2010年05月31日(月曜日)

 (23:43)今日は午前中から車で厚木市の日産自動車の先進技術開発センター(NATC)に。以前「リーフに乗りたい」とこのコーナーで書いたら、知り合いの方から「チャンスはあると思います」「その場合、行かれますか」という話を頂き、今回実現したもの。

日産が自社で開発した急速充電機  私が乗ることになったのは(用意していただいたのは)、今年12月に発売されるリーフそのものではない。しかし「乗り心地などは限りなく実物に近い「テストカー」。このリーフのサイトにも「Concept」という文字が見えますが、まだ実物は生産もされていない。しかし既に価格は発表されていて、補助金込みで299万円と300万を切る価格となった。これは以前ニュースになりました。

 テストカーは、普通車にしてみると3000CCクラスの車でしょうか。最終仕上がり(デザインを含めて)がどうなるか分かりませんし、日々改良が行われているというので、仕上がりは分かりませんが、内部構造はシフトギアーが非常に小さく、プリウス並かそれよりも小さい。前座席の真ん中にある。サイドブレーキの位置が面白かった。運転手席と補助席の間のボックスの後ろ側に付いている。ボタン一つ。

 まあその辺は最後の最後に変わるので、「恐らくあまり変わらない」(案内してくださった日産の方)と思われる乗り心地を紹介すると

  1. 滑り出しは極めて静かで、かつ力強い。加速はパワフルで、他の人が運転するのをじっと外で見て聞いていたが、車の走行音は基本的にタイヤが地面を打つ音である
  2. モーターが車の真ん中にあるので、ハンドルを右左に切っても車全体のバランスがあまり崩れず、安定感は非常によく感じられた
  3. スピードメーターは180まで切ってあったが、まあ実際にその程度でモーターの性能が一杯になると思う
  4. セダンで、室内は広く、フル充電で160キロ走行。家庭電源では8時間で満充電、急速充電では30分で8割
 など。面白かったのは、外部から買ったら高くなるので「自社で作ったら安くなった」として、日産が自力で急速充電機を作っていたこと。それが写真の右側にある切り株のような塔です。急速充電機は今は概ね200万円すると言われているが、日産は「それを100万円ちょっとで作った」と説明してくれた。それはもう公表されているそうです。

 いつもハイブリッドを運転している私ですが、完全電気自動車とハイブリッドとの違いは大きい。加速と音が違うのです。電気自動車の方が遙かに加速力があり、かつ静か。当たり前ですが。これはハイブリッド車でも同じですが、後ろから接近しても、前を歩く人は気がつかない。よって場合によっては音を出す必要があるんでしょう。

 (1)については、私は以前から実際に電気自動車乗るたびに書いているのですが、一般にもたれている「とろい自動車」のイメージは完全に間違っています。実にパワフルです。その究極は慶応大学のC水教授のグループが作ったエリーカですが、あれは実用には設計されていない。8タイヤのインフォイール・モーター車を直ぐに実用化するのは難しい。

私は試乗車を運転し、しげしげと見ながらこう考えました。「買いたい。しかしそれには前提がある」と。その前提とはまず「社会インフラの整備」です。タウンカーとして使うなら十分です。今の満充電走行距離で。しかし3000CCクラスの車に「タウンカー」だけの性能を求めるのは無理。やはり時には足を伸ばして外に出たい。

 となると、少なくとも全国的に充電網の建設が不可欠です。何らかの原因で電気が欠乏しても、近くに充電出来る施設が必要です。しかも各社の給電口を統一しての。以前の日本の携帯のように、充電口が全部違うなどという馬鹿げたことをしてはならない。電気は非常に安いので、今のガソリンスタンでは対処が出来ないでしょう。例えばファミレス、コンビニなどのサービスとしての充電網の整備が有望だと思う。レストランは急速充電でも最低30分はかかるのだから、その間に食事をしてもらえばよい。

 次は電池の性能向上です。プリウスが最初に使ったニッケル電池も最初はいろいろと問題があったそうだ。しかしその後プリウスの電池は急激に性能向上した。同じ事がリチウムイオン電池にも起きる可能性がある。いや、起こさねばならない。そうしないと、電気自動車はスタート時点で魅力を大きく減じてしまう。

 私としては、今回のリーフのテストカー試乗で「電気自動車は一応全部チェック出来たな」という印象です。車自体はもうあまり変わらないでしょう。変わらねばならないのは、社会のインフラのサイドなのです。

 要するに内燃機関の自動車から電気自動車に主力が変わると言うことは、一種の社会革命なのです。自動車工場の形が変わる、関連業界の形が変わるという以上に、我々の生活パターンの大きな変化が起きる。英語で言う「sea change」です。

 社会全体が直ちに電気自動車時代に移行するのか、それともハイブリッドやプラグイン・ハイブリッドの時期を経て移るのか、それとも電気と内燃機関の同時並行的な進行となるのか。実は今はまだ分からないところが多い。電池の性能次第、新技術の開発次第のところがある。しかしそこに居あわせた3人の方々ともお話ししたのですが、明らかに電気自動車は一番の有望株です。

 可能性として、電気自動車はインドや中国で爆発的に伸びる可能性がある。なぜなら、この二カ国は石油産出国でないからだ。


2010年05月30日(日曜日)

 (20:43)この週末にちらっと、こんなアイデアが浮かんできました。それは、「ハイブリッド小売店」です。

 百貨店やスーパーの売り上げは落ちている。一方で楽天やアマゾンに代表されるネット通信販売業者の売り上げは伸びている。しかし、まだネット通販は不安だという人が多い。一つはシステム(クレジッドカード番号の使用なども含めて)、一つは商品について質問が出来ない、という点。

 で考えたのです。例えばデパートやスーパーの一階などに、むろんネットに接続したPC(ipad でもいい)を並べる。そこにネット通販が可能な状況を生み出す。しかしそこにはいろいろな分野の商品に詳しい店員をある程度配置し、その店員か答えられればいいし、そうでない場合にも組織の(建物の)中の専門家にアクセスできる、電話で質問できるようにしておく。

 私がいつも感心する小売店は、家電量販店です。そこが優れているのは商品知識の高い店員がいるということ。商品知識の高い店員がいない店には、多少値段が安くても行かない。なぜなら、不必要なもの、不適合なものを買わされるし、話していても面白くない。やはり問題意識を共有できるか、こちらの問題意識を分かってくれる人(販売員)と話したい。

 ネットがいいのは、商品を数限りなくデータとして入れておけると言うことです。つまり品数が無限。館が大きいデパートでも、この”商品数”でネットとは対抗できない。しかし、例えばデパートには商品知識の豊かな人材がいる。これはネットにはない。

 これは買う人の立場(お年寄り、ネットが出来ない人、デパートの2階以上に行きたくない人)には便利ではないでしょうか。お客さんが欲しい商品が館内にあったら、持ってきてもらえばよい。近くにない自社の倉庫にあったなら、それは「宅配」に回す。もしかしたら、自社でない商品を売って、手数料を取るというのも良いかもしれない。

 大前提は、「商品知識を豊富に持つ人材を揃える」ということです。最近は何か必要になってもどこに買いに行っていいのか分からないケースがある。「ハイブリッド小売店」はこの悩みをなくせますし、買う人にも便利だと思う。

 こういうことも考えられる。今はその人のシルエットにその洋服が合うかどうかをコンピューター上で簡単にシミュレーションできる装置がある。それを「ハイブリッド小売店」にも備えるのです。そうすれば、いっそう便利になる。

 まあポイントは、「商品知識の豊かな人材」をどのくらい育てられるのかです。最近ちょっと思うが、家電量販店でも差が、そして販売員一人一人の間にも商品知識の差が出てきている。「商店の劣化」を感じる瞬間です。


2010年05月28日(金曜日)

 (20:43)今日の午後からはちょっとゲットしたばかりのipad に時間を見て触れていましたので、今現在で気が付いた点を書き残しておきます。私の勘違いもあるのかもしれないし、使い方がまだよく分かっていない点もあるかもしれない。しかし、iphone とほぼ同じ使い勝手かそれに近いものだとすると、例えばUSB充電の不可など理解できない問題もある。まず悪しき点(私にとっての)は以下の通りです。

  1. 自分が持っているどのPCとも、USBによる充電が出来ない。従って充電はドックをコンセントに差し込んでしている(アップルのコンピューターは問題ないのかもしれない)
  2. 両社(Apple と Adobe)のけんか状態によって、adobe のフラッシュ(動画再生ソフト)が使えないために例えばNHKオンデマンドなどの映像が見られない(MLBの映像は映るようです)
  3. wifi接続はさくさく動くが、3Gでの接続が非常に遅い(感覚的には iphone の方が素早い。画面の大きさの違いか)。地方で使うときや、無線lanが走っていないエリアでのプレゼンなどに使うには苦しい
  4. USBポートなどがないため、PCなどに比べて周辺機器との接続が難しい。赤外線の機能などもなさそうだ
  5. tweetdeck for ipad がうまく機能しない。で、heltweetica を入れて使っている
 その逆に、これは面白いかもしれないと思うのは、事前に予想したいたものを含めて
  1. 起動が素早い。コンピューターと共通化したカレンダー(例えばgoogle)などをチラ見したい時などには、PCを起こすよりも遙かに素早い(これはiphone でも出来るが)
  2. 京極夏彦さんの本などをダウンロードしたが、ちょっと読んだところ非常に読みやすい。字も綺麗だ
  3. カラー表示なので、見ていて非常に楽しい。これなら雑誌の表示などは非常に効果的に見える。利用が増えるのではないか
  4. ipad は本体だけでそこそこ重いが、PCよりは遙かに「機械離れ」している。これならお年寄りも子供も使える
  5. iphone アプリに比べて、画面が大きい分表示が余裕のあるものになっている
  6. しかし大きく綺麗な分、画面が鮮明で電車などでは隣の人、そしてさらにはそのさらに隣の人まで画面が鮮明に見ることが出来る
 など。私以外の方々の使用印象などもいろいろなところにアップしていただければ幸甚です。


2010年05月28日(金曜日)

 (12:43)今朝ふっと考えたのです。TBSのスタジオに行く直前に。「ipad のスクリーンをプロジェクターなどに投影してプレゼンするのは面白いかも知れない」と。

 PCをプロジェクターで投影して講演することは結構多い。特にIT関係の会合では。だってクラウドを説明するにはそれしかない。動画も使う。映像は非常に強力なプレゼンツールなのです。パワーポイントは嫌いです。寝てしまう人がいるから。その点動く絵は人々を惹き付ける。

 PCで出来ることはパッド君でも出来るはずだ、と考えたのです。で、スタジオに入る前に探したら「ipad Dock Connector to VGA Adaptor」というのがあった。「よしこれもゲットだ」と。

 放送を終わって午前8時半くらいに六本木に行ったらかなり並んでいる。しかしそれは予約のない方々。予約票を見せて番号札をもらって、30分くらいというので近くの24時間蕎麦屋に朝飯に。戻ったらちょうど私の番で手続きに入れて、時間も直ぐに終了。「ああ、銀座じゃなくて良かった」と。その時、「アダプターもおねがします」と。

 でもその時は実は私が欲しいアダプターは店に入っていなかった。結局銀座か...と思っていたら、イニシャライズ(稼働チェック....)の後にちょっと遅くなって昼頃取りに行ったら、「午前中に入ってきました」と。うーん、大変ラッキーなことに私のパッド君獲得にかかった待ち時間は実質的にゼロでした。

