2008年04月30日(水曜日)

 (17:59)日本の新聞には載っていなかったと思ったのですが、インドは29日にこの2週間で二回目の金融引き締めを行ったようです。FTの表現を借りれば、「大部分の人が一日2ドル以下で生活する国にあって、上昇するインフレ率に対する懸念」に対処するため、とされる。

 一日2ドルということは、はっきり言ってエンゲル係数が限りなく100%に近いと言うことでしょう。都市の住民にとっては。その国で食料品などの値段が上がると言うことは、直ちに量を減らさざるを得ない、ということです。だから、インドのような国の貧しい人にとっては、物価上昇は直ちに生死の問題となる。

 直近(4月12日に終わった一週間)のインドのインフレ率は7.33%で、同国で「心地よいレベル」とされる5.00%を大幅に上回っているという。インド準備銀行が取った措置は銀行業界に対する現金準備率(cash reserve ratio)を25BP上げて8.25%とするというもの。

 しかしそもそもこの程度の金融引き締めでインドのインフレ率が収まるのか。経済活動を冷やすと言うことは、貧しい人々の職を奪うことでもあるかもしれないし、食料品の値上がりは国際的な背景で生じているのであって、インド準備銀行が何をしても収まらない可能性が高い。

 そこで、インドのシン首相が提唱している構想が興味深い。彼は「新しい世界的な協定(new global compact)」が必要であるとして、その狙いは「世界的な不均衡を拡大する食料品価格の上昇を安定するため」に置くとしている。多少食料品が値上がりしても、裕福な国はいくらでも対応できるという面では、格差が開く。

 日本では若林農相が「輸出規制に歯止めをかける合意」を目指しているようですが、この問題は需給両サイドからのアプローチが必要なんでしょうね。インドも最近米の輸出を禁止した。国内に回さなければ価格が上がって食料に関する暴動でも置きかねない状況なのでしょう。一方で、日本のような国で捨てられている食料は膨大に上る。

 インド準備銀行は同国のインフレ率を2009年までに5.5%まで下げる意向だという。しかし食糧不足は世界的な傾向であり、洞爺湖サミットでも真剣に取り組まないといけない問題となってきた印象がする。食料品価格の上昇が打撃となっているのは、世界の多くの消費者にとって同様なことです。


2008年04月30日(水曜日)

 (10:59)日経の最終面にある「私の履歴書」はあまり読まないのですが、今日終わった扇千景さんの回は面白かったな。ご自分で書いているのか記者が書いているのかは知りませんが、何せ入っている事実が面白い。加えての文章のうまさ。

 最終回の今回など抱腹絶倒という感じ。最後だからという「内緒話」がなかなか良い。歌舞伎という特殊な世界の話しといえ、「まあそんなものよ」と笑って自分の仕事を出来る彼女の度量がいいですな。私はお会いしたことがなかったのですが、傑物でしょう、彼女は。

 ところで、私は知らなかったのですが、NHKがにっぽん力というクイズ番組を始めたようです。日本力とはひらがなと漢字の違いとはいえ、同じタイトルなのは結構なことです。どんなクイズ番組なのか。機会があったら見てみようと思っています。

 ところで私が文庫本でだした「日本力」は、韓国から出版の話しが出版社である講談社に来ているようで、その後の話し合いの経過は知らないのですが、まあ結構なことだと思っています。

 韓国では「スピードの経済」も数年して出版されたのですが、その時は印税はほんの少し。ということはあまり韓国の人達に読んで頂けなかった、のかと。今回は実現するのか、そしてどのくらい読んで頂けるのか。楽しみと言えば楽しみ。


2008年04月29日(火曜日)

 (23:59)お休みなんですが、テレビにはお休みはない。というわけで午前中から大阪に移動したのですが、まあ当然と言えば当然ですが、新幹線の車両に乗っている人の顔ぶれが全く違う。いつもは「この人はどういう人か」と予想がつく人が多いのですが、休みの日は全く分からない。ま、ご家族連れ、ご夫婦での移動の方が多い。

 でも一つ気がついたことがある。列車も「意外と」と言うか空いているし、ホテルなども拍子抜けしているということ。まあ海外に行った人なども多いのですから、国内の人間の数は少ないとも言えるのですが。その一方で、相変わらず中国語、英語など海外の言葉を話す人の数が多い。

 ところでFOMCは30日に結果を出すのですが、アメリカ経済から出てくる数字は弱いものが多い。一方で世界的なインフレ率の上昇は続いている。難しい政策運営を迫られる。これまでは下げていさえすれば良かったのですが。

 29日に発表になったのは、コンファランス・ボードの消費者信頼感指数やSPの大都市圏の住宅価格指数など。コンファランス・ボードによると、4月の同指数は62.3と3月の65.9から大幅な下落となった。同指数は今年1月には87.3だったから、いかに足早に落ちているかが分かる。もっとも昨年12月には90.6と最近ではもっとも高い所にいた。

 消費者の景気に対する信頼感は、大きく購買意欲を左右する。同指数が落ちたら、消費者の購買意欲は落ちると見て良い。実際に落ちてきている。この指数に影響を与えるのは、消費者を取り巻く環境です。物価とか、雇用とか、所得とか、その他全般的な社会・政治情勢など。これは日本と同じ。それらが悪いと言うことです。

 アメリカでは今週から国民一人当たり平均600ドルの戻し税の還付が始まった。今回の4月の調査ではこの税還付が入っていないから、5月にどうなるか、です。うーんどうでしょうね。ワンショットの600ドルの戻しでは、消費者の景気に対する先行き見通しの改善はないんでしょうね。しても非持続的?

 一つ消費者の心理に重くのしかかってきているのは、住宅価格の低下。住んでいる土地や家が値段が上昇しているときと下がっているときでは、心理状態が絶対に違う。上がっているときは自分が住んでいながらその価値が上がるわけだから昂揚気分になるに決まっている。

 特にアメリカなどは含み資産価格の上昇をキャッシュ化する方法が確立している。日本がそうであるように「しめしめ」と思うだけではなく、アメリカは土地・家の価格上昇がそのまま購買増加に繋がる傾向があったので、経済に対する打撃も直接的です。

 発表されたスタンダード・アンド・プアーの10大都市の今年2月の住宅価格指数は、昨年同月より13.6%落ちたという。今年1月の同様の対前年比の下げ幅が2.8%ということだったので、それはそれは下げが加速したと言える状況。20大都市圏の指数で見ても12.7%下げているという。大都市圏がこうだから、それ以外の地域は惨状でしょう。

 下げに加速がついてきたと言うことは、「価格修正が加速した」ということ。改めて下げ余地が大きいことに市場が気がついたと言うことだ。ゼロにはならないからどこかで止まるのですが、下げている最中はきつい。アメリカでは、住宅の差し押さえも増えていると伝えられる。ヨーロッパもそうでしょう。

 だからといって、金利を下げれば今のアメリカ経済のこうした状況が劇的に改善するかというとそうでもない。非金利的ファクターで動いている面が強いからです。将来のインフレも心配、というわけ。FOMCの結果が出るのは日本時間の木曜日の早朝です。


2008年04月28日(月曜日)

 (23:59)山口補選の結果は福田首相にはショックでしょうね。自ら応援演説をしに行った保守王国・山口での敗北。それでも30日には再可決を実施する方向らしい。支持率はさらに下がる可能性が高い。

 民主党が問責を出すかどうか明日決めるらしいが、今の状態では福田さんは解散も出来ないでしょう。結局胡錦濤訪日からサミットまでの一連の外交日程の間に支持率の回復を待つことになる。しかし、どの程度上がるのか。非常に難しい気がする。党内では「選挙の顔にはならない」という見方が強いようだ。

 結局政界再編が必要なんだと思う。そういう面では、例えば今夜のニュースでは、民主党の小沢一郎代表と平沼赳夫元経済産業相が東京都内の日本料理屋で会談し、将来的な連携を視野に情報交換を続けることを申し合わせたという。

 この会談で直ぐに何かが生まれると言うことはないだろうが、平沼さんは次期衆院選後に「自民、民主両党の橋渡し」を目的とした新党結成の検討を表明している。政界再編のキーパーソンの一人とも言える。いろいろなところでの動きが、最後にどうマージするのか。

 ところで、先週の土曜日の東京新聞のコラムに「最近は、道路で車を運転していても、タクシーで移動していても、クラクションを殆ど聞かなくなった」という話を書いたら、読んだ方から「そう言われてみたらそうですね」と。

 海外から、特に途上国から帰ってくるといつも思うのは、日本は静かな国だということです。何せ成田の空港が静かです。あまり人の話し声も聞こえない。聞こえても静かに話している人が多い。

 ところが途上国の空港は凄まじい。80年代の韓国の空港など実に賑やかだった。最近の仁川空港は比較的静かです。ま、先進国の空港は概ね静かですし、それは道路でも同じ。ニューデリーや上海の道路はうるさい。終始クラクションが聞こえる。今の日本はその対極にある、と思う。

 しかしどうなんでしょうか。道路でも、政治や社会でもやはりクラクションは鳴らす必要があるときにはならすべきだ、と。あまり警告や抗議の警鐘がない社会というのも問題です。


2008年04月27日(日曜日)

 (15:59)ここ数日で一番面白かった新聞記事は金曜日の日経夕刊に載っていた「オンデマンド婚」ですが、気になったのは米国務省が国民向けに出した警告でしょうか。「北京五輪を狙ったテロの恐れがある」という内容。

 国務省のそれはアメリカ国民向けの警告ですが、これは他の国の国民に対する警告にもなりうる。テロは場所を選ぶのですが、その場所は多くの場合人が多く集まるところだ。オリンピックの会場は警備が厳しいでしょうから、逆に「こんなところで」というところがテロの対象として選ばれる可能性がある。これは日本人の旅行者にとっても無視できない話です。例えばオリンピックで警備が手薄になる観光名所とか。

 米国務省はこれとは別に、北京五輪観戦のために中国を訪れる米国人観光客への注意事項もHPに掲載「中国ではホテルや事務所などはすべて監視対象で、いつでも侵入される恐れがある」と。

 まあしばしば中国を訪れている人間にはよく知られている話で、突然公安が入ってきたというような話もたまに聞く。海外慣れしていないアメリカ人に改めて警告した、ということでしょう。米国務省は「(中国国内では)プライバシーについて正当な期待を持つことは出来ない」と指摘。

