジャー向き。一体、誰が味方で、誰が敵なのか!?スパイものにしては、割に分かりやすい展開だ。(スコープ・106分・12年6月1日)

4月2日(月)オーストラリア映画「キラー・エリート」Killer Elite

 殺し屋稼業から足を洗っていたダニ−の元へ、人質となった元師匠ハンターの写真が送られてくる。送り主は、オマーンの首長の一人シーク・アムル。彼は、3人の息子を殺したSAS(イギリス特殊部隊)兵士3名の殺害を命令する。ダニーは、ハンターを救うために、昔の仲間を集め、兵士の殺害計画を遂行しようとする。しかし、元SAS隊員スパイクが、彼らの不穏な動きを察知していた。スパイクの後ろには、“フェザー・メン”と呼ばれる謎の組織があった。そこから、殺し屋たちとスパイたちの巧妙な騙し合いが始まる。ばんばん殺しまくるアクションで、これが実話というから驚きだ。それにしても、オーストラリア映画で、ジェイソン・ステイサム、クライブ・オーウェン、ロバート・デ・ニーロというキャスティングは凄い!(スコープ・117分・12年5月12日)

3月31日(土)韓国映画「ペースメーカー」Pacemaker

 オリンピックでの勝利を掴むために、新監督は、引退していたマノを再び、ペースメーカーに起用する。優勝候補の選手のために、30キロまで全力で走り、ペースを作っていくマノ。しかし、彼は、これまで何のためにマラソンをしてきたのか!?マラソン選手であるにも関わらず、一度も脚光を浴びたことがない彼は、ジレンマに陥ってしまう。しかし、再び、走り始める。そしてついにロンドンオリンピックが開催される。そして、…。まさか本物のロンドンのマラソンコースが出てくるとは全く予想していなかったので、最後は、それだけでびっくり。そして、さらに、…。久しぶりに感動のスポ根ドラマ。(スコープ・122分・7月の第26回福岡アジア映画祭2012で日本初公開!)

3月29日(木)アメリカ映画「ジョン・カーター」John Carter

 1881年、エドガー・ライス・バローズは、叔父ジョン・カーターから至急電報をもらい、駆け付けるが、すでに亡くなっていた。そして、残された日記には驚くべきことが書かれていた。時は遡って、1868年。南北戦争に従軍していたカーターは、洞窟で襲って来た男が何か呪文を唱えた途端に、瞬間移動してしまう。そこは、未知なる惑星バルスームだった。その星は、全宇宙を支配しようとする“マタイ・シャン”によって滅亡の危機に瀕していた。そこに留まり、救世主として戦うことを望まれるカーターだったが、過去の出来事が彼を躊躇させていた…。壮大なスケールと最新のSFXで描かれるSFアドヴェンチャーだが、原作「火星のプリンセス」が書かれたのが、100年前の1912年で、その古さは否定できない。(スコープ・133分・12年4月13日)

3月29日(木)アメリカ映画「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」Bridesmaids

 手作りケーキの店がつぶれて、恋人にも逃げられてしまった30代独身のアニー。親友のリリアンが急に結婚することになり、メイド・オブ・オナー(花嫁介添人のまとめ役)を頼まれてしまう。しかし、孤軍奮闘する彼女の前に、超豪華パーティーや高級ドレスを提案する金持ち女ヘレンや、クセものだらけのブライズメイズ(花嫁介添人たち)が現れ、アニーの計画は、最悪の事態に落ちいっていく…。女性版「ハングオーバー!」といった感じのコメディだが、結構、グロなエピソードもある。メイド・オブ・オナーって、本当に大変な役割だ!(スコープ・125分・12年4月28日)

3月28日(水)日本映画「テルマエ・ロマエ」Thermae Romae

 古代ローマ帝国で浴場を設計していたルシウスが、突然、現代日本の銭湯にタイムスリップしまう。日本の風呂にカルチャーショックを受けた彼は、ローマに帰ってから、次々と斬新なアイデアの風呂を作り、一躍、有名人に。そして、時の皇帝ハドリアヌスから自分の後継者であるケイオニウスのために、大浴場の建設を命じられるが、…。古代ローマと現代日本を行ったり来たりするというアイデアがユニーク。主演の阿部寛を始め、顔の濃い役者たちが古代ローマのセットの前でも全く違和感がないのが凄い。テルマエ・ロマエとは、「ローマの風呂」のこと。(スコープ・108分・12年4月24日)

3月27日(火)日本映画「ポテチ」Potechi

 空き巣を仕事にしている青年・今村は、ある日、空き巣に入った家の留守番電話で、その部屋の住人の恋人からのメッセージを聞いてしまう。そして、屋上で自殺しようとする女性を助けた彼は、そのまま同棲。そんな今村には、同じ日に同じ病院で生まれたプロ野球選手の尾崎に特別な感情を抱いていた。そして、また、偶然の出来事が、…。「ゴールデンスランバー」の伊坂原作・中村監督・斉藤音楽チームが、被災地・仙台オールロケで作った、心温まる68分。このチームの映画にはなくてはならない役者である濱田岳が、普通だけど傷付きやすい青年を見事に演じ切っている。(ヴィスタ・68分・12年5月12日)

3月26日(月)スペイン・アメリカ合作「ミッドナイト・イン・パリ」Midnight in Paris

 ハリウッドで映画の脚本を書いているギルは、婚約者イネズの父親の出張旅行に便乗して、憧れのパリにやってくる。しかし、彼は、低俗な娯楽映画のシナリオライターではなく、本格的な作家になりたいという夢を捨ててはいなかった。そんなギルが、真夜中の鐘の音に導かれ、さまよい込んだところは、1920年代のゴールデンエイジだった。そこには、ヘミングウェイやフィッツジェラルド、ピカソ、ダリ、ゴーギャンなどの偉大な芸術家たちが勢揃いしていた。ウディ・アレンの新作は、主人公が夜な夜なタイムスリップして、芸術家たちに出会うという奇想天外なファンタジー。そんなにパリが好きだったのか!?芸術家たちに扮してる俳優たちの豪華なこと。ギルがブニュエルに語るアイデアは、「皆殺しの天使」。(ヴィスタ・94分・12年5月26日)

