2009年05月31日(日曜日)

 (12:53)ネットで予約しておいたらこの週末に届いたので読み始めましたが、村上春樹さんの小説はなかなか面白そうです。といってもまだ57ページくらいしか読んでないのですが、期待させる書き出し。

 上下で相当分厚い。「ノルウェーの森」よりもちょっと厚いかな。ケイタイ電話も登場しない80年代の話です。まあ新幹線の行き帰りなどに読みます。この2冊を持って歩くのはちょっと重いが、久しぶりの小説だし。中味はまだの人のために書きません。

 今日午後8時半からのBSジャパン(BS7チャンネル)の「世の中進歩堂」のは「細胞シート」を取り上げます。

組織や臓器を細胞から作り直していこうという再生医療。その歴史を変える画期的な新技術が、東京女子医科大学の岡野教授により開発された。その技術は培養した細胞をシート状にして取り出すという画期的なもの。シート状の細胞を障害のある部位に張りつけるだけで、組織や臓器の機能を回復させていくことができるようになったのだ。再生医療の新時代を予感させる驚くべき最新テクノロジーの全貌に迫る。
 という内容。実際に番組を進めていて、「非常に面白い」と思いました。再生医療は色々な形で進んでいますが、この「細胞シート」というのも非常に面白い、実現性のある方法だと思いました。

 それとは別に、アナログでは10チャンネル、デジタルでは5チャンネルのテレビ朝日の夜7時からの「大人のソナタ」という番組で、「どこでも寝ることが出来る」例として私が登場するようです。どう扱われているか知りませんが。まあ事実どこでも寝られる。ははは。


2009年05月29日(金曜日)

 (17:53)昨日書いた米長期金利上昇に関しては、今日のFTに社説があって、「(最近になっての長期金利の上昇は)ノーマライゼーションであって、何ら懸念すべき事ではない」と。まあそういう見方も出来る。今年春の下げが異常だったという意味では。問題は今後も上げ続けるかどうか。

 朝鮮半島情勢に関してはウォール・ストリート・ジャーナルの「Chinese grow vexed by Pyongyang's acts」がまとまっていて面白かった。これは日本での一般的な見方よりも、「中国は今の北朝鮮の体制とその行動に対して、苛つき、地域の安定を崩しかねない存在として脅威を感じている」という判断に立っている。

 しかしだからといって中国が具体的に動けるかどうか、というとそこが疑問で、今のところは中国は苛立ちながらも、北朝鮮内部の体制転換がどのように進むか、出来たらその体制転換を自国の安定にとって有利に進行させたいと願っているという記事。

 その意味では、アメリカや日本が今回用意している北朝鮮に対して臨検などの場合には、ケースバイケースで武力を使うことも許容するような決議案に賛同するかどうかが焦点。ミサイルは「(向こうが)人工衛星と言っているのだから」と許容できたが、核実験は中国の「朝鮮半島非核化原則」と真っ向から対立する。中国としても心穏やかざる問題です。

 街から徐々にマスクが消えている。結構なことです。関西でも少なくなりつつある。マスク姿が多いと、なんだか社会全体が呼吸が苦しいような印象がする。有用性に関しても「今かかっている人がやるのは有用」ということで学会の意見は一致しつつあるようですが、「皆がしているから」というのはどうでしょうか。私としては手洗い、うがい重視派です。

 それにしても今回関西地方が被った被害は大きかった。今日もそれに関するニュースがある。結局日本ではラッキーなことにどなたも亡くならなかった。重症者も少ない。あとは第二波、第三波に対する備えですね。


2009年05月28日(木曜日)

 (17:53)北朝鮮は言っているとおり、黄海での境界線を巡って軍事衝突を辞さないかも知れません。むろん、過去何回もあったような限定的な衝突です。衝突しておいて直ぐに理由をつけて引く、という形。長期戦を戦う力はない。石油もない。国内引き締めに役立つし、「どうせ口だけ」という周辺国を北朝鮮との取り組みで本気にさせる効果がある、と読むかも知れない。

 PSI(Proliferation Security Initiative)の全面受け入れを表明した韓国の決定は当然ですが、北朝鮮はずっとこの問題について、「宣戦布告と受け取る」と警告してきた。出入り船舶の臨検などを警戒しているのでしょう。韓国やアメリカの船に積荷を調べられることなど受け入れられない、という考え方。

 もともと北朝鮮と韓国の黄海側の主張領海は相手側に入り込んでいて、常に紛争の種になりうる。島もいくつかあって、両方の主張が重なっている。北朝鮮としては、そこに船を入れれば限定的な軍事衝突に繋がりうる状況を作り出すことが出来る。円が今日の外国為替市場で97円台まで一端下がったのは、明らかに地政学的なリスクを読んでいる。

 「読んでいる」と言えば、アメリカの長期債の利回り上昇(10年債で3.72%への)は、明らかにアメリカ政府の国債発行環境の悪化見通しを一因としている。まだ景気が戻りを確実にしていない中での金利上昇。3.72%は長くアメリカ経済を見てきた私のような人間には低い水準ですが、それでもこの水準はFRBが3月17日に国債買い切り決定をする前(3.01%)の水準を大きく上回っている。

 数日前「最近の長期金利上昇は行き過ぎか」という設問で何人かと話をしたところ、「そう思う」という意見が強かった。長期金利が上がれば、投資を狙っている資金はその買いに向かう。4%に乗ったら買いたい投資家は山ほどいるでしょう。しかし、長期金利の上昇は住宅金利などにも響くので米経済にとっては打撃です。

 GMの破綻説というよりはこの長期金利上昇を嫌気してニューヨークの株価は下落。しかし他にも面白い兆候が。日経の夕刊には、「国際商品、半年ぶり高値」という記事がある。筆者は穀物などの相場上昇に関心を払ってきたが、最近では原油が63ドルになるなど、景気回復の兆しを受けて商品相場は上げ基調だ。「上げが過度だ」という説もある。最初は「フロス」(.。o○)のように見えて、それは案外あっという間に本物の化け物になる。アメリカの住宅がそうでした。グリーンスパンは最初アメリカの住宅市場のそれを「フロス」(froth)と呼んでいた。フロスは直ぐ化ける。

 GMはpre-packaged の破綻でしょうね。事前調整型。債権者に冷たく当たって「ノー」を言わせ、予定通り「破綻」に持ち込むという着地かもしれない。債権者はCDSで保険を付けてありますから。それにしても、「史上もっとも複雑な破綻」になるでしょう。

 今週GMは予定より早く給料を支払った。従業員を落ち着かせるためです。事前調整型の破綻になれば、生産活動は続く。しかしだからといって、「売れる車がない」というGMにとっての厳しい状況は変わらない。


2009年05月28日(木曜日)

 (13:53)ははは、久しぶりに「ゴジラ」という呼称をアメリカのMLBテレビのアナウンサーの声で聞きました。4打数2安打2ホームラン3打点。MLBのサイトで動画を見られるので、興味のある方はどうぞ。両方ともゆったりと、しかしシャープにバットを振って球は遠くに飛び(一本は右中間、もう一本は右翼)、打った後はベースを同じような格好と同じようなゆったりと走っている。噛みしめるように。

 悪口を書くとだいたい人が現れたり、その人が活躍するのです。もともと力のある選手だから、「これじゃいかん、不調だ」と嘆き始めるときには、その本人の調子が上がってきている。まあ昨日今日の松井がそうでしょう。昨日は勝てませんでしたが、今日はテキサスに勝って(9−2)、27勝20敗。

 実はこの勝ち負けはボストンと一緒と言うことになりました。松坂を立てたボストンがミネソタに負けため(2−4)。アメリカンの東地区ではトロントに代わりボストンが首位だったのですが、これでこのニューヨーク、ボストンというライバルの2チームが並んだ。まあこれからでしょう。

 松坂の負け方はまだ見てないのですが、彼は非常に面白い記録を作ってしまったようです。それは「ワイルドピッチ4」という記録。この松坂の四つのワイルドピッチを含めて、ボストンはこの試合で「ワイルドピッチ6」(デルカーメン1、マスターソン1)となったが、これはアメリカのMLBの歴史の中で1900年以降過去4回しかなかった記録らしい。つまり5回目。松坂一人の「ワイルドピッチ4」は、1929年9月14日にミルト・ガストンという投手以来のボストンとしてのタイ記録。

 見ていないので分からないのですが、どうやらこの試合はバリテックではなくバックアップのGeorge Kottarasがキャッチャーをやったらしい。初めて。意思疎通とか、松坂の球筋が読めていなかったのかも知れない。それにしても、松坂の四つのワイルドピッチ(と判定された失策)が、どういう形で失点に繋がったのかを知りたい。松坂の自責点は3になっている。防御率は8.82。相当良くなった。

 上原が故障し、岩村が故障し、城島を故障しているのだから、他の選手が活躍してくれないと面白くない。そういう意味では、松井の一試合2ホームラン3打点はなかなか良い。うーん、でも打点はまだ20にも行っていないんだよな。MLBのHPにはランディ・ジョンソンの顔が。まだ活躍している。工藤君も頑張っているし。


2009年05月27日(水曜日)

 (10:53)月曜日には丸ビルのブルームバーグのオーディトリウムにおいてパネルディスカッション形式で、火曜日には日経CNBCのアゴラ・スタジオでの「ザ・経済闘論」という生放送の中で景気の現状と展望に関して議論をしましたが、どちらも面白かった。景気の先行きに対する見方が綺麗に、しかも大きく割れるのです。

 月曜日のパネルディスカッションでは私以外は、菅野雅明さん(JPモルガン)、高田創さん(みずほ証券)、安達誠司さん(ドイツ証券)がメンバー。大勢の方に聞きに来て頂きましたが、会合そのものはオフレコであり、ここでは明らかに出来ません。しかし、実に綺麗に先行き見通しが割れるのです。いろいろな問題でクロスファイアーして面白かった。

 「ザ・経済闘論」は昨日の午後9時から10時半まで。私は大阪からとんぼ返りしての参加でした。前半が私以外では伊藤元重さん(東大教授)、中原伸之さん(元日銀審議委員)、イエスパー・コールさん、西川靖志さん(日経CNBCの経済解説委員長)というメンバー。司会は谷本さん。

 これは生でテレビ放送されたので、ご覧になった方もおられると思いますが、「世界景気の回復は何合目か」というやや抽象的な議論から入って、世界経済における先進国の現状と、それとは異質な形で世界経済に対して大きな関与力を持ち始めた中国やインドへの評価など。一番悲観的なのが中原さんだったかな。