 今itunes と同期中なので詳しいことは判らない。まあiphone の兄貴みたいなものですよ。相当年の離れた。よって体重の差がある。結構重い。機能は動かしてみなければ判らない。多分家とかのwifi が走っているところではサクサク動く。マックのお店とか。

 問題は新幹線の中です。iphone もあまり動かない。私がmopera からだろうか。docomo のポケットなにがしにはサクサクと動いて欲しい。3G機能はあるが、ソフトバンクの3Gじゃ役に立たない。

 最近思うのです。日本の産業界はこれで大丈夫か、と。クラウドの話しは新聞に山ほど書いてある。ツイッターの話しも多い。にもかかわらず、私が例えば講演でお話しするような方々(多分企業の偉い方です)は、ほとんど実際のものを見たこともない。企業の意志決定される方々ですよ。いいのだろうか、と思う。

 だから私はちょっと嫌われるかもと思いながらも、なるべく新しいものを持ち出し、それを実際にお見せするのです。だから感謝されることも多い。「背中を押してもらった」と。最近はツイッターがそれに当たる。クラウドより見た関心を持つ。まあ、クラウドはインフラですから。暫くはパッド君かな。

 そうそう、正にこれからipad を六本木に取りに行くという時(午前8時過ぎに)の私の心境をニュース・ズームアップ+αにアップしておきました。決して手放しで喜んで六本木に行ったわけじゃない。半分悲しかった

 あらら、ちょうど同期が終わった。これからちょっとアプリをいろいろ入れます。今日の夕方には使えるように。


2010年05月27日(木曜日)

 (17:43)一つのコラムと一つの番組の紹介です。コラムは先進国経済が危機に立つ中で成長を続ける中国の「体制のメリット」に焦点を当てました。私の周りで、「今のような時代は、嫌いだけど中国のような政治体制にもメリットがあるね」という人がちらほら。その点に関して私の見方を。

 もう一つはテレビ番組です。明日金曜日の夜10時24分BSジャパンの「世の中進歩堂」で、今回は『脳波で家電を操作』 です。サブタイトルを、『ただ見つめるだけで電源オン!手を使わなくても脳波で家電が操作できるブレイン‐マシン・インターフェイス登場!』としました。以下説明文。

 「手を使わずに電気製品を操作することができてしまう、まるでSFのようなシステム“ブレイン‐マシン・インターフェイス”が開発された。このシステムのポイントは、ディスプレイに表示された電気製品の操作を示すアイコンに注目すること。その時に発する脳波を読み取ることで、利用者がどのような操作をしたいのかを判別して、その情報が電気製品に送られるという仕組みである。開発した国立障害者リハビリテーションセンター研究所は、障害を抱え不自由な生活を送っている方をサポートするため、より便利に使いやすいシステムとなるよう様々な工夫を施している。近い将来、実際の生活で本当に使用できるシステムとして期待されている“ブレイン‐マシン・インターフェイス”を紹介する。」
 番組をやっていて、「ああ、なるほど」と面白かったですよ。将来大きく伸びる可能性のある技術。是非皆さんに見ていただきたいと思います。


2010年05月26日(水曜日)

 (23:43)まず一つ思い出したことから。一昨日の北朝鮮情報に書き忘れたことがありました。それは、この国を訪問した日本のジャーナリス6人は、「(北朝鮮の)田舎にもソーラーパネルが張ってある家を見た」と言っていたことです。

 それがどういう経緯で張られていたのか、実際に稼働しているのかどうかなどは判らなかったそうです。何せ「なるべくバスから降ろさないようにする」という北朝鮮の態度があったので、肝心な場所では降りて実際に見ることが出来ない。

 あの国が今後どうなるかは全く判りません。何が本当で、どこまで本気なのか。ガソリンなど燃料がないから、本気で長期の戦争をする気はない。それは確かだが、今回のように数十人が死ぬくらいのことは平気でする。困った国です。

 世界の市場を見ると、私が昨日書いた状況が徐々に生まれているように思う。つまり、「底探し」です。もちろん市場の不安定は続きますよ。それを前提に、「しかしどこまでも下がる相場はない」と考えるなら、何時か底を探さねばならない。とすれば、その時期は接近しているかも知れないと思うわけです。

 あああ、それにしても楽しい予定というのはなぜ事前の予定とぶつかるのか。この文章を書き始めた頃に柯隆さん(富士通総研経済研究所)から電話があり、出たら絶対面白いだろうセミナーのメンバーに誘われたのに、丁度その時間は外せない仕事が。やだやだ。柯隆さん、また誘ってね。


2010年05月25日(火曜日)

 (23:43)それにしても、世界の株価の下げが止まりません。日中の東京もそうでしたが、その後も今に至るまでアジア、欧州、そしてニューヨークと、依然として株価の下げが続いている。

 スペインの銀行の話とか、いろいろ出てくる。でも、「では株価は谷底にまで堕ちるのか」というとそうは思わない。何にでもそうですが、それらが持つ根源的な価値というものがある。企業だったら解散価値など。株価は企業の価値を表示する。

 いくらギリシャが不安、ニューヨークの取引システムが不安、スペインにも飛び火かと言っても、株価には「そうは言っても」というレベルはある。今週は、その「こつん」と当たる場所探しという雰囲気だと思う。

 まあだからといって、相場が直ぐにそこ(or 底)を確認できて、その後上昇基調になれるかというと疑問符が付く。直ぐに反発できる環境になるには、「これはいくら何でも下げすぎ」となるところ、つまり”行き過ぎ”から反発の力は生まれる。相場には相場の論理があるわけです。その辺が難しい。

 ところで、これだけ毎週大阪に来ているのに、「こんなところを知らなかったのか」という場所に今日は。名前は、「お初天神」というのです。本当は露天神社(つゆのてんじんしゃ)だが、ここで二人で情死した徳兵衛(内本町平野屋の手代)の相方のお初(堂島新地天満屋の遊女)の名前から、通称として「お初天神」と呼ばれているらしい。

 情死は作り話ではなく、元禄16年(1703年)に実際に起きた。近松門左衛門がそれを題材に人形浄瑠璃として「曽根崎心中」を書いた。まあつまり古くから大阪の一つの臍のような場所です。それを知らなかったのは不覚ですね。

 なんでその場所に行ったかというと、待ち合わせです。諸先輩に誘われて。私はちょっと早く着いたので、境内をちょっと回ったのですが、牛さんがいると思えば、狐もいるというちょっと不思議な場所。お賽銭箱が境内の彼方此方に置いてある。

 行ったのは、実に不思議なことに「ほとんど境内」とも言えるビル(だからお初天神ビルと言う)の中にある和食屋さん。名前を「酒肴旬菜 一季」(06-6313-0011)と言う。初めて行ったのですが、実に旨くて、かつ安い。大阪は探せばいい店が一杯あるな、と改めて。

 この周辺には、私が好きな豚肉のうまい店もあるようで、「また来たいエリア」という印象。ビルの一階に入っていた「阿み彦」 という店もうまそう。特に飲んだあとのスープが。いえ、実際にそうしました。大阪はほんに食の街です。


2010年05月24日(月曜日)

 (22:43)午後は「北朝鮮の最新事情」に関する勉強会出席の為に日比谷に。二時間ほど。5月の初めに、ちょうど金正日総書記が訪中中に北朝鮮を訪れた日本人ジャーナリスト達の報告会があったため。

 北朝鮮には以前から私自身が行きたいと思っているのですが、なかなか行けない。使用前使用後を見たいのです。しょうがないので行った人の話でも聞こうと思って。行かれた方は6人で何回も行ったことのある人、今回が初めての方とばらけている。

 過去に何回も行ったことがある人は、「北朝鮮は変わった」「自分が行ってない8年の間に」と盛んに言う。何が変わったかというと、

  1. 平壌では交通量が増加(中古ベンツの増加、トロリーではない普通のバスの増加)
  2. マシンとしてのコンピューターとケイタイの増加
  3. 建設ブームで、特にレストランの増加
  4. 自転車が、特に地方では必須の交通手段になっていた
  5. 彼らが前回行った2000年の最初に比べれば、市民の表情は明るくなっている
 といった点。映像や写真も少し見せていただいたのですが、私は「これで多くなったのか」という意外感があった。しかし過去を知っている方々は「以前はほとんど走っていなかった」と。「それに比べれば」と言われて、まあそうなんでしょう。

 コンピューターは図書館の本の検索などで数多く使われているらしい。ただしインターネットにつながっているマシンはごく少数。大部分は閉じられたシステムの中で使用されているようだ。ケイタイは写真を見せてもらったが、裕福な家庭の子女だろうか、女子中学生とおぼしき子供達の一人が使っていた。もっとも、今北朝鮮で使われているケイタイ(非合法を除く)はわずかに10〜12万台だそうだ。超貴重品。

 レストランについて言うと、初めて平壌にイタリアレストランが出来たのが話題だったとか。食べたら「スパゲッティは太くて緩くて首を傾げたが、ピザはいけてる」と。しかし、開いているのはレストランばかりで、デノミ後の混乱からか商店(モノを売る)が閉まっている店が多かったと。

 あと報告で面白かったのは、中国の人たちの北朝鮮観光の増加が著しいらしい。私も板門店を韓国サイドから見たことが二度ありますが、そのときは韓国側が賑やかで、北は建物に洗濯物が見えただけ。ところが、今は韓国側が閑散としているのに対して、北朝鮮側には数百人の中国人観光客がいて賑やかだとか。観光客を受け入れる商店では、中国の人民元紙幣が使われており、ユーロとともに歓迎される通貨の一番手。円は全く歓迎されなくなっていると。

 行かれた方は、いろいろな制約を受け入れて行ったらしい。1)日本から持って行ったケイタイは空港で没収、帰国の際返還 2)以前は無料で配られた各種パンフレットは、すべて有料になっていた 3)当然北朝鮮政府の役人が常に付いていて、行ける場所、見られる場所が非常に限られているーーなど。マーケットも見せてもらえなかった、と。

 一応の説明が終わってQ&Aの時間に入ったので、一番に質問しました。それは、北朝鮮がよく使い、日本のテレビでもよく登場する「2012年強盛大国とはいったいなんぞや」と思っていたので、その点に関して。返ってきた答えは予想外に詳しい数字を伴っていて面白かった。訪朝したジャーナリストの方々は、北朝鮮の責任ある人から次のような数字を明らかにされたというのです。

  1. 2007年の北朝鮮の国民一人当たりのGDPは638ドルだった
  2. 北朝鮮の同GDPが一番過去高かったのは1980年代の2530ドルだった
  3. 強盛大国のまずの目標は、国民一人当たりのGDPを80年代(2530ドル)に戻すことだ
 と。これは面白い発言、数字だと思いました。当然ながら今の北朝鮮の国民一人当たりGDPは世界の最貧国に近い。中国の5分の一、よって日本の五十分の一。あと数字で面白かったのは、「北朝鮮の人口は直近の数字で2005万人」というもの。私が以前覚えた北朝鮮の人口は2400万人だったので、それと比べれば400万人近くも減っている。

 「強盛大国」とはもっと具体的にはどうか。北朝鮮に行った一人のジャーナリストの方は、「彼の国では、白いご飯と白いスープが日常の目標」と。それも強盛大国の目標に入っているというのです。私は以前から、日本のマスコミが強盛大国をそのまま報じているのは誤解を招くと思っていたのですが、この説明でその思いを強くしました。つまり、「言葉の遊び」なのです。

 開放経済の失敗をデノミで調整しようとしている北朝鮮。これからどういう道を歩もうとしているのか。説明からは、「社会主義建設の維持と実利」ということのようです。つまり、失敗しているのに社会主義を諦めない。かつ、社会主義の実利を得ていく、と。まあわけわからない道を行くと言うことです。

 行かれた方々が最後に、これからのキーワードとして挙げられたのが「CNC」(Computerized Numerical Control」。「CNC」の大きな看板が市内の中心部に掲げられているそうで、それが後継者と見られている金正雲氏を意味しているらしい。「CNCの歌」というのも出来ているそうだ。彼はスイスに留学していたので、英語は出来る。コンピューターにも強いのか?