3月26日(月)韓国映画「折れた矢」Unbowed

 大学入学試験の出題ミス問題を告発しようとしてキム・ギョンホ教授が解雇される。しかし、裁判では彼の処分は認められてしまう。怒った教授は、ボウガンを持って、判事の家で待ち伏せ、矢を放つ。そして、逮捕された教授の裁判が始まる。果たして、教授は本当に裁判官を殺害しようとしたのか!?いやいやながら、彼の弁護につくことになった弁護士の奮闘が裁判を意外な方向に向かわせていく。裁判ドラマなので、難しいセリフが多いが、そこは理知的名優アン・ソンギのスマートな“異義あり”でスピーディーに展開されていき、退屈させない出来だ。ベテラン監督チョン・ジヨンの久しぶりの新作だが、韓国では予想外の大ヒットになっている。低俗なアイドル映画に嫌気がさした観客が久々の“本物の映画”を見にきた、ということなのだろう。(スコープ・100分・12年7月の第26回福岡アジア映画祭2012で上映!)

3月25日(日)香港から帰って来ました。あちらでは、毎日朝から夜遅くまでアジア各国の最新作を見て、今年の福岡アジア映画祭での上映作品を選んできました。また、多くの監督たちとも久しぶりの再会を分かち合ってきました。

3月18日から25日まで、香港フィルマート、第6回アジアフィルムアワード授賞式、第36回香港国際映画祭に出席します。

3月15日(木)日本映画「宇宙兄弟」Space Brothers

 幼いころ、“2人で一緒に宇宙に行こう!”と約束を交わしていた兄のムッタと弟のヒビト。19年後、ヒビトは、本当に月へ旅立とうとしていた。そんな弟の活躍を尻目に、ムッタは、務めていた自動車会社をクビになってしまう。そんなムッタのもとに、JAXA(宇宙航空研究開発機構)から宇宙飛行士試験の書類選考通過の手紙が届く。兄に内緒でヒビトが応募していたのだ。ずっと約束を忘れていなかった弟の思いを受け、ムッタは夢に向かって、動き始める。しかし、そこには想像を遥かに越える厳しい訓練の日々が待っていた。天然パーマというか、アフロヘアの小栗旬のコメディ演技が面白い!NASAケネディ宇宙センターでの大掛かりなロケが見どころ。(ヴィスタ・129分・12年5月5日)

3月3日(土)・4日(日)13:00〜17:00 福岡市・中央市民センターで開かれている“ふくおかボランティア祭り”に参加。会場は、2Fの奥の視聴覚室。

3月2日(金)韓国映画「シンフォニア」Symphonia

 一人の男が歩道を歩いているのをカメラはずっと追っていく。そして、今度は、ショートカットの女の子。何度もすれ違う二人だが、面識はないようだ。エスカレーターを上がって、ソウル駅に入っていく二人。女は、スリで、トイレで、すった財布から現金だけを抜き、財布は黒いビニール袋に入れる。そして駅から離れた場所に捨てる。黒いバックを持った女が列車に乗るために駅にやってくる。そして、喫茶店でコーヒーを飲んでいる間に、バックを盗まれてしまう。盗ったのは、スリの女。トイレで現金だけを抜き取った女は、やはり同じ場所にバックを捨てる。女をつけてきたコートの女がバッグを見つけると、取られた女からケータイに電話があり、バッグを渡す。そして、バッグの女は列車に乗っていくが、…。4人の登場人物たちの素性が次第に明らかになっていき、面白い展開になりそうな話なのだが、そこがなかなか面白くならない。惜しい作品だ。(ヴィスタ・92分)

2月27日(月)第84回アカデミー賞が発表された。結果は、フランス映画「アーティスト」の圧勝だった。フランス映画として初めてのアカデミー作品賞の受賞だ。なぜ、フランス映画がアカデミー賞に輝くことが出来たのだろう。それは、この作品が、いかにハリウッド映画をリスペクトして作られたか、という一言に尽きるだろう。この作品のスタッフ、キャストは、ハリウッドのサイレント映画を山程見て、その作り方を研究し、その良さをそのまま、現代に再現させた。それは、3D全盛の今のハリウッドの監督たちには考えもつかなかったやり方だ。しかし、フランスのスタッフは、古めかしいモノクロ・サイレントの映画の中に、彼らのハイウッド映画に対する憧れを詰め込み、見事に現代にも通用する傑作に仕上げた。かつて、ヌーヴェルヴァーグの監督たちは、毎日、シネマテーク・フランセーズで、ハリウッドの古典作品を見ながら、映画の勉強をした。そうだ!フランスの監督たちは、ハリウッド映画が大好きなのだ。それが、今回のアカデミー賞という結果に昇華されたと言えるだろう。

2月28日(火)イギリス・フランス・ドイツ合作「裏切りのサーカス」Tinker Tailor Soldier Spy

 スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの有名な小説を本人が製作総指揮に立って作った本格的スパイ作品。イギリス諜報部<サーカス>幹部の中に、ソ連の二重スパイ(もぐら)が長年にわたって潜んでいるという情報が入ってくる。そして、ブダペストの作戦失敗の責任を問われて、リーダーのコントロールと長年彼の右腕として活躍していたジョージ・スマイリーは、<サーカス>を追われてしまう。だが、(もぐら)は、まだ諜報部の中に残っていた。レイコン次官の依頼を受けたスマイリーは、秘密裏に捜査を始める。すると、意外な事実が浮かび上がってくる。髪をシルバーに染めて、寡黙で重厚なスマイリーに成り切ったゲイリー・オールドマンは、見事アカデミー主演男優賞にノミネートされた。原作が出版されたのが1974年なので、東西冷戦時代という古臭い設定が今の観客にすんなり理解するのは難しいかもしれない。(スコープ・128分・12年5月19日)

2月27日(月)アメリカ映画「センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島」Journey 2 : The Mysterious Island

