2010年08月31日(火曜日 delayed)

 (23:30)すみませんね、8月31日から9月6日までの文章はほぼ毎日書きためていたのですが、中国滞在中は結局一回もアップしませんでした。いくつかの理由があります。

  1. 衛星通信用のマシンのドライバーが「7」で動かないために、古い「XP」を持ち出して行ったのだが、「C」が目一杯で、それを削って「D」に移す作業をしていたり、dropboxなどいくつかのソフトウエアの調子も悪くて(ネットサイドの問題だと思うが)なかなかうまく作業が出来なかったこと
  2. 特に初日から2日間は、ケイタイはドコモ、iphone4とも時々繋がる状況でツイッターは出来たが、とにかく青海チベット鉄道での移動中は新幹線のように無線LANがあるわけではなく、まとまった文章をアップできる環境ではなかったこと
  3. 一番長く滞在したチベットのラサは2年前の騒乱の後遺症もあって街のあちこちに兵士の数も多く、チベットの人達は特に外国人との会話に制限があり(そこら中に目と耳があるらしい)、それは私たちのガイドさんも同じ事なので、要するに込み入った話が滞在中は出来ない。となると、要するに自分の目で人々の表情、街の様子を見るしかないという事情があったこと
  4. 写真撮影にも数多くの制限があって、なかなかうまく撮れない場所もあったし、チベットからのネット通信は監視されているとの話しもあったので、そんな中で敢えて通信をするというのも気が進まなかった
 など。ネット環境そのものは泊まったホテル(アメリカ資本系)が良かったのか、非常に良好で、ケイタイもローミングながらよく繋がった。ちょっと時間が経過しましたが、各日の文章はそれぞれ移動先でその日をメドに書いたものです。

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表示は西寧発ラサ(拉薩)行き、午後10時40分発を意味している  8月31日。何と言っても嬉しかったのが「羽田集合」でした。午前6時半が指定の時間。成田だったら大事だった。国際線ターミナルが早く出来て欲しい。10月末でしたっけ。飛行機はCAで、出発は午前8時半過ぎ。9人のうち誰も遅れないのは良いことだ。北京は約3時間半後。

 窓から見た北京(数年ぶり)は、田圃がまるで山形のそれのように区画整理されていて、革命から60年たったことの成果を感じさせる。その合間に住宅街。高速道路が走っているが、車の数は日本と比べると圧倒的に少ない。

 しかし感心したのはそこまで。何よりもがっかりしたのは、飛行機の窓から見て北京の空気が相変わらず淀んでいること。それに河が緑に変色して汚いこと。これだけ見ても、北京の環境問題は深刻だ。東京の綺麗な空から来たので、余計印象が強かった。

 北京空港で3時間ほどの待ち。それを経てまたCA機で西寧(せいねい)に。私にとって初めての都市です。ここでは空港から出てバス移動して青蔵鉄道(別名”青海チベット鉄道”)の東の起点である西寧駅に。

 私の今までの中国の西の限界は成都だった。西寧が砂漠の中の都市だと思うのは、飛行機の窓から見ても下は正に街の直前まで砂漠で、砂が波打っている様子が分かる。緑がなく、無論木もない。そしてやっと西寧が近づくと緑と家が突然増えてくる。

 西寧は建築ラッシュでした。建てかけのマンションが一杯。ちょっと不思議なのは、我々が西寧に着いたのはもう夕方で、そのせいかもしれないが、どのビルも建設作業を続けている様子がない。普通、中国は時間に関係なく工事をやるんだが。

 人口230万の街だそうだが、もともとはイスラム、ウイグルの街。もしかしたら、成都あたりまで来ていたラッシュがここまで来たのか、それともブームの早い終焉でビル建設が止まったのか、その辺は不明だった。

 西寧は海抜2600メートル。5000メートルで空気中の酸素の量が海抜0に比べて半分だと言うが、とすると目の子で75%。やはりちょっと頭が重いので、急いで深呼吸をし、そして水を飲んだ。「水と10回ほどの深呼吸」が高山病の特効薬だそうで、確かに楽になった。

どえらく長い列車でした。多分17両編成  市内のレストラン(結構混んでいた)で食事をした後、バスで西寧駅に。暗い。人の顔がやっと見える程度。それに結構凄い数の人。大きな荷物を抱えたチベットの人達や僧侶もいる。さあ改札が開いたとなると、絶対に並ばない彼等は入り口に殺到する。もう夜の10時だというのに壮絶です。

 考えたら強行軍です。早朝に羽田を発ち、北京で乗り換えて西寧に。着いたらもう夕方ですよ。そこで一泊するんじゃないんです。食事をして直ぐに青海チベット鉄道に乗ってラサへの24時間の鉄道の旅に出発。「一晩出発に備えて西寧で寝て、体力を蓄えてさあ24時間列車」というのではない。まあその事情は後ほど。

 羽田は海抜0メートル。青海チベット鉄道の最高地点は5070メートル。それをほぼ一日半の間で上がる。結構強行軍でした。あとで聞いたら、青海チベット鉄道では、それが直接の原因かどうかは不明だが、かなりの数の日本人の死者も出ているという。

 青海チベット鉄道は2006年の開通です。西寧とラサの1946キロを走る。日本で言えば、北海道から九州までを時速90キロくらいで走る感覚。列車に乗り込んだら、私は荷物の整理をして直ぐに3段ベッドの2段目に潜り込んで寝ました。同室者は今回の旅の仲間4人。先に寝た方が勝ち?

 だって夜明けが見たいじゃないですか。夜の列車の窓からは何も見えない。


2010年08月30日(月曜日)

 (23:30)日帰りで山口県セミナーパークの「ひとづくり塾」で講演。うーん、最後の方で質問に立たれたお年寄りの声がうまく聞けなくて難渋したな。主催者が、あの質問は私も聞けませんでした....と助け船。演台では会場の声はなかなか聞こえない。

 私としては珍しくネットも使わずに。ポケットwifiをつい家に忘れた。気持ちのどこかに、「ネットくらいあるだろう」というのがあったが、甘かった。ツイッターでつぶやいたら、「1時間あれば届けます」というありがたいオファーも。ツイッターは強力です。

 ところで、明日は4時起きで羽田へ。そこから北京、そして西寧に飛びます。そこから青海鉄道→ラサ。しばらく行方不明になります。 去年のブータンに続く「アジア極地旅行?」の一環。

 彼の地のネット事情など全く分からない。これから夕方借りてきたBマシンの設定をするのだが、どうやら「7」ではドライバーがないような。とすると、XPを引っ張り出してもって行かねばならない。いろいろ用意がある。

 民主党の事などいろいろ書きたいが、もうタイムアップです。皆さん、お元気で。しばらくネット上では行方不明になるかも。「伊藤にメールしたが返事が来ない.....」と嘆かないでください。見ることが出来ないかもしれない。

 総勢9人の中国西部の旅です。


2010年08月29日(日曜日)

 (22:30)午後見たネットには、共同通信社が27、28両日実施した9月1日告示の民主党代表選に関する全国緊急電話世論調査の結果が載っていて、「代表になってほしい候補者に菅直人首相(党代表)を挙げたのは69・9%。対して小沢一郎前幹事長への支持は15・6%」とある(読売では「67%対14%」)。

 興味深いのは、「民主支持層での菅氏支持は82・0%に上った」という点。これが世論だろう。つまり民主党国会議員の数字あわせレベルでは「良い勝負が出来る」と思われている小沢元代表の立候補も、国民と党員の両方から「それはいかんだろう」と思われていることになる。

 小沢支持の国会議員は、なかなか苦しい状況だし、「なぜ立つか」の論理が「挙党態勢を作れないから」に収斂するとすれば、立候補の大義も少ないということになる。今朝のテレビを見ていても、小沢支持議員からは支離滅裂の発言が目立った。それは立候補に論理的整合性がないからだ。

 しかしだからといって、菅首相の代表戦勝利、そして首相続投に問題がないとは思わない。何よりも野党の論客だったときには感じた「信念のようなもの」が、首相になったら消えていたという問題がある。特に経済問題に関しては、知識のレベルを疑うほどだ。

 今朝のテレビなどを見ていると、「菅首相は民主党のマニフェストを前回の参議院選挙で修正した」「だから負けた」となっている。これは事実と違う。一年前の民主党の衆議院選挙のマニフェストには、予算対処が出来ない「バラマキ」(いやな言葉だ)が入っていて、いわば選挙用。修正があって当然と思っている。

 そもそも、一年前の衆議院選挙で民主党が勝ったのは、自民党のその直近の3代の政権があまりにもだらしなかったからだ。いわば自民党はオウンゴールで政権を失った。民主党は決してマニフェストで勝ったわけではない。その認識が必要だ。

 私の認識によれば、菅首相が人気急回復のあとに参議院選挙で負けたのは、特に消費税に関して「修正することの意味合いをよく理解していなかった。付け焼き刃だった」ために、発言がぶれたことだ。特に消費税の免除に関する年収のレベルに対する発言は酷かった。行く都市、行く都市で金額が違った。下限は200万、上限は400万。この二つの数字が持つ意味は全く違う。それはもうこのコーナーで何回も書いてきた。

 一言で言えば、民主党には「経済の地頭力」がない。これは考えてみれば納得できる。戦後の日本では自民党の治世が続いた。経済運営は自民党の仕事で、だから自民党の議員にはにはそうは言っても経済運営に関する地頭力がついた。

 対して、民主党は「経済がうまくいっているのは当然」「それは自民党の仕事」と真剣に取り組んでこなかった。それが、「そもそも経済とは何か」「成長がなぜ必要か」「雇用を生むのは誰か」など基本的な事項認識欠落が起きているのだと思う。マニフェストを見ても、民主党には経済や外交などに関してまとまった思想がないし、もう一歩突っ込めば民主党には党綱領がない。

