天使が初めてこの地に舞い降りたのは去年の秋の事であった。

枯れ葉が舞い散る季節。それはとても幻想的であった。色とりどりの枯れ葉がパラパラと散り、鮮やかな風景を生み出す。

それは動く風景画かのように思わせる。

パラパラと、地に向かって散りゆく。

その風景の中に、白い何かが混じる。枯れ葉が散っており、その大きい隙間を巡って見える。

焦げ茶のかかったロングの髪が、華奢に見えるなで肩が、右耳に2oほどのピンクのピアスが、白くて繊細な肌が、

純白な長袖のワンピースが、そして

背中から生える、一つの羽。決して二つではなく一つ。それが少女というものをとても印象づける。


"天使"だった。


天使が、地上へと降りてきたのだ。

色とりどりの有彩色の中に一つの白の無彩色が混じった感じで、白がとても強調した。

天使は立っていた。

うつむき加減で、とても悲しそうな表情がそこにあった。

―これでよかったのか?

―これで彼女は幸せになったのか?

―私を憎んでいないか…?


「お姉ちゃん、何してるの?風邪引いちゃうよ?」

一人の少年が天使に話しかけていた。その少年は、天使より少し年下で、青色のパジャマを着ていた。

―いつのまに目の前にいたのだろう…。

あれ以来、人と会話する事がなかった。なぜか怖かった。

そして、少年は心配そうに天使の顔をのぞき込んだ。

天使は心配そうにする少年に優しく微笑んだ。

「…うん。大丈夫…。ありがと。ちょっと考え事。」

少し少年を、怖がった。

それなら良かった!と言って、にっこりと笑った。

「お姉ちゃん!あっちでお話しよ!」

少し向こう側にある白いベンチを指さした。

少年は、枯れ葉で敷き詰められた地面を、豪快に走り抜けて先にベンチへと行った。

あとから天使も少年をゆっくりと追いかけた。

ベンチについた天使は、もう うきうきと座っている少年の隣へと腰をおろした。

「お姉ちゃんってもしかして天使さん?」

顔をのぞき込んできた。

「うん…。多分そうだよ。天使。」

自信なさげに言う。

「天使さんってお羽が二つじゃないの?」

少年は自分の想像していた天使と異なっていたらしく、その疑問を聞いた。

「そうだよ。本当はね。でもね。私の羽は大切なお友達にあげちゃったの。」

「どうしてあげちゃったの?」

天使は少し、顔を曇らせた。

「…それはね…とても大好きだったから。」

「お姉ちゃんはそのお友達がとっても好きなんだね!僕もすごく大好きなお友達いるよ!

体がよくなったら会いにいけるんだ!」

うきうきと、少年は話している。

「そうなんだ。だったら早くよくならなくちゃね。」

と、天使は右手で小さく、ガッツポーズをとった。

「うん!あ、お姉ちゃん、僕の夢知ってる?」

少年は目を輝かせて、天使の目をじっと見て聞いた。

「ん?夢?知らないな〜。どういう夢なのかな?」

「あのね、僕は大きくなったら先生になるんだ!パパが学校の先生なんだよ!だからパパみたいにカッコイイ先生になりたいんだ!」

夢はとても広かった。

「そうなんだ。頑張ってね。カッコイイ先生になってね。」

「うん!あ、そろそろ戻らないと怒られちゃう。またお話ししよう!」

そして、少年はベンチからたった。

「うん。またね。じゃあ気を付けて部屋に戻るんだよ。じゃあね。」

天使は小さく、手を振る。

「バイバイ〜!お姉ちゃん!」

そして少年は自分の病室へと走って帰っていった。


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