 3D効果もあって予想外の大ヒットになった前作から4年、続編は、地底ではなく、謎の島への旅。17歳になったショーンは、謎の島からの避難信号をキャッチし、義理の父親ハンクと共に、その発信源を探す旅に出る。島は地図にも載っていない危険な地域。唯一ガイドを引き受けてくれたのは、ボロ・ヘリコプター操縦士のガバチョ。彼の娘カイラニも同行して、4人は、“嵐の目”を通って、島に辿り着く。その島こそ、かつてジュール・ヴェルヌが書いた“神秘の島”だったのだ。3Dで迫力十分に描かれていく島の大自然と巨大生物たちの姿が、ファンタジー世界とマッチしている。果たして、次なる旅は、どこなのか!?(3D・ヴィスタ・94分・12年3月31日)

2月23日(木)日本映画「SPEC〜天〜」SPEC〜heaven〜

 2010年10月から放送されたTV「SPEC」の劇場版。クルーザーに乗っていた人々がミイラのような死体で発見される。傷跡も残さず一瞬でミイラ化させたのは、“スペックホルダー”の仕業なのか!?彼らは、御前会議に乗り込み、その模様を録画したビデオを“未詳”に送ってくる。そこには、死んだはずの一(ニノマエ)の姿が写っていた。ニノマエは、スペックホルダーを集めて、世界を牛耳ろうとしていた。果たして、当麻と瀬文は、ニノマエを止めることができるのか!?堤監督お得意のナンセンス・ギャグの中には、ついていけないものもあるが、その軽い笑いが、今、若い人たちにはウケているのだろう。まずは、TVの再放送で予備知識を持ち、4月1日放送の「SPEC〜翔〜」で、1年後を知り、この劇場版につなげるというのが、いいようだ。この作品が大ヒットになれば、「SPEC〜桔〜」ができるかもしれない!?(スコープ・119分・12年4月7日)

2月22日(水)フランス・ドイツ・ポーランド合作「おとなのけんか」Carnage

 きっかけは、子どもの喧嘩だった。ケガをさせた子どもの両親が、被害者のアパートを訪れる。加害者の両親は、弁護士のアランと投資ブローカーのナンシーという裕福なカップル。対するロングストリート夫妻は、ブルックリンで金物商を営むマイケルと、アフリカのダルフール紛争に関する本を執筆中のペネロペというリベラルなカップル。2組の夫婦は、初めは、穏やかな和解の話し合いが始まるが、次第にそれぞれの本音が姿を現わし始め、壮絶なバトルが繰り広げられる。もともとは舞台劇が原作だが、鬼才ロマン・ポランスキー監督は、その舞台のスピード感を保ちながら、リアルタイムのバトルを短い時間に集約させ、見事な“おとなのけんか”を映画にした。知的なニューヨーカーを演じようとする4人の有名俳優たちのセリフの応酬がリアルだ。他人の話など全く興味のないアランがずっとケータイで話しているのは本当にイラついた!(スコープ・79分・12年3月3日)

2月21日(火)日本映画「ライアーゲーム -再生(リボーン)-」Liar Game : Reborn

 前作から2年、秋山の大学での教え子・篠宮優のもとに、現金1億円と共にゲームへの招待状が届く。怖くなった彼女は、秋山に救いを求める。今回、20名のプレイヤーたちが争うのは、原作者の甲斐谷忍も難易度No.1と言う“イス取りゲーム”。果たして、秋山は、優を救うことが出来るのか!?究極の心理ゲームが始まる!前作は結構アクション的で派手なシーンもあって、楽しめたが、今回は、ゲームの世界にのめり込み過ぎの感があり、ちょっと観念的になり過ぎかも。(ヴィスタ・131分・12年3月3日)

2月20日(月)イギリス映画「パーフェクト・センス」Perfect Sense

 SOS(重症嗅覚障害症候群)と呼ばれる原因不明の感染症が世界中に急激に広まっていく。この病気に感染すると、急に哀しみに襲われ、泣叫びながら、なぜか嗅覚を失って、臭いが分からなくなってしまうのだ。そんな奇病が蔓延する中、スコットランド・グラスゴーの研究施設に勤める科学者スーザンは、自宅向かいのレストランで働くシェフのマイケルと出会う。たちまち恋に落ちる二人だったが、彼らにも病魔が迫っていた…。感染するとすぐ死んでしまうというのでなく、五感が一つずつ失われていくというアイデアはユニーク。イギリス・グラスゴーが舞台で、イギリス特有のグレーな雰囲気に満ちた終末作品だ。(スコープ・92分・東京12年1月7日、福岡3月)

2月20日(月)日本映画「ウルトラマンサーガ」Ultraman Saga

 宇宙人バット星人によって支配されてしまった地球。残された子どもたちを守っているのは、地球防衛隊のチームUの7人のメンバー。だが、バット星人の攻撃は日増しに激しくなっていた。そんな地球を救うために、ダイナ、コスモス、そしてゼロの3人のウルトラマンが時空を越えて呼び寄せられる。しかし、ゼロと一体化したばかりのタイガ・ノゾムは、ウルトラマンの力を借りることを拒み、戸惑う。その背景には、彼の隠された過去が強く影響していた。これまでのウルトラマンと違って、ゼロに変身することを嫌がるノゾムをコミカルに演じるDAIGOの軽い演技が面白い。チームUのメンバーは、リーダーの秋元才加始め、すべてAKBで、全体的には「ウルトラマン meet AKB」といった趣きの作品。(ヴィスタ・90分・12年3月24日)

2月16日(木)日本映画「桜蘭高校ホスト部」Ouran High School Host Club

 TVアニメ、TVドラマが評判になり、ついに映画になった人気コミック。スーパーお金持ち学院・桜蘭高校ホスト部は、6人の美男子が女生徒をおもてなしする遊戯グループ。校内唯一の一般庶民で奨学特待生の藤岡ハルヒは、ひょんなことから、男の子のふりをして、ホストとして働いていた。そんなホスト部は、間近に迫った年に一度のビッグイベント・桜蘭祭バトルに向けて、猛準備中。そんなある日、シンガポールから財閥の令嬢・ミシェルがやってくる。彼女のおもてなしを始める環たち。しかし、ハルヒの心は動揺し始めるのだった…。それぞれにいろいろな悩みを抱える高校生たち。だが、彼らのぶっ飛んだキャラが、同世代にはウケるんだろう。K-POPアイドル“2PM”のニックンが特別出演している。(ヴィスタ・105分・12年3月17日)