 結果として、知識も「そもそも」のところが欠けていると思う。それが典型的に出たのが菅首相の消費税免除に関する発言である。おそらく民主党の官僚経験者の知識はそれなりきに経験もあり、まとまりがあると思う。しかしそういう世代が前面に出てくるのは、もっと先になってからだろう。今の二人の候補者の面子を見て、そう思う。

 政府を動かしているのは与党であるわけで、「官僚たたき」をしているだけで政治が動く、国民の支持が集まるというのは大きな間違いだ。結局、菅首相が続投するには、その近くに優秀なブレインを集め、付け焼き刃でないまとまった知識の収集と蓄積をしながら、政策を信念をもって実行する以外にない。

 今ある民主党の衆議院での議席は308。全議席480の圧倒的多数を占める。首相が解散を決意しない限り、基本的には今の民主党政府・政治があと3年続く。今のような混乱(政策を含めて)が続けば、それは日本にとっての大きな時間ロスを意味する。菅首相が続投になっても、この時間の無駄は避けなければならないし、民主党には日本の政治に対して責任があると思う。

 一年前に総選挙をやったばかりなのに、またというのは望ましくない。そう私も思う。しかし今のような日本の政治の閉塞状況を打開するためには、政界再編、さらには総選挙というのが必要になる時期も来ると思う。それが近い予感がする。


2010年08月28日(土曜日)

 (05:30)早朝に起きる用事があったので、ちょっと見たら、やはりこの部分でしょう。ジャクソン・ホールでのバーナンキ講演での重要部分です。日銀も「金融緩和の検討に入った」との報道。

 どちらとも具体的に何をするのかは明らかではない。しかし市場に対して、「ちゃんと見ていますよ」と両人が言った段階で、世界の市場は安心した。ニューヨークの株はこの文章を書いている段階で、ダウで見て150ドルを超える上げ。

 「無視への逆襲」が完全に終わったのかどうかは分からない。日米両国政府も出来ることは限られているし、何よりも消費者が自信を失っている面がある。しかし、ある意味で一歩前進でしょう。

Conclusion

This morning I have reviewed the outlook, the Federal Reserve's response, and its policy options for the future should the recovery falter or inflation decline further.

In sum, the pace of recovery in output and employment has slowed somewhat in recent months, in part because of slower-than-expected growth in consumer spending, as well as continued weakness in residential and nonresidential construction. Despite this recent slowing, however, it is reasonable to expect some pickup in growth in 2011 and in subsequent years. Broad financial conditions, including monetary policy, are supportive of growth, and banks appear to have become somewhat more willing to lend. Importantly, households may have made more progress than we had earlier thought in repairing their balance sheets, allowing them more flexibility to increase their spending as conditions improve. And as the expansion strengthens, firms should become more willing to hire. Inflation should remain subdued for some time, with low risks of either a significant increase or decrease from current levels.

Although what I have just described is, I believe, the most plausible outcome, macroeconomic projections are inherently uncertain, and the economy remains vulnerable to unexpected developments. The Federal Reserve is already supporting the economic recovery by maintaining an extraordinarily accommodative monetary policy, using multiple tools. Should further action prove necessary, policy options are available to provide additional stimulus. Any deployment of these options requires a careful comparison of benefit and cost. However, the Committee will certainly use its tools as needed to maintain price stability--avoiding excessive inflation or further disinflation--and to promote the continuation of the economic recovery.

As I said at the beginning, we have come a long way, but there is still some way to travel. Together with other economic policymakers and the private sector, the Federal Reserve remains committed to playing its part to help the U.S. economy return to sustained, noninflationary growth.


2010年08月27日(金曜日)

 (14:30)番組やエッセイ公開のお知らせです。番組は、「世の中進歩堂」で、「記念すべき放送100回目!」ということで、特別企画をお送りします。

 一口で100回と言いますが、一週間に一回の番組なので100回とは2年を意味します。BSの番組をやるのは何回か過去にありますが、あまり続かなかった。しかしこの番組には続く理由があると思っています。

 それは、日本の今後を支えるであろう最新技術を紹介しているからです。私のかねての信条は、「世の中を変えるのはテクノロジー」というもので、この番組はその日本の最新テクを知り、理解する上で、非常に役立つと思う。

 今回は番組MCの私・伊藤洋一と梶原麻莉子が、これまで紹介してきた話題の中から印象に残っている最新技術をセレクトし、VTRで振りかえると共に、その後の更なる進歩を追跡取材します。この番組をご覧になっていたみなさんも、「あの時点からもうここまで来たのか」と、世の中の進歩を強く感じるに違いない話題も登場しますよ。

 続いてエッセイです。「ECOマネジメントの第78回」として、「ねじれる世界経済の行方」の「その1」として、「減速する成長 BRICsの実情」を取り上げます。「先進国は力強さに欠けるがBRICsは大丈夫」とされてきた世界経済。しかし黄信号がともっている。それに焦点を当てます。

 それとの関連では、今日は通常放送ですが、「伊藤 洋一のRoundpu World Now」は、来週金曜日のリリースの回では中国エコノミスト・柯隆さんを招いた「中国スペシャル」を放送します。柯隆さんの話は毎回示唆に富むし、驚きの発言もある。今の中国を理解する上では非常に役立ちます。

 さて、「ニンニクとモヤシ」は今の中国にとって何の意味を持つでしょうか......など。中国の政治的将来も展望します。お楽しみに。


2010年08月26日(木曜日)

 (18:30)小沢さんが民主党の代表選に勝って総理大臣になったとして、それを国民が直ちに納得するだろうかと考えたとき、「難しいだろう」と思う。自分達が選んだわけではない。少なくとも経済の安定とか、氏に対するマイナスの心象風景が晴れるまでは駄目だろう。

 もう日本人は何代にも渡って「自分達で自信が持てない総理大臣」を頂き続けてきた。最初は「もしかして」と期待したが、その幻想も直ぐに消えた。そうした系譜の中でも、小沢さんは今までの総理とは又違った意味で負のイメージを背負っている。

 資金を巡る怪しさ、説明の下手さ、次々に政党を渡り歩いた経歴、そして「力はある」と言われながら、それが結局は「政局的力」であって「政策を動かす力」ではないのではないか、という疑念。

 今日の東京の株式市場などマーケットが今の政局を「熱烈歓迎」しなかったのは、「9月14日までは政治空白が生まれる」という歴然たる事実以上に、仮に小沢さんが日本の国のトップになっても「その力でこの国を望ましい方向に動かせるのか」に関して確信が持てない、と言うことだったのだろう。もちろん、菅首相の続投になった場合でも、政権に対する失望は強い。

 小沢さんは、今の民主党の政権奪取に使われたマニフェストの作成に深く関わった。そのマニフェストで勝ったというよりは自民党のだらしなさで国民の「今度はこっちにやらせてみよう」という心の揺れで勝ったのだが、民主党の一部はそうは思っていない。

 小沢氏の周辺から聞こえてくるのは、「原点復帰」だというい。つまり子供手当や農家保障の満額実施だ。それをやる余裕がないから今の民主党政権の苦しみの一因がある。小沢さんがそれを乗り越える力があるとしたら、それは何故か。

 今朝のやじプラで日本の新しい政治の現実、乗り越えなければならない現実(戦後に日本の政治と比較して)として、1)衆参のねじれ現象 2)国が使えるお金の枯渇ーーを挙げて、「なぜ小沢さんならその二つの難題・難局を乗り越えられるのか」と山岡元幹事長(スタジオ出演)に聞いたが、「国の予算はまだ資金の捻出が可能」「顔が代われば野党との関係もまた変わる」といった納得性の低いものだった。

 ことここに至った日本の政治の難局、経済の難関が直ちに解決可能だとは思っていない。誰がやっても難しい。しかし私も、そしてマーケットも、民主党のマニフェストへの原点回帰でそれが出来るとは思っていない。

 まずは立候補をした小沢元代表は、今までの「二番(幹事長)を目指す」政治姿勢を脱する「ニュー小沢」の挙に出たのだから、「もう裏方ではない」という姿勢変換が必要だ。国民に向かって、世界に向かって、そしてマーケットに向かってはっきりと、論理すっきりの説明できなければならない。「恥ずかしがり屋さん」では無理だ。

 それがなければ、同氏としての「決断」が直ちに「日本の前進」ということにはならないだろう。日本の政治の一層の混乱もあるだろう。そう思う。


2010年08月25日(水曜日)

 (21:15)世界のマーケットは、「ビナイン・ネグレクトへの逆襲」という感じになってきました。欧州とアメリカは自国通貨を下げることを基本的には歓迎している。で、何もしない。

 日本は円安が良いことが分かっていながら、「検討」ばかりで何もしない。どちらも「何もしない」ということでは同じです。つまり、「ビナイン・ネグレクト」(慇懃なる無視)。

 しかし世界中の株が今現在下がっている。日本の株は連日の年初来安値更新をし、ニューヨーク・ダウは1万ドル割れ寸前にあり、そして今見たら欧州の株価も軒並み安い。これは一見矛盾しているように見える。通貨関係から言えば、欧州やアメリカの株は上がってもおかしくない。輸出が有利になるのだから。しかし上がらない。

 これはどうなっているかというと、マーケットが世界各国の当局の「不作為」に失望し始めたことを意味している。為替が有利になっていく国もその他の問題の深刻化の中で、「作為」がなければ、例えばアメリカでは景気の一段悪化の歯止め策、デフレ防止策が打ち出さなければ、市場は納得しない段階まで来たと言える。

 欧州もそうだ。ギリシャをなんとかしたと思ったら、アイルランドが今度は問題になっている。日本は日銀が「景況感に変化なし」としている間に、みるみる円高と株安が進み、一気に景況感は悪化している。

 ではどうしたら良いか。それは、当局が「作為」、「行動の意志」を示すことです。それによって、マーケットは「政府の意志」を関知し、安心する。市場と長く付き合っていると分かるが、市場は非常に知的に見えて、実は不安の固まりです。だから時々クラッシュが起きる。

