小島姫外伝 〜第2話 洞窟の中で〜 作:バーベル事件


5分ほど進むと、急に辺りが明るくなりました。どうやら、目的の場所に着い

たようです。

そこは、大きな応接室のようになっていて、とっても豪華な家具が並んでいます。

小島姫は、こういうお部屋が大好きです。走り出してソファーにダイブ。

勿論、親指で首をかっ斬るポーズも忘れません。

一人ではしゃぎまくる小島姫。

グルルルル。小島姫のお腹の音が静寂を引き裂きました。

「あたしったらなんてはしたない・・・あ、これはお腹の音じゃなくってよ・・・

あれ?」

真っ赤になりながら小島姫は言い訳とも墓穴ともとれる発言をしようとしまし

た。

「お腹が空いているのですか。では、なにか持ってこさせましょう。」

サングラスの男が言いました。

「ケルベロス1号!」

今までの優しい口調とはうってかわったガナリ声で、部屋の奥を指さしながら

サングラスの男は叫びました。

部屋の右側にあるドアが開き、坊主頭の男が顔を覗かせました。

どう見ても人間です。ところが、彼の周りをとりまく雰囲気を見ると、どうし

ても犬に見えてきてしまいます。

なんて不思議なんでしょう。

サングラスの男に「もってこい!」と命令されたケルベロス1号は、「ワンッ!」

と一声吠えて素早くドアの向こうに消えていきました。

暫くすると口に何やらくわえて戻ってきました。

「昔ながらの焼き○バ」と書いてあります。

「昔っていつなんだ、バカヤロー?」

と小島姫が男達に訊ねると、側転していた男にムッとした表情で睨まれてしま

いました。

「だって知りたいんですもの・・・ま、いっか」

と既に出来上がっているヤキソバをお姫さまにあるまじき速さでかきこみます。

5つも。



「美味しかったわ。どうもありがとう。ところで、あなた達は誰なの?」

本当だったら会った瞬間に出てこなければならないような質問がやっと小島姫

の口から出てきました。

お腹が一杯になって栄養が行き渡ってきたのでしょうか。

「ああ、まだだったな。な。俺はセカ・イノ・マサ・チョーノだ。チョーノで

いい。あれは・・・」

もう一人の男が立っている方と逆の方向を指さしながら言いかけたとき、

「俺はミスター・プロレス・ノ・ムトー・オレ・ガセイギだ。俺のことはムタ

でいいぞ。」

と見かけよりもずっとぶっとい声でムタが言いました。

「さて、俺はちょっと仕事をするぜ。チョーノ、暫く頼む。」

「おお。Come on Muta!」

オーケーしたのだか文句を言っているのかわかりません。

ムタは部屋の左側のドアの向こうへと消えていきました。

チョーノは、小島姫の向かい側のソファーにどっかりと腰を下ろすと、右の方

を指さしながら言いました。

「小島姫、おまえに来ていただいたのは、な、おまえにこの王国の実状を知っ

ていただきたかったのです。オラ、エーッ。」

「実状って言っても、あたし、わからないわ。」

口を愛らしく尖らせる小島姫。

「だって、あたし、王宮からあまり出させていただけないんですもの。」

「わかっています。な。だからこうして、強引を承知でお連れしたわけです。

俺の魔術を使って。」

魔術という言葉を聞いて、小島姫の目がらんらんと輝きます。

「あなた、手品師なの?いくつか教えてよ、バカヤロー。今度のファンとの集

いで披露したいの。ね。いいでしょ、バカヤロー。」

どうやら、小島姫、興奮するとつい「バカヤロー」と口走ってしまうようです。

しかし、小島姫の可愛らしさをもってしてもチョーノの表情は変わりません。

一筋縄ではいかないんです。




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