2月16日(木)アメリカ映画「アンダーワールド 覚醒」Underworld Awakening

 シリーズ第4作は、あのセリーンが帰ってくる!舞台は現代。人類は、ヴァンパイアとライカンという“非人類種”の粛清に乗り出し、逃亡しようとするセリーンとマイケルは捕らえられてしまう。それから12年後、バイオテック企業アンティジェンの研究室で、冷凍保存されていたセリーンが覚醒する。レーン博士は、何の実験をしようとしていたのか!?そして、セリーンを覚醒させたのは、誰か?さらに“披検体1”の正体は?次第に大きな陰謀が明らかになっていく。「アンダーワールド」は、やっぱり黒ずくめのケイト・ベッキンセールがばりばり撃ちまくってくれないと。3Dで見たかった!(スコープ・88分・12年2月24日)

2月13日(月)フランス映画「アーティスト」The Artist

 祝!アカデミー賞受賞!フランス映画なのにアカデミー賞最有力候補の話題作。1927年、ハリウッド。サイレント映画界の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは、新作プレミアの劇場から出て来た時にある女性と出会い、彼女が頬にキスをした写真が翌朝の新聞に掲載されてしまう。彼女は、スターを目指す新人女優ペピーで、ジョージは、彼女のエキストラ出演を推薦する。それから、少しずつ出演作を増やし、ついにはヒロインに登り詰めていくペピー。しかし、1929年、トーキーの時代が始まり、サイレントにこだわるジョージの映画はヒットしなくなっていく…。往年のハリウッド映画やスター俳優たちを彷佛させられるエピソードの連続で、製作者たちがいかにハリウッド映画をリスペクトしているかということが本当によく理解できる。モノクロ・サイレントという冒険もすばらしい!(スタンダード・101分・12年4月7日)

2月12日(日)福岡アジア美術館で開催された松岡環女史の“日本にやってきたインド映画”講演会に参加。久しぶりにインド映画の話をたっぷり聞くことが出来た。

2月10日(金)アメリカ映画「長ぐつをはいたネコ」Puss in Boots

 「シュレック」の人気キャラが単独主演。まだシュレックと出会うはるか前の話。捨て猫だったプスは、サン・リカルドという小さな村の孤児院で、母親のようなイメルダと共に幸せに暮らしていた。とこりが、ある日、兄弟のように育ったハンプティを助けようとして、無実の罪で村を追われてしまう。お尋ね者となって孤独な人生をおくるプスは、幼い頃、夢見ていた“魔法の豆”を手にい入れようとするが、…。プスはどんな子猫時代をおくったのか?彼がなぜ、お尋ね者になってしまったのか?そんな長ネコ=プスの謎の生い立ちがここに明らかになる!また、「ゾロ」のような剣さばきのアクションだけでなく、メス猫キティとの華麗なダンスシーンなども3Dでたっぷり見せてくれる。(3D・スコープ・90分・12年3月17日)

2月7日(火)アメリカ映画「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」The Ides of March

 “スーパー・チューズデー”と呼ばれるオハイオ州予備選は、その後の大統領選の行方を決める天下分け目の重要な選挙だ。そんな大事な日を1週間後に控えた民主党の有力候補マイク・モリスのキャンペーン本部。広報官スティーブン・マイヤーズは、ライバル陣営の選挙参謀ダフィからの電話を受け、極秘に会いに行ってしまう。その行動が、その後の彼の人生を大きく変えていくことになる。アメリカは、今、予備選の真只中だ。そんな時に、こんなスキャンダラスな題材の映画を作れるというのも、アメリカだ。一人でも主役を張れるような豪華キャストが揃ったのは、ジョージ・クルーニー監督の人気によるものだ。(スコープ・101分・12年3月31日)

2月7日(火)スペイン映画「フラメンコ・フラメンコ」Flamenco, Flamenco

 スペインの巨匠カルロス・サウラが1995年の「フラメンコ」に続いて作ったフラメンコ映画。“緑よ、私が愛する緑”に始まる21幕から構成されたフラメンコのオンパレードは、音楽を巡る生命の旅を表現していく。フラメンコのパロ(曲種)がこんなにも多く、魅力に満ちたものだったのか、ということを初めて、認識させられた。そして、鬼才ヴィットリオ・ストラーロのキャメラが、贅沢に舞台を駆け巡り、一級の“映画”に仕上げている。(ヴィスタ・101分・12年3月17日)

2月6日(月)アメリカ映画「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」The Help

 祝!アカデミー助演女優賞。1960年代といえば、公民権運動が盛り上がった時代だが、南部では、黒人に対する人種差別が公然と続けられていた。大学を卒業し、ミシシッピ州ジャクソンの故郷に帰ってきたスターキーは、メイドたちの実態を伝える本を書こうと決意する。だが、報復を恐れたメイドたちは、容易に口を開こうとしない。だが、彼女の熱意に応えて、エイビリーンが取材に応じてくれる。そして、エイビリーンの親友ミニーやほかのメイドたちも、いろいろなことを語ってくれる。そして、そんな彼女たちの“心の声”は、一冊の本「ヘルプ」となって、出版される。その本が、街に大騒動を起こしていく。現在からは予想できないような人種差別の時代、古くからの因習を変えるには、なみなみ成らぬ勇気と努力が必要だった。強大なパワーを持つ大国になったアメリカ。そのアメリカが改めて考えなければならないことは、お互いを尊重し、助け合うことだ。常識的なことだが、そんなことを再認識させられた。(ヴィスタ・146分・12年3月31日)

