2008年07月31日(木曜日)

 (14:31)いろいろな人と話をしていると面白い。まず大阪の「昭和38年に高校を卒業して電気工事の仕事についた」という今はタクシーの運転手さん。

 初任給は12000円だったそうです。そこから寮費を3000円引かれて、手取りが9000円。しかし就職したから必要だといわれて比較的安い背広を買ったらそれが15000円。1000円の15回払いにしたら、秋になって「今度は冬物が必要」ということでまた15000円で背広を買ったのだそうです。ということは、二つのローンが重なったときには12000円の給料から確実に5000円は取られていた。

 なぜこんなことを書くかというと、頭の中で「ベトナムとの比較」をしているからです。ベトナムの高校を出た人の初任給が今は最低6000円くらい。数年働いてやっと10000万円。為替レートの問題があるのですが、今のベトナムの人たちの給与水準は、日本の戦後の何時ぐらいだろうか、と考えていて、このタクシーの運転手さんの話が面白かったのです。リアルで。うーん、今のベトナムの一般労働者の所得は、日本の昭和35年前後かな、と。

 その当時の日本が凄かったのは、黙っていても「人出不足」や「急激な経済成長」もあって毎年のように大幅な給与の上昇があったこと。例えば以前調べたが、昭和38年くらいから48年くらいの間に、日本人の初任給は確実に3倍にはなっている。全体の所得もそうなんでしょう。池田首相の所得倍増論は何時でしたっけ。その後も上昇ペースは速かった。恐らく15万円くらいまでは。その後はあまり上がっていない。

 そのタクシーの運転手さんは「その後は会社を変えるたびに給料は上がって、一時は月給40万円近くまで行った」と。駄目になったのは「NTTになってからだ」と。光回線とかが出てきて、一本で今までの回線の何本分もの情報を流せるようになったら、「もう工事は減ったんですよ」と。つまり電電公社のころは良かったということでしょう。「工事がなくなったんですよ」と。それでタクシーに移ったと。

 移ってしばらくは、「毎月の手取りが50万近くあったことも」と。1980年代の後半だと思う。我々がタクシーの乗るときに、「近くだと嫌な顔をされるのでは」と恐れながら乗った頃です。それも昔。それが今はどんなに頑張っても「23万くらいですかね」と寂しそう。そこで目的地に着いてしまいました。

 次は行き付けのお好み焼き屋さん。大阪なのに広島焼で店を運営しているのですが、私の顔を見るなり、「もう全部上がって困っているんですよ.....」と。マヨネーズ、玉子、野菜、小麦粉などなど。そう言われるとそうですね。「お好み焼きは庶民の味方なのに....」とご主人。

 お好み焼き屋の焼きそばが好きな私は、「麺も上がっているのだろうな」と思いながら、「うーん」てなもんですな。にもかかわらず、この店はまだ一回も値上げしていない。同じように豚肉さんは以前通りに使って。でもそのご主人が、「そろそろヤバイかと思って居るんですよ....」と。「うーん」。心で頑張って....とエールを送り、ちょっと腹が膨れるかなと思いながら、「じゃ、餃子も」と言ってしまった....私。資源高は世の中のプライスリストの改訂をやむなしとする。

 家電量販店に就職した先輩の話。「新宿の店には良く行きますよ」と言ったら、「とにかく凄いんだよ。あそこの店長はまだ30になったばかりで.....」と。大きな店なんですよ。あの大きな店を仕切るのが30歳ちょっとの若者かよ....と仰天していたら、まあ店で働く人の平均年齢は「26か27ですから」と。

 そこで私が、興味あるのは「彼らが年を取っていったらどうなるのですか」と聞いたら、「それは僕も興味ある」と逃げられてしまった。「関連会社も多いよ」とも。しかし予想通り、「勉強、勉強」なんだそうです。私が「日本の家電量販店の最大の売りは、商品知識です」と言ったら、それはそれは勉強しているのだそうです。「店長でも通路のゴミが落ちていたら直ぐ拾うんだよ....」と。

 家電量販店の業界も変化が激しい。私が知っている限りでは、ヤマダが新橋駅の銀座サイドに店を作っている。もう出来たのかな。汐留サイドです。車がころがせなくなって、店が再び「都心へ」の動き。ということは、都心の価値はまたいつか上がってくる可能性が高い。


2008年07月30日(水曜日)

 (00:31)月曜日にはワシントンのホテルで、ポール・ボルカー、ウォーレン・バフェット、ロバート・ルービン、ラリー・サマーズ、それにエリック・シュミットなどをメンバーとするパネルを開催し、そして火曜日にはバーナンキと会い、ポールソンと電話で話をし......。

 民主党のオバマ上院議員の動きが激しい。そしてそれは目を引く。先週は10日間もヨーロッパに行って、英独仏など主要国の首脳と会談、そして帰ってきたら名だたる民主党系の有力者、それに現職の経済閣僚や中銀総裁と会談。これじゃマケインが陰に隠れるわけです。マケイン自身が、「マスコミの報道がオバマに偏っている」と文句を言っているようですが。

 アメリカの主要な役割を担う人は、大部分が大統領指名です。FRB議長もむろんそう。バーナンキも例外ではない。議長の任期は4年で、現在の任期は2010年1月まで。その後は次の大統領の任命次第。

 では、オバマとバーナンキの関係はどうか。ウォール・ストリート・ジャーナルにはこの点に関して

 Sen. Obama has been generally supportive of the Republican-appointed Mr. Bernanke. "I think that Chairman Bernanke was handed a pretty tough hand and I think some of the decisions he's made have been the right ones," Sen. Obama told Reuters on Sunday.
 という文章がある。前任のグリーンスパンは、共和党の大統領に任命されたものの、その後ずっと民主党の大統領にも気に入られて議長の職にとどまった。今の状態だとバーナンキもそのような議長になる可能性がある、ということでしょうか。

 サルコジはオバマの肩を抱いて共同記者会見を開き(これには批判も米仏両国で強い)、オバマはメルケルとも親しく話をし、そしてブラウンにも会った。今週はパキスタンの首相にも会うそうだ。エリック・シュミットというのはグーグルの会長です。

 しかし先日CNNを見ていたら、ジョージ・ウイルが「あれだけヨーロッパで注目を浴びたのに、オバマ支持率アップの調査は出ていない」と。保守系論客であるジョージはオバマに冷たい言い方だった。彼は「オバマ支持率は、民主党支持率を数%下回っている」とも述べていた。

 8月になると党大会も開かれる。まだまだ本選挙は11月です。まだいろいろある。しかし今までのところ広報戦略としてはオバマが勝っている。問題は「あれこれやっている」という印象が、投票者に好印象を持たれるかどうかでしょう。マケインはちょっと戦略を変えないと今のままでは「どこにいるのか」という感じ。

 彼の副大統領候補の中にはHPの元会長である女性経営者のフィオリーナが入っているようで、私は面白いと思うのですが、共和党の保守派からはどう思われるのか。そろそろ米大統領選挙が面白い。


2008年07月29日(火曜日)

 (23:31)夏休みも本番に入ったからでしょうか。駅回りなどにそれこそ「君たち、どこから出てきたの」というくらい大勢の子供がいる。みんなリュックを背負って。

 ははは、いい光景ですな。いつもは東京駅なんてのは黒っぽいスーツやジャケットのおっちゃんばかり。女性の数さえ比較的少ない。特に新幹線ホームは。そこに大量の子供の進出。ベトナムに行ったら山ほど子供が居た。インドもそうです。やはり子供がある程度いないと、「この国はどうなっているのか」と思ってしまう。子供がいることこそ普通です。

 映画館も子供仕様になっているのですが、そうした中で久しぶりにインディ・ジョーンズ「クリスタル・スカル」を見ました。南米の文明に関連させたシリーズの最新作。ハリソン・フォードもちょっと歳を取った印象。

 はっきり言って、あちこちにデジャブが出てくる。この人物は最後はこうなるだろう、といった予測も出来る。そしてその通り進展する。しかしそれはそれで予定調和のようなもので、このシリーズはそういうものだと思って見れば良い。

 まあまあ映画的にはスカッとする。相変わらず笑えるシーンもあるし、ナスカの地上絵の使い方などもうまい。滝を三回も落ちるのは非現実的ですが、それも映画的許容範囲の中か。うーん、今はどんな映画が良いんでしょうか。そう言えば、ネットを見ていたら韓流映画はいま大不調だそうで、今の韓国では「なぜ」の論争が起こっているとか。

 もう一冊本を紹介します。『「心の傷」は言ったもん勝ち』です。新幹線の中で読んだのですが、複雑な問題を扱っているのですが、非常に痛快、かつ非常に面白い。日頃心につっかえていることを端的に言っていてくれている部分もある。

 参考になるし興味深いと思える表現も多い。

 「エセ被害者」
 「被害者帝国主義の時代」
 「病名が患者を増やす」
 「心療内科」
 「辺縁を生かす」

 など。犯罪被害者の遺族の権利は忘れられていることが多いのに、今の日本では「心の傷を負わされた」と主張すると、直ちに優位に立てる状況があるとこの本は書く。「それでもやっていない」と主張しても、なかなか認められない。ちょっと行き過ぎだと思える状況がある状態をこの筆者は「被害者帝国主義」と呼ぶのです。

 読んでいて、「ではそういう状況に対処する有効な手だては.....」と期待が高まるのですが、この本はそうした状況は「困ったことだ」で終わっている。「現代の潮流」であるとして。この点はちょっとがっかり。