 米国務省はどのグループがテロを起こすかについては何も言っていない。しかし海外と繋がったグループなのか、国内のグループなのか。今の中国の政治体制(共産党の一党独裁など)、経済体制(拡大する貧富の問題など)、民族問題が抱える現状などなどに不満を持つグループは多いでしょうし、「オリンピックは最大のアピールの場」と考えている人も多いはずだ。

 こうした問題ばかりでなく、今の燃え上がっている中国の愛国心が思わぬ方向に働く可能性もある。例えば、何かの種目で中国とフランスの選手が金メダルを争う。会場がそもそも騒然となり、中国が勝ったら大拍手、フランスが勝ったら大ブーイング。それが世界に報道される。

 中国選手と他の国の選手が争った場合もそういうことが起きうる。今の中国の状況だと、長野の聖火リレーの場合もそうですが、「中国加油」でしたっけ、「中国頑張れ」の大合唱になって、例えば負けた他国選手に対する尊敬のかけらも見られない状況が生まれかねない。逆に中国選手が負けた時には、騒ぎ出す観衆もいるかもしれない。世界の人々はどう思うか。

 表彰台に上がる選手の中には、「チベット支援」を様々な形で表明する人が出てくるでしょう。そしたら中国のテレビは一瞬世界中に中継されているテレビの波を一端切るのか。IOCは「オリンピック中継はリアルタイムで中継される」と述べているが、それは全世界でそうなのか、中国以外の国に対してそうなのか。

 中国はオリンピックが絶好の国威発揚の場になりうると考えて招致した。しかし聖火リレーもそうですが、「本当にそうなるのか」と思われる兆候はいっぱいあり、むしろオリンピック開催が今の政権である中国共産党にとって逆効果になる危険性もある。

 NHKが日曜の午前9時からの「日曜討論」はいつもの見飽きた政治家ではなく、中国、チベットに詳しい方々が出ていて面白かった。ちょっと番組のテンポが遅かったのですが、それ以外はインフォーマティブなことも多かった。

 その中では、京都大学の大西さんという方のチベット問題に関する「問題は現場で起きている」と言う話が一番興味深かった。チベット問題に関する私の見方はずっと「民族問題+経済格差の問題」というものでしたが、常にそうですが民衆の怒りを誘う問題というのは、民衆の近くで起きる。

 ウイグル自治区でもそうだしモンゴル自治区でもそうですが、チベットでも「資本」とよべるようなものを持っているのは漢民族です。経済体として図体が大きいし、イスラム教やチベット仏教のような経済活動に対する抑制的な思想がない。

 ホテルなど出来ているのですが、それらはチベットなり、ウイグル、モンゴルの人々を雇う。中国側は雇用を創出していると言うでしょう。しかし実にその接点で問題が起きる。資本を持ってきた漢民族のサイドの人々は現地の人々を雇ってやっている、と思う。チベットなどの人々は「彼等は儲けにきた、我々を使うために来た」と思う。当然摩擦が起きるし、起きなくても不満な気持ちは現地の人々の間に広まる。

 いわゆる同化政策も問題です。私が聞いたところによると、チベットでは漢民族の男性がチベット族の女性と結婚することは許されているのに、チベット族の男性が漢民族の女性と結婚することは許さないのだという。

 今朝の東京新聞の「こちら特報部」には、3月下旬にはウイグル自治区南部のホータンで1000人規模のデモがあったが、これは「中国当局が未婚女性を強制的に自治区外で働かせるために、連行する為への抗議行動だった」という。

 この記事の中には、「ウイグル民族は、ほとんど漢民族の奴隷」という表現もある。最近よく日本のテレビに出る朱建栄さんは、私もNHKテレビの「BSディベート」でご一緒したことがある方ですが、「中国がチベットの封建制度を打破して100万人を解放した」と言っているが、それはあくまで50年も前の話でしょう。今また封建制度に基づかない「奴隷制度」が始まったとしたら、中国の各自治区の人々が今の中国の制度に不満を述べるのはごく自然だと思う。

 今聖火は韓国を走っているところでしょうか。いろいろ考えると、今年は実に様々なことが起こりそうな気がする。オリンピックがらみで。


2008年04月25日(金曜日)

 (08:59)どこかのお笑いグループの台詞ではないのですが、「なんでだろ......なんでだろ.....」と。

 今日の朝日新聞に非常に希有な広告が載っている。なんと「ビッグコミック」の「クルーズ」という漫画シリーズの。その上には、「創刊40周年記念新連載」と打ってある。よほど力を入れているか、よほど売らないといけない理由があるのか。

 私が調べた限り、他の新聞には同じ広告は載っていない。「どうして朝日?」「どうして漫画の新作を新聞で広告?」と疑問は尽きない。どなたかご存じでしょうか。

 新しいエッセイがアップされました。環境問題についてはずっと追っていこうと思っているのですが、関連の今朝の新聞記事では「バイオ燃料 高まる批判」(サンケイ新聞)が良く書けている。洞爺湖サミットでは必ず今の穀物相場高をどうするか、という問題が取り上げられる。

四国の8字形の高速道路網(構想を含む)  ところで四国のアンパンマン列車に関しては、旧知の川上さんから以下のようなメールをいただきました。

 師匠のHPやPodcast、いつも参考にさせていただいております。ありがとうございます。

 さて、Day by Dayでアンパンマン列車の話題を取り上げられてましたので、少しばかり使いコメントを。

 アンパンマン列車が四国を走り出してもう8年くらいになります。当初は少しでも乗客を呼び寄せようと、アンパンマンの作者・やなせたかし氏とタイアップして登場しました。

 その背景には四国の高速道路網の整備の進展があげられます。師匠も四国内の移動は車だったと書かれておりましたが、実は列車による移動より車による移動のほうが便利な場合も多々あるのです。現在はX字の形に高速道路網が整備されていますが(Xハイウェイと呼ばれています)、将来には8の字に結ぼうという計画もあります。

 果たしてそこまでしてどれだけの効果があるのかというと疑問符が。。。一部教育機関やシンクタンクでも、聞き取り調査などを実施し、8の字ハイウェイへの地元企業などの期待はどのようなものかを調査したりもしています。

 ところで、やなせたかし氏ですが、アンパンマンの作者としてはあまりに有名ですが、三越の包装紙「華ひらく」に書かれている「Mitsukoshi」という筆記体の文字を書いたのも同氏です。ちなみに包装紙自体のデザインは猪熊弦一郎画伯で、画伯は香川県高松市のご出身、私の出身高校(香川県立丸亀高等学校)の遠い先輩でもあります。ということで、あの包装紙は四国コラボレーションだったりするのです(笑)。

 確かに黒線の部分はあまり使用率が高くないような気もしますね。住んでいないので分からないのですが。私の印象としては、四国は島全体として何核になる産業が必要なのではないか、と思っています。


2008年04月24日(木曜日)

 (00:59)クリントンを評せば「ダイハード」(なかなか死なない)であり、オバマを評すれば「差し切れない」となるのでしょう。

 注目されたペンシルベニア州の民主党予備選挙は、予想以上の差で「クリントン勝利」となった。限りなく100%の開票に近い段階で、クリントン支持が54.7%、オバマが45.3%。最低限5%ポイント差で勝たなければ、といわれた水準をクリントンはクリア。理想に近い10%ポイント差に近い。

 これでは「ヒラリーが降りてくれれば」と思っている民主党の幹部達も、もう一押しが出来ない。むしろ、「大きい州は全部私が取った」とクリントンに選挙戦継続の理由を与えてしまった。

 最近の民主党の予備選挙では、本来の民主党員以外の人がどのくらい参加しているかは不明である。確か州によって違うが、20ドルを支払えば誰でも民主党の予備選挙に投票できるところが多い。一説には民主党の候補者選びを複雑化するために、共和党員が投票に加わっているとも言われる。しかし、ヒラリーにとってペンシルベニアの結果は勝ちは勝ちだ。

 彼女にとって懸念材料が依然として多いことは変わらない。

  1. 選挙資金がほぼ底をついた状況で、今後も選挙戦を継続するためには献金を大幅に増やす必要があるが、依然としてオバマほど献金集金能力が高くない
  2. 民主党の幹部がどちらかと言えばダーティな選挙コマーシャルを使って選挙戦を続けているヒラリー候補に嫌悪感を強めている
  3. 2025の過半数票を取る見通しは、依然としてオバマのサイドに優位であり、ペンシルベニアで勝ったからといって特別代議員が大挙してヒラリーに鞍替えする様子は伺えない
 などである。ヒラリーを強烈に支持したのは「女性」「年より」「豊かでない人々」「教育程度の低い人々」「高学歴ではない労働組合員」だったと言われる。つまり社会的には今まであまり注目されなかった人々だと言うことだ。オバマの「田舎の人々は..銃と宗教に...」の発言が影響したのかもしれないし、アメリカ国民のバランス感覚が働いたのかもしれない。

 しかし、民主主義国では誰であろうと、「一人一票」が大きな原則である。「大きな州を取れないオバマでマケインに対して勝てるのか」というヒラリーの主張は無視できない。かくして、民主党の幹部の頭を悩ませる民主党の候補を巡る戦いは、まだ当分続くと言うことになる。

 オバマ候補が大きな州を取れないことは、民主党全体に大きな懸念材料になる。なぜなら、本選挙では各州の選挙人総取り選挙になるから、大きな州で勝てなければ本選挙では絶対勝てない。オバマ候補はマケインに対して有効な候補だと今は言われているが、クリントン相手でも大きな州を取れない彼の実力に対しては、今後大きな疑問符が付くだろう。

 かつアメリカには、所謂「ブラッドリー効果」というのがある。白人は本番になればなるほど、世論調査の時ほどには黒人の候補を支持しなくなる、実際には白人候補に票を入れるという傾向だ。1986年のカリフォルニア州選挙で鮮明に出て、その時の黒人候補の名前にちなんで呼ばれる。

 この時はブラッドリー候補が世論調査の段階では圧倒的に優位だった。新聞はこの世論調査を信じて、「ブラッドリー勝利へ」と打った。しかし勝ったのはデュークメディアンという白人の候補だった。

 これは去年の末の年末年始特番の時からの予想ですが、日本では地味に見えるマケインですが、どちらの民主党候補よりも次期大統領になる可能性は高いと思っています。大統領を選ぶのは主に中西部に生まれ、中西部に死ぬような普通のアメリカ人ですから。


