Miss Sigon 2004 |
「ミス・サイゴン」 |
2004年11/20於帝国劇場 |
エンジニア:橋本さとし キム:新妻聖子 クリス:井上芳雄 ジョン:今井清隆 エレン:ANZA トゥイ:戸井勝海 3度目〜v いや、本当はもっと観たかったくらいの舞台でした。 あまりにもキャストの組み合わせがありすぎてどうしていいのかわからなかったですよ。 しかも、クリス@井上君を外さないのでこれがまた色々と・・・。 今日はなんと言っても、橋本さん良かったですー。 彼は以前に井上君の「シンデレラストーリー」で大臣役をやっていた時に初めて知ったというかなり不勉強な私なのですが。 すごいです。 歌も踊りもいいし、背が高くてスタイル良いから舞台栄えするし、エンジニアの胡散臭さとか(笑)すごい上手く出してます。 それに、フランス人との混血に見えるし。 ギラギラ感も出ています。 目がいいですよね。 虐げられても、へつらっていても、見返してやるぞ・・・って、どこか獲物を付狙っているような。 そして、新島さん。 初めて聴いたのですが・・というより、彼女「王様のブランチ」のグルメリポーターでしたよね?? いつの間に、こんな事に・・・・。 これも不勉強だったなら済みません。 すっごい上手いです。 心から驚きました。 今まで見たキムの中で一番上手かった・・・。 あの高音でもまったく声が割れないし、張り上げたりもしないし、透き通るように美しい。 特にエレンとの対決シーンである「キムとエレン」での 「彼は私とタムに会いに来るべきよ。」と要求する歌ですが、あそこではどんなに歌の上手いキムでも、声が若干割れたり歌詞が聞き取れなかったりするのですが、はっきりと聞こえました。 そしてただ歌が上手いだけじゃなくって、感情の出し方や細部までこだわった演技。 なんていうのかな・・指先まできちんと演技していて、最後クリスの腕の中にいる時のキムには涙が溢れてきました。 3人のキムを観て思った感想は・・・何にせよ、松たか子のキムを見なくて良かったという事です。 いやはや。 こんなに難しい歌、彼女には無理です。 聴かなくても、あの高音部のキンキン声が想像出来る・・。 彼女、演技も確かだし本当に本当に上手い役者さんなのに(何度泣かされた事か)・・・どうしてミュージカル出るのかなぁ。 そして、今日もやっぱりトゥイのご臨終シーンで泣いてしまった・・ 何故だ。 ここで泣いてる人は多分ほとんど居ないと思われ。 そうそう。 今日のトゥイ役戸井さんは、すごいカッコよかったです。 こちらも不勉強で申し訳ないのですが、彼もミュージカル俳優として若手では人気の人なんですね。 レミゼのマリウスだと聞いて納得です。 背が高くて美しい。 トゥイなのに(こら)、こんなにカッコよくっていいのか?と思いました。 マリウス、観てみたいです。 それと、今日の新たな発見。 3回目にして初めて気づきました。 私を混乱させた、1幕のホーチミン像登場シーン。 舞台脇の壁面に、「3年後 ホーチミン市(旧サイゴン)」って、字幕が出てましたよ! 2幕のはじめにも、同じ場所に「アトランタ国際会議場」って。 これ、判らないよ〜〜〜。 だって、舞台上に集中してたら、横の壁に何が出てるかなんて視界に入らないし。 第一、3回目にして少し後ろの席に座ったから初めて気づいたけど、最初2回は前の方だったからまったく気づかなかったわけだし・・。 せめてレミゼみたいに、舞台上に字幕とか年号出してほしいです。 しかし、このお話に賛否両論あるのは知っていますが。 とにもかくにもアジア人をヒロインに据えた作品としてこれだけのヒットを飛ばしたという事に意義があるのではないでしょうか? 思ったよりも、アジア人蔑視な作品ではなかったし、クリスのどうしようもない青さやアメリカ人としても傲慢さは、きちんと描けていたと思います。 井上君はずっと王子様をやってきたわけですが、このクリスでまたひとつ何か成長できたかもしれないですね。 クリスは、理不尽さに対する怒りに震えるでもなく、犯した罪に対して何か積極的に解決しようという事さえ出来ないほど、普通のアメリカ人で。 ただ、戦場で傷ついて、救いを求めて、そして今も怯えて。 ただただ、心優しく、何かから逃れたがっているだけ。 平凡な男性です。 キムがじゃあなんで惚れたのかというと、恋なんてそんなものとしか言いようがないと思います。 そんな平凡なヤンキーを井上君はすごく上手く演じていたと思います。 これで、「クリスカッコイイ〜〜v」「クリスってすごく良い人〜v」とか思われたら終わりなわけで。 ただ。 幕切れで、思惑を超えた圧倒的な「愛」に出会って、そして失った彼がこれからタムとどうやって生きていくのか、タムにどのような人生を見せてやれるのか、物語はこれからな気がしました。 さてさて。 今回のカーテンコールはやりすぎっていう位盛り上がってました。 何故だか知らんけど・・・ 井上君と橋本さんが仲良しだからなのか、引っ込んでも、引っ込んでも、袖の中で「い・・っっやっほおぉぉうっ!!!」(←ホントにこんな感じ)と出演者たちの歓声が上がるので、客席も拍手で呼ぶと、また全員で舞台に飛び出してくるという感じで・・ 一体いつまで、この馬鹿騒ぎ続くんじゃ。 ・・な、位盛り上がっていました。 楽しかったです。 |