 コンピューターをうまく使おうということか。貧しい、行き詰まった国の再建の為に。まあネットもつながっていない今の状況では効果は薄いでしょう。もしかしたらネットで国を立て直した韓国を好例として見ているのかもしれない。おや、正雲氏は「雲」だから「クラウド好き」か。(笑)

 あそうそう、最後に訪朝した方々は北朝鮮の新しいウォンについて「0.9円程度」と為替レートを紹介してくれて、さらに「北朝鮮の方々の月給の平均は4000円程度」と言っていた。ベトナムの工場で働く20歳前後の女子の月給が8000円だから、北朝鮮の方々の月給はその二分の一。

 勉強になった二時間でした。夜はワシントン帰りの片山さんと3時間くらい話をしましたが、それはまた。
  


2010年05月23日(日曜日)

 (18:15)まあ今日はちょっと賢くなったんでしょうね。コンピューターで一つ、あと本を三冊読み終わって、多少は。

 コンピューターで賢くなったのは、「関連づけ」の変更です。ハイパーリンクの先を起こすときに何で立ち上げるかの命令。それぞれの拡張子のファイルを、何のソフトで起こすか。一台のPCのハードディスクが潰れたので、別のPCを持ち出して使おうとしたら、手に馴染んでいなかったので酷いことになっていた。

 たとえば、メーラー(Thunderbirdですが)を起こして、本文の中のリンクに渡ろうとすると、IEでもクロームでもなく「秀丸エディッタ」が起きてくる。Tweetdeckで皆さんが張ってくれたリンクを起こしても「秀丸エディッタ」が起きてくる。「こりゃなんじゃ」という印象。

 で、量販店のお兄ちゃん、いや係の方にр入れながら、自分でも試行錯誤していたら、こういうルートが浮かんできた。

コントロール・パネル→既定のプログラム→ファイルの種類またはプロトコルへの関連づけ
 と進み、「現在の既定のプログラム」で「秀丸エディッタ」になっているところをしゃくに障ったので全部IEに変えたのです。やったやったという感じ。すべてリンク先のクリックはIEで立ち上がるようになった。

 これはちょっと応用がきく。秀丸はちょっと欲張り過ぎですが、ソフトによって我々が気がつかないうちに、ファイル(音楽、映像ファイルであり)を囲い込みするソフトがある。各ソフトをいつの時点で入れたかにもよる。そうすると、はっと気がつくと「このソフトで起こしてほしい」というのと違うソフトが起動することがある。そういうときに、この「ファイルの種類またはプロトコルへの関連づけ」に到達して、直してしまえば良いのです。

 まあ一部からは、「秀丸なんてやめたら」という声も聞こえそうですが、未だにHTMLを自分で書いている身としては、エディッタは重要。ブラウザでコピーしたファイルの雑情報を落とすのにもエディッタは必要なんです。

 さて本です。先日を言ったようにとても同時に10冊は無理筋。この一週間で読んでいたのは、

  1. 「江戸の恋」(集英社新書)
  2. 「お坊さんが隠すお寺の話」(新潮新書)
  3. 「女は男の指をみる」(新潮新書)
 全く脈略なし。一冊目は田中優子さん、三冊目は竹内久美子さんで、どちらかと言えばデジャブー系。2冊目は全く私が知らない人が書いた本で、そういう意味では新鮮味があるのですが、うすうす気がついていることを改めて「こうだ」と説教されている印象。

 しかし、新幹線の駅であれどこであれ、「うーん、見渡した中ではこれが面白いかな」と手にとって買ったはずなので、その時点では私が「これは面白そう」と思った筈の本なのですが。今はそういう本を読む雰囲気と言うことかも。このところ皆さんから本の紹介を受けているので、それらに目を通そうかなと。

 いえいえ、それぞれ面白い本ですよ。偉い人の話ばかりやるNHKの大河ドラマに比較して、「何とかハンター」という庶民の生活を追うタイムトンネル的番組の趣がある。実は庶民の生活から歴史の大部分はなっているわけで、庶民の生活を想像するのは楽しい。

 お坊さんの話は、私は両親の葬式を終えていますので、当面はあまり関係ないのですが、だからこそ「そういえばあれで良かったのか」と思える話がある。葬式仏教の現実はお呼ばれしても確かにそうですが、最近では音楽葬なども増えていて、時代の変化を感じる。

 思わず自分の各指の長さをチェックしたくなるのが最後の本です。あまり書くと興味が失われるので書きませんが、まあ運命論ではなく、「そういうことはあるかも」という竹内節の本です。ENJOY


2010年05月22日(土曜日)

 (23:15)特に衝撃を与えていないのに、VAIOのZシリーズのマシンが、「S.M.A.R.T HARD DRIVE DETECTS ERROR.PLEASE CONSIDER TO BACK UP THE HARD DRIVE」という表示を出してきた。あら...と思って、とりあえずディスクチェックをかけてツイッターで助けを求めたら、「警告は消えないですよ」と。

 その通りでした。チェックが終わっても。ハードの欠陥の兆しですから、何をしても駄目ということで、しょうがないのでヨドバシに。PCドックに行ったのですが、それは「修理」ということで。確かこのマシンを買ったのは去年の秋以降。一年もたっていないので、多分無料修理。出来上がるまで2週間もかかるとのこと。

 そうこうしているうちに、ケイタイに「普天間問題に関し日米実務者が大筋合意」と速報。「えっ」ってなものですね。真っ先に、では沖縄は、と思いました。内容は、

  1. 普天間の代替滑走路を沖縄県名護市の辺野古周辺に建設
  2. 工法は継続協議として秋までに結論
  3. 基地機能の県外への分散移転を検討
 と。やはり沖縄の意向は全く入っていない。私は燃え立つ沖縄でも、仲井真知事が現政府にとっても可能性として一番の理解者になり得ると見ていたのですが、これでは知事の顔に泥を塗ることになる。社民党も黙っていないでしょう。

 この案をもって鳩山首相が23日に沖縄に行くという。最後はそうならざるを得ないとしても、いかにも沖縄の人々の気持ちを踏みにじったような手法に見える。アメリカも「現地の容認」を条件に入れていたので、日米が合意しても問題はこじれたままです。


2010年05月21日(金曜日)

 (15:15)一連のお知らせを。

 「NIKKEI特集 ルフトハンザ ドイツ航空presents 伊藤洋一のReal Europe」の第3回として、「西本智実氏編」が公開されました。Podcastに繋がるサイトはこことなります。西本さんは、欧州を中心に活躍する日本の女性指揮者。いろいろな内輪話も聞けました。

 それから、いろいろな方に「私たちが行ける伊藤さんの講演会があったら紹介してください」といつも言われていますので、一つ私の講演会を。今回の講演会は、私が編集長をしている「ビジネスVOICE講座」の特別企画として行われるもので、日刊工業新聞社さんとの共催です。ここに案内があります。ただし申し込みには1000円が必要です。お問い合わせ下さい。

 それから今なぜ世界の市場がこれほど荒れるのかに関していろいろな方から、「どうお考え」と聞かれますので、一つまとまったものとしてhttp://www.ycaster.com/news/100510.pdfを紹介しておきます。これは私が5月10日の時点で書いたものですが、一番まとまっていると思います。


2010年05月20日(木曜日)

 (23:15)あらら、またまた海外市場が大荒れですか。今これを書いている時点で、ニューヨークの株価はダウで300ドル近い下げ、為替はドル・円が89円台で、ユーロ・円は110円前後。5月6日を思い出すような展開。

 ギリシャ問題もあるが、「下がりだしたら止まらない」という市場システム(特にニューヨークのそれ)への不安もあると市場関係者は述べている。またドイツが他の欧州諸国に相談なしで国債や一部の株式に対する空売り規制を実施したことも「欧州当局の足並みの乱れ」に対する市場の警戒感の高まりを招いている。

 ドイツの措置は、「もっぱら国内政治要因」(EU支援関連の法案通過の為)と考えられていて、中央銀行と通貨は統一したものの、財政政策ばかりでなく政治は「各国任せ」の今の欧州が抱える根源的な問題の反映と考えられる。

 世界経済全体は途上国を中心に拡大の基調を強めているが、いかんせん市場がEUの抱える構造的な問題や、株価急落を許す市場システムへの不安感が強い。この二つの懸念を和らげる措置がとられないと、市場の動揺は続く懸念が強い。

 ところで番組の予告です。明日21日の金曜日午後10時24分からBS7(BSジャパン)での「世の中進歩堂」です。今回は私もいつもお世話になっているゴルフボールを取り上げました。どのようなところで、どのような視点で開発されているのか。

 『スコアアップをボールがアシスト!最新技術を駆使した究極のゴルフボールに迫る!』と題しています。ゴルフボールシェア国内No.1を誇るのはブリヂストンスポーツですが、今回は長年業界トップを走り続けるNo.1企業のゴルフボール開発の舞台裏に潜入しました。ブリヂストンスポーツの技術を結集した、“よく飛んで狙ったところにピタリと止まる”という究極のゴルフボールを紹介します。小さなボールに詰まった、最新テクノロジーをお楽しみください。


2010年05月19日(水曜日)

 (19:15)米証券取引委員会(SEC)と商品取引委員会(CFTC)の「5月6日に何故あのような株価の乱高下が起きたのか」に関する暫定報告書は、期待を裏切るものでした。まあ暫定だから、「regulators haven't pinpointed a single cause for the plunge」と単一の理由を見つけられなかったのは仕方がない。実際の所、要因が複雑に絡まっていることは十分に予想できる。

 しかし、「believe a sudden draining of liquidity likely played a role」と流動性の枯渇に理由を落とし込まれても、「そりゃそうだろう」としか言いようがない。流動性が豊かなら、あのような相場の変動は起きないから、「流動性の枯渇」は誰が考えても理由の一つです。改めて言うまでもない。

 SECとCFTCが今の段階で述べているのは”仮説”です。どんな仮説かというと、よくまとまっているので日経のサイトを引用すると、

  1. 「S&P500ミニ先物」が市場全体の下げを主導
  2. 値付け業者が売買注文を止めたことで流動性が枯渇
  3. NYSEの個別銘柄の取引中断で他市場に売り注文が集中
  4. 損失回避の投資家の売り注文が下げを加速
  5. 買い手不在の中、極端な安値の買い注文が約定
  6. 上場投資信託(ETF)の下げも顕著に
 となる。しかしなぜ「S&P500ミニ先物」が市場全体の下げを主導したのか、そこには誤注文がなかったのか、なぜ値付け業者が売買注文を止めたのか、などなど疑問点が山ほど残っている。結局何一つ解明されていないのだ。

 ということは、「理由なき急落」が起きたことは投資家の心の中で凝りのように残ると言うことだ。インフレでないのに金相場が急騰していることは、投資家の間でシステム(取引システム、世界経済の構造、欧州の諸制度など)に対する不安感が強いことの証左である。これを解消しないと、世界の株式を安心して買おうという動きにはならない。

 まあ今回の一連の騒動で多少勉強になったことと言えば、「mayhem」(大荒れ、大混乱=confusion、荒廃)「the Flash Crash」(5月6日の短時間での相場崩落)、「hiccup」(しゃっくり)などの単語を覚えたことかな。SECとCFTCは6月中旬実施をメドに、株価の急変動をコントロールする仕組みを作り出すという。それについてウォール・ストリート・ジャーナルには、

Stock-exchange executives praised the new rule. NYSE Euronext's chief operating officer, Lawrence Leibowitz, said it is a "good step toward restoring faith in the markets."

