2009年09月30日(水曜日)

 (11:58)一昨日書いた某銀行の窓口での振込に関して、「受付時点では振込先の口座・名義確認が行内システムでは直ちにはできないため、客が店から離れたずっと後で客が書いた振込用紙に従って金融機関名、口座番号と名義にとりあえず振込を実施している」「それが間違っていて返金になった場合には個別に時間をかけて客に店頭に来てもらって取り組み直しをしている」という問題に関しては、どうやら日本中の銀行がそのレベルにとどまっているようです。

 講演先の地方銀行の幹部の方からは、「伊藤さんのネットの文章を読みましたが、あれは日本の銀行全体が抱えている問題ですよ」「古いシステムの上に新しいシステムを継ぎ足ししていったのでどうしようもないんです」と聞きましたし、あちこちから頂いたメールにも「我が社もそうです」というのがいっぱいあった。

 ということはですよ、銀行の窓口(ATMでなく人的振込)がどうなっているかというと、

  1. お客さんが書き込みをした窓口振込の用紙を受け取りました
  2. その時点では書かれている金融機関(農協など山ほど金融機関はある)、相手先口座があるかどうか、名義が合っているかどうかは確認できない。なぜならその種の仕事をしてくれる行内システムがないから。必要項目が書き込まれているかどうかだけ確認する(主に窓口の女性の仕事です)
  3. その後で、全銀協だかなんだか知らないが他行の口座(書かれた通りの金融機関の口座)への振込手続きをその通りにしてみる
  4. 手続きをして相手先金融機関から何も異常の連絡がなければ、「送金できたんだ」と判断して「振込完了」と一端判断する
  5. ところが、書かれた金融機関がなかったり、相手先金融機関から「該当口座なし」など返金されてきたら、「お客さんが書いた用紙のどこかが間違っていた」と判断して、客が残した「昼間連絡できる番号」に電話して、「振込が出来なかったのですが」と伝えてお金は預かりとし、客からの次の指示を待つ
  6. 客にはもう一度店頭にまで来てもらい「取り組みのし直し」をする。その際には最初の取り組み分の振込手数料に加えて、取り組み直し手数料も現金で徴収する
 ということでしょうか。どえらいことですな。これでやっと銀行の振込手数料が異常に高いのが理解できる。凄い人手が必要ですよ。これだけの作業をやるには。客の書いた紙が唯一の手がかりになり、それを行員何人もがキー操作して、その紙に間違いがあれば客の不機嫌な声と対処し、客に店頭にもう一度来てもらって取り組み直しをする。

 ネットバンキングであれば2秒で出来る作業を、多分何人もの人が何十分もかかってやっている。私のように振込先の口座などを間違えた客がいたりしたら、その後数時間も場合によっては数日間も、振込出来なかったお金の置き場に困る、客には来てもらわねばならない、という事態。

 気が遠くなるような話ですな。各銀行のネットバンキングを見ると、振込が出来る金融機関の数は多くなっている。しかしネットを使おうと思えば使える私のような人間ばかりではないでしょう。ATMもなかなか使えない人は多い。行内システムでも、振込先金融機関と口座確認、名義人確認が出来れば問題は解決するのです。あとでもう一度客に来てもらう必要もない。

 「古いシステムの上に新しいシステムを.....」というのが本当だとすると、「いつまでもこの状態で行く」ということでしょうか。それも大変なことですね。個人的には、「ネットですべて完結できるようにして欲しい」ということです。振込手数料が少なくて済む。しかし、今後老人が増えて結構これは大変な問題ですね。字がきちんと書けない人も増える。私のお袋も晩年はなかなか字を書くのが大変そうだった。

 とすれば、行内システムをネットベースにすることではないでしょうか。だってネットでは出来ているのだから、「相手先の金融機関と口座番号と名義人」を確認するためのインターネットベースの簡単なシステムなど出来るでしょう。最低。

 銀行のシステムが非常にrigid であることは承知の上で、革新的なアイデアでこの問題を乗り越えて欲しいと。でなかったら、銀行など日本の金融機関(サービス産業)の競争力は著しく削がれたままで終わってしまうと思うのです。「ネットとATMではそれが出来るのですが、行内システムではそれが出来ない」という状況は早く脱して欲しいと。海外に行ってアメリカのシティバンクのATMがいっぱいあるのに日本の銀行のATMはまったくない。まあ乗り越える問題が多いと言うことでしょう。

 ところで明日から10月ですか。個人的には「7」がちょっと楽しみ。今一台だけあるビスタマシンを早く消滅させたいのです。アップグレードして。今朝のニュースで18時間のバッテリー能力を持つ「7」ベースのPCが出るという。これには関心があるな。まあいろいろ出てくるのでしょう。ちょっと楽しみ。クラウドとの組合せでいろいろ出来るマシンがいいな。

 クラウドにいろいろデータを置いておいたり、ソフトを使えると、講演での伝達手法の幅が広がるのです。動画、写真と。むろん高速回線での接続が条件ですが。そうだ、全くの思いつきですが、雲の中に便利なネット銀行でも作って欲しいな。ははは。


2009年09月29日(火曜日)

 (09:58)自民党60年の治世に大きな変革をもたらすであろう民主党政権には、期待するところ大ですよ。今まで自民党が決して押さなかった、押せなかったボタンをあちこち押して、改革、そして長年の不必要なしきたり、そして組織のオリを除去してくれれば、と願っている。複雑系の社会、経済、政治の中で結果がどう出るか分からないにしても、です。

 しかしその一方では、閣僚の中には不必要で、原理主義的な発言を繰り返して政治や市場を混乱に陥れたり、目立ちたい一心での的はずれな発言をしたり、「国民の為の政治」と言いながら、その実国民に対してどう考えても「頭が高い」と思える政治手法を取る人がいる。これは残念なことだし、今後の民主党政権の基盤を危うくしかねない。

 鳩山さんはマニュフェストに書いてあったにもかかわらず、オバマ大統領との初会談では「対等」の話もインド洋の話や海賊対策の話も出さなかった。まずは「信頼醸成」が必要だと。その姿勢は必要だと思う。どうしてもマニュフェストには選挙用のプロバガンダが入っているから、そこの項目を実際の政治に当てはめるときには少し様子見的な、実際の交渉相手を勘案した歩調で事に当たるべきである。

 その結果鳩山さんは、オバマ大統領との間には「温かい(あったかい)関係が出来た」とこぼれるような笑顔で語った。理解できる。その一方で、八ッ場ダムを巡る前原国交相の姿勢は、「マニュフェストにうたったから中止」と最初からぶち挙げて、ブチ挙げた上で住民達との話し合いに臨むという姿勢。私もこのダムについてはかなり調べましたが、それはそれは複雑です。「もめるな」と思ったら、住民達は態度を硬化させ、またまたの長期戦の様相。

 「マニュフェストには書いてありますが、まずは住民の皆様のお声を.....」となぜ言えなかったのか、言うべきだったのではないかと思うのです。前原大臣は、鳩山さんがオバマ大統領との間にマニュフェストを柔軟に適用したが故に築いた「温かい関係」を、住民との間で作れなかった。むしろ関係をこじらせた。本当は「温かい関係」は国内政治でこそ必要だし、民主党の願いでもあるはずなのに。

 亀井金融大臣の手法も荒いし、複雑な金融市場の仕組みを考えた上での発言とは思えない。何よりも重要なのは、今の案だと個々の中小企業の事業の妥当性、継続性、将来性に対する考察がどう入るのか不明な点。そこが一番重要なのに。いまだ法案が固まりませんからわからない面があるのですが、「借金をしている全ての中小企業や個人が金利を含むモラトリアム(返済猶予)対象」となっている。かなり乱暴な、筋の悪い政策だと思う。

 さすがに民主党の中にもこの案に賛成する人はいない。しかし「俺は金融大臣だ」「首は切れないだろう」とまで言って、引く気配がない。東京市場における株価波乱の一つの要因だと思うし、G20の声明が徐々に世界経済の正常化に向けた動きを視座に入れるなかで、危機の最中にあるかのように日本の政策を動かすのは時代錯誤だと思うし、危険だ。個人でも企業でも、確かに返済に困っている向きもあるが、実際には「早めの返済」を希望する向きも多い。

 為替市場を不必要に混乱させているのは、藤井財務大臣だ。何回も大蔵大臣をお勤めになったし、市場の事も存じ上げていると思ったら、日本の輸出企業がギリギリのところで設定している採算レートを上回る水準を超えて円高を押し上げる発言を教条的に繰り返した。「基本的には円高が望ましい」「介入はしない」と繰り返した。市場関係者は当然「円高容認」と受け止めた。市場のケミストリーとしてはそうだ。

 円が88円台になって藤井大臣はやっと姿勢変化を示した。海外にどう伝わったかと言うと、ウォール・ストリート・ジャーナルには写真付きで「Fujii Says He Never Called for Strong Yen  Japanese Finance Chief's Comments Still Suggest Little Urgency to Intervene in Market to Halt Currency's Rise」という見出し・副見出し。書き出しの文章は、

TOKYO -- Japan's finance minister tried to dispel market speculation that he is indifferent to a soaring yen, saying he has never called for a strong currency and that it is best if the foreign-exchange market is stable.

'I've never said I will leave alone rises in the yen,' said Japanese Finance Minister Hirohisa Fujii, at a seminar in Tokyo on Monday. He said he wants stable exchange rates.But Hirohisa Fujii, speaking after the yen jumped to an eight-month high against the U.S. dollar, also said the yen's surge was "not abnormal" in terms of trends.

His comments indicate that while he is uncomfortable being labeled a strong-yen advocate and isn't pleased with the Japanese currency's quick ascent, he still feels little urgency to order yen-selling intervention to stem its advance.

"I've never said I will leave alone rises in the yen," Mr. Fujii said at a seminar in Tokyo.

The remarks reflect an effort by Japan's new finance minister to set straight investors, who have come to believe his stated aversion to intentionally weakening the yen to help exporters means he is for a stronger currency. Mr. Fujii said his past comments against competitive currency depreciation "have, before I knew it, been interpreted to mean that I'm endorsing yen rises, but I've never said such a thing at all."

Mr. Fujii said he agrees with a view expressed in Pittsburgh on Friday by Prime Minister Yukio Hatoyama, who said "it's most desirable for foreign exchange to be stable."