2008年04月23日(水曜日)

 (23:59)やはり知らないところには行ってみるものだと。松山から宇和海7号(宇和島行き)という列車に乗ったら、それこそそこら中に「アンパンマン」が張り付いている。列車の外側にも、列車内の電話の上にも、そして指定席の座席にもしっかりと。

松山から宇和島の間を走っているアンパンマン列車の外装  アナウンスメントも列車番号を言うだけではなく、「アンパンマン号」とはっきりアナウンスしている。JRの列車でこれだけ明確に彩りされている列車は珍しい。飛行機はハワイ一色といったのが時々ありますが。私は子供ではないが、ちょっとビックリ。これもアイデアかな、と。

同じ四国の鯛めしでも、松山のそれと宇和島のそれとは全く違う。八幡浜のそれは宇和島の近い分だけ、松山や東京、京都の鯛めしとは違っていた  車掌さんに「なんでこうなっているの」と聞いたら、「子供さんが喜ぶんで....」という答えなんですが、ちょっと不足・不満。そこで「どうしてアンパンマンなの....」と聞いたら、アンパンマンの作者であるやなせたかし( 柳瀬 嵩)さんが、四国は高知県のご出身であることから、JR四国の言ってみればキャラクターになったということらしい。納得。なかなか面白い列車でした。伊豆に行く踊り子号なんかも、ちょっとアイデアを凝らした列車にするのはありかな、なんて思いました。

 昼飯は八幡浜に移動してから食べたのですが、ここで松山の「鯛めし」と南伊予の「鯛めし」とは全く別物であることを思い出しました。松山や東京で食べる鯛めしは炊き込んで、鯛の肉をほぐしてある。しかし宇和島とか八幡浜の鯛めしは、生の鯛の刺身(細切り)を卵と醤油のつゆの中に入れてかき混ぜ、それをご飯にかけるという方式。

 そうじゃないかな、と思って説明を見ると「昔豊後の漁師が捕れた魚を刺身にして、身近にあった卵と醤油で食べたのが始まりだと言われる.....」などと書いてある。そうなんですよ。今は立派な料理になっているモノでも、昔は漁師飯だったものがいっぱいある、というのが私の理解です。

 まあ、鯛茶もそうなんでしょう。全国にいろいろな鯛茶がある。既に鯛の切り身が胡麻やたまり醤油につけられてご飯に乗っているやつ、別皿に盛られているやつ。しかしいろいろ考えるに、あれも漁師飯なんでしょう。

 漁師が漁に出る。腹が減る。ご飯とお茶碗はある。鯛が捕れる。捌いて切り身にしてご飯に乗せて、そこにお茶をかけて食べる。ただの切り身では美味しくない。で、胡麻をまぶしたり、醤油につけたり。

 それがそれぞれも村、家で受け継がれたものが、美味しいので料理屋に入ってだんだん上品な料理になって、それが普及していくというプロセス。フランス料理は多分王朝の中心部で料理が育った。もともとはメジチ家の料理が読み入りしたことによってフランスに入った。

 しかし恐らく日本料理の美味しいものはその大部分が民の料理から発展した。鮨も天麩羅もそうです。お公家さんや武士は、毒味が見た後のあまり美味しくないものを食べていた。そう考えられるし、料理は日本の上流階級においては、お茶を美味しく頂くための添え物だったと考えられる。

 まあどうでも良いことなのですが、四国まで来てそんなことを考えていました。


2008年04月23日(水曜日)

 (09:59)朝は6時に起きてホテルの前のチンチン電車で15分くらい移動して終点で降り、その後商店街を少し歩いてお風呂に。行きの電車ではおばあちゃん達(10人くらい。皆顔見知りのようでした)の「今度はあの花が咲いた....」とかいうはなしを聞き、お風呂ではおじいちゃん達の世間話に耳を傾け.......

 実は昨夜から松山に来ています。久しぶりですが、やはりここに来れば道後のお風呂に行きたくなる。松山に来ると必ずそうしているのですが、今回も同じ。早起きして。道後温泉は一階の神の湯でしたっけ、あそこがいいんですよ。二階、三階の高いお風呂より。

 前回も前々回もおじいちゃん達の話しの中味は、野球だった。今年はあそこが強いとかあの投手は良い、とか。ところが今年は全く野球の話しは聞けなかった。ひょっとして松山商業が弱いから。なんだかタクシーの運転手さんによると、昔は相手にしていなかったような弱い高校を相手に、コールド負けしたそうな。

 ずっと以前から来ているので、松山も変わったなと。全日空ホテルがあり、その隣に三越があり、その先にラフォーレがあるという中心街の並びは変わらないのですが、そのラフォーレは今大改修の最中。ラフォーレと三越の間に挟まれたビルの一階にあるパチンコ屋には「1円パチンコ始めました」のカンバン。

 それよりも変わったのは歓楽街ですかね。既に松山の料亭は全て姿を消したそうですが、お店も随分と変わったそうです。これといった産業がないのが50万都市の停滞の理由。誰もが「一つ大きな会社の工場でも来てくれたら」と言っている。以前からそうでしたが。

 でも良い街ですよ。街の中心から直ぐの山にお城があって、そのお城に上がる道には綺麗な緑豊かな山になっている。典型的な中規模都市で、暮らしやすいのではないかと思う。道後からの帰りのチンチン電車は7時を過ぎて乗ったのですが、行きで一緒だったおばあちゃん達に加えて、オフィスに早く行きたいというサラリーマンがかなり乗ってきた。道後の近くに住んでいる単身赴任が多いんでしょうね。

 ところで今日は生まれて初めて四国で鉄道に乗ります。四国は何回となく来ている。四つの県にはそれぞれ全部行っていて、各県庁所在地は何回も行っているのですが、島内の移動はずっと車だった。松山から高知とか。ところが今回は八幡浜までJRで行きます。これが楽しみ。なにせ四国で乗る最初の電車ですから。

 昨日集めた情報によると、四国の電車は特急であっても突然小さな駅で止まって待ち合わせをするらしい。単線だからでしょうか。大阪の北新地に「八幡浜はなれ」という店がある。そこのご主人夫妻の出身地であり、どうんな街が楽しみ。同じく同地出身の吉富氏は「なんもない」と。「矢柄」が見れれば、と思って居るんですよ。

 四国というと、徳島に引っ込んだ内藤さんは何をしているのかな。今回は徳島には寄れませんが。


2008年04月22日(火曜日)

 (23:59)ドル・円相場はあまり動きませんが、ユーロ・ドルが1.6ドル台に乗り、原油が119ドル台を付け、上海の株は昨年10月の高値から半値以下に一時落ち込み.....と世界の金融市場の動きはめまぐるしい。

 まあ気になるのは上海の株でしょうか。昨年10月に記録した史上最高値が確か6124.04。しかし昨日は実にその半値以下の2990.79まで一時下げた。昨年の一時期、日本の各テレビが中国の「株民」をこぞって特集したのを鮮明に覚えているのですが、株価が半値になるなかで彼等はどうしているのでしょうか。

 「中国の株価はオリンピックまでは大丈夫」、「中国の株価は最後は中国政府がコントロールしている」とまことしやかな説が流れていたが、今となってはどれも本当に事ではなかった。まあ筆者は昨年の11月に温家宝さんが北京の貧しい家庭を訪問して、「これ以上のインフレは許しませんから」と言ったときから、中国の政策の優先順位は明らかに「インフレ抑制」になったと考えていて、今週に入っても中国人民銀行は預金準備率の引き上げなどで引き締め措置を継続している。

 上海の株価の昨日の引けは、安値からは反発して3147.79で終わったらしいが、一回崩れた相場はそうは簡単には戻らない。中国の株バブルは完全に崩壊した、と考えられる。不動産も雲行きが危ない。金融緩和故の二つ(株、不動産)バブルだったわけで、金融政策の大転換の中では二つとも生き残るのは難しい。

 「オリンピックまで」と言えば、もしかしたら「中国人の愛国心」というのが当たっているかもしれない。今は聖火があちこちで問題を起こしている。株や不動産の下げの事など言っていられてない、という状況。しかし今の株安、不動産の不安定をにがにがしく、「裏切られた」と思っている人々は多い筈だ。「政府がなんとかしてくれる筈だったのに」と。

 世界の金融市場の中にあって、上海は他の市場との資金の出入りがほとんどない局地戦の市場だが、心理的には影響する。ニューヨークの株価も今は軟調に推移している。原油が120ドルに接近するのは、市場にとってはアラーミングだ。それにしても、原油はやや高すぎる印象がする。世界の景気の減速する中での高値追い。

 世界のお金は、行き場を考えあぐねているという状況でしょう。この状況は当面続く。足の速い世界の資金の動きについていくのは容易ではない。世界の投資家にとっては、「火傷はしないように」という状況が続く。


2008年04月21日(月曜日)

 (23:59)今日の都内の警備の厳しかったこと。いや別に私が誰何されたということではなくて、警官配備のものものしいこと。李明博・韓国大統領の訪日に関連したものでしょう。

 しかしある運転手さんがこんなことを言っていました。「来月来る胡錦涛さんへの警備の練習をしているのでは」。ハハハ、まあそういうこともあるのかも知れない。

 それにしても、野茂のロイヤルズからの戦力外通告は寂しい話です。最後の登板の時にめちゃ打ち込まれて意気消沈していたのが分かっていただけに、自分でも覚悟していたんでしょうね。ヒルマン監督に告げられて何も語らなかったそうです。1000日ぶりの復活を騒がれて、わずか数日。

 しかし防御率が18.69でしたっけ。これじゃちょっと無理ですね。球種もストレートとフォークしかない野茂。39才でしたっけ。ちょっと再挑戦は厳しいのですが、彼は今までベネズエラでも頑張った経験がある。さあどうするか。もしかしたら、日本に帰ってくるかも知れない。自分のチームも持っているのですが。

 聖火出発地点を辞退した善光寺は、聖火が長野を走る26日にチベットでの今回の騒動で亡くなった人の追悼の為の法要を同日に行うという。同じ仏教徒としての連帯でしょう。国宝である本堂に落書きされるなど騒動に巻き込まれたのは残念です。

 あの300年の伝統があるお寺の施設が守られて、参拝客がいつもの通りお参りが出来るようになるとしたら結構な話で、その方が理想的です。


2008年04月20日(日曜日)