2月2日(木)イギリス映画「シェイム」Shame

 ブランドンは、セックス依存症だ。仕事以外の時間は、すべてセックスに費やしていた。誰かと恋に落ちることもなく、ほかの趣味を始めることもなく、ただ黙々とセックスに没頭していた。そんなブランドンの生活に突然、変化が訪れる。彼のマンションに、妹のシシーが転がり込んで来たからだ。他人との関係を嫌い、ストイックな独身生活をおくってきたブランドン。そんな彼の生活を引っ掻き回す妹の出現に、ブランドンは苛立ちを隠せない。そして、均衡は確実に壊れていく。何がブランドンにとって“シェイム”だったのか?アイルランドからの移民である兄妹の語られざる過去とは!?スムースに明かすことの出来ないトラウマが彼らの人生を追い込んでいく。(スコープ・101分・東京12年3月10日、福岡3月17日)

2月2日(木)アメリカ映画「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」Sherlock Holmes : A Game of Shadows

 ヨーロッパで連続爆破が起きる。新聞は、アナーキストの犯行か?と書き立てるが、ホームズは、それらの事件には共通点があり、その裏には、モリアーティ教授がいると掴んでいた。教授は、思いもよらないやり方で、歴史を操作し、絶大な富と権力を得ようと企んで、その計画を着々と実行していた。その計画を阻止するために、再びコンビを組んだホームズとワトソンが動き始める。だが、頭脳明せきなモリアーティは、これまでの敵とは比べ物にならないくらい強敵だった。教授は、ホームズたちを抹殺すべく、世界各地に罠を仕掛ける。果たして、ホームズたちに勝ち目はあるのか!?シリーズ2作目は、スケールを大幅にアップし、スピード感も倍増のジェットコースター・ムービーに仕上がった。アドラーの行方も不明のままなので、きっと3作目に続くことだろう。(スコープ・129分・12年3月10日)

2月1日(水)今日で、九大伊都キャンパスでの今学期の授業終了。

2月1日(水)日本映画「生きているものはいないのか」

 かつて一緒に映画を作っていた石井聰亙監督が石井岳龍と名前を新たにして10年ぶりに監督した待望の新作。大学病院の病室を抜け出す女性、都市伝説研究サークルのメンバーたち、妹を探してさまよう男、大事故を目撃して気分が悪くなってしまった男たち、…。大学キャンパスの中で、それぞれの“最後の瞬間”が展開されていく。まるでアドリブのようなリアルな若者たちの軽い会話の洪水。それは、普通の日常なのだが、そんな日常の中に、突然、不条理な“死”はやってくる。これまでの石井作品とは、かなり異なるタイプの会話劇だが、それが今の石井作品なのだろう。2月13日に福岡で監督トーク付きの有料試写会が行われる。すぐにチケットをゲットすべし! http://www.ikiteru.jp(ヴィスタ・113分・東京12年2月18日、福岡2月25日)

1月31日(火)アメリカ映画「人生はビギナーズ」Beginners

 祝!アカデミー助演男優賞。これまで44年連れ添った母が亡くなった後、突然、“私はゲイだ。”とカミングアウトした父親ハル。息子オリヴァーは、そんな父親の告白に戸惑うばかり。だが、癌を宣告された父親は、“これからは人生を楽しみたいんだ”と、派手なファッションに身を包み、若い恋人まで作って、活発に動き回り始める。そんな父親の生き方は、次第にオリヴァーにも影響してくる。マイク・ミルズ監督の父親の実話を元に描かれたストーリーで、監督の父親に対するリスペクトを深く感じさせられる。自由気侭に人生を楽しむ父親を演じたクリストファー・プラマーがアカデミー助演男優賞にノミネート。(ヴィスタ・105分・東京12年2月4日、福岡2月18日)

1月27日(金)アメリカ・スウェーデン・イギリス・ドイツ合作「ドラゴン・タトゥーの女」The Girl with the Dragon Tattoo

 祝アカデミー主演女優賞ノミネート!スウェーデン映画「ミレニアム」のハリウッド・リメイクだが、あえて舞台をアメリカに移すことなく、スウェーデンでロケをしているのは正解。ジャーナリスト、ミカエルの元に、大富豪ヴァンゲルからの奇妙な依頼が舞い込む。それは、40年前に殺されたであろう一族の娘の事件の真実と、その犯人を見つけるというものだった。水辺のコテージで当時の捜査資料をチェックし始めるミカエル。自分を調査した天才ハッカー、リスベットをアシスタントに抜擢し、思いもよらぬ謎に挑戦していく。スウェーデン版のじめじめした暗さはなく、メジャーなハリウッド大作になった。オートバイを巧みに疾走させるルーニー・マーラの新リスベットがなかなか魅力的だ。レッド・ツェッペリンの「移民の歌」を使ったオープニングタイトルがダークで迫力満点だ。(スコープ・158分・12年2月10日)

1月25日(水)イギリス映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」The Iron Lady

 祝!アカデミー主演女優賞受賞!男性優位社会のイギリス議会の中で、女性として、男たちが言えないことを堂々と述べ、2008年には、ついに首相にまで登りつめたサッチャー。“強いイギリス”を作ることを目指し、“鉄の女”とよばれ、次々と保守的な強攻策を実行したサッチャー。そんな彼女のひとりの女であり、妻であり、母である姿にスポットを当てる。相当嫌われ者だった彼女だが、最近は、肯定的な意見も出てめているということか?!ブリティッシュ・イングリッシュを使いこなし、サッチャーそっくりのメリル・ストリープが見ものだ。(スコープ・105分・12年3月16日)

1月24日(火)日本映画「レンタネコ」Rent-a-cat

 “レンタ〜ネコ、ネコネコ”という奇妙な物売りの声を出して、寂しい人たちにネコを貸し出しする主人公のサヨコ。そんな彼女の周りには、夫と愛猫に先立たれた老婦人、単身赴任中の中年男、レンタカー屋の受付嬢、そして、サヨコの中学校の同級生・吉沢といった4人の人たちが近付いてくる。そして、彼らの心に開いた“穴ボコ”を猫たちがしっかりと埋めていく。自らも猫好きだと知られる荻上直子監督のネコ・ファンタジー。たまには、こんなのんびりして癒される作品もいい。(ヴィスタ・110分・12年5月12日)