 後半は伊藤元重さんと中原さんが所用で帰られて、新たな岩崎日出俊さん(インフィニティ)と水野和夫さん(三菱UFJ証券)が参加。主に日本の取るべき戦略といった話をした。一番面白かったのは水野さんとの議論かな。彼は回復は「0合目」というので、何を頂点として「0合目か」という問いを発したら、「1974年である」という答えだった。うーん、遡及するのかと。面白かったが、もうちょっと議論したかったな。随分私と考え方が違う。

 私が全体的な議論の中で強調したのは、民主主義国家における経済政策の選択余地の狭まりです。どこでもそうですが、国民に苦渋を飲ませる政策はなかなか取れない。政治家が国民の投票で決まっているのでそうなる。辞める覚悟では出来るが、そうでなければ出来ない政策はいっぱいある。

 先進国はみなそのジレンマの中で経済を運営しているわけです。当然「こうあるべきだ」(それも各人各様ですが)というところから歪んだ形で経済の形が出来上がり、その歪みを受ける形で次の政策が決まる。アメリカの個人消費がGDPの7割を占めるに至ってしまったというような「歪みの累積」が出来上がる。それは巨額の累積政府債務という形で日本にもある。

 その過去の歪みと、そして現在の投票権を持つ国民の期待(政治に対する)の中で、どのくらい歪みが市場の崩壊を招かずにすますことができるのかは、中央銀行と政府に課された大きな課題です。制御できなければ今回のようなことになる。

 ここではあまり議論しませんが、私が考えているのは歪みの除去ではなく希薄化です。「歪み、不均衡の希薄化」。希薄化の為には、歪みを少しでも小さくすることと、歪みが包み込まれている経済の規模を大きくする事が必要です。


2009年05月26日(火曜日)

 (15:53)うーん、大リーグで活躍する日本人選手を熱烈に応援している身としては、なんと辛いニュースが多いことか。岩村の今季絶望、城島の足の親指の骨折によるDL入り、そして松井の不調での不出場。

 前の日に5−0だったので、今日は危ないなと思っていたら、案の定チームは大勝しているのに松井には出場なし。11点も取ってテキサスに勝って、首位のボストンにあと1ゲームに迫るポジション(地区2位、トロントは3位に)にいるのに、松井の活躍がとにかく少ない。

 来年は危ないかな。確か今年が契約の最終年。守れない、DHでしか出られない状況の今の松井は、DHで出たときに存在感を示すしかないのに、それが最近なかなか出来ていない。打率も0.25を割って確か2割4分ほど。

 まあ秋口からポストシーズンには出てくると思いますよ。そう期待しているのですが、今の状況ではちょっと危ない。イチローとあまり年は違わないが、もう一方は元気ですからね。松井にも頑張って欲しいと。

 ところで新幹線の中で、「霊と金」を読みました。怪しい商売がいくつも紹介されていて面白かった。大部分は「こうだろうな」というものが多くて、予想が出来たのですが。テレビの果たしている役割が大きい、とこの本は指摘する。


2009年05月25日(月曜日)

 (23:53)いかんともし難い国、というか指導者ですな。国民を食べさせるだけの農業生産力もなく、輸出するものといえば人しかない状況の中で、「自分達は攻められるかも知れない」というパラノイアの中で常に強がってみせる。その挙げ句が核実験とミサイル発射の繰り返し。あわよくばそれによって「見返り(?)の援助」を得ようとする。

 持っているリソース(技術、エネルギーなど)を何の生産力向上にも役立たない核実験とミサイル発射に使い、自らの足で経済的に立つ努力を何らしない。そのエネルギー供給の100%を握られている中国に対しても強がってみせて、実際はその手中でしか踊れないのに、「中国も自分達を見捨てられないだろう」という楽観論の中で行動する。

 声明文が「自衛的核抑止力を強化するための措置の一環として...」というのが、北朝鮮指導部が抱いている懸念を良く表している。つまり、自分達がしていることが異常なことであるということを知っていて、このままだと「攻撃される」と考えているのです。もしかしたら南、もしかしたらアメリカに。

 「核を持てば抑止力になる」というのもあさはかな考え方だと思うが、なによりも北朝鮮で不思議なのは、今の自らを追い込んでいく戦略の着地点が全く見えないことだ。一体今の戦略のその先に、どういう国が作れると思っているのか、皆目見当がつかない。

 いつか北朝鮮問題の専門家に、「なぜ北朝鮮の国民は飢えまで忍んで今の体制を受け入れ続けているのか」と聞いたことがあるが、「牛は飼い主に抵抗できない」というのが答だった。究極の貧富の格差の国で、今のままでは経済発展が全く望めない中での統治が続いている。不思議なことだ。

 最後は中国がどう考えるか、ですね。何せエネルギーという首ねっこを押さえている。中国が石油を融通しなくなったら、北朝鮮はにっちもさっちもいかない。中国は北朝鮮を緩衝帯として残したいのでしょうが、ここまで自分の国も危険にさらす国になったら、そろそろ動かなくてはいけない。中国指導部も、相当北朝鮮には頭に来ているでしょう。

 アメリカも安易な取り込み戦略をやめるべきです。アメリカが融和策をとる度に、北朝鮮はそれを巧みに利用してきた。重油を得、軽水炉を得て、おとなしくなった振りをしながら、その間に着々と核とミサイルを開発している。「核の廃絶」を目標に掲げたオバマ政権が強硬姿勢に出るのは当然だ。

 指導部が変わるという国内に不安要因を抱えた中での北朝鮮の対外的強硬姿勢。不安の表れでもあるが、暴発的行動を抑止する術を周辺国は持たねばならない、と思う。


2009年05月24日(日曜日)

 (18:03)ははは、小よく大を制す。思わず拍手を送りました。力も入りましたね。国技館も「はるまふじ・・・・」の声援が凄かった。「チャンスですから・・・・」と言っていたことをちゃんと実現させた。ナイス。

 そりゃ、今週は何と言っても相撲が面白かったですよ。日曜日は日中法事があったのですが、時間に間に合うように帰ってきて、午後5時くらいからテレビにかじりついて......ははは。決定戦は横に逃げるようなことをして欲しくない、と思っていたら正面からぶつかった。

 それにしても、日馬富士の今場所は凄かった。過去2場所は前半で負けがこんで「この大関は大丈夫か。いつまでもつのか」と思ったものですが、今場所は最初から気合いも体調も万全に見えて、人が変わったように強く、窮地を何回も乗り越えた。千秋楽の琴欧洲戦もそうです。琴欧洲がちょっと前に出た瞬間に首投げ。本当に心技体が充実しているように見えた。

 13日目の日馬富士と白鵬との一戦も見ていて、最後は日馬富士が力負けしたのですが、「(日馬富士に対して)よくそこまで戦った」という印象だったのです。しかしその残像があって、「まだちょっと白鵬が力では上か」と思っていたら、決定戦では白鵬にまわしを取らさず、右手で白鵬の足を制御しながら見事に白鵬を回転させ、手をつかせた。

 終わった後の白鵬が悔しそうな顔をしていて、土俵から去りがたい顔だったのが印象的でした。日馬富士は3場所目で見事優勝。もうこれだけの勝負をしてくれるなら、日本人、非日本人なんてのは関係ないですな。今場所は久しぶりに数多くの力相撲、真剣な勝負を見たという印象。

 小兵の優勝には日本人は拍手を送る。それにしても、気持ちの持ちようでこれほど力士の力が変わってくるとは。そうなんですね。まあこれからも頑張って欲しい。琴欧洲も確か一回大関で優勝したが、その後直ぐにダメンズになった。

 「はあ、良かった」「うれしいです」「本当に嬉しいです」「最後まで自分の相撲を....」「応援に来てくれた皆さんの期待に応えるような」.....というインタビューでした。ははは。ちょっと他のモンゴル力士に比べて日本語が下手.....?

 ところで、今週の「世の中進歩堂」は、21世紀は炭素の時代!?炭が宝石の王様ダイヤモンドに変身という内容。ダイヤモンドはもとは「炭素」は昔から言われているのですが、今回は驚くべき技術が.....。お楽しみに。


2009年05月23日(土曜日)

 (14:25)韓国の盧武鉉前大統領に関する第一報はケイタイに入った「自殺」で、その次が「登山中に滑落」という扱いになったのですが、どうやら真相は「登山中の転落ではあるが家族あてに遺書を残しており、自殺の可能性が高い」ということです。国民の期待を背負った人がトップになった場合の、しかし実績を残せなかったケースの無惨さ、といったことを感じる。

 同大統領については、韓国がまだ選挙戦の最中にあった2002年の末に韓国に取材に行っているので(サイトとしてはここです)、その後の行動を含めて関心を払ってきた人でした。高卒ながら弁護士試験に通り、社会活動でも成果を残した人という経歴もあったで、当時の韓国の多くの若者のアイドルだった。

 それを加速したのがネットで、世界で初めてのネットを通じた国政選挙と言われ、李会昌を破っての大統領当選。しかしその後は国民の期待にはほとんど応えられなかった。経済政策で失敗し、彼を応援しなかった富裕層の土地資産の価値を上げてしまって若者から反感をかい、末期にはほとんど大統領としての権限を実質的に失っていたと言われた。

 残っていたイメージが「清廉」でしたが、それも家族や親族への不正献金などで失墜して、「結局盧武鉉政権とは何だったのか」という疑念が韓国の人々に広がり始めた段階での訃報だった。真相は分かりません。しかし本当に遺書があったとしたなら、自殺を心に決めての登山、そして場所を決め手の飛び降り(転落という表現であろうと)だったのでしょう。

 「つらかった」という遺書が残っていたそうですが、それは最高検察に事情聴取されたと言うこと、今月中には逮捕か在宅起訴か決まるという事情もあるのですが、大統領にまで上ったのに結局支持者の期待にそえなかったことに対する「つらさ」だったような気もする。

 それにしても韓国のトップは過去の例を見ても、周囲に尊敬されながら「悠々自適」という人はおらず、悲惨な目にあった人が多い。金大中さんはノーベル賞を取ったが、金正日との会談には相当なお金を使ったという報道もあった。今の李明博大統領がどうなるのか。それにしても、韓国の友人達もかなりショックを受けているかも知れない。

 盧武鉉政権のその後は、2004年にこんな文章を書いています。


2009年05月22日(金曜日)

 (23:25)日経の夕刊に私が水曜日に紹介した「ベルサイユの子」が取り上げられている。監督が誰の子だったとか、37才で亡くなったとかは知りませんでしたが、この映画のは本当にいろいろに解釈できると改めて思った。

