2010年11月30日(火曜日)

 (23:00)ウィキ一色になってきましたね。とにかく25万タイトルもあって、分量も膨大。その一部が少しずつ明らかになっている。

 その一方でウィキ自体に分派の動きもあるようだ。

 アイスランドからの報道によると、民間の内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」の元メンバーらが30日までに、新たな情報サイトの立ち上げ準備を開始した。フランス公共ラジオが報じた。

 ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサーンジ氏の方針に異を唱えて離脱した若者たちで、うち1人は「元メンバーはアサーンジ氏のやり方に不満があったため、ウィキリークスから離れた」と説明。

 アサーンジ氏1人が決定権を持つ組織形態のウィキリークスと異なり、民主的な意思決定を目指すという。

 とサンケイ。膨大なために、「読んだ人がまず気がつく」という面もあるようで、「こんなのがありました」とメールをもらうケースもある。ある方が、「岡田さんと菅さんの名前が二回づつ出てきます」というこのソウルの米大使館の文書を教えてもらいました。

 ここには「The North Koreans, Kim said, were clearly using several different channels to “knock on the DPJ’s door.” 」と書いてある。しかし、その「ドアのノック」を民主党政権が気づいたのか、気づいても無視したのか。それは分からない。表面に出ている動きで見ると、日朝関係は少しも動いていない。

 ウィキの資料は面白い。こういう文章が米在外公館と国務省の間で交わされているのかと分かる。しかし重要なのは、この文章はすべて「過去文書」だということだ。恐らく今現在は、また違った論理で情報がやりとりされ、分析も異なっているのだろう。

 そこが重要だと思う。


2010年11月29日(月曜日)

 (16:00)ニューヨーク・タイムズのサイトを見たら速報のところに「STATE'S SECRET」と大きな活字が踊っていて、その後に「A cache of confidential diplomatic cables amounts to a secret chronicle of the United States’ relations with the world in an age of war and terrorism. 」と斜体で書いた後に、「Leaked Cables Uncloak U.S. Diplomacy」と。

 もともとこの米外交文書を入手したのはウィキリークスというこのサイトです。もっとも最新のものでは今年の2月の米外交文書(世界各地の米大使館と国務省のやりとり文書)が含まれているという。そこまで過去3年間の文書ですから、むかーしの文書ではない。その文書がサイトでも公開されると同時に、ニューヨーク・タイムズなどいくつかのニュース・メディアに公開された。

 とにかく膨大ですから、全部は読めない。何が書いてあるかについて、ニューヨーク・タイムズは「 A cache of a quarter-million confidential American diplomatic cables, most of them from the past three years, provides an unprecedented look at back-room bargaining by embassies around the world, brutally candid views of foreign leaders and frank assessments of nuclear and terrorist threats.」と指摘している。

 「some redacted to protect diplomatic sources」とあるから、警視庁の文書のように「そのまま」ということはないようで、しかし当然ながらアメリカ政府はクリントン国務長官を先頭に、各国政府に「公開を警告」し、アメリカの国益、アメリカに情報をもたらしている人々を危険にさらす、と警告。

 しかしどう考えてもこの種のリークは増えるんでしょうね。膨大な文章が非常な短時間でコピー、転送出来る時代。今話題の朝鮮半島に関しては、

¶ Thinking about an eventual collapse of North Korea: American and South Korean officials have discussed the prospects for a unified Korea, should the North’s economic troubles and political transition lead the state to implode. The South Koreans even considered commercial inducements to China, according to the American ambassador to Seoul. She told Washington in February that South Korean officials believe that the right business deals would “help salve” China’s “concerns about living with a reunified Korea” that is in a “benign alliance” with the United States.
 といった記述もあるとニューヨーク・タイムズは報じている。


2010年11月28日(日曜日)

 (19:00)六カ国協議そのものではなく、この協議を構成する六カ国の「(六カ国協議)主席代表会合」を提案。中国もかなり考えましたよね。そのまま六カ国協議を呼びかければ、アメリカや日本は決して応じない。なぜならそれは、「あんな非道な攻撃を韓国に対してした北朝鮮に褒美を与えることになる」から。

 しかし六カ国協議そのものではなく、それに繋がるかも知れない「六カ国協議主席代表会合」(緊急の)なら「六カ国協議ではない」ので、もしかしてアメリカが受けるかも知れない、それにつれて日本もokするかもしれない。いずれにせよ、六カ国協議の議長国の責任は果たそう、と思ったのでしょう。

 多分、北朝鮮のokはとった。韓国はどうだろう。アメリカと日本への根回しはしっかりは出来ていないように思う。対応が難しくなったのは、アメリカと日本です。北朝鮮は、「今回の問題は日本は関係ない」などと言いかねない。北朝鮮の狙いは明らかで、アメリカとの直接対話の場を持ちたい、そこで体制への保証を取りたい。

 受けるかどうかを日米韓は協議することのになる。多分ロシアは中国の提案に乗る。「12月上旬」というのが微妙です。なぜなら、10日まであるから、結構な展開が予想される。アメリカは韓国との演習を続けるでしょう。