 まあその代わりと言ってはなんですが、この本は第7章で「精神力を鍛えよう」という章を設けて、現代に生きる人間全般に対して「強くなる方法」を伝授している。まあこの7章にある7つの方法が生きる人全般には有効であるとしても、最初の数章で「そうだそうだ」「そういうリスクを避けるにはどうしたらよいのか」と考えた人には肩すかしです。まあでもそれも「現代の潮流」だから結局一人一人が気を付けなければならない、ということでしょう。簡単に時代は戻らない。

 最後に肩すかしをくらいますが、「にもかかわらず」(カッコしたのには意味あり)面白い本です


2008年07月29日(火曜日)

 (09:31)久しぶりに本の紹介を。「頭痛のタネは新入社員」という新潮社の本です。就職する人が今では誰でも通過する、お世話になっていると言われるリクナビ関連媒体の編集長だった前川さんが、優しい言葉で書いている本です。

 私が盛んに新入社員と対面したのは、平成10年卒くらいまでの連中ですからもうかなり前ですが、当時でもいろいろ変わった奴が居たのですが、ここ数年でもっとも驚いたのはある出版社の私の担当だった若者。大学を出たばかりで仕事も出来た。ところがその彼が、理由が何だったのか知らないのですが、突然失踪した。出版社からです。

 出版社の上の人も「理由は全く分からない...」と。しばらくして見つかったのですが、どこか中央線の沿線のパチンコ屋さんで働いているのが見つかったというのです。今もって彼が何を考えて突然職を変えたのかは不明で、「まあ自分探しをしていたのだろう」と考えることにしているのですが、ずっと気になっている。

 この本を読むと、「卒業時の環境」が非常に大きなインパクトを新入社員に与えると分かる。全体的に楽観的なのか、悲観的なのか。就職があまり厳しいと、学生は社会に対して悲観的に、引っ込み思案になる。逆なら一生楽観的に過ごす可能性もある。まあこれは人によるのと、多少運の面もある。

 まあでもどうなんでしょうかね。既に社会で何年かを過ごした人間にとっては、新入社員なんてのはいつでも「不可思議体」なんですよ。いつも少し自分達と違う。育った環境が違うのだからそうでしょう。時代がこれだけ変化しているのだから、人間も変わっていくる。

 帯の見出しが「えっ!? もう辞めるの?」で、裏側を見ると対応策もある。

  1. 憧れの「ヒーロー社員」を創る
  2. 0.1段でも「階段」を上らせる
  3. 「お前はどうしたいの?」で話させる
  4. 上司は職場をぶらぶらすべし
 一冊読むのにあまり時間は必要ない。電車に乗っている間にサラッと読めます。


2008年07月27日(日曜日)

 (06:31)ちょっと紹介が遅れましたが、二週間に一回書いているエッセイ最新バージョンがアップされました。27回ということは、始めて一年がたつということです。しばらくはベトナムを取り上げる予定。

 それにしても相変わらず暑い夏の週末でした。移動が多くて金曜日の昼には講演で新潟に行き、土曜日は長野県の松代、そして日曜日は大阪往復。何でこんな日程になってしまったのだろう、と思っても遅い。でも終わってみるとそれほどせわしくもなかった。

 涼しかったのは金曜日の新潟だけで、あとはうだるような暑さ。ははは、まあ夏は何時でも暑い。新潟が例外なだけでした。実は新潟は10年ぶりくらいですか。大学時代に同じ下宿で過ごした鈴木君とかが登場して、面白かった。

象山口で。ここから中に入ると直ぐに涼しくなる  本当かどうか知りませんが、新潟でお会いした人達の説明によると、新潟はある時点では江戸の人口を上回っていた時期もあったそうです。米が最大の産業だった江戸時代だからでしょうか。新潟ではもう一つ面白い話を聞いて、何故か新潟出身の人は東京に出て風呂屋をやるケースが多いと。「何故か」はそう言った人にとっても不明だそうです。意外だったのは、私は新潟のお酒では鄙願(ひがん)が好きなのですが、新潟ではあまり有名ではない、というか手に入らないのだそうな。

 長野県の松代には親戚一同で法事のついでに。「松代」と聞いた瞬間から松代大本営の跡を見たいと思っていたのですが、ツアーの一環に加えられていて「これはラッキー」と。ウィキベディアの記事にある通り、日本軍が終戦の一年前くらいから作った避難指揮所です。

 象山の口から入れると分かったので、実際にそこから松代大本営の地下道に入ってみました。首都・東京が陥落するような事態に備えて、天皇陛下に移って頂くことも念頭に作ったと言われる。公開されているのはその一部だし、経年劣化が激しいので「ヘルメット着用」が一応のルール。中に20メートルも入ると凄く涼しい。外の暑さが嘘のようでした。作るに当たっては徴用とか強制労働とかがあったようです。

 27日の大阪はただ暑いだけでしたが、まあ大阪には毎週一回は行っているので慣れている。いろいろな方に会えたのが良かった。


2008年07月25日(金曜日)

 (05:31)日経CNBCのインド特番に関しては数日前に少し書きましたが、放送予定は以下の通りです。まあ一応本まで書いているので、CNBCの看板女性アンカーが実際にインドを訪問して作っているのですが、私が番組の前後7分くらいにちょっとした日本語の解説を付けています。

 同じドキュメンタリーでも本当に作り方が違う。日米のドキュメンタリーの作り方の違いを見て頂くのも楽しいかも知れない。内容は多岐にわたり面白い。いろいろ思い出して懐かしかった。

 放送予定は以下の通りです。

7/25(金) 20:30〜21:30
7/26(土) 19:00〜20:00
7/27(日) 16:00〜17:00、24:00〜25:00
8/02(土) 19:00〜20:00、23:00〜24:00
8/03(日) 11:00〜12:00、20:00〜21:00
8/12(火) 24:20〜25:20


2008年07月24日(木曜日)

 (20:31)それにしても、どえらいラジオ番組があるものです。どの番組ってスタンバイの事ですが、「ACE」が続発。「ACE」とは「1」で、つまりホールインワンのこと。

 つい最近です。プロデューサーの藤井君が何とハワイで「ACE」を出した。その前は、スタンバイのコンペでも出た。と思ったら、今度は番組のメーンキャスターである森本毅郎さんが行き付けのゴルフ場でついに実現。120ヤードをピッチングで打って、「ピンそばだ」と思ったら、「入っちゃったんだ」というのが説明。ええですな。僕も遠藤さんもACEをやりたい。

 ゴルフをやる人なら誰でも羨ましい偉業の実現にもかかわらず、「コンペでなかったから仲間がいなかったので寂しかった」(知らないご夫妻とのラウンドだったそうです)とかいろいろおっしゃる。まあそりゃそうなんでしょうが、「ACEを一回やった」というのが私など重要だと思うのですが。

 藤井君は単なる報告と自慢話だけだったと記憶しているが、さすがに森本さんは木曜日夜に大規模な人間を自費で招いての赤坂でのパーティー。集ったゴルファーの気持ちは、「おめでとう」と「羨ましいな」「ご馳走様」の複雑な心境。パーティー後にちょっと4人組もやったのですが、そこでも勝っておられたな。ははは。「緑一色」とか「ちゅうーれん」など恐ろしい手は出来ませんでしたが。

 それにしても、同時間帯の抜群の聴取率を誇るTBS954の「森本毅郎スタンバイ」ですが、ACE続発の勢いから見てもまだまだいきまっせ。


2008年07月24日(木曜日)

 (00:31)緊急地震速報と実際の地震の差を初めて感じました。午前0時30分前だったと思ったのですが、NHKを見ていたら突然「緊急地震速報」が画面に出てきて、その時に「へえ」と思って見ていたら東北・北海道地方とあって、しばらくしたら東京でもかなり長く、大きく揺れた。

 地震速報と実際の地震の間の時差は、正確に計っていないので分からないのですが、10数秒から20秒という感じでしょうか。東京は震源地から遠かった。その分だけ速報と実際の地震の間に時間があったということでしょう。

 「へえ」と見ていてはいけなかったのですが、一応気分は「では何をするか」にあったのですが、その前に「東北・北海道地方」と出たので気分が緩んでしまったのかも知れない。

 今NHKの報道を見ていると、結構大きい。「6」が結構あって、「5」も多い。最近東北地方は地震が多い。被害がなければ良いのですが、夜中なので視認が出来ない。明日の朝でしょうか、詳細が分かるのは。


2008年07月22日(火曜日)

 (00:59)先週金曜日のこのポッドキャスト番組で、私の身の回りではまだ持っている人も少ない iphone に関して、「もう持っている人、使っている人は感想をお寄せ下さい」と番組の最後に呼び掛けたら、この3連休の間に局や私のところにいっぱいメールをいただきました。有り難うございました。「持っている人は持っているんだ」と思った次第。

 確か番組では、早く手に取って使ってみたいのだが、以下のような問題点があるようだ、と述べたのです。それらを中心に様々なご意見をいただいた。問題点とは確か

  1. 電車やバスの乗り降りやコンビニで便利なフェリカが使えない
  2. 住所録の移行が簡単ではないと聞いている
  3. 爪ではマシンが反応しない
  4. ストラップを付ける穴がない
 などを挙げたと思います。私も iphoneに関して全くアイデアがないわけではない。ipod touch は持っていて、その中には曲と写真は相当入れているし、PCと繋ぐときには「同期」を毎回している。iphone の電話帳もそうなんでしょう。「iphone は基本的には ipod touch に電話とGPS、カメラとマイクとスピーカーを付けたもの」とのメールもいただいている。

 いただいたメールを読んでいると、意外な事実が明らかになってきました。それは

  1. 東京のソフトバンク表参道店などはテレビなどで報じられるほど入手が難しく大騒ぎになったのですが、地方都市の、しかも郊外のソフトバンク・ショップや量販店では比較的容易に、具体的には並ばずに入手可能だったし、一部の店舗では途中で打ちきりになったものの「予約」も受け付けていたようである