 海外にどう伝わったのかが重要です。しかし既に damage has been done でした。円は企業の採算レートが固まっている90円台の前半ではなく、むしろ対ドルで80円台を住処としてしまった。少なくとも今週の前半においては。今朝の新聞には輸出に関わっている中小企業から怨嗟の声が紹介されている。亀井大臣が一生懸命モラトリアムなどというおどろおどろしい言葉まで使って助けようとしている中小企業(特に輸出部門の)には打撃だ。為替市場には予見可能性が高いことが望まれるが、今の政権はむしろそれを削いでいる。

 今朝発表になった日本の8月の消費者物価は2.4%も下落した。過去最大の下落率の更新であり、日本経済が抱えているデフレ圧力が強いことを改めて示した。デフレはインフレよりも時に深刻に経済に打撃を与える。円高は大きなデフレ要因だ。

 早く民主党政権の大きな枠組みが作られ、個々の大臣の不必要な発言が日本経済を混乱させるのではなく、活力を高める方向に動くよう期待したい。


2009年09月28日(月曜日)

 (17:58)外務省のリンク先サイトがどうもうまく機能していないようなので、ダイレクトにピッツバーグサミットのサイトでhttp://www.pittsburghsummit.gov/mediacenter/129639.htm という声明のリンク先を見付けましたが、この声明はやはり今日の東京市場で甚大な影響がありました。円高が進行して88円台、株は日経平均で110000円台を一時は割れて、引けは10000円とちょっと。

 今日のウォール・ストリート・ジャーナルは、「Stronger-Yen policy gets put to the test」という記事を載せていますが、実際に当面の日本経済にとっては大きなリスクです。というのは円高による輸出収入の落ち込みが株価を一段と押し下げ、それが日本と日本人の景況感を一層悪くする危険性がある。

 更に言えば、円高はデフレを進行させます。デフレが進行していると、人々は「何かを買おう」という気にならない。時間の経過の中で値下がりしますから。特にビッグ・アイテムはそうです。内需を振興したいのに、振興できないという事態になる。民主党は全体的な経済運営の図式が描けていない。今日の円高と株安を見てそんな気がしました。

 話はちょっと変わりますが、今日は本当にびっくりしたことがありました。日本の金融機関の競争力はまだこの程度か、と。システムがあまりにも脆弱だと。「これでは、海外で戦うなど相当先だな」と思った。

 実はネットでは振込が出来ない金融機関への振込を窓口でしたのです。とある大銀行の窓口で。その時振込先の口座番号をちょっと間違えた。間違えたのは私でそれは良くないのですが、その銀行は「ではこの番号に振り込みます」と一言。私はその段階で、「これで全て済んだ」と思ったのです。

 ところが数時間して、「申し越しの口座に振り込み手続きをしたら、相手方の金融機関から”当該口座なし”と返答が来ました」と。これに私はビックリしたのです。なぜなら、インターネット振込でもそうですが、相手方の口座を入れると「これは誰々の口座である」と返答が直ちに返ってきて、安心して振込が出来る。

 だから私は、私が書き入れた口座と番号を銀行がシステムに入れてみて相手方を確認して振込を承諾したと思った。しかしその銀行がこう言うのです。「ネットとATMではそれが出来るのですが、行内システムではそれが出来ないのです.....」と。

 驚きましたね。ということは、結構ある窓口振込は、客が正しい番号を書いたと想定して確認せず受付し、あとで実際にやってみて振り込めるか振り込めないか確かめているということになる。相当いい加減でしょう。だって、ネットでは瞬時に相手方口座の持ち主が確認できるのに、行内システムでは出来ないという。あ然としました。

 全ての銀行がこの程度かどうか知りません。ネットで簡単に出来ることが、行内システムで出来ない。本当にビックリです。「ありえない」と思いました。


2009年09月27日(日曜日)

 (14:58)そうだ、先週発見したナイスなレストランを紹介しましょう。名前を「博多 三雲屋」といいます。もともとは福岡の店ですが、腕と食材を抱えて恵比寿に店を出した。

 福岡と言えば「もつ鍋」で、それをウリにする店は東京にも結構たくさんあるのですが、この店はスッキリした「梅風味もつ鍋」の元祖を名乗る。確かにもろもろある「もつ鍋」よりもスッキリしている。値段もリーゾナブルです。

 しかしそれだけではない。私が美味しいと思ったのは、福岡から直送の「あら」、辛子明太子、焼き豚足などなど。その他にもいろいろ食材あり。東京がいいのは、各地から食材を取り寄せた店が味を競っていることですが、東京でも福岡を味わえる店が増えたのは嬉しい限りです。

 場所は比較的分かりやすい。恵比寿駅か日比谷線恵比寿駅の5番出口から駒沢通りを鑓ヶ先交差点の方向に歩き、ローソンとセブンイレブンを過ぎて「えびす海岸本店」を左に入った3軒目です。住所は「渋谷区恵比寿南3−4−2」で、電話番号は 03-3715-2126です。

 久しぶりに代官山近くに行きましたが、この店を含めてこの街は常に変わっていて良い。アドレスの周辺も大きく変わっていた面白かった。三雲屋で食事をして、あの辺を歩くのも良い。

 それから今日の「世の中進歩堂」は、過去三ヶ月のおさらいです。見逃した方、是非今回の進歩堂をご覧下さい。過去三ヶ月間に紹介した新技術がどっさり。

 それから、来月から女性アシスタントが今までの天野さんから梶原麻莉子さんに交代します。福岡生まれの切れの良い女性です。お楽しみに。


2009年09月26日(土曜日)

 (21:58)新聞記事にはいっぱいなっていますよ。でも「原文に当たらないと気が済まない」というのが私の癖で、探したら24、25日に行われたピッツバーグ・サミットの声明全文は今回は外務省のサイトにありました。

http://www.mofa.go.jp/u_news/2/20090926_093359.html

 はっきり言ってどえらく長いのと、非常に特徴がある声明です。第五項目は「It worked. 」が全文です。私はこんなコミュニケは見たことがない。まあそこら辺は振り返りで、重要なのは第12項目の「Today we agreed:」以下です。

 とても長いので私が読んでいて重要だなと思った項目をちょっと挙げると、15、17、19という奇数項目ですかね。しかし全体に結構重要なことが書いてある。思ったのはこれだけの長い文章と内容で合意するには、アメリカを中心に非常に長い根回しをしたのだろう、それだけ力が入っていたのだろう、ということです。そうでなければ、この長い、中味の詰まった文章で20カ国以上が合意することなどできない。

 第19には「We designated the G-20 to be the premier forum for our international economic cooperation.」と書いてあるが、ではG8はどうするのかは書いてない。続けるのか、続けないのか。まあ続けるんでしょう。控え目に。G20は来年は2回開くが、その後は年一回と書いてあるので、機動性が落ちる。しかし「G8の時代の終焉」は明らかです。

 書き出すときりがないので、この辺でやめます。またまとまった文章を書きます。これだけ力の入った文章(声明)を読むと、世界経済の枠組みが変わりつつあるし、市場を取り巻く環境も変わると読める。

 この一連の文章の最後は、「The Path from Pittsburgh」とあって、以下のように書いてある。

 50. Today, we designated the G-20 as the premier forum for our international economic cooperation. We have asked our representatives to report back at the next meeting with recommendations on how to maximize the effectiveness of our cooperation. We agreed to have a G-20 Summit in Canada in June 2010, and in Korea in November 2010. We expect to meet annually thereafter, and will meet in France in 2011.
 韓国は嬉しいでしょう。でも、これだとG20が日本に来るのは相当先......?


2009年09月25日(金曜日)

 (15:58)ECOマネジメントのサイトに新しいエッセイがアップされましたので、時間と興味のある方はご覧下さい。しばらくブータンを続けます。

 ところで今一冊本を読んでいます。「悪いのは私じゃない症候群」というのです。香山リカさんの本です。お会いしたことはないが、私の身の回りの人の中でも、ファンというか「この人は面白い」という人が多い。

 副見出しが「これは新種の国民病です」とあって、実際の体験も綴られているので納得できるし、私の身の回りにはあまりいませんが、「モンスター何とか」という人種が多くなっていることは知っている。

 まだ読み終えていないのですが、久しぶりにタイトルだけで買ってしまった本ではあるのですが、なかなか面白い。


2009年09月24日(木曜日)

 (04:58)経済活動は活発化し、金融市場の状況はさらに改善し、住宅市場の動きは増している・・・・・が、FOMCは経済活動を促進し、物価の安定を維持するために発動した広範な金融手段(政策)を引き続き採用する、と宣言すれば株価はこれを好感するでしょう。まだ終わっていませんが、ニューヨークのダウは声明発表直後は上昇して、さらに1万ドルに接近した。その後はちょっと高値から反落していますが、最近の連騰を考えればレベルそのものは高い。

 端的に言うと、今回のFOMC声明は出口戦略を視界に置きながらも、その実際の採用には従来考えられているよりもむしろ慎重な米金融当局の意志を鮮明にしたということで、その良い例が

  1. FF金利誘導目標の0〜0.25%での維持と、「今後も相当期間での例外的に低いFF金利水準の維持が可能性大」と予感させる経済環境予測
  2. 住宅ローン貸し出しと住宅市場を支援し、民間金融市場の全般的な状況を改善するためにFRBはMBS(mortgage-backed securities)を1兆2500億ドル、その他の住宅市場支援機関の債務を最大2000億ドル購入するが、その期限を2010年の3月末まで延長する。その間は、市場の変化をスムーズにするために、購入ペースは徐々に落とす
 というもの。8月のFOMC声明では、「 the Federal Reserve will purchase a total of up to $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and up to $200 billion of agency debt by the end of the year.」と、購入期限は今年末までとしていた。量は変わらないので政策効果は同じだとも言えるが、非伝統的な金融政策発動期間を伸ばして、慎重に様子を見ながらの金融政策運営を行う、ということでしょう。

 経済が良くなっているのに慎重なのは、「job losses, sluggish income growth, lower housing wealth, and tight credit」という状況があり、さらに企業が依然として固定投資と雇用を削減している状況では、「economic activity is likely to remain weak for a time」と予想されるため。

 今回の声明には、バーナンキ初め理事全員が賛成した。

Release Date: September 23, 2009

For immediate release

Information received since the Federal Open Market Committee met in August suggests that economic activity has picked up following its severe downturn. Conditions in financial markets have improved further, and activity in the housing sector has increased. Household spending seems to be stabilizing, but remains constrained by ongoing job losses, sluggish income growth, lower housing wealth, and tight credit. Businesses are still cutting back on fixed investment and staffing, though at a slower pace; they continue to make progress in bringing inventory stocks into better alignment with sales. Although economic activity is likely to remain weak for a time, the Committee anticipates that policy actions to stabilize financial markets and institutions, fiscal and monetary stimulus, and market forces will support a strengthening of economic growth and a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability.

With substantial resource slack likely to continue to dampen cost pressures and with longer-term inflation expectations stable, the Committee expects that inflation will remain subdued for some time.