"This is meant to prevent a stock trading at $40 one minute, a penny the next, and $39 the next minute," said William O'Brien, chief executive of the electronic stock-trading platform Direct Edge.

According to the SEC, 30 S&P 500 stocks fell at least 10% in a five-minute period on May 6 and would have been subject to the proposed circuit breaker.

 などのコメントがあった。しかし、damage has been done の投資家は世界に多いだろう。


2010年05月19日(水曜日)

 (05:15)一端早起きしてちらっとネットを見たら、読売新聞のサイトに『結局、辺野古「埋め立て」へ…普天間移設』という記事が。記事の一部を抜粋すると以下のようになりますが、アップされている時間(午前3時02分)や他紙のサイトにはないことから見て、「抜き」、別の言葉で言えば「特ダネ」なんでしょう。

 だから、本当にそうなるのかどうかはまだ不明です。しかしこの記事が本当だとすると、昨年の9月からの普天間を巡る騒ぎはいったい何だったのかということになる。また沖縄の情勢自体も変わっているので、政府がほぼ現行案に戻すにしてもすんなり行くかは不明。

米軍普天間飛行場移設問題で、政府は、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部に建設する代替施設の工法を「埋め立て方式」に戻す方向で最終調整に入り、米政府側に伝えた。

 複数の政府筋が18日、明らかにした。

 有力案だった「杭(くい)打ち桟橋」方式は、米政府側が安全・技術面で強い難色を示しているため、断念する方向だ。移設問題は、鳩山政権発足以来8か月間の迷走の末、最終的に、移設場所も工法も、現行計画にほぼ近い案に戻る見通しが強まった。

 政府は17日から都内で開いている日米外務、防衛当局の課長級、審議官級実務者協議で、米側にこうした方針を提示した。沖縄県幹部にも17日、非公式に伝えた模様だ。政府関係者は18日、「杭打ち桟橋方式に対する米側の反応は厳しい。協議に持ち出す雰囲気ではない。こちらももう、考えていない」と語った。


2010年05月18日(火曜日)

 (23:15)先々日16日のこのコーナーで、12日の日経夕刊の記事(「暮らしの”常識”揺らぐ」)を紹介しましたが、これに関連してある方から非常に笑える動画を送っていただいたので、今日はそれを紹介します。

 皆さんきっと唖然としますよ。この手の人種は、子供に限らず増殖中???? しかも世界的に。

http://www.youtube.com/watch?v=FSIkjNaICsg


2010年05月17日(月曜日)

 (23:15)うーん、多分初耳。「ワイヤレス給電」って皆さん知ってました。

 「世の中進歩堂」の収録をすると、必ず毎回何か賢くなるのですが、今回の「ワイヤレス給電」は非常に面白かったですね。スタジオに来ていただいたのは東京大学大学院にある新領域創成科学研究科の堀洋一先生。この学科、英語で言えば「フロンティア・サイエンス」。これの方が分かりやすい。

 ネットで「ワイヤレス給電」で検索をかけると

  1. http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20090828_wireless_electricity/(ワイヤレス給電を実際に行っているムービーがネット上で公開中)
  2. http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20090824/174462/(MITのワイヤレス給電,どこまで進化したか)
  3. http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/02/news054.html(高効率ワイヤレス給電技術、ソニーが開発)
 などのサイトが発見できて、既にこの技術は一部の方々の間では注目されていたらしいのですが、私にとっては馴染みがなかったので、「なるほど、そんなことが出来るんだ」と目から鱗。髭剃り機や携帯を充電するというのは割合簡単に納得できるが、既にバスにまで給電して、そのバスが奈良などで走っているという。

 中でも私が注目したのは、この「ワイヤレス給電」の電気自動車への応用です。今の電気自動車への一般的な概念は、「リチウムイオン電池を積んで、ある場所でそれに給電・充電して走る自動車」というものです。ここではリチウムイオン電池が死活的に重要になる。どこかの国営放送がやっていた特番のように。

 しかし、例えば全国の高速道路に「ワイヤレス給電」の仕掛けを埋め込めば、「ある一カ所で充電」というめんどくさい、時間のかかる行為が不必要になる。何かとのハイブリッドにしたら、もっと良い。なぜなら、電気が全くない場所、「ワイヤレス給電」が不可能な場所でも、走れるからです。ハイブリッドの対象は内燃機関でも良いし、リチウムイオン電池搭載でも良い。

 私がそれ以上に注目したのは、「中国の軛からの離脱」です。今考えられている以上にこれからの電気自動車時代が「リチウムイオン電池」中心に進むとすると、その製造に必要な希少金属(レアメタル)が必要不可欠な存在になり、それを産する中国や南アフリカなど一部の資源国が非常に有利になる。これが大問題なのです。

 しかし「ワイヤレス給電」システムでは、そもそもレアメタルなどを必要とする電池がいらない。電気のない場所では、キャパシタなどを使って乗り越えることが可能と先生。キャパシタは、レアメタルを全く使わない。

 この話を聞きながら、「なぜ今の電気自動車の議論がリチウムイオン電池の方向だけに傾いているのだろうか」と考えてしまいました。この「ワイヤレス給電」に関しては、私も知識を貯めていきたい。電気自動車の時代を進めたら結果的に「中国の軛」に入っていたというのでは不満ですから、これは面白い技術だと思う。

 感電防止や、”電磁波”に対する人々の懸念解消が必要なことは言うまでもありませんが。


2010年05月16日(日曜日)

 (23:15)「あとで読もう」と取っておいた今週の新聞記事を二つほど読みました。面白かったのは、12日の日経夕刊の「暮らしの”常識”揺らぐ」で、そこには卵の割り方やボトルの開け方を知らない人が増えている、という驚くべき事実が指摘されている。

 料理教室の受講生。料理に興味があるから来ているのだろうが、「卵のひびに両手の親指を当て、ひびを広げるようにして殻を割る」と4枚の写真を添えてまず教えてもらうのだそうだ。子供の頃から自然にやっている身としては、逆に説明されたら「そうだっけ」と思うような話しだ。思い出して、「ひびをどうやって入れるのか教えなくて良いのかな」と考えてしまう。

 トマトソースは腐らないと思っている人の話、ボトルの開け方を知らない人。まあこちとらワープロ、またはワープロソフトを30年ほども使っていて、漢字が書けなくなっていることを嫌と言うほど思い知らされている身としては、「うん、まあそういうことも」と思うのだが、製品を作っている企業は大変だ。

 最近ガスコンロでしたっけ、事故を調べると退職したばかりの60代の男性が事故を起こしているという統計が明らかになったという。何でも定期的にやらないと「企業が想像もしない使い方」をする人が増えるのだろう。企業にとってはリスクだ。

 いつも私は思うのだが、そのうち日本の子供の中には蛇口の栓を回さない連中が増えたり、つまり手だけ出してただ待っている、ドアの前で開くのをじっと待つ手合いが増えるのではないかと思っている。生活があまりにも便利になって。うーん、だからソフトウエアなども定期的に入れたり、PCの掃除も自分でやった方がいいんだろうな。今はまだ自分で全部出来ますが。

 もう一つの記事は、「民主党政権期待外れ 理念浸透せず随所でブレ」という山口二郎・北海道大学教授の「経済教室」(金曜日)。ずっと昔に番組に来てもらったという以上に、政治学者の中では一貫して今の民主党政権寄りで、この機に及んでどう「期待外れ」を総括しているのかと興味深く読んだ。

 折しも鳩山政権の支持率は時事通信が19%台で一番低く、朝日が21%、読売が23%と20%アラウンド。これは危機ラインだ。ではなぜそうなったかを山口教授が分析している。彼は言う。政権マヒ状態の最大の理由は、「政権交代を自己目的としたこと」と。そういえば昨年、今年の前半にかけて、「とにかく私たちにやらせて下さい」と今の民主党の幹部の人達は繰り返し言っていた。「何を目的(理念)に、どうやるか」にはあまり触れていなかった。

 しかし「実体的な政策転換について十分な展望を持っていなかった」(教授)から、「スーパーの開店セールのちらしのような」マニフェストに振り回される結果になった、と。確かにそれは「理念に基づく体系」では全くなく、「相矛盾する項目」が入る杜撰なものだった。

 読み進むと「内需主導の経済」など、今の世界経済の現状を分かっていない言葉も散見されるし、鳩山、小沢という民主党のワンツーが抱える政治とカネの問題、キャラクターの問題について触れていないのは随分甘い印象がする。しかし今の民主党が「極め厳しい試練に立っているとの全体的な分析には私も賛成できる。

 山口教授は民主党ファンとしてそれへの処方箋らしきものを提示していて、「鳩山さんはやめないことが重要」と述べている。まあでもそれで済むのかどうか。私は街の声を聞いていて彼への国民の信頼は地に落ちたと思っているし、これは個人的な印象だが、民主党が他の人材を首相に担いだときに何が出来るのかを見てみたい気もする。

 今自民党に戻るのとどちらと聞かれれば、「民主党の他の人材を試したい」という気分だ。いるかどうかはまだ分からないが。人材不足 ?


