ここでショッピングの科学を、科学者ではなく実践者、すなわち小売業者の視点から見るのも有益だろう。
彼らはわれわれの調査の構成要素の一つであるにちがいない。つまり、買い物体験の提供者である。
と同時に、小売業者はわれわれの学んだことをすべて吸収し、見出された法則を応用することが期待される人々でもある。
それに、われわれが研究するのは彼らの店なのだから、当然次のような疑問が出てくる。 小売業者はそんなに無知なのか、 と。そのとおり。たぶん、人が想像する以上に。例をあげよう。
経営評価の手法 あなたの店で、実際にものを買うのは店を訪れる人のうち何人ぐらいですか? |
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自分が彼の立場ならわかるはずだと思うかもしれない。だが、まあ聞いてほしい。彼は怠け者ではない。自社のチェーンの何千という店舗の状況をかなりよく把握しているし、日々のことはもっとくわしい。総売上げ(取引の回数および金額)や、平均売上高、ある店舗の前年同日とい比較しての売上げ、地域ごとの売上げ、品目やカテゴリーや店舗、ことによると月ごとの売上げといった大事なことを。 そのようなことはすべて知っているのだが。
その1 コンバージョンレート
私がこの質問をしたのは、このチェーン店についての大がかりな調査をした直後だった。私はコンバージョン・レートを知っていた。何百時間も費やして、来店者と購入者を数えた結果だ。コンバージョン・レートは、この業態にしてはかなり高かった。だが、重役の思い込みの半分くらいだった。正確に言うと、来店者のうち何かを買ったのは48%だったのだ。 その結果は、われわれの調査とまったく同じだった。そのことは、つまるところ彼らにとっては非常にポジティブな結末をもたらした。それはつまり、よい会社は何かを変えていくことでもっとよい会社になるからだ。そこの重役に聞いてみればいい。われわれの調査が「弊社の長年にわたる思い込みに根本的な変化」をもたらしたと言うだろう。いずれにせよ、彼らは店のレイアウト、ディスプレイ、マーチャンダイジング、店員の配置などを変えはじめた。コンバージョン・レートが改善され、利益の拡大をもたらすことは間違いない。 (『なぜこの店で買ってしまうのか』パコ・アンダーヒル) |
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