In these circumstances, the Federal Reserve will continue to employ a wide range of tools to promote economic recovery and to preserve price stability. The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve will purchase a total of $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and up to $200 billion of agency debt. The Committee will gradually slow the pace of these purchases in order to promote a smooth transition in markets and anticipates that they will be executed by the end of the first quarter of 2010. As previously announced, the Federal Reserve’s purchases of $300 billion of Treasury securities will be completed by the end of October 2009. The Committee will continue to evaluate the timing and overall amounts of its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets. The Federal Reserve is monitoring the size and composition of its balance sheet and will make adjustments to its credit and liquidity programs as warranted.

Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Charles L. Evans; Donald L. Kohn; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Daniel K. Tarullo; Kevin M. Warsh; and Janet L. Yellen.


2009年09月23日(水曜日)

 (08:58)日本では軒並み新聞の一面トップになっている鳩山首相の「(主要排出国の合意を前提とした)2020年に、1990年比で日本の温室効果ガス排出量を25%を削減する」ですが、海外での報道の仕方はやむを得ない面もあるのですが、かなり劣位です。まったくそれを報じていない新聞も多いし、ニューヨーク・タイムズのように長い記事の最後という例もある。

 それぞれの国の新聞がそれぞれの国トップの主張を真っ先に扱うのは当たり前の話ですから、各国首脳の発言を自国トップの発言中心に伝えるのは当然です。しかし、それは当然として、「それ以外にどこの国のトップの発言が重要か」の判断は、それぞれの国の新聞、それに記事を送っている記者の判断による。それを見ておくのは、日本を客観的に見る上で重要だと思う。

 今回の国連でのCOP15(12月のコペンハーゲン会合)に向けての勢いづけ会合では、演説した首脳全てが、「温室効果ガスの削減の緊急の必要性」認識を共有していることは確かである。オバマもこう言っている。「“The security and stability of each nation and all peoples -our prosperity, our health, our safety -are in jeopardy. And the time we have to reverse this tide is running out.”」と。

 しかし力点の置き方は違うし、アメリカの新聞が注目したのは自国と、自国と並んで大量排出国でありながら「削減義務」を今は負わずに、COP15に向けても数値目標を発表しそうもない中国に向けられている。例えばニューヨーク・タイムズの記事はU.S. and China Vow Action on Climate Threat but Cite Needs という見出し。

 「Needs」というところが肝心。基本的に図式は変わっていない印象が強い。それをどうやって動かすのか。鳩山提案がその切っ掛けになるのか。今後の問題です。IPCCのパチャウリさんの懸念はずっと前からのものですが。

 Rajendra K. Pachauri, the chairman of the Intergovernmental Panel on Climate Change, provided the scientific context, and warned that current emissions trajectories were propelling the world toward the panel’s worst-case scenarios.

“Science leaves us no space for inaction now,” he said.

 中国の主張は以下のようなものですが、要するに「中国はかなり発展したが、国民一人当たりの富は小さい」という点で、よって「排出量への規制は数値を持っては受け入れられない」と。鳩山首相とは全く違って2020年までの温室効果ガスの削減については、「notable margin」という受け取る側でどうとでも受け取れる幅しか言っていない。
 Mr. Hu said that while China had made great strides in development, it still lagged relatively in terms of its wealth per individual, and that had to be taken into account in fighting emissions.

“Due to their low development level and shortage of capital and technology, developing countries have limited capability and climate change,” he said. “Developing countries need to strike a balance between economic growth, social development and environmental protection.”

Mr. Hu also said his country would take four steps toward greener development, although he did give any specific numerical targets. He said China will cut carbon dioxide emissions by a “notable margin” by 2020 compared to 2005 levels; massively increase the size of forests; boost nuclear or non-fossil fuels to 15 percent of power by 2020 and work to develop a green economy.

 オバマアメリカ大統領も数値目標を掲げていなかった。オバマが強調したのは前政権との「姿勢の変化」です。多分アメリカの具体的な提案はCOP15の場で出てくるでしょう。アメリカも中国も「水をたっぷり含んだタオル」ですが、「それをどのくらい絞るか」については何も語らない。この姿勢を変えられるか、日本国内では「25%削減」をどう実行するのか、出来ないのかが鳩山政権にとって重要です。

 ウォール・ストリート・ジャーナルで「Hatoyama」の活字を見付けたと思ったら、日中関係に関する記事でした。「Hatoyama Seeks Closer China Ties」という見出しで、内容は「Japan's new premier Yokio Hatoyama pressed for closer links with China at his first meeting with Hu Jintao, a move aimed at building Japan's regional relationships as it considers old ties with the U.S.」でした。アメリカでは日本がアメリカとの距離を置き、中国に接近するのではないかとの懸念がある。

 温室効果ガスに関する鳩山首相の発言が紹介されているのはニューヨーク・タイムズですが、それは文章の最後にあった。

 Japanese’s prime minister, Yukio Hatoyama, whose nation generates more than 4 percent of the world’s greenhouse gases, said his nation will seek a 25 percent cut in greenhouse gas emissions from 1990 levels by 2020.

“I will now seek to unite our efforts to address current and future climate change with due consideration of the role of science,” he said. “I am resolved to exercise the political will require to deliver on this promise.”

 あと私が注目した記事は、「As U.N. Meets on Climate, Momentum Is Elusive 」ですかね。削減努力は一筋縄ではいかない。


2009年09月22日(火曜日)

 (14:58)朝目を覚まして暫くしてネットを見たら、「ブータンで地震」「死者は少なくとも10人」と。

 震源地は我々が滞在した首都ティンプーの東180キロだという。ティンプーの東180キロと言うことは、地震そのものがブータン東部で起きたと言うことです。起きたのは昨日の午後2時53分(日本時間同日午後5時53分)ごろとか。

 マグニチュードは6・1とそこそこの大きさの地震だったそうだ。「少なくとも10人が死亡、数十人が負傷」と伝えているのはロイター通信。震源の深さは約10キロだという。

 インド亜大陸が激しくユーラシア大陸を突き上げて出来たのが、エベレストを最高峰とするヒマラヤ山脈であることは地理で習ったのですが、実際にブータンを移動していると「地球の皺の間を移動している」という気持ちになって、「今でも皺は動いているのでは」と思ったものです。

 ですから、「ブータンでは地震はないのですか」と聞いたら、その時のガイドであるジュルミの返事は、「ほとんどありません」だった。しかし神戸と同じように「予想外のところで地震は起きる」ということでしょうか。

 そうこうしているうちに、伊藤 洋一のラウンドアップ・ワールド・ナウのサイトに「ブータンに地震」というタイトルで

 こんにちは。iPodで通学や散歩の時に聞いています。

 今日、ブータンで地震が発生して少なくとも10人が死亡というニュースを見ました。普段なら数あるニュースの内の1つで片付けてしまうところでしたが、このニュースを見て真っ先に伊藤さんを思い出しました。

 死者が出ているので良いニュースでは決してないのですが、伊藤さんが訪れている時に発生していたら巻き込まれていたかもしれないと思うと、ほっとした面もありました。

 これからもお体にはくれぐれも気をつけて、お仕事がんばってください!

 というメールが来たという連絡が放送局から。ははは、有り難うございます。お気持ちだけでも嬉しい。でもどうなんでしょうか。急峻な山また山で、他の世界から隔絶された場所も多いブータンですから、被害が案外大きいかもと思っています。


2009年09月21日(月曜日)

 (22:58)所用があって都内のホテルに行ったら、凄く込んでいる。いつもはすきずきのレストラン前のケーキ屋さんも凄い人だかり。最近はちょっと静かだったホテルもこの連休で大いに賑やかさを取り戻したようで、「結構なことだ」と思いました。祝・稼働率100%。

 初めてだからでしょうかね。秋の連休が。道は混んでいるし、都内のここぞという観光地は人出が多い。道路交通情報サイトを午後10時半ごろ覗いたら、東京を中心とした高速道路は凄まじく渋滞している。

 しかし祝日に関係なく曜日で仕事をしている身としては、明日は大阪に行かねばならないので、「新幹線は大丈夫か」と心配になる。まあでも今日も都内は遠くの車が一杯走っていましたから、高速道路で日本国内を移動している人が多いのでしょう。

 昨日の話の続きで言うと、acTVilaのビデオメニューの中にちゃんと「NHKオンデマンド」が入っていて、手続きはちょっと時間がかかるが、番組が始まれば通常通りのテレビとして見られるのを発見。但し小生はPCの方から見放題1470円に入っているので、IDとパスワードの場所を探そうと思ったら、acTVila のサイドにない。「また払えということでしょうか?」と質問メールを送ってあるのですが、まあ返事は連休明けでしょう。

 本を二冊ほど読みました。「日本人が知らない幸福」(新潮新書)と、「中国に人民元はない」です。最初の本は、今回の政権交代の時にちらっと思ったのですが、「選挙があれば必ず不正があった」と騒がれる国が多い中で、日本はきちんと出来ている。

 そういう観点から見ると、それはそれで日本という国は改めて評価できるところが多い、と。まあ発射台の問題なんですがね。「日本人が知らない....」は、ベトナム難民だった人が日本で医者になるまでの足跡や思ったことを書いた本。最近外国の人が日本について書いた本を読むことが多いのですが、面白かった。

 「中国に人民元....」はちょっと古い本ですし、中国情勢は日々変わっているのですが、それでもちょっと専門家の本を読んで頭を纏めておこうと思ったもの。面白いですよ。「友達の輪が出来ない中国」「裁判所がない中国」。一読を勧めます。


2009年09月20日(日曜日)

 (23:58)土日の二日とも所用があって数時間程度出掛けましたが、街は秋には相応しくない連休ムード。ただし車は一杯出ている。週末1000円が継続されているためと、初めての5連休のせいでしょう。

 日頃出来ないことをやろうと、TVとPCの相性の向上、相互利用度向上のため、一連のケーブルを買ってきて遊んでは楽しんでいます。今頃かと言われそうですが、例えばPCの画面をそのまま家の大型テレビに映し出すために、PCとプロジェクターとを結ぶときに使うディスプレーケーブルと音声ケーブルを買ってきて、PCのスライドショー(ブータンで撮った写真など)をそのまま家のテレビで展開したり。

 PCの画面がテレビに映るとしたら、PC経由でいつも見ているNHKオンデマンドはそのままテレビ画面で出来る筈だと思ってやってみたら出来たのですが、大型テレビの中心を使った小型のサービス(綺麗さは満足、画面もPC画面よりは大きい)にとどまることなど、色々なことが分かって面白い。

