『パタン・ランゲージ』

 「パターン」というと、GoFのオブジェクト指向設計のパターンが有名だが、その中で引用されているクリストファー・アレグザンダーのパターン・ランゲージの使い方について見る。
 「パタン・ランゲージの使用法」にあるように、各パターンをどのように組み合わせるのかは、ユーザーが決めてよいのだが、各パターンは独自の論理(なぜ、そのパターンが存在するのか?何の意味があるのか?)をもち、パターンの趣旨を台無しにしないようにして使わないとならない、という自由と制限の組み合わせが、何か古典的な感じがして、おもしろい。
 本となっているのだが、内容はハイパーリンクで各パターンが接続されており、大きなレベルと小さなレベルが密接に結びついている。ここにパターンを全部書き出すのはほとんど不可能なのでいくつかだけ書き抜いた。

パタン・ランゲージの使用法

 ぼくはまず、街路を見おろすテラス(140)からはじめた。そのパタンの指示では、テラスの床を少し上げて家と接続し、街路に向けて配置せねばならなない。日のあたる場所(161)によると、庭で特に日当たりのよい場所には、中庭、バルコニー、戸外室などを設け、1つの場所に仕立てたほうがよい。この2つのパタンを用いて、ぼくは家の南側に一段高い台床(プラットフォーム)を設けた。
 この台床が戸外室(163)にもなるように、既存建家の軒下に半分隠れるように配置し、台床の真下にくるピラカンサスの繁みが頭上を覆い、ちょうど屋根をかけたような感じになった。さらに囲いを増やすために、台床の西側にはめ殺しガラスの風除けを設けた。
 台床の広さは、一間バルコニー(167)を用いて決めた。だが、このパタンは盲目的にしたがうのではなく、よく考えて使わねばならない。つまり、このパタンは、小さな脇テーブルを囲んで心地よく語り合う最小限の空間について論証しているだけである。ぼくは、少なくとも2種類の会話スペース−雨天や暑い日には屋根の下、太陽を存分に浴びたい日には露天で−が欲しかったので、12フィート(3.6m)四方のバルコニーにせねばならなかった。
 次は、歩行路と目標(120)。このパタンは、近隣内の大きな歩行路についてのものであり、普通、ランゲージのもっと前にくるべきパタンだが、ぼくなりの使い方をした。このパタンによれば、人々が踏み固めて自然に形成された歩行路は、そのまま保存し、むしろ助長せねばならない。我が家の玄関に通じる歩行路が、ちょうど台床の隅をよぎる形になっていたので、台床の隅を斜めに切り落とすことにした。
 台床の床高は、天井高の変化(190)によって決定した。台床を地上約1フィート(30cm)にすることにより、屋根のある部分の天井高が6から7フィート(1.8m〜2.1m)のあいだに納まった。−小さな空間にはぴったりの天井高になった。台床が、ちょうど地面から座りやすい高さだったので、玄関先のベンチ(242)というパタンを、自動的に満足することになった。
 既存ポーチの3本の柱は、屋根を支えているので、取り除くわけにはいかなかった。だが、隅の柱(212)にしたがって、台床の位置を慎重に調整した結果、柱の両側の生活空間の領域をはっきりさせるのに役立った。
 最後に、さわれる花(245)にしたがって、この「玄関先のベンチ」の脇にフラワーボックスを置いてみた−そこに座ると花の香りをかげて、実に素晴らしい。ポーチに見えるのは古びたまちまちの椅子(251)である。

120 歩行路と目標(PATHS AND GOALS)

 ・・・複合建物(95)光の入る棟(107)正の屋外空間(106)アーケード(119)によって、建物、アーケード、オープンスペースなどがほぼ決まれば、次は建物間を走る歩行路に注意を払うことになる。このパタンは、このような歩行路を形作り、また公共度の変化(36)人と車のネットワーク(52)段階的な動線領域(98)などをきめ細かく形成するのに役立つ。

 歩行路の割り付けは、人間の歩行プロセスに合致しない限り、自然で快適なものと感じないだろう。しかも人間の歩行プロセスは想像以上に微妙である。

 歩行路を割り付ける場合は、まず自然に人の興味を引くいくつかの地点に目標を設定すること。その目標点を相互に結んで歩行路を形成すること。目標点を結ぶ歩行路は直線でもゆるやかな曲線でもよい。目標の周りは舗装を広げねばならない。目標間の距離は2,3百フィート(60-90m)以下にせねばならない。

 屋外のありふれた物−樹木、噴水、入口、門、腰掛、立像、ブランコ、戸外室など−すべてが目標になり得る。見分けやすい入り口の集まり(102)正面玄関(110)木のある場所(171)腰掛の位置(241)さわれる花(245)を参照のこと。ほぼ中央の焦点(126)の規約にしたがって目標をつくり、歩行路の形(121)にしたがって歩行路を形作ること。歩行路は、すきまだらけの舗石(247)で舗装すること・・

140 街路を見下ろすテラス
(PRIVATE TERRACE ON THE STREET)