 それを沈めるのは最後には、「政府の意志」しかない。だから私の印象では、欧米が消極的だからと言って日本が介入を差し控えているよりも、「当局の意志」を日本が示した方が、むしろ世界中のマーケットが安心する、そういう段階まで事態は進んできたと思う。


2010年08月24日(火曜日)

 (19:15)そりゃ、マーケットの方が堪忍袋の緒を切らしますよ。85円を上回る円高と、9000円を割った日経平均ということは、そういうことでしょう。

 対して民主党政権がしていることと言えば、「注視」「調査」「意見集約」ということで、何もアクションがない。短期に関しても、少し長い目で見ても。マーケットとは、押したり引いたりしないといけないのに、今のままでは「俎板の鯉」。マーケットは弱い環を狙うから、何もしていない国としての日本に狙いを定めている。

 ほっておけないのは、このまま円高が進むと日本から雇用がいずれ流出してしまうことです。雇用がなくなれば、国民所得も低下する。永守さんの会社のように、円高をメリットに動く会社もあるが、全体的に見れば今の日本には円高は良くない。加えてのデフレは、債務の重みを増す。悪しきスパイラルです。

 少し疑問なのは、今の民主党政権には例えばアメリカの政権とこの円高とか株安とか、日本経済の諸問題をいろいろと話を出来る人がいるのだろうか、という点だ。どうも意思疎通もなかなか出来ていないように思う。総理大臣が替わってばかりだとそれが出来ないという事に加えて、ルートそのものが切れてはいないか。

 短期と長期の政策はきちんと分けないと行けない。しかしやらねばならないことは決まっていると思う。それは、ゆっくりした円安とインフレへの日本経済の誘導であり。そのシナリオを描けなければ、市場の動揺はまだまだ続く。


2010年08月23日(月曜日)

 (23:15)例えば、こういう音楽の分け方をしてみましょう。車内でHDDディスクからでも、FMからでも、CDからでもいい。音楽を聴いている。自宅にしろ、最終目的地に着く。ぶちっと「終えてしまえる音楽」と「少なくともその曲の最後まで車の中にとどまりたい音楽」と。

オーバッカナルのおにいちゃんが作ってくれた、カフェラッテの中の秋。ウサギもいますよ  そういう分類をすると、今日の場合は後者の音楽は、「HERE TODAY」でした。ポール・マッカートニーの「Tug of war」の中に5曲目に収録されている。先日、私がインタビューしたピーター・バラカンさんもそうですが、ビートルズはある世代の人々に非常に大きな影響を与えた。

 その中でやはり目立つのはジョンとポールですが、この「HERE TODAY」はポールがジョンに対して送ったレクイエムです。「君がもし今日ここに居たら」という意味の。今私の車のHDDに入れている全曲を新しい順から全部聴いている。

 いつ終わるかメドもたたないのですが、今日はたまたま「Tug of war」に回ってきた。車の中で聞くには静かすぎるアルバムですが、今日は帰りが遅くなって午後11時過ぎになっていたので、この曲がいやにその時間帯にあった。

 ポールは言う。「確かに、僕はジョンのために特別な曲を書いた。でも僕はそれが誰かに置き換えられるということがあってもいいと思う。それは誰か他の人のことであるということはあり得るからね。ただ、僕にとってはジョンなんだ。」と。我々はポールの思いを汲みながら、その対象を身近な人に置き換えられる。

 ところで、今日の私にとっての「今日の一枚」は、ラテアートです。帰宅する前に、非常に久しぶりにいつもアートを作ってくれるオーバッカナルに寄って、「作ってよ」と頼んだら、写真の絵が出てきた。ははは、すっかり秋でしょ。ススキが風に揺れていて、その合間からお月さんが見える。

 写真で分かりますかね、そのお月さんの中に「うさぎが餅つき」をしている。頼むとき「こう書いて」とは言わない。いつも「今日は何の図柄だろう」と想像し、楽しむ。うーん、夜になって風は出てきたが、まだ暑い。このラテアートは、一足先に秋を運んできてくれた。

 いえいえ、ちょっと冷めていたなんてことはないですよ。きっちりおいしゅうございました。


2010年08月22日(日曜日)

 (23:15)そういえば月曜日は、「ファイナンス・フォーラム」だった。毎年司会兼パネラーなんですが、いつも面白い議論になる。というか、しなければいけない。

 今年もやることは一杯ある。世界経済はどうなるか、日本の政策は。先進国共通のdebt-overhung の問題もやりたいし、世界経済のねじれの問題もある。まあパネラーの方々は一騎当千の方々ですから、面白い議論になると思います。

 それから、金曜日だったと思ったのですが、「伊藤 洋一のRoundpu World Now」の新しいスポンサーになられたソフィア・ホールディングスの方々が見えられて、そこで同社が力を入れているARecX6(アレックス6)という商品を見せてもらいました。

 この商品の副タイトルは、「世界初!ワンセグ6チャンネル同時録画の新世代チューナーレコーダー」というもので、要するに「ワンセグ6チャンネル分の番組をHDD容量の許す限り全部自動で録画し、それを後でPCの画面を通じて検索して、好きな番組だけ見ることが出来る」というもの。

 実演してもらいましたが、優れていると思ったのは今のテレビ番組の予約のように事前に「何時何分スタートで何チャンネル」という自ら手を下す録画方式ではなく、「まず全部録画する」というところからスタートするという点。

 でそれを、後でタイトルなどなどでPCを通じて番組を検索し、探し出して見るという方式。実はテレビの番組というのは事前に「これは面白そうだ」と分かっているものは少ない。後で友人などから、「あれは良かった」と聞く。その時にはもう見れないケースが多い。再放送があるのはNHKくらいだから。

 よって私はNHKオンデマンドなどで見ることが出来るものは見ている。しかし民法の番組の見直しはほぼ不可能です。よほど私が関連している番組関連だと、あとで局の人に見せてもらう程度。

 しかしこのARecX6(アレックス6)なる商品は、HDDの容量の許す限り全部撮り残すが原則だから、あとで友人に「あの番組は良かった」と聞いたら、家に帰ってちゃんと見直すことが出来る、という方式になっている。これはなかなか貴重だと。

 「HDDの容量の許す限り」という意味は、直近のものがHDDの容量限度一杯に残っているという意味。古いのは押し出されて消えていくので、例えば一週間とかは確実に残っている。今のDVDレコーダーの大部分は、過去に収録した番組が優先で、一杯になると録画出来なくなる。古いのが消えるのはすばらしい。幸い我が家にはもう使わなくなったかなり大容量のHDDが残っている。それを使える。

 私の場合昔からはまってみている番組は、「新婚さんいらっしゃい」であり、最近では「ゲゲゲの女房」ですが、ゲゲゲはNHKオンデマンドで見れるが、前者は見逃し、かつ録画を忘れるともう二度と見れなかった。これが防げるし、キーワードで過去(例えば一週間)見たい番組があったことが分かったら、ゆっくり見ることが出来る。やはり、ドキュメンタリーなんかはいろいろ見ておきたい。

 ワンセグをPCの全画面で見るとちょっと鮮度が落ちるのですが、まあそれは40インチ以上の薄型テレビで迫力を見るわけではないので、合目的的でしょう。なかなかスグレモノの商品と見ました。一台借りてきたので、家で実験です。


2010年08月21日(土曜日)

 (18:15)本を二冊紹介します。一冊は「iPad on Business―あなたのワークスタイルを変える実践活用ガイ」(翔泳社)です。この本は私もインタビューを受けるなど協力した経緯もあったのですが、送付先が予想外の場所だったり、なにやかやと忙しかったりでこれまで見れていなかった。

 しかしその「間(ま)」も逆に「役立ったな」という印象。というのは、昨日の「伊藤 洋一のRoundpu World Now」でも言ったのですが、私は何かガジェットを買った場合は一切説明書を読まずに、とにかく使うことから入る。「あれ、これは出来ないのか」とか「へえ、こんな事も出来る」と気付きながら。で、一応のレベルに達する。日常的に使うには。

 しかしそれだけでは、日頃使う以上の技量向上は期待できない。つまりマシンを使い切ることにはならない。隠れた技があるかもしれません。そこで説明書を読むのです。そうすると、「ああ、なるほど」と納得できることが多い。ipadも早めに説明書を読むよりは、しばらく使って...と思っていた。そして、その説明書には「ipad on business」が最適だろうと思っていたのです。

 その通りでした。知らない技、知らないアプリが紹介されていて面白かった。著者の鞄の使い分けなど+αの情報もあるし、なかなか面白い本にまとめられている。私が面白いと思った情報やアプリは

  1. 名刺整理の「WORLD CARD MOBILE」というアプリ
  2. keynote を使わないプレゼンテクニック
  3. ipad のホーム画面をプレゼンするアプリはない、という結論
 など。名刺アプリはDLして使っているのですが、今ひとつ要素取り入れがうまくいかない面がある。しかし今まで増え続ける名刺に悲鳴を上げていた私としては、使いこなしたいアプリです。2と3故に、私のような人間にはipad はプレゼンには向いていないというのが結論(だって私には対面プレゼンはない)ですが、まあ可能性は多少は残ったかな。「ipad には最初から向いていない仕事がある」と宣言しているところが良い。

 もう一冊は、「通販」(新潮新書)です。この本にはちょっと期待のですが、歴史の解説と現状の紹介にほぼ終始していてあまり面白くなかった。ただし一つ面白い発想が浮かんで、例えば楽天などのサイトに出店して「文章や音声などを売るというのはどうだろう」ということです。解説者のチームを作ることも出来る。モノではなく、コンテンツ販売です。まあ、発想のレベルですが。

 ところで、今日読んだ面白い記事は以下です。赤くした部分が面白い。これは以前から言われていることですが、日本では「三人のうちのどの息子が」という報道しかない。北朝鮮の体制も中国と同じで、「統治の正当性」は経年劣化します。劣化の先には集団指導がある。

SEOUL?The biggest meeting of North Korea's ruling political party in 44 years, expected to be held next month, may give the world its first look at the country's potential next leader, Kim Jong Il's third son Kim Jong Eun. But some North Korea watchers think the meeting may reveal a bigger surprise: a step away from dictatorship to collective rule.