 では直接NHKオンデマンドをテレビで見ようとTV内メニューのブラウザーで最初挑戦したら、それは無理なことが分かって、でその過程でひかりTVというのがあって、それだと割合簡単にNHKオンデマンドがテレビサイズの大きさでTVで見られるのではないか、と発見したり。

 最初から「ひかりTV」に対応しているTVやPCがあることも分かったのですが、我が家のTVはその種のものではない。となるとどうやらチューナーをレンタルしなければならないことが分かって、「ではどうしようか」という状況。どなたか「ひかりTV」を使っていたら、使い勝手をお知らせ下さい。

 それとは別に、我が家のテレビはソニーなので調べたら、アクトビラ(acTVila)というネットサービスが入っていることが判明。これもオンデマンド形式で数多くのタイトルの番組があるのですが、登録が無料なので入っておきました。

 まあ「時間的にこれ以上何が見れるのだ」という気持ちはあるのですが、出来ることはやっておかないと、という気持ちもある。それにしても、デジタル技術の成果でしょうが、TVとPCは映像の面でも限りなく同質のものになりつつある。


2009年09月18日(金曜日)

 (16:58)ワシントンの片山さんが、微笑ましい映像を送ってくれたので、ここでも紹介します。昨日のニュースで報道され、アメリカで今話題になっている話だそうです。片山さん曰く、「余りにも微笑ましい光景だったのでご紹介します」とのこと。

 場面はアメリカの野球場。MLBプロ野球チーム・フィラデルフィア・フィリーズの大ファンであるお父さんが初めてファウルボールをキャッチ、周りの人も一緒になって喜んだ。

 ところがそのボールを小さな娘に渡した瞬間「あっつ!」という事態に。あとは映像を見て頂ければ良いのですが、お嬢さんは何を考えたのか.........もしかしたら、父親の野球好きが嫌いだったのか......

微笑ましい映像


2009年09月18日(金曜日)

 (11:58)今朝の新聞では、朝日新聞の33面にある『新型インフルエンザ大流行に備え』『節度ある「受療行動」を』が官から市民への適切な情報提供として非常に良い記事だと思いました。

 私は過剰反応の面もあると思うのだが、気象庁まで記者会見を中止するという時代錯誤の中で、今一番重要な新型インフル対策に関して厚生労働省の上田博三健康局長が、「国民が最初から高度な医療機関にどんどん押しかけてしまうと、本当に救命が必要な患者が助からなくなるので、うまく交通整理する必要がある」と述べている。

 この記事によれば同局長は医師免許を持つ専門家で、そうした専門家が今の国民的関心事である病気、ウイルスに関して適切な情報を提供し、一般国民がどう行動すべきかを伝えている。これは極めて必要であり、望ましいことだと思う。それは厚生労働省ばかりでなく、多くの官庁分野で言えることでしょう。

 政治家が全ての事象について、専門家を上回る知識があって、社会のニーズに応える形で適切に情報提供が出来る、ということはあり得ない。長妻さんは立派な政治家ですが、彼からウイルスの説明を受けても信じる気にはならない。専門的知識がある人、それを発信すべき立場にある人はそうすべきで、それを抑制することは社会全体にとって良くない。

 「見解を含む記者会見」は政治家がする、というのある意味当然ですが、では「見解」を「どこで線引きすればよいのか」という問題が残る。政策の策定は「政」がするのは当然ですが、情報で動いている今の社会の制約・抑制をするような政策は間違いだと考える。


2009年09月18日(金曜日)

 (08:58)今朝は「およよ」と思うくらい秋の気配が濃厚に。確かに肌寒い。ジャケットか何かがもう一枚必要な。女性は素早い。朝の通勤風景を見ると、秋服がちらほら。でもちょっと早くないですかね。

 それにしても、「シルバーウィーク」と名付けた人のセンスを疑いますね。そのまんま。工夫もなにもない。私だったら「オータムウィーク」とちょっと思いを入れた、映画でも思い出すような連想の出やすい名前にするけどな。

 昨日の「理科系」話に関連して、このサイトの方からメールを頂きました。「2006年当時の共産党最高機関、中央政治局常務委員会の9名の委員は全員理科系、というか工学 系出身者です」と。知りませんでした。上の二人だけを注目していたので。

 この方は更に、「(中国の)大卒者も40%は工学系と言うことで、中国は大変な工学系国家と言うことになります。日本、アメリカでは理系ばなれが生じていますので将来的にこれがどう影響するのか注目であると思います」とのこと。そうですね、そういう意味では理科系、工学系の首相の輩出では、日本は中国の後塵を拝した ?

 ただ中国は、何せ最後は共産党の一党独裁ですから、独創的なアイデアがどのくらい出てくるのか、許されるのかが問題と私はずっと考えています。


2009年09月17日(木曜日)

 (23:58)今朝テレビで少し触れたのですが、今回の日本の新内閣には一つの特徴がある。マスコミではあまり取り上げられていないのですが、それは今回の内閣が言ってみれば「理科系内閣」だということです。

 具体的には、鳩山総理は東京大学工学部を卒業しスタンフォード大学博士課程を修了した同大Ph.D(専攻は経営工学)です。資格としてのPh.Dはなかなかのものでしょう。ナンバー2の菅直人副総理(国家戦略室などを担当)は東京工業大学理学部応用物理学科卒業。つまり二人とも理科系出身です。

 これは日本の歴史始まって以来のことでしょう。従来は法律か、希に経済を学んだ人が総理大臣になっていた。ところが鳩山内閣では、ワンツーが理科系で、あと閣僚にも二人理科系がいる。

 実は私が「理科系の指導者」に興味を持ったのは、中国に胡錦濤政権が誕生したときでした。胡錦濤さんの経歴には、「清華大学水力エンジニアリング学部」とあった。何かというと、基本的には河川管理です。それまでの中国は、どちらかと言えばたたき上げの文化系の人がトップになっていた。革命の混乱の中から出てきたのだから、それはそうなる。

 私の記憶では、胡錦濤も中国で初めて理科系の主席となった。実は首相の温家宝も北京地質学院(現・中国地質大学)というどちらかと言えば理科系の出身です。ポイントは、法学部出身の指導者(日本の場合は東大法学部卒が多かった)と理科系出身の指導者とはかなり頭の構造が違うのではないか、という点です。

 なぜなら、法律は「枠組みを作り・守る」学問であるのに対して、理科系は基本的には権威に疎く、実験と実証を繰り返すのが本来の姿。日本のワンツーがそういう心を残しているかどうかは別にして、ワンツーに理科系を持ったことで微妙なところで日本の科学技術の振興、テクノロジーの進化に今回の内閣が寄与する面があるかも知れないとも思っているのです。

 中国の指導部に胡錦濤、温家宝が中国のワンツーとして登場したとき、正直なところ「中国はなかなか手強い国になるかもしれない」と私は思った。それはまた中国という国が、国内的にはかなり安定したことを意味していましたから。

 日本にとって今の中国企業は相当手強い存在になっている。何せトップが理科系ですから、その分野の人の昇進も速いに違いない。日本の大企業のトップは文化系が多い。ちょっと問題なくらい。

 そういう観点から見ると、民主党が自民党に取って代わったという以上に、理科系が文化系に取って代わったという見方も出来る。今回の新内閣は発足の意味合いを、また違った観点から見れる。私はこれは基本的には日本にとって良いことだと思う。
 


2009年09月16日(水曜日)

 (23:58)政権が交代したことを端的に表しているのは”警備”ですかね。たまたま通りかかったら、民主党の本部がある周辺はもの凄い警備。今まで見たことがなかったような。やはり野党と政権党では全く警備的に扱いが違うことが分かる。タクシーの運転手さんによれば、昼間は街宣車が来ていたという。

 実は民主党の本部と自民党の本部は凄く近い。自民党本部の前は通りかかっていないので分からないのですが、従来よりは警備は軽くなっているのでしょう。警視庁の総和としての政治警備はあまり変わっていないんでしょうから。

 バーナンキの「very likely over」発言は、なかなか大胆なものだと思ったら、彼の発言は実際にはこうなっていた。

 "Even though from a technical perspective the recession is very likely over at this point, it is still going to feel like a very weak economy for some time as many people still find their job security and their employment status is not what they wish it was," he said.
 「Even though from a technical perspective」というところをどう読むか、ということでしょう。もっとも技術的であろうとなかろうと、「recession is very likely over at this point」と言った意味合いは重い。むろんその直後にバーナンキは職の安全に対する不安などから「弱い経済は続く」と言っているのですが。確かに小売売上高(8月)の2.7%増には驚きました。

 消費が戻ればアメリカ経済は強い。もっとも雇用に不安が有る中ではその消費の高いペースがどのくらい続くのか。バーナンキが「at this point」と言っているのは、「先行きは不安がある」ということを認めているのでしょう。

 今日のもう一つの注目ニュースは、「France to count happiness in GDP 」というFTの記事でしょうか。小林君が教えてくれたもので、まあでも先進国でもブータンが提唱している「GNHの考え方」は徐々に評価されていくのではないでしょうか。抽象的なので具体的にどう入れるかが問題ですが。フランスはそこそこアイデアを持っているようです。FTの記事は以下の通り。

 Happiness, long holidays and a sense of well-being may not be everyone’s yardstick for economic performance, but Nicolas Sarkozy believes they should be embraced by the world in a national accounting overhaul.

France’s president on Monday urged other countries to adopt proposed new measures of economic output unveiled by a panel of international economists led by Joseph Stiglitz, the US Nobel Prize winner.

Insee, the French statistics agency, would set about incorporating the new indicators in its accounting, Mr Sarkozy said.

One consequence of the commission’s proposed enhancements to gross domestic product data would be to improve instantly France’s economic performance by taking into account its high-quality health service, expensive welfare system and long holidays. At the same time, the commission’s changes would downgrade US economic output.

The commission suggested a series of improvements to the way GDP was measured. It proposed accounting for people’s well-being and the sustainability of a country’s economy and natural resources. “The world over, citizens think we are lying to them, that the figures are wrong, that they are manipulated,” said the president. “And they have reasons to think like that.

“Behind the cult of figures, behind all these statistical and accounting structures, there is also the cult of the market that is always right,” he said.