「ミス・サイゴン」 |
2004年10/30於帝国劇場 |
エンジニア:市村正親 キム:知念里奈 クリス:井上芳雄 ジョン:今井清隆 エレン:高橋由美子 トゥイ:泉見洋平 二度目ですー。 上京したお友達とご一緒に。 今回の出色は、知念ちゃんでした。 いや、びっくりです。 もちろん、歌手として活躍していた彼女が歌がすごく上手い子だというのは知っていたのですが。 声を張り上げて歌う、ハイトーンボイス系の歌い方なのだろうかと思っていたら・・ きちんとミュージカルの歌い方が出来ていて、驚きました。 感情を込めて歌う、説得力をもって歌う、語るように、観客の心を打つように歌う。 こうした事が出来ないと、ある種「台詞」であるミュージカルの俳優としてはやっていけないと思うのです。 彼女はそれがきちんと出来ていて、本当に失礼な話だけれどびっくりでした。 そして、何より彼女はベトナム人に見えるんですよー。 顔立ちから体型からぴったりだと思いました。 180ある井上君と一緒だと、すごく華奢で小柄で、『愛しい』という感情が自然に湧き上がってくるのも判ります。 二人が歌う「サン&ムーン」「世界が終わる夜のように」などのデュエット曲が本当に良かったです。 あと、サイゴン陥落シーンでお互いの姿を求めて歌う歌も、コーラスや音楽にかき消されがちなのですが、はっきり聞こえました。 さすがの声量だなぁと思いました。 そして、二度目だったのでストーリーも把握できていたせいもあり、どっぷりとお話に漬かる事が出来ました。 多分、皆さんの泣きポインツ最高潮なシーンは「命をあげるよ」かと思うのですが、 私的には何故か・・本当に何故か、「この子にさわらないで」の辺りでトゥイが死ぬシーンで、いつも「うっ」とキテしまうのです。 あのシーンに背後から「時は今」が高らかに聞こえ、トゥイを抱きかかえたキムの絶叫が響く、あのシーン。 「悲しい」よりも「母の愛」よりも、なんというか・・『やりきれなさ』というものに私の心の琴線が揺れるようです。 トゥイはキムを愛している。 キムはクリスを愛している。 戦争でなければ、こんな世界でなければ、それはなんとか乗り越えていかれるはずの事。 そして、キムは親愛の情でもって愛していた従兄を殺す事もなかった。 トゥイとて命を落とす事はなかった。 そんな個々のやりきれない、理不尽な不幸の前に圧倒的に聳え立つ「体制」「戦争」「国家」というもの。 どうも、そうしたものに言わば悔し涙に近いものが溢れてきそうになるのかもしれません。 あと、個人的な泣きポインツは「今も信じてる」のキムとエレンのデュエットだったりします。 歌で一番好きなのは「神よ何故?」。 井上君の歌だからというのを抜きにしても、あの歌は良いですね! ブロードウェイバージョンを買ってきたのですが、やっぱり良いです。 日本語の訳詩も非常によくって、「何故、俺にくれたのだ今夜を。」と神に問いかけるクリスはすごく切なくて若くて素敵です。 そんなこんなで、どっぷりと浸った私ですが、一緒に行ったお友達にとっては「はてな?」な部分が多すぎて色々と納得いかなったようです。 まぁ、一回目だとそんなものなのかしら? さて、これが代表作でもあるエンジニア役の市村さんなのですが。 うーーーーん。 彼は、もう年をとりすぎていますよね。 エンジニアっていうのはやっぱり野望に燃えて、ぎらぎらした部分があると思うんですね。 それが肉眼でも明らかに老けてしまっている(大変失礼は重々承知の上)彼が演じると、もうちょっと何か違う感じがするんです。 米兵たちにあしらわれたり、高圧的にモノを言われて「へへっ」と、下手に出ている姿など、どこか年寄りが苛められている感じがして哀れさえ感じてきてしまって・・・。 筧さんの時は、そういう芝居の時も下手に出ていながら影でこずるい事してそうな匂いがぷんぷんしていたんですが。 踊りはものすごく踊れるし、芸達者だし、客席との掛け合いも上手いし、本当にすごい役者さんだと思うのだけれど。 エンジニアはもう良いんじゃないのかなぁ・・と正直思いました。 そして、今井さん! いやもう・・。 上手いし、歌えるし、芝居も素晴らしいのですが。 もう・・本当にごめんなさい。 悪いけど、井上君@クリスの親友とかメッチャ無理があるから! これが、クリスが石井さんの回だったらまだ良かったのかもしれないけれど・・。 2幕のはじめでクリスが「やぁ、ジョン!」とかやってても、友達にはみーえーなーいー。 すごーく立場も年齢も上の上官って感じです。 ジョンと並ぶとクリスがまるで学生のようで、結婚してるってアリ?みたいに見えて・・ ちょっと貫禄がありすぎかな?(特にお腹周り?←済みません、愛です) ちなみに、前から2列目だったので舞台から投げ込んでくれたお花をGETしました。 |