 面白いと思ったのは、日経ではなく同日の朝日の夕刊の社会面が「子連れ婚の虐待、防げ」という記事を掲載していること。日本では子供の虐待が数多く発生しているのは我々が知っている通りだが、この映画に登場するフランスのエンゾは次々に大人に捨てられるのだが、そのたびに誰彼かの愛情に救われて生きていく、大人に近づいていく。そういう話になっているのです。話は悲惨だが、エンゾが救われながら生きていくことは確かなのです。

 むろんフランスにも「子連れ婚の虐待」「子供の虐待」はあるのだろうし、それが日本に伝わってくることはあまりないのだろう。しかしこの映画を見る限りは、社会不適応などもあってホームレスになった壮年のダミアンでさえも、エンゾを可愛がり、一時期でも育てる。そして自分で出来ないと思ったら、両親の家に預け、その両親は本当の母親が出てくるまで愛情を持ってエンゾを育てる。

 捨てられているのに救われているエンゾ。対して、拾われているのに虐待にあい、時には命を落とす子供もいる現実。そこをどう考えるか。それにしても、問わず語りに今のフランスが分かる映画だ。壮大なベルサイユ宮殿の直ぐ近くの森に、たくさんのホームレスが住み着いている現実。そして就職難。

 もの悲しい設定の中で話が進むが、最後の母親の再登場を喜んで良いのか、勝手と思うか、うーん見方が分かれると思う。エンゾもあのまま二人の下で生活した方がいい気もするが、まあ母親は自分の子供を取り返したいでしょう。

 あの母親、そしてエンゾの将来は。それは想像するしかない。


2009年05月21日(木曜日)

 (21:25)新しいエッセイがアップされました。以下がURLです。http://premium.nikkeibp.co.jp/em/column/itou/index.shtml

 ところで今朝の番組には中原さんが来て下さったのですが、一つ聞き忘れたと思ったことがあったのです。それは患者さんの口から出たウイルスが、例えば机の上に飛沫として飛んだ場合に当該ウイルスが何時間生きているか、という問題。

 そうしたらさっきテレビのニュースが、アメリカのCDCの科学者の発表として、「2〜8時間」という数字を出していた。なるほど、その時間が経過すれば、患者さんがいた場所でも安全ということですか。一晩寝かせれば良い、ということですな。


2009年05月20日(水曜日)

 (13:25)すっごく納得でき、さらに少し勉強になった本を読みました。『「お通し」はなぜ必ず出るのか」というのです。タイトルの付け方はうまいのですが、本は全体としてはお店論、レストラン論です。

 「支店は出すな」「経営している企業の企業名は出すな」など、日頃私が思っていることが次から次と出てくる。「同じようなことを考えているものだ」と思う。この本は「次は飲食の店でも」と考えている人には良いガイドになるのではないでしょうか。

 街を歩いていて思うのは、よくまあこれだけの店が出来、そしてその数に見合う店が潰れているな、ということです。「改装屋だけが儲かるのではないか」と思うほど。この本は「なぜそんなことが起きるのか」「それを防ぐにはどうしたらいいか」を丁寧に解説している。さっと読めて面白かった。

 この本は著者が持っている知識の一部を出しただけのような気もする。本当に店を出したい人はもうちょっと彼の話を聞くのも良いかも知れない。数字として面白かったのは、1997年が日本のレストラン、飲食店の売り上げのピークで、その後は下がってきていて今は年間24兆円程度、という点。

 ところで、レストランの話が出たので思い出したのですが、「地中海料理」のコーナーに「Mario i Sentieri 」を入れました。良い店です。少しがやがやしていて、イタリアンらしい。最近「イタリアンはここがうまい」と思うようになりました。

 レストランを紹介しましたから、映画も紹介しましょう。「ベルサイユの子」です。確か銀座の和光の近くのシネスイッチで見たと思う。実にいろいろな見方が出来る映画です。この子は次々に捨てられる。母親に、そして一時は気持ちが繋がったホームレスの男性に。しかし次々に拾ってくれる人も出てくる。

 観た人はそれぞれの感想を持つのではないでしょうか。良い映画でした。


2009年05月20日(水曜日)

 (09:25)感染者数は累計で表示しますからどんどん増えていく。しかし、何日に何人増えたか(新たに発見されたか)という表を作ってみると、違った図式が見えてくる。日本の場合は以下の通りです。関西を中心に今発生している国内感染ケースです。ただし初日の12人の中に水際発見者の4人を含みます。

16日(土曜日)・・・・・12人
17日(日曜日)・・・・・72人
18日(月曜日)・・・・・79人
19日(火曜日)・・・・・30人
 で、合計が193人です。どのくらい完全に捕捉しているかは国によって違うのでしょうが、カナダなどは既にデイリーの発見感染者の数はゼロに近づいていると言われる。それが良いことなのだと思う。なぜなら、日本の場合はまだ死者が出ないで累計感染者が増えていますが、そうした状況が続くとしたら、時間と日にちの経過とともに早い時期に感染した人は「病状改善」ということで病院からリリースされている。だから、今までの感染者の数には入るものの、こういう方は通常健常者に戻るわけです。

 ということは、デイリーの新規感染者のゼロが例えば10日ほど続けば、国内の人ー人感染はほぼ収束と言える。火曜日の感染者が前日の79人から半分以下の30人になったのは良い兆し、というわけです。関西の一部地域での学校閉鎖が効果的だったのかも知れない。

 もっともこれからはA型の反応が出れば遺伝子の詳細検査をしないで直ぐにタミフルを処方するというような措置になる可能性があり、そうすればこの数字捕捉の前提が崩れる。まあしかし考え方として、感染者の累計は増え続け、今の日本のマスコミはこちらの数字を多用していますが、重要なのは感染者の増減の推移だと思う。

 今朝8時50分に発表された日本の今年1−3月期のGDP速報値は、マイナス15.2%。対前期比ではマイナス4%。これは戦後最大のマイナス幅。しかし市場の予想はマイナス16%前後が多く、予測機関によってはマイナス20%近くを予測していた向きもあったから、それよりは良かった。

 昨年秋以降の世界的な金融危機の影響で輸出が急減したのに加えて、「設備投資」や「個人消費」など内需の急激な落ち込みの影響が広がった。昨年10ー12月は前期比年率で14.4%のマイナスだった。二・四半期連続で2ケタのマイナス成長となるのも戦後初めてだそうだ。

 それにしても15%のGDPマイナスというのは大きい。一年かけて100が85になるということですから。これが続いたら大変な経済縮小と言うことになる。企業はもうからず生産活動は縮小し、雇用も危機に立つ。問題はこれが今年の残る期間戻るかどうか、来年はどうか、など。

 4−6月期に関しては「プラス成長」という見通しもあるが、GDPの6割を占める消費がどうなるのか、設備投資がどう出てくるかでしょう。政府支出は増加すると見込まれる。あれだけ大きな予算措置を取ったわけだから。

 そう言う意味では、昨日取り上げた消費者心理の改善がどう実際の購買意欲に繋がっているのか、ということでしょう。設備投資動向は内需とともに、外需の見通しが良くならなければいけない。


2009年05月19日(火曜日)

 (15:25)昨日の文章を読んだ私の友人が、リンク先のようなニューヨーク・タイムズの記事http://www.nytimes.com/2009/05/07/health/07party.htmlを送ってくれました。アメリカでは既にこんな議論が行われていたとは面白い。

 それにしても一日で17%の上昇というのは凄まじい。ここでも何回も取り上げたインドの総選挙で今のシン政権が継続する見通しが高まった事によるインドの株式市場(ムンバイ)の前日(18日)の上げです。この勢いを受けて、ヨーロッパの株も高くなり、それを受けてニューヨークもダウで230ドル以上の上げ。それを受けた19日の東京市場の株も250円程度の上げ。

 まあインドの上げはちょっと乱暴ですが、このところの世界の株式市場は上げ下げをかなり頻繁に繰り返している。それは世界経済の先行きに対する市場の見方が揺れている証拠でもある。そりゃそうで、揺れずに安定的な見方が生まれる状況でもない。

 昨日の日本のニュースで注目したのは、「消費者心理が大幅改善 4月の内閣府調査」です。それによると、4月の消費動向調査によると、日本の消費者心理を表す消費者態度指数(一般世帯)は32・4と前月から3・5ポイントの大幅な改善となったという。

 これは4カ月連続の改善で、金融危機が深刻化した昨秋以前の平成20年6月以来の水準だという。ということは、リーマン・ブラザーズの破綻以前の水準と言うことです。内閣府は消費者心理の基調判断を3カ月連続で上方修正し、「厳しいものの、持ち直しの動きが見られる」としているという。

 また興味深いのは、1年後の物価見通しについては「上昇する」との回答が8・2ポイント減の44・0%となったこと。つまり先行き物価は上がらないという見方の中で消費者の心理が上向いている、という状況。

 消費者心理の改善は、この半年の抑制の反動なんでしょうね。だからここでも統計の乖離が見られる。アメリカの住宅市場の改善見通しも「良い」「悪い」の繰り返しでしょう。その繰り返しの中で景況感が徐々に実体を見ながら定まっていく、ということだと思う。


2009年05月18日(月曜日)

 (22:25)今朝ふとこんな事を思ったのです。「あれ、感染した人には免疫が出来るのだろうか」と。新型インフルエンザについてです。なぜそう思ったのかというと、「60歳以上の人がなかなか罹患しない」ことに関して、「知らない間に同じようなウイルスにかつて攻撃されたことがあるから」という解説(すべての専門家が一致している訳ではない)があったからです。

 まったく仮の話ですが、もし一回新型インフルエンザに感染したら免疫が出来、その免疫が数ヶ月、場合によっては二年、さらにはもっと長く効くとしたら、「型が同じ」なら今後暫くは新型インフルエンザ(A/NIHI)にはかからなくなるのではないか、かかっても軽症状で済むと言うことではないか、ということです。例えば毒性が強まっても型が変わらなければ。

 当然のことながら、A/NIHIにかかってもH5N1のいわゆる鳥インフルエンザ(かつて言われた新型インフルエンザ)に対する免疫力が出来るわけがない。なぜなら型が違うからです。免疫が効かないと言うことは、罹患したらそもそも高病原性であるわけだから重症化する危険性が高い。鳥インフルエンザは依然として大きな脅威です。

 しかし一般的には今の新型インフルエンザは、多くの人に免疫がないが故に感染力は強いが、毒性は通常の季節性インフルエンザ並と報告されており、日本政府もその見解のようだ。ただし依然として”新型”なのでウイルスが不安定で、変異する可能性も含めて究極の脅威は分かっていない面がある。