2009年09月15日(火曜日)

 (23:58)アップルが出した新しいipod ナノを遊んでいます。何せ今回のナノには、長時間録画機能が付いている。あの軽い、薄い櫛のような図体にカメラと録音機能が付いているのだから、それはそれで凄い。

 月曜日でしたが、収録の最中にスタッフに暫くナノのカメラを回してもらった。結構綺麗に映るのです。それをナノの中で見ることも可能だし、それをPCに送ってより大きなスクリーンで見ることも可能。なかなか使えそう。

 ただしまだ私が機能を知らないだけなのかも知れませんが、ズームの機能がないことがちょっと面倒。つまり寄りのシーンを撮るためには、カメラを持っている人が対象物に接近し、寄らなければならない。

 次にやはりと思ったのですが、録画を繰り返すとバッテリーが急速に弱くなる。デジカメの動画機能は、メモリーのサイズに左右されましたが、今回のナノの撮影能力にはバッテリーが制約要因になる。

 ソニーが11月に出す新しい携帯音楽プレーヤーがどのようなものになるかも知れませんが、今回のナノが写真(スチール)を諦めてビデオ撮影に映像機能を特化させたのは、それはそれでなかなか面白い試みだと思いました。

 本当に軽いし、薄いので常に持ち運びが可能。そういう意味では、大きな機械一式(今までは最低デジカメかケイタイ)を持ち運ぶことなくビデオが何時でも簡単に、かつ従来より長時間撮れるというのは、ある意味で革命でもある。


2009年09月14日(月曜日)

 (23:58)イチローの「9年連続200本」を見たのは、スタジオの控え室のテレビででした。初球、二球目のどちらかと言えば打ちやすい球を見逃し、アナウンサーや解説者が、「えーーーー」と言っている(私もそう思いましたが)間もない3球目。外角のちょっとボールに見える球に手を出して、それが緩い、しかしややバウンドの高いショートゴロになった。

 「またダメか」と思った瞬間だったが、ショートがうまく球を持てずにピッチャーズマウンドの方に歩を進めている間に、イチローが一塁を駆け抜けた。「エラー」と判定されるかなと思っている間に、既にアナウンサーが「ヒット」を叫んで、「そうかな」と思っていたら.......マリナーズの選手が拍手を始め、そこで「9年連続200本」が確定。

 「クリーンヒットであってくれれば」という思いは残る形ではあったが、それにしても今年だけで200本打ったヒットの中の一本ですからね。彼の偉大さを端的に説明していたテレビ登場人物の言葉としては、「2007年に200本を打った選手はMLBで8人いたが、2008年にその8人の中で同じく200本のヒットを打ったのはイチローだけだった」というものでした。

 つまり、「200本安打は二年続けるのも至難の業」ということです。ピート・ローズは私がアメリカに行ったときにまだ活躍していた選手ですが、4000本以上のヒット(4256本)を打ったことで有名。その彼でも、連続年として200本以上のヒットを打ったのは3年か4年だという。

 新聞には「10年連続」という希望が載っている。私もそう思うが、彼のインタビューの「解放されました」という一言で表される重圧を考えると、解放してあげたいような気もする。そろそろ身体もちょっと痛んできたように思えるし。もうすぐ36才ですからね。まあでもイチローは来年もMLBでプレーしているんでしょう。

 毎日カレーを食べ、身体の反射神経を落とさない努力をし、完全休養日にも球場で身体を動かす。凄まじいし、凄い。MLBで連続ではなくて「200本安打を打った年」が一番多かったのは、ピート・ローズの10年。

 残念なのは、日本のマスコミでは殆ど紹介されていないのですが、今ニューヨーク・タイムズを見てもその他のアメリカの有力紙を見ても、イチローの偉大な記録に関する記事が殆どないこと。つまりアメリカでは関心が薄い。

 彼が外国人だからとか、シアトルというマイナーな市場に属する球団だからとか、内野安打の多い選手だから、とか色々説明はある。ニューヨーク・タイムズ紙で「ichiro」で検索したら、8月22日の記事が一本だけだった。

 まあでも彼はそんなことにはあまり重きは置かないし、淡々と今後もプレーを続けるのでしょう。「それが美学だ」といわんばかりに。アメリカでは後で掘り返されて改めて偉大さを評価される記録というものがある。


2009年09月13日(日曜日)

 (16:58)今日の世の中進歩堂(BS7 BSジャパンで毎週日曜日午後8時30分から)の番組案内です。今日は「世にも不思議なビーズ」が登場します。

 これは微小電気機械システム(しばしば“MEMS”と呼ばれる)の応用技術を研究している東京大学生産技術研究所が開発中のもの。なんと、糖尿病治療に役立つという不思議な“ビーズ”。このビーズは体内の糖分に反応して強く光り、血糖値を測れる。

 さらに細胞をビーズ状に加工して人工臓器を作り、再生医療に役立てようという研究や、体内の微小な物質を運ぶシステムを使ってがんの診断に利用しようという研究も行われている模様を紹介。また、医療分野以外にも、細胞を利用した次世代情報機器に利用できる“匂いセンサー”も開発中。

 この番組の一つの自慢は、世界中で日々展開している面白い発明の中から、さらに日本の視聴者にとって気になる発明・変化を素早くお届けしていると言うことでしょうか。その為にニューヨークにもリサーチャーを配置していますし、日本中の研究者が結構注目している番組です。是非ご覧下さい。

 今回は紹介ついでに、カレーの優れものを紹介します。Poivrierというカレー屋さんです。ポワバリエと書いても良いと思うのですが、HPの表記は違う。カレーは「10年連続200本安打」にあと2本となったイチローが毎日食べていることでさらにファンが増えたのですが、確かに身体をピシッと引き締める効果があると思う。

 このPoivrierは、簡単に料理できるし、手軽に美味しいカレーを作れるという意味では非常に優れた作品だと思うし、実際に何回か作ってみて良い味をしていると思いました。私も友人から教わった。お試しあれ。


2009年09月12日(土曜日)

 (23:58)ははは、今日はつい忙しくて(?)芝刈りをすっかり失念。朝起きたらその時間でした。まあ昼から9ホール回るのも良いかと思って行きましたが。そしたら「1.5やりたい」という人がいて、「そりゃいいことだ」と付き合いました。

 ところで、新しいエッセイがアップされました。GNHの国を暫く取り上げます。お楽しみに。


2009年09月10日(木曜日)

 (17:58)フォーマの充電器に「01」と「02」があるのを初めて知りました。

 というのは、ブータンで唯一ITがらみで困ったことは、ケイタイ電話の充電が出来なかったことです。今までアメリカにも欧州にも、インドにも中国にも日本のケイタイ電話の充電器を持って行って充電に苦労したことはなかった。

 しかしブータンではプラグに差し込むと電話サイドに赤い充電ランプはつくのですが、ちっとも完了しない。おかしいな、と思っていたら、そのうち充電そのものが出来なくなった。この時は電話そのものが立ち上がらなくなって、「電話が壊れたかな」と思っていました。どうせブータンの大部分の場所でケイタイ電話は使えなかったから問題なかった。

 ブータンに持って行ったのは海外でも使えるケイタイ電話です。国内では別のを使っている。今は小さなカードを入れ替えれば問題なく別の電話でも使える。便利です。ですから海外用は「日本に帰ったら直そう」と思った。しかし直す前に「もう一回トライ」と思って日本に帰って充電したら出来て、「あ、電話が壊れていたわけではなかった」「充電器の問題だ」と思っていた。

 今日「そうだ」と思って、ドコモの店に行って充電器の海外での使用について聞いたのです。そしたら、01と02があって、「02」が海外対応可です、と。そこで、私が過去数回かに渡って買った充電器がどちらだったかログから調べてもらった。記録がありますから。そしたら「過去数回分については02です」と。「じゃ、ブータンの電圧が240を上回っていたからかも知れませんね」と言った話になった。

 家に帰ってそれでもと今回海外に持って行ったフォーマの充電器を見たら「01」とくっきり。丁度差し込むところの根元です。「FOMA ACアダプタ 01」とある。どうして過去に買っていない01の充電器が私の所にあったのか分からない。すっごく以前に買ったものか、まあ誰かのとクロスした可能性もある。いずれにせよ、私がブータンに持って行った充電器は「01」だった。

 これで問題解決です。「01」を処分し、「02」を常に使うようにすればよい。海外に行くときに充電器が「01」か「02」かなんて調べていられないでしょうから。しかし、皆さんも海外に行く前にちょっとお調べになったら。もっとももう「01」は少ないらしい。そんなもの最初から作らなければ良いのに。ケイタイが使える海外に行ったら、ケイタイは不可欠ですから。

 それにしても、今回の民主党政権の今すぐに目に見える功績は、海外の日本に対する関心を非常に大きくしたと言うことです。今朝のファイナンシャル・タイムズの一面の右は財務相に就任が噂される藤井裕久さんの大きな写真が。藤井さんの写真は、今日のアジア版ウォール・ストリート・ジャーナルにも2面に大きくある。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの文章の書き出しは、「Japan's new and untested government.....」と。まあそりゃそうだ。「untested」ね。その中で藤井さんは「経験がある」と。日本がらみの記事は増えていますよ。批判的なものも多いが。ワシントンでのセミナーも今までは中国がらみが大入りだったのが、今は日本関係が大入りとか。

 問題は、日本の新しい政府がどう組成され、機能し、そして成果を出すのか。これが一番問題でしょう。その他の些末な問題は横に置くとして。


2009年09月09日(水曜日)

 (10:58)ははは、一年に一度のゾロゾロ目の日。9年9月9日。2012年まではゾロソロが可能。

 それは別にして、今の方向性がはっきりしない世界の市場を考えるときには、世界経済におけるデフレの力と、インフレの力の力関係の変化をどう考えるかが重要でしょう。時間の推移を念頭に置きながら。日本的には「政権交代の最中」という背景があるが、これは世界の市場にとってはそれほど大きな影響力はない。

 「デフレの力」は身の回りを見れば明らかです。モノの値段は安くなるものが多いし、ホテルの部屋などサービスの価格も全体的には下がっている。世の中は生活レベルではデフレ力が強い。

 しかしその一方でインフレ力も侮れないものがある。昨日の海外市場では金相場が一時1009ドル台まで上昇した。原油価格も上昇基調にあるし、一部の商品の中には上げに転じているものがある。上海や北京の一部の土地価格もそうだ。かつ世界的に超長期債の利回りは上昇基調にあって、直近の緩和策で短期金利が下がっている中で、長短金利のスプレッドは大きく開いてきている。

 筆者は、伊藤 洋一のビズポッドキャストの数回前の第202回で「インデフレーション」という単語(私の造語です)を使って今の世界の状況を説明しましたが、今朝目にしたフィナンシャル・タイムズには「Spectre of inflation looms amid battle against deflation」という見出しの記事があって、両パワーの「力のバランス」の現状を取り上げている。

 この中に「The central bank actions to tackle deflation are pre-inflatinary」という一言が紹介されているとおり、緩和策の継続(高い失業率を背景とする)は、それ自体がインフレ高進的措置です。今の金相場高もドル安もあるが、そういう背景の中にある。だからこの記事が指摘しているとおり、デフレ下のインフレは対処が難しい。

