balloon 入院生活−その3

眠れない夜−とんどもない看護婦たち

実際の話、私たちは休む暇がありませんでした。専属の看護婦がついていると言っても、ほとんど仕事はしません。下の子供は、尿道に管をつけたままなので、そこから尿をとって検査ができるのですが、上の子供はなんとか歩けるため、トイレに行きます。看護婦には、トイレに行ったらその量と頻度などを調べるから教えてね、と言われていたから、私たちはほとんど眠らずに看護婦の詰め所に報告に行っていました。でも、それをチェックに来るのは、ずっとあとのことで、次のトイレのときまで来ないから、「これではあなた達が困るでしょう?」と催促して、ようやく渋々来ることも結構ありました。それでも来ないことがありましたので、私たちも律儀に報告に行くのをやめました。

点滴の交代も同じでした。点滴がなりなると、機械がブザーをならして知らせるのですが、看護婦はやってきません。音が聞こえないのかと思って、看護婦詰め所に行くときちんとその音は聞こえるのです。彼女たちは談笑しています。私たちの病室の前を通った車椅子に乗った小さな女の子が、親切にもその音を聞いて看護婦を呼びに行ってくれたこともありました。とにかく、とんでもない看護婦たちです。「私たちがついているから、家に戻っていいわよ」なんて入院するときに、よく言えたものです。あのとき家に戻らなくて本当によかったと思います。

そんなことが続きましたが、入院生活3日目の夜になりました。子供たちの様態も少し安定してきましたし、私たちは、下の子の発病以来この5日間、ほとんど睡眠をとっていませんでした。こんなことを続けていたら、子供たちが直った頃には、今度は親の方がやられてしまいます。私か妻のどちらかは、交代で家に戻ろうとということにしました。私は仕事も休んでいましたので、とりあえず、私が先に帰ることになりました。

トルネード襲来

悪いことは重なるものです。私が家にもどって、食事をし、久しぶりに風呂に入ってシャワーを浴びて、夜のスポーツニュースを見ていると、突然、赤い点滅とともにテロップが流れました。Tornado Warning!!とあります。時刻は、夜11時少し前だったでしょうか。確かに外はすごい雨です。

トルネードについては、私が通っていた英会話教室でも、当然のごとく教材に取り上げられ、その対処方法を教えてもらっていました。これまでも何度もトルネードの発生注意報( Tornado Watch )は体験したのですが、警報は1、2度だけでした。こちらも疲れているので、万が一のことちがあったら大変です。Weather Channel や Urbana-Illinois ローカルのTVを交互に見て情報を収集しました。

TVは、トルネードの発生確率の高い地域を赤で示して、注意を呼びかけています。その動きをリアルタイムで伝えるのですが、このあたりの特徴なのでしょう。Champaign のずっと南西から北東の方角へ、Champaign をめがけてその危険地域が移動してきます。

そのうち、Urbana-Champaign に待避命令が出ました。ラジオもつけました。TV でもラジオでも、とくかく安全な場所へ逃げろと言っています。外ではサイレンが鳴っています。トルネードが来たら、とにかく地下室へ逃げろと教えられていたのですが、私は病院のことが心配で、頭の中が真っ白になりました。

トルネードよ、さようなら

結局、そのトルネード警報がおさまるまでの約40分間、私は逃げようかどうしようか迷ったまま、結局はTVの前にいました。台風と違って、トルネードは、きわめて局地的に被害をもたらし、あっという間に去っていきます。Urbana-Champaign には、結局被害はなかったようでした。2年前、私が住んでいるアパートから150mほどのところへ、トルネードが実際にタッチダウンしたという話を聞いていただけに、本当に恐ろしかったのですが、警報がおさまればもう安心です。久しぶりにゆっくり眠りにつくことができました。

次の日は、今度は妻が休む番です。仕事先へいったん出向き、事情を説明して昼過ぎに交代のために病院へ行きました。そして、昨晩のことについて話を聞くと、昨夜のトルネード警報のため、すべての入院患者が待避したとのことです。自分たちのところは、2人とも歩けない状態ですので、ベッドごとの移動であり、それは、大変な騒ぎであったということでした。

( つづく・・・ )