 だから罹患した方が糖尿とかその他の重大な疾患を抱えている場合は最初から論外なのですが、「今の毒性だったら大丈夫だろう」と思った人がたまたま今の新型インフルエンザに罹患し、実際にあまり問題なく通過できた場合は、少なくとも今年の秋から冬にかけて来るかも知れない第二派、第三派の流行にはかなり立ち向かえるということになる。型が変わらず、免疫が残っていればです。今の新型インフルエンザが毒性が高まる遺伝子変異を今年の冬に向けて起こしても、型が変わらなければ効力がある。とそこまで思ったのです。

 まあ素人の発想です。しかし専門家の話も聞いてみようと思って、収録(久しぶりの「世の中進歩堂」)の合閧ノこうした問題に非常に詳しい友人に「この考えは間違っていますかね」と聞き、彼の友人の本当の専門家に聞いてもらったのです。そしたら「概ね正しい」ということでした。やっぱりそうか、という感じ。まあ専門家の意見もその人その人で違うでしょうが。

 地球上に生まれた人類は無菌状態でこれまで生きてきたわけではない。むしろ幾多の病気、ウイルスと戦いながら、それ故に免疫、抗体を獲得しながら生きてきた。だから「攻撃される」というのは、別の面で見れば「免疫を作るチャンスを与えられている」と考えることが出来る。

 赤ん坊を無菌室で育て続けるほど、後のリスクを背負うことはない。とすると人間はそもそも菌や病気、ウイスルとある程度戦って体内に抗体を作りながら生きていた方が結果的に強くなれる、ということもあるのでしょう。

 関西でやや流行の兆しがある新型インフルエンザとどう向かい合うか、に関しては様々な意見がある。アメリカや海外諸国は相当違う対応のようだし、日本政府の対応は既に今日の時点でも昨日とは変わっている。考え方はいろいろあって難しいし、この病気に罹患する人の健康状態も、それぞれ異なる。対応は違ってくる。

 しかし仮に新型インフルエンザにやむなくかかってしまって、それが噂通りの「弱毒性」のまま通り過ぎてくれたとしたら、「免疫を作ることに成功した」と前向きに考えることも出来る、と思う。あえて、それを狙うことはないが。


2009年05月17日(日曜日)

 (22:25)NHKの夜9時からの「マネー資本主義」の第二回を見ましたが、まあ金融のドラマとしては何とかして分かりやすいようにしたいという気持ちは伝わってきて、「どう作るのかな」と思って見ている人間には「そうきたか」と面白かった。

 ただし分かりやすいようにしたい、話を整理したいという気持ちが強すぎて、「ちょっとこれはどうかな」という点もいくつか。短期金利を上げても上げてもアメリカの長期金利が上がらない原因のところで、突然「ミセス・ワタナベ」が出てきたのにはちょっと驚きました。話を日本と結びつけたかったのでしょう。しかしそれは渡辺さんの責任ではなく、政策サイドの話が大きい。

 2000年代の半ば、アメリカ(というより世界の)の長期金利が上がらない謎(conundrum、グリーンスパン語)の理由としては、「市場経済のスパンの拡大(労働力供給量の潤沢さ)」「年金運用の長期化」「デフレ心理の残像」「ITを使った生産性の向上」など色々状況があったのに。まあ捨てて捨ててあれになったのでしょうね。

 翻訳にも問題があるように思いました。耳で聞いただけですが、日本がアメリカの長期債を売る売らないの話の中で、アメリカの発言者が「日本が長期債を売ればアメリカの金利に影響が出る」と言っているのに、下の帯では「アメリカ経済に影響がある」になっていた。これはちょっといただけないな、と思いました。

 問題は振り返りではなく、今の超刺激、超金融緩和を抜けた後に金融と財政をどのようなタイミングで引き締めに舵を切るかですが、その点を番組では最後に「できるのでしょうか」という疑問形で結んでいた。しなければバブルの繰り返しになります。

 一つ見ていて「あら」と思ったのは、昨年10月15日のクルーグマンとの私のインタビューのVTR、「あえて責任者を一人挙げろと言われれば、それはグリーンスパン」というクルーグマン発言部分が使われていたこと。半年しかたっていないのに、随分昔のような気がしました。

 あのVTRは惜しかったんですよね。ノーベル賞をもらった次の日でしたから、当然日本人として初めてインタビューしたわけで、当日でも電波に乗せることが出来たと思うのですが、クルーグマンがつかまったというのがうまく東京に伝わっていなかった。

 番組の最後に地球上の陸地という陸地からお金が落ちているイメージが映ったのですが、マネーの量をどう管理するのか、というのは今後ますます大きな問題となるでしょうね。締め過ぎればお金が回らなくなって大きな不況になる。締めずに膨らましすぎても市場の自律調整によって市場は収縮し、経済活動に不調をきたし、その結果不況になる。

 アメリカの金余りの張本人として番組はグリーンスパンとルービンの二人を挙げていた。しかしアメリカの好況、それをもたらした金余りを歓迎したのは、政治家も、市場関係者も、そして一人一人の国民もそうです。だからバブルは実は経済政策の問題と言うより、国の政治や、その背景ある国民の成長期待、富を歓迎する気持ちなどと密接に関係している。これらすべて関数をうまくコントロールしようとするのは非常に難しい。


2009年05月17日(日曜日)

 (15:25)今日の「世の中進歩堂」は、

  1. 人間の動きを瞬間にキャッチし、リアルに動くロボットハンド

  2. 光を映し出す不思議な布、フォトニック・テキスタイルでファッションが変わる

  3. 指先だけで操り、身につけられるコンピューターシステム
 などなどを紹介します。いずれもなかなか面白い。人間の動きを瞬間にキャッチし、リアルに動くロボットハンドは、東京大学の横井研究室で開発されたもの。“筋電位”という筋肉を動かすときに生じる電圧を、センサーで読み取ることで人間と同じ動きが可能となる。

 このハンド、義手として開発されたため触覚センサーをつけることで、触ったときの感覚も使う人に伝わるようになっている。研究室では、人の生活を支援するため人に優しい機械を次々と開発しているという。

 光を映し出す不思議な布=フォトニック・テキスタイルは、未来型ファッションのホープ、光る布。布自体に、集積回路やLEDライトが織り込まれているため、光を映し出すことができるという優れもの。光のデザインも手軽に変えることができるので、メッセージディスプレイや、インテリアなど様々な用途に使うことができる。番組で光り輝く画期的な布を紹介します。

 指先だけで操り、身につけられるコンピューターシステムも興味深いですよ。


2009年05月17日(日曜日)

 (09:25)木曜日に書いたインドの総選挙(下院、定数545)は開票が進み、どうやら現政権の国民会議派が率いる与党連合が過半数を大きく突破する見通しとなった。つまりシン政権が続くと言うことだ。もっとも事前の予想通り党勢を大きく伸ばしたものの、国民会議派(英語ではIndian National Congress)自体は過半数を得ることは出来ず、引き続きインドの政治は「連立」で進むことになる。

 私が注目していたのは、2004年にバジパイが冒した過ちをシン首相が率いる国民会議派連合がをきちんと生かして選挙に突入していたかどうかでした。実は今のインドの成長の軌跡は、今は野党になっているインド人民党中心の野党連合がバジパイ首相(当時)の下で敷いたものだ。規制緩和をし、外資に門戸を開放し。

 加速したインドの成長はバジパイ政権がもたらしたものだけに、2004年の前回総選挙では「バジパイの勝利」が予想された。しかし実際に選挙をやったらバジパイは負けた。その理由は、「成長の果実を得られていないと感じた貧困層が離反したため」と言われた。私の興味はシン政権はその教訓を学んだかにあった。なにせインドで選挙権を持つ7億人超のうち、半分以上はいわゆる「貧困層」と呼ばれる人達で、彼等の支持を得られるかどうかは枢要的に重要。

 シン政権は、いろいろな措置を講じていたようです。「借金の帳消し」「年間で最低100日の雇用保障」「学校での教科書無償化」などなど。日本で言えば驚くような政策だが、まあ政治というのは国によってそういうことはあるでしょう。

 シン政権の課題は大きい。中国と同じで、7%前後と見られる最低必要成長率(貧困層にまで成長の果実が回る、雇用が減らない)を今は下回っている。世界的な成長鈍化が背景ですが、その事態が続けば選挙民の期待を裏切ることになる。中国は財政に余裕があると言われるが、インドはかつかつのようです。外交も問題。左にパキスタンがあり、その上にはアフガニスタンがある。引き続きインドは国際政治の要です。久しぶりにインドに行きたい気持ちになりました。

 新型インフルエンザが関西を中心に発生していますが、厳格化した検疫体制を敷く前に入ってきていたが、大部分の人が軽症で済んで表面化していなかったのかも知れませんね。新型インフルの「再生産数」(一人の患者が何人に移すか)は1.4程度らしいので、まあ個人個人が出来る限り気をつければ防げる可能性もある。

 発症しても、時には何もせずにでも殆どのケースに置いて軽症で終わるケースもあるのでしょうが、望むべくは直ぐ対処(発熱相談センターへの連絡やタミフル、リレンザの処方など)すれば大部分の人について大きな問題にはならないと考えることが可能です。気をつけながら普段通りの生活を送ると言うことが原則でしょう。

 民主党の新党首に鳩山さんですか。これで次の日本の総選挙は祖父が首相経験者同士の争いとなる。「新しい人はいないのか」という印象。まあ今の状況からすると、新しい代表の鳩山さんかその次の代表なのか、民主党は政権を取るのでしょう。問題は、その次の総選挙だと思っているのです。その間にも、政界再編があるかも知れませんが。


2009年05月14日(木曜日)

 (17:25)「世界最大の民主主義国家」はインドのウリですが、中味は相当いい加減です。2006年にインドのハイデラバードの北の小さな村を取材したとき、「投票は一人一人がやるんでしょう....」と言ったら、村の人がこっそりと「村全体で指示された人にしているのです....」と小声で言っていた。つまり、自由の意志が必ずしも担保されていない民主主義なのである。

 むろん大きな枠組みの中では7億の民のかなりの部分、特に都市部では比較的自由な選挙が行われているのでしょうが、それでも私には村での取材が気になっている。今はどういう状態なのだろうか、と。インドには全国規模の党とは別に、いっぱい地方ごとの党がある。

 が故に、「インドの選挙はまた極めて予想が難しい」というのはよく知られた事実だ。私が2004年にインドに最初に行ったときはバジパイの人気が高かったのに、彼はその次の選挙で負けてしまった。非常に大きなショックを受けたものである。2004年のインド取材