1月23日(月)旧正月。今日で、西南学院大学の今学期の授業終了。

1月20日(金)アメリカ映画「ヒューゴの不思議な発明」Hugo

 装い新たに「TOHOシネマズ天神」のお披露目試写会。駅の構内にある時計台に隠れて住んでいる少年ヒューゴ。彼は、亡き父が残した機械人形を動かすための秘密を解き明かそうとしていた。しかし、忍び込んだおもちゃ屋の主人ジョルジュに捕まり、父親の大切なノートを持っていかれてしまう。何とか、ノートを取り戻そうと老人の家まで付けていったヒューゴは、そこで、ハート型の鍵を持った少女イザベルと出会う。時代は1930年代のパリ。そこでヒューゴ少年が出会う老人は、映像の魔術師ジョルジュ・メリエス。「月世界旅行」などのファンタジーで世界中を魅了したメリエスの世界が3Dで再現される。駅の構内を縦横に流麗に駆け巡るキャメラの3D映像がすばらしい!それは、過去の映画を愛してやまない“映画狂”スコセッシ監督の映像マジックだ。(3D・ヴィスタ・126分・12年3月1日)

1月18日(水)アメリカ映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」Extremely Loud and Incredibly Close

 9.11アメリカ同時多発テロで父親はいなくなってしまった。しかし、そんな父親と特別な絆で結ばれていた息子のオスカーには、父親の死は受け入れられない。ある日、父のクローゼットで、1本の鍵を見つけたオスカーは、きっとその鍵に父親からのメッセージが込められていると信じて、その鍵穴を見つけることにする。それは、途方もない旅の始まりだった。しかし、オスカーの辿った軌跡は、人と人をつなぐ大きな輪になっていく…。9.11によって大切な家族を失った人々の哀しみは癒えない。だが、幼い少年は、“父親探しの旅”で確実に成長していく。スウェーデン出身の名優マックス・フォン・シドーが、途中から少年と旅を共にする老人を飄々と演じていて、アカデミー助演男優賞にノミネートされている。できれば、彼にオスカーの栄誉を!(スコープ・129分・12年2月18日)

1月13日(金)日本映画「ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵」Berserk I The King's Egg

 中世ヨーロッパの甲冑時代を舞台にした壮大な《ベルセルク・サーガプロジェクト》の第1弾となる「黄金時代篇」の第一部。友も家族もいない孤独な傭兵ガッツは、戦場を渡り歩いていた。そんな彼に目をつけたのが、傭兵集団“鷹の団”を率いる青年グリフィスだった。グリフィスとの決闘に破れたガッツは、鷹の団の一員として、数々の激戦をくぐり抜けていく。そして、ミッドランド王国の正規軍に伸し上がった団は、“自分の国を手に入れる”というグリフィスの夢の実現に近づいていく。グリフィスとの強い絆を感じるガッツだったが、二人の運命は、大きく動き始めるのだった。80分という時間があっという間で、早く続きが見たい!第II部「ドルドレイ攻略」が6月、第III部「降臨」が冬の予定だ。(スコープ・80分・12年2月4日)

1月12日(木)アメリカ映画「ペントハウス」Tower Heist

 マンハッタンの一等地にそびえ立つ65階建ての超高級マンション“ザ・タワー”。そのサービスを一手にコントロールしているのが、管理マネージャーのジョシュだった。タワーの最上階であるペントハウスに優雅に暮らす大富豪アーサー・ショウは、最もVIPな居住者だった。ところが、彼が詐欺容疑でFBIに逮捕されてしまう。ジョシュは、彼にタワー従業員全員の年金を預けていたのだ。従業員たちのお金を取りかえすために、ジョシュは、仲間を集め、無謀な作戦を立てる。果たして、犯罪シロウトの彼らの作戦はうまくいくのか!?超高層マンションを舞台に、とんでもない犯罪アクションが繰り広げられる。ベン・スティラー、ケイシー・アフレック、マシュー・ブロデリックなど豪華キャストが集結したのは、エディ・マーフィがプロデューサーだからだ。(スコープ・104分・12年2月3日)

1月10日(火)日本映画「逆転裁判」Ace Attorney

 資格を取ったばかりの新米弁護士・成歩堂龍一(なるほどうりゅういち)の上司・綾里千尋が何者かに殺害され、その場にいた妹の真宵(まよい)が犯人として逮捕される。彼女が無実だと確信した龍一は、弁護を引き受ける。しかし、相手は、冷酷な天才検事・御剣怜侍(みつるぎれいじ)だ。それからいよいよ、数多くの証人を巡っての激しい法廷バトルが繰り広げられていく。もともとカプコムのファミコンゲームの映画化ということで、ゲームのキャラ・イメージに沿ったアニメ的なヘヤースタイルなどが面白いが、ベタなギャグにはついていけないものもある。(スコープ・135分・12年2月11日)

1月10日(火)日本映画「日本列島 いきものたちの物語」

 北海道・知床半島に暮らすヒグマの兄弟、屋久島のニホンザルの親子、六甲山地に住むイノシシの子どもウリボウの兄弟、釧路湿原のキタキツネの親子、襟裳岬のゼニガタアザラシなど、日本列島に住む動物たちの姿を、多くの動物キャメラマンたちが2年半にわたって撮影してきた映像をまとめた日本初の本格自然ドキュメンタリー。動物の親子や家族をテーマにしていて、NHKらしい丁寧で分かりやすい作りに仕上がっている。(ヴィスタ・95分・12年2月4日)

2012年1月1日(日)あけましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。

12月21日(水)日本映画「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」The Wings of the Kirin

 日本橋の麒麟の像の前で、男性の刺殺体が発見される。彼は、なぜ刺された場所から8分間も歩いて、その場所にやって来たのか?容疑者・八島は、車に跳ねられて意識不明の重体だ。警察本部は、八島の物取りの線で、捜査を始める。しかし、刑事・加賀恭一郎は、事件の裏に隠された事実を追求し始める。さまざまな人間関係が複雑に絡み合って、真相が明らかになっていくのは、見ていて痛快だ。「私が殺しました!」という予告編が印象深いが、ストーリーは、それとはかなり異なった展開をする。TV「赤い指」を見ていたので、加賀と父親の確執はよく理解できた。(ヴィスタ・129分・12年1月28日)

