3 
それから、天使と少年はだんだんと仲良くなっていった。

天使に暇があると、少年の病室へと一つの羽を広げ、会いに行ったり。

少年が天使と話がしたい時は窓を開けて、呼んでみたり。

お互いの事をたくさん知った。そして、天使は少年の体の事も知っていった。

この頃、良くない事やよく呼吸困難になる事。だんだんと…



 「会いに来…あ、ね、ねぇ!ねぇっ!」

少年は冷たい床にうつ伏せになって倒れていた。その時が来たんだ。

天使はすぐさま、ベッドの横にぶら下がっていたナースコールを震える手で押した。

そして、数分後に看護婦や医者が少年の周りを囲み、天使に気づかず、部屋から連れ出していった。

ポツンと残った天使は、また『あの時』と同じ事が頭をよぎった。



―あなたを失いたくない――――――――



また同じ事を繰り返すのか?

あの時のようにまた、繰り返すのか?

けど、失いたくないんだ。

こんなにも夢を追い続けるこの子を逝かすワケにはいかないんだ。

この子は夢を追っているんだ。とても大事な夢を。現実にするまで――

天使は少年の運ばれた部屋へと走り出した。少年の事しか頭に考えず、ただひたすら走った。

しかし、遅かった。


少年は息を引き取った。部屋に入る天使。皆には見えてないらしく、誰も天使を見る者はいない。

そこにペタリと、座り込んでしまった。


「嫌だ…嫌―っ!」


誰にも聞こえない声。

叫ぶ。

今まで答えてくれていた少年はもういない。

誰がこんな事を決めたのか。こんな事を。


…やっぱり使うしかないんだ。

震える足を、ゆっくりと力を入れ、横になっている少年の目の前へと立った。

天使は一つしかない羽を背中から取った。

そして、それを

少年の胸元へとそっと置いた。

天使の意識はそこから途絶えた。

ただ、微かに聞こえた医者の声は

「おい!脈が戻ったぞ!」


→→