 今終わろうとしているインドの今年の選挙はどうか。これがまた予測が難しいらしい。どの新聞を読んでも、「close India election」(ウォール・ストリート・ジャーナル)と出てくる。ということは、組閣はもっと難しいと言うことです。なぜなら、第一党になっても過半数なんてとんでもない。組合せでしか政権が成立しない。

 それにしても、一ヶ月かけて選挙というのもこの国らしい。「警備が間に合わない」という理由らしいが、その間の票の管理はどうなっているのだろうとか、いらぬ心配が沸いてくる。

 それにしても、鳩山さんはよく立候補しましたね。立候補記者会見で「小沢傀儡ではない」と言わざるを得ないところが彼の弱いところです。「代表ー幹事長」で民主党を引っ張ってきたのだから普通は一緒に辞めて鋭気を養うというのが自然だと思うが。人材難ですね。組合せもなにかデジャブー。

 人材難と言えば、『英BBC放送は12日、民主党「次の内閣」の財務相を務める中川正春衆議院議員が、「民主党が政権を握ったら、ドル建ての米国債は購入しない」と発言した』と報じたそうですが、もしそれが本当だとしたら不用意な発言と言わざるを得ない。1円の円高でどのくらい日本の企業が経営悪化に悩んでいるのかを知らないのかと思う。

 実際にこの発言もあって、ここ数日の円相場は大幅に上昇している。実際にその中川さんという人がなんて言ったのかは知らないが、通貨に関わる発言は控え目に、かつ慎重にするという常識もない人が「次期財務大臣」とはちょっと驚きだと思う。経歴を見させてもらったが、国際金融に詳しいという印象は全くない。サイトを見ても取材を受けた事実も、何と言ったのかという議員サイドの主張もない。否定もない。説明責任が欲しいところです。

 今朝気付いたのですが、日経CNBCの株価表示の画面がかなり見やすくなった。銘柄数を少なくしたためで、以前よりはかなり良くなったと思う。アイデアに拍手。ただし引き続きアップダウンの表示がなぜか小さい。高値、安値なんかあまり見ている人は少ないと思うからちょっと小さくして、アップダウンが重要だと思うのですが。

 新たに決めたコーポレートカラーのブルーは維持したいんでしょうね。それは分かる。なかなか良い色だと思う。人物が浮き上がる。ただし数字の表示には無理が出るケースもある。シェードがかかっている部分が霞むんですよ。


2009年05月13日(水曜日)

 (09:25)昨日今日で気付いたこと。それは、以前はそれぞれが存在感のあったhttp://www.nytimes.com ニューヨーク・タイムズhttp://www.iht.com/ インターナショナル・ヘラルド・トリビューンが結果的に同じサイトになってしまった、ということです。

 新しいURLは、「http://global.nytimes.com/」です。つまりグローバルなニューヨーク・タイムズが、結果的に我々のコンピューター場面に登場する「International Herald Tribune=The Global Edition of New York Times」となった、ということです。

 どちらのサイトに行っても、結果的にこのサイトに行き着く。NYtimesをクリックするとIHTが出てくるという不思議。ということは、二つのリンクは重複していて不必要だ、ということです。ただしこれは私がアメリカ以外に存在して、その上でサイトにアクセスしていると言うことをコンピューター・サイドが認識しているからで、もしかしたら在アメリカのコンピューターがアクセスすると「The New York Times」と出てくる可能性がある。

 もともとヘラトリはニューヨーク・タイムズの欧州版という色合いを濃くしていた。それまでニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストの共同発行(パリで)と言う形だったのが、2002年10月にタイムズがWポストに対しヘラトリの株式譲渡を迫り、「それに応じなければ国際英字紙を新たに発刊し、ヘラトリへの財政支援を打ち切る」と通告。その結果Wポストが株式売却に応じた経緯がある。

 その意味では、ここに来てニューヨーク・タイムズとインタナショナル・ヘラルド・トリビューンのサイトが合体したのは当然予想されたことかも知れない。経費も一サイト分減るし、経営が厳しい米新聞社としては体制立て直しの一つの切っ掛けを考えた、ということでしょう。まあ読者としてはいろいろな色合いのある新聞があった方が良いのだが、ちょっと寂しい。

 ところで、民主党の国会議員は、衆議院が112人、参議院が109人で合計で221人。この少ない人数でもしかしたら次の日本の首相になるかも知れない人物を決める。16日と言えばあと3日後ですからね。しかも今この文章を書いている時点では、どなたも正式には立候補声明を出していない。これで国民が聞きたい「どういう政治を」「どういう政策を」ははっきりしないでしょう。

 投票できる一を現職の国会議員に絞ったことは、「支持グループ」の構成員の数からして鳩山幹事長が有利だという。それが小沢さんの狙いとも。(辞めた小沢さんと)一蓮托生と言っていた人が突然小沢さんがやめたのに、小沢さんの後任に出てくるというこの不思議さ。ここでも説明責任がまったくない。酷いもたれ合いですな。

 後々の与野党連立の柱に鳩山兄弟が必要とか言う政界的発想があるらしいが、私に言わせればプロセスが曖昧だとその政治家に対するマンデートを渡せる気がしない。総選挙という清めはあるが、それにしても221人での「次期総理大臣候補の選出」は、いかがなものか。少なくとももうちょっと時間をかけて、党の代表選出過程を国民の前に示した方が良いものを。


2009年05月12日(火曜日)

 (09:25)昨日午後5時から出先で数人の方と一緒に小沢さんの辞任表明記者会見を見ていて、「本当に何も説明しない人だな」と思いました。「挙党一致」というやや古い言葉を繰り返し語るだけで、なぜ西松から巨額の資金をもらったのかなど我々が知りたいことに関して何も語らない。記者も何も聞かない(私が見ていた範囲です)。

a cat in the cup  政治は言葉ですから、あれだけ説明がなければ世論が厳しくなるのは仕方がない。「変わらずに生き残るめには、変わらなければならない」(「山猫」の中のセリフ)が一番記憶に残っている小沢さんの言葉ですが、彼は結局一番変わらなければならないところで変われなかったということかもしれない。実際難しいんですがね。変わることは。

 やはりあれだけ周囲の人が言うことにレスポンスしない人は一国の首相は無理だったかも知れない。私は本気で、「小沢さんだったら閣議や予算委員会もすっぽかす可能性がある」と思っていまいした。杞憂かも知れないが、そういう心配をせざるを得ない人だった。

 問題は昨日も書きましたが、今後の民主党です。党首(代表)は、言葉以上のその政党の国民に対する意思表示ですから、小沢以前の民主党を知っている人間にとっては、「あの政党はこの危機をどうやって切り抜けるのだろう」と思う。

 次の代表候補には、舞台を一回降りたような人も多い。政権交代を依然として望む国民が多い中で、民主党がどう国民の期待に応えるのか。民主党には小沢さんが辞めたくらいでまたあのだらしのない政党にはなって欲しくない、という気持ちもある。

 ところで、昨日初めて日経CNBCのスタジオで実際に収録をしましたが、何か新スタジオは空気が綺麗になった印象なのはokでした。以前のスタジオは空気がよどんでいた印象でしたから前進だなと思います。

 しかし以前も書きましたが、局がブルーを基調にしようとしていることは分かるとして、あの「株価速報」の画面にまでブルーを多用するのはいただけない。以前の同様の時間帯の画面に比べて、全く見る気が起きないのです。多分ブルーという色合いが良くない。あれは改善すべきでしょう。

 ところで、写真は今日から来日するロシアのプーチン首相が宿泊するホテルのカフェでお茶を飲んだ時に出てきた猫です。「カップの中の猫(a cat in the cup)」と私が名付けました。カプチーノに絵を描く店は多いのですが、「これは秀逸」と思いました。

 ロシアと言えば、先週の金曜日に「グローバル資本主義の未来」の完成を祝う集まりがあったのですが、その時にロシア問題専門家の石川さんに「ロシアは太陽光発電など自然エネルギーの世界的な拡大にどのようなスタンスか」と疑問を投げかけましたが、即時には返答はなしでした。でも私はこの問題を今考えているのです。

 この集まりにはなんと執筆者や関係者が全員集まった。まあ連休明けの7日、8日には普通なにも予定は入れませんよね。それが良かったのかも知れない。楽しい会合でした。高倉健や井上陽水が「地球特派員」を見ていたという驚きのリビールもあった。


2009年05月11日(月曜日)

 (15:25)党首討論が13日にセットされたと思ったら、それを2日後にして「辞任」ですか。前回は辞任撤回劇というのがありましたが、今回はないでしょう。党首討論をどう乗り切るのか見通しが立たない。

 ということは、民主党がここ数ヶ月試練に立つと言うことです。日本の二大政党制も。民主党にとっての試練とは、

  1. 次の党首をどうやって選ぶか。小沢さんのように曲がりなりにも党内をまとめ上げることができる党首は出るのか

  2. 新しい党首が決まったとして、その後の党運営がどうなるのか。右(核武装論者)から左(組合重視主義者)までいる中で、党の路線はどう決まるのか

  3. 新しい民主党に国民の支持は集まるのか。また説明されずに終わった小沢さんの企業献金の問題は最後はどうやって説明するのか
 辞任は党内世論も離れちゃいましたからね。予想されたことです。それにしても、公設第一秘書の逮捕は大きかった。あれで世論が全く変わってしまったのだから。うーん、早期に説明をしっかりすればちょっと状況は変わっていたかも知れませんが。そういうことをしない人だから。


2009年05月10日(日曜日)

 (19:25)街は歩いてみるものですね。大まかに言って「頭をいじる商売の店が増えた」(美容室など)という印象なのですが、びっくりしたのは「座・高円寺」です。なんと高円寺に新しい劇場が出来ていた。

 場所は環状七号線と中央線の線路が交わるところの北西の角です。依然は区の公民館かなにかがあった場所に、黒くてシックで落ち着いた劇場が出来ていた。今年の初めに出来たそうですが、オープンは今月初めだったそうです。今は「化粧」をやっているとか。いつか来たいなと思いました。

 ところで、今日の「世の中進歩堂」は、私が先に取材したナノテクノロジー特集です。昔から私はナノテクに興味があって、今回番組の企画もあって取材に行ったもの。

 結構びっくりする新技術が出てきますので、ご覧頂ければ幸甚です。


2009年05月09日(土曜日)