  2. 使い方次第でしょうが、既に使っている人の不満が一番多いのはバッテリーの問題で、機能が多い分だけ頻繁に使うと半日とかいう単位でパワーダウンしてしまう。「使っていないときは常に充電している」状態の人もいる(その一方でバリサンから落ちてからが持つという人も)

  3. パケット通信料金が非常に高いようです。それはiPhoneがパケ放題への強制加入が条件なためなようで、「入手していろいろ試していましたら、数日で数万円のパケット料金がかかっていました。mixiなどのコミュではすでに100万円の大台に乗った人もいるよう」という人もいる

  4. 「住所録の移行」に関しては、私もipod touchの操作で思い出したのですが、要するに「同期」できる状態にすれば良いと気がつかされた。うーん、これはちょっとマックでもwindows でもPCに詳しい人なら簡単です。しかしPCに不慣れな人には難しいかも知れない

  5. フェリカに関しては、「都会では頻繁に使うのでしょうが、田舎ではコンビニくらいで最初からあまり必要ない」との意見もあった。住んでいる状況次第という面はあるのでしょう

  6. ストラップの穴については、私はないとなくしそうで気になると言ったのですが、「今のままでもいい」という人が多いのに驚いた。「ジョブズの哲学だ」という意見も

  7. 日本語入力のスピードの遅さに辟易としている人が結構いた。あとメールの設定(最初は〜@i.softbank.jpというアドレス割当らしい)がなかなか難しいことに不満を述べている人もいた

  8. 幅広(約7センチ)に関しては、「気にしない」という人が多かったが、「入力する場合は両手が必要」という人が多かった。日本のケイタイは普通は入力も片手で可能です。爪の問題は、「ネイリストの爪の長い人でもうまく使っている」というメールを頂いた
 などでしょうか。従来の日本のケイタイ文化と違うなと思わせられる現象もいっぱいある。
 「mixiでみるとiPhoneのコミュニティーには数万人の登録がありますが、iPhoneの性格を良く表しているのはiPhoneのソフト開発者のコミュニティーに、既に1万人以上の登録があるということです。つまりiPhoneは単なる一つの製品ではなく、パソコンでもない、携帯でもない、新しいプラットフォームだということです。
 という「新しいプラットフォーム」というのは面白い、しかし的確な表現だと思いました。企業の中にはセキュリティーの高さを評価して業務に使い始めるところもあるようだ。メールを頂いた人の中にも業務用に使っていた「曲は一曲も入れていない。写真と動画」という方もいた。

 同じ感覚で、ワンセグなど直ちに対応が出来てくるのでしょう。「外付けが出たら買いたい」と言う人がいた。絵文字なども直ぐに対応が出来てくるのでしょう。総じて使っている人のプラスの意見は

 モバイルマシンに携帯電話が付いたとでも言いますか、電話よりWebの閲覧、GoogleMapを使ってのお店、場所の検索、さらにYouTubeの視聴、予定表(カレンダー)の管理など本当に多彩な機能があり、しかもこれまでの携帯電話では考えられないくらいに、簡単に操作でき、スムーズに動作 します
 といったところ。うーん、少なくとも数日は使ってみたいんですよね。一種の社会現象の背景には面白い背景、発想があるはずで。しかし、今だ入手の見込みは立っていません。19日に二回目の発売があったそうですが、所用で東京にいませんでしたので。楽しみにとっておきます。日本全国のいろいろなところから、様々な方に頂いたメールを頭に収めながら。


2008年07月21日(月曜日)

 (15:59)土曜日の夜に放送された「地球特派員 激変・ベトナム最前線」(NHKBS1)に関しては、多くの方からメールを頂いています。高校の同学年の友人(工場経営)を含めて、その分野でベトナムに行ったことがある日本人が多いことに驚いていますが、今日「46歳、都内在住の会社経営者」とおっしゃる倉木さんからいただいたメールは、今後のベトナムと日本、ASEANと日本を考える上で非常に考えさせられるメールだったので、このサイトで紹介させていただきます。

 倉木さんがおっしゃるとおり、今後のベトナムと日本との関係が多様で豊かなものになればと思うと同時に、ベトナムやASEANと日本との関係は刻々と変化していることを感じます。本人のご承認を頂きましたので、以下にアップします。メールの最後にあった住所などを見ると、既にご本人は気分的にもホーチミン市に住所を移していらっしているようです。実際は8月のようですが。

 はじめまして。いつもWebサイトやPodcastingを読んだり聞かせていただいております。伊藤さんの時代を先取りした解説に、常々感銘を受けております。私は現在46歳、都内在住の会社経営者です。IT系のコンサルティング、開発会社を経営しております。

 先日、NHKのBS1で放送された「地球特派員 激変・ベトナム最前線」を大変興味深く聴かせていただきました。と、申しますのも我が家のテレビは寿命のためかBSの映像を映すことができなくなってしまったため、大変残念だったのですが、音声だけを聴かせていただきました。それでも伊藤さんのWebサイトに掲載されたベトナムの写真を思い浮かべながら、十分聞きごたえのあるレポートでした。

 突然メールをお出ししましたのは、私はこの8月で現在の会社を営業譲渡し、ベトナムのホーチミン市で新たにシステム会社を設立する予定だからです。すでにホーチミン市での事務所契約も終え登記手続きも進んでおりますので、9月からは新会社での営業を開始できると思います。

 BS1のレポートにもありました通り、ベトナム人の勤勉さと労働賃金の低さは、オフショアビジネスを展開しようとする者にとっては大きな魅力です。台湾や中国の企業がこぞってベトナムに進出をしているのも、これらが最大の理由かと思います。私がこれから展開しようとするビジネスも、確かに、同様の側面があることは否めません。

 しかし、個人的にベトナムの若い技術者や経営者との交流を深め、彼らの考え方や将来の夢を聞くにつれ、低コスト、低賃金を武器にしてベトナムで企業を経営するのは、大変矛盾をした行為ではないかと思うようになりました。いずれベトナムも、中国やインドのように賃金水準が高くなるはずです。現在は年率平均10%程度の賃金上昇率ですから、10年間で倍増する計算となります。低コストを売りにしても、早晩、人件費が経営を圧迫するはずです。

 私はベトナムで起業する意味というものは、ごく当たり前のことですが、「技術力」であると思っています。確かにプロの目から見ると、ベトナムの IT技術者のレベルはまだまだ二流です。しかし欧米や日本の技術者に比べて、彼らのレベルが「月とすっぽん」であるかといえば、そうでもないように思います。基礎的な知識や新しい技術の習得力は決して劣っているとは思えません。、ベトナムではまだまだ最新の技術情報を簡単に入手することができず、また、解説書や技術書も書店で気軽に手に入る状況にはありません。つまり、情報量の差が発想力や応用力の差になっているだけなのです。

 ベトナムの若い技術者たちの真剣でひたむきな姿を目にしていると、彼らが一流をめざして努力を続ければ、いずれ世界に通用する技術者となって育ってくれるはずだと確信しています。かつてソニーやホンダの技術者たちが世界を目指したように、ベトナムの若い技術者たちがグローバルレベルでシステム開発ができるようになる日が来るはずです。

 突然のメールで、自分勝手な意見ばかり述べさせていただきましたが、ベトナムに関わる日本人として長期的な視野に立ってでこの国と関わっていきたいと思っています。今回は大変示唆に富んだレポートありがとうございました。今後も同様のレポートを期待しております。末筆ながらこれからの更なるご活躍を祈念しております。

(アップ承認いただいたときの追伸)
 ご返事をいただけるとは思っていなかったので大変驚きました。WEBサイトでご紹介いただけるとのこと、大変光栄です。

 システム業界では「オフショア開発=安かろう、悪かろう」のイメージが蔓延してしまっているため、そうではない会社を作ろうと思う人間もいるということが伝わればうれしく思います。

 駄文を重ねますが、私は1983年〜85年にかけて、インドのデリー大学に留学をしました。当時はジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代で、日本人であるだけでお金持ちだと羨望されたものでした。その時、私がお世話になっていた経営者(Nirula'sというレストラン&ホテルチェーンのオーナー)が、「いつまでも日本が世界経済のトップに居続けると思うとそれは誤りだ」という指摘をされました。なぜかと尋ねたところ、「昔に比べて若い日本人が真面目に一生懸命働くなくなってきている」というのが理由でした。25年経って、その予言がまさに的中していることに驚きを禁じ得ません。

 ベトナムへの進出を決断したのも、変化に押し流されるのではなく、先取りしていくことが日本のためにもなるのだという確信からです。いずれ ASEANは世界の主要経済圏のひとつに浮上してくるでしょう。すでに日本の相対的な地位は低下傾向にありますが、これからの日本が生き残っていくためには、積極的に諸外国との連携を進めながら、共に成長していくしかないように思われます。

 特にシステム業界のようなドメスティックなサービス産業は構造的に生産性が低く、慢性的な低収益構造にあえいでいます。GoogleやMicrosoft、Appleのような世界的なIT企業が日本から生まれてこないのも、下請け根性に慣らされてドメスティックな視点しかもたない企業経営者の責任が大きいのではないかと思います。

 ベトナムでは韓国、台湾、中国の企業進出が目立ちますが、日本企業の進出はバイクや繊維など一部製造企業を除いてまだまだだというのが実感です。伊藤さんのWEBサイトや今回の番組などを通じて、ベトナムや周辺諸国に対する日本人の関心が高まっていけば、ありがたいことだと実感しております。

 「ホーチミン市に再びご来越の機会がございましたらぜひご連絡をください」とあって、機会があったら是非お会いしたいと思いました。最初にメールをいただいた際には、私から以下のようなメールを差し上げました。「追伸」の前です。
  メール有り難うございます。

