7月中旬から下旬にかけては、尾も真ん中がわれ、1メートル ぐらいは、飛べるようになりました。でも、どうしても片足に 力が入らず、着地でころんでしまいます。 ころぶと、両方の羽で体勢を直そうと、ばたつき、すこしづつ ですが、羽の先端をいためてゆきました。 片足が、思うように利かないため、鳥かごの止まり木にも、立 てず、低い位地の止まり木は、もっぱらチュイの枕のなってし まいました。 見た目はその姿もかわいいのですが、それは、ツバメにとって 致命的な事のように思えました。 地面以外で立っていられない・・・ 地面は、外敵が多いので、眠る事もできなくなる・・・ そのころは、餌をミルワームだけにして、餌箱に入れておくと 自分でついばむ事ができるようになり、多少外出をしても、一 人で居られる状態になりました。 また、私もあまり忙しくなかったので、毎週末、八ヶ岳の小屋 (小屋を製作中なのです)に、連れて行きました。 八ヶ岳は、チュイの生まれた所から近く、八ヶ岳に2泊すると 一層元気になるような気がしました。 私は、色々な生き物は、生まれた時の磁場から、そこが故郷で あると感じたり、住んでいる経度、緯度から数100キロ移動す ると、たとえ、飛行機で何時間であっても、電車で何日掛かっ ても、疲れは同じなのではないかと思う事があります。 それが、生きているものの帰巣本能につながっているのではな いかと・・・ 八ヶ岳は虫の宝庫です。 夜、電池で点く蛍光燈を持って表に出ると、大きな蛾や、カゲ ロウ、蚊などが集ります。それを捕まえて与えると、おいしそ うに食べました。只、おおきな蛾は、羽をはさみで切らないと 口の大きさの4倍ぐらいになってしまうので、燐ぷんも構わず 切ってやりました。 食べ物で言うと情けない事が一つ・・・ チュイは地べたしかいられない仔でしたから、地べたに放して いると、ありを食べようとするのです。 その食欲や、捕獲しようとする事は良いのですが、ありをその まま飲み込むと、ありの歯で、内蔵がやられてしまいます。 親鳥は、子供に餌を与える時は、空中で落として掴むの繰り返 しをして、殺してから与えます、自分が食べる時もそうです。 しかし、そうした親の行動を見ていないチュイにとっては、私 達が、頭を落としたミルワームも(それでも動いています) 生きているありも同じなのです。 飛んでいる虫には、ただ、首を動かすだけで、捕まえる事が出 来ませんでした。 八ヶ岳の帰りはいつも生まれ故郷のサービスエリアで、巣を見 せてやりました。兄弟達はすっかり大きくなり、巣の外で眠っ ていました。人間に育てられたチュイよりも明らかに大人にな っているのがわかりました。 8月の中旬には、もうその巣には誰もいませんでした。 渡ったのです。 一方家のチュイはというと、着地のダメージから、あまり飛ば なくなり、利かない足で、歩く、こける、体勢を整える為 羽をばたつかせる、羽の先端が傷む、なおさら飛べなくなるか ら歩く、こける・・・の繰り返しですこしづつ、みすぼらしい 姿になってゆきました。 でも、私達の呼ぶ声や、足音に反応し、籠の端に頭を突っ込み 出して、出してと鳴くようになりました。 籠から出しても、数歩あるいて、眠ってしまうのですが、傍に いたいのか?自由になりたいのか、必ずそうしていました。 仕事から夜遅く帰って、出して、手の中で暖めてやると、その まま二人とも眠ってしまうということもありました。 この頃には、渡らせる事を断念、どうすれば越冬出来るか、と いう点にテーマが変わって行きました。 もう、自然に帰す事はできない。これは、自分の行動が正しか ったのかどうかと、最後まで考えさせられる事になりました。 いや、今にいたっても、結論は出せません。 もし、私が、トイレで手に取らなかったら・・・数時間の命で した。だからといって、飛ぶ事も出来ず、人の手で育てられる ことが、本当にこの仔にとって、幸せな事なのでしょうか。 つぎのページ


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