 (06:25)ほう、成田で3人が新型インフルエンザと確認されて病院に確保されているのですか。この3人は機内でインフルエンザの兆候が発見され、そのまま留め置かれ、その後成田の病院(感染症指定病院)に確保され、彼等と行動をともにしていた33人、3人の近くにいた16人弱も、成田の特定のホテルの特定の階に入れられている、という。

 それにしても、今朝のテレビは伝え方が下手ですね。「大阪の40代の男性教員一人と高校生2人」と連呼しているのでまるでこの3人が既に大阪に帰って、新型インフルエンザをばらまいているかのような印象を与えている。

 。厚生労働省は「水際で確保できたときには国内発生例とは言えない」という見方だそうで、だとしたら「国内発の感染確認」という表現は「あたかも感染した人が国内を移動している」という印象を振りまいている。間違った印象を広めている、ということです。

 まあもちろんこれから「国内を自由に移動できる人、していた人」が新型インフルエンザにかかっていることが分かるかも知れませんよ。しかし今の状況では、成田に封じ込められている。まだ街には新型インフルエンザには入ってきていない、と考えられる。もっとこの点をはっきりさせた方が良いと思うが。

 重要なのはこの新型インフルエンザが今の段階では「弱毒性」だということです。大部分の罹患者は一定の時間(7日ほど)のうちに治療を受け、その後も健康に気をつければ回復する。症状例も季節性インフルエンザ並に軽いし、タミフル、リレンザも効く。

 カナダ・アルバータ州の保健当局は8日(日本時間9日)、4月28日に死亡した女性が新型インフルエンザに感染していたと発表、同国で新型インフルエンザによる死者が出たのは初めてだそうだが、女性は30歳代で慢性的な健康問題を抱えていたという。

 もっと落ち着いた、現状が国民に分かる表現を使って欲しいモノです。


2009年05月08日(金曜日)

 (08:15)今朝6時に発表になったアメリカの主要金融機関19社に対するストレス・テストの結果は、FRBのサイトの中のこのページにPDFとしてアップされています。

 表紙まで含めると全部で38ページ。その最後の19ページが個別成績表で、その各ページの最後に「no need」とあるのが9社、「数字」、例えばバンカメだったら「33.9」とあるのが新規資本必要調達額です。単位はビリオンなので、バンカメは339億ドルとなる。

 一つ一つ見ていくと面白い。JPモルガンは「no need」だが、モルガンスタンレーは「1.8」と出てくる。日本ではあまりニュースになっていないが、モルガンスタンレーは資本不足を指摘されている。対してゴールドマンは「no need」。まあ私もスタンバイがあったので、全部はまだ読めていませんが。

 条件等については、ニューヨーク・タイムズに以下のような記述がありました。

The stress tests were aimed at estimating how much each bank would lose if the economic downturn proved even deeper than currently expected. Under the worst-case scenario ― an unemployment rate of 10.3 percent, an economic contraction of 3.3 percent this year and a 22 percent further decline in housing prices ― the losses by the 19 banks could total $600 billion this year and next, or 9.1 percent of the banks’ total loans, regulators concluded. Losses to the banks’ loan portfolios alone could total $455 billion this year and next.


2009年05月08日(金曜日)

 (00:15)ははは、この数日で一番目を丸くし、ちょっと驚いたこと。東京駅の丸の内北口のOAZOの本屋さんでの話です。

「グローバル資本主義の未来」  右の「グローバル資本主義の未来」本をその日か、その次の日に会う友人にあげようと思って5冊買ったのです。別の本一冊と合わせて。そしてそれをレジにもっていった。その時、レジの女性がこう言ったのです。「同じ本を5冊もお買いあげになるようですが、よろしいですか」と。

 ちょっとビックリしましたね。私が著者でないことが分からなかったとしても、例えば8冊買ったうち2冊が同じだったら、「同じ本が入っていますが宜しいですか」と聞くのは分かる。しかし私はレジに持って行った6冊のうち5冊が同じ本なのです。普通は、「ああこの人はこの本を大量に必要なんだ、教科書にするのか....」くらいに考えるのが自然じゃないですか。

 聞かれた私は「はい」以上は何も言いませんでしたが、その時可能性として思ったのは、「ひょっとしてこのレジの方は、私がちょいボケ状態だと思ったのかな.......」なんて。まあレジの方に悪気はなかったのでしょうが。言葉は難しい。

 ところで、この本を今日改めて読んだのですが、岡本さん、石川さんのロシアとウクライナに関する記述が非常に私には改めて興味深いと思いました。というのも最初この取材の話を聞いたとき、私がアメリカを担当して、「じゃ、ヨーロッパは誰だろうか」と思ったら、ヨーロッパではなくロシアとウクライナを岡本さんが石川さんとともに担当されると聞いて、ロシアはまだしもなぜウクライナなのか、と思ったのです。本はヨーロッパが抜けるとおかしいので私が書きましたが、自分の知識がない部分だけにロシア、ウクライナ編は面白かった。

 特に111ページの「ロシアがどうしても宿命として普通の国・国民国家になれないということである」やその次のページの「帝国としてのロシアと国民国家としてのウクライナは共通の歴史を持つだけに、その相互理解の道は遠い」は示唆に富む文章です。

 なぜロシアが普通の国になれないのか。石川さんは「多民族、広大な領土.....」と説明。面白かったのは、ロシア(国民)は何においても世界から注目される偉大な国でなくてはならないと考えている、という点です。アメリカとともに世界を二分した過去を持つロシア。しかしその一種のプライドが世界との対立の種にしばしばなる。

 この本を読みながらはっと思ったのは、「ではロシアでは、石油に代わるエネルギー源として太陽光発電が注目される時代をどう考えているのだろうか」という点です。むろん、ロシアが豊富に産出し、そのパワーで国際政治での復権への道を歩もうとしている石油や天然ガスの「資源としての重要性」が直ちに減ずるわけではない。しかし今のグリーン・ニューディールは明らかに資源国の相対的な地位を将来には下げる。なぜなら、太陽や風は世界の国が比較的平等に恩恵を受けることが出来るからです。

 そういう意味では、日本は明らかに再生可能エネルギーへの移行をモット積極的に進めるべきでしょう。うーん、この本はロシアやウクライナを考える良いきっかけになりました。


2009年05月07日(木曜日)

 (17:15)新しいエッセイが公開されました。今回のエッセイは太陽光発電に関わるもので、日本の退潮・途上国の伸張を取り上げ日本の政策をしかる内容となっています。結構深刻だと思うのですが。

 ところで連休空け7日に非常に大きく画面と作りを変えたのは日経CNBCです。サイトもそうですが、今朝の午前8時半からの放送を見ていると、ブルーを局のイメージにしたようでいつ見てもこの局はブルー基調の画面になっている。

 朝一番のモーニングのMCは榎戸さんに代わったのですが、その他の面子にあまり大きな変化はない。榎戸さんとはインドの番組で一緒だったかな。なぜ今という変な時期に放送が大きく変わったのかと言うと、以前もお伝えしたとおり局自体が新しい日経本社の20階(だったかな)に移ったため。

 スタジオは非常に綺麗になって、私も来週の月曜日に改めて今度は放送のために行くのですが、一つ「あれっ」と思ったのは、アナログ放送がまだかなり多く、画面が鮮明でないことかな。デジタルを見慣れた目には、例えばチャートなどが鮮明でない。数字も。課題は世の中デジタルになったなかで、いつまでアナログパートを続けるのかでしょう。速く脱出して欲しい。

 今日の英語の新聞を読むと、どの新聞にも一面トップかその周辺にアメリカ政府が日本時間お8日午前6時に発表するストレステストの観測記事が出ている。バンカメは350億ドル)、シティが100億ドル弱という内容(資本不足額)。まあ銀行には火曜日に既に通知を始めたと言うから報道に漏れ出てくるのも分かる。さて実体はどうか。報道通りだったら「織り込み済み」となる。

 それにしても今の世界の株価の上昇は、ちょっと足が速い。先を読んでいるとしても、市場参加者の一部の売るための買いの臭いを感じている人もいるようだ。株価の動きをじっと見ている人の一部には、「世界の株価は5ヶ月置きに調整を入れている」と指摘する人もいる。観測の域を出ないが、私もちょっとtoo fast と感じるときがある。

 先日書いた高橋建の先発は8日はなくなったようです。この週末の楽しみだったのに、ちょっと残念。


2009年05月06日(水曜日)

 (09:15)「渋滞回避術」を一つ。関西のテレビ番組でも紹介したのですが、グーグルに「渋滞 高速」と入れると、ほぼ間違いなく「日本道路交通情報センター」のホームページが2番目か3番目に表示されます。そこで、自分が移動したい地域の道路を日本地図の上でクリック(高速道路の場合は「高速」のところを)すると、その地域の道路渋滞状況が標示されます。

 私も連休中に車で500キロ以上移動しましたが、これを見て渋滞のトレンドを読みながら、かつ時間的要素(一日のうちで一番渋滞が少ないのは全国的に朝の早い時間)を加味しながら出たので、一度も渋滞に巻き込まれませんでした。渋滞は見ていると時間的要素が大きい。下りは午前中から昼頃が、上りは午後から夕方にかけて。

 私の移動は時間を気にしないものでしたから、渋滞(中央高速)の解消の方向が明らかに見えた午後に東京を出て、東京に帰ってくるのは朝の比較的早い時間にした。一日中混んでいる高速道路というのはまずない。まあその時間を選べるかどうかがポイントですが。あとは、渋滞したら左車線が速いとか、渋滞しても高速を降りるな、なんてのは皆さんご存じの知恵でしょうが。

 今朝の新聞記事では、朝日新聞の2面の「ロシアは変わるか」が面白い。今までの強権政治のイメージを変える動きをメドべージェフとプーチンが合意のもとで行っているようで、「ロシアをどう変えたいか」とのロシアの新聞(政権に批判的な)に対するメドべージェフの「当たり前の水準で生活できる効率的で強い国。ヨーロッパの一部である民主的な国」と答えているのが印象的。「効率的」が印象的ですね。選んだ新聞といいメッセージ性がある。

 今の「タンデム」な政権(二頭政治)は、汚職一掃に踏み出したそうで、それは今までのロシアの政権にとっては非常に大きな賭けだそうだ。「汚職に関与していない役人は一割しかいない」という驚くべき記述が朝日の記事にはある。中国もロシアも共産主義政権時代の悪弊を引きずっている、ということになる。

 ところで今ヤンキースタジアムでの対ボストン戦を見ながらこの文章を書いているのですが、確かに今朝のNHKがやっていたようにヤンキースタジアムのバックネット裏の席は野球場には例の無いような劇場風の、居心地の良さそうな椅子ですね。25万円で売り出したがほとんど空席で、今は12万だそうです。それでも空白がある。小糠雨が降る天候のせいでもあるのでしょうが。