 ステレオタイプ的には「ベトナムは安く若い労働者が大勢」という
ことでしょうし、確かにそういう面もあるので番組でもそういう方向
が強く出てしまったと思うのですが、私もベトナムの民間企業が
スタートさせたFPT大学を一日取材して、「ベトナムのソフト力」に
感心しました。

 彼等は「インドとも戦える」と言って、英語圏を支配しインドに
対して「日本語で頑張る」という心意気でソフト産業を育てている姿
を見てきました。

 もともと「賢い」を言われている民族ですし、勤勉ですから
発想も豊かだと思います。ただし中国もそうですが、社会主義の国
ではどこか「自由な発想」を許さない社会的雰囲気があるのでは
ないかとちょっと心配しています。

 ホーチミンに会社を作られたこと。勇気が必要だったのでは
ないかと推察します。ぜひ頑張って下さい。

 非常に興味深いメールなので、良かったらサイトで紹介させて
頂ければと思っています。お返事を頂けたら幸いです。

 メール、有り難うございました。

 テレビのドキュメンタリーは、「1分相当分は、40分テープ一本」と言われています。つまり捨てられている映像が山ほどある。その中から選んで筋書きを付けられたもののに放送される、ということです。ベトナムの大手ソフト会社が「人材育成」の為に作ったFPT大学には実際に行ってかなり長い時間取材したのですが、残念ながら今回の放送では「はみ出し」で使われなかった。結構いいシーンもあったのですが。

 私と、一緒に取材したスタッフの間の記憶にだけ残ってしまった。取材された方も「協力したのに」という気持ちが残る。しかしいろいろな場面でこうして紹介できれば、番組で落ちた部分も拾えるのではないか、と思います。そういう意味で倉木さんのプロジェクトは、今のベトナムの雰囲気と合致している。


2008年07月20日(日曜日)

 (07:59)6月に10日弱行って取材したベトナムに関してやっと公開できる文章が書けましたので、以下の二つのサイトにアップします。前者はブログ形式のサイト、もう一つはHP形式のchatの一つの記事として。

 ちょっと長くなりましたが、思い入れがあったと言うことです。長いので、暇なときに徐々にお読みください。このベトナム取材に関しては、19日に夜10時10分からNHKBS1で放送された。再放送の予定は以下の通りです。

 BS1 7月27日(日)  15:10〜16:00
 BShi 8月 3日(月)  17:00〜17:50

 まとまった文章は、以下の2サイトにあります。

  1. 2008ベトナム、その魅力と危うさ
  2. 2008ベトナム、その魅力と危うさ


2008年07月19日(土曜日)

 (08:59)金曜日の夜は久しぶりに勉強会。もう20年以上続いている会ですが、一緒に始めた内田さんがタイに半移住してしまったり、幹事が我々から片山さん、さらには今の加島・高橋両氏になったり。変わったところは変わった。しかし昨日集まったメンバーを見て「コアは変わらないな」と改めて思った次第。

 昨日の講師は、勉強会の古くからのメンバーである出口さん。なんと日本で44番目のネットをもっぱらの経路とした新しい生命保険会社を作った。名前は「ライフネット生命保険会社」。今回はこの新しい生保の他の生保との考え方や仕組みの違い、その可能性を聞いた。

 この生保、非常に大きな特徴がある。

  1. 売っている商品は「定期死亡保険」と「終身医療保険」の2種類のみで、最近問題となっている特約は全くなし

  2. 支払い事由は「死亡」「入院」「手術」の三つに限定され、「不払い」など起きないような仕組みになっている

  3. 保険料は、働き盛りで一番保障が必要と思われる40代前半までは定期死亡保険なら業界最低水準(但し、無解約返戻金・無配当金)

  4. 契約はインターネットを介してメールを授受することにより問答を繰り返して詳細を告知し、加えて提出された健康診断書をもとに行われる

  5. 本人確認は免許証など本人確認書類を郵送により行う
 など。日本の保険会社にしては珍しく約款が事前に読めることなども特徴だという。話を聞いていて徹底して合理的な生保になっていると感じました。出資している企業はHPのトップの下の方に掲載されているが、三井物産とかセブンとか良く知られた会社が大手処として入っている。

 何よりも話を聞いて面白かったのは、今までの日本の生保がいかに割高な、かつ複雑な設計になっていたかという話です。特約などはもともと比較販売が出来ないように作られた面もあって、例えば生保の総合職の人でも覚えきれないほど複雑なものになっているという。これでは不払いが発生するわけです。

 ライフネットは混乱や不払いのもとになる特約を一切そぎ落とし、また日本の生保の従来の販売経路である保険販売員(”保険のおばちゃん”と多くの人が呼ぶ)も全く使っていないので、その分非常に安く商品設計が出来ている。社員は今でも出口さんを入れて50人くらいで、そのうち二人が保険商品設計には欠かせないアクチュアリー。

 「一番の悩みは何か」と聞いたら「知名度がないこと」ということで、まあそれは出来たばかりだから仕方がない。ネット生保だから、ネットで知名度が上がればいいのですが、それにはちょっと時間がかかる。話を聞いていて、非常に合理的、かつ従来の日本の生命保険会社に比べて抜きん出て安い。その点では、いつか人気が出る可能性が高いと思いました。

 出口さんは某大手生命保険会社の幹部だった。その頃から知っている。従来の日本の保険会社が抱える問題点、日本の生保業界の課題は大きい。その面で新会社はナイスなチャレンジだと思うし、出資した会社もこのネット生保の将来に賭けたのでしょう。

 またこれからの「スリムな生き方」が求められる時代には、時代の要請に合致した生保だと思う。HPには、見積もりページがあって、実に簡単に見積もりができる。これは便利です。私も色々な選択肢でやってみました。

 勉強会のメンバーから起業家が出てくるとはナイスじゃないですか。それが出口さんになるとは思っていませんでしたが。幹事の一人の加島君は博士になったし、まだまだこの勉強会は面白い。


2008年07月17日(木曜日)

 (21:59)今日の昼過ぎからでしたかね、渋谷の小さなスタジオで1時間ちょっとかけてナレーション入れをして、私としてはあさって7月19日(土曜日)の午後10時10分からNHKBS1で放送される「地球特派員 激変・ベトナム最前線」の為の仕事を全部終えました。

 私がベトナムに行っていた間のday by day を見た方は大部分が、「楽しそうだったじゃない」という反応でしたが、こちとら「そうでもなかった」という印象もある。なにせあの暑い国で、外を歩き回るのですから、そりゃ大変でもあったわけです。おかげでえらく焼けた。なかなか思うとおりの取材が出来なかったこともあって、そりゃ大変でもあったのです。

 しかしいつもそう思うのですが、せっかく仕事するなら楽しくしなきゃいかん、という私の哲学のようなものです。そういう考え方があるから、書くこともどちらかというと前向きになるし、「面白く思ったこと」中心になる。読んでいる方も、書いている人がどちらかと言えばワクワクとか、興味深く書いている感じの方がいいでしょう。

 ははは、最終的にどういう番組になるか楽しみ。我々の記憶にはまだベトナム戦争のベトナムが記憶にある。しかし時代は大きく変わって面白い、新しいベトナム、多くの可能性とリスクを抱えたベトナムが示せると思います。時間があったら是非見て下さい。放送が終わった頃に、私の取材ノートをベースにしたかなり長い文章もサイトに公開する予定です。

 それと今日はもう一本テレビ・ドキュメンタリーを見ました。こちらはDVDで。アメリカのCNBCが製作した「India Rising」という番組。英語のままでしたが、わかりやすい英語であまり苦労せずに理解できた。この2年ほどインドに行ってないので懐かしかった。懐かしついでに、二週間ほど前に会ったチャタルジーの新しいケイタイ電話番号に電話しました。ははは、元気そうだった。

 見ていて分かったのは、アメリカのドキュメンタリーと日本のドキュメンタリーの著しい違いです。NHKのドキュメンタリー番組にしばしば重きが置かれる「ため」(最初それがないと指摘されたな)がアメリカのドキュメンタリーにはほとんどない。少なくともCNBCのこの番組には。「くぃくぃ」と切り替わっていく感じ。

 私も2006年にインドに行って地球特派員をやりましたから、その時を思い出しながら「日米でこれほど違うのか」と思いながら見ていました。この「Rising India」は近く日経CNBCで日本語翻訳付きで放送される。ただ放映日時は聞いてありません。これも今のインドを理解する上で面白いと思う。


2008年07月17日(木曜日)

 (11:59)SECが検討している金融株(ファニーやフレディー、ゴールドマンを含む20弱の金融機関)に対する空売り規制には異論が出るだろうと思ったら、今朝のアメリカやイギリスの新聞の一番興味深い議論がこの問題に集まっている。SECは今回のような空売り規制を金融株に限らず、全市場に拡大適用することも検討しているようで、来週月曜日からの実施を前に議論は熱くなりそう。しかし発表したSECは発表通りの措置を実施に移すのでしょう。証券会社はそれに追われているという。

 SECの措置は、「(指定した金融株に対する)”naked” short selling を通じた非合法的な株価の操縦(unlawful manipulation)を阻止する」ことを狙ったもの。ここで言う”naked ”short selling という単語は昨日、今日の英字紙には頻繁に出てくるが、これは英語で説明すると「selling stock short without taking steps to borrow it」となり、つまり「貸株などで売りの対象となる株を手当てしないまま売るケース」を指す。

 SECがなぜ自由な市場のワーキングを尊重するこれまでの方針を変えたのか。それはSECが監督する証券会社株などが、怪しい噂などを伴いながらの一挙の売りの対象とされ、これが金融機関を破綻させたり破綻の縁に追いやることが続き、それを放置できなくなったということでしょう。ベア・スターズの話は昨日書きましたが、加えてレーマン・ブラザーズも一時危険な状況になった。

