Le Miserable2005

 


「レ・ミゼラブル」
2005年4月30日於帝国劇場
 
ジャンバルジャン:別所哲也
ジャベール:今拓哉
コゼット:剱持たまき
マリウス:藤岡正明
エポニーヌ:ANZA
テナルディエ:コング桑田
マダム・テナルディエ:瀬戸内美八
ファンテーヌ:井料留美
アンジョルラス:小鈴まさ記
リトルコゼット:春山涼
リトルポニーヌ:蛭薙ありさ
ガブローシュ:桝井賢斗



今期二度目のレミゼ。
どうしようかと思っていたのですが、評判の別所さん版を見ておかなければとチケットを取りました。
他のキャストも選びたかったんですけど、どうしてもこう・・上手い組み合わせはないですよね。
なので、今回もモリクミさんに縁なし。
なぜかいっつもモリクミさんを見れないんですよね。
さて。
今回は二階の奥の席で見ました。
というのも、とりあえず別所さんの歌だけ聞ければいいかと思ったので、余り席にこだわらなかったんですよ。
けれど、これが大正解!
私、レミゼでは一回も二階席から見たことなかったんですが、二階もいい!
奥行きの深さとか、後ろの方から走ってくる感じとか、照明がピンポイントで当たっている雰囲気とか良く判ります。
別所さんの芝居自体、初めて見たのですが。
いや・・良かったです。
歌も上手いし、何ていうかちゃんとミュージカルの歌い方で、心に切々を訴えかけてきます。
別所さんは、山口さんと同じく体格がいいのでバルジャンにはぴったりだと思いました。
私的な意見なのですが、バルジャンという人間は、他の市民やブルジョア階層の中にあってどこか野性味を感じさせる、違和感を感じさせる存在なのではないかと思うのです。
だから、体格が良く男くささを感じさせるバルジャンであった方が良いと思うのですよ。
そして、別所さんはすごくお芝居も上手い・・・。
いや、山口さんがどうこう言う気はないんですが(笑)。
なんというか・・手の先まで芝居しているっていうか。
それを顕著に感じたのは、ファンテーヌの死の床でのシーンです。
彼女にコゼットの事は任せてくれ、と伝えファンテーヌが涙しながらバルジャンの頬を手で包む。
その瞬間の、はっとした表情。
多分、生まれて初めて人の肌の暖かさを知ったかのような戸惑いと驚きに満ちた顔。
そしてファンテーヌを抱擁しようとして戸惑い、手を下ろし、けれどやがて彼女を抱き、抱きしめ。
死にゆく彼女を横たえ、涙を流す。
ファンテーヌにとっては最後の救い。
そしてバルジャンにとっては初めての温もり。
それは男女の「愛」であったかは判りませんが、それでもそれに近い「愛情」が生まれた瞬間であったのではないかと思うのです。
その前の裁判所のシーンで。「俺は誰だ。」と歌うシーンもとても良かったです。
晩年のバルジャンも本当に良かった。
良かったしか言えない自分がはがゆいですが・・・老齢に差し掛かり、コゼットから離れようとするバルジャン。
「もう俺のものじゃない。」と歌いマリウスに後を任せるバルジャンは本当に悲哀に満ちていました。
今回観に行った目的は別所さんの他に剱持さんの歌を聴いてみたいというのがあったんですが・・・。
いや、CDで聞いた時とっても良かったんですね。
歌が上手い〜〜〜!と、思って。
ただ、なんていうのかなぁ。
もしかしたらすごく上手いのかもしれないんですが・・ハーモニーがメチャメチャなんですよぅ。
一人だけ浮いてるっていうのか。
マリウスとのデュエットとか全然噛み合ってない!
他の人とのハーモニーも今ひとつ。
以前に四季の「異国の丘」見た時に佐渡寧子さんがやはり上手すぎてエライ浮いていたんですが。
ハーモニーって大事だと思うんですよ。
なんか期待していただけにがっかり・・でした。
それよりもANZAさんのエポニーヌが絶品でした。
彼女の歌は何度か聴いているのですが、今回初めて「on my own」で泣かされました。
もちろん、あそこで泣く人はいっぱいいると思うんですよ。
ただ、名曲すぎて有名すぎて私は今まで却って泣けなかったんですよね。
それが、今回彼女の歌を聴きながら涙がほろほろと。
同様にファンテーヌ。
井料さんの歌は安心して聴いていられるし、歌声も綺麗で最後にバルジャンを迎えに来るシーンなんて本当に今回は聖女を超越して女神が向かえに来てくれたかのようでした。
マリウスの藤岡正明さんはこのレミゼが初舞台だったそうですが、後で本人も言っていた通り余裕がない感じは否めませんでした・・・けれど。
歌は上手いです。ASAYAN出身だそうですが歌うまーい。
これで舞台度胸が出来て、余裕が出来てきたらすごく良くなるんじゃないかと思います。
ただ何ですが・・
本当に剱持さんがどうこうっていうのでだけではなく。
どことなく全体的に今回はアンサンブルが悪かったような気がしました。
うーん、難しいですね。
個人個人はとっても良かったと思うんですけど。