 ヤンキース対ボストン戦と言えば今ヤンキースの4連敗。なかでもエルスベリーにホームスチールを決められてしまったことが記憶に残っているのですが、このホームスチールに関して福本さんという方から以下のメールを頂きました。

 ところでNPBでのホームスチールが少ないというお話ですが、私も詳しい統計を持っているわけではないのでMLBと比較して云々は出来ませんが、日本ハムファイターズは今年4/16のオリックス戦で金子誠選手がホームスチールを決めております。それでも公式戦では6年ぶりとのことなので、決して多いとはいえませんが、オ−ルスターでは2004年新庄、2006年森本が決めておりますので、チームとしてはまあ2年に一回くらいはあることと言えるのかなと思っています。今年のオープン戦ではヤクルトの選手が決めていたようにも記憶しています。

 伊藤様が見た記憶がないと仰られる最大の理由は、TV中継の最も多い某チームのホームラン至上主義が原因ではないかと。なにしろパリーグの試合は、ダルビッシュ、岩隈の開幕戦すら放送されませんからねぇ。

 あ、それから現役時代鈍足で有名だった楽天野村監督は、確か1シーズン2ホームスチールの記録をお持ちのはずですが、これもパリーグの話ですからね。

 ははは、野村監督のホームスチールね。当時の野村さんはかなり痩せていた、と思ったのですが。ダルビッシュと岩隈の初戦が中継されなかったことに関しては、私もあちことで散々文句を言わしてもらいました。あれは酷い。WBCで盛り上がった日本のプロ野球に冷水を浴びせるようなことだったと思う。


2009年05月05日(火曜日)

 (14:15)最初「高橋建」と聞いたときに、「だれだっけな」と思ったくらいでしたが、顔を見て思い出しました。5月2日は本当に良かった。40才でのMLBでのデビュー。第二次世界大戦以降ではサチェル・ペイジの42歳、ディオメデス・オリーボの41歳に次いで史上3位の高齢記録だそうで、日本人では一番年が行ってからの見参。

 今見たニュースによると、その高橋が8日(日本時間9日)のメッツ本拠地でのパイレーツ戦でメジャー初先発することが4日決まったという。あのマニエル監督が「金曜(8日)には高橋を先発させる」と話したことで、ほぼ確定した。

 もともと8日は左腕ペレスの先発予定だったが、不調のため中継ぎに回り、初登板となった2日のフィリーズ戦で2回2/3を1安打無失点と好投した左腕高橋が代役を務めることになったという。ははは、楽しみだな。週末の。中継はないんだろうか。

 ところで、アメリカで亡くなったメキシコ人の赤ちゃんを含めてメキシコの方々にしか死者が出ていない新型インフルエンザ。ではなぜその他の国々では死者が出ないのか、については徐々に答らしいものが見えてきている。それは「アクセス」です。

 筆者が4月29日にお医者さんの発言を引用して書いておいたポイントですが、今朝の朝日新聞の一面に載っているメキシコ呼吸器系疾患研究所付属病院の専門医は、「発症後7日以内に治療を受けた人のほとんどは回復している」と述べている。

 それによると死亡した人達は大半が、「今回の新型インフルエンザの知識がないまま、症状が重くなるまで高額の負担につながる医療機関で受診せず、市販薬で治そうとした人達。発症後15日間を過ぎるまで治療を受けなかった人の96%が死亡している」という。つまりほっておかずに病院に早めに行けばなおる、ということだ。

 また「アメリカでも重症化した人の多くは、他に重要な疾患があった人が合併症を起こしてなっている」という専門家の発言もある。つまり、「HIVとかの疾患のない通常の健康状態の人が今回の新型インフルエンザ(Influenza= A/H1N1)になってもちゃんと病院に行って治療を受ければ、まず死ぬことはない」ということです。

 「アクセス」とは医療機関への、そしてタミフルやリレンザへのアクセスです。隣が病院だって、支払う治療費が無ければ、また保険がなければお金の掛かる病院には行けない。自分でなんとか直してしまおう、と思うでしょう。時間が経過して病状は悪化し、そして15日間が過ぎてしまうということになる危険性がある。

 その場合はいくら病院が近くにあっても「アクセスは遠い」。メキシコの場合は貧富の差が非常に大きいだけに、「(感染者の)アクセスの問題」(地理的条件を含めて)は他の先進国に比べて非常に大きいと思われる。もっとも似たような状況にある国はたくさんある。

 WHOも「途上国が問題」と言っているが、それはこのことを言っているのでしょう。そういう意味では、今のところメキシコ以外の感染者が主に先進国かそれに近い国、途上国を脱した国に多いのはラッキーかも知れない。しかしこれだけ感染者が世界21カ国千人を超えると、いわゆる途上国に入っている可能性は十分ある。そして最悪なのは、それが報告されていないケースだ。

 これだと事態は深刻化する。連休中に遠縁の医者と話をして、「インドやその他の大きな開発途上国に新型インフルエンザが出ていないのはラッキーなのか、報告されていないだけなのか」という話をしたが、「前者であることを望む」というわけです。というのは新型インフルエンザは症状はどうやら非常に軽く、気がつかないくらいに直ってしまう場合もある、という。その手の病気こそ一気に広がるのです。

 それが今の世界にとって一番のリスクだと思う。


2009年05月04日(月曜日)

 (06:15)それにしても、4月の日米の新車販売台数は厳しい数字だ。日本は軽自動車を除く新車販売ベースで前年同月比28・6%減の16万6365台となった。4月としては統計開始(1968年)以来最低の水準。何しろ「20万台割れ」というのがショッキングで、これは41年ぶりだという。内訳は、乗用車が27・2%減の14万6478台、貨物車が38・2%減の1万8963台、バスが21・4%減の924台。

 アメリカも悪い。「オートデータ」のまとめによると、同国国内での先月の新車の販売台数は81万9500台余りで、これは前の年の同じ月に比べて34.4%減少した。3月は私の記憶が間違っていなければ85万台の大台だったから、そこからまた減少したことになる。これは18か月連続のマイナス。

 このアメリカの月次販売台数をベースに計算すると、今年1年間の販売台数推計は932万台となる。引き続き1000万台割れという深刻な販売不振が続く見通し。今回の危機以前には普段の年はアメリカでは年間1650万台程度が売れていた。ほぼ市場が半減したことになる。

 私が直近で覚えた中国の月間販売台数は111万台で世界最大だった。111万台と16万台。人口比と言えばそれまでですが、随分と市場規模が違ってしまった。世界の自動車メーカーが中国シフトを強めるのも仕方がない。ただし日本では16万台の普通車とは別に11万7670台の軽自動車が売れているが、これも3月に続き二桁減で、具体的には13・4%減。

 ところで、WHOのホームページを覗いたら、いままで「Swine influenza 」と表記されていた名称が「Influenza A(H1N1)」に変わっている。海外の新聞などは、ニューヨーク・タイムズなどが表記を「A/H1N1」にするなど、脱豚現象が見られる。ただしFTなどは依然として「swine flu」(豚流感)のまま。

 これに関連して、朝日新聞のこの記事は面白かった。いずれ消えてしまうことを懸念して文章を残しておくと、「感染者に近づけばメールが届く 携帯電話で秋にも実験」というタイトル以下は

 利用者の居場所を特定できる携帯電話の全地球測位システム(GPS)機能を活用し、感染症の世界的大流行(パンデミック)を防げないか――。総務省は今秋にもこんな実験に乗り出す。新型の豚インフルエンザの感染拡大懸念が強まるなか、注目を集めそうだ。

 実験は都市部と地方の2カ所で計2千人程度のモニターを募って実施。GPSの精度や費用対効果を見極め、実用化できるかどうか検討する。

 具体的には、携帯電話会社などがモニター全員の移動履歴をデータベースに蓄積。その後、1人が感染症にかかったとの想定で全モニターの移動履歴をさかのぼり、感染者と同じ電車やバスに乗るなど感染の可能性がある人を抽出し、注意喚起や対処方法を知らせるメールを送る試みだ。

 こうした個人の移動履歴や物品の購入履歴を活用するサービスには、NTTドコモが提供する携帯電話サービス「iコンシェル」などがあり、今後もサービスの増加が見込まれている。ただ、プライバシーである移動履歴をどこまで共有して活用できるか、といった点は意見が分かれる。このため、総務省は実験を通じ、移動履歴の活用に対する心理的抵抗感などもあわせて検証する方針だ。

 ポイントは第三パラグラフですね。「モニター全員の移動履歴をデータベースに蓄積」とある。まあ今での履歴を取ろうと思ったら出来るのでしょうし、データをどのくらい保持しているのか知りませんが、ログは取っているのでしょう。費用対効果もそうですが、個人のプライバシーと公衆衛生面のメリットとのせめぎ合いです。

 ただし技術の進歩の中で、「こういうこともできる、ああいうことも出来る」という検討を進めておくことは必要でしょう。


2009年05月03日(日曜日)

 (09:15)予想したとおり、高速道路のあちこちで激しい渋滞が起きているようですね。その合閧縫ってちょっと出掛けたいところがあるのですが、タイミングが難しい。今年は早朝も午後も混んでいるようで。一般道を行く....でも混んでいるでしょうね。しかし昨日は都内を移動しましたが、特に渋滞はなかった。

 道路も混乱気味ですが、連休が終わって大勢の人が海外から帰ってきたときの日本各地の空港は、大混雑になるでしょう。疑いが出れば数時間も足止めですし、これを書いている時点で「機内検疫」を担当する検疫官が足りなかったりして、「タイ便の160人が検疫漏れ」というニュースもある。

 この文章を書いている日曜日の朝現在、外務省の海外安全ホームページを見ても、「十分注意して下さい」が15カ国に及ぶ。この数は増えるでしょう。隣の韓国も入っていますから。今年はウォン安もあって韓国に行っている人が多いに違いない。

 メキシコだけが「渡航の延期をおすすめします」になっていて、そこをクリックすると「感染危険情報」が出てくる。中味は

 《渡航者向け》
    :「不要不急の渡航は延期してください。」

 《在留邦人向け》
    :「不要不急の外出は控え、十分な食料・飲料水の備蓄とともに、
     安全な場所にとどまり、感染防止対策を徹底してください。」
     「今後、出国制限が行われる可能性又は現地で十分な医療が受け
     られなくなる可能性がありますので、メキシコからの退避が可能
     な方は、早めの退避を検討してください。」