 両社の危機に特徴的に見られたのは、明らかに空売りと見られる短時間の激しい売り集中です。当該会社の発行株式を遙かに上回る株が売られたこともあると見られる。その結果、当該会社の株価は短時間で急激に下がった。それがまた当該会社に対する市場の評価を著しく毀損する。

 本来だったらこれはおかしい。本来ならある以上のものは売れない筈です。最近の市場の特徴は、「買いが時間をかけて積み上げた水準を空売りが一瞬にして奪う」ことですが、それはどう考えても市場が持つ経済の健全な機能の一つとは言えない、という考え方でしょう。

 この考え方には賛成すべき点もある。私の知り合いには、「株式市場には買いから入っちゃだめだ」という人がいる。売りの方が当たれば短時間にワークするから、というのが彼の意見だ。

 残念ながらそういう考え方が出てくる素地はある。売り局面はシャープで鋭く、空売りを含めてショートで入れば短期間で大きな利益を得られる。しかしそれは株が持つ本来の機能を逸脱しているようにも見える。「株は長期で持つもの」と主張する人は多いが、実際には売り場をじっと狙って市場に参入し、利益が上がったところでさっと逃げる方が手っ取り早いとも言える。

 しかし空売りが株式市場で役割をもっていないかというと、そうでもない。例えばアジア・ウォール・ストリート・ジャーナルには、あるヘッジファンドの代表のSECの措置に対する彼の見方が紹介されている。

 a "desperation move" that could end up silencing investors who are among the first to point out firms' problems
 と。確かにそうである。何かおかしいからその会社に対して空売りが起きる。株価の水準かもしれないし、内部で抱えている問題かもしれない。「その問題を最初に指摘する投資家がどうして悪いのか」という意見。その通りである。

 しかし最近のベア・スターンズの例を見るまでもなく、実際には当該企業が抱えている問題が「倒産」が妥当なほどに悪化していないのに、噂を伴う空売りの短期的な増加によって、企業としての存続を危うくされたと見られる例もある。こうした空売りの恐怖は、トレードされている株の株数が少ない企業ほど危ない。

 SEC、さらには米金融当局がそこまで追いつめられたのは、「このままでは市場の圧力に米金融市場が潰れてしまう」「(自分たちに対する)批判が止まらなくなる」という恐怖感があるのでしょう。実際細目はこれから発表される。日本も貸株規制をやったこともある。アメリカはどうするのか。

 一つ言えるのは、市場に振り回されたときに当局が取る手段というのは、それほど各国で違っているわけではない、ということか。あと今日の記事で興味深かったのは、FTが一面で報じている「今夏の中国の電力不足」の話か。ベトナムでも電力は不足していた。


2008年07月16日(水曜日)

 (21:59)これだけ株が下がると、犯人捜しが始まる。ウォール・ストリート・ジャーナルには興味深い二つの記事がある。一つはゴールドマンに対する同業者からの糾弾の動き、もう一つは株の空売りに対する規制の動き。

 もっともどちらとも、「では具体的に何が変わるのか」というと、それは不明な面がある。アメリカは原油市場の規制にも乗り出しており、株式市場でも売買の規制に繋がる動きをしている。アメリカの資本主義、市場信奉主義はかなり大きな変容を余儀なくされている。

 ゴールドマンに対する記事は、「Goldman Sachs Group Inc. is the envy of Wall Street, navigating the credit crisis relatively deftly as many of its peers have been battered.」という書き出しで始まっていて、ベア・スターンズとリーマン・ブラザーズのトップがゴールドマンの Lloyd Blankfeinに対して問い詰めを行っているとある。

 空売り規制を見当しているのは、SEC。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は以下のように報じている。

 WASHINGTON -- The Securities and Exchange Commission took unprecedented action against short sellers on Tuesday, acting on a widespread concern that negative bets against bank and brokerage stocks might be exacerbating the financial sector's woes.

 In a dramatic emergency order, the SEC said it would immediately move to curb improper short selling in the stocks of struggling mortgage giants Fannie Mae and Freddie Mac, as well as those of 17 financial firms, including Goldman Sachs Group Inc., Lehman Brothers Holdings Inc., Morgan Stanley and Merrill Lynch & Co.

 The plan, which is expected to go into effect on Monday, will expire in 30 days. But the SEC will also begin considering whether to extend the new requirements to all stocks traded in the U.S. The actions represent one of the most extensive attempts by a government agency in recent years to control short selling.

 It's far from clear whether the move, which sparked a barrage of criticism, will curb the activity of short sellers. While its aim is to curb abuses, it also would add an additional layer of bureaucracy to legitimate transactions.

 実施が来週月曜日から、というのがなんか不安ですね。今週中はそれが出来る、という風に受け取れる。あと気になったのは、スペインで不動産不況が深刻化しているということでしょうか。大きな建設会社が倒産したそうな。相変わらず世界の経済のダウンワードは続いている。


2008年07月16日(水曜日)

 (09:59)星の数ほど店がある大阪なのに、二日連続して同じ店に行ってしまいました。先週は総勢6人で。その時が私にとってこの店は初めてだったのですが、気に入ったので今週も3人で。2週連続で同じ店に行くのは珍しい。

 店の名前を「傘や」(06-6345-5600 大阪府大阪市北区曽根崎新地1丁目5-26 )と言います。あの通称「新地」と呼ばれる地区での目印であるスエヒロから、歩いて2分とかからない。二つある永楽ビルのうち、スエヒロから歩くと左側の小さい方の永楽ビル(正式名称は別です)の2階。

 何が良いって一つ一つの料理が実に丁寧に作られている。、経営者兼ママさんは清水凪さんという方なのですが、本当に料理が好きな人で一つ一つを実に丁寧に作っている。その料理がおばんざいのようにカウンターの上に乗せられていて、それの中から食べたいものを選べるし、そこにはないがメニューにある品物を頼むことも出来る。

 昨日も男三人の、特に目的もないメシ会でしたが、料理がうまいと盛り上がる。「今度はこれを食べよう....」とか。昨日美味しかったのは、鹿児島の黒豚とか、高野豆腐、二種類の納豆、辛子こんにゃくなどなど。おなかの具合を見ながら、「これをください」とか言って選べるのが良い。最後に食べた牛すじ入りのオムレツは二週連続でしたが、美味しかった。冷製のスープも口直しになって良かった。

 サイトを調べたらこんなサイトもありました。この店は2006年の秋に出来たそうですが、その時の雰囲気が伝わってくる。あの地域の食べ物屋さんは本当に多い。しかし、ゆったりと仲間と行くには良い店なのではないでしょうか。要予約。

 昨日もメンバーの中には大阪のジャーナリストでこの本の著者である吉冨さんもいたのですが、もう一人を含めて3人で「うまい」ということで意見が一致。彼はムーブの隔週レギュラーになったそうで、良かった。

 バーナンキの、そしてポールソンの議会証言は注目されていたのですが、アメリカ経済や市場が直面している苦境をむしろ際立たせるものとなった。バーナンキの証言はのっけから米経済の厳しい状況を認めるものとなっている。まあこれを読んでアメリカの株を勢いよく買おうという気分になる人は少ないでしょう。

 案の定ダウ平均は大きく下げた。しかしインテルの決算が良かったのでNasdaqは上昇。まあダウは10000の水準も見えてきたので、「底値」を探す動きでしょうか。やや売り飽きた印象もある。日本の株もそうですが。


2008年07月15日(火曜日)

 (13:59)ポールソンが日曜日の夕方わざわざ財務省の前で開いた記者会見での支援案発表にもかかわらず、月曜日の世界の株式の先行き不安感は収まらず。そして今日は再び東京の株が大きく下げるという展開。

 どうも米政府の動きは後手後手ですな。ベア・スターンズ救済の時にも同じ手を使って、アジアからの株価の下落の波状を止めた。しかし「ベア救済」は分かりやすかったのだが、今回のファニーメイとフレディーマックの支援案は、議会の承認も必要だし、モラルハザードの問題もクリアしていないし、分かりずらし。

 その分だけ株式市場は、「聞いた直後はプラス、しかしその後は疑念が台頭」という展開。まあ「同じ手が二度通じる」ほど金融市場は単純ではない。月曜日の話ですが、東京も、ニューヨークも日中上がる場面もあったものの、結局は下げて終わり。それを受けての火曜日の下げ、という構図になっている。米政府はもっとクリアに、かつ具体的な措置を打ち出す必要性に迫られいる。ポールソンも就任以来一回も良いことがないようで気の毒なのですが。

 つらつら冷静に考えると、世の中の経済活動は全て止まって、企業が全く収益が上げられないとうような状況は考えられない。景気が著しく落ちても、経済はスピード調整するだけで回っていくのです。ですから、企業の株価の価値があまりにも下がれば、お金はあるわけだからまた上がるときも来る。

 問題は、市場が「もう十分に下がった」というレベルをどこに見ているのか、ということでしょう。それはまだ誰にも分からない。個々の銘柄ではそういう水準が見えてきているものもあるのですが。

 外国為替市場を見たら、ドルが他の通貨に対して全面的に下げている。円はドル以外の通貨に対しては動いていない。今週の月曜日にも金融分析の中で書いたのですが、なにやかやと「アメリカが小さく見える時代」が始まっている。GMの株価がトヨタの30分の一と聞けば、あの国のどこかがおかしいと考えるのが自然です。他の強さはいっぱいあるのですが、かつての強さではなくなってきている。


2008年07月14日(月曜日)