The representatives meeting of the Workers Party of Korea-likely to begin around Sept. 6, though an official date hasn't been announced?will mark a turning point in a drawn-out succession process occurring out of view of most North Koreans, let alone the rest of the world.


2010年08月20日(金曜日)

 (11:15)番組の案内です。今夜夜10時24分からの「世の中進歩堂」のメインネタは、『光を当てるだけで生活空間がキレイに!最新光触媒技術“ハイドロテクト”に迫る!』 です。

 トイレやキッチンなどの生活設備の開発・販売を行うTOTOで、実は画期的な技術が開発されたのです。その名もハイドロテクト。光が当たるだけでトイレの床やキッチンなどの汚れを分解して、清潔な状態を維持することができるという最新の光触媒技術。

 建物の外壁などをハイドロテクトの塗料で塗れば、清掃が難しいビルの外壁も、雨が降るだけで汚れを洗い流すことができるという。しかもキレイにするのは汚れだけではなく、周囲の空気までもキレイにする効果があるのだ。すでに様々な建物にハイドロテクトは活用されていて世界中にも普及し始めているという。

 今回番組では、ハイドロテクトの研究現場に潜入し、その驚きの効果の秘密を探っていきます。TOTOさんには、私はベトナムでも工場を見せていただいた。ありがとうございました。

 「伊藤 洋一のRoundpu World Now」は、午後10時45分からです。放送はいつもの通り、今週のいろいろなニュース、トレンドを扱います。柱は、(1)エコポイント制度継続の是非 (2)円高の影響、それへの対策 (3)民主党内の駆け引きをどう考えるかーーーなどです。うれしい発表もあります。

 それから、今週のニュースで一つ「これは面白い」と思ったものを。

高速道、時速100キロ未満は引き上げも 規制基準改定

 交通実態に合わせて高速道路の規制速度を設定できるようにするため、警察庁は19日、交通規則基準を改定することを決めた。「実際のスピードと規制が乖離(かいり)している」との指摘を受けたもので、制限速度が上限の時速100キロを下回る場合、可能な区間で規制速度が引き上げられるようになる。

 同庁交通局の通達を受けて全国の都道府県警がそれぞれ対象区間を選び、年内に計画を策定。対象は中央分離帯のない片側1車線の区間などを除く約8千キロ。カーブの大きさや見通しの良さといった道路の構造と交通状況などを考慮する。

 最高速度の見直しに関しては、一般道では既に昨年10月から検討が進められている。今年3月までに全国32区間(全長約106キロ)で引き上げられ、岡山市の国道2号の一部では法定速度を超す70キロに変更された。

 対象となる高速道路と自動車専用道は、上下線で全国計2万613キロ。このうち規制速度が現行100キロとなっている東名高速道の大部分など全長約6千キロを除く区間の一部。

 これは私が今年の夏にいろいろな道路を走って本当に感じたことです。「実際のスピードと規制が乖離」は、時に40キロに達する。これは危ない。車の性能や安定性も増している。柔軟な速度規制の変更が望ましいと思う。


2010年08月19日(木曜日)

 (16:15)ははは、今日は久しぶりにかんべいと昼飯。うーん、一つ借りがあったので。珍しい機会にもろもろ懇談。

 しかし面白いことで一つ、「よっしゃ」ということになった。それは、「爆笑! 四酔人」のリユニオン。近い将来、ということで。だって、最初の「爆笑! 四酔人」は2000年。もうあれから10年たった。

 ところで、東京と大阪で一つずつ面白いお店を紹介しましょう。東京は「笄鮨」。読めないでしょう。私も読めなかった。「こうがい」と読みます。実に面白い寿司屋です。店が変形している。一階のカウンターは7人も入ればいっぱい。

 私はずっとこの店の存在を知っていた。青山三丁目と西麻布の交差点の間を歩けばある。よくドアが開いていて、店がまるで覗けるような場所にあって、逆に入りにくかった。しかし、やじプラの萩谷順さんと間隔を置いてやっている飲み会の場所に、萩谷さんが指定してきた。で、初めて入った。

 もともとは奥様のお父さんがやっていた材木屋の跡地を寿司屋に改装したらしい。どうりでという感じだが、店は変形していても、寿司はまっとうです。おいしかった。日本全国広く、もっと狭い寿司屋も大阪で知っている。しかし、東京では希有だと思うし、味も良い。

 紙たばこは吸うし、寿司を割り箸で食べるようなとっても変なところがある萩谷さんだが、いい寿司屋を紹介してもらったと思う。ありがとうございました。畳縁のバッグは秀逸でした。

 大阪では、天神橋筋六丁目駅、天満駅、扇町駅から歩いてそう遠くない 「ほうば」です。この店は前一回紹介した。しかし今週行って、「やっぱりバリューの店」ともう一度。高くない。庶民的な街の、価値あるおいしい店という印象。今が旬の松茸で肉を炒めた季節料理が良かったな。どちらの店を推薦です。

 あそうそう、大阪ならではの「立ち呑みワインバー」。ツッチーと二人で入って、ちょっと笑いました。Vintage24とか言う店だった。デザートワインもありましたよ。とっても安い。


2010年08月18日(水曜日)

 (10:15)それにしても、と思う。全国各地で熱中症で死者が数多く出ていることを聞くたびに「生態系は微妙なバランスの上に成り立っている」と。

 だってそうでしょう。いつもの年だって30度越えで33度くらいはあったと思う。そういう年に一体何人の方が熱中症でなくなっていたか。少なくとも熱中症がこれほどニュースにはなっていなかった。

 それが35度を超えたら急に熱中症が増えて、都内だけでも三桁の死者が出ている。たった数度で人間にもこれだけ影響が出る。体の弱い高齢者の方が多いにしても、我々それほど年を取っていない人間にも大きな体調変化が起こりかねない。

 人間がこうなのだから、他の動物、それに植物が「数度の温度の変化」で影響される度合いも実に大きいのでしょう。今まで稲作が出来なかった北海道がもうまもなく有力な稲作地帯になるかもしれないし、南の海にしかいなかった熱帯魚が日本の南の沿岸でも見れるようになってきているとも言われる。もっとやっかいな害虫なども。

 多分数度の恒常的な温度変化がもたらす地球環境、生態系への変化は実に実に甚大な筈です。それはスーパーコンピューターで計算しなければ出ないような結論でしょうが、数度の温度変化が人間の生態に及ぼす影響から考えると、地球全体への影響は実に大きいと言えるでしょう。

 もちろん地球全体が地域ごとにバランスを取っている可能性はあります。世界各地で起きている気象現象がばらばらなことは時々報じられている。北半球が暑いときは、南半球が寒かったり。

 しかしこの星は、時に全球凍結とか、今より地球全体が非常に暑かった時期とか、人間が生まれる前にも非常に大きな変化を遂げてきた。今のような人間が住むに最適な環境が整ったのは、地球全体の歴史から見ればそれほど長い期間ではない。

 今の地球環境の変化が、人間活動によって起きているのか、またはどの程度起こしているのかは分からない。多分人間サイドで出来ることはある。ロシアで森林火災が大規模に発生し、中国の北東部で水不足が深刻化し.....と、まあ「どうなっているの」「どうなるの」ということはいろいろある。

 出来る事はするにしても、人間はそれ以上のことを出来ない危険性もある。そう考えれば今の地球上の生物には、人間を含めてはかなさもある。


2010年08月17日(火曜日)

 (23:55)「自然体力経済」への呻吟といったところでしょうか。昨日出た4−6月の日本のGDP統計を見て、「これは先進国経済全体が直面している問題だ」と思いました。

 リーマン・ショック以後の世界的な景気後退に対処して、日本を含む先進各国は様々な景気刺激策を打っているか、または打っていた。乗用車の販売促進策(補助金の支給など)がその代表例だが、様々な形でいつもよりも財政支出を多くして、景気を刺激した。そうしないと、失業率の上昇に歯止めがかからなくなるという懸念があったためだ。日本では家電エコポイントもそう。

 それによって、消費は刺激されるが、しかし多くのケースにおいて「消費の前倒し」が起きる。「消費の先食い」と呼んでも良い。なぜなら、車にしろ家電にしろ、一度買えばその後はしばらく買わなくなるからだ。誘発された買いは、その後の需要の枯渇を意味する。

 それは最初から「一時的な措置」と位置づけられているし、実際のところ恒久化は無理である。なぜならそれは税金を使う政策だからで、今のように世界の先進各国が大きな財政赤字を出しているときには継続は無理だ。かつ、恒久化したら、「促進策があるから今のうちに買おう」という意欲も失せる。政策が効果を持つのは、それが新鮮さを保っている間のケースが多い。

 言ってみれば、景気刺激策、特定商品の販売促進策というのは、意図的に「需要のゆがみを生む政策」と言える。民間も販促をするが、それは長い目で見ての利益を求めているもので、財政の出動は「いずれ税収が増える」という見込みも出来ないわけではないが、過去の例を見ても「その後の取り戻し」はなかなか難しい。それが「財政赤字」となって溜まるケースが多い。

 4−6月のGDP統計を見ても、エコポイントの対象変更などの影響が大きく出ている。いつまでも国の税金支出によって家電や車が売れていると言う状況は、どう見てもおかしい。

 こうした需要を意図的に喚起し、需要が起きる時点を移動させる政策ではなく、本当は「そもそも消費者が自信を持ってお金を使える状況」を作ることがそろそろ必要になってきている気がする。消費者は、先行きに自信が持てれば、黙っていてもため込んでいるお金を使って需要を生む。自分への投資を行う。

 箱物ばかりを作る公共事業政策よりはましだが、やはり税金を使って国民に消費を奨励する今のエコカー補助や家電エコポイントは、だらだら続けて良いような政策でない。もっと腰の入った、本格的な経済政策の時期である。


2010年08月16日(月曜日)