「ミス・サイゴン」 |
2004年10/10於帝国劇場 |
エンジニア:筧利夫 キム:笹本玲奈 クリス:井上芳雄 ジョン:石井一孝 エレン:高橋由美子 トゥイ:泉見洋平 初めて見ました。 13年前?に初演をやった時に、ヘリコプターのシーンのために帝劇の天井を工事したという事は記憶にあって、なんだかすごい大掛かりなミュージカルを日本でやるらしい・・と。 今回の再演をすごく楽しみにしていました。 ちなみに買った切符は三日分。 さて。 ストーリーは追いませんが・・とにかく、圧倒されました。 1幕で登場する巨大なホーチミン像、ドラゴンダンスの圧倒的な力強さ。 そして、2幕のサイゴン陥落のシーン。 舞台というものの醍醐味を味わう事が出来ます。 名作といわれるミュージカルには、絶対に耳に残る印象的な楽曲が不可欠と思っているのですが、とにかく名曲揃いですよね。 もちろん、歌唱する方は難しい歌が多いのですが(途中から急にトーンの上がるものが多い)、胸を打つものが多くて聴くだけで心が動きました。 井上君は大分貫禄(?)が出てきて、すごく良かったです。 クリスという役は決していい役所ではなく、非常に人間的で、甘く弱い人物ですが、そのダメっぷりも、優柔不断ぶりも、優しさゆえに周りを傷つける雰囲気も良く出せていたと思います。 笹本レナは、なんていうか・・・上手いんだろうけどこう・・オーラがな・・ なんでなんだろう。 いや、歌はうまかったっすよ。 今回は筧さんが舞台を攫って行きました。 もちろん芸達者なのは判っていたんですが。 あの背の小ささにも関わらず、すごいオーラ出してました。 歌を「歌う」という感じでもないのですが、なんていうのかな・・エンジニアのずるさ矮小さ、そして世渡りの上手さ・・そして理不尽に虐げられるがゆえの卑屈さ・・・ 様々な面を見せてくれていました。 ただ、混血には見えなかった・・・かな? 台風ネタでアドリブかませたり(前日が台風直撃でした)、客席を持っていくもって行く。 面白かったです。 ストーリーは、初見だとところどころ判らなかったり流れを追いきれない部分があったりしました。 なんと言っても、最初わからなかったのが1幕の途中でいきなり3年の月日が経ってしまったのがなかなか理解できませんでした。 まもなくサイゴンが落ちるのではないかという中で結婚を誓った二人のシーンの後、共産軍の行進シーンとなるもので、ここで私はフツーに北ベトナムが入城してくるシーンだと思っていたんです。 そしたらエンジニアが『更生収容所に入って3年・・』云々の歌で、 「え?3年?・・何事?」 と、しばらく判らないまま芝居が進んでいくのを眺めておりました。 まぁでも。ベトナム戦争の知識があれば細かい部分以外は普通に楽しめます。 トイレでストーリーが理解出来ないと話していたお嬢さん方がいたのですが、ベトナム戦争の知識がまったくない事にちょっと驚いたりしつつ・・ そして、そのお嬢さん方が『トゥイが嫉妬に狂ってタムを殺そうとするでしょ・・?云々・・』 と、話しているのを聞いて、ちょっと違うんじゃないかなーと思ってしまった私です。 感じ方、受け取り方は人それぞれだからもちろん良いんですが 「嫉妬」 という感情だけではなかったと思います。 彼はガチガチの共産主義者でアメリカ兵の子供という存在なんて当然許せない。 その子供を一緒に引き取るなんて更に考えられない。 というより、キムの息子としての混血児なんて存在自体が有り得ない。 もう、そんな風にしか考えられない人だったのだと思うのです。 「体制」 という個人の感情さえも時には凌駕する圧倒的な得体のしれないもの。 そんなものでがんじがらめになった男の不幸を見た気がしました。 そして、作中で一番成長を見せるのはジョンだと思います。 いい役だよねー・・ジョン。 「アメリカ」と言う国の良くもあり悪くもある面をジョンを通じて見せてくれました。 そして、「援助する。」という事だけで済む問題ではないのだと、ベトナムの女性の感情や愛をどう考えているのかというクリスに対する必死の問いかけに胸を打たれました。 石井さんは、そういった正義感やクリスの親友兼上官というポジションを上手く演じていたと思います。 高橋由美子はまぁ・・アメリカ娘っぽい感じがあまりしなかったです。 笹本レナと同じような可愛くて可憐な印象があって・・歌は一番の見せ場ですごく高い所を出さなければいけないのですが、そこが苦しそうでした。 ちょっと残念。 |