 (01:59)日曜の夜のNHKの特集「激流中国」を見終わってもテレビをつけていたら、突然7月19日土曜日午後10時10分からの「地球特派員 激変・ベトナム最前線(仮題)」(BS1)の番組宣伝が。「ありゃ、もう始まっているのか」と思いました。まあ中国に興味がある人ならベトナムにも、という感じであの時間に番宣を打ったのだろうと思いましたが。

 それにしても、「激流中国」は「カメラがよくここまで入ったな」「中国もよくここまで許したな」と思えるシーンの連続で非常に面白かった。多分全部見たと思う。再放送を見たり、ビデオで撮ったりして。医療費を支払えない田舎の子供と両親の話とか、水道水を守る人々の話など、思い出すだけでも面白い内容が多かった。今回の環境保護の問題も興味深い。

 見ていて分かるのは、政府の末端組織が機能していない、というか末端組織が民間と繋がってしまって胡錦濤や温家宝が何を言おうが意に介せずにしばしば反対の行動を取って、中央の政策のサボタージュをしているということでしょう。

 中国では「中央に政策あれば、地方に政策あり」とか「官に政策あれば、民に対策あり」と言われる。しかし同じ官の仲間でも下に行けば行くほど不心得者と利害で一致して政府の政策の逆をやっている、という印象。今回の環境保護での「地域担当者」というのの無能さがそれを浮き彫りにしていた。

 「激変・ベトナム最前線(仮題)」も、激変のベトナムの今と今後をかなりうまく描き出せている番組になると思います。日曜日の午後スタジオ撮りがありましたが、江上さん、莫(モー)さん、それに私でかなり面白い議論が出来たと思う。モーさんが強調していた「何本かの回廊が繋ぐ東南アジア」の発想が面白かったし、日本人が一番知らない世界だと思いました。

 テレビ番組とは別に、私は19日公開をメドに文章をまとめていますので、また出来上がったらこのコーナーにアップします。テレビで入れきれなかった問題にも触れたいと思います。

 なお、7月19日の午後10時10分からのBS1以外に、以下の時間での放映が既に予定されています。

 7月29日(日曜日) 15:10〜15:59(BS1)
 8月03日(日曜日) 17:00〜17:49(BS-hi)

 今週のいつかにナレーション撮りをする予定。


2008年07月13日(日曜日)

 (10:59)ど暑いですな。にもかかわらず、土曜日も、そしてこれから日曜日もなんやかやとある。土曜日は午後に丸ノ内で講演・セミナー、日曜日はこれからNHKでベトナム取材番組のスタジオ撮りです。7月19日午後夜10時過ぎからNHKBSで放送。土日はあまり働きたくないんですが。

 まあでも予期せぬ面白いこともある。金曜日の夜はこのサイトの持ち主と久しぶりになんとはなしに飲んだのですが、今回は店を彼に選んでもらった。そしたら、湯島の「いづ政」(文京区湯島3−38−3、電話03-3832-3210)の指定があった。

 「いづ...」と見たときに「あれ...」とちょっと思ったのです。というのは、「カウンターから日本が見える」に書いたのですが、大阪・西区新町の「浜作」を発祥とする日本のカウンター文化の中にあって、「(出井)いづい」は初期に東京に進出してきた関西割烹の名店の一つで、今は銀座と京都にある「浜作」とも縁の深い店だからです。本を書くときにけっこう調べた。

 しかし私が本を書き始めたときには、「どうも調子悪いらしいですよ」(塩見さん)ということで、ご主人にも店の人にも取材できなかった。その後ご夫妻が夜逃げして、店を潰したと聞いていた。しかしずっと気になっていたのです。それが「出井=いづい」だったので、「いづ政」と聞いたときに胸騒ぎがした。「いづ」なんて変な名前、表記じゃないですか。

 店に入って暫く。最初その事を忘れていた。何の拍子にその話になったのか忘れました。確か前日に新橋の西さんの店に行ったというようなことを言っていたときだと思う。私が「ところで、この”いづ”というのは、銀座の”いづい”さんの......」と言ったらぱーーーーーと話が盛り上がってしまった。

 「いづ政」のご主人は、15年間「いづい」で修行した方だったのです。箱守さんとご主人はおっしゃる。江戸で3代続いた商家だったが、私の代は15から修行に出ました、と。江戸の三代目が関西割烹に修行に出る。ははは、そこが面白い。

 「いづい」での修業時代の話も聞きましたし、「出井」が潰れた経緯もうろ覚えだが聞いた。浜作の塩見さんも出井さんも関西から出てきて初めて店を持つときに、どうして今の場所を選んだかなどもいろいろ話していて分かった。4丁目から電通通りを見ながら、「おまえは左(浜作)、俺は右(いづい)」といった決め方をしたらしい。

 二つの店とも、味の素の鈴木三郎助の支援があったらしい。銀座の「浜作」が鈴木さんの支援を得ていたことは知っていた。しかし「いづい」までそうだったとは知らなかった。「いづ政」の料理をいただきながら、「うーん、今はなき銀座の出井の料理はこんなだったのか」と。また行きたい店です。

 帰りに名刺を頂いた。その時は気がつかなかったのですが、この文章を書くためにもう一度お店の名刺を見たら右上に「出井出店」とある。ご主人は今でも店が銀座の「出井」の流れをくむ、そこでご自身が修行したことを誇りに思っているんですよ。ナイス。

 あ、そうそう。東京で今年の初秋刀魚が出たのは先週の木曜日でしたが、「いづ政」さんで今年初めて秋刀魚を焼きでいただきました。メニューにはなかったが、「ありますか」と聞いたらちゃんと入っていた。普通初秋刀魚はちょっと細い。脂がもうちょっとなのですが、今年のは凄い。いい秋刀魚でした。

 もうしばらくすると、秋刀魚は寿司でも旨い。


2008年07月11日(金曜日)

 (15:59)サミットの最中に考えたことをある程度書いたエッセイが公開されました。今の成長パターンでは、インドや中国も行き詰まるのは目に見えている。先進国はCO2削減努力の中できちんとこの事実を指摘すべきだったと思います。

 ところで、今週覚えた新しい表現。木曜日のテレビ朝日のやじうまの最後の方には、私の隣に永作博美さんがしばらくいた(「四つの嘘」の関連で)ので話をしていたら、その中に「アラフォー」という単語が彼女の口から出てきたのです。知らなかったので聞いたらどうも、「around forty」の略らしい。

 「40歳前後」ということ。女性に使う言葉で、男性には使わないと。まあ結構女性にとっては「アラフォー」は重要な分かれ目なんでしょうな。彼女自身のプロファイルを見ると、今は37歳でもうすぐ38歳。まさに「アラフォー」ということになる。

 次はG8の声明の中にある「common but differentiated responsibilities」かな。サミットの文章のあちこちに出てくる。「共通だが、負い方に差異のある責任」。何を言っているかというと、地球温暖化には地球上の国はすべて共通の責任を負っている。しかしこれまでCO2を排出・蓄積してきた先進国と、それをまだあまりしていない途上国には責任に差異がある」という考え方です。これが「原則」になっている。

 実は私の今回のエッセイは、この「原則」に対する疑念の表明でもあるわけです。そんなに違いはないのでは、という。もっとも「differentiated」は程度の差は明確にしていない。


2008年07月10日(木曜日)

 (15:59)どえらい会社ですな、サントリーというのは。

 数日前に朝日新聞に、「サントリー参入45年 ビール悲願の黒字化へ」というインタビュー記事があって興味を持って切り取っておいたら、今日はニュースとして「サントリーがビール事業参入から45年でサッポロを抜き、市場シェアで初めての3位に躍り出た」と。黒字化からさらには業界3位への躍進。

 黒字化は見込み。「売り上げが伸びており原材料の高騰分を補っている」(佐治社長)という状況の中で、08年12月期には黒字化が実現の見通しという。ザ・プレミアム・モルツや第三のビール「金麦」「ジョッキ生」が販売増に寄与しているらしい。そういえば最近飲んだ。

 3位は業界統計。「国内ビール各社の今年上半期(1〜6月)のビール系飲料(発泡酒、第3のビール含む)の課税出荷量が10日発表された。サントリーがビール事業参入から45年でサッポロを抜き市場シェアで初めての3位に躍り出た」と朝日新聞のサイトにある。

 理由は『大手3社は今春値上げに踏み切ったが、サントリーは家庭用缶ビール類の値上げを9月まで延ばした。値上げした他社の出荷量が軒並み前年割れとなる中、サントリー「一人勝ち」の状況だ』ということで、今年上半期の各社シェアは首位アサヒが37.5%、キリン36.7%、サントリーが13.0%で、サッポロは12.1%。二強二弱 ?。

 それにしても、「45年」ですからね。半世紀ですよ。サントリーがビール参入を決めた頃の社員は絶対全員が辞めている。社長から新入社員まで。しかしその後の社員がその思いを繋げて3位に。黒字化したし、もうお荷物からは脱出できる見込みが出来た。

 全部調べたわけではないから分からないが、こんな会社はアメリカにはないだろう。GEのウェルチの経営哲学は、せいぜい2位までに入っていない事業からは撤退というものだったと思った。45年かけてやっと3位ですからね。日本の企業の中でもサントリーのビールは特別なのかもしれない。それでも、ある意味で凄いことだと思う。

 日本の企業は事業をなかなか捨てない。悪い面もあるが、続ける限りああでもない、こうでもないと改善を加え、アイデアを出し、お金も使って.....。道楽ではすまさない、ある意味ではすごさ。ははは、ちょっと爽快なニュース。そういえば、昨日はサントリーの本社の直ぐ近くに居ました。

 ではあと何年かかって一位......