 私は自分のポッドキャストの中で、「デフレ下のインフレの局地戦」と呼んだ。局地戦が局地にとどまっている間は良いし、FTが指摘するように全ての投資家が将来のインフレを見ているわけではない現状から見れば、基本デフレ下でのインフレの燃え上がりはそれほどでもないかも知れない。しかし、世界中の投資家が、「値上がりするモノは何か」「適正価値以上に上がっているモノは何か」を探していることは事実です。

 金相場などを見ていると、「インフレの局地戦」は既に始まっているわけで、今度の視点としては、

  1. デフレや高失業などで世界の中央銀行がいつまで今の超緩和政策を採用し続けなければならないのか
  2. それとの関係で出口戦略の発動がいつごろになるのか
  3. 世界的な資金の流れがどう変化するのか、そしてどこに向かうのか
 などでしょう。いずれにせよ私のポッドキャストとFTの記事を読めば、かなり頭が整理されると思います。よかったらぞうど。


2009年09月08日(火曜日)

 (19:58)テレビ番組出演の前だったのですが、暫く自民党の両院議員総会を見ていて、「これは液状化現象と呼べるかも知れない」「それにしても、救世主がいないな」と思っていました。どの組織でも、国でも、危機に立たされたときには普通「救世主」と呼ばれる人が出てくる。しかし顔ぶれを見ていて、「今の自民党にはいないな」と。

 まあまだ大敗北から時間もたっていないから、今後出てくるかも知れない。若手から。それにしても、両院議員総会は議論は熱くはなっていたが、なぜ自分たちが大負けしたのかがお互いに確認できていない印象が強く、全体的にはどこに権威があり、どこが要になっているか分からない。つまり液状化現象。

 大敗北の後とあって、執行部には発言する人が少なく、手前の一般議員は何かと怒っている。怒りの矛先は自分にも向かなければならないはずだが、とりあえずは執行部を責めているという印象。「もともと大義名分のある政党ではない」という意見があるなかで、「自民党を建て直すのは容易ではない」と考えていました。

 自民党は中堅がかなり大量に落ちて、大御所が残った。若手も残ってはいるのですが、傷跡はあまりにも大きい。特別国会での首相指名選挙で、「若林正俊」と書くのも辛いだろうに。白紙よりはましですが。

 与党の連立を巡る協議もまたしても先延ばし。岡田幹事長は、「社民党が持ち帰った」と言明。日本の政治は生みの苦しみの中にある。生みの苦しみの中だから、実際にどういう形で政治が、政策が進むかわからない面が強い。市場は依然として「様子見」という展開。

 今日のニュースで興味を持ったのは、「日本の競争力8位に上昇」でしょうか。世界経済フォーラムが発表した「2009年版世界競争力報告」で明らかになったもの。民間経済団体の調査ですが、以前から気になる。相変わらず日本は政府部門が悪く、それを民間が補っている。民主党がその政府部門をどのくらい引き上げるのか。

 ところで、今回のブータンに関するまとまった文章を、chatのコーナーの一番上に、GNHを掲げながら成長を目指す魅惑の国・ブータンとしてアップしました。お読み頂ければ幸甚です。


2009年09月07日(月曜日)

 (23:58)日経ビジネスと中部産業連盟の共催セミナーは久しぶりに時間の余裕があったので、自分が喋った後も他の3人の講師の講演をじっと聴いていました。自分が何を言うのかは自分で知っているので、他の人が何を言うのかにいつも興味がある。

 日経ビジネス編集長の梅谷さんの話は日々取材しているなかでの話があって具体的で面白かったのですが、私にとって興味深かったのは実際に製造業の現場に立ち続けた磯谷さん、池渕さんの話です。

 特に池渕さんの話は、自動車という私がずっと取材の対象にしてきた分野であり、かつ池渕さん自身が1980年から3年間ケンタッキー州のGMとの合弁会社で実際に指揮を執った方なので、その時点で遭遇したいろいろな問題、それに対する対処の仕方など、「なるほど」という面が多かった。

 「トヨタ用語」というのか、いくつかの業界用語を知ることが出来たのは面白かった。例えば「現地現物」。これは、「現場に足を運び、自分で確かめる」ことを言うらしい。ま、GMの旧経営陣はこれが出来ていなかった、ということです。

 面白かったのは、日本人の現場における「チームワーク(連携)の例」として、日本の小学生の「集団登校」と北京オリンピックにおける男子400メートルリレーの朝原チームの徹底した無駄を削いだバトンタッチを挙げておられたのが印象的。日本における小学生の集団登校については、同僚のアメリカ人が「上級生が下級生の面倒を見るなど、実に良く統率が取れている」「これこそチームワーク」と言ったので驚いた、とのこと。

 朝原チームの400メートルリレーについては、各走者の時間を比べたら勝てない。そこで徹底的にバトンタッチを練習して無駄な時間をそぎ落とした。それによる3位入賞である、という。つまり日本チームは、他のチームより走力では落ちていたのに、バトンタッチを徹底的にチームワークで乗り越えることによって時間を短縮、その結果メダルに届いた、と。

 池渕さんは、日本の製造業の強みとして「すり合わせ技術」を挙げ、一方課題としては「国策への働きかけ」「連携の工夫」、それに「レアメタルなど原料の確保」を挙げておられた。私も日本の製造業の課題の一つに「(世界的な基準作りの中での)友達作り」を挙げたが、共通するポイントだった。


2009年09月06日(日曜日)

 (11:58)日本に居なかった間に見ることが出来なかったテレビの番組の中でNHKオンデマンドに残っているものの中からいくつか見ていますが、BS特集「インド巨大財閥の挑戦ー世界最安カーはこうして生まれた」は面白かったな。

 ラタン・タタ氏が率いるタタ財閥がいかに一台10万ルピー(20万円)の車ナノを作る気持ちになって、それにどう実際に取り組んだのかが描かれている。インドには何回も行っていますから知っていますが、「歩き→自転車→バイク(スクーター)→四輪自動車」の流れがある。所得が上がるごとにです。で今圧倒的にインドで多いのはバイクです。

 ラタン・タタ会長が「これはいかん」と思ったのは、このバイクに4人〜5人の一家全員が乗って移動していることです。バイクは滑りやすい。事故があったら、多くの場合に一家全員が傷つくとか悪い場合には死んでしまう。こうした人達になんとか車を提供したい。

 10万ルピーという予算は、最初からタタ会長が部下に指示したものだそうです。タタ財閥はインドの道を走ると分かりますが、大きなトラックやバスを作っている。この番組を見ていて思ったのは、「安いものを作ることは、その会社のイメージを悪化させるばかりでなく、改善するケースもある」ということです。

 一般的にはタタのような財閥は、どちらかと言えば目立つ高級なものを作る、一台あたりの利益率が高いものを作っていると考えられる。そうではなく、多分非常に利益率が低いものでも、一つの「思い」のこもったものを作る。それが会社のイメージを上げる、という点が面白い。その「思い」とは、貧しい人々にもより安全な四輪車、乗用車(バイクではなく)に乗って欲しい、というラタン・タタ会長の気持ちです。

 ははは、実際に乗ってみたいですね。チャタルジーには「今度来るときに日本に持ってきてくれ」と言っているのですが(冗談で)、NHKの取材班の人が乗った印象としては、「結構広い(車内)」「加速が悪い」「ハンドルが重い」の三つが記憶に残った。

 欧州にも2年後に今後は安全基準ベースを変えて「65万円」で売り出すそうな。欧州の一度がどう反応するのか楽しみ。タタ会長の「常に貧しい人を対象に商売する」という言葉が印象的でした。

 あと、ETV特集「日本の朝鮮半島2000年」も面白かった。渤海(過去の国家)に「日本道」という道があったことは知りませんでした。日本に航海するための基地も出来ていたとは。渤海が印象薄い国であるということは、あまり戦争をしなかったからかも知れないと思ったりしていました。人類の歴史は主に戦争で出来上がっていますから。


2009年09月04日(金曜日)

 (06:58)昨日は夕方にポッドキャストの番組の収録が赤坂であったのですが、その後は何故か足が銀座に。ははは、ブータンのような国に居たが故に足が自然とあの方向に向いたんでしょうね。

 イトウヤで買い物をして、その後八丁目に向かって中央通りを歩きながら、また三越の地下に寄りながら、「モノがあるということはどういう事か」などと考えていました。まあ、「あるかないかは基本的にはヒトの幸せ感」とは関係ないんでしょうね。

 だからどう考えても、モノが少ないブータンの人々が「幸福度」が高いことに矛盾はない。日本を見ればブータンの人々も「いいな」と思うかも知れないが、テレビが映らないところも多い国だし、宗教の役割が非常に強い国だから別の考え方をする人も多い筈だ。輪廻転生の考え方のある国の人々の間では、「今の状態」よりはしばしば「生まれ変わった次の自分の生」が大きな関心事です。

 だから「輪廻転生」なんて信じない日本人は、「人生は一度きりだから」と考えるし、それをしばしば口にする。しかしインド人やブータン人はそうは言わないでしょう。彼等にとって生は回るものですから。

 まあでも、日本に帰ってきたら街が歩きたくなったというのは、平地が恋しかった、ネオンが恋しかった、モノが並んでいる世界が恋しかったということなんでしょうね。良い悪いの問題ではなく、それが今の私ということです。まあブータンに”暫く”住むことぐらいは出来るでしょうが。

 昨日のニュースで面白かったのは、「民主党の本部が手狭で両院議員総会も開けない」ですかね。確かにあそこでは狭い。貸しビル。タクシーの運転手さんが「自民党が自党のビルを民主党に賃貸に出して、自民党は今民主党が入っているビルを借りればいい」というような話をしていました。ははは、ナイスな発想ですな。人数的にはちょうどいい。

 過去数日の新聞を読んでいたら、「若年層失業率 先進国で悪化」という記事が日経に。そう言えばブータンの新聞に、「Unempioyment at 4 percent」という記事があって、その中に「これはブータンで13000人が職がないことを意味し、その中の10500人は15〜24才の若者である」と書いてあったことを思い出した。

 まあ人口65万の国ですから、国全体の失業者数が13000人でも矛盾はない。確かにブータンでは、「この人は何をしている人なんだろう」という若者はいました。格差の小さい国ですから、大きな社会問題にはなっていないんでしょうが。

 それにしても、この記事によれば、ブータンが失業率統計を取ったのは2年ぶりだそうです。今の「4%」という失業率の前は2007年の統計で「3.7%」だった。良い悪いの問題は別にして、のんびりした国なのです。

