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□ 京都市内における野生メダカの生態調査 □



コラム「オオクチバスの影響」

 オオクチバスは生態系を荒らす特定外来生物の代名詞のような存在ですが、私たちの調査地点の中で実際にその影響が観察されたのは東高瀬川でした。安定したメダカの生息地であるこの川で06年と18年にオオクチバスの幼魚が数多く見られると同時にメダカの数が激減しているようすが観察されました。

 私たちは胃の内容物を確認することまではしていませんが、状況から判断してバスの幼魚がメダカを食べてしまったのだと考えています。やはり、メダカの生息地にオオクチバスが入り込んでしまうと、メダカの存在が脅かされるということがいえそうです。

 ちなみに、バスの幼魚がうようよしているようすを目にすると、翌年以降は一体どうなってしまうのだろうかと心配になりますが、意外にもバスは急激に減っていきます。そして、そのあとメダカの数がゆっくりと回復していくようすが見られます。

 なぜオオクチバスは減るのでしょうか。これはあくまでも仮説ですが、この川の生き物たちが形成している生態系はバスが繁殖し続けるには小さ過ぎるのではないかと思っています。たくさんいたバスの幼魚たちはたちまちエサを食べ尽くしてしまい、飢餓状態に陥ってしまったのでしょう。この川で得られる食料で生き残ることのできるバスはごく限られているのだと思われます。

 そう考察してみると、もともとメダカの好む小さな川はオオクチバスが住み着くのには向かない環境で、両者は自然界ではきちんと棲み分けができていた関係にあると考えられます。くれぐれも人間の悪意や不注意でバスを移動させてしまうことのないように気をつけたいものです。

 賀茂川でもオオクチバスを確認しています。残念ながらここの大きな生態系の中でバスはしっかりと居場所を獲得してしまっているいるように感じられます。メダカもこの大きな生態系の中で時々ニッチな居場所を見つけてまぎれ込んでくる存在で、両者はそれなりに距離を保っているように思いますが、09年にメダカのいた岸辺のワンドにバスが入り込んで東高瀬川と同じことが起こってしまいました。



06年の東高瀬川にて捕獲

生態系のピラミッドではバランスが重要