そしてこの日は、狙っていなかったのですが、別所さんはじめ6人の方々の千秋楽でした。
なので、カーテンコールの際にきちんと一人一人紹介されて(今さんが司会)、挨拶してくれました。
別所さんのほかには、剱持さん、ANAZAさん、藤岡さん、コング桑田さん、井料留美さん。
そして小鈴さんは5月はアンサンブル(学生たち)に戻るそう。
こうやってアンサンブルの中から抜擢されてくる人がいるっていうのがこの舞台の魅力ですよね。
さすがに千秋楽だけあって、何度も何度もカーテンコール。
歌詞ボードが降りてきて、客席も巻き込んで全員で『人々の歌』を合唱。
あの歌大好きなんですよ。
心が震えそうになるっていうか・・それでいて明日への希望が沸いてくるっていうか。
最後の方では、別所さんがマリウス役の藤岡君をお姫様だっこしたり、その藤岡君がエポニーヌのANZAさんを抱きかかえてくるくる回ったり。
そして最後はもう、照明のついた劇場内、それでも帰らないお客さんたちの為に、別所さんが出てきて深々お辞儀。
お疲れ様でした。



「レ・ミゼラブル」
2005年3月20日於帝国劇場
 
ジャンバルジャン:山口祐一郎
ジャベール:鈴木綜馬
コゼット:知念里奈
マリウス:岡田浩輝
エポニーヌ:ANZA
テナルディエ:駒田一
テナルディエの妻:瀬戸内美八
ファンテーヌ:井料瑠美
アンジョルラス:東山義久
リトルコゼット:藤井結夏
リトルエポニーヌ:福田夏未
ガブローシュ:桝井賢斗



実は久々のレミゼだったりします。
でも以前に観たときと、主役二人が一緒だったり。
最近ミュージカルを数多く見ているせいで大分色んな人に詳しくなってきました。
それに他の舞台で観た人なども随分。
本当、日本のミュージカル界もレベルが上がったなぁと思います。
以前山口さんのバルジャンを観た時には、なんだか歳をとらないバルジャンだなぁとか。
やけに元気なバルジャンだ・・とか思っていたのですが。
山口さんも年齢を重ねたせいか(?)それとも、芝居が上手くなったのか(超失礼)。
齢を重ねた終盤のバルジャンも良くなってましたよー。
綜馬さんのバルジャンも立ち姿が美しく端正で。
これも初演の頃は、自分の中で貴公子なイメージが拭えず、こんな端正すぎるジャベールはどうなんだと思ってたんですが、どうしてどうして。
端正であるからこそ、その職務を全うしようとする不自由さが際立って、声も太く深く出ていて良かったです。
マリウス役の岡田君は、昔ドラマとか出てたどこぞのボーカリストですよね?
甘い歌声でよかったです。
知念ちゃんとのデュエットや、「空の椅子とテーブル」などはシーンの切なさと相まって涙が溢れてきました。
ANZAさんは、サイゴンの時にとてもよかった記憶があったんですが今回も良かったです。
どこか可愛らしさを失わないエポニーヌでした。
歌が聴きやすくて好きです。それから井料さん。彼女は舞台慣れしているというのもあるんでしょうけれど。
とにかく、上手い!
安心して見ていられるし、歌も訴えかけるように、人のこころに届くように歌えるし。
そして、今回の見所(笑)。
エリザのトートダンサーから大抜擢の東山君。
いや〜・・・歌えたんだね・・君。
今回東山君が出色でした。
ダンサーらしい、その立ち姿や動きの美しいのもあり、その容姿もあり。
どこかカリスマを感じさせるアンジョルラスでした。
やはり学生のリーダーとして皆を従える為には、その他の学生たちの中に埋没してはいけないと思うのです。
いや、彼は良かったな。
マリウス&アンジョルラスは若手の出世役なので是非頑張って欲しいものです。
そして。
やっぱり最後で泣いてしまいましたー。
うわーん。
大体こう・・・ファンテーヌがまるで聖女のように迎えに来る所でもうダメなんですが。
あそこではいつも耐えてるんですよ私。
それが遠くから静かに「人々の歌」が聞こえだす所で、だ〜〜〜〜〜〜っっと。
泣きながら、そしてどこかで爽やかな気持ちを貰いながら拍手。そしてカーテンコールで盛り上がっているうちに笑顔。

いつもだと思うのですが、カーテンコールもすごくて。
最後の最後、明るくなってから山口さん一人が出てきて。
『えっとねー・・・みんな、そろそろ帰して?』
と、まるで心の声が聞こえてくるような(私には確かに聞こえた)仕草をして、タモさん式に拍手を締めてやっと皆納得。
お疲れさまでした。(笑)