balloon アメリカの病院 (Last updated : December 27, 1998)

今となっては貴重な体験ができたと微笑みながら言えますが、帰国直前の98年4月はじめに、娘二人が同時に入院するということがありました。 なかなかアメリカの病院というものを知る機会は少ないでしょうから、ほんの一例としてここにアップします。

発病

4月3日の夜のことです。いつものように夕食を終え、風呂に入れて娘たちを布団に入れました。 まもなく眠りについたのですが、下の子が急に起きあがり食べたものをもどしました。 しばらく泣いていましたが落ち着いたのか眠りにつきました。 またしばらくしたら泣き出したので見てみると、今度は下痢です。 まだおむつがとれていないころでしたので、おむつを交換してやったらすぐ眠りました。 このときはまだこれから起こる惨事のことなど想像もできませんでした。

30分ほどしたらまた同じことを繰り返しました。嘔吐と下痢です。 さすがに驚き、なんかおかしいことに気づきましたが、そのときは夜10時過ぎで、とりあえず朝まで様子を見ようと思いました。 結局、ほぼ30分おきに嘔吐と下痢を繰り返し、もうもどすものがなくなっていました。 深夜1時ころ、Carle Clinic に電話しました。とりあえずの対処方法を教えてくれました。 水分を適度に与えなさいということでした。朝になっても続いているようだったら病院につれてきなさいということでした。

水をやってもすぐもどしました。子供は苦しくて泣き続けます。 おむつをしていたので、おしりのまわりは真っ赤に腫れ上がり、下痢したものを拭いてやるだけで痛さのため悲鳴をあげるほどでした。 でも私たちにはどうすることもできません。朝、病院に予約の電話をいれてその子を医者に見せました。

とんでもない医者

いつも見てもらっているホームドクターが他の病院に診察に行っているそうで、違う先生に見てもらうことになりました。診断の結果は、特に病気のようなものではなく、水分を補給してやればいいということでした。おしりのまわりの塗り薬くらい処方してもらおうと先生にいいましたが、そんなものは不要だといわれました。結局、治療はおろか、薬さえもらえず家に戻りました。

結局、その子は、ほとんど眠れていません。布団に入れると眠りつくのですが、すぐ、嘔吐と下痢を繰り返します。しかし、ドクターに見せてなんでもないと言われたのですから、指示通り、水分を補給しながら、根気よく見てあげるしかなかったわけです。

今度はもう一人の娘が

下の子は、結局、嘔吐と下痢を繰り返しています。4日の夜になって、思いもいなかったことが起こりました。 夕べと全く同じことが上の子にも起こったのです。布団に入って眠りについたすぐ後に、気持ち悪いといって起きあがったのです。そして、嘔吐。下痢。目の前が真っ暗になりました。 医者についていっても同じことを言われるだけだと思い、水分の補給に気をつけながら、二人の子供の看病を続けました。私たちはこれで2晩眠っていません。

我慢の限界

下の子は、嘔吐と下痢を繰り返し3日目に入りました。見るからに脱水症状のために、頬がこけ、目が飛び出し、苦しくて泣き叫びます。そして苦しさが頂点に達したところで、気絶してそのまま眠りにつきます。でも、30分後、また、苦しくて目を覚まし、叫びまくり、また気絶するということを繰り返しました。上の子はまだ下の子に比べて症状が軽いのがせめてもの幸いでしたが、2人ともいっこうに回復の兆しが見られません。夜、もう一度 Carle Clinic に電話しました。もう、3日もその症状が続いていることを告げましたが、水分を補給しなさいということを言われるだけでした。

親は3日目の徹夜に入ります。子供は相変わらず、苦しくて泣き叫び、苦しさのため気絶することを繰り返しています。子供のたった10kgの体重が、わずか3日で2kgも減りました。いくらなんでもおかしい。 月曜の早朝、病院が開くのを待たずに、下の子供を抱えて救急窓口に飛び込みました。 妻には、時間になったら上の子供を見てもらえるように予約を入れなさいと言い残してきました。

信じられない救急窓口

救急窓口に行ったら、どんな症状なのか簡単にチェックを受けました。そして、なぜここに来たのか説明しなさいと言われました。今まであったことを総て話しました。信じられない言葉が返ってきました。「そんなことで救急に来たのか?」素人が見ても脱水症状で、苦しさのための泣きわめいていめ子供を目の前にしてそんな言葉を聞くとは思ってもいませんでした。どうしても救急治療が必要だとしつこく訴えて、ようやく、受付をしなさいと言われました。

すぐ見てもらえるかと思ったら間違いでした。待合室には、3人の大人が待っていました。それも、楽しそうにTVを見ている人ばかりです。こいつらが何で救急治療の必要があるのだ?という人ばかりです。その人たちの冷たい視線を気にもせず、子供は叫び続けててます。

救急診療

途中で、「あと30分ほどで小児科があくから、そちらで見てもらったら?救急は高いよ。」と言われましたが、小児科の方には、この子の姉が見てもらうようになっているはずだということを告げたら驚いていました。 小児科に電話で確認してもらったところ、予約の電話ははいっているが、込んでいるので、11時頃の診察予定だということでした。 金のことはいいから、1分でも早く見てもらいたいと言って、ようやく見てもらいました。 看護婦がやってきて、身長、体重、体温なんかをはかります。こっちが焦っているのをもてあそんでいるかのようです。しばらくして、ドクターがやってきました。すぐ、入院が必要だと言われました。 とにかく脱水症状が激しいということです。

周囲があわただしくなりました。一体、何人の人がやってきたでしょう。泣き叫ぶ子供の手足を押さえつけ、いろいろと管をつけました。汚物のつかない尿を検査する必要があるということで、尿道にも管を通されました。当然暴れます。そこを通りかかる病院関係者のほとんどが、目を覆ってしまうほどの一騒動がありました。点滴もされました。暴れて針が何度もとれました。最後は、腕に添え木をして、腕が曲がらないようにするしかありませんでした。私は、もう娘の頭を抱きしめて、いままで放っておいて悪かったと言い続けるしかなすすべがありませんでした。

点滴をしてもらったのがよかったのでしょう。娘はしばらくぶりに眠りにつきました。脱水症状で苦しかったのだとわかりました。2時間ほどしたら、ベッドを変わろうと言われました。今までいたところは、 救急患者たちが運ばれてくる簡易ベッドでした。眠っている子供を起こさないようにそおっと子供を抱きかかえ、エレベータをあがってある病室につきました。

ICU

案内されたところは個室でした。子供を寝かせたら、その部屋についてくれる看護婦がやってきました。 血圧、脈拍などをはかったり、耳の中を見たり、一通りのことをしました。 そして、しばらくしてこう言いました。「あなたのもう一人のお子さんと同じ部屋になれたらいいのにね。」はじめは、何を言っているのか理解できませんでした。 しばらくして、ホームドクターがやってきました。一通りの診察をし、私と話をして、改めて入院が必要だということを告げられました。そして、上の娘が同じ階の別の部屋に入院していることを教えられました。さっきの看護婦さんの言った言葉の意味がようやく理解できました。 下の娘がこういう状況に陥ったことで、1日遅れで同じ症状を発症した上の子は、診察後、すぐに入院の手続きをされたとのことでした。 さらにしばらくして、下の子は、上のこと同じ病室に移動できることになりました。 そのとき、今までいた部屋の出入り口に書いてある文字にふと目をやって驚きました。 Isolated Care Unit と書いてありました。

(つづく・・・)