 ところで、来週の月曜日に久しぶりに名古屋で講演をします。日経ビジネスと中部産業連盟の共同主催です。さすがに共同主催とあって日経ビジネスの半年分の購読権付きという面白いセミナー。興味と支払い能力の有る方はお出かけ下さい。


2009年09月03日(木曜日)

 (06:58)再びバンコク経由で日本に帰着しましたが、それにしてもインマルサットの衛星電波を捕まえるBGANはよく働いてくれました。とにかくポブジカの一晩とパロの二晩は全くインターネット設備が整っておらず、選挙結果を知るのも、書いた文章やダウンサイズした写真をアップロードするのも、来たメールに返信するのもBGANが頼りでした。

屋外(ポブジカ)でBGAN接続に奮闘する稲村さん。彼女によれば、普通はBGANはこうして使うのだと  BGANを借りての衛星通信は初めてでしたから行く前はちょっと「大丈夫かな」と思っていましたが、部屋の中で南とか衛星がある方向に向かっている窓を見付けて、その近くで上下させながら、また角度を変えながら電波が強い方向を見定めていく作業は、ちょっとドキドキ、ワクワクですね。そういう場所が部屋の中にあるかな、と。

 ポブジカではたまたま部屋に南向きの窓があって、その方向にしたらアンテナが音を発して反応してくれて、そのまま部屋の中でネット接続が出来た。次のパロのホテル(Olathang Hotel)では、ロッジのようになっている最初の部屋には適当な窓がなく、仕方がないので、本館の多分東だと思うのですが、その方向を向いた部屋に変えてもらった。それで完璧。

 稲村さんによれば、「BGANは外で使うもの」とのことで、実際に彼女はポブジカでは外で接続していました(写真)が、私の場合は両方のケースで部屋の中から楽々使用可能だった。ははは、これは運ですな。電波を見付ければあとは楽です。PCに認識させて接続するだけ。100MBPSとか表示されますが、まあそれは嘘で、私の感覚だと35くらいでしょうか。

 衛星料金もだいぶ安くなったそうですが、いくら請求がくるやら。節約気味でしたが、それでもいろいろやることがあって結構使いましたから、どうなんでしょう。多分ブータンは山また山の国で、「電気が通じていない村がいっぱいある」(ジュルミさん)し、最初から電気を拒否している場所も結構あるらしい。そういうことを含めて、ブータンは恐らくネット環境が世界でも非常に悪い国の一つです。

 まあそれにしても、ブータンでも活躍する日本人に何人も会いました。過去に於ける西岡さんの事は書きましたが、ジュルミさんと結婚して愉しそうに仕事をしている青木さん。当地の高級ホテルで仕事をしている岡崎さん。そういう人達に会えるのは愉しいものです。岡崎さんは、我々が滞在中のブータンの英字紙に紹介されていました。

 ブータンの人達は良い人揃いだった。運転手のサンゲ、彼の彼女が居る農家の主人であるトプゲイ、第二ガイドのワンチュウさん、そして第一のジュルミさん。ジュルミさんはブータンで日本語が完璧に使える唯一のツアーガイド関係者で、例えばNHKや民放が撮影隊をブータンに出すときには必ずお世話になる人だと後で会話をしていて分かりました。

 日本関係の次の仕事が既に入っているそうで、過去をさかのぼってもThe Other Finalでもかなり撮影回りの仕事をしていたそうです。日本で放送されるブータン関係のテレビ番組などには最後に名前もしばしば紹介されているという。私はそれと知らずに見ていた。そう言えば、The Other Finalで思い出しましたが、我々がティンプーで見たホテルの直ぐ近くのちっさなスタジアムが「The Other Final」の舞台だったそうです。

 振り返るとブータンは興味深い国でした。なにせ「道」というものが日本と全く違う。片側2車線があるのは、ティンプー市内の2キロ弱だけ。あとはパロとティンプー間にセンターラインの引いてある片道1車線がかなり長くある。それだけです。あとは「こんなところに良く道を造った」という印象を持つ道路ばかり。あまりにも山が多く、谷間の平地が狭いが故にそうなる。十分な道路もないという意味では、ブータンは世界でも希有な存在です。

 もっともこれは稲村さん情報ですが、ネパールはもっと道がないそうです。いろいろなところから、「道路を造る」ことを条件に援助をもらうのですが、その援助が道路にまで到達することは希で、みんな政府高官など偉い人の懐に消えるとか。何事に置いてもネパールを反面教師にするブータンは、その点ははるかに綺麗だと。

 最後にブータンの物価感覚を示す一つの具体例を。ブータンでは建設現場などで働く多くのインド人を見かけました。顔かたちや皮膚の色が違うので直ぐ分かるのですが、彼等の労働賃金は1日当たり200ニュートラム(ルピー)だそうです。1ニュートラムは2円です。

 彼等は所々崩れた急峻な山道の現場近くに小さなテント小屋を造って、そこに宿泊しながら働く。一日400円で。世界には「労働者の海」はまだまだ尽きないほど有ると思い知らされる。

 ブータンに関しては、近くこれまでに書いた文章を含めてチャットのコーナーにアップする予定です。最後に一緒に旅をしてくれた15人の方々、それに終始見事なガイド役を果たしてくれた稲村さんに感謝。


2009年09月02日(水曜日)

 (06:58)麓から急な山道と階段を使って標高差300メートル弱の山道を登ってブータンの聖地であるタクツァン僧院(最初の写真)を目指し、文字通り断崖絶壁の上に立つブータンの聖地・タクツァン僧院。普段は3人くらいの僧がここで暮らすというそこで参拝をし、そして下って来るという合計6時間のきつい歩行を展開しながら、再び「宗教的熱意」とは一体何ものか、と考えていました。

 それは「熱意」と呼ぶことも出来るし、「思いこみ」とも、そして時には「狂気」と呼ぶこともできる気がする。このタクツァンはブータンの人々が「聖地」と呼び、時には遠方から五体投地でお参りに来る人もいるという聖なる僧院ですが、それはそれは恐ろしい場所に立っている。断崖絶壁の上、というか途中。

 ほんのわずかに出来た人が通れる場所とその先の狭い平地の上に、上下の岩に挟まれるように白と茶色の堅牢な建物で出来上がっている。そしてその回りにはいくつかの僧侶の宿舎、瞑想部屋などがある。それぞれが天空に聳える館のように美しい。

 僧院への行程はまず一貫して3時間(人によって違う)ほど上がった後、一回谷底に向かってつかまる場所を探さねばならないほどの人がすれ違うのがやっとという狭い、急な階段の山道を谷底に向かって40メートルほど(勘です)下り、そしてそのあと同じだけ上がって僧院に着くというもの。

 上がりはもともと標高2900メートル近くにあるので、実にきつい。少し歩くと息が切れる。暫くすると足ががくがくする。足が笑うと言ったらよいか。しかし笑えないのは、ちょっと目線を左右にずらすと(下りは右目線でしたが)、それは実際に断崖の上を歩いているので、恐怖との戦いなのです。

タクツァン僧院への最後の登りの厳しい階段の左側にあったツァツァ。ツァツァはブータンのあらゆる場所、と言ってもちょっと厳しい山道の山沿いの、窪んでいたりして適当な場所にある。墓のないブータンにあって、亡き人を偲ぶお印である  一歩歩を進めるごとに、体が「恐怖」と「谷に吸い込まれるような不思議な感覚」を覚える。そういう場所です。それを一歩一歩気を付けながら、谷底を見ないようにしながら降り、その行程の底にある滝が左横を落ちる谷の前の橋(水飛沫がかかる)を渡って今度は急な階段を上がる。

 ずっと思っていたのは、「誰がこんな場所に僧院を作ろうと思ったのか」「その一種の狂気の提案に、なぜ人々は従っていったのか」ということです。出来てしまえばそれは「聖地」と呼ばれることは間違いない。ブータンに仏教をもたらしたサンババなる人物が空を飛ぶ虎に乗って飛来し、この僧院の中にある洞窟で瞑想をした、という伝説もそうだが、その存在する場所によってです。

 しかしその為の資材の運び上げ、そして工事には多大な、そして多年に渡る人々の労働提供が欠かせなかったはずだし、資材は馬の背に乗せて途中までは行くが、あとは人による担ぎ上げですから、その過程の中では谷底に落ちた人も沢山いただろうし、建設も絶壁の上ですから危険なことが一杯あったに違いない。

 それはもう「熱意」(zeal)を超えて、生命提供の覚悟でしょう。一人一人が。国全体がその宗教的熱意に取り憑かれていた時期があった、と言える。そしてブータンでは今でも、この宗教に対する強い熱意が残っている。それが今も何故残っているのか、が疑問なのです。私には。

 インドで強く思ったのですが、「輪廻転生」の考え方は、支配者、統治者、支配階級にとって結果的に極めて便利な考え方です。今貧しい、身分の低い人間、民衆の一人であっても、祈り、そして今の与えられた仕事を懸命にやれば、「転生」したときには望む存在(人間であったり、その中でも身分の高い人間)になれる、と説く。現状に文句を言わずに、今の身分に甘んじ、そして懸命につくせという考え方。つまり階級の固定化効果がある。「今」に反抗しないわけだから。

ブータンのパロのある農家を訪ねて。その居間で。床はサフランで染色されていて黄色い。回りには国王夫妻(奥さんは4人)、先祖などが飾ってる。何と言っても家の中心は3方向の壁がその為に作られていて、二間が割り当てられている仏間。年に一度僧侶を呼んで法要を執り行う場所が仏間である。びっくりするほど広い  私はたった数日間しかいなかったから分からないが、ブータンも階級社会だという。インドとはまた違った形で。実際にはブータンにはミャンマーから入ってきた人々、チベットから南下してきた人々、そしてインドから北上してきた人々が実に複雑な、言葉も違う社会を作っている。その社会をまとめ上げていたのは仏教です。今は静的に見える仏教も、「熱意」溢れる、当時は実に荒々しい教えだったに違いない。

 それが悪いと言っているわけではなく、なぜそのような形で社会が大きく動くのか、その過程で一人一人の人間は何を考えて、何を望み、何を願っていたのかに興味があるのです。もちろん簡単に答えが出てくる話ではない。しかし興味がある。
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 ブータンに数日でもいて、人々の生活や表情に接していると、「立ち位置」の問題を考えます。我々は先進国と言われる日本から来ている。自分たちと同じような顔をした人々が、急峻な山間の国で非常に特異な生活モードを持っているというので、人々に会い、風景を眺め、そして歴史的建造物や踊り・歌を視聴しに来ているのです。別に上下という思いはないが、「こんな生活は面白いのだろうか」と思っている面もある。ブータンはやっと街が出来はじめたところです。