 (16:59)あらら、3月17日に秋葉原で行われたセミナーのコンテンツが今日の日経本紙の26、27面に出ていますね。

 私が出たのは最後のパネル・ディスカッションなんですが、私の前の人がどのような話をしたのかは知らなかった。あとで読んでみようと思っています。しかしガラパゴス現象とか、グリーンITとかその時に考えたことが、次々にビズポッドキャストの話題になったりしている。グリーンITは月曜リリースです。

 仕事が全く重なるのは面白くないが、ある場所で考えるきっかけが与えられたことが、その後の機会により深く考える機会が出てくるというのは、なかなか楽しいものです。そしてその中で、一つの問題と別の問題が深いところで繋がっていることが徐々に明らかになってくる。私の頭の中でです。

 イスラム金融も本まで読んで取り上げた問題だったのですが、最近特に新聞や雑誌などでこの問題が取り上げられている。「少しはやかったかな」とある意味では満足。ま、ポッドキャストの話題は編集者の提案の時もあるし、私がこれをと言うときもある。今後も一足先を行く話題を取り上げていきたい。

 一方この番組では、ポッドキャストでお聞きの皆さんが多いことを勘案して、最初と最後の挨拶を変えました。今までは、「はい、皆さん今晩は....」「では、お休みなさい」でしたが、完全にこれはラジオ仕様。

 「朝、電車の中で聞いているんですが...」という問い合わせを頂いて「ハッ!」と気がついた。長年の慣れというのは恐ろしい。 今後も自分がやっていることの時代性を考えなければならないと思っています。


2008年04月18日(金曜日)

 使用した状態。写真を撮るために床に置いていますが、クローゼットに簡単に収容(16:59)実はずっと探していたものがあったのです。それはネクタイを整理整頓できる家具というか、道具。だって長いし、滑りやすいし、本数は増えるし、汚れやすいし。

売っていた製品の状態  実は一杯持っているのです。最近はネクタイをあまりしなくなりましたから増え方はベースダウンしてきた。しかし増えている。時に若い人に大量にやったりしますが、それでも増える。増えて例えばあまり使わなくなったネクタイをタンスや引き出しに入れる。そうすると、存在を忘れる。

 比較的使うネクタイをクローゼットに入れておいても、普通のハンガーに掛けるだけでは滑りやすいし、本数を重ねていくと重くなる上に、全体がずり落ちたりする。困った存在だったのです。で、何かネクタイを整理する家具とか道具があるはずだとずっと思っていた。

 この一両日です。徹底的に探そうと思って、まず伊勢丹のネクタイ売り場に電話した。「このフロアにはそういうものは....」と。もういい、って感じですね。街も歩いてみました。なかなかない。有楽町のビッグカメラにも行った。ない。

 新宿のあの大きな大塚家具(旧三越)にも行きました。入り口で、「当方にはそういうものは....」とここも冷たい。しかし大塚家具の入り口の店員が「もしかしたら、東急ハンズさんにあるかも....」と小さな声で。配慮が足りなかったのですが、大きな声で「はい、東急ハンズですね」と言って、そのまま高島屋の一角にあるハンズに。

 3階だったか、4階だったか、エスカレーターを降りて店員さんに、「これこれしかじかのものを探しているのですが....」と言ったら、すぐに案内してくれた。なんとそこには実演現場で、このステップハンガーにはこうやってネクタイを掛けて.....とやっているおじさんが居る。なんじゃい、ってなものですね。

 写真の通り実に簡単な仕掛けなんですよ。でも落ちない。ネクタイがお互いにブレーキの役割を果たしているのです。一つで24本のネクタイを収容可能。取り出すときは下の○をちょっと引き上げるだけ。便利でしょう。なんと言ってクローゼットの中が片づく。

 でいくらだと思いますか。当然だけど安い。一つ700円ちょっとでした。ちょっとまとめ買いしましたよ。だって、クローゼットの中が整理される、綺麗になるのならOK。最近私が買った商品の中で、もっとも気に入っている秀逸な製品だと思う。


2008年04月18日(金曜日)

 (12:59)久しぶりに大リーグの試合を見て相当腹が立ちましたね。ヤンキースタジアムでの対ボストン戦。

 今年の松井は好調です。ホームラン3本、そして打点8。打率は0.327。申し分ないし、外野の守備もちょっと危なっかしいところがあるがエラーなくこなしている。ところが、ラジオ番組出演を終えてテレビをつけたらまず出ていない。なんだこりゃ、から怒りが。

 誰が五番を打っているのかと思ったら、打率1割台のジオンビー。守れない、走れないの選手で、今シーズンも絶不調。今日の試合も案の定2三振を含む4タコ。終わったら打率は0.125。松井との力の差、調子の差は歴然。

 これには本当に腹が立った。ちょっと言葉は悪いが、「馬鹿じゃないのこの監督」と。その間、松井はずっとベンチ。松井が調子が悪かったり、体調が悪かったのか。違う。松井は試合前に監督に不先発を告げられた後、テレビのレポーターに「今日は最初から出られなくて残念」と言っている。

 対ベケットでは松井は良くないという面もあるのでは、とNHKのアナウンサー。その割に打率は解説していなかったな。解説はとても大リーグに詳しいとは思えない伊東元西武監督だから、訳が分からない。全く盛り上がりのない面白くない試合。

 松井は最後の最後に出てきましたよ。9回裏、ランナーなし、2アウト。この時の点差は5−7。松井がHRを打ってもまだ足りない。これじゃモティべーションが高まるわけがない。見逃しの三振。これじゃ全く「松井が悪い」という感じを与える場面を作ったに等しい。この監督は、調子の良い選手を悪くするのがうまいのかもしれない。

 明日のニューヨークのマスコミがどう批評するか見てみたい。こんな試合は二度と見たくない。松井はもっと常に必要とされるチームに移るべきだ、とまで思った。


2008年04月17日(木曜日)

 (16:59)へえ、こんなことが週刊誌ダネになるんだ、と。いわゆる「女子アナ」がらみだからですかね。

 旧知の山田伸二さんから(NHK解説委員)から葉書が来たのはもう一ヶ月くらい前かな。「こういう事になりした」と書いてあって、結婚通知だった。離婚されたことは知っていたので、「へえ、良かったな」と思って見たら、お相手は目加田さんだった。

 結構活躍されていたNHKのアナウンサーの方だったので知っていて、正直ちょっと驚き、かつなんか羨ましい気持ちになったのですが(ハハハ)、そのうち会ったら、「どったの」とからかおうと思っていたら、今朝の週刊新潮の広告で記事になっている。ちょっとした騒動のような。

 まあおめでたい事じゃないのですか。足すと100を優に超える。しかし目加田さんが「気が付いたら彼がウチに住み付いていたんです」と披露パーティーで明からかにしたそうな。このことに関してはちょっと事情を聞く必要があるような.....。

 さて、本の紹介です。これも新幹線の中で読んだのですが「幕臣たちの明治維新」というのです。講談社現代新書から。

 明治維新。800万石を持っていた江戸幕府の主である徳川家は、大政奉還、江戸城開場、明治維新と続く動乱の中で1868年に70万石の一つの藩にまず格下げになった。その時に彰義隊など華々しく散った人々もいたのですが、実は多くの幕臣が選択を迫られたという。

 石高が10分の一以下になったのだから、幕府の時のように多くの家来を従来と同じように処遇できるわけはない。つまり、3万人とも言われた旗本、御家人の大部分は、静岡(静岡藩という一藩に幕府はなった)に今までの十分の一以下の俸禄でついていくか、武士をやめて商売とか農業を行うのか、それとも新政府に就職するかなど選ばざるを得なかった。

 つまり、圧倒的多数だった普通の幕臣達の「その後」が書いてある。以前も書いたことがあるのですが、歴史はしばしば「大きな事」を連ねて話を作り上げる。しかし、実際にはそういう大事に加わった人は極少数です。大部分の人は、時代の流れに流されるように生きて、そのまま消え去っている。

 200年も続いた幕府が終わったのだから、それはもう相当な混乱だったはずです。そういうときに、江戸を動かしていた人たちがどういう道を選んだのか。この本は、今まで書かれなかった江戸から明治への時代の流れを、「幕臣たちのその後」という形で扱っていて面白い。

 「武士の家計簿」(新潮新書)も非常に面白い歴史の検証だったのですが、この「幕臣たちの明治維新」も非常に私は興味深く読みました。当時は静岡が人材の宝庫だったというのも面白い。そりゃそうだ。

 武士を捨てた人の悲惨なその後も、「思考や慣習の慣性」を振り払うことの難しさからは想像が容易に出来る。静岡のお茶も、実は江戸から下った幕臣達が育てた面もあるようです。静岡はいろいろな産業も育てた。そういう背景にもなっているのかもしれない。

 こういう歴史は好きだな。普段は書かれも記録もされない歴史。そこにこそ多くの人が生きた証拠がある。派手ではないが。


2008年04月16日(水曜日)

 (11:59)なんだか知りませんが、会う人には会うんですよね。別に打ち合わせていないのに、ひょんなところで。一定期間内に。

 それが最近は、中原英臣先生なんですよ。先日は自宅の近くの東高円寺の駅でばったり後ろ姿を発見して声を掛けた。昨日は新幹線の大阪行きでばったり。何回もテレビでご一緒している。

 新幹線の中で新しい名刺をちょうだいしました。山野なんとかという大学の先生であることは知っていたのですが、今回もらった名刺は新渡戸文化学園短期大学の学長さんというもの。「学長か、凄いな」と思ってそう言ったら、実情はかなり厳しいらしい。

 今の大学は、ちょっと油断すると定員割れになる。この中野にある短期大学もそうだというのです。で、高校時代の同級生や先輩に頼まれて、学長を引き受け、学生の確保にも奔走するというのです。「そりゃ、大変だ」という方向に印象が変わった。今度食事でも、ということになったのですが、私には女子大生を集める能力はないな。

 ところで、新幹線の中で一冊本を読みました。堂々たる政治というのです。自民党の与謝野薫さんが書いている。政治家は最近本を出す。多くの場合は、より上を、しばしば政権を視野に入れてです。

 与謝野さんにそういう気があるのかどうかは知らない。今週の日曜日にサンデープロジェクトを久しぶりに見たら、与謝野さんと前原さんが出ていて、「対決」とあったがまったくそうではなくて、印象に残ったのは与謝野さんのぶっちゃけの福田評、というか総理を取り巻く連中に対する忌憚のない批判かな。

 「田波さんには本当に驚いた....」とはなかなか言えないことです。「総理というより、回りが悪い」と。町村さんがこれに反応していたのが面白かった。まあ政権に距離を置き始めたと言えば、置き始めた。

 与謝野さんはひょんなことから以前一回だけですがゴルフをしたことがある。多分落選中。別にうまくはないが、淡々とやる人だと思った。本も肩に力が入っていない、しかし与謝野さんという人が分かる本です。当然祖父・祖母の話も出てくる。お父様が外交だったというのは知らなかったな。サラリーマン時代があったというのも。

 与謝野さんはこの本で、何か具体的な経済政策を提唱しているのではない。そうではなくて、自分の考え方を提唱している。上げ潮路線をどう考えるか、民主党の無駄省け論をどう考えるか。国家は「割り勘」というのは面白い表現だが、一方で世の中には「割り勘負け」と言う言葉もあることは、与謝野さんは触れていない。触れて欲しかった。

 まあでも「3落選、9当選」の苦しい時期もあった政治家の、落ち着いた本音が読めるという点では、なかなか面白い本だ。最後に与謝野さんが使っている

劫初より 作り営む堂殿に われも黄金の釘一つ打つ
 とは示唆に富む彼の祖母の歌だ。「劫初」とは仏語らしい。「劫の初め。この世の初め。成劫(じょうごう)のはじめ。「劫」は未来永劫の「劫」ですから、分かる気がする。与謝野さんが、「黄金の釘一つ」と言うときに何を前提に置いているのかは想像するしかないが.....