2008年07月09日(水曜日)

 (23:59)サミットから発せられた文章をなるべく読んでいるうちに、ある一つの疑念に立ち至りました。「これらの文書全部に目を通した首脳はいったい何人いるのだろうか ?」

 というのは、多くの文章にとても首脳が関わった会議ではないだろうと思える、例えば「○○○が今年3月に打ち出した措置を歓迎する」とか「支持する」といった文章が一杯出てくる。私のフォロー不足かも知れないが、新聞にもあまり乗らないような会議が結構数多く出てくるのです。平気でそのあまり記憶にないような会議を引用している。説明もなしで。

 なぜそうなるのか。それは恐らく会議に先立って各国の数多くのシェルパがサミットに繋がる会議を想起しながら、「この問題はあの会合のフォローアップ」「この問題は、例の会議の繋がり」と思い出してしまうし、それが彼等の共通言語になっているので、それがついサミット文書の中に出てきてしまうのでしょう。読んでいるとどうしてもそう思えてくる。文書のかなりの部分は、彼らが書いていますから。

 これはサミットが壮大な既定路線会議、もっと言えばシャンシャン会議になっていることの良い証左です。首脳のイニシアティブの余地は最初から非常に狭められている。あれだけの会議なのだし、首脳はすべての問題について専門家ではない、という意見があるのは分かる。しかし読んでいて全く面白くないし、会議で出来上がってきたという熱意もない。

 こんな会合を何回開いてもあまり成果は出ないのは明らかです。ないよりはましかもしれないが。サミットはそのあり方を変えるべきでしょう。今回の水曜日は夕方まで所用があって大阪にいたので、NHKラジオから依頼されたインタビューは大阪で電話で受けましたが、その旨を強く主張しておきました。

 さらに言えば、地球規模で起きている足早な危機に、年一回のサミットでは足が遅い。かつ何ら強制力のない合意しかできない。思ったのは、次々に起きる国民国家の範疇を超えた危機にある程度敏速に対応出来る常設の国際機関を作らなければ、対策はいつまでも手遅れ状態を続けるのではないか、というものです。


2008年07月08日(火曜日)

 (23:59)サミットからは「これでもか」というくらい文章が出てきますな。このページを見ると、リリースされた文章の多さにびっくりする。数多く文章が発表されればされるほど、一つ一つの文章の重みは消えるように思える。

 これだけの文章が出てくると言うことは、最後の詰めは残されているのかも知れないが、NHKも特集していたシェルパ達が事前に本当の細部まで詰めて会議を迎えると言うことです。「首脳達の膝詰め談判での決断」という理想のパターンはもうそこにはない。

 まあ各国の首脳とも足下はふらついている。ロシアを除けば、どこも政権支持率は異常に低い。安請け合いして国に帰ってもそれを実行できない、というのならしない方が良いのかも知れない。しかしサミットのダイナミズムは失われているし、世界が抱える今の深刻な問題に正面から取り組んでいるとも言えない。

 一番上にある文章から、ナンバリングが続いている諸文章と、そうでない文章があって、まあ出来る限り読もうと思っているのですが、「Global Growth」のところののっけの文章を見ても、この一年で世界経済が大きく変質したことが分かる。そのスピードは凄まじい。一気に悪くなった。でも良くなるのには時間がかかる。

 それにしても、ドルは振り子のように戻ってきますね。107円台の一時は後半にまで伸びたと思ったら、世界的な株安を受けてスルスルと円高になり、106円台の前半に。しかし、私が夜で外出している間に一気に戻して、私がこの文章を書いている時点では107円台の半ば。

 レンジを続けているドルは、株式市場を見ている。8日のニューヨークの株は堅調。原油相場が一時135ドル台に落ちたのが大きな変化か。ただし、前回のケースでは高値から反落しても、その後一気に資金が入って高値を抜いてきた。このまま落ちるとも言えない。


2008年07月07日(月曜日)

 (12:02)本当にがっかり。というか、半分怒っちゃいました。ウィンブルドンです。

 女子の決勝(比較的短時間で決着)も見たので男子も夜の10時半過ぎに見始めたのです。NHKで。しかし明け方までかかっても降雨中断もあって決着がつかず。「明日に延期だろう」と思って4時半過ぎに寝て、そして起きたらもう決着はついていた。短い間に最後の方をやったんですな。

 だからナダル(スペイン)が勝った最終セットの最後の盛り上がりは全く見ていない。一番肝心なところが。途中までじゃおもしろくない。いつか再放送はあるんでしょうか。放送だと「移動式の屋根を作っている」そうですが、それは降雨中断を避けてスムーズな試合運びを行うためなんでしょうか。

 最初はナダルが優勢で2セットを連続して取った。6−4だったと思った。その後は連続してフェデラーが同じようにタイブレークの7−6で2セットを奪取。彼はサーブがいいから有利です。

 その間に1時間10分の中断があった。まあそれでも面白かったので、午前4時過ぎまで見ていたのです。最終セットに入って確か2−2のジュースの実に面白いところで水入り、降雨中断というわけです。NHKなどは、「午前4時半からは教育テレビで」とか言って、中継も終わってしまった。がっかり。来年からはちょっと違ってくるのでしょうか。

 マッケンローがアメリカ向けのテレビの解説でしょうね、それをやっていて、ボルグはスタジアムでじっと見ていたりした。懐かしくてそれは良かったのですが.....。まあ専門家じゃないが、フェデラーは凡ミスが多く、顔にも覇気が少し足りなかったような。

 ところで、去年モンゴルに行ったときにお世話になったメグちゃんにメールを送っていたら、月曜日の朝に返事が返ってきた。相当ショックだったようですね。興味深かった点は、

  1. 今回の選挙で選ばれなかった政党(民主党)がデモをして、デモに2万人位集まった
  2. 最初はデモ指導者が「今回の選挙が法律とおりに行われていない」「革命党長は出て来て説明しなさい」と主張していたが、革命党長が出て来なくて警察が来た。みんな怒って石投げたりし始めた
  3. 警察500人ケガして、救急車4台壊れて、死亡者5人。それで収まらないから7月の一日23時に大統領が非常事態宣言を4日間出して、それが5日の夜中終了した。
  4. 私(彼女はガイドさんです)はちょうど一日に21人のお客さんについて田舎からウランバートルに入ってきたが、夜見送りが終わるまで何もわからなかった。12時ごろ家に帰って来てテレビ見たらえらい事が起きていた
  5. 二日の朝会社向かってる時、戦車も、軍隊まで沢山いて、怖くて死にそうだった。それで二日の夕方また田舎行って、今朝ウランバートルに帰ってきたら何もなかったようになっていますが、革命党の建物は壊れてる
  6. 本当に重く感じています。モンゴルと言う国の歴史にはこんなことはなかった。ただデモだけじゃないから。革命党の隣に文化センターがあって、美術館の貴重な絵など沢山破壊されました。普通の人々の車も何台も爆発された
 隣の文化センターの貴重な絵と彼女が指摘するものを、我々も見たような気がする。この急速に開発途上の国は、今後どうなるのか。デモに参加したのが2万人というのは凄い。モンゴルの人口は265万人くらいですから、1%に達せんとする。

 メグちゃんが最後に「8月にイトウが釣れるそうで」と。イトウは北海道でも幻の魚と言われている。魅力的ですが。


2008年07月06日(日曜日)

 (23:02)日米首脳会談の結果を受けた記者会見を見ていて、ブッシュ大統領が「今回のサミットは成功するような気がする。もう私は8回も出ているが、今回はそういう気がする」という発言したのを聞いて、もしかしたらアメリカは「長期目標としてのCO2の50%削減(2050年)」など一定の数値目標に賛成するかも知れない、と思いました。

 むろん、中国やインドの出方がその場合に非常に重要ですが。福田首相も「色々話をして、日米間の間の見方は接近している」というようなことを言っていた。私は今のアメリカの国内情勢から見て、いずれは数値目標に賛成せざるを得ないと考えていて、サミット本体に合意を残したのではないか、と。

 事前に日米首脳会談で結果が出てしまっては、他のサミットの参加者から「会議は何なんだ」と言われかねないし、会議での福田首相のイニシアティブで合意が出来た、という形にするのが福田首相の手柄にもなる。諸般の事情を考えれば、と。まあ、分かりませんがね。


2008年07月04日(金曜日)

 (06:02)ははは、トリシェもなかなか巧みですな。利上げは確実視されていて、事実ECBは4.0%の政策金利を4.25%に引き上げた。ただしその後の記者会見では、同総裁は「Starting from here, I have no bias」と言ってのけた。

 市場ではトリシェが「もう一段の利上げ」を示唆すると考えていた向きもあったので、ユーロがドルや円に対して急落。利上げの前に一時169円台に乗っていたユーロ・円は、トリシェ発言の後に167円台の前半に下落。

 まあトリシェもここであえて強硬姿勢を見せて、来週週明けからの市場の混乱を招くことを避けたのかもしれない。腹の中は分からない。ブラック・マンデーの記憶もある。それは今後指標を見て、ということでしょう。トリシェの発言を素直に受けた向きは、「次の利上げは来年の1月」と言っている。そうだろうか ?

