わく星学校でこのメダカ調査を始めた頃というのは、子どもたちが「学校に行ってない自分はダメなんだ」という劣等感からまだ抜けきれない時代でした。何事にも否定的、消極的でそんな雰囲気から脱却するために、自分たちにもできて、なおかつちゃんとやればきちんと評価されるようなことをして、それが自信につながっていけば‥という思いで始めたことを覚えています。 メダカというのは多くの人が親しみを感じているにもかかわらず、実態は意外に知られておらず、同時に特別な道具や技術がなくても調べることができることから、私たちが対象とするのにちょうどいい存在であったと思います。手探りで始めた調査もだんだんと深まり、振り返ってみれば20年を数えました。 私には調査を通じて子どもたちに伝えたいと思ってきた信念が二つあります。ひとつは「科学はみんなに開かれたものだ」ということ。そしてもうひとつは「学問は足でするものだ」ということです。 科学の本質は、偉い先生がやろうが無名の者がやろうが、ちゃんとした手続きを踏めば同じ結果が得られるというところにあります。わく星学校の子どもたちが学歴というラベルに依拠しない人生を歩んでいくにあたって、科学の手法や考え方をきちんと知っておくことは、きっと確かな道しるべになるはずだと思っています。 また、そこでいう科学的な手法の中でもっとも基本的なことが、丁寧に観察し正直に記録していくことです。そのために現場にちゃんと足を運んで、対象と向き合う労力を惜しんではなりません。机の前に座って頭でする学問が苦手な子どもたちだからこそ、足でする学問を苦にせず、そこにこそ強みを発揮する人になってほしいと願ってきました。 おかげさまで、地道に調査を重ねることでいろんなことが分かってきました。そして、毎年その成果をまとめて発表することで、少しずつ子どもたちの自信にもつながってきたと思います。今やもう、その年の人だけの成果ではなく、これまでかかわってきた人みんなで積み上げてきた成果という重みが出てきました。わく星学校の財産としてこれからも大切にしたいと思いますし、それが子どもたちの確かな成長につながってくれるものと信じています。 |