2008年04月15日(火曜日)

 (08:59)日本も消費不況が深刻化しつつあるのですが、中国でも韓国でも景気はかなり難しい局面に差し掛かっている。中国では上海の株価が直近の高値からほぼ半分になり、上げを謳歌していた不動産の価格も急落。一方韓国では成立したばかりの李明博政権の選挙公約に早くも赤信号。

 中国のバブル破裂は多くの予想ではオリンピック後という見方だった。しかし市場は先に予測できることを、その時点まで待つことを殆どしない。中国の場合は「(株安が起きそうになったら)政府が何とかする」という意見があったが、それ以前に物価高・金融引き締めの中で株価安、不動産安が実際に起きていることは、中国政府の大きくなった同国経済コントロール力の低下を意味するかも知れない。

 昨日の上海株の下げは激しかった。つい最近のニュースは「上海株が3500を割った」というものだったが、週明けの14日の相場は一気に3300を割った。昨年10月につけた6000を上回る水準から見てほぼ半値になった。今朝の日経新聞などによると、マンションなど不動産価格の下落も激しく、深センでは3月のマンション価格が前月に比べて17%も下落したという。

 事務所ビルの余剰も顕著になりつつあるらしい。大型ビルの空室率は北京で16%、広州では25%に達するという。ということは、経済格差を見せつけられている中国の平均以下の所得層や農民、民工ばかりでなく、実は株高、不動産高で踊ってきた中国の富裕層も相当怒りを募らせている、ということだろう。しかし政治的に見れば、中国政府の政策のポイントは「インフレ抑制、そのための金融引き締め」に当面あり続ける。物価高は中国民衆の生活を直撃する。

 今の中国は聖火問題で「愛国心の高まり」(日本の各紙)の中にある。それはそうだろう。しかし愛国心の行方はしばしば行方を変える。今のままではオリンピックが終わる頃に、「何の為のオリンピックだったのか」という議論が出てくる可能性がある。聖火問題や今後出てくる関連の諸問題での中国の権威の喪失、経済の実態悪化。その中で進む格差の拡大と、今まで豊かだった富裕層の不満拡大。繰り返すが、歴史を見れば愛国心はしばしばその行方を変える

 韓国経済に関しては、月曜日の昼に日本に駐在する二人の韓国の方と食事をしながらゆっくり話をしました。そこで出てきた話は以下の通りだった。

  1. 李政権が選挙で約束した300万人の雇用創出の柱だった半島横断運河計画は、時間の経過とともに国内でも反対論が強まっている。政権は「計画は生きている」という形で面目は保とうとするだろうが、最後は計画はうやむやになるのではないか

  2. 雇用が創出できなければ、政権に対する支持率は下がるが、その兆候は既に出ている。加えて今の韓国は、インフレ、雇用難、対外収支の悪化という問題が出てきている。政権の基盤は前回の選挙で固まったかのように言われているが、朴氏との間の綱引きは厳しい

  3. 内政が当面駄目な李政権が得点を稼ごうとすれば対北政策だが、それも政権発足当初のミスで完全に北を挑発してしまった。よって外交政策もダメ。ということは、当面の李政権の政権運営は厳しくなる
 ということらしい。しかし彼等と話をしていて、韓国の経済が少し前進したと思われることは、韓国経済に占めるサムスンの地位が徐々に低下してきていると言うこと。以前私が調べたところでは、同社の時価総額は韓国株式市場時価総額の20%を超えていて、その他でもサムスンがいろいろな面で20%を占めていた。納税額とか、輸出に占める割合とか。なのだが、最近は時価総額占有率は8%程度に落ちてきている、とのこと。これは継承問題などでサムスンが業績の頭打ちになる一方で、他の会社が出てきたことに伴うものだという。これは韓国経済にとって良い兆候です。韓国経済は多様化が必要。

 ところで、中国に関しては一冊本を紹介しましょう。この本の著者である吉岡佳子さんとは旧知の仲。先週金曜日に私が長野に移動する前に1時間ほどお茶しました。彼女が4年以上に及ぶ中国滞在を受けて書いた本が愛国経済ー中国の全球化です。全球化とは「グローバライゼーション」。

 この本がいいのは、彼女が実際に中国の各地方に足を運び、実際に中国の人と会う中で疑問にぶつかりながら中国に関するアイデアを固めて行き、彼女の分析を自分の言葉で語って作り上げている点。いろいろなことを詰め込みすぎてちょっと主張が弱くなったきらいはある。しかし、今の中国を理解する上で実に地に足が着いた分析、感想、思索が詰まっている本だと思う。

 いわゆる中国本はいっぱい出版されている。しかし、「中国は巨大な国になる」と「中国はひどい国」の両極端に別れている。真実はその中間に詰まっていると私は思うのだが、この本はまさにこの点で優れている。推薦です。


2008年04月14日(月曜日)

 (16:59)ははは、G7声明は寝た子を起こしてしまいましたな。ま、タイムテーブル的にも一時楽観に傾いていた市場心理がまた悲観に転換する頃ではありますが。

 声明というのは、実際には出し方が非常に難しい。懸念をどの程度出すのか。正直の方が良いが、では全部正直に言って正解かというと必ずしもそうではない。図々しく知らない振りをすることも必要なときもある。

 「ああ、当局はあまり心配していないんだ」というのが、一つの安心感になるケースもある。一方で、当局が心配な事を表面に出せば「当局も心配しているんだ」と改めて市場に参加している人々が懸念を強めると言うことになる。市場の心理というのは常に振れていますから。

 今回は明らかに後者です。ただし当局がどういう言葉を使おうが、世界経済の実態、市場の置かれた環境がそれほど変わるわけではない。よって、あるべき姿に時間の経過とともに戻る可能性もある。今回の場合は、アジアは軒並み「(G7声明で)改めて不安になった」というわけで株価は下げたが、インドの株はこの文章を書いている段階では上げている。

 株は下がったが、為替はG7声明があったからといって大きく動いているわけではない。もともとドルの下げに警告した声明ですから、それほど売り込める分けはない。ポールソンが「今年一年は難しい年になる」と言っているのは正直なところで、マーケットも今年はいろいろとありそう。G7後の市場の動揺はその一環というわけです。


2008年04月12日(土曜日)

 (16:59)ははは、まあそうなんでしょうね。甲子園ではあまりの応援によう打てなかった。しかし横浜ではちょっと気が楽になって2000本安打が出た。日本で37人目。松井、イチローを入れると39人目だそうで、確か王手がかかってからの19打席目は日本新(?)

 阪神の金本の話です。朝に移動して午前中は大阪に居たのですが、番組ではくす玉まで用意して祝賀を計画していたようですが、昨日までの甲子園では出なかった。この2000本を見たくて甲子園に行った人も知っているのですが、まあそんなにうまくは出ない。

 新井も第一打席の一本のヒットが1000本目だったそうで、旧広島の中軸の阪神での踏ん張りが目立つ。何よりも重要なのは、この二人が阪神の主軸に、金本は更に精神面で中心になっているという点。「アニキ」ですからね。

 ジャイアンツも主軸を打てる選手を取るが、「アニキ」は取らない。この違いが大きいと思う。ただ打つだけでだめ。チームの主軸というのは、精神面でも柱でなければならないと思う。阪神の二人の主軸がメルクマールを超えたことで、まあしばらく阪神は大崩はしそうもない。

 野球と言えば、野茂のカムバックは嬉しいですね。ベネズエラに行ってまで再起を狙っていた。ヒルマンに拾われて、松井は打ち取った。アレックスとポサダにHRを打たれたものの、3回を投げてですからね。ヒルマンも「ok」だったようです。松井も昨日は野茂に抑えられたが、金曜日の対ボストンでは2安打。レギュラーは心配されたが、今は固い。

 野球の話では、移動の中で読んだこの記事は泣かせたな。覚えていますよ、條辺という選手の事は。「元・巨人の150キロ右腕、うどんに全力投球」というタイトルも良い。

 金曜日の夜は長野に居ました。皆さんが「どうなるんだろう」と。その前にマラソンがあるそうで、今月の長野市は何かと忙しい。まあ私は何らかの抗議の意を表す人が出てくるのは自然だと思うのですがね。

 長野に行ったのは、PB(プライベート・ブランド)の現状と今後の見通しをローカルな視点から取り上げた番組の為。穀物など資材価格が上がっている中で、メーカーとスーパーなどのせめぎ合いは厳しい。番組の最中に視聴者からもメールを受け付ける開放的な番組の作りをしていて、結構面白かった。

 実際のところ、価格構造は資源価格の高騰で大きく変化してきている。アジアでは米の相場が著しく上昇し、これが社会不安にまで発展しそうな雰囲気。価格は上がるのに、今回のG7も指摘しているとおり、世界経済は重大な問題に直面している。

 長野、大阪の週末ツアーから返ってきたので、これから時間を見つけてG7声明を読もうかな、なんて考えてます。


2008年04月11日(金曜日)