 強く反発したのはドルで、ブッシュが前日に日本人記者団に表明した「強いドル。それには欧州も賛成してくれるのでは....」という文言通りになった。しかしインフレの強い時代は、どの国も強い通貨が欲しい。欧州も実はそういう面がある。一方で、フランスやスペインは利上げや強い通貨には良い顔が出来ない事情もある。複雑なのです。

 もう一つ注目された米雇用統計は、予想通り悪い。失業率が5.5%で横ばいだったのは良かったが、雇用がまた減少した。今回(6月 非農業部門就業者数)は6万2000人の減少。これで6ヶ月連続の雇用減少。人口が増え続けるアメリカでは、毎月20万弱の雇用の増加がなければ、自然増の求職人口を吸い取れないと言われているので、半年に及ぶ雇用の減少は米経済には非常に痛い。

 米雇用情勢の弱さは5月分、4月分の統計も大幅雇用減に下方修正されたことで分かる。4万9000人の減とされていた5月分は6万2000人の減少に、2万8000人減とされていた4月分は6万7000人の雇用減に下方修正された。雇用の削減に追い込まれている米企業にとっての悪材料は、石油価格の高騰、住宅市場の不振、銀行からの融資ゲットの困難さ、それに消費者の買い控え傾向など。

 ところが、半ドンだったニューヨークの株式市場では、ダウだけが73.03ドルの上昇での引けとなった。再開は来週。他のNasdaqとかSPなどの指標はほぼ横ばいなのに。このダウのみ上昇現象は、前日10ドルの水準割れという半世紀ぶりの安値に落ち込んだGM株の反発に依存するもの。この日GMは、1.4%上昇した。この結果のダウの反発である。構成銘柄が30しかない同指数ならではの現象である。市場は相変わらず弱い。

 小型車開発を怠ってきたツケが米自動車メーカーを再び襲っている。トヨタも6月は悪かったが、それはプリウスというエコ車の生産が需要に追いつかなかった面が強い。潜在的に売れる商品を持っている。しかし、GM以下の米自動車メーカーは、このガソリン高の時代にあって、「売れる商品がない」という深刻な事態にある。

 筆者は先にVOICEの論文に、GMを初めとする米自動車各社の先行きについて、ちょっと日本人がドキッとするような予想もしておいたが、メリルから出た今回のレポートを待つまでもなく、私が予想したような事態が起きてもおかしくない状況が醸成されつつある。


2008年07月03日(木曜日)

 (09:02)市場に携わっている人にとってはドキドキの7月3日ですな。珍しくアメリカでは木曜日の朝(日本時間の夜)に米6月の雇用統計が発表され、その前にはECBの理事会がある。多分ECBは利上げをする。問題はその後のトリシェの発言。

 市場も不安定です。昨日のドル・円の為替相場は午後にするすると上昇して106円70銭見当まで上がったが、その後は勢いを失ってまた106円がらみ。東京の株も昨日は弱かった。ニューヨークの株も私が朝起きたときは、ダウで50ドルくらいしか下げていなかったのに、朝の放送を終えて引け値を見たら166ドル以上下げて、年初来安値。

 昨日まで10営業日の株価下落は、日本では43年ぶりだそうで、要するに「買い手」がいない市場が続いている。下げていても出来高が多いと悪抜け感があるが、そこまでも行かない。一方でニューヨークの原油は上げ続けていて、穀物も大きく下げてはいない。

 もっともアメリカは7月3日は午前だけの市場取引。ということは、ECB決定や雇用統計に本当に世界の市場が反応するのは週明け。ということは、金曜日の東京市場はまた方向感を失うと言うことです。金曜日は独立記念日でアメリカは完全休場。

 それはそうと、昨日面白かったのはあるインターネット放送に参加したのですが、その中の質問に、短縮して言うと「自動車会社がエコとか言っているから売れないんだ」という質問があったこと。うーん、これは非常に面白い問題意識を含んでいる。

 では唱えなくて良いのかというと、これは違う。エコの社会的要請でもある。しかし一方で、車が持っていた荒々しい魅力は低下する。各社いろいろ取り組んでいますが、私が答えとして引用したのはBMWの取り組みでしょうか。

 面白い問題なので、また取り上げようと思っています。


2008年07月02日(水曜日)

 (18:02)関西から帰ってきたら、出版社の幻冬舎から「中田英寿」と「彼が主唱した6月7日のフットボール・マッチ」に関する資料がぎっしり。中田英寿の試合前のインタビュー、試合後のインタビュー、関連記事、それにDVDまで。

 このマッチが持つ意味をエコノミストでもある私の目から見て思ったことを文章にして下さい、という依頼。幻冬舎も面白いことを考える。私も「面白い」と思って引き受けました。チャリティーとか、ドネーションとかの持つ意味合いは複雑です。私も何か大きな災害があれば、郵便局などでやっている。

 災害の場合なら、「役だってくれているだろうな」という思いはある。しかしアフリカの貧困となると、直ちに役立っているのかと言われるとあまり自信がない。まあこの問題はいつもちょこちょこ考えているので、それを文章にしたいと思っています。

 こういう普段あまり取り上げない問題は、頭の違う部分を使うので面白いとも思います。マンネリ化した企画よりは良い。これから資料を読み込んで、来週初めには文章を書こうと思っています。中田英寿さんへの直接取材はないみたいですな...ははは。

 依然テレビ東京のキャスターだった内山さんから久しぶりにメールで、「あんた、NHKの大CMに出ていない」と。それは知りませんでしたが、「そうかもしれない」と言っておきました。今夜10時からちょっと面白い食の番組が。ちょっと面白いことが起きる。


2008年07月02日(水曜日)

 (10:02)中国、韓国で大きな騒動が起きていると思ったら、今度はモンゴルですか。モンゴルも非常に厳しい経済状態にあり、「マンホール・チルドレン」もあれば、ウランバートルへの人口の集中で都市そのものが爆発状態にあることもある。去年の9月に行ったときのことを思いだしていました。

 ところで、高速道路の舗装について先日書いたら、業界に詳しい方から以下のメールを頂きました。これで疑問が氷解。了承を得られたので、ここに皆様にも紹介します。

伊藤 様

 初めまして、いつも楽しくday by dayを読ませていただいております。今日の記述に雨の日の舗装に付いて有りましたが、危険な体験をなさったようで・・・無事に対処できて何よりでした。雨の日は安全運転でお願いします。

 伊藤様がお気づきのように舗装の種類が違うのです。判りやすく言いますと泡おこしのような構造で雨水を下部の舗装面に透過させて表面に雨水が残らないようにする舗装です。そうする事でタイヤによる雨水の跳ね上げ(水煙状態とよんでいます)がなくなり視界が良好になるのと、ハイドロプレーンが発生し難くなります。高速道路では雨の日の事故の発生が多い場所に優先的に導入された経緯が有ります。10年ぐらい前でしょうか(アバウトです)。

 最近は舗装の改良工事の際に基本的には高機能舗装を施行するようにしていると思います。

 有り難うございます。もう全く前の車の少し後を走るときの跳ね上がりが違うんですよ。「水煙状態」とは初めて聞く言葉ですが、言い得て適切、絶妙ですね。

 参考URLも教えて頂きました。http://www.e-nexco.co.jp/more_expressway/new_tech/safety/pave.htmlです。「舗装の種類」として

  1. 通常舗装・・・蜜粒舗装
  2. 排水性舗装・・高機能舗装
 があると。勉強になりました。それと昨日読んだウォール・ストリート・ジャーナルに面白い記事が。「不況には強い」とずっと言われてきたラスベガスに閑古鳥が鳴いている、という話。うーん、マカオはどうなんだろうな。まだ盛んなんだろうな。


2008年07月01日(火曜日)

 (01:02)メンバーがメンバーだったので、非常に面白かったですな。私自身、やっていて「こりゃ面白い」と。多分聞いておられる方々もそうだったのでは。

 東京駅は丸ビルの21階。ブルームバーグのセミナールーム。並んだのは、私の右手から

 武者 陵司さん(ドイツ証券副会長兼CIO)
 菅野 雅明さん(JPモルガン チーフエコノミスト)
 白川 浩道さん(クレディ・スイス チーフエコノミスト)

 私はパネラー兼コーディネーターという役回り。あまり時間がなかったので、どんどん話を進めました。当面の関心事項は穀物以外は全部やれたかな。為替、株、原油、世界経済の先行き、そして日米欧経済の動向、そして中央銀行の政策的行き詰まりなどなど。ははは、「off the record」ですから、内容は書けませんが。

 パネルディスカッションは、参加している身でありながらも勉強にならないと参加した価値がない。そういう意味では、今回の会合は面白かった。非常に興味深いワーディングもあって、私自身発想の原点をいくつか諸氏より頂いた。感謝です。
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 中国で直近では一番大きい騒乱が起きた貴州省は、毛沢東が生まれた湖南省に西隣、日本人が良く知っている都市では重慶の南に位置する。もっと南には南寧や広州がある。貴州省は確かに内陸の省だが、チベットや四川の一部など「辺境」と呼ばれるところよりはかなり中国の中心部。そこで騒乱が起きた。

 現場にいたわけではないから、詳しい情報は知りません。漏れ聞こえてくるだけです。しかし、15才の少女に対する乱暴・殺人事件で数万人が参加する騒乱に発展し、警察署と政府庁舎が焼かれる事態になったというのは、相当民衆の不満が高まっていたが故に、と考えるのが自然です。そうでなかったら、普通はここまでの大きな騒乱には発展しない。

 著しい発展を遂げる中国。オリンピックを40日後に控えた中国。しかし中味は相当めちゃめちゃです。まあやっぱり一番の矛盾は、民衆の権利意識の高まりに対して、共産党の末端行政組織、それを構成する人々が昔ながらの権威、権力を振りかざし、恣意的な行政を行っていることでしょう。中央の問題と言うより、地方、末端組織の問題です。

 一方で、成長に乗れない人々が大勢いて、かつ都市と農村の格差の大きさを目の当たりにしているし、差別も味わっている。これでは「きっかけ」さえあれば、権力と富を手に入れている、そして自分達に平気で暴力を振りかざす「悪代官達」に鉄槌が振り下ろしてやろう、と民衆が考えるのは自然な成り行きです。

 日本はサミットを控えて、中国はオリンピックを控えて警備が厳しくなっている。しかし、中国社会が抱えた矛盾は非常に大きいということでしょう。



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