 (23:55)今日は「世の中進歩堂」の収録日で朝から東京タワーの下の芝公園スタジオで一日を過ごしましたが、興味深い技術が三つも。

 「人間工学から見た心地のメカニズム」
 「重イオンビーム育種法」
 「1分間に200ページがスキャニング出来る画像処理技術」

 の3本でしたが、いずれも目から鱗でしたね。「心地のメカニズム」って、面白い言葉でしょう。先生によれば、世の中で使われている例えば椅子にしろ、「人間工学」をうたいながら実はそうなっていない。なぜそうなのかを追求しました。

 「重イオンビーム育種法」は怪獣番組で使われるビームではありません。実は植物の花の色を変えたり、大きさを変えたり、そしてちょっと違和感がある人がいるかもしれないが、桜の咲く季節をずらしたり、期間を長くしたり。長い目で見ると、地球の食糧問題や環境問題にも大きく寄与しそうな技術の話です。

 「画像処理技術」には本当に驚きました。タッチパネルと言いますが、「アンタッチ」、つまり触らないで指を動かして入力できる装置や、驚くべきスキャニング技術(3D利用)、それに高速フォーカス、対象物の動きを見失わない電子顕微鏡などなど。

 9月に入って放送されますから、ご覧ください。放送は毎週金曜日の午後10時24分から、BS JAPANです。

 新聞紙上でも面白い技術を発見しましたよ。『キー入力「クセ」で本人確認、100%識別』というやつ。以下がその新聞で紹介されていた技術です。

 NTTコミュニケーションズは、パソコンのキーボードで入力する際のクセや特徴を見抜いて個人を認証するソフトを開発した。

 不正アクセスなどによる「なりすまし」を発見できる利点があり、パソコンを使った遠隔教育などでの活用が見込まれている。今年度中に国内初の商用化を目指している。

 「キーストローク・ダイナミックス」と呼ばれる生体認証技術の一種で、キーを押してから離すまでの時間や、次のキーを押すまでのタイミングやリズムなどで個人差が大きいことを利用した。

 事前に1000文字程度のキー入力で様々なパターンのクセを登録し、その後入力される文章150文字程度ごとに、本人の打ち方との共通度を判定。打ち方のデータは、ネットワークにつながった利用者のパソコンから、同社の認証用サーバーに送られる仕組みだ。実証実験によると、本人か別人かをほぼ100%見分けることが可能という。

 パソコン利用中は継続して認証できるため、IDやパスワードを不正使用した「なりすまし」や、利用者のすり替わりも見破ることが容易という。

 大学などで実施している遠隔教育で、オンライン試験での不正防止やコピーした文章を張るだけの「コピー・アンド・ペースト」の防止につながるとみられる。在宅勤務者の本人確認などへの導入も見込まれる。

 特別な機器は使わずソフトをインストールするだけで利用できるため、ICカードや指紋認証などに比べ低コストで済むという。

 確かに「入力の癖」というのは、人によって千差万別なんでしょうね。「キーストローク・ダイナミックス」とは面白い言葉です。同じブライド・タッチの人でも、確かに典型的なブラインドタッチの指の動かし方からやや外れた人が確かに多い。私も、「0」「ー」を打つときは右手を外して打つ。届かないからです。指が長い人はそのまま打つのでは。かように、タイミングまで関知すれば、確かに「本人確認」がほぼ完璧に出来るかもしれない。

 技術は一杯出てきている。問題はそれをどう使うか、ですね。「テクノロジーこそ経済を変える」というのが私の考え方の基本です。


2010年08月15日(日曜日)

 (23:55)ちょっと気になっていたので、午後11時過ぎに道路交通情報センターのサイトを覗いたら、首都圏周りの道路はかなりもう空いている。「1000円のうちに」という人たちで午前0時前まで渋滞との予想は空振りだったようです、良かった。深夜に渋滞にはまるのは冗談ではなく大変ですから。

 ところで、毎年この時期には日本では、終戦記念、御巣鷹山、帰省などに関連した”決まりもの”のニュースがかなり量的にはあって、それらでニュースの時間(紙面)がほとんど埋まってしまう。まあ仕方がないのだが、「何か新しいことはないのか」と考えている身には物足りない。

 しかし海外のニュースを海外メディアで見ると、「へえ」というようなニュースが一杯ある。一番面白いと思ったのは、ウォール・ストリート・ジャーナルにあった、「Apple Manager Is Arrested in Kickback Probe 」かな。

 アップルのグローバルな部品調達担当者であるPaul Shin Devineなる人物が、アジアの6社( Cresyn Co. Ltd. in South Korea, Kaedar Electronics Co. Ltd. in China and Jin Li Mould Manufacturing Pte. Ltd. in Singaporeなど)から100万ドル以上の不法なお金を得ていて、金曜日に逮捕されたというもの。

 それによると、この人物はアップル製品に関する秘密情報をこれらの部品納入業者に流し、これら納入業者がアップルのサプライヤーになるのを助け、その見返りに自分の妻名義の講座にお金を目立たない金額に小分けして振り込ませた、というもの。容疑は「wire fraud, money laundering and unlawful monetary transactions」となっている。

 アップルという会社はこれまでそういう噂がなかっただけに、「へえ」ってな感じですね。オーストラリアのギャング一家の親分が殺されたという同紙のニュースも面白い。

 ニューヨーク・タイムズに載っている「In Weather Chaos, a Case for Global Warming」は、世界で相次ぐ異常気象を考える上では興味深い記事です。日本のニュースがちょっとデジャブ担ったときには、海外のニュースが面白い。


2010年08月13日(金曜日)

 (10:55)番組のお知らせです。今夜の10時24分からの「世の中進歩堂」は、『神秘!ヤマメがニジマスを産む!?驚異の養殖技術が登場!』と題して、東京海洋大学の吉崎博士の研究を取り上げます。

 先生の研究室では、以前マスコミベースのニュースにもなりましたが、「ヤマメにニジマスを産ませるという驚きの研究を進めている。これは、「借り腹養殖」という、絶滅の危機に瀕している魚たちを守るための養殖技術。

 この技術を使ってヤマメとニジマスだけでなく、他の魚にも応用が可能だという。すでに、この技術を使った、絶滅寸前の魚を救うための様々なプロジェクトが進行中。中には日本人が大好きな高級魚・クロマグロを守るための研究も行われているという。次世代の養殖技術として期待されている“借り腹養殖”、その全貌に迫ります。

 私はちょっと、「そうかドジョウでウナギを生み育てれば、それは商売にもなるのではないか」と考えましたが、さて先生の答えは。

 金曜日の夜は毎週のことですが、伊藤 洋一のラウンドアップ・ワールド・ナウもあります。専用のラジオがなくても、PCやケイタイからRadikoで聞くことも可能です。もちろん、為替などの市場波乱に触れます。お楽しみに。


2010年08月12日(木曜日)

 (19:55)今のところ、「注視」とか「見守る」とか「影響を調査」ばっかりですね。夕方に白川日銀総裁が、総裁談話を発表した。全文は、

 最近の金融資本市場の動きをみると、米国経済の先行き不透明感の高まりなどを背景に、為替市場や株式市場では、大きな変動がみられている。

 日本銀行としては、こうした動きやその国内経済に与える影響について、注意深くみていく。

 ですが、これを読んで大部分の人は「じゃ、何するの」と思った筈です。建前は言葉でも言えるが、本音は行動することでしか示せないケースが多い。日銀だけでなく、民主党政権も「総理が官房長官に注視を指示した」とか、経産省が「円高の影響200社緊急調査」とかで、「では何を」がまだない。

 言葉ばかりで行動のない国は、市場では舐められます。事実白川総裁の談話が伝わったあと、市場が円安に動いたという事実は今のところない。今のデフレの、そして輸出収益に頼っている面がある日本では、円高のメリットよりもデメリットの方が私は大きいと思う。ほっておくと日本企業は日本での雇用維持が出来なくなる。

 私は一つの参考はスイスがずっととってきた為替政策だと思う。確かにスイスと日本では経済規模が違う。しかし何かといえば通貨高に見舞われてきたことでは日本と同じスイスが今とっている姿勢は、日本にとっても参考になると思う。

 まあ、ここまで言葉を重ねたら次は行動でしょう。市場はそれを待っていると言える。


2010年08月12日(木曜日)

 (12:55)今日はふっと気がついたら海外の新聞記事をずいぶん読んでいました。朝はテレビ局で出演までのちょっとした間に日本の新聞に全部目を通してしまったので、終わったら自然と海外の新聞に関心が行ったのですが、面白い記事が多かった。リンクを張れるもの、張れないものあるのですが、

 「Chinese Hospitals Are Battlegrounds of Discontent」
 「Market Drop Signals Fears About Global Recovery」
 「llegals Estimated to Account for 1 in 12 U.S. Births」
 「Grim Voter Mood Turns Grimmer」

 など。上の二つはインターナショナル・ヘラルド・トリビューンのサイトで見つけましたが、ニューヨーク・タイムズのサイトを見ても同じ記事があると思います。同じですから。下の二つはウォール・ストリート・ジャーナルで見つけましたが、契約がないと全文読めないケースもあるので、リンクを張りませんでした。

  最初の記事は、中国の医療の現実を報じている珍しい記事。あれだけ「群体性事件」(大規模デモ、スト、警察署襲撃、警官に対する集団反抗・攻撃・暴行、土地収用に反対する住民の座り込みなどの騒擾事件)がある中国ですから、病院バージョンがあってもおかしくない。

 この記事を読んでいると、病院への過剰な期待を持つ利用者とその家族もそうだが、病院サイドにもずいぶんと問題があるな、と思いました。例えば

Primary care is scarce, so public hospitals−notorious for raising costs-are typically patients’ first stop in cities, even for minor ailments. One survey estimated that a fifth of hospital patients suffer from no more than a cold or flu. Chinese health experts estimate that a third to a half of patients are hospitalized for no good reason.