 とある。そのメキシコの第二の都市グアダラハラにお住まいの方から、以下のメールを頂きました。今の世界の関心はメキシコを離れて他の国々に移っていますが、出発点の国がどうなっているのかは重要です。メキシコは「GS、薬局、スーパーを除いて休業」となっていることは報道されているのですが、このメールにはそれ以上の情報が詰まっている。ちょっと紹介します。
 初めてメールさせて頂きます。メキシコに駐在しております。海外にいるので、いつも伊藤さんのPodcast, ホームページを興味深く拝見しております。(Gainerの連載も時々見ます)

 今日メールさせて頂きましたのは、こちらメキシコでの新型インフルエンザの状況を お伝えしたいと考えたからです。非常に幅広い人脈をお持ちの伊藤さんですので、すでにご存じの情報になるかも知れませんが、ご容赦下さい。

 今回の件は経済にも大きな打撃を与えています。すでに報道にあります通り、5/1から5日までの間、メキシコではガソリンスタンド・薬局・スーパーなどの店舗を除いて休業となっています。学校も同じくです。サッカーなども無観客試合があったり、いつもの活気は消え失せました。

 昨年10月以降、ペソが大暴落し、景気に激しくブレーキがかかっていたところにこの 騒動で踏んだり蹴ったりです。元々US$1=10-11ペソでしたが、それが今年の3月には15.4ペソまで下落していました。4月の半ばには中銀の介入もあって、一時13ペソまで戻しましたが、WHOのフェーズ4発表の時点で14ペソまで逆戻りです。ペソが下落したことでアメリカを中心に「メキシコは割安」と考えて観光客が底堅く来ていたのですが、この連休はカンクン・ロスカボスといった有名リゾートも連休にも関わらず稼働率10%ほどのよ うです。私自身も旅行に出る予定でしたが、妻は会社命令で帰国し、駐在員は基本的に外出禁止となっています。

 こちらの駐在員には安心の材料になった「日本政府、メキシコ大使館へタミフル送付」というニュースですが、実は全く頼りに出来ない、ということがわかりました。問い合わせをして確認したのですが、事前にもらうことはできず、医師の診断書を持って、メキシコシティーの大使館へ取りに行き、受け取ることができるそうです。

 私のようにメキシコの地方に住む者には利用は不可能です。またマスクも配布していると聞きましたが、1旅券に対して1枚しかくれない、と本当におかしいです。またタミフルを受け取るとその旨をパスポートに書き込まれるそうで、その後何らかのハンデになるのではないかと心配です。日本政府には頼らずに、個人・会社単位で立ち向かうしかない、というのが実情です。

 タミフルがあるとインフルエンザには効果がありますが、死亡に至るか否かを決める のは他の病気を併発するかどうか、が重要であって、特に肺炎の発症が懸念されています。ただし、こちらの日本人医師によると肺炎を抑える消炎鎮痛剤や抗生物質はすでに品薄になってきており、今後さらに事態の悪化を招く可能性があります。その医師によるとワクチンや薬品を海外から取り寄せようとすると税関で盗まれて届かないそうで、国として非常に大きなパニックに陥っています。私の親族もマスクを送ってくれましたが、届 くかどうか微妙です。

 以上、断片的かつまとまりが欠けているかも知れませんが、メキシコの現状です。 日本への入国を防ぐために力を注ぐ日本政府を見て、改めて日本はよい国だと思う一 方、大使館にはしっかりしてほしい、と思っています。

 長文にて失礼いたしました。

 メキシコの日本大使館の対応に関しては、このリンクがあります。確かに「旅券(パスポート)1通につき、マスク1枚を配布」とある。

 この文章を読むと、病気が経済活動にも大きな影響を与えると言うことが分かる。メキシコの有名な観光地の稼働率が10%というのはちょっと酷い。続けば対象となるかなりの業種が打撃を受ける。その一方でメリットがある業種もあるのでしょう(例えば室内ゲーム製造企業など)が、そもそも人の動きが鈍れば、経済活動は低下する。この文章を書いている途中で、この方から以下の追加情報が来ました。

 (グアダラハラは)周辺地区も含めて400万人ほどが住む場所ですが、連休ということもあり、人が街におらず、またスーパーに行くとショッピングカートの取っ手を消毒してくれ、また野菜やパンは透明のビニールシートをかぶっていました。やっと人々の警戒レベルが上がってきたようです。
 うーん、街に人がいない、というのは不気味ですね。アメリカを通じて入っているニュースは、「アメリカではニューヨークでもマスクをしている人はごく僅か」「メキシコとの国境もゆるゆる」といったものばかり。あまりに神経質になるのは問題ですが、ちょっとアメリカにもしっかりして欲しい、と。

 まあ救いの一つは、今回のreassortment の新型インフルエンザが「依然として弱毒性」ということでしょうか。


2009年05月01日(金曜日)

 (05:15)日本時間の1日午前1時にオバマが記者会見して発表した「事前調整型(プレパッケージ)のクライスラーに対する破産法11条の適用」は、同じようなレガシーコストや債権者問題を抱えるGMも、同様の措置がとられる可能性を高めたと言える。プロセスは、「破産法申請→改めての再建」。クライスラーの場合は、その間にフィアットとの提携が入る。

 もともとアメリカの連邦破産法11条は、日本で言えば民事再生法に相当するもので、「企業の終わり」を意味するのではなく、「企業再生の再出発」を意味する。今までクライスラーが目指していたUAWや債権者(銀行やヘッジファンド)との合意に基づく再建よりも「50〜60日以内での短期再建」の道が開けたことになる。破産法の適用ですから。

 破産法申請が行われたのはニューヨーク市の破産裁判所。これもシナリオ通りなのですが、オバマ大統領は同時にクライスラーがイタリア自動車大手のフィアットと提携することで合意したことも明らかにした。米政府は追加融資などでクライスラーを全面支援する方針。

 今見たニューヨーク・タイムスにはオバマ大統領の発言も含めて、以下の引用がある。

“I have every confidence that Chrysler will emerge from this process stronger and more competitive,” President Obama said during a noontime appearance at the White House.

The president emphasized the speed with which the administration expects the bankruptcy process to be completed, saying that it would be “quick, official and controlled” and that the lives of those who work at Chrysler or live in communities where the company has its operations would not be disrupted.

 つまりクライスラーの労働者、クライスラーの工場など施設があるコミュニティーのこれまで通りを約束している。しかしこれは「安心材料を与えた」ということでしょう。やはり再建後のクライスラーがうまく回るかどうかは
  1. 破産法の適用でクライスラーのレガシーコストがどの程度カットされ、それが同社の競争力回復に繋がるか(今までの労組との合意は大切にするのでしょうが)

  2. フィアットとの提携がうまくいくかどうか。フィアットの関係者も入る新経営陣がどう機能するか

  3. それよりも、新しい会社になってどの程度素早く国民にアピールする車を作れるのかどうか
 など課題は多い。破産法適用でどうなるか分からないが、確か以前の計画ではUAWが新会社の経営権の55%程度の権利を持つはず(レガシーコストの引き下げで譲歩した代わりに)なので、ではリストラの為に労働者をカットしようとしたら、「労働組合出身の経営陣が労働者を切る」というような形になるが、それができるかどうかなど課題は多い。

 しかしなんと言ってもフィアットと提携するのはよいが、イメージとして「フィアット→小型車」、「クライスラー→大型車」という大きな齟齬が厳然として存在する中で、新しい会社がどのくらい機敏に「売れる車」を作れるのかにかかってきている、と言える。

 以前からずっと言っているのですが、GMも破産法11条の適用が不可避でしょうね。しかし今のGMには提携相手が今はいない。米政府が実質的にはGMを経営するような形になるのかも知れない。その場合は、同社の先行きはこれまた不安定になる。やはりここでも大きな課題は「売れる車」だ。私の印象では、今のGMには魅力のある車はない。

 私は知らなかったのですが、自動車メーカーに対して破産法11条の適用されるのは1933年のStudebaker以来だという。私が知っている限り、この名前は今では米自動車業界の中には残っていない。

 また私の記憶では、フィアットもクライスラーもエコ技術で優れているという評判を聞いたことはない。では、新会社は売れるエコ車の技術をどこから入れるのか。フィアットはアメリカの市場に参入する良い機会を得たが、では「フィアットに乗るアメリカ人」を想像できるかというとなかなか難しい。フィアットは今の予定だと新会社への参加比率は20%前後。ちょっと中途半端だ。

 まあ改めて思うのは、「環境への対応で機敏」と言われる続けてきたアメリカの企業でありながら、なぜクライスラーに象徴されるような自動車メーカーが、GM、フォードを含めてここまで経営実態を悪化させたのか、それが放置されたのかです。慢心、甘え、新技術への無関心、短期経営視点.....といろいろある。

 アイアコッカの改革があっても、ダイムラーと提携しても駄目だったクライスラー。ドイツが撤退してイタリアが来たが、いかんせん勝算は見えない気がする。GMはクライスラーに比べて遙かに図体が大きい。アメリカを代表する企業でもあったGMの再建は、実は容易ではない。

 救われるのは、市場が落ち着いていることだ。ニューヨークの株式は朝方は大幅高だったが、その後下がったものの前日引値近辺で動いている。為替市場も円高には動いていない。むしろドル高・円安になっている。アメリカ経済の回復も、世界経済の回復もまだまだ試練が続く。

 ところで、「豚インフルエンザから変異した新型インフルエンザに感染した疑いがある患者を日本で初めて確認したと発表した。患者は横浜市在住の男子高生(17)で、カナダから帰国した後、国内で発症した。」(日経)というニュースが。まあでもこの高校生はAソ連型(同じH1N1)の可能性もあるという。

 一方でカナダから帰国した婦人に関しては、「30日午後3時半過ぎに成田空港に到着した米ロサンゼルス発の航空機内で、発熱を訴えた日本人女性(25)に対する簡易検査で陽性反応が出た。しかし、遺伝子検査を行ったところ、A香港型で、新型インフルエンザではないことが判明した」(読売)とのこと。この婦人は厚生労働省が言うところの「新型インフルエンザ(豚インフルエンザH1N1)」ではなかったと言うこと。

 日本にはまだ「新型インフルエンザ」に罹患したと確定した患者はいない。疑いのある高校生が一人だけ。それにしても、ウイルスの遺伝子調査にはちょっと時間がかかるようですね。

 なおクライスラーの破産法11条申請が何を意味するのかに関しては、ニューヨーク・タイムズのこのサイトがよくまとまっている。



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