2010年05月16日(日曜日)

 (03:15)私のインド本(「ITとカースト:インド成長の秘密と苦悩」 日本経済新聞社)が紹介されているというので取り寄せた「本は10冊同時に読め」(成毛真 知的生き方文庫)は金曜日に家に着いていたので、直ぐに読みました。

 30分ちょっとで読める本ですが、私も10冊はないが、2〜3冊を同時並列的に読む方なので、「そうだそうだ」と思いながら読みましたが、それは置くとしてこの本、読む人を「刺しながら」進行する本だなと思いました。精神的にですよ。それは多分言葉使いもある。例えば「本を読まない人はサルである」などの。

 「サル」であるかどうかは別にして、私も「読書の喜びは他のモノに代え難い」という考え方で、数日一冊も本を読まないと、無性に本を読みたくなる。そう思って手が伸びるのはさっと読める、そしてテーマがはっきりしている新書類ですが、時には「ああしんど」と思って「1Q84」なども読む。(土曜日の朝聞いたどこかのラジオで、1Q84の第三巻の評価は30点。30点をやったのは、まだ続きそうだからで、そうでなかったら第三巻は評価ゼロと女性批評家が言っていたのは笑えた)

 成毛さんが、「ノルウェーの森」を読んだら一週間ほど立ち上がれなかった、あまりにも文章がうまくてと書いてあったのは笑った。まあ本を読まない人が増えている、と言うことを聞くと、「楽しみを一つ失っているのは寂しいのに」と思っているのです。そこは成毛さんにマイルドに同意。

 私のインド本が成毛さんの本に登場するのは108ページ。107ページから続く10冊の紹介ですが、ビックリしたのは私の本の直前、つまり107ページの最後に紹介されていた本(「特捜検察vs.金融権力」 村山治著 朝日新聞社)が村山(と私は呼びますが)の本だったこと。彼は、大学時代からの親しい友人。同窓同期同クラス。今でも結構頻繁に会う。びっくりした。ページは違うが、私と村山の本が並んで紹介されていたので。

 136ページからの「私の生き方・考え方を変えた本」の中に、私がまだ読んでない本があった。ちょっと時間が出来たらこうした本も読みたいな、と。この本を紹介してくれたツイッターの友人に感謝。


2010年05月14日(金曜日)

 (15:15)あらら、今ケイタイに入った速報によると、鳩山内閣の支持率は19.1%でついに20%割れしたという。私が知っている限り、発足以来、鳩山内閣支持率が20%割れを示した調査はこれが初めて。

 この調査は、7〜10日に実施したもの。不支持率は64.1%だという。予想されたこととは言え、迷走する鳩山政権に対する国民の不満は止めようもなく進行している、という印象が強い。まあそれでも居座りを続けるのでしょう。続投を決意しているのなら、それが必ずしも悪いわけではない。しかし、ずるずるではなく、一つ一つの問題に立場を明らかにして、それぞれに取り組み直す姿勢が必要だ。

 それとは別に、今読み始めたFTの社説Market making is not a part-time job が、先週の市場で起きたこと(ニューヨークの株価の短時間での往復1500ドル以上のスイング)に対する懸念を共有してくれていて頼もしい。

 私はあちこちで書いているのですが、これは世界の市場全体にとっての大きな問題です。理由もなく市場が大きくスイングするなど。そしてそれは一人アメリカの、そしてまた株式市場の問題ではない。なぜなら、世界の市場は常に繋がっているからです。

 私がこの文章で特に賛成できるのは、「Regulators must fight technology with technology」の部分です。つまりナノセカンドで取引を繰り返す high-frequency shopsをただ規制し抑制しようとしても駄目で、そのテクに対抗するテクを持つということでしょう。

 世界の景気は回復している。しかし、市場の取引システムに不安がある限り、世界の投資家は市場には安心して戻ってこないだろう。


2010年05月13日(木曜日)

 (23:45)日経のECOマネジメントに新しいエッセイがアップされました。今回は危機発生国の連鎖となっている先進国グループが共通に抱える問題を扱いました。

 それからもう一つ、金曜日の世の中進歩堂のお知らせです。今週は、「植物工場」を取り上げます。野菜の高騰はやっと収まりつつありますが、将来は依然として不安。そこで日本として何が出来るのか。一つは「植物工場」です。

 今週金曜日のBS7の午後10時24分からの番組では、『農業の未来が変わる!?新型農業『植物工場』に迫る!』と題して、新しい日本の農業の流れを追います。

 よく知られているように、日本の農業は食の安全から後継者不足、さらに低い食料自給率まで数多くの問題を抱えている。そんな問題を解消できる一つの方法と注目を浴びているのが室内で野菜を育てる「植物工場」。クリーンな室内で育った野菜は、農薬を使う必要がないため、安全で安心という面がある。またどんな場所でも野菜を育てることができるため、様々な分野で活躍の幅を広げようとしている。

 土地面積の狭い日本では、例えば30階建てのビルでは、少なくとも2フロアは野菜工場にといった決め方も出来るのではないか、とも思っています。


2010年05月12日(水曜日)

 (23:45)世界中の投資家が、「それはない」と思ったのではないでしょうか。米下院金融サービス委員会の資本市場小委員会は11日に、今月6日の米株価急落問題について公聴会を開いたが、そこで出来てきたのが米証券取引委員会(SEC)のシャピロ委員長による「現時点では(誤発注などが)唯一の原因だったとは特定できない」との証言。

 この問題は既にこのコーナーで何回も取り上げている。6日のニューヨーク株式市場がたった30分ほどの間で、往復1500ドル以上スイングした問題だ。ニューヨークのダウは一時前日引値比998ドル安になり、それが世界的な市場の混乱の原因となった。

 金融サービス委員会のフランク委員長(民主)は「過失がないのに損失を被った投資家がいる」と指摘。カンジョルスキー資本市場小委員長(同)も「公正とは言えない」とした。当然で、原因究明と再発防止策が焦点となっている。

 耳目を疑うような株価の急落に関しては諸説あった。誤発注説、高速取引に関わる問題など。しかし実に驚くことに、今になっても特定できていないというのだ。原因も分からずに急落する市場は、世界中の投資家の不信感を買った。これもあってかシャピロSEC委員長は再発防止に関して、取引を中断し値動きを制限する「サーキットブレーカー」を全米の取引所で銘柄ごとに適用する方針を明らかにした。

 来週にも暫定的に調査結果を発表するというので、とりあえずそれを待つしかないが、市場の急変に対応するサーキットブレーカー制度については、全米の6取引所で基準や対象が異なっている。このためシャピロ委員長は「市場横断的なサーキットブレーカー」が必要と強調して、「可能性としては(指数だけでなく)銘柄ごとに義務付ける」とした。

 ところで話は変わりますが、今私には中国関連で一つ非常に気になっている問題があります。都市の繁栄、高成長など中国の躍進の影で「多発している学校襲撃事件」です。もうこの問題は日本のメディアはあまり拾わないほど多くなっている。しかし、今日の日中にたまたま見ていたウォール・ストリート・ジャーナルに次のような記事を見付けた。

BEIJING―A Chinese news agency says seven children were hacked to death and at least 20 others injured in a violent rampage at a kindergarten in northwest Shaanxi province, in the lastest in a string of attacks on schools.

The official Xinhua News Agency didn't immediately give any other details on the Wednesday morning attack.

It comes after three attacks at schools and kindergartens late last month left dozens of children injured, and raised questions on security and issues of massive social inequalities believed to cause the violence.

 「またか」という印象で、そこで中国の問題に詳しく、ちょうど直前に別件でメールを交換した田代秀敏さん(ツイッターHP=http://twitter.com/chinaholicに「どうして中国では学校襲撃事件が多発するのか」と聞いたのです。ご覧になって頂ければ判りますが、彼のツイッターネームは「chinaholic」と言うほど中国に入れ込んでいる。また最近では文藝春秋に日本の国債市場の行方などに関して長い文章も書いている。以前からの友人です。

 彼から返ってきたのが以下に紹介するメールです。ご本人の承認を得て、以下に私のHPで公表します。深く考えさせられます。

 伊藤洋一様 お問い合わせ、ありがとうございます。

 中国で学校襲撃が多いのは巨大な所得格差の帰結です。

 中国では義務教育が有料です。貧しい家庭の子供は授業を受けることが出来ません。

 教師は基本給が無いか有っても極めて薄給なので、生徒から徴収した授業料で生計を立てます。ですから、「おしん」のように、授業料を払わずに教室の外から授業を覗いている子供がいると、石を投げつけたり、棒を振り回して、追い払います。そうしないと、全員が授業料を払わなくなり、生活が成り立たなくなるからです。

 しかし学校に行ける子供も大変です。教師が子供を使役して下請け生産を請け負って稼ぐことがあるからです。教師の給料を捻出するのと同時に学校の維持費を捻出するためです。小学校で花火を生産していたら爆発事故が起きて、多数の小学生が死傷した事件が大々的に報じられたことがあります。

 都市にいる農民工(出稼ぎ農民)の子供は農村籍なので都市の公立学校に通うことが出来ません。農民工出身の成功者達が運営する農民工の子供のための学校がありますが、 教員も設備も環境も劣悪な上に、無料ではありませんから、そこにさえ通えない子供がいます。

 一方で、富裕層の子供達は、立派な私立学校に通います。教員も設備も環境も一流です。英語が母語の金髪碧眼の教員もいます。そうした学校の校門前には、毎朝、「公用車」が私物化されたベンツやBMWが並びます。豪華な自宅から子供達が乗せられて学校に送られてきているのです。子供達は一流ブランドの服を着て、日本製のランドセルを背負い、血色が良く、肌は艶艶しています。連れてきた父親や母親も一流ブランドの服を優雅に着こなし健康そのものです。

 そうした通学の光景を、遠くから、学校に行けない子供達が呆然と見つめます。その子供達の服は汚れ破れボロボロで、靴を履いていない子もいます。どの子も痩せて、土気色の顔をし、髪の毛はボサボサです。

 1998年にそうした光景をはじめて目撃して以来、遠からずして北京のあちらこちらで学校が襲撃されることを予感しました。予感は現実のものとなり、もはや隠しようがない事態になっています。

 都市でも農村でも学校に行くことができない子供達が沢山おり、 そうした子供達は成長して、共産党が創った社会に対して憎悪しか抱いていない 怒れる若者達になっていくのです。

 御参考に4月15日に、ある高齢の中国人が、1−3月期のGDPなどの経済統計が発表される日の早朝に配信した写真を添付します。中国に残る貧困を写したものです。後日、その中国人と電話で話したら、こう言っていました。

 「1949年、共和国が成立した時に中国人は、これで中国から貧困がなくなると思った。しかし、大躍進の失敗、文革という内乱を経て、改革開放が行われたが、 中国から貧困がなくなるどころか、貧富の差は拡大するばかりだ。もはや共産党は何のために存在しているのだろうかが問われている」

 中国政治の泰斗である毛利和子・早稲田大学教授は教科書の中で 中国の農村は太平天国の乱の直前のような緊張感が漂っていると述べていますが、 私は同じ緊張感を北京の裏通りで感じました。

 以上、御参考になりましたら幸いです。

 実に壮絶なメールです。「生徒から徴収した授業料で生計を立てます」「教師が子供を使役して下請け生産を請け負って稼ぐ」と。発展にばかり気を取られてはいけない中国の実体です。

 彼が送ってくれた写真はあまりにも枚数が多く、紹介できませんが、それらを見ていると、「これは一体現代の中国か」と思います。目に見える中国ではない中国を紹介してくれた田代さんに感謝。彼はいろいろな会合も主催しており、ツイッターサイトに出ていますから、参加して頂ければ幸甚です。私も機会が会えば出る予定です。


2010年05月11日(火曜日)

 (23:45)岡田ジャパンのメンバーが発表され、いよいよ本大会に向けてムードは高まる.....と言いたいところだが、やはり盛り上がりはイマイチというところでしょうか。一つは「岡田ジャパンは強い」「何かやってくれる」という期待感が低いこと、もう一つは南アフリカが遠く危険でなかなか行けないと言うことだと思う。

 「世界を驚かす覚悟がある」と確か岡田監督が言ったと思ったが、その気配は最近数試合では全くない。私は「では誰に」という問題が解決しないので、身の回りにたくさんある「とにかく彼には辞めて欲しい」という意見には必ずしも賛成ではないのだが、「期待できない」という多くの日本のサッカーファンの気持ちは理解できる。

 岡田監督の「日本人らしいサッカー」という発言(テレビでしばしばクオートされた)も、聞いていて「何を言っているのだろう」と思ったくちだ。「とにかく粘り強く頑張る」という意味なのか。

 しかし、対戦相手を考えると、「頑張る」というだけではどうしようもない瞬発力の差、個人技能の差があると思える。体力を含めて。だから戦略やフォーメーションに何らかの突破口が欲しいのだが、それを岡田監督は示せていないように思う。

