独立
先が見えている華々しい独立と、やむを得なく個人事業者になるという、2つのケースがあります。
つまりまあ、会社勤めしていてアルバイトの方が収入が多くなってしまって、会社の仕事なんかやってられなくなる状態が、前者ですね。なんていうことをいうと「え、広告会社は副業が許されてるの?」と思われるでしょうが、基本的にはいけないことになっているはずです。でも、やっていない人はまずいないんじゃないかな。だいたい、会社に所属している有名人は、どうどうとやってますから。社長から重役から、社員使って会社の資材使って副業してたりしますから。ま、それも会社の名前を高めるという効果があったりするわけですね。でも、広告屋のすべてが有名人であるはずはありません。そういう人はごくごく希です。数十人規模で会社にゆとりがあるような場合は「給料だけじゃ食っていけない」というフレーズでアルバイトは公然の行為になってしまっています。バイトを重ねていくうちに知り合いもふえ、出入りする代理店なんかも増加し、かかってくる電話もモロにバイトということが分かるようになります。「あんまり派手にやるなよ」なーんて上司にいわれたりするのですけれど、こういう状態になると断わりきれないのも事実です。どっちが副業だか分からなくなってしまうのです。こそこそと肩身の狭い思いをするより、いっちょフリーになってやれ! という独立ですね。
バブル期にはこの手のフリー宣言がそれこそバブル状態でした。金が余っているからページの埋め草に写真を入れよう。どうせなら、海外ロケだな。よーし。モデル連れてニュージーランドなんかどうだ。的なノリでデザイナーもカメラマンもうはうはし通しだったんじゃないでしょうか(っていうのは、大げさですが)。こういうとき貧乏くじを引くのがコピーライターです。だって、ロケに必要ないんだもん。そうです。よほどのことがない限り、コピーライターは員数から真っ先に外されます。というよりは、候補に挙がらない。だって、ロケに必要ないんだもん。
しかし、バブリーな贅沢を味わった人たちは、その後の不況で大きな痛手を受けました。経費削減。出稿量激減。ページ数削減。ロケなんかしないでレンタルポジに走りました。
かように波のある生活が待ち受けています。ある人は「こんなジェットコースター生活、やってられないよ」とこぼしました。
それでは、やむを得なく個人事業者になった人はどうなのでしょう。っていうまえに、なぜ個人事業者にならざるを得なかったかっていうことですが、これもバブル後遺症によるリストラってやつですね。もともとバイトにも熱心でなく、会社の仕事をこよなく愛し、それなりに会社に貢献してきたような人々がまずこの被害を被ったのではないでしょうか。もともと社交的でもなく、世渡りが上手でもない人々の多くは、いまだに路頭に迷っていると聞きます。
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