balloon プロローグ

発病

1998年4月3日の夜のことです。いつものように夕食を終え、風呂に入って娘たちを布団に入れました。 娘たちはまもなく眠りについたのですが、下の子が急に起きあがり食べたものをもどしました。 しばらく泣いていましたが落ち着いたのか眠りにつきました。 リビングに戻ってTVを見ていましたが、またしばらくしたら泣き声がしました。行ってみると、今度は下痢をしたようです。 まだおむつがとれていないころでしたので、おむつを交換してやったらすぐ眠りました。 このときは、まだこれから起こる惨事のことなど想像もできませんでした。

30分ほどしたらまた同じことを繰り返しました。嘔吐と下痢です。 さすがに驚き、なんかおかしいことに気づきましたが、そのときは夜10時過ぎで、とりあえず朝まで様子を見ようと思いました。 結局、ほぼ30分おきに嘔吐と下痢を繰り返し、もうもどすものがなくなっていました。 深夜1時ころ、Carle Clinic に電話しました。とりあえずの対処方法を教えてくれました。 脱水症状をおこさないように、適度な水分を与えなさいということでした。そして、朝になっても続いているようだったら病院につれてきなさいと言われました。

しかし、水をやってもすぐもどしました。子供は苦しくて泣き続けます。 おむつをしていたので、おしりのまわりは真っ赤に腫れ上がり、下痢したものを拭いてやるだけで痛さのため悲鳴をあげるほどでした。 でも私たちにはどうすることもできません。朝、病院に予約の電話をいれてその子を医者に見せました。

とんでもない医者

いつも見てもらっているホームドクターが他の病院に診察に行っているそうで、違う先生に見てもらうことになりました。それが悪夢の始まりでした。そのドクターの診断の結果は、特に病気のようなものではなく、水分を補給してやればいいということでした。信じられないことに、薬もいらないとのことです。おしりのまわりの塗り薬くらい処方してもらおうとドクターに言いましたが、「そんなものは不要だ」と言われました。結局、治療はおろか、薬さえもらえず家に戻りました。

しかし、当然のことながら、その子の症状は何も変わりませんでした。ひどくなる一方です。彼女は、ほとんど眠れていません。布団に入れると一応眠りつくのですが、すぐ、目を覚まして嘔吐と下痢を繰り返します。ドクターに見せてなんでもないと言われたのですから、かわいそうですが、私たちとしては、指示通り、水分を補給しながら、根気よく見てあげるしかなかったわけです。

今度はもう一人の娘が

1日経ちましたが、まだ、嘔吐と下痢を繰り返しています。加えて、4日の夜になって、思いもいなかったことが起こりました。

夕べと全く同じことが上の子にも起こったのです。布団に入って眠りについたすぐ後に、気持ち悪いと言いながら起きあがったのです。そして、すぐに嘔吐と下痢。目の前が真っ暗になりました。

医者につれていっても同じことを言われるだけだと思い、とにかく水分の補給に気をつけながら、二人の子供の看病を続けました。私たちはこれで2晩眠っていません。

我慢の限界

下の子は、嘔吐と下痢を繰り返し3日目に入りました。見るからに脱水症状のために、頬がこけ、目が飛び出しています。そして、苦しくて泣き叫びます。その苦しさが頂点に達したところで、気絶してそのまま眠りにつきます。でも、30分後、また、苦しくて目を覚まし、叫びまくり、また気絶するということを繰り返しました。

上の子はまだ下の子に比べて症状が軽いのがせめてもの幸いでしたが、2人ともいっこうに回復の兆しが見られません。夜、もう一度 Carle Clinic に電話しました。もう、3日もその症状が続いていることを告げましたが、水分を補給しなさいということを言われるだけでした。

親である私たちは、3日目の徹夜に入ります。子供は相変わらず、苦しくて泣き叫び、苦しさのため気絶することを繰り返しています。下の子のたった10kgの体重が、わずか2日で2kgも減りました。いくらなんでもおかしい。

もう我慢の限界です。月曜の早朝、病院が開くのを待たずに、下の子供を抱えて救急窓口に飛び込みました。 妻には、クリニックが開く時間になったら、上の子供を見てもらえるように予約を入れなさいと言い残してきました。

( つづく・・・ )