2003年の年賀状に使ったものです。今回のテーマも昨年と同じく古代エジプト。ただ今回は古代エジプト絵画風ではなく、古代の神が現代に召喚されたという設定で、写実的に、できるだけフォトリアリスティックに攻めようと考えました。人物を一からデッサンする時間も根気もないので、気に入ったポーズの写真から輪郭を拝借し、描き起こしていく方法をとっています。制作にはAdobe Photoshop 7.0.1(Windows版)を使用。

服などはできるだけ古代エジプトのものをと思ったのですが、写実的な資料もないうえ、女神は乳房丸出しだったりするのでリアルに描くにはちょっと躊躇します。色々本を眺めていたら、女性がシースルーの白いドレスを着ている絵が多いことから、白のキャミソール風ドレスにしてみました。また、このポーズではヒールを外すとあまり美しくないのであえて残し、髪型も古代エジプトそのままのおかっぱ頭では美しくないのでこれもアレンジ。結局小物と化粧だけの「古代エジプト風」になってしまいました。

何といっても苦労したのが顔。古代エジプト風の化粧で、それなりに現代にも通じる美顔を、しかもちょっと傾けた微妙な横顔で描こうとしたものだから、ちょっと欲張りすぎ。普通に女性の顔を描く感覚で適当に描いたら恐いおばさん顔になってしまいます。よく似た構図の写真を何枚も見て、目や眉の角度、あごの線、唇の形状など何度も調整しました。「デジタルだから出来たんだなぁ」ってつくづく思います。

参考までに、彼女が頭につけている羽は、真理の象徴「マアト」。ダチョウの羽だそうです。死者の審判の際、この羽と心臓の重さが釣り合うことで、生前正しい行いをしたかどうか証明できるとか。閻魔大王の言い伝えに通じるものがありますね。

＜参考文献＞
河出書房新社　図説エジプトの死者の書（村治笙子・片岸直美・仁田三夫共著）
河出書房新社　図説古代エジプト２【王家の谷と神々の遺産】編（仁田三夫編著）
文藝春秋　文春新書093　物語古代エジプト人（松本弥著）