Once admitted, patients are at risk of needless surgery; for instance, one of every two Chinese newborns is delivered by Caesarean sections, a rate three times higher than health experts recommend.

Patients appear to be even more likely to get useless prescriptions. Drug sales are hospitals’ second biggest source of revenue, and many offer incentives that can lead doctors to overprescribe or link doctors’ salaries to the money they generate from prescriptions and costly diagnostic tests. Some pharmaceutical companies offer additional under-the-table inducements for prescribing drugs, doctors and experts say.

 など、驚く事実が書かれている。二番目の市況記事は今朝の東京市場の動きを入れてある。今の世界の市場の動揺をうまくまとめてある。これだけドル安が進んでも、アメリカの輸出の足下がふらついてきているというのが大きな問題。ドル安にする意味がない。加えての中国の減速懸念。日本は政策不在だし、世界経済の懸念は深い。

 三番目の記事は読んだ通りだが、「12人に1人」というのは予想より多い。最後の記事は、アメリカ人がアフガニスタや米経済に対して「より悲観的になっている」というNBCとDow Jones社の共同世論調査。今のアメリカのムードを知るには良い記事だと思う。肝心なところは。

Americans are growing more pessimistic about the economy and the war in Afghanistan, and are losing faith that Democrats have better solutions than Republicans, according to a new Wall Street Journal/NBC News poll.

Nearly two-thirds of Americans believe the economy has yet to hit bottom, a sharply higher percentage than the 53% who felt that way in January.

The sour national mood appears all-encompassing and is dragging down ratings for the GOP too, suggesting voters above all are disenchanted with the political establishment in Washington. Just 24% express positive feelings about the Republican Party, a new low in the 21-year history of the Journal's survey. Democrats are only slightly more popular, but also near an all-time low.


2010年08月11日(水曜日)

 (05:55)日本時間の早朝に発表されたFOMC声明は、米金融当局が景気と物価の現状、それに見通しを前回会合からかなり大きく転換したことを示しました。景気は「鈍化」(slow)になり、物価の基調は「低下した」(trend lower)と判断した。その結果は、「FF金利の水準は維持しながらも、今の膨らんだFRBのバランスシートの水準を維持する」という形で緩和姿勢を明確化しました。声明全文は以下の通り。

Release Date: August 10, 2010

For immediate release

Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that the pace of recovery in output and employment has slowed in recent months. Household spending is increasing gradually, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. Business spending on equipment and software is rising; however, investment in nonresidential structures continues to be weak and employers remain reluctant to add to payrolls. Housing starts remain at a depressed level. Bank lending has continued to contract. Nonetheless, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, although the pace of economic recovery is likely to be more modest in the near term than had been anticipated.

Measures of underlying inflation have trended lower in recent quarters and, with substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time.

The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.

To help support the economic recovery in a context of price stability, the Committee will keep constant the Federal Reserve's holdings of securities at their current level by reinvesting principal payments from agency debt and agency mortgage-backed securities in longer-term Treasury securities.1 The Committee will continue to roll over the Federal Reserve's holdings of Treasury securities as they mature.

The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to promote economic recovery and price stability.

Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Donald L. Kohn; Sandra Pianalto; Eric S. Rosengren; Daniel K. Tarullo; and Kevin M. Warsh.

Voting against the policy was Thomas M. Hoenig, who judges that the economy is recovering modestly, as projected. Accordingly, he believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted and limits the Committee's ability to adjust policy when needed. In addition, given economic and financial conditions, Mr. Hoenig did not believe that keeping constant the size of the Federal Reserve's holdings of longer-term securities at their current level was required to support a return to the Committee's policy objectives.

 今回の声明の特徴は
  1. 使っている単語を大きく「景気悪化、デフレ懸念」を想起させる方向に変えた
  2. 打ち出された措置は「FRBバランスシートの維持」という限定条件付きの米国債の買い付け再開・継続だが、場合によってはより強い金融緩和措置を打ち出すことを感じさせる内容となった
  3. Thomas M. Hoenigが引き続き異常に低い水準でのFF金利の維持に反対し、新しい国債買い入れに関する措置にも反対した
 などでしょう。第一パラグラフにFRBの景気判断が、第二パラグラフに物価判断があるが、景気は”鈍化”、物価は”デフレ化”の方向にあると判断している。第一パラグラフで印象に残る文章はまず、「the pace of recovery in output and employment has slowed in recent months」であり、次に「the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, although the pace of economic recovery is likely to be more modest in the near term than had been anticipated. 」だろう。

 冒頭の文章はそのまま景気鈍化の判断を下しているが、二番目に紹介した文章は、「although」の前をしっかり読むか、それとも最後に来た文章をより強く感じるかで意味合いが分かれるし、多分分かれるようにFRBは作った。文章的には日本人は「although」の後を訳して、その後前半を訳すように教わっているケースが多い。例えば

 「景気回復のペースは予想されたよりも当面はより弱いものになるだろうが、FOMCとしては物価安定という筋書きの中で設備稼働率は現状より高い水準に徐々に戻ると予想する」といった形だ。

 しかしこれは私はずっと間違いだと思っていて、日本人でもアメリカ人でもやはり最後に来た文章の方が記憶に残るはずだと思う。しかも今回は「, athough」となっているので、訳し下げるのが正しいと考える。ということはFRBは「当面景気は悪い」と見ていると言うことだ。

 第二パラグラフはデフレという単語も出てこないし、デフレ懸念も出てこない。しかし第一パラグラフよりかなり短い文章には、FRBが当面インフレ懸念を解除したことが伺える。委員会全体としては。ということは、文章にはしなかったが、FOMCの委員の大部分の脳裏には「デフレの恐れ」があったということだ。

 打ち出された措置は予想された

  1. 住宅ローン担保証券(MBS)や中長期国債の購入再開
  2. FOMC声明文でゼロ金利維持に関する文言を強めるなど、景気支援姿勢の明確化
  3. 金融機関が当局に預けている準備預金向け金利(年0.25%)のゼロへの引き下げ
 の三つの措置の中で、「FRBのバランスシート維持という形での(1)」だった。と言うことは控え目であるということだ。ウォール・ストリート・ジャーナルがこのFRBの行動について見出しで使った文章は、「Fed Tweaks strategy to support growth」という形で、「tweak」という見慣れない単語を登場させている。これを調べると、「微調整」と出てくる。この新聞も、今回のFRBの措置を「控え目な微調整」と読んでいることが分かる。

 この「控え目」なところが、外国為替市場でのドルの「控え目な下落」(昨日の午後の86円台から今朝の85円台)になっている。しかし市場は「FRBの一段の緩和」に視座を置くだろう。ということは、ドルには下方圧力が掛かるということだ。

 株価は朝方どーんと下がった後、午後にFOMCの声明が出ると急反発し、一端は上げに転じた。「FRBが手を打った」ということが重要だった。しかし引けにかけてはまただれて、結局引けはダウが54.50ドル安、Nasdaqが28.52ポイント安。SPは6.73ポイント安。印象としてはNasdaqの下げが大きい。

 手元のデータだと、ニューヨーク時間帯でのドル・円の安値は85円17銭。数日前に東京市場で付けた85円02銭には接近したが、ドルはそこまでは崩れなかった。しかし今の状況だと、つまりFRBの追加緩和の可能性や米長期金利が当面上がる見通しがない中では、ドルには下方圧力がかかることになる。

 とりあえずバランスシート維持の形での国債買い入れ再開を打ち出したFRBと、特に何もしなかった日銀。政策発動余地は違うが、印象としてはFRBの方が動いていると、ということになる。FRBの措置は、長期金利の一段の低下に繋がる可能性がある。


2010年08月10日(火曜日)

 (19:55)夏はどこに行っても子供が多くて良い。特に今週は。昨年も書いたと思ったが、「日本にもこんなに子供がいるのか」と。むろん、駅の中を歩くのでも普段の暗黙のルールが使えないから、そりゃ大変です。あちこちでぶつかる。しかし新幹線の乗り場にこれだけ子供がいるのは壮観です。

 昨日お伝えしたエバーノートの件は、今日こういう記事を発見しているので、本当にあったんでしょうね。毎日新聞のITコーナーなんてあまり意識してこなかったのですが、もう一ヶ月も前のこととは言え、クラウドを使っている人間にはちょっと無視しがたい話で、伝えてくれたのは良かった。他紙になかった分だけ。

 なぜ一部顧客のデータがうまく保存されなかったのかについては、こちらの記事の方が毎日の記事より詳しい。それでもこれだけ読んだだけでは分からない面もある。一つはっきりしているのは、「もう大丈夫かな」と思ったときほど「データの保存」は必要だということでしょう。

 ところで、今日の政策決定会合で日銀は「国際金融資本市場の動きが内外の経済に与える影響に注意する必要がある」と指摘して一段の円高進行に懸念を示したものの、「7月の決定会合では不確実性が高いもののおおむね(上下のリスクが)バランスしていると判断した。今回も前回会合以降の各種経済指標や企業からのヒアリング情報などを丹念に点検した結果、前回までの判断を大きく変える材料はない」(白川総裁)として、追加緩和を見送った。懸念は示したが、円高には特に手は打たなかったということ。

 市場はFOMC待ちなのでしょう。この日銀の姿勢には反応せず、ドル・円は85円台の神経質な動きを続けている。根強くあるのは、「円高懸念」だ。これに関連して友人から「こんな記事があるよ」と教えてもらったのが「China's Yen for Japan's Currency 」という記事だ。ウォール・ストリート・ジャーナルにある。この記事で面白いのは以下の部分である。

Intended or not, Beijing's yen buying will benefit Chinese exporters that compete with Japan, and pressure Japanese companies to move even more fabrication facilities to lower-cost China. Conversely, the stronger currency is threatening Japan's export-led profit recovery: Already the yen is well above levels at which major Japanese manufacturers have based their earnings and sales forecasts.