 今の岡田ジャパンにはない発想の転換のようなものがどうしても必要な気がする。特にサッカーに詳しいわけでもないが、今のままだと一勝もできな気がするからだ。ブレークスルーが必要だと。

 私も「久しぶりに南アフリカに行きたい」という気持ちがないわけではない。しかしとにかく遠い。私がこの国に行ったのは1983年だと思ったが、香港で乗り換え、セーシェルで給油して行った。今は給油はないだろうが、移動だけでほぼ一日がかりだ。

 当時の南アフリカはアパルトヘイトが明確に残っていて、日本人は名誉白人とかいう曖昧な地位だったが、今でも覚えている言葉は、「You can't buy whites.」というもの。つまり名誉白人だが、「白人の娼婦を買うことは出来ない」という意味だと思った。こちとら最初からそんな気はないのだが、非常にいやーな印象を持ったことを覚えている。

 当時の南アフリカには今でも思い出す「独特の緊張感」があった。ホテルの掃除の係の女性にも、刺すような目線があった印象があるし、それほど長くない2週間ほどの滞在期間だったが、「社会全体がピリピリしている」という印象だった。だから状況がどう変わったのか知りたい気はあるが、「凄く行きたいか」と聞かれればちょっと躊躇する。

 むろん、記憶に残っていることは一杯ある。興味深い国である。「ここを航海した人々は通ったのか」と喜望峰に立ったときの感慨は大きかったし、そこの風の強さは鮮明に覚えている。ケープタウンのテーブルマウンテンは自然の造形美としては面白いと思ったし、ヨハネスブルクでしたか「ダイヤモンドを掘った後の穴」は今でも覚えている。「人類が人工的に掘り進んだ世界最大の穴」だそうだ。うーん、ワインも美味しかったな。

 この文章を書いていたらネットに「民放各社、女子アナ派遣を見送り」という記事を見つけた。誘拐やレープの対象になる危険性を勘案しての措置だという。その判断が正しいかどうかは別にして、最近の南アフリカがどうなっているかはテレビや映画でしか知らないが、責任ある人々がびびるきがするのは分かる。とにかく治安が悪い、という。

 今日あった私にとっての「南アフリカ関連の出来事」といえば、メールに「ケープタウン新聞 / 南アフリカ共和国 (capetown_news) があなたをフォローし始めました」というtwitter からの連絡が入ったこと。そのメールには、「 3970人にフォローされている 1759投稿数 4142人をフォローしている 」と。私もこの相手をフォローすることにしました。南アフリカに関して、面白いつぶやきが聞けるかもしれないので。

 自己紹介の欄には、『2009年9月1日、南アフリカ共和国ケープタウン発カルチャー&ビジネスニュース「ケープタウン新聞」創刊です!The Mother City(母なる都市)、ケープタウンへようこそ!』とある。去年ケープタウンに日本語新聞が出来たと理解できる。サイトは、http://www.capetownnews.jp/

 こういう相互フォロー(私のIDはycastercom)が成立するきっかけは、今日の日中に新幹線移動しているときにツイットして、確か「南アフリカ」という単語を使ったからだと思う。相手は単語検索していて、私が南アフリカに行ったことがある比較的少ない日本人だと知ってフォローしてきたのだと思う。

 ツイッターの世界は、ちょっとした、思いもかけない一つの単語から相互フォローが始まる。それが面白い。


2010年05月10日(月曜日)

 (23:45)解せないことが多い世の中になったものだと。なぜ有名運動選手だった、または「である」人がこれほど参議院選挙を目指すのか。最近聞いた名前だけでも数人は直ぐに浮かぶ。

 首を傾げたくなる。「知名度さえあれば政治家は勤まるのか」と。そんなことはないだろう。党に使われるだけではないのか。それとも運動選手の6年間の安定した再就職先探し?

 ある人は、参議院に立候補した上で、「ロンドン・オリンピックを目指す」と。両方とも立派なことだが、つまり政治家になるのも、オリンピック候補を目指すことも普通の人間ではなかなか出来ない立派なことだが、「その両立」は果たして可能だろうか。これは国民が試されているのではないか。いや、国民は馬鹿にされているのかもしれない。

 次に解せないこと。先週の木曜日に一時998ドルも落ちたニューヨークの株価は、週明けの月曜日にはダウで400ドルも上げている。なぜ998ドル下げたのかの検証が終わらないうちに、「ああこれだけ反発して良かった」となりつつある。

 しかしどう見ても常軌を逸したマーケットの過度の変動は、その市場に足を入れている人にとって心穏やかでいられないものだろう。買いから入っているにせよ、売りから入っているにせよ、かつてはあり得なかった相場の変動が今は短時間のうちに生じる。それはしばしば市場参加者を痛める。普通のオーダーの出し方をしている向きにはそうだ。

 株だけではない。為替も凄まじいレンジで変動している。こんなマーケットが日常になるのか。それは一般投資家を市場から遠ざける役割をするのではないか。「アルゴリズム」?。「high-frequency」? 市場対応能力において、「情報の非対称」以上の非対称が生じているのではないか。

 だとしたら、貯蓄から投資の時代とか言われるが、単純にそれをスローガンにして良いのか。はて、なかなか回答が出ない二問だ。


2010年05月09日(日曜日)

 (14:00)先週の木曜日の午後のアメリカの株式市場(先物市場を含む)でいったい何が起こったのかに関して、私が読んだ中では一番詳しい記事がウォール・ストリート・ジャーナルにありましたので、将来の備忘のために残しておきます。

 これを読むと、誤操作とかそういう問題ではなく、今の取引システム、つまりコンピューターを最大限利用する取引システムに潜む問題、それをコントロールできない取引所の管理・監督システム、また取引所間の連携の不備ように思える。

For a good part of the day, markets were down on worries about debt woes in Europe and unrest in Greece.

Shortly after 2 p.m., traders on the floor of the NYSE say, they noticed some wild moves in currency markets, and gold was ticking up. Stocks fell further.

Around 2:40 p.m., with the Dow Industrials down about 500 points, a big high-speed trading firm, Tradebot Systems Inc., stopped trading to limit its losses. Other high-speed firms also pulled back. These firms typically buy and sell when other investors need to trade, so their withdrawal could have primed the market for a fall.

Around the same time, the big P&G sell order hit the NYSE floor. It is not clear where the sell order came from and how big the order was. It overwhelmed available buy orders, traders say.

Because that order came amid the market selloff, a NYSE system kicked in that's designed to slow trading when there's a big move in a stock's price or trading volume. That so-called liquidity replenishment point system stopped the NYSE's electronic trading in some stocks, down-shifting into "slow" mode.

The system is supposed to allow designated market makers-human traders who work on the floor-to help bring order to the market. These traders are required to step in and buy or sell stocks when there are no other investors willing to make the trades.

Starting at 2:45 and 52 seconds and continuing for nearly two minutes-an eternity in markets where millions of shares trade every second-no P&G trades were reported by NYSE. For about 80 seconds, not a single share of P&G stock traded through the Big Board.

Sell orders continued to flood into the NYSE. When the orders couldn't be filled, they spilled into other electronic trading venues.

That created an overload of sell orders and caused temporary divergences in prices between stocks on the NYSE and other exchanges. Essentially, there were no buyers for many stocks, which allowed their prices to fall until a trade was done, in some cases to 1 cent.

During that time, P&G declined 35%, then began to rebound. At 2:47 and 42 seconds, the NYSE reported a new P&G trade at $56.27, just below where the stock was changing hands before the trading halt.

Meanwhile, the broad market was falling more than 100 points a minute.

"We were here and didn't know what happened out there," said Doreen M. Mogavero, president of Mogavero, Lee & Co., a floor broker. "We thought something horrific happened."

Some traders say one culprit for the quick downdraft might have been a type of trade called an "intermarket sweep order," or ISO. ISOs, which some studies say account for nearly half of all trades, send trades to whatever exchange that has the best price. The order can remain there until it is filled-even if that means the price falls to near zero.

A large number of stocks that plunged dramatically Thursday were ISO orders in which there were no apparent buyers, data shows.

Shares of consulting firm Accenture PLC fell from $41 at 2:30 p.m. to $32.62 at 2:47:46 when a trade was routed through NYSE Arca Exchange. Seconds later, at 2:47:50 p.m. an ISO trade cleared through Nasdaq at $5.54. Moments later, an ISO trade went through on Nasdaq at $3.04. The shares traded at a penny at 2:47:53 p.m.


2010年05月08日(土曜日)

 (10:35)実に実に驚いたことに、昨日紹介した誤注文説などを含めて諸説ある昨日のニューヨーク株価の急落(ニューヨーク時間午後2時40分過ぎ、ダウは998ドル安、その後僅かな間で500ドル以上急反発)については、一日たった7日の夕方になっても「これ」という原因特定が出来ていないようだ。

 これは投資家にとっては不安だ。まだ「あれは誤操作でした」と分かってくれた方が、次の行動を決められる。「ああそうか、あれは事故。では経済や市場の本来の姿はどうだったのか」という気分になる。しかし、原因が特定できての再発防止。それがなければ、突然の市場の急落(急騰)がまたあるかもしれない、と考えるのが普通。「オーダーを出すのも不安」「ストップの出しようもない」ということになって取引そのものが手控えられる。

 実際に7日のニューヨークの株式市場の取引は時間の経過とともに、つまり取引時間の経過にもかかわらず原因究明が進まない状況の中でジリジリと下げた。引値はダウで139.89ドルも下がって週越え。雇用統計の内、非農業部門就業者数の増加が予想を上回ったにもかかわらずである。

 オーダーの執行は、瞬時瞬時の取引水準で行われる。1000ドル近くスイングすれば、ほとんどの下のオーダー(指し値にしろストップにしろ)はdone になったのだろう。だから取引所(NYSEやNasdaq)は異常事態が生じていた例えば30分間の取引の内、直近の取引時より相場が60%以上動いた取引をなかったことにする方針のようだ。

 しかしこれは、局所救済の悪しき例である。なぜなら、ニューヨーク株式市場の信じられない動きを受けて、外国為替市場では異常な、しかも短期間の円高局面が演出された。それは国債市場、商品市場でも同じ事だろう。極端な相場スイングが起きた。市場は秒単位で動くから、ニューヨークの株価の極端な動きは、各地市場での同様な動きに繋がった。

 例えば日本で人気のFXで仮に円以外の通貨(例えば金利の高い豪ドルなど)を対円でロングにしていた投資家がいたら、ユーロ・円の一日10円近い下方スイングの中で、ロングに対してストップを出していたらそれらはすべて強制執行されたと推測することが出来る。ストップを出していなかった場合は、FXの口座に置いていた全資金を失った人も出たに違いない。業者による強制執行条項が起動しますから。damage has been doneであって、ニューヨークやアメリカの取引所が取引所取引だから「それはなかったこと」に出来るとしても、そうした世界中の投資家、各地市場(OTCなど)で取引をしている投資家は救われない。これはどう考えても不公平だ。

 よって、原因が特定できずにニューヨークの株式市場への不安が残ると言うことは、世界中の市場に対する不安感が残ると言うことだ。金曜日の記事の中には、「P6Gや3Mなどダウ構成銘柄が明確なニュースもなく一日に20%も変動することはない」といった今までの市場の常識が通用しなくなる。木曜日はもっとひどい値動きがあったことが報告されている。それは、世界中の投資家を不安にさせる。