12月19日(月)アメリカ映画「J・エドガー」J. Edgar

 J・エドガーとは、50年近くもの間、権力を欲しいままに牛耳っていた伝説のFBI長官エドガー・フーバーのことだ。彼は、政府の要人に対して、さまざまな情報をキャッチしながら、影からの力を使っていた。そんなフーバーだから、自身の私生活は一切表に出さず、謎に包まれていた。そんなフーバーのことを知るのは、側近中の側近であるクライド・トルソン、そして、秘書のヘレン・ガンディしかいなかった。イーストウッド監督は、そんなフーバーの人間性にスポットを当てていく。だから、ディカプリオのフーバーは、かなり人間的に見える。本当はもっともっと悪事をしてきたはずだが、…。(スコープ・137分・12年1月28日)

12月16日(金)アメリカ映画「戦火の馬」War Horse

 第一次世界大戦前夜のイギリスの農村。貧しい農家に引き取られた一頭の馬は、ジョーイと名付けられ、その家の少年アルバートに育てられる。しかし、戦争が始まり、ジョーイは、イギリス軍に買い取られ、軍用馬として、戦場に狩り出されていく。それは、ジョーイの苛酷な旅の始まりであり、ジョーイは、数々の戦場を渡り歩きなあがら、戦時下の人々に希望を与えていく。イギリスの農村からフランスの前線、さらに、フランスの森、田園、谷と舞台を変えながら、ジョーイの数奇な運命が描き出されていく。その背景は、時に美しい農村や田園の場面もあるが、死に直面する悲惨な戦場も多い。アカデミー賞最有力候補の呼び声高いスピルバーグ版「風と共に去りぬ」だ。(スコープ・147分・12年3月2日)

12月16日(金)日本映画「わが母の記」Chronicle of My Mother

 2011年のプサン映画祭クロージング上映作品。ベストセラー小説家の伊上洪作はあ、幼い頃に親戚に預けられたことをずっと引きずりながら生きてきた。年老いて物忘れが激しくなってきた母・八重の面倒をみているのは、妹たちだった。しかし、母の誕生パーティーを開いたホテルで、父との思い出をほとんど忘れてしまっている姿に、洪作はショックを受ける。そして、それまでずっと距離をおいてきた母と向き合うことになる。「天平の甍」「敦煌」などで有名な井上靖の自伝的小説の映画化で、井上と母との長い間の軋轢が明らかになっていく。母親を演じる樹木希林のおとぼけぶりがリアルだ。(ヴィスタ・118分・12年4月28日)

12月15日(木)日本映画「荒川アンダー ザ ブリッジ The Movie」Arakawa Under the Bridge The Movie

 厳格な父親に厳しく育てられた大企業の御曹子である市ノ宮行は、その父親の命令で、荒川の開発の妨げとなる不法占拠者たちの撤去に向かう。ところが、奇妙な人たちにズボンを奪われて、川に落ちてしまう。自称“金星人”という少女ニノに助けられた行は、“借り”を返すために、河川敷に残る。すると、次々と不思議な人々が現れてくる。しかし、行は、次第に彼らの世界にはまっていく。中村光のカルト的な人気コミックの映画化で、その独特なギャグ・ワールドには微妙な笑いがつきまとう。そして、とにかく、キャストが豪華!村長役の小栗旬や星役の山田孝之など、信じられない出演陣にはビックリだ。(ヴィスタ・115分・12年2月4日)

12月14日(水)アメリカ映画「ニューイヤーズ・イブ」New Year's Eve

 タイムズスクエアで行われる年越しカウントダウンのイベント“ボール・ドロップ”を仕切るクレアは、無事進行することで頭がいっぱい。セレブ・パーティーのケータリングを任されたローラは、元カレのジェンセンと再会するが、彼のことが許せない。自宅と会社を往復するだけの人生やイヤになったイングリッドは、会社を辞め、“今年の目標リスト”を実行するために動き出す。友人の結婚式に出席していたサムは、去年の大晦日にした“ある約束”のためにニューヨークを目指す。それぞれに悩みを抱えた8組の人々が大晦日のニューヨークで、希望を取り戻していく。昨年大ヒットになった「バレンタインデー」に続いて、ゲイリー・マーシャル監督が贈るオールスター絵巻。主役クラスのスター俳優たちを巧みに組み合わせたシナリオ構成がプロの仕事だ。ジョン・ボン・ジョヴィの演技も合格点。(ヴィスタ・118分・11年12月23日)

12月5日(月)日本映画「ALWAYS 三丁目の夕日'64」ALWAYS 3

 シリーズ第3作は、3Dで、昭和の東京が再現される。東京オリンピックの開催を控え、熱気に満ちあふれていた昭和39年。茶川は、ヒロミと結婚し、出産も間近だ。鈴木オートには、新しい従業員のケンジも加わり、六ちゃんに鍛えられている。そんな六ちゃんに、思いを寄せる人が出来、毎朝、着飾って、出かけていく。茶川の家に待望のTVが来れば、鈴木オートには、大型のカラーTVが到着する。お馴染みの三丁目の人々は、以前より生き生きとして、日本が急成長をしていた頃が懐かしく思い出される。日本は元気いっぱいだったのだ。3D技術も相当進歩してきていて、東京タワーの俯瞰ショットは、よく飛び出ている。(3D・スコープ・142分・12年1月21日)

11月29日(火)ドイツ・フランス・イギリス合作「ピナ」Pina

 天才舞踏家ピナ・バウシュの舞踏は、それまでのダンスの概念を大きく変えた。それは、単なる踊りではなく、身体全身で、歓びや悲しみ、怒りなどを表現する新しい芸術だ。残念ながら、ピナは、2009年6月に急逝してしまったが、彼女が作り出した舞踏の世界は、ダンサーたちによって受け継がれている。そんなピナ独特のエネルギッシュな舞踏が、立体的な3Dで甦る。ダンサーたちは、舞台だけでなく、ヴッパタールの町に飛び出していく。ピナに関する人間ドキュメンタリーというだけでなく、ちゃんと映画として成立させているところは、ヴィム・ヴェンダース監督の力だ。(3D・ヴィスタ・104分・12年2月25日)

