「お姉ちゃん、何してるの?風邪引いちゃうよ?」
一人の少年が天使に話しかけていた。その少年は、天使より少し年下で、青色のパジャマを着ていた。
―いつのまに目の前にいたのだろう…。
あれ以来、人と会話する事がなかった。なぜか怖かった。
そして、少年は心配そうに天使の顔をのぞき込んだ。
天使は心配そうにする少年に優しく微笑んだ。
「…うん。大丈夫…。ありがと。ちょっと考え事。」
少し少年を、怖がった。
それなら良かった!と言って、にっこりと笑った。
「お姉ちゃん!あっちでお話しよ!」
少し向こう側にある白いベンチを指さした。
少年は、枯れ葉で敷き詰められた地面を、豪快に走り抜けて先にベンチへと行った。
あとから天使も少年をゆっくりと追いかけた。
ベンチについた天使は、もう うきうきと座っている少年の隣へと腰をおろした。
「お姉ちゃんってもしかして天使さん?」
顔をのぞき込んできた。
「うん…。多分そうだよ。天使。」
自信なさげに言う。
「天使さんってお羽が二つじゃないの?」
少年は自分の想像していた天使と異なっていたらしく、その疑問を聞いた。
「そうだよ。本当はね。でもね。私の羽は大切なお友達にあげちゃったの。」
「どうしてあげちゃったの?」
天使は少し、顔を曇らせた。
「…それはね…とても大好きだったから。」
「お姉ちゃんはそのお友達がとっても好きなんだね!僕もすごく大好きなお友達いるよ!
体がよくなったら会いにいけるんだ!」
うきうきと、少年は話している。
「そうなんだ。だったら早くよくならなくちゃね。」
と、天使は右手で小さく、ガッツポーズをとった。
「うん!あ、お姉ちゃん、僕の夢知ってる?」
少年は目を輝かせて、天使の目をじっと見て聞いた。
「ん?夢?知らないな〜。どういう夢なのかな?」
「あのね、僕は大きくなったら先生になるんだ!パパが学校の先生なんだよ!だからパパみたいにカッコイイ先生になりたいんだ!」
夢はとても広かった。
「そうなんだ。頑張ってね。カッコイイ先生になってね。」
「うん!あ、そろそろ戻らないと怒られちゃう。またお話ししよう!」
そして、少年はベンチからたった。
「うん。またね。じゃあ気を付けて部屋に戻るんだよ。じゃあね。」
天使は小さく、手を振る。
「バイバイ〜!お姉ちゃん!」
そして少年は自分の病室へと走って帰っていった。