 この不安は世界中での投資資金の動きを鈍くするか、細くする。投資資金の動きが過剰にvelocity を高めるのも良くないが、それが鈍くなったり細くなったりすれば、それは世界経済の鈍化、景気悪化、雇用の伸びの鈍化に繋がる。だから米市場監督当局は何があっても、「異常な値動き」の原因を特定し、それを修復しなければならない。

 誤操作でないとしたら、プリウスの欠陥(? 回生ブレーキと通常ブレーキの受け渡しのタイミングに関するもので、許容範囲との見方も出来る)がそうであったように software-driven かもしれない。例えばhigh frequency tradingなどの取引プログラムのブラックボックスにソフトウエアの欠陥が入っていた可能性だ。しかしこれは我々には分からない。

 むろんギリシャという不安材料はある。しかし、取引システムに対する不安はもっと大きく根深い。それは、世界中の投資家のリスク認識を異常なまでに高め、取引への誘因を奪う。ギリシャはEUの2〜3%のGDPの国だが、システムは市場の100%をカバーする。安定した、誤作動しないシステムあってこその取引だ。理由もなく突如相場が崩れる可能性のある状況では、買いなど入れたくない。それを金曜日のニューヨーク市場は示した。その状況を来週初めには脱しなければならない。

 米4月の雇用統計に関する英文資料を以下に掲載しておきます。翻訳するのが面倒で、備忘の為です。

 In its closely watched employment report Friday, the Labor Department said nonfarm payrolls rose by a higher than expected 290,000 last month, the largest gain since March 2006. That followed an upwardly revised 230,000 increase in March. Economists polled by Dow Jones Newswires were expecting payrolls to rise by 180,000. The March figure was originally reported as a 162,000 increase.

  Taking into account revisions to prior months, the U.S. economy added an average of 143,000 jobs a month in the first four months of the year.However, the unemployment rate increased to 9.9% last month. Economists were expecting it to remain at March's 9.7% level.

  Whether the euro zone can contain Greece's debt crisis will again be in focus. Both houses of Germany's parliament approved the country's contribution to the joint European Union-International Monetary Fund loan package for Greece. The finance ministers of the Group of Seven leading economies are to hold a telephone conference to discuss the Greek debt turmoil.

  Besides March, February was revised from a loss of 14,000 jobs to a gain of 39,000. With a January gain of 14,000, the cumulative increase came to 573,000 jobs in four months.

  Private employers added 231,000 jobs in April. The federal government also added, including 66,000 temporary positions for the 2010 Census.


2010年05月07日(金曜日)

 (10:35)TBSの若手が上海万博に行ったというので様子を聞いたら、「面白くない」と一刀両断。一部のパビリオンを見ただけではなく、彼は全パビリオンを見た上でそう言っている。

 お土産に「朝中友誼」という切手集をもらいました。いかに北朝鮮が中国と緊密に付き合ってきたかを切手で見ることが出来るが、どう見てもちゃち。聞くと金正日の滞在中は閉鎖されていた北朝鮮のパビリオンは、真ん中に噴水があるだけで、あとはこうした切手集などの物販だけとか。それじゃ面白くない。ウリは「楽園」だったはずだが。

 初日、二日目はまだしも三日目、四日目からは入場者が大幅に減少して、主催者は慌てているという。日本館が人気と言うが、名古屋の時のそれを想起すると、「じゃ、他はどうなっているの」と。結局名古屋でも、各国の食べ物が面白かった。あと着るもの。

 「最初のうちは混むので....後で」という人が多いのは確かだろう。中国には都会を見たい膨大な数の人がいる。しかし私は普通に回れば一日3〜4館がせいぜいで、待つ時間の方がはるかに長い万博に、それほど人が殺到するとは最初から思っていない。

 実は名古屋の万博会場を思い立って回ったときに、「万博は終わった」という印象も持ったし、今もその思いに変わりはない。なぜなら、あれだけ並んで何を見れたかと言えば、今は印象に残っていないものばかりだ。ロボットのダンスなどごく一部を覚えている。あとは書いたように食べ物、着るもの。

 これはあちこちで言っているのですが、「ネットは毎日万博」というのが私の意見です。多分中国の若い連中もそう思っている。まあ機会があれば行きたいという人はいるだろうが、ネットでいくらでも見れるものを並ぶ必要はない。並んでいるうちにいろいろ見れる。彼は、「上海の街の方が面白かった」と。

 「なんでも人海戦術」の中国だから、入場者数の帳尻は合わせるかもしれない。しかし、「日本人の半分が行った大阪万博」のころの勢いは万博にはない。そういう時代だと思う。

 それにしても「またか」という印象の誤発注問題。当事者は誰も認めておらず、当局も「調査中」だから不明なことがあるが、米の責任あるマスコミの説明を総合すると

  1. 誤発注は現地時間の午後2時45分頃、CMEのe-miniと呼ばれる株式先物市場で発生した
  2. 内容は「M」のキーを押すべき所で「B」を押した。ご存じの通り、「M」はmillion(100万)、「B」はbillion(10億)。e-miniの一単位が何かは知りませんが(多分小口取引先物市場)、そりゃ随分違う。一説にはBの前の数字は「16」だったそうな。16Mとうつべきところを間違った
  3. 銘柄はプロクター・アンド、ギャンブルなどで、当然売り注文だったことから先物市場は急落、つれてニューヨークの市場も大きく下げ
  4. このニューヨークの動きを受けて為替市場など他の市場でも大きな相場の変動が起きた
 ということらしい。あるソースによれば円高の極値は対ドル87.83(前日引値93.80)、対ユーロ109.87(120.24)、対ニュージー61.76(67.31)、豪ドル76.63(85)など。ただし、この円の各通貨に対する高値は、ソースによって全然違う。市場が荒れているから当然そうなる。

 本当に間違ったのか、何らかの意図があったのか、見方はいろいろ出来る。しかし、ベースは昨日も書いたように市場が極めて不安定な状況だったことだ。多分ストップを一杯飲み込みながら相場は動いた。トリガーされていく途中では、しばしば相場はone way になる。当局も状況を見守っていたに違いない。

 しかしギリシャの問題は根が深い。EUやユーロのシステム上の問題以上に、今の先進国が採用している政治体制そのものが陥りやすいリスクを露呈している。そこに問題の本質がある。

 政治にも市場にも必要なのは、ディシプリンだ。過大な期待、過大な約束、過大な夢は売らない方が良い。あとで必ずしっぺ返しが来る。


2010年05月06日(木曜日)

 (23:35)東京市場も大幅な株安(日経平均で361円71銭)と円高(特に対ユーロで120円割れ)になった。予想されたこととはいえ、昨日も書いたようにギリシャ問題の影響は大きい。問題は複雑です。無政府主義者の仕業とも言われるが、ギリシャのデモでは死者も出た。

 しかし同時に言えることは、どんなに問題が複雑でも、「一応の落ち着き処」「当面の解決策」というものはあるもので、よって株価が際限なく下げ続けることもないし、円高も限りなく続くことはない。相場のレベルが変われば、資本の動き方は違ってくる。割安になった銘柄や通貨には必ず買いが戻ってくる。そういう意味では心配のしすぎも良くない。市場も相場も波です。

 ただ一つ言えるのは、強い不安定さというか先行き不透明感は残ると言うことです。問題が大きいのは、世界中の政府が「GDPの割には大きい財政赤字」を抱えていると言うこと。それはヨーロッパの他の国々でも、日米でも同じ。政治家が国民の歓心を買おうとして様々な政策が採用される傾向があり、どうして各国の財政は悪くなる傾向がある。

 この面での「民主主義と市場」の問題は、今後暫く市場で大きなテーマになると考えられる。民主主義がディシプリンをもって運営されているうちは市場はワークする。しかしそれを失うと、それは市場の警告が始まる。今の世界は非常に微妙なところにある。

 その認識があるかどうかが問題です。日本でも。


2010年05月05日(水曜日)

 (01:35)ギリシャ問題に対する悲観論、楽観論と見方の対立などもあって日本の連休中に振れが大きくなっていた世界の市場は、4日の海外市場では明らかに「悲観論」に振れている。世界的に株は下げ、ユーロが急落。振れだからまた日本の市場が開くまでに戻るかも知れないが、どう考えても来週、再来週とまだ世界の市場の波乱は続く。

 私がこの文章を書いている時点で、ニューヨークのダウは230ドル下げているが(一時は270ドル安)、これに関してウォール・ストリート・ジャーナルは「The broad drop follows a decline in European markets that showed a lack of confidence in the Greek bailout package. The euro fell to a 12-month low against the dollar as doubt surged over whether the Greek government can carry out the strict austerity measures required in the aid package.」と書いている。

 それはそうで、私もずっとギリシャ問題の意味合いを考えていたが、これは考えれば考えるほどヨーロッパにとって重要な事態だと思える。はっきり言うがこれは「支援策の金額」の問題ではない。最後は、ヨーロッパの人々がway of life を変えられるかどうかの問題であって、それは極めて難しいと思うからだ。

 そもそも今回の巨額の支援措置を支えているドイツが、メルケル首相の思惑通り国内政治において「支援支持」に固まるかどうかが不明だ。「ヨーロッパの危機」を叫んで今回はドイツの指導部はokを出したが、「G」のあとは「P」や「S」も待っている。ドイツが中心になって問題を避けられるかは不明だし、ドイツもそこまでは背負わないだろう。いくらヨーロッパに負い目があるとしても。

 ということは支援策そのものにも疑念が付くと言うことだが、もっと問題なのはギリシャ政府がEUやIMFに約束した緊縮財政を実行できるかどうかだ。それはそれは厳しいもので、1997年に韓国でも”IMFショック”が起きたが、ギリシャはもっと国民そのものが政府に対して反抗的だし、権威を重んじない。国民性の一種だ。それがギリシャの良さでもある。闇経済も大きい。

 支援策が決まった後でも、総労働人口の半数に当たる労働者がストに参加している。こうした中で公務員削減、財政支出の大幅な削減などを実行すれば、政府は直ぐに不人気になる。ギリシャが取っている政治方式は、民主制だ。つまり一人一票を持っている。政府は簡単にひっくり返る。

 国民がIMFやEUからの支援を取り付けた政府に「ノー」を突き付けたらどうなるのか。これは厳しい。支援策の撤回、それに伴う混乱、その先にはギリシャのユーロからの離脱などが待ち受けている可能性がある。

 ギリシャがユーロから離脱すれば、ギリシャの通貨(何と呼ぶかは不明だが)は急落するだろう。それによってギリシャの輸出は回復するかも知れない。しかし既に実施された分の支援策はユーロ建てなので、ギリシャの借金は新通貨建てでは一極に増えるという勘定になる。

 通貨権と金融政策を一元化したEUだが、財政政策は各国任せ。しかしこの財政でこそ、政治家は甘いことを言いがちだ。どの国でも。日本でもそうだ。過去に財政で存亡の危機に立ち、今はその反省から財政の健全化に努めているし、輸出力もあるドイツのような国は良い。しかし、社会主義を経験したギリシャなどは、国民はバラマキの魅力を忘れずに、それを当然だと思ってしまいがちだ。

 ギリシャは確かにEU内のGDPベースでも2〜3%と小さい。国民の数も1113万人しかいない。しかし、今の危機は共同体としてのEUにとって大きな試練だ。政治と財政を各国任せにしておいて金融と市場を一つにするというシナリオの是非が問われている。