 ・・・共域や座る場所−中心部の共域(129)くつろぎ空間の連続(142)−のなかに、屋内の人間と屋外の街路世界との触れ合いを保つ場所が、少なくとも1つは必要である。このパタンは見え隠れの庭(111)を作り出し、緑路(51)歩行者街路(100)などの街路に生気を与えるのに役立つ。

家と街路との関係を取り違えていることが覆い。街路に向けてすっかり開放しプライバシーが完全に欠如しているか、街路に背を向けて街路生活との交流が失われているかのいずれかである。

 共有室を、街路に面する広いテラスやポーチに向けて開放すること。テラスは街路より少し高くし、低い壁で保護すること。そうすれば、壁のそばに座り街路を見下ろせるし、路上の人間に共有室を覗かれることもない。

 できれば、テラスを自然の等高線に合わせた位置に設けること−段状の斜面(169)十分に低い壁であれば、座れるさかい壁(243)にしてもよい。もっとプライバシーが必要な場合は、完全な庭囲いをつくり、窓のような開口を設ければ、街路との関係を保つことができる− 庭囲い(173)半開の壁(193)。どんな場合でも、部分的にしろ部屋の感じがだせるようなもので、テラスを取り囲むこと−戸外室(163)・・・

161 日のあたる場所
(SUNNY PLACE)

 このパタンは、あらゆる南向きの屋外(105)に肉づけをし、生命を与えるのに役立つ。さらに屋外が南向きでなく東か西向きの場合には、建物を修正して屋外の一部を南に寄せるのに役立つ。これは建物の外縁(160)の完成と戸外室(163)の配置にも役立つ。

 建物の南面に接する領域−外壁との日の差す地面との交差部分−は、日光浴のできるような場所に発展させねばならない。

 南向きの中庭や庭や内庭で、最良の日当たりが得られる建物と屋外との接点をみつけ、そこを特別な日のあたる場所として発展させること。そこを大事な戸外室に仕立て、太陽の下で働ける場所、ブランコや何か特別な植物のある場所、日光浴をする場所などにすること。日のあたる場所は風から守られた位置にするよう、くれぐれも注意すること。絶えず風が当たると、最も美しい場所を利用しないことになろう。

 その場所自体を部屋のような造りにすること−街路を見下ろすテラス(140)戸外室(163)。奥行は常に6フィート(1.8m)以上にし、それ以下ではいけない。−一間バルコニー(167)。場合によっては樹木やキャンパス地で暑い日の日光を柔らげること−柔らげた光(238)格子棚の散歩道(174)キャンパス屋根(244)腰掛の位置(241)にしたがって腰掛を置くこと・・・

163 戸外室
(OUTDOOR ROOM)

・・・どんな建物にも、人々が留まり、生活し、話をする部屋がある−中心部の共域(129)農家風キッチン(139)くつろぎ空間の連続(142)。できれば、必ずこれらの部屋にもう1つの屋外の「部屋」を加えて仕上げる必要がある。このような戸外室は、公共戸外室(69)見え隠れの庭(111)街路を見おろすテラス(140)日のあたる場所(161)などの部分の形成にも役立つ。

 庭とは、芝生に寝ころんだり、ブランコに乗ったり、クロケをしたり、犬とボール遊びをする場所である。だが屋外にはもう1つの過ごし方があり、ただの庭ではその要求も満足することは不可能である。

 天井はなくとも、十分に部屋の雰囲気を出せるような囲いのある場所を、屋外に設けること。そのためには、隅部に柱を立てて輪郭を明らかにし、場合によっては格子棚か可動のキャンバス屋根を架け、周囲には柵、座れるさかい壁、目隠し、生垣、または建物の外壁自体を利用した「壁面」を設けること。

大抵の場合、この戸外室は独立柱、塀、低い座れる壁、場合によっては上部に格子棚か半透明のキャンバス地の日除け、そして大地へのなじみを良くする床面などで形成される−柱のある場所(226)庭囲い(173)座れるさかい壁(243)格子棚の散歩道(174)キャンバス屋根(244)大地へのなじみ(169)。普通の部屋と同様に、戸外室の施工にあたっては屋内空間の形(191)生活空間にしたがう構造(205)から着手すること・・・

167 一間バルコニー
(SIX-FEET BALCONY)

・・・アーケード(119)外廊(166)のパタンによって、建物の外縁や建物の内外にまたがる所に、ある種のバルコニー、ベランダ、テラス、ポーチ、アーケードなどを想定できるようになった。このパタンは、アーケード、ポーチ、バルコニーなどが本当に役立つように、それらの奥行を明確にするだけのものである。

 奥行が6フィート(1.8m)以下のバルコニーやポーチは、使われたためしがない。

 バルコニー、ポーチ、柱廊、テラスなどは必ず6フィート(1.8m)以上の奥行をとること。できれば、単純に建物から張り出すのではなく、少なくとも一部が建物にくい込み、部分的に囲われるようにすること。

 バルコニーは低い壁、太い柱、半開放の壁または目隠しなどで囲うこと−座れるさかい壁(243)柱のある場所(226)半開の壁(193)。南側を開放的にすること−日のあたる場所(161)。バルコニーを一種の戸外室(163)と考え、形と構法の詳細は屋内空間の形(191)から得ること・・・

(『パタン・ランゲージ』クリストファー・アレグザンダー)

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