 (05:59)今日の午後長野に行くのでちょっと様子を見てこようと思っているのですが、聖火リレーがある善光寺周辺ではやはり緊張が高まっているでしょうね。サンフランシスコの聖火リレーは大幅にルート変更で行ったようですが、長野は「ルート変更しない」という予定らしい。

 聖火リレーに抗議の意を表したい人はいっぱいいるに違いない。今の中国の対チベット政策は明らかに間違っていますから。しかし一方で、ダライラマ14世は暴力を否定している。しかしWTOやサミットの場でもそうですが、抗議行動はエスカレートしがち。

 善光寺の場合、あの参道をやはり聖火を通すんでしょう。それでなかったら意味がない。善光寺も仏教のお寺。一方でチベット仏教が中国国内で正当に評価されていないという現実。今回の北京のオリンピックは本当に問題が多い。善光寺さんも板挟みで困っているでしょう。

 ところで、最近のニュースを取り上げながら日経エコ向けのエッセイがアップされました。恐ろしい、しかし実際の話です。


2008年04月10日(木曜日)

 (23:59)木曜日で最大の経済ニュースと言えば、人民元の上昇に加速がついて、1ドル=7人民元の水準を人民元高の方向に切り上がったと言うことでしょうか。中国人民銀行が設定した10日の対ドルレートは、6.9916だった。

 中国が人民元の段階的、管理された切り上げを開始したのは2005年でした。スタート時点の人民元の対ドルレートは、8.26人民元。そこから最初はゆるりと、最近はちょっと足早に切り上げを行っている。今日のレートはスタート時点に比べて15.6%の切り上げ。塵も積もれば....という感じだ。

 中国が人民元のレート切り上げに動いているのは、海外からの圧力もあるが、インフレ対策の側面が強い。何せ中国国内のインフレ率は、食料品を初めとして昨年10月頃から非常に高率になっている。温家宝さんが北京の一般家庭に行って、「こんなインフレはもう許しませんから」と言ったのが、確か11月だったと思った。しかし収まっていない。

 そのころから中国の金融政策は明らかに引き締めに入った。上海の株価指数が6000を超えていて、株民が喜んでいたのはその直後まで。その後は中国の株価は下げ基調で、最近では3500を切った。これはある意味で、中国経済の苦境を象徴している。自業自得の面があるが、「株民は怒っている」らしい。

 人民元の切り上げは国内物価には下方圧力となるが、輸出産業には厳しい。中国のようにあまり付加価値の高くない産業を中心とした輸出には価格が非常に重要だが、人民元の切り上げはその価格競争力を徐々に奪う。ということは、輸出産業に陰りが見えかねない、ということだ。もっとも、「では誰が中国に取って代わるのか」というと、規模的にはそう代替者はいない。

 株民を喜ばせず、一般大衆も物価の上昇や雇用の減少を歓迎しないという事態は、胡錦濤政権にとっての不利である。中国は今はオリンピックの聖火の問題でむしろ愛国を旗印に国内はまとまっている様子だが、政権への潜在的な不満は高まってもおかしくない。

 ところで、人の集まりという面では昨日は、この新聞の創刊記念パーティーが面白かった。帝国ホテルで午後6時からでしたが、私はラジオの収録などの関係で午後6時半ごろ行きました。私が行ったときには、渡辺金融担当大臣が例の大きな声で祝辞を述べていた。その後2人が挨拶していらっしゃる間に、彼は帰ったようですね。旧知なので挨拶でも、と思っていたのですが。

 開場で編集長の野村さん(番組で2回ご一緒しました)に会って、「予想以上に部数が伸びているようですね」と話しを向けたら、「そうなんですよ」と嬉しそうな顔。当初の狙いは10万部だったそうですが、どうも15万近くに行っているらしい。会場で会った人達の話から。

 活字媒体の苦境の中では、出足は良かった。まあこれからでしょう。私は知らなかったのですが、「お試し期間」というのがあるそうで、その間は無料とか。それが終わってどのくらいが定着するかです。個人にはなかなか難しい内容が入っていて、どのくらい毎週読もうという人が出てくるのか。

 それにしても、今日は有名女性にお目に掛かる日で、朝のテレビでは隣に釈由美子さんが来てテレビドラマの番宣をしていましたし、夕方には銀座のスタジオの前を梅宮アンナさんが通ってスタジオを覗き込み、パーティーの後帝国ホテルを歩いていたら、佐藤ゆかりさんが歩いていた。

 印象では、相変わらず釈さんは独特の明るさがある。隣にしばらく居たのでちょっと話をして、彼女は本名なのですが「釈とは、ご先祖が仏教の関係の方ですか」と聞いたら、「ずっと前はそうだったのかもしれません」と。むろんそんな不粋なことばかりではなく、その他の話しもしましたが。梅宮さんは、以前より随分と顔が明るかった。佐藤さんは小柄だったと言うこともあるのですが、目線がやや下を向いていたような。ははは、御三人のご健闘を。


2008年04月10日(木曜日)

 (13:59)放送が多チャンネルなルートでリリースされる事で、いろいろな形で問題が出てくるという話しです。テレビで再放送されることが明確な番組(例えばNHKの地球特派員)では以前から始まりと終わりは何気なく時期を明示しない会話で済ましていたのですが、その他のメディアでもちょっとした問題というか、課題が生じてきた。

 つい最近ある聴取者からメールをもらいました。最近は伊藤洋一のビジネストレンド伊藤洋一のラウンドアップ・ワールドナウなどのポッドキャスト放送を聞いておられる方々からのメールが私の場合非常に多いのですが、その中に一通に後者の番組についての要望があった。

 ラウンドアップは、そもそも夜のラジオ番組でこれまでは一貫してラジオ中心に考えていたので、最後は「おやすみなさい」で終わっていた。10何年そうだったのです。しかし最近この番組を、国内、国外を問わず、そして放送時間に関係なく、例えば朝の電車の中などで聞く人が増えてきた。頂いた横浜市の方のメールはこういうものでした。引用させて頂きますね。

 毎週ポッドキャストを楽しく拝聴させていただいております。伊藤さんのわかりやすいおはなし方や、時事ネタとして身近な話題を取り入れたやわらかい語り口を参考にさせていただいてます。

 一つご提案です。番組最後の「おやすみなさい」に変わる良い締めの言葉がないかと思っております。通勤途中の電車の中で拝聴いたしますが、私のように好きな時間に聞いているリスナーも多いはず。これから仕事!というときに聞く「おやすみなさい」には違和感が・・・昔のアニメのように「おはこんばんちわ」と言う訳にもいきません(笑)

 ボーダーレスなこの時代、野球の円陣の後の「オーッ!」的で元気になる良い新語を是非お考えいただけたらなんて思っております・・・

 ごもっともですね。私もハッとしました。これは変えないといけない、と。うーん、今考えているんですよ。なんて言えばよいのか。「おはこんばんちわ」ね。「オーッ!」的で元気になる良い新語?

 ははは、考えます。まあ明日はもう金曜日で、あまり時間がないのですが。何かトライできれば、と思います。


2008年04月09日(水曜日)

 (23:59)今朝大阪を出る前に大リーグのマリナーズ戦をちょっと見たのですが、残留を決めたイチローはこれで良かったのかな、と思いました。というのは、この日は結局勝ったようなのですが、チームに覇気が全くないのです。エラーやつまらないプレーが多い。

 イチローが去年マリナーズに残留したのは私には意外でしたが、その理由を聞かれた彼は昨年末かなにかのインタビューで、「このチームでも優勝を狙えるから」と応えていた。去年の後半戦のマリナーズは確かに競り合った。地区優勝をです。

 しかし、今年のマリナーズはまた去年の前半までのそれに戻ってしまった。そう私には思える。今年も既に4連敗を経験。チームは一人では引っ張れない。イチローが打っても打ってもチームが勝てない。当分この状況は変わりそうもない。ということは、イチローの最後の願いはなかなか実現しそうもない、と思いました。これは残念なことでもある。

 今日興味を持った新聞記事は、FTにあった欧州経済天気図かな。ユーロ圏を構成している国々で、天気が相当違うという現実が示されている。雷雨になっているのは、スペイン、アイスランド、イタリアなど。一方で、フランス、ドイツ、ポーランド、デンマークなどは晴れ時々曇りのような状況。

 これらの国を一つの金融政策でまとめなければならないのがECB。これはなかなか難しい。確かECBの会合は今週でしたが、相当難しい議論が展開されるでしょう。スペインの不動産バブルの崩壊は相当酷いらしいし、アイスランドの最近の突然の利上げは、サブプライム問題が引き起こした波風の大きさを実感した。

 こんなに経済状況が違う国々が一つになっているということ自体が不思議でもある。メリットも大きいのでしょうが。EUが試されるのはこれからのような気がする。


2008年04月08日(火曜日)

 (09:59)日本の政治は混迷の極みですな。まるで政府人事への拒否権を野党が持っているような世界でも希な事が起きている中で、その野党の意見がまとまらなくて一体日銀の二人目の副総裁が明日は誰になっているのか分からない、という状況。

 今朝の新聞によれば、民主党の7〜8割の議員は財務官だった若き渡辺さんの日銀副総裁就任に賛成しているのだという。「反対は小沢、山岡、興石の三氏だけ」という意見もある。渡辺さんの副総裁就任への賛成者の中には、これまでの二人の総裁候補「拒否」で中心的人物だった仙石さんも入っているのだというのだ。

 鳩山さんも以前、「財務次官と違って財務官には広い国際的視野がある」として、具体的に黒田さんや渡辺さんの名前を挙げていた。挙げていたと言うことは、政府から名前が挙がったら同意する、ということだ。

 その通り、昨日の幹部会では「渡辺賛成」とやったらしい。しかし、日曜日のNHKのテレビで「天下り反対」の旗幟を鮮明にした小沢代表が、はっきり言ってしまったが故に「渡辺副総裁に反対」と言い、その側近である山岡国会対策委員長が、「代表が言うのだから」と賛成派に譲歩を求めたのだという。

 元々を言えば、私の感触でも小沢さんは事務次官出身の武藤さんの日銀総裁就任を容認する意向だった。しかし仙石さんや彼が率いる委員会の反対意見を見て、「党内掌握力の低下」を懸念して「拒否」に回った。ところが、事務次官出身者でもなく、今度は仙石さんも「いい」と言っている渡辺さんにも反対の姿勢だ。「何がなんだか分からない」という自民党の一部の嘆きはもっともだ。