 EUは加盟へのシナリオはあった。しかし離脱のシナリオは描けていないし、過去に実績もない。結局、最後の道を決めるのはギリシャ国民だ。


2010年05月04日(火曜日)

 (23:35)道路交通情報センターはいつも車でちょっと遠出をするときに事前に見るページですが、この時間でも関東の高速道路、特に中央自動車道では依然として一部で大きく渋滞している。昨夜は私も避けがたくこの渋滞に巻き込まれていた。

 車をのろのろ運転しながら思ったのは、当然ながら渋滞学という学問は成立するのだが、それとは別にいかに渋滞を楽しむかの学問も必要かも知れない、ということ。

 一般的に事故などの人為的な原因を除けば、渋滞は

  1. 道路が上りになったときに起きる車サイドの自然減速
  2. トンネルが持つスピード抑制効果による減速
  3. 車線の減少による減速
 など、いくつかの原因があるとされ、例えば中央自動車道では小仏トンネルでなぜ渋滞が起きやすいかと言えば、上ったところにトンネルと「1と2の条件が一緒に存在する」ためだ。クルーズ・ドライブ以外の時、同じアクセルの踏み込み状態で道路が上りになると車は減速するが、それによって渋滞も発生する場所も、各高速道路でほぼ決まっている。

 そんなことが判っているなら最初からそう作らなければ良いのに、と思うのだが、それが判ってきたのは道路を造ってずっと後だ。今道路管理者がやっていることは、道路でそれを一生懸命告知して、なんとか自然渋滞を避けるという努力だ。日本の道路はその点が実に良くできている、「上り坂、減速注意」など実意丁寧サインが道路に掲載されている。

 それとは別に、「もうこうなったら楽しんでやれ」と思ってやったのは、高速道路が出来る前の、例えば中央自動車道の旧道としての国道20号線の利用。「旧道を楽しむ」ってやつだ。ナビを見れば一発で判るのだが、旧道通行は一般的に「渋滞した高速道路」より時間がかかることがしばしばある。降りる車が同じように増えるからだ。信号も多い。昨日もそうだった。

 しかし、「いつも通行している高速道路の上で渋滞しても仕方がない」と昨日は考えた。そこで敢えて旧道に降りて一つ一つの信号で止まりながらむかーし通った旧道を走った。20号線の場合、山梨から神奈川県、さらには東京都に掛けては非常に厳しい狭い道路が続く。

 「ああ、昔はこんな狭い道を走っていたんだ」「こんなにカーブが多かったっけ」などと思いながら車を走らせていた。それはそれで運転技術的には楽しい。沿道がいかに変わったかが判る。基本的には私は、列車では「のぞみ」よりも「踊り子号」が好きなタイプで、どこを走っていても同じな高速道路よりも一般道が好き。昨日も一宮御坂からはずっと下を走った。それはそれで面白い。

 車内で出来ることもある。例えば普段アルバムごとに音楽を聞いている人は、シャッフルで何が出てくるのか判らない状態で音楽を聴くのも良い。「え、ここでこれ」見たいな楽しみ方がある。アルバムごとに聞くにしても、普段は聞かないアルバムから聞く手もある。

 いつも思うのですが、運転中の車内で出来ることは限られている。それでも、渋滞の時こそいつもは出来ないことをする手もある。昨日はそんなことを考えながら渋滞にどっぷりはまっていました。


2010年05月03日(月曜日)

 (17:35)ははは、ご遺族は私が昨日書いた文章を山本さんの棺の中に入れてくれたそうです。あの文章も、お洒落な先輩と旅を帯同できて嬉しく思っていると思います。ニヤリと文章を読んでいる山本さんの顔が浮かびます。

午前8時半。本宮1の御柱の前で神事が。塩まきが興味深かった  ところで、今は長野県の諏訪にいます。今日の早朝、ちょっきり午前5時でしたが車で家を出て、それでも渋滞に入る直前の厳しいところをかいくぐって(流れていましたが、非常に車は多かった)、諏訪の御柱祭に。今年どうしても一度は来なくてはならなかったのは、私の出身の地域が「明治以来で初めて本宮の1の御柱」を引き当てたと聞いたため。

 この連休に行われるのは、諏訪大社上社の里曳きですが(この週末は下社の里曳き)、そこでは全部で8本の御柱が動く。神宮司の本宮に4本、その手前の茅野の前宮で4本。本宮の1が一番大きく、それを曳くことに名誉があり、前宮の4が物理的にも一番小さい。私は子供の頃から本宮の1を曳いたことがない。そりゃそうで、これまではクジ引きで外していたから。

 今朝はもう午前7時過ぎには諏訪に着いてまず社務所で寄進をして、その後御柱のある場所に移って朝の神事から見ましたが、時の流れの中で祭りも変質しているのがよく分かる。総代などの挨拶ももっぱら「楽しい祭り、怪我のない祭り」を強調。我が家は祖父も父親も諏訪大社の研究をしていた人物ですからもうちょっと”神事”であることを強調して欲しかったのですが、まあそれは時代の流れでしょう。見るだけではなく、懐かしい顔の人たちの中に入って綱を付けて実際に結構長い距離を曳きました。久しぶりだった。

 一つ思ったのは、故郷は実は知らないことが多いということ。午前8時30分に御柱が動き出す前に時間があったので、ちらりと山の方を見たら石段がずっと繋がっていてその上に社がある。下には名前も書いてないのです。うーん、「足試し」と思って数えながら上がったら200段あった。

 一挙にではないですよ。一回休んで。しかし急で非常に危険です。上がるのにちょっとふらついたら下に真っ逆さま。降りるのも結構大変。しかし反対側の美ヶ原の方向から諏訪の盆地を見た記憶は何回もあるが、諏訪大社のサイドから諏訪盆地を見たことはなかった。初めての景観でした。

 上に上ったら初めて北斗神社と書いてあった。初めて知った名前なので、「あとでネットで調べよう」と思って撤退。でも実はそれで足ががたがたになって、里曳きも結構大変だった。まあでも楽しかった。昼間は23度くらいになったのではなかったでしょうか。これぞまさに、「御柱の時期の諏訪」と思いました。

 ところで、ギリシャ問題は面白そうですが、今はそれを詳しく述べる時間がない。諏訪に来るとやらねばならないことが多い。資料だけ残しておきます。見ることが出来たニューヨーク・タイムズの記事から。

@“Austerity can be justified, but 8 percent interest rates on a debt that amounts to more than 100 percent of gross domestic product is just crazy,” he said. “They will have to restore their public finances and then pay back this huge debt at the same time ? and Greek debt amounts to so little when you compare it to what was needed to bail out the banks” last year

A“Unfortunately for economists, there is democracy,” Mr. Fitoussi said. “If you impose too strict a program, the population will refuse.” Some countries, he acknowledged, have responded quietly so far to deep cuts, like Ireland and Latvia. “But Greeks are not Latvians,” he said, citing serious worker demonstrations already this weekend.

BSome argue that Greece should stop using the euro, as Argentina dissociated itself from a peg to the dollar in 2002, devaluing its currency and soon returning to growth, although with high inflation. But others say that since Greek debt is denominated in euros, leaving the euro zone will be too expensive and disruptive for a society in crisis.

CWhile the bailout provides a lifeline to the Greek government, similar challenges await other deficit-racked countries like Portugal, Spain and perhaps even Italy. Moreover, nations like Latvia, Hungary and Romania ? which are outside the 16-member group that uses the euro as its common currency ? are all struggling in their own efforts to meet economic and fiscal goals set in conjunction with the I.M.F.

DThe fact that the rescue plan has been expected for the better part of a week, and does not address challenges in Portugal and Spain, may well be seen by investors as a sign that the broader issue of Europe’s debt problem remains unresolved.

EThe strongest national interests are in Germany, where there is stiff public resistance to a bailout of Greece. The German parliament must still approve the aid package before the loans can start. Chancellor Angela Merkel said on Sunday that she would present draft legislation to her cabinet on Monday and hoped to have the approval of the German contribution through the parliament by Friday.


2010年05月02日(日曜日)

 (16:35)とってもとってもお洒落で、ハンサムな先輩でした。70年代の後半から襟だけ白のカラーシャツを着こなし、周囲の同年代から傑出したお洒落センスの持ち主だった。日本語は当然ながら、外国語のセンスがあってフランス語と英語の両方をこなし、であるが故にパリでもニューヨークでも特派員として、そしてワシントンでは支局長として活躍した。

 新聞的に経歴を紹介すると、「パリ特派員、ワシントン支局長、外信部長などを歴任、その後筑波女子大学(現筑波学院大学)教授を務めた」となる。まいったのは平気で「ドイツ語圏に行くと困るんだよ。何を言っているのか分からなくて。ラテン圏はほぼ言葉が推測つくから」と平気で言える人だったことだ。ニューヨークにしか駐在したことがない私はうらやましく思ったものです。

 仕事が出来たのは当然として、実にうまい、楽しい遊びが出来る人でした。私もいくつかの分野でかなりご一緒しました。麻雀は本当によくやった。お互い早朝勤務がある外信分野だったので、「今日午後3時から暇なんだよ.....」とお互いに誘い合ったりもした。酒もよく一緒に飲んだ。強かった。

 しかし、彼が多分一番好きだったのはカジノです。これは研究対象でもあった。「黒野十一(くろの・じゅういち)」のペンネームで「カジノ」というそのままのカジノ本まで書いている。「十一」はブラックジャックを知っている人なら意味が分かる。

 私もカジノのある街では必ずそこを訪れる。社会勉強です。一緒に「日本にはカジノが必要だ」という議論をしたこともある。しかし一緒に海外のカジノに行ったことはなくて、「今度連れて行ってくださいよ」で終わってしまった。非常に残念です。

 食道がんでした。亡くなられたのは29日の朝早く。お嬢さんの名美さんから30日にメールをいただき「母と私が看取りました。とても穏やかに逝きました」「昨日昼に1ヶ月ぶりに自宅に帰り、ホッとした表情ですやすや眠っているように見えます」と。

 実際、頭がきれたのにほぼ常に穏やかな人でした。世の中で起きていることを一歩間を置いて見ているような。笑顔がチャーミングでした。文章がうまく、確かつい2年ほど前にも翻訳本を送っていただいた。原文はフランス語でした。最後まで語学力は冴えていた。

 最後にお会いしたのは一昨年でした。これは当時の仲間の一人が亡くなった葬式の席で。「今度一杯やりますか」と言ったままになっていたのがなんとも心残りです。飲むといつも楽しい人だった。冗談とまじめがほどよく混じっていた。最後はいつも遊びの話になった。

 故人がパソコンに残していた「緊急時の連絡先リスト」の「最重要の連絡先」の1つに私の名前と電話番号が書いてあったそうな。だからこそ、今年の初めでも一度お会いしておきたかった。

 しかし約束しますよ。ちょっと時間はかかるかもしれませんが、再び同じ世界の住民になったら、必ず私がメンバーを集めて組閣して、お呼びしますよ。今から仕事を作っておかないと、新たな世界で生き甲斐がない。誰を呼びましょうか。いつも私に「誰を呼ぶ。上品なのがいいよな」と言ってましたっけ。はいはい。

 76歳。ちょっと早いですよね。残念です。山本一郎さん、安らかにお休みください。私はこの文章を書き終えて通夜の会場に向かいます。



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