マダラウミスズメの繁殖確認調査について

MADARA PROJECT

日本ウミスズメ類研究会
Pacific Seabird group (Japanese Seabird Conservation Committee)

マダラウミスズメってどんな鳥?
なぜマダラウミスズメの調査をしたの?
どんな人たちが調査をしたの?
どこで調査をしたの?
調査の方法は?
調査結果は?



マダラウミスズメってどんな鳥?

 マダラウミスズメはチドリ目ウミスズメ科に属する小型の海鳥です。ほとんどの海鳥が孤島や海近くの断崖に営巣するのに対し、マダラウミスズメは海からかなり内陸に入った老齢林の樹上に、単独で営巣する変わった習性を持っています。
 分布は、アリューシャン列島を中心に、東はカナダやアメリカ沿岸、西は日本沿岸にいたる範囲です。太平洋の東側の個体群は基亜種 Brachyramphus marmoratus marmoratus とされ、西側の個体群はBrachyramphus marmoratus perdix という亜種として考えられてきました。このperdixのほうは、体が大きく、嘴がより長いのが特徴です。体重はmarmoratusが220gであるのに対し、perdixは287gと、かなり重くなっています。また、羽衣にも違いが見られます。
 このような形態的な違いに加え、近年の遺伝的な手法によって、両者が亜種としての関係ではなく、別種であるとの見解がなされるようになりました。
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なぜマダラウミスズメの調査をしたの?

 マダラウミスズメ(Brachyramphus marmoratus perdix)は、日本ではこれまで小清水町藻琴山山麓でのみ繁殖が確認されており、それが唯一の繁殖確認となっています。しかし、発見者らの手記によれば、産卵場所は草地であり、卵は3個でした。岩の上などに営巣した例もあるものの、マダラウミスズメの多くはすでに述べたように老齢林の樹上に営巣することが多く、しかも卵は1つです。また、最近になって日本でのその卵を鑑定したアメリカの研究者によれば、この卵は明らかにマダラウミスズメのものとは異なっていることがわかりました。巣があったとされた付近で、「抱卵中」とされた成鳥も採集されてはいるものの、確実な証拠となるものはありません。
 その一方で、繁殖に必要な老齢林は、日本だけでなくロシアでも大量に伐採されており、生態の解明もされないままに個体数は激減していると思われます。
 今年度の調査は、日本でのマダラウミスズメの繁殖に関するなんらかの手がかりを得ることを目的としました。

どんな人たちが調査をしたの?

 調査は日本ウミスズメ類研究会とパシフィック・シーバード・グループが共同して行いました。
 日本ウミスズメ類研究会は1993年に設立された海鳥研究者の連絡団体です。研究会では、1994年10月より(財)日本自然保護協会のP.N.ファンド助成を受け、『希少ウミスズメ類の現状と保護』に関する調査研究を続けています。
 共同調査を行ったパシフィック・シーバード・グループ、PSGは、アメリカやカナダなど環太平洋の海鳥研究者で構成される大きな団体です。
 今回、PSGから調査に参加したのは、マダラウミスズメ研究の第一人者であるKim Nelson(キム=ネルソン)さん、キムさんの夫であるWill Wright(ウィル=ライト)さん、そしてTom Hamer(トム=ヘイマー)さんです。さらに、海鳥研究者のLora Leschner(ローラ=レシュナー)さん、そしてウミスズメ研究で有名なAnthony Gaston(アンソニー=ガストン)さんも調査に加わりました。日本からは小野宏治(東邦大学理学部、日本ウミスズメ類研究会幹事、PSG日本海鳥保護委員会委員長)、福田佳弘(日本ウミスズメ類研究会幹事)、John Fries(ジョン=フリーズ、東邦大学理学部、PSG日本海鳥保護委員会委員長(小野と共同))をはじめ、日本ウミスズメ類研究会会員の佐藤美穂子、大槻都子、赤間剛夫のみなさんが参加しました。さらに、現地より松田光輝さん(知床自然センター研究員)、川崎康宏さんらが調査に加わり、総勢14名あまりで知床を中心にキャンプをしながら6月30日から7月6日までの約1週間、調査を続けました。

どこで調査をしたの?

 調査地は、日本で唯一繁殖が確認されたとされている小清水町藻琴山、そして原生的な森林が比較的残っていると思われる知床半島です。知床では、現地の環境を下見しながら、半島の北側にあたるウトロ側で調査を行いました。

調査の方法は?

 調査は、まず声を確認することからはじめます。日本側の亜種のマダラウミスズメがどんな声で鳴くのか、アメリカ側の亜種のマダラウミスズメと似たような声なのかはまだわかっていませんが、調査者は事前にマダラウミスズメの声のテープを何度も聴き、声の特徴を覚えておきます。
 この声は、巣に飛来するときなどによく聞かれます。ほかにも、マガモに似たような声で「グァグァグァ…」と鳴くこともあります。
 調査の時間帯は、公式な日の出時刻の約1時間前から日の出後1時間くらいまでです。今回は1時15分に起床、そして2時15分より約2時間から3時間、調査を行いました。
 14人のグループを3チームに分け、海側や山側の見晴らしのいい地点に配置します。
 調査地は、前日に入念な下見を行い、太い針葉樹のあるところやその飛来ルートに当たるようなところを選んでテープでマーキングしておきます。
 現地に着いたチームは、道沿いにおよそ100m間隔にならび、声と姿による確認をしました。

調査結果は?

 残念ながら、今回は調査期間が短いこともあって十分な確認はできませんでした。また、知床岬寄りのルシャ川一帯が、林道工事のために入れず、今後の可能性を残しました。
 ただし、マダラウミスズメの調査に精通しているキムさんやトムさんによれば、同じ場所を時期や時間を変えて6度調査しても確認できず、7度目でやっと確認されたケースもあるとのことでした。
 研究会では今後もさらに調査を続けていきたいと考えています。
 なにかマダラウミスズメに関する情報がありましたら、日本ウミスズメ類研究会事務局までご一報下さい!


調査風景などが 知床サイト(The sights of Shiretoko) に掲載されていますので、ぜひご覧下さい。

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Compiled by Koji Ono kojiono@gol.com
Revised: 22 July 1996
URL: http://www2.gol.com/users/kojiono/index.html