 党内事情で人事がちっとも決まらない。しかも野党の。この一連の日銀人事で傷ついた人は本当にお気の毒だと思う。会社の人事もそうだが、誰でもが納得する人事というのはめったにない。振り回されて、それで終わり。政争になど巻き込まれたくない、と思う人もいるだろう。一部では渡辺さんが「副総裁就任を固辞している」という話もある。

 日銀の後任選びに関しては、福田首相のサイドにも落ち度がいっぱいある。参議院に全く同様の任命権が与えられている事態の認識が薄く、かつ民主党のバラバラな党内事情の把握出来なかったことが大きい。

 それにしても、呆れる混乱だ。今朝の日経の「政治の不全を問う」の中で田中直毅さんが、「どんな衆院議員を選べば行き詰まりを脱却できるのかを、有権者は既に考えているはずだ」と書いている。本当だろうか。私には考えても、どう解決して良いのか分からない。

 政権交代はあってしかるべきだし、民主党の政権運営を見てみたい気もする。しかし今の混乱状態の民主党を見ていると、左から右まで揃ったごった煮の、今まで政権を取ったことのなかった、また代表の意見が10年前と全く違ってきている党が実際に政権を取ったら何をするのだろう、と不安に思う。

 明らかに民主党支持だと思われる北海道大学の山口さんは以前テレビ番組にも来ていただいたし、東京新聞のコラムを曜日を違えて担当している関係だが、週を追うごとに民主党に批判的になっているのが分かるのが興味深い。彼にも今の民主党がどうなっているのか分からないのだろう。

 福田政権の支持率は下がるが、小沢民主党の支持率が上がっているわけではない。一つの解決策は両方の政党のトップを変えることだが、どうも民主党は今の代表を変えたら結束が保てないと考えているようだ。

 民主党の党内の亀裂は見えてきている。今回の副総裁選びがそうだ。菅さんは一体どちらを向いているのか。一つ確かなことは、「日本の政治の混迷は暫く続く」ということか。残念なことではあるが。昔から「三流」と言われていた日本の政治。国民はある程度慣れているとも言える。しかし、イライラするのは私だけか。


2008年04月07日(月曜日)

 (23:59)映画を二本。ともに結構面白かった。一本は、「Lust,Caution/色・戒」。独特の緊張感のあるなかなかの映画でした。もう公開も終わり近いのではないでしょうか。ご覧になる方はお急ぎを。私は銀座の和光の裏側の映画館で見ました。

 映画のシーンは結構今でも一つ一つ思い出す。それほど一つ一つのシーンが力を持った映画です。日本統治下の上海。二つの権力がぶつかり合う。緊張感があって、当時はああいう雰囲気だったのかと想像できる。

 「なぜ」もある。なぜ彼女があれだけのことをする決意をしたのか。自分の青春を捨てるわけですからね。説明が弱かったような気がする。また、なぜ人力車の上で薬を飲まなかったのかも分からなかった。

 まあ「想像しろ」ということでしょうが。しかし、宝石店で「逃げて」といった彼女の言葉は、「そうなのかな」と理解できた。彼女はそうなることを予告していましたから。何が人間を結びつけているのかの、非常に微妙なところです。全体的には良くできた映画だと思いました。

 もう一本は、「マンデラの名もなき看守」です。南アフリカを取り上げた映画は何本も見ましたが、マンデラと看守の心の交流を描いた興味深い映画です。マンデラさんは既に90才になっているそうですが、ウリは「彼が初めて作ることを許した映画」というもの。

 1983年だっと思ったのですが、私は映画の舞台の一つになったロベン島が一番近い都市・ケープタウンに行きましたから、余計に身近に感じる面がある。映画でもケープタウンの有名なテーブル・マウンテンと思える山がはっきり映っていました。

 今の南アフリカが理想的な国の形になっているかと言えば、それはノーでしょう。相変わらず街の治安は悪いし、政治も安定していない。しかしアパルトヘイトの時代の方が良かったかと言えばそれは違う。

 この映画は、アパルトヘイトを終わりにした最も有力な黒人指導者と、その看守の物語です。この映画を見ながら、殆ど四半世紀ぶりに近くサッカーのワールドカップをするこの国に行ってみたいと思いました。


2008年04月05日(土曜日)

 (23:59)デパートの経営統合としては伊勢丹と三越のそれは非常に大きい。何せ売上高が1兆5000億を超えるし、ともに名門ながら正反対の特徴を持つ存在同士の合体。一体何が変わるのか、と。

伊勢丹の虎屋で買ったドラちゃんの刻印  これはあちこちで言っているのですが、伊勢丹と三越を現場の差異で見ると、顧客層が全く違う。三越の本店に行くと、正面左側の車寄せに次々に高級車が寄せる。主な顧客は飛び抜けた富裕層です。また三越は都内などの主立ったホテルで、親密顧客を招いたお得意様会を繰り返し開いている。そこに集まる人達を見ていると、10年先はどうなんだい、という感じ。

 一方の伊勢丹には、そういう車寄せはない。ともに外商はあるのでしょうが、伊勢丹はどちらかというと新興的な富裕層や、ファッションにうるさいプチ・リッチ層が顧客のように思える。殆どの人が、自分で車を運転するか、タクシーか、電車で身分で来る。

 三越の日本橋店と伊勢丹のメンズ館の顧客を比べると、平均年齢は目の子で20才は違う。三越の本店で「この人のファッションは参考になる」と思える人は少ないが、伊勢丹のメンズには結構面白い顧客が居る。店員も面白い。勢いは伊勢丹にあるが、しかし伊勢丹は新宿がすべて。対して三越は全国に店がある。しかし、全体的には市場の変化について行けてない。特に地方が厳しい。

 「何が変わるんだろう」「何を変えるんだろう」と思っているのですが、土曜日に伊勢丹を一応回った印象では、写真の虎屋のドラちゃん程度です。変わったのは。あと社内のあちこちに、「合体しました」と張り紙などがある。しかしメンズ館のある店員さんは、「メンズ館に関しては、当面大きな変化はないのでは」と。

 まあそうなんでしょうね。お互いに個性があるのだから、それを殺してはいけない。その個性がうまく溶け合うように出来る店舗ではそれをする、ということでしょう。それは仕入れシステムの効率化、品揃えでの目利きの発揮、売り方の研究などかもしれない。

 詳しい計画は知らないのですが、三越は直近では銀座店を改装するらしい。日本橋ではなく銀座ですから、また銀座には伊勢丹がないが故に、ここは経営統合の成果を売り出せる。誰をターゲットにし、何を揃え、どう売るのか。だいたいのものが揃っている顧客に一体何をまた買わせるのか。

 近い将来の計画としては、三越は大阪駅のところにも出店するらしい。伊勢丹は京都にはあり、今は存在感を高めているが、大阪にはない。ということは、三越の大阪店にも伊勢丹のテーストがどの程度入るのか、それが楽しみ。

 阪急のメンズ館も難波の丸井もどう見ても伊勢丹のメンズ館を意識して作っている。そこに本家本元のテーストを持った三越伊勢丹が入ってくるわけで、大阪のデパート地図が大きく変わる可能性もある。

 三越と伊勢丹の統合が目に見える変化をもたらすのは、まだちょっと時間がかかるということでしょう。


2008年04月04日(金曜日)

 (15:59)ははは、最近はピアノが頻繁に登場する映画が多い。題名も「戦場の」、そして「船上の」と。原題は違うのでしょうが。

 邦題には「ピアノ」が入っていないものの、ピアノが頻繁に登場する映画を見ました。ラフマニノフ ある愛の調べです。初めてだったと思うのですが、ミッドタウンタワーの34階のギャガの試写室で。

 映画は監督が「ラフマニノフの人生を解釈して」作った、と言っている。だから史実かどうかは必ずしも問わないし、「解釈」だから実際には違ったこともあるだろう。しかし、大枠では彼の人生を彩った人が出てくるという設定。

 その上で見ているのだが、なかなか映画の作りも面白かった。当時のフィルムも随所に織り込んで、時代が行ったり来たりしながら映画は進行する。天才の名前に相応しいのか、予想外というかかなり壮絶な時代を、壮絶に生きた人として描かれている。ロシア革命・亡命を挟んだ人生ですから壮絶になるのも当然と言えば当然ですが。

 ちょっと暗い感じがする映画ですが、あれだけ作曲に悩んでいたというのは知りませんでした。天才なのですらすらだと思ったら違うのです。日本にもラフマニノフのファンは多い。そういう人達には一つの参考になる映画なのではないでしょうか。


2008年04月03日(木曜日)

 (15:59)ははは、今年は沖縄で年越し・新年を迎えたので、沖縄の高校がここまで来るとなんとはなしに応援していまいます。波照間なんていう固有名詞(選手の名前ですかね)を聞くとなおさらです。あの寂しい島を思い出して、「あそこから来ているのか」(少なくとも先祖は)と思ったりする。

 2点リードされて迎えた8回の裏はノーアウトでランナーがでたものの、あとの二人の打者はランナーを進めただけ。終わったかと思ったらニコニコした顔をした選手が出てきて真で捉えた打球を続けた。4点目の三振振り逃げはだめ押しですな。

 ニコニコした顔で思い出したが、5連敗のジャイアンツの選手の顔に見えるのは「おびえ」です。負け続けて出てきたおびえもあるが、またまた批判を浴びるような大型補強をしたことで出てきたおびえもある。

 何かというと、これはアメリカのチームで言うとヤンキースにも言えることなのですが、あまり強力な補強をすると周囲はそのチームが勝つことを当然視するようになる。今年のジャイアンツがそうです。そうすると選手の心理状態がどうなるかというと、逆に勝てなかったときの事を考え、それにおびえる。それを乗り越えるにはスタートよくダッシュすることだと思うが、巨人は選手を取られたヤクルトと開幕戦だったことから躓いた。

 そりゃ、ヤクルトは燃えますよ。特に「残された」形の選手は。「4番とエース取られたら、ヤクルトは弱いよ」と皆に言われて、いい気分でいられるヤクルト選手はいない。監督より選手が燃えていたと思う。にもかかわらず、ジャイアンツはエースをヤクルト戦に送らなかった。一方ジャイアンツの選手は、「負けたらまずいな」と思いながらヤクルト戦に入った。

