小津安二郎監督の「東京物語」(昭和28年)って、見たことありますか? この映画、どこか外国のアンケートで、世界のベストテン映画に選ばれていたり、評価の高い作品です。年老いた夫婦が東京に住む子どもたち(といってもすでに成人していて子供もあるのですが)を訪ねるというお話で、なんとももの悲しい物語です。
さて、この「東京物語」についてはいろいろな方が各方面から論評したり解説したりしています。それは、映画的視点からだけでなく、社会的なものや家族論、空間論などさまざまです。まあ、そういう論説は専門の方々にまかせましょう。
僕がここで描くのは「東京物語」のモデルとなった、当時の東京そのもの、です。といっても、思いつきでだらだら書いているだけで、ちゃんと取材したわけではないのですけれど。はははは。こういうところが、中途半端なのですが。
僕が最初に「東京物語」を見たのは、テレビでした。そのとき、モデルとなっている場所はどこかなんて気にしませんでした。ストーリーの方に気を取られてしまったからです。それから何年かして、僕は足立区に転居してきました。そして、何かの拍子に、あの映画に登場する駅が住んでいるところの近くにあることを知ったのです。そうです。「東京物語」は、足立区だったのです。
「東京物語」のスタッフ、ストーリー&データ
小津安二郎が選んだ「東京物語」の舞台は、ほとんどが東京の東北に位置しています。
- 長男の家(堀切)・・・・・・・・・老夫婦が東京に到着
- 東京見物(銀座)・・・・・・・・・次男の嫁(原節子)と
- 長女の家(北千住)・・・・・・・・たらいまわし
- 旧い知り合いの家(浅草?)・・・・笠智衆の尾道での友人
- 次男の嫁のアパート(不明)・・・・ここで一晩
- 街をうろうろ(上野)・・・・・・・広い東京をイメージ
といった配置になっています。もっとも重要だと思われる長男と長女の家が、堀切(足立区千住曙町)と北千住(足立区千住、千住中居町、千住寿町あたり)・・・。「げげっ。そこはどこ?」などと思ってはいませんか?
映画の中で駅名表示が出てきます。「うしだ-かねがふち」と書かれています。正直に言いましょう。僕もずーっと気がつかなかった。別に場所がどこだって関係ないもんだと思っていました。でも、ある本に舞台が堀切だと書いてあったので、気がついたのです。私の現在の居住地から歩いて約15分。小津の「東京物語」は、こんな場所だったのか!と気がついたら、なんだかとっても気になってしまった。しかも、別の接点にも気がついた。森田芳光監督のデビュー映画「の・ようなもの」の中に、この堀切駅が登場します。さらに最新映画「(ハル)」にも、主人公が上京して初めて住んだ場所の最寄り駅、として文字だけですが登場する。こりゃあ森田芳光は意図的? さて、堀切とはどこか?堀切菖蒲園という駅が近くの別の線にありますが、違いますからご注意。
※堀切周辺の地図です。なお、これは、justmapさんのホームページにあるもので、こちらの勝手なリンクです。僕がつくったものではありません。ま、ご参考ということで・・・。
浅草-業平橋-曳船-東向島(玉の井)-鐘ヶ淵-☆堀切☆-牛田-北千住
これが、東武伊勢崎線の浅草-北千住間の駅名です。おっと、長女夫婦の北千住もありますね。
- 長女の家が北千住である根拠は、画面に登場する4本の煙突です。これは
北千住にあった東京電力のおばけ煙突ですね。知らない人も多いでしょう。上から見ると、
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- のように煙突が並んでいたので、見る角度によって1本だったり2本だったり3本、そして、4本と変化したのでこう呼ばれたものでした。常磐線の電車から変化がよくわかったものです。しかし、いまはありません。昭和30年代の話です。それに、長女のパーマ屋から都電が走っているのが見えます。あれは、日光街道でしょう。これで大体の位置はわかります。千住2、3丁目、千住寿町、千住中居町が寄り集まっている交差点あたりです。職業がパーマ屋であることも意味が深い。北千住はパーマ屋が多いとのテレビでの特集を見たことがあります。(え、それじゃあ説得力に欠けるって?いいの、いいの。僕がそう思っているんだから)
というわけで、堀切とは?北千住とは?
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