It's up to Japan to respond. If the dollar drops to below 83 yen from 85.42 currently, the Bank of Japan could inject more cash into the banking system, a yen weakener, Nomura's currency strategist Taisuke Tanaka notes. Such levels could also move Japan's finance ministry to direct official yen selling in currency markets, something it's not done since 2004.

If it does intervene, though, the ministry might find the People's Bank of China a willing buyer--gladly vacuuming up enough yen to stifle its efforts.

 つまり、今進行している中国の円買いはもしかしたら「intended」なものかもしれない、という面がどちらかと言えば強調される内容。「intended or not」で文章は始まっているのだが、「もしかしたらそういう事もあるのかもしれない」と読者に思わせる方向の書き方になっているように思う。

 うがった見方とも見れるが、中国の円債買い、外貨準備の多様化には円高効果があることは確かだ。中国の行き場を失った膨大な外貨準備が日本の円に向かっていて、それが円高を加速。その結果、実際にこの記事が指摘しているような事態は生じている。

 通貨取引というのはどっちにしろリスクが伴う。しかし全体的に見て中国の通貨当局は「円買いに価値あり」と見ているのでしょう。それは中国の考え方だ。問題は日本が「円高は困る」と思いながら何もしないことだ。菅首相は財務大臣の時に、「円は90円台の半ばが良い」と言った。

 首相が言ったら「ではどうするか」という発想・政策がなければいけない。デフレ宣言の時もそうだ。施策もなく感想を述べるのでは、市場はやがてその人の発言そのものを「価値あるもの」と見なさなくなる。今の菅政権はそのリスクに直面していると思う。


2010年08月09日(月曜日)

 (17:55)毎日新聞のITのコーナーを見ていたら、「あれっ」というニュースが。他の新聞にないので、新しいニュースかどかもわからない。しかし、クラウドを使っている身としては見逃すわけにはいかない。

 読むと、問題が起きたのはエバーノート。トラブルの中味は、「システムトラブルでデータ消失」。データが保存できていなかったのは7月1日から4日まで。一ヶ月も前。何で今頃発表になったのか、それとも毎日新聞が遅れて報じたのか知りませんし、私はエバーノートにも入っているが、基本的には利用しているのは dropbox なので影響はない。

 しかし、エバーノートの利用者350万の一割は日本人とあり、今回のシステム不具合で影響を受けたのはその内の0.2%。ということは、7000人。そのうち一割の700人が日本の利用者ということになる

 「該当する利用者に不具合を説明するメールを、デビッド・エンバーグ最高技術責任者(CTO)名」で送る、となっているので、メールが来ない人はひとまず安心か? やはりクラウド・サービスではこういうことが起きるのだなという意味でも、以下に引用しておきます。

 まあ、システムだからあるでしょうね。利用者は、なんだかんだ言って、データのこちらサイドのバックアップが必要だと言うことです。dropbox も何かあるかもしれないから、私も早速バックアップを。

エバーノート:システムトラブルでデータ消失 利用者約7000人に

 ネット上で個人向けにデータ保存サービスを提供するEVERNOTE(エバーノート、米カリフォルニア州)で7月1日〜4日、同社のシステムに不具合が発生し、一部の利用者のデータが消失したことが分かった。同社は、該当する利用者に不具合を説明するメールを、デビッド・エンバーグ最高技術責任者(CTO)名で送り、年間45ドル(約3800円)の有料サービスを1年間無償で提供する。

 同社によると、データが消失したのは全利用者350万人の0.2%で約7000人。日本の利用者は350万人の約1割を占めるため、約700人が7月1日〜4日までの間に作成したデータが保存されていない可能性がある。それ以外の期間のデータに影響はないという。同社は今後の対策として、管理システムなどを修正した。

 エバーノートは、PCやスマートフォンなど別々の端末からデータを保存しても、内容を同期できるのが特徴で、利用者は専用ソフトをダウンロードし、自分の保存スペースに接続して使う。08年に米国でサービスを始め、日本語版は10年3月にスタートした。


2010年08月08日(日曜日)

 (23:55)家の片付けという普段やり慣れないことをしたので、体がぎしがた。いらなくなった荷物の片付け。

 それにしても、時間の経過は着実に社会の構成員の居場所を変える。近所で非常に親しくしていたお袋のお友達が、いよいよ動けなくなって蓼科の老人用の施設に入っていたり。びっくりしたり。時間の経過は着実に人間社会に変化の刻印を押すと言うことです。

 それにしても、今回は渋滞回避にちょっと頭を使う必要があった。日曜日の午後になんて東京方面に向かったらまず死ぬ。だから、月曜日の早朝に移動する予定。今、ここを見たら、さすがに渋滞は解消のようです。月曜日の午前中は上りは対丈夫でしょう。

 車の中に閉じ込められるほど非生産的なことはない。完全に止まっていられるなら何かできるが、チョロチョロ動くのが一番面倒です。それだけは回避したい。あと10日ほどこの渋滞が続くんでしょうね。車移動の方は十分お気を付けて。


2010年08月07日(土曜日)

 (21:55)私が知らない間に、ちょっと面白いShop & Restaurantが出来ていました。その名前は、「くらすわ」。親戚の話によれば、養命酒の会社が作った施設だという。

 グランドオープンが4月24日ということなので、私が知らないのもあまりおかしくない。ちょっと面白い、しかも瀟洒な感じがする湖岸の建物で、一階がショップ、二階がレストラン、三階が夜オープンするコーヒーショップ・アンド・バー。建物の裏側が大きな駐車場です。

 ショップはなかなか綺麗ですよ。甘味から野菜まで、パンからハンカチまで売っているが、一つ一つの品はよく考えられている。なかなか余裕のある面白い作りをしています。私はとりあえず、花火を連想させるハンカチを二枚買いました。

 二階のレストランは基本はテーブル席なのだが、中央にカウンター席もあって、いろいろな使い方が出来る。お料理はヘルシーが基本で、窓側の席からは直ぐに諏訪湖が見え、特に夕暮れは綺麗です。料理はまだちょっとこなれていないところがあるが、ジューシー豚(正確には十四豚です)が売り物で、これは美味しかった。三種類のタジン鍋もある。

 三階は今の季節には諏訪湖の花火を見るのに最適です。今の季節諏訪湖では毎日小規模ながら15分ほどは花火をやる。お盆のほんちゃん(4万発)と9月の第一土曜日の新作花火大会とは別に。この日も午後8時半から規模は小さいが、15分のミニ花火大会をエンジョイしました。

 なんと言っても、夜になると涼しくなるのが諏訪の良いところです。恐らく25度を下回っている。快適です。明日もう一日仕事をして、多分月曜日の早朝に帰ります。


2010年08月07日(土曜日)

 (08:55)東京を午前3時04分に出て、中央高速を西へ。過去数週間で2回のゴルフ行きの時の混み具合から考えて、夏休みが本格化したこの時期の高速道路は凄まじいことになっているだろう、と考えた為です。目的地は諏訪。

 前々回は午前5時30分、前回は午前5時に富士山麓でのゴルフの為に家を出た。しかし完全ストップは数回しかないものの、自然渋滞が発生して走行速度が30キロ前後になることは何回もあった。特に八王子周辺と相模湖の周辺とその間。特に上りの坂道がいかんですな。目的時間前には到着できたものの、「では一体夏休み中の高速道路はいつ走ったら巡航速度の80キロ前後でずっと走れるのだろう」という気持ちもあったし、「渋滞に巻き込まれて何時間も車の中で過ごすのは嫌だ」という気持ちがあって、「出発は午前3時」となったもの。

 「午前3時」はちょっとやり過ぎのような気もしたが、そうでもなかった。順調に走っているのだが、車の数は多いし、普段運転していない人が運転しているためか左右に蛇行する恐ろしい車もある。全体の車群が90キロ前後で走っていても、完全に車は数珠つなぎ。とても深夜、早朝だとは思えない。

 普段は河口湖線と分岐すると車の数もぐっと減るが、今回はそうはならない。ずっと車が多く、「順調だが車は多い」状態。結局そのままの状態で、目的地に着いたのは二時間を経過した時間だった。

 荷物を片付けて、午前5時30分頃に関東の高速道路を見たら、東名に少し赤があったが、中央高速にはなかった。しかし多分車の速度は全般に大きく落ちていただろうし、車はもっと多かっただろう。まあ午前3時に出たのは正解か。

 それにしても、「車が売れない」とか言っているが、日本の車のoutstanding(残存台数) は凄まじい数あるはずだ。それが稼働し始めただけで、日本の道路は著しく渋滞する危険性があることを、今の「週末1000円高速」は見せつけてくれているように思う。今までの道路事情は、「まああまり稼働しない車もある」という前提だとしたら、高速道を安くしたら状況が変わる、ということも念頭に置かねばならない。

 それにしても、夜明け前に走り始めたのはもう20年ぶりだろうか。午前4時を過ぎると徐々に明るくなるのだが、本当に短時間に空が白むのを発見した。「秋の日はつるべおとし」というが、「夜明けもそれに劣らず素早く来る」ことを発見した。


2010年08月05日(木曜日)

 (22:55)新しいエッセイが公開されました。今回も中国を取り上げています。「いずれ迎える体制転換がもたらすもの」と題して書きました。

 ところで、金曜日の「世の中進歩堂」は、『夏の夜空を彩る花火の謎に最新技術で迫る!世界で唯一の花火大学院に注目!』と題して、今や真っ盛りの花火を取り上げます。

 私も知りませんでしたが、世界で唯一の花火大学院というのがあるのです。それは、足利工業大学の花火大学院。花火の謎に最新の科学技術で迫っています。その研究課題は面白いですよ。

 花火が、どのように空を飛んでいくのか?なぜ色鮮やかに光るのか?などなど、知られざる花火の謎の解明のため、高速度ビデオカメラなどの最新テクノロジーを駆使して研究を進めている。そんな花火大学院の目的は、先端科学の知識を持った次世代の花火職人の育成。さらに、まだ見ぬ新しい画期的な花火の開発も計画中である。花火業界に革命を起こす花火大学院に潜入し、その可能性を探っていきます。