 楽天が4連敗のあと6連勝したのは、あの4連敗が「あと一歩」だったことで、逆に選手が燃えたのだと思う。ドミンゴで連敗したようなものなので、そこさえ手術すれば楽天は盛り上がる要素があった。今の巨人にはそのきっかけさえないように見える。まあ、いつか勝つでしょうが。

 今朝のスポーツ面のコラムでは、日経にあった豊田さんのそれが良かったな。「禍福はあざなえる縄のごとし」。しかし、変な補強をすると縄がブツブツ切れるような気がする。阪神は縄を強くする補強が最近はうまい。楽天は連敗のあと縄を編み直した。さて、ジャイアンツは。

 今朝テレビ朝日に行く前に4チャンネルを見たら、ジャイアンツの選手が「プロ野球 2008」とか言っていた。今日は勝たないと相当世の中うるさくなるような.....。


2008年04月03日(木曜日)

 (04:59)ベア・スターズの破綻→身売り(日本時間の3月17日)以降初めてのバーナンキFRB議長の議会証言は、二つの点で面白い。第一は、「アメリカは既にリセッションに入っている」との見方が民間では強い中で、「今はまだ少しだが拡大していて、今後少しのマイナス成長になる可能性」を示唆したが、その後の回復には自信を示したこと。第二は、金融機関の救済基準の変更。

 バーナンキの議会証言の全文はここにアップされているが、このサイトでは証言した後に議員とやり取りしている分が分からない。しかしウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズなどを読む限り、Q&Aで特に重要な話はしていないようです。

 今回の証言に対する印象(FRBの今後の金融政策)は、「やはりインフレを警戒している。既に緩和はかなり十分にやったというのがFRBの判断であり、市場が期待しているほどには今後は利下げをしてこないかもしれない」というものだ。

 まず米経済をどう見ているか。証言のこの部分がバーナンキの見立てを凝縮していてくれる。

Overall, the near-term economic outlook has weakened relative to the projections released by the Federal Open Market Committee (FOMC) at the end of January. It now appears likely that real gross domestic product (GDP) will not grow much, if at all, over the first half of 2008 and could even contract slightly. We expect economic activity to strengthen in the second half of the year, in part as the result of stimulative monetary and fiscal policies; and growth is expected to proceed at or a little above its sustainable pace in 2009, bolstered by a stabilization of housing activity, albeit at low levels, and gradually improving financial conditions. However, in light of the recent turbulence in financial markets, the uncertainty attending this forecast is quite high and the risks remain to the downside.
 今回の証言に対するマスコミ報道を見ていると、彼らが注目したのは赤くした部分だ。特に「could even contract slightly」。しかし筆者が注目するのは、このパラの最後でも「the uncertainty attending this forecast is quite high and the risks remain to the downside」とリスクの方向性は景気ダウンだとしながらも、一端低成長になった後のアメリカ経済が下期から来年にかけてむしろ成長するとした彼の自信である。

 今の危機が去った後のアメリカ経済に対する自信の根拠については、バーナンキは次の点を指摘している。

  1. 水準は低くても、住宅市場が安定する
  2. 金融市場が安定化する
 の二つだ。まあ5月か6月には戻し税が全米の国民に届くので、そういう財政面での刺激も加わるという見通しもあるのだろう。彼のアメリカ経済に対する自信は、証言の一番最後にも出てくる。
Clearly, the U.S. economy is going through a very difficult period. But among the great strengths of our economy is its ability to adapt and to respond to diverse challenges. Much necessary economic and financial adjustment has already taken place, and monetary and fiscal policies are in train that should support a return to growth in the second half of this year and next year. I remain confident in our economy’s long-term prospects.
 つまり彼はそうは言っていないが、「アメリカ経済はV字回復する」と言っているように私には見える。少なくともマーケットの一部にあるL字とは考えていないのだろう。バーナンキがこう指摘するということは、「もうかなり十分やった」という指摘と合わせて考えると、「今後はあまり利下げしなくて良いと考えている」と考えられる。

 私の印象では、バーナンキのインフレに対する指摘は分量が増えている。彼は以下のように述べる。

Inflation has also been a source of concern. The price index for personal consumption expenditures rose 3.4 percent over the twelve months ending in February, up from 2.3 percent over the preceding twelve-month period. To a large extent, this pickup in inflation has been the result of sharp increases in the prices of crude oil, agricultural products, and other globally traded commodities. Additionally, the decline in the foreign exchange value of the dollar has boosted some non-commodity import prices and thus contributed to inflation. However, the so-called core rate of inflation--that is, inflation excluding food and energy prices--has edged down recently after firming somewhat late last year.

We expect inflation to moderate in coming quarters. That expectation is based, in part, on futures markets’ indications of a leveling out of prices for oil and other commodities, and it is consistent with our projection that global growth--and thus the demand for commodities--will slow somewhat during this period. And, as I noted, we project an easing of pressures on resource utilization. However, some indicators of inflation expectations have risen, and, overall, uncertainty about the inflation outlook has increased. It will be necessary to continue to monitor inflation developments carefully in the months ahead.

 バーナンキは今まではインフレの先行きに対して楽観的だった。急激に利下げした過程では、「インフレが心配」などとは言えない。それは今までの利下げを推し進めたFOMCの声明にも見られた。しかし今回はちょっと違う。インフレ要因に「ドル安」を指摘したのに加えて、「uncertainty about the inflation outlook has increased. It will be necessary to continue to monitor inflation developments carefully in the months ahead. 」と述べた。

 「monitor〜〜〜carefully」というフレーズは良く出てくる。正直はっきり覚えていないが、バーナンキがインフレに対してこのフレーズを使った記憶にあまりない。ということは、景気のV字的な回復見通しと合わせてのインフレ懸念.....ということで、今後の利下げペースはかなり鈍化する、ということではないか。

 もうひとつ筆者が興味を持ったのは、なぜ証券会社であるベア・スターンズを救済したかに関するバーナンキの考え方である。当然モラル・ハザード批判がある。バーナンキはそれに対して、「extremely complex and interconnected」という単語を使っている。

Our financial system is extremely complex and interconnected, and Bear Stearns participated extensively in a range of critical markets. With financial conditions fragile, the sudden failure of Bear Stearns likely would have led to a chaotic unwinding of positions in those markets and could have severely shaken confidence. The company’s failure could also have cast doubt on the financial positions of some of Bear Stearns’ thousands of counterparties and perhaps of companies with similar businesses. Given the current exceptional pressures on the global economy and financial system, the damage caused by a default by Bear Stearns could have been severe and extremely difficult to contain. Moreover, the adverse effects would not have been confined to the financial system but would have been felt broadly in the real economy through its effects on asset values and credit availability. To prevent a disorderly failure of Bear Stearns and the unpredictable but likely severe consequences of such a failure for market functioning and the broader economy, the Federal Reserve, in close consultation with the Treasury Department, agreed to provide funding to Bear Stearns through JPMorgan Chase. Over the following weekend, JPMorgan Chase agreed to purchase Bear Stearns and assumed Bear’s financial obligations.
 わたしはある意味でこれはアメリカの金融行政、特に金融機関の救済に関する目安の大きな転換だと思う。今までは良く「too big to fail」と言われた。「大きすぎて潰せない」だ。もちろんベア・スターンズは小さくはないが、バーナンキが指摘しているのはベアがアメリカの金融市場で他の機関と「極めて複雑に、かつ相互連動している」という理由だ。3月の18日にも指摘しましたが、ここで使われたキーワードは「interconnected」です。

 ということは今回は証券会社だったが、例えばヘッジファンドでもその倒産が「too interconnected」だったら救済する、それに類似した行為をするということです。今後の利下げ抑制と金融機関救済基準の変更。そういう意味では、今回のバーナンキ証言は面白い。


2008年04月02日(水曜日)

 (17:59)東京に向かう前に、淀屋橋から遠くない戸田商店さんに寄って、お茶を一服頂戴いたしました。戸田さんとはひょんなことから知り合い、最近はたまに何人かで食事もしている。

 いいですね、お茶室は。この写真ではちょっと明るく写っているのですが、実際には光の取り入れ方を変えたとしても、抑え気味の明るさ。しかも写真では奥行きが分からないのですが、狭い。その狭さがそこにいる人間と人間の関係を際だたせ、そしてまたお道具の存在感を高める。

 昔のお侍は間が板張りだったこともあって、胡座をかいてお茶を頂いたそうですが、畳の間が主流の今のお茶室では、ついいただくときは正座してしまいます。あの正座してお茶をいただいているという感覚がいい。戦前はお茶室が三つもあったらしいのですが、取り壊し命令でなくなって、以前は物置のように使っていた今の茶室だけが残ったとか。

 また機会があったら行きたいと。400年も前に作られた織部も一つ見せてもらいましたが、日本のお道具の非対称性が非常に良くできていて、感心しました。自分では欲しいとは思いませんが、日本のどこかに残っていて欲しいと思うものです。


2008年04月01日(火曜日)

 (10:59)エイプリルフールはもうあまり流行らないのですが、ずっと懲りずに続けている新聞がある。東京新聞で、むろん全紙面ではなく「こちら特報部」。今日も「どうだろう」と読んでみました。

 一番面白いのは「日本にオバマ氏異母弟」かな。写真まであって、商社に勤めているとのこと。その経緯がなかなか凝っている。「ありえるかも」という筋書きになっている。あとの記事やエッセイは「理解しよう」と読み進まないとなかなか頭に入ってこない。まあでもいつまでも続けて欲しい企画です。

 現実に戻ると、3月調査分の短観は悪かった。予想よりという意味もあるし、実数として前回よりも8ポイントも大企業の景況感が悪化した点が重要です。今まで景況感が一番良かったのは大企業だから、そこでも悪くなったのは注目すべきです。設備投資も弱い。

 これから高まるのは、世界中の景気が悪化する中で日本でも利下げ論でしょうか。円高対策の側面もある。しかしそこには難しい問題が出てきている。物価の上昇傾向です。日本でも今日から小麦の政府販売価格が30%も上がった。

 日本ではあまり報じられていないのですが、アジアのニュースを注意深く聞いていると、「米不足」が深刻化しているようです。先日見たFTには「米相場が30%近く上昇→アジアで社会不安も」という記事があった。輸出できる国が著しく減少している。小麦などと同じ状況です。

 世界的なモノの値段の上昇と景気悪化の共存。一年前の世界がどうだったかを振り返ると、その変化の急激なことには驚く。



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