11月22日(火)アメリカ・イギリス合作「宇宙人ポール」Paul

 「タンタンの冒険」にも出ていたサイモン・ペッグとニック・フロストの“迷コンビ”主演の爆笑SFコメディ。“コミコン”に参加するために、念願のアメリカにやってきたイギリス人のグレアムとクライブ。イベント終了後は、キャンピングカーを借りて、西部にUFOスポットを巡る旅に。ところが、途中、宇宙人と遭遇。それから、“ポール”と名乗る陽気な宇宙人との奇妙なドライブが始まる。突拍子もない発想のコメディだが、いかにもSFオタクらしい、SF映画への温かいオマージュがいたるところに散りばめられていて、映画好きには堪らないシーンが満載だ。さらに、大物スターのゲストも楽しい限りだ!(スコープ・104分・11年12月23日)

11月18日(金)日本映画「friends もののけ島のナキ」friends

 東宝試写室デジタル改装後、初めての3D試写。病気の母のためのキノコを捕ろうと、まんなか岩をくぐり、禁じられたもののけ島にやってきた竹市とコタケ。島には、怪物のような形相のもののけたちがいて、一目散に逃げる竹市。とこが、コタケが島に残ってしまう。200年前の人間たちとの戦以来、人間たちに怯えながら島でひっそりと暮らしていたもののけの長老は、人間の襲来を恐れ、コタケを人質にとることに決める。コタケの世話をするよう命じられた人間嫌いのナキとグンジョウは、なんとかコタケを帰そうとするが、すぐ戻ってきてしまう。そんな無邪気なコタケの姿に、頑固者のナキの中に優しい気持ちが芽生え始めてくる。「泣いた赤鬼」をベースに作られたストーリーだが、現代にも通じる不変の愛、友情がテーマになっていて、素直に泣かせてくれる。3D効果もなかなかの出来だ。(3D・ヴィスタ・88分・11年12月17日)

11月14日(月)日本映画「ロボジー」Robo-G

 木村電器の落ちこぼれ社員3人が、社長命令で取り組んでいたのは、二足歩行ロボットの開発。だが、ロボット博まで1週間に迫った時、ロボット“ニュー潮風”は粉々に壊れてしまう。窮地に追い込まれた3人が考えたのは、ロボットの中に人間を入れてゴマかすこと。そして、偽の着ぐるみオーディションで選ばれたのは、73歳のおじいさん。そのおじいさんが、とんでもないジジイで、…。“ロボットの中に人が入っていたら、…”という発想が矢口監督らしく、ユニークで、抱腹絶倒のコメディが出来上がった。ロボットに入ることになる五十嵐信次郎とは、ミッキー・カーチスの新しい芸名。かなり、イメージチェンジして、頑固ジジイを好演。ほとんど北九州でロケされていて、門司港駅など知っている風景も楽しい。(ヴィスタ・115分・12年1月14日)

11月10日(木)アメリカ映画「永遠の僕たち」Restless

 イーノック青年は、葬儀場に行き、知らない人の葬儀に、遺族のふりをして参列する“葬式ゲーム”が趣味だ。彼は、交通事故で両親を失い、生きることからドロップアウトしていた。そして、自分だけにしか見えない幽霊のヒロシだけが友人だった。ある日、葬儀場の係員から咎められようとする彼を、以前、葬式で会った少女アナベルが救ってくれる。明るく人生を謳歌するアナベルに惹かれ、彼女に心を開いていくイーノック。だが、彼女は、“子どものがん治療のボランティア”ではなく、がん闘病中だった。しかし、彼女との日々は、イーノックの考えを大きく変えていく。ガス・ヴァン・サント監督の新作は、“死”ということと、“生きる”ということを、若々しく新鮮なキャストで考えさせてくれる。深刻なテーマだが、青年版「勝手にしやがれ」とも言える爽やかな青春ラブストーリーで、ミア・ワシコウスカは、ジーン・セバーグの再来だ。特攻隊員ヒロシを演じる加瀬亮の英語がナチュラルだと驚いていたら、7歳までワシントン州で育ったそうだ。(ヴィスタ・90分・11年12月23日)

11月7日(月)アメリカ・ニュージーランド合作「タンタンの冒険/ユニコーン号の冒険」The Adventure of Tintin

 ある日、露店で、ユニコーン号という船の模型を手に入れたタンタンは、怪しい男たち2人から高値で譲ってほしいと持ちかけられるが断る。図書館で調べると、それは伝説の軍艦だった。ユニコーン号の謎解きに乗り出したタンタンは、凶悪な敵サッカリンによって、カラブジャン号の船室に閉じ込められてしまう。果たして、タンタンは、敵の攻撃をかわし、謎の財宝を探すことができるのか!?パフォーマンス・キャプチャーによって実際の俳優たちの演技がデジタルアニメに変化し、かなりリアルな映像を作り出すのに成功している。もちろん、アニメにしか出来ないアクションシーンも満載で、そのスピードはついていくのが大変だ。また、アニメなので3D効果もバッチリ。タンタンの世界は、夢と冒険がいっぱいで、子どもから大人まで楽しめる話なので、大ヒットは間違いなし!第2作目をピーター・ジャクソンがどう撮るのか、今から楽しみだ。(3D・スコープ・107分・11年12月1日)

11月4日(金)ノルウェー・ドイツ・スウェーデン合作「クリスマスのその夜に」Hjem til Jul

(スコープ・85分・東京11年12月3日、福岡12月10日)

10月30日(月)日本映画「源氏物語 千年の謎」Tale of Genji

10月28日(金)アメリカ映画「マネーボール」Moneyball

10月27日(木)日本映画「映画 怪物くん」Kaibutsukun the Movie

10月26日(水)日本映画「ワイルド7」Wild 7

10月24日(月)日本映画「アントキノイノチ」Life Back Then

10月17日(月)日本映画「ヒミズ」Himizu

10月14日(金)日本映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」RAILWAYS

10月14日(金)日本映画