2010年08月04日(水曜日)

 (14:55)今朝の速報によれば、日本の長期金利が2003年8月以来7年ぶりに1%の水準を下回った。引けではどうなるか不明だが、長期金利は欧米でも低下しており、先進国全体のトレンドとなっている。

 その一方でアジアを中心に開発途上国では「利上げモード」となっており、オーストラリアとニュージーランドは先進国ながら「アジア圏」の動き。これだけ世界経済に「乖離」が生ずるのは、世界が東西に割れていた時期以来かもしれない。

 世界は比較的自由な人、モノ、カネの動きの中にあるのに、先進国ではデフレトレンド、途上国ではインフレトレンドというのは、両者の物価水準が大きく乖離していることの証左のように思える。大体人件費からして大きな違いがあって、この融合段階で既に途上国ではインフレ懸念、先進国ではデフレ懸念が生まれている。

 調整過程としては自然だが、デフレに見舞われる日本のような国の痛みは大きい。なぜならデフレは債務の重みを増大させるからで、消費者はデフレだと買い物を急がない。企業も生産をしている間に製品価格が下がるのはたまらない。つまり、景気の下押し圧力となる。

 先進国の景気刺激は先進国のデフレトレンドを修正する可能性があるが、それによって物価水準があまり上がっても先進、途上の物価乖離は進む。それを避けるには、為替調整が必要で、先にユーロが、そして今はドルがその過程にある。

 しかし円は複雑な立場で、アジアの通貨だから全般に上げ圧力を受けている。しかし、日本の国自体は景気が非常に弱く、強い通貨を甘受できる立場にはない。このところの先進国の為替の動きを見ていると、まずユーロが大きく調整し、今はドルが調整している。

 可能性としては円が次に下方修正するとも思えるが、今はその見通しが立たないと言うことだろう。しかし天まで上がる通貨もなければ、地獄に堕ちる通貨もない。短期的な動きに惑わされずに、大きな流れを掴む必要があるように思う。

 ところで、昼過ぎに新幹線の中でたまたまネットを見たら、朝日新聞のサイトに以下のような興味深い記事が。今日のことなどでビックリ。朝のNHKのニュースや日本の新聞にも載っていなかったような。私は本当かどうか知りませんが、一応このサイトを御覧の方々にもお知らせしておきます。

   【ワシントン=勝田敏彦】太陽の表面で起きた爆発(フレア)から噴き出した大量の荷電粒子が地球に向かっており、4日ごろ、日本でもオーロラが見られるかもしれない。米航空宇宙局(NASA)が発表した。

 フレアはNASAの太陽観測衛星SDOが1日に観測した。規模はそれほど大きくはなかったが、今回はたまたま、荷電粒子がちょうど地球に向かう位置にある黒点の付近で起きた。

 荷電粒子は3〜4日で地球付近に到達し、地球の磁気圏を乱してオーロラや磁気嵐を起こす可能性がある。

 荷電粒子の到達は数時間にわたる見通しだが、オーロラが起きる正確な時刻や方向、場所などは予測できない。昼間だと観測はできないが、NASAは「北の空に注目を」と呼びかけている。磁気嵐が起きると無線通信などが乱れる可能性もある。

 名古屋大太陽地球環境研究所によると、日本でオーロラを肉眼で観測できたのは、これまで北海道に限られるが、高感度カメラを使えば、長野や滋賀でも観測例があるという。

 まあ注目しましょうよ。日本で本当に見れたらもうけもの。本当は一回北欧に行きたかったのですが、当面の手間が省けるというものです。見れるといいな。あれ、日本の気象庁はこういう発表はしないのかな。まあ、役割が違うけど。


2010年08月03日(火曜日)

 (22:55)久しく映画を見ていないことを思い出して、火曜日は時間を作って、「まあ今ならインセプションかな」と思って映画館に。ははは、どえらく空いていました。平日の夜だったから ?

 今何が起きているのか、非常に分かりづらい映画です。誰が敵で、今どういう状況か。現実と夢が交錯して、特に最初に誰が味方で誰が敵かを認識できないと駄目だし、味方の意識の中から敵が出てきたりもする。私のような最初にちょっとうとうととすると、もう後が大変。

 inception は知らない単語でしたが、映画のオフィシャルサイトには「植え付け」という訳語が当てられていて、辞書などを調べると「始まり」「単位」という意味が載っている。もっと心理的な、ゆったり進む映画かと思ったら、一言で言ってアクション映画です。

 筋書きは複雑だが、目の前で展開する映像はスリリングで、「これは新しい発想だ」と思えるシーンがいくつも展開する。無重力状態でのホテルの廊下での戦い、ヤマでの雪崩のシーンなどなど。

 中味は別にして、息をのむ場面が続くので、それを楽しんでも良い。しかし見終わって「未消化だな」と思える映画でした。私には。筋書きがとにかく複雑なのです。主人公の思いは分かるが、それが実現するプロセスが複雑。

 わがままを言うなら、もうちょっと映画らしい、イメージがゆったり残る映画を次は見たいな、と思いました。


2010年08月02日(月曜日)

 (22:55)取材すると応援したくなる会社というものはあるものだな、とつくづく思いました。この日は、二つの会社さんを取材したのですが、その一つが篠田プラズマさんです。

 ずっとプラズマの研究をしておられた社長の篠田傳さんが、勤めていた富士通の事業継続断念によって2005年に独立して、世界で唯一の技術で今着々と事業を伸ばしつつある。しかし富士通も事業断念を決める一方で、この元社員が作った会社を陰に日向に応援している。なかなか懐が深い。

 「篠田プラズマ」の目に見える作品は、HPのフロントの右側にあるような、大きな、しかも湾曲したプラズマ・ディスプレイです。PTA(プラズマ・チューブ・アレイ)という技術を使って、ちょうどすだれのような形でこのチューブを組んで、ゆっくりした湾曲を持たせることを可能にした。だから、今は直径一メートル近くの柱にも巻くことが出来るプラズマ・ディスプレイです。

 「傳」(つたえ)さんという、ディスプレイを作るには最適とも言える名前の読み方を持つ社長さんとは、お名前の由来を含めて40分近くインタビューしましたが、「痩身で、しゃべり方も比較的ゆったりして技術者然とした方だが、技術に対する愛情は人一倍だな」と感心しました。

 だって、平屋建ての、どう見ても立ち上げてまだ奮闘していることが分かる会社社屋(神戸)の入り口には、「技術は愛」と大きく、白い文字で刻印された石がどーんと置いてある。

 「昔からの信念だ」とおっしゃる。大事ですよね。愛のない技術は、ろくな使われ方をしない。わたしもそう思います。このPTA技術を使ったディスプレイの凄いところは、等身大の人間をいくらでも登場させることが出来る、ということです。

 コミュニケーションの基本の問題ですが、やはり理想は「相手も等身大が良い」ということです。多くのテレビ会議でも相手は小さい。テレビの画面などはもっと小さい。しかし、等身大だとより現実感のあるコミュニケーションが可能だと確認しました。

 サッカーや野球などスポーツを、等身大の人間達が目の前で展開したらどうなるか。それはそれは迫力があるものになるだろう、と思うのですが、それを篠田プラズマは可能にした。

 まだまだ課題は多いようです。一つは値段。2メートル3メートルのスクリーンで、まだ3000万円弱する。しかし、これは社長さんとも話したのですが、1000万を割ったら、相当売れると思う。社長さんも、「急速に安くなるのではないか」と力強い言葉。(1000万円割れは)「5年以内に可能」と。

 平屋建ての社屋のすぐ裏側に工場もある。約60人強の会社ですが、「日本には良い会社があるな」と実感しました。なにせ、韓国も中国も、世界のどの国の企業もまだ作れない技術を抱えて伸びている、というところがいい。

 この日は、関空でまず大スクリーンのプラズマ・ディスプレーを取材し、神戸に移動して「篠田プラズマ」さんを取材し、終わったらその足で京都に移動して今度はタッチパネルで伸びている日本写真印刷さんを取材するという強行軍でしたが、日本写真印刷さんも一杯面白い技術を披露して下さって、疲れを感じない一日でした。取材に対応して下さったNISSHAさんには感謝したいと思います。

 この取材の成果は、来週火曜日のスーパーニュース「アンカー」で紹介されます。関西地方の方はお楽しみに。それにしても、こういう取材は楽しい。


2010年08月01日(日曜日)

 (22:55)奇妙な場所にいます。関西国際空港内のホテル。一つしかない。珍しく某航空会社の名前が残っているホテルですが、確か空港内に宿泊するのは初めて。夜になって到着したので、外がどうなっているのか不明。しかしコンクリートジャングルであることは分かる。

 関空そのものは、何回も乗り換えで離発着したことはあるのですが、今日、明日は長い時間いることになる。明日早い時間からのロケの為にここにいるわけで、大阪や京都のホテルが一杯なわけではない。それにしても、夏はどの交通ルートも混んでいる。人が動いているんでしょう。JAL便も一杯だった。道路も混んでいる。

 それにしても、日本の政治は懸念されたとおり、停滞と混迷の極のような展開。覚悟を持って消費税を持ち出したのだと思ったら、あっさりと「9月の代表戦の論点にはしない」と撤退宣言。それくらいの覚悟だったら、最初から持ち出さなければいいのに。

 菅首相が記者会見をしたところまでは、私も良かったと思う。選挙後、ほとんど内容のある話を国民に向かってしていなかったわけだから。しかしその記者会見の内容は、全く信念を感じないものだった。最初の勢いはどこへやら。

 一端格下げしたと思ったら、国家戦略室を「みんなの党」次第で今度は格上げする可能性があると枝野幹事長。今こそ日本は「政治の知恵」が必要なときなのに、与野党両方からそれが出てくる気配がない。残念です。

 ところで、若一光司著「大阪地名の由来を歩く」「大阪の地名の謎と歴史を訪ねて」がネット書店から到着。両方とも読み始めていますが、面白い。



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