 しかしブータンの人々は英語を含めて数カ国語を話しながら、しかし国民一人当たりGDPで1000ドルにも達しない生活をしていながら、それを恥ずかしがっていないし、むしろ誇りにしているような所がある。る。ポブジカの例ではないが、「それで良い」「電気もいらない」「鶴にいつも通りの越冬生活をして欲しい」という考え方の生活を続けているわけです。

 少なくとも私は、「そういう生活も分かるしいいな」と思いながら、「でも今更出来ない」とも思うわけです。たった65万人(正確にはカウントされてない)の国ですが、ブータンの人々が自分たちを見に来る先進国の人間に対しても自分たちの生活を誇りに思っていることは明らかです。表情を見れば分かる。多くの途上国にある刺すような目がない。子供達も実に明るい。

 その「溢れる自信」に、今の日本の生活に慣れきっている我々は”たじろぐ”わけです。今の我々日本人の生活で良いのだろうか。ブータンの人々のような生き方(GNHのような)、考え方、宗教を何事もの中心に据えた生き方があるのではないか、とも思う。環境を破壊したのは誰だろうとも。地球温暖化の影響で、ブータンでも冬は雪が降らなくなっているという。

 しかし例えば私は、ブータンを去って日本に戻ればこれまでの生活に戻るわけだし、それが面白いと思っている面も間違いなくある。まあ私はこれを「立ち位置」の問題として表現しただけです。これも直ぐには解けない。
 写真の通り、一軒の農家を訪ねました。大勢で。ご主人が出てきた。バター茶と焼酎を頂いた。床がサフラン色に染まっている。もともとは入り婿さん。しかしこの家の奥さんとは離婚。にもかかわらず、入り婿さんが今でもこの家の大黒柱。

タクツァン僧院を背景に途中の茶屋で記念写真。この中のメンバーの中で5人が僧院へのさらなる歩行を断念。それほど厳しい急峻かつ難しい行程である  どうしてそんなことになっているのか。その家の母親(言ってみればおばあちゃん)が婿さんを気に入っているからで、娘は離婚して首都ティンプーで生活しているという。その入り婿さん、13人兄弟・姉妹の一人だと。しかし今は妻が去った後も、二人の子供の世話をしている、という。39才。

 「夢は?」という質問に、「人生の半分は終わった。あとは子供が愉しみ」「子供を大学には出したい」と。ブータンの平均寿命は65くらい。ははは、一同に一瞬衝撃が走った瞬間であった。

 たった数日の滞在でしたが、ブータンについてはもっと書きたいことがいっぱいあるし、写真も一杯ある。料理、街並み、そして何よりも山の雄大さ。本当に山また山の国です。そして山が全部急峻なのが印象に残った。しかし中国のような山が禿げているということはない。中国と違って人口圧力がなく、よく自然が残ったからでしょう。そうい意味でも大事にしたい国だと思った。

 いずれこのchat のコーナーにまとまった文章を書きます。文章、写真など新たなコンテンツを集めて。放送などの縛りがないので、自由に出来る。

 それにしても、実に気分の良い、かつユニークなメンバー16人との旅でした。その点に関しても感謝。来年の行き場所もほぼ決まりで、愉しみです。


2009年09月01日(火曜日)

 (06:56)すみません、ブータンから質問です。31日の夜はブータンの人々の踊り、民俗舞踊を見たのです。結構良かったのでサイトにアップしたいのですが、その方法を忘れてしまった。それは、

  1. デジカメの動画機能を使って30秒から1分の動画を5本撮ったのですが、そもそも写真は軽くするのに動画を軽くする必要がないのか。あると思うのですが、軽くするとしたらどういうソフトでしたら良いか

  2. PC上に移した動画の拡張子を見たら「.MOV」かなにかになっていて、以前数回やったことがある「mpg」「mpeg」ではなかったのですが、今のファイルを「mpg」に変換しなくて良いのか

  3. 変換の必要があるとしたら、ソフトは何を使ったら良いのか
 です。いえいえ、直ちにアップしようなどとは考えていません。ポブジカからパロに移動してきても、依然としてネット接続は従量制料金(交信データ量次第)のインマルサットを通じてのBGANでやっている。この段階で極めて重い動画をアップしようとは思わない。で東京に帰ってからするのですが、「どうだったかな」と。

 以前動画をネットにアップしたときには確か(a href="http://www.ycaster.com/image/20010829sinsui1.mpg">〜〜〜)といったHTMLにした。支綱切断というような。久しぶりに動画を数日後にアップしたいのです。どうした良いか。ご存じの方は教えて下さい。ブータンのダンスはユーチューブなどにあるかと思うのですが、

Jeonpa Lekso (Welcome Song and Dance 歓迎の歌と踊り)
Zhungdra (Traditional Classical Form Dance 山の聖をたたえた踊り)
Durdag (Dance of the lord of the cremation ground 墓守りの激しい踊り)
Om Sa La Ma Ne (Work Song 労働歌)
Dramitse Mgacham (Drum dance from Dramitse 悪に対する善の優越性を歌い踊る)
Ringu La Zidha Layap Dance (ブータンの永遠の平和を祈る)
Merak Dance (A Traditional Dance Omochilay ブータンの東の果てMerakの男性の踊り)
Tashi Laybey (Concluding Song/Dance 行事、宴会を終わりにするための手を繋いでの踊り=フォークダンス)

 上から5番目のDramitse Mgachamは、ユネスコにも登録されているという。最後のエンディング・ダンスは、我々観客も参加してのダンスでした。小指と小指を繋ぎ、丸くなる。我々は10分ほどで終わりましたが、実際には2時間やるという。

 個人的な趣味ですが、男性の踊りがダイナミックで良かった。


2009年09月01日(火曜日)

 (06:10)ブータンはmulti-language、つまり多言語国家です。ブータン語はむろん全員話せる。加えてネパール語を全員が聞き、話す。加えて、ガイドのワンチュウさん(二人目のガイドさん)によれば、「全国民の40%は英語を喋る」。加えてインドがモノ、人の往来で非常に近しいところにあり(ブータンは陸地ではインドとしか繋がっていない)、実際にインドの人達が一杯働きに来ているから、ヒンズー語が分かる人も大勢いる。インドのヒンズー語のテレビが国内放送より良く入る。

ブータンで初めて遭遇した交通事故。前進している車の左に横道から入ってきたランクルが軽く跡を付けただけなのだが、えらくもめて動かなかった  つまり、立場上ヨーロッパにおけるスイスのような立場なのです。隣接している国の言葉を自然と覚えて、その結果何カ国語かが喋れるようになる。それが自然という状況。スイスを引き合いに出しましたが、実際に家などは非常にドイツのアルプス寄りの地域の家、それにスイスの田舎の家に見間違うほど似ている。これは結構面白い点です。山の上はああいう家が自然なのか。

 そう言えば、今日面白いことがあった。最初の写真は、ブータンで初めて遭遇した交通事故の現場写真です。我々の3〜4台前を走っていた車(小さい乗用車)の右後部サイドに横道から入ってきたランクルが接触、この結果前進していた小型車に軽く跡が付いただけなのだが、「どちらが悪い」「誰がお金を出す」で言い合いになって、そのままの状態で両車が止まってしまった。全く動かなくなった。ランクルは道の中央に斜めに止まってしまっていたから、上り下りとも大きな車は全く動けなくなった。

ポブジカの鶴が降り立つ湿地帯を少し上から。村人も近づかないというので、今は鶴の飛来する季節ではないが、やなり遠くからの撮影となった  道路管理者が来て、警察が来てとゆっくり展開していったのですが、ネパール語が話せる稲村さんによると、この緊急の事故の現場で全員がブータン語ではなくネパール語で話していた、というのです。日本で事故が起きて、事故当事者が英語で喧嘩をすると言うことはない。もうこの地域に何回も来ている稲村さんも、「これは面白い」と。結局30分もここで立ち往生。

 まあ当事者の一人か誰かがネパール人だったのかもしれない。しかし全員がネパール語で喋るとは。そうかと思うと、警察官が来て事故の実況見分をするのですが、そこでは時々英語を喋っていた。英語はホントに何気ないレストランの従業員(若い女性など)も問題なく喋る。外国語の使用ではブータンは進んでいるんですよ。

 話は変わりますが、ブータンの女性が比較的愛想がないことは最初に書きましたが、子供は実に可愛いし、愛想がいいし、よく教育されている。近いからインドの子供達と私は比べてしまうのですが、全く違う。

ブータンの大人の正式な服装。靴下はふくらはぎの上まで。写真を撮って良いかと言ったら、わざわざ振り向いてくれた。ポブジカの朝8時過ぎ  インドの子供達は油断も隙もない。例えば赤信号で車を止める。ニューデリーで。直ぐに子供達が近寄ってくる。何かくれと。中には障害のある子供もいる。Slumdog Millionaireの通りで、大人に傷つけられた子供もいるので可哀想だが、だからといって車の窓を開けてはいけない。女性のイヤリングに手をかける子供もいる。ケガをしてしまう。

今日は月曜日。学校がある日で、ブータンの子供達と朝続けざまにすれ違った。写真はその内の一人  しかしブータンの子供は人なつっこいし、しげしげとこちらを見る。近寄っても来る。しかし自分から「何かくれ」と自ら手を出すことはしない。実に秩序だっているのです。こんな子供は日本にもいるな、という子供が一杯いる。インド人の血が入った子もいて、こちらは目がぱっちりしている。

 今日は月曜日。学校がある日で、ブータンの子供達と朝続けざまにすれ違ったなかで、一枚撮らしてもらったのが最後の写真です。ちきんと弁当か水筒をもって出かける。ポブジカの学校は鶴が生息する直ぐ横にありました。

 それから、これはニュースですが、ブータンは今は国内線はないのですが、今まであっても使っていなかった東部の空港を稼働化し、週何便か知りませんが国内便を飛ばす計画だそうです。賛成ですね。ブータンには基本的には山道しかない。それも恐ろしいほどの斜面に出来ている。覗き込めば実に恐ろしい。

 そしてまた道が酷い。「インド人が作ったから酷い」と言う人がいたが、実際にインドの道を走ったことがある身で言うと、非常に作りが似ている。酷いのです。飛び上がるほどの悪路です。

 もう一つ。空港のあるパロから首都のティンプー間ですが、今は車で1時間ほどかかる。で、今この両都市の間にトンネルを掘ろうという計画が進行中だと。うーん、これは賛成できない。あの広大なブータンの自然に対する、あまりにも大きな、そして不必要な手入れだと思からです。



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