 中国は球を投げた。しかしこの球が何か価値あるものを生むかどうかは分からない。


2010年11月27日(土曜日)

 (21:44)そういえば、昨日新しいエッセイがアップされましたので、その紹介を。第30回「米国の“通貨敗戦”」というタイトルです。金融の入門的講座としてこのサイトに書き続けている文章の一環です。

 G20、APECと続いた今年秋の国際会議は、世界の金融、マーケットの現状を考える上で非常に参考になる例ですから、それを題材にとっています。しばらくは今の国際情勢の変化の中で、”金融”、そのワーキングを考えていこうと思っています。

 ところで話は変わりますが、「よく銀座に認められたな」と思っていた銀座松坂屋のラオックスに実際に行ってみました。そして直ぐに、「これなら問題は小さいかもしれない」と思いました。

 私の最初の印象を素直に言えば、このラオックスは「家電中心の土産物店」というのが当たっている。その昔、ロンドンやニューヨークにあった日本のデパートの出店としての「日本人向け土産物店」に雰囲気が似ている。

 まず規模。日本の家電量販店という形態は、ビルを一棟丸ごと店にしているケースが多い。その中には、家電に縁遠いモノ(ゴルフ用品、衣料などなど)も置いてあるケースが多いが、とにかく家電量販店と言えば、何フロアにも及んでいる。ところが、銀座松坂屋のラオックスはワンフロアの半分ほどを占めているに過ぎない。「え、これだけ.....」というのが最初の私の印象。以前、新宿の高島屋にあった家電量販店に比べても、規模は小さい。

 第二に、規模が小さいが故に商品の数は少なく、「量販」という名に値しない。店の人に「PCはどこ?」と聞いたら、「ここです」と言ってPCが10台くらい置いてある場所を指した。家電量販店のPC売り場は、通常全部見るだけで30分はかかる。メーカーごとの10数台のPCが置いてある。しかし銀座のラオックスは、各社の製品がせいぜい1〜2台置いてあるに過ぎない。それぞれの商品群がそんな感じです。

 第三に、明らかに顧客を「日本人」以外にも置いているように見える。表示を見ればそれが分かる。店員の方が日本の方ではなく、私が問いかけた言葉にたどたどしい返答をしていた。多分中国語を母国語とする人々のように見えた。つまり、主な想定お客を、外国人、特に中国語圏の人に置いている。各商品セクション、商品の表示もそうです。

 私のツイッターのライムラインには、「店員の約半数が中国語と英語が話せるそうです」という書き込みもあった。私はそれを確かめていないのですが、そうかもしれない。つまりあれは、どう考えても「家電量販店」ではない。日本の、そしてその中心的商店街としての銀座にある海外、特に家電をお土産に持って帰りたい人、特に中国の方々向けの「お土産店」なのです。

 しかしそれにしてもです、「松坂屋はどうなっているのだろう」と思いました。松坂屋6階ラオックスの隣の時計売り場の売り子達も、家電量販セクションに複雑な顔を向けていた。私の行ったときは平日の午後ですから、テレビに報じられたようにはお客はいなかった。まばらだったから、店員の数と表情が目立つ。

 松坂屋にはFOREEVER21が大規模に入っている。こちらは4丁目サイドを中心に何フロアに渡って。そして今回のラオックス。「デパート経営を放棄しているのかもしれないな」とも思いました。また貸しビル? 名古屋の松坂屋はデパートですが、銀座は「寄せ集め店」のようです。

 「これだけintegrityを失っては、かえってお客が離れるのでは」と勝手に想像しました。まあそれだけ苦しいのでしょうが。せっかく銀座にあるのだから、もっとやり方はあるでしょうに。


2010年11月27日(土曜日)

 (14:44)金曜日に銀座で松坂屋のラオックスをちょっと見た後に寄ったアップル・ストアで買ったアップルTVを、「どんなもんやろ」と弄っています。

 説明書なんて面倒だと思って何も読まずに、HDMIケーブル(別売)をアップルTVと家の比較的大きな薄型TVに繋ぎ、アップルTVと家のLAN(有線を使いました)を繋ぎ、両方の機器の電源を入れて、テレビを「地上デジタル」から「HDMI」に移動したら、もうそれらしき画面が出てきた。その段階で、問題なく使えることを確信。リモートコントローラーもちょっと弄ると直ぐに何が何だか分かる。メニューが戻りです。止めてメニュー。

 ポッドキャスを選んだら、家のテレビ画面上に直ぐに様々な番組が出てきた。これは笑いました。当たり前ですが、「ビジネス」を選んだら自分の番組も出てきて、写真が左にあったり、右に行ったりするのは笑いました。まあこれはテレビで見るまでのことはない。大型薄型テレビで見るなら「映画だ」と思っていたら、「アップルTVのOSかなにかの更新、バージョンアップ」がさっそく始まった。「アップルらしい」と。

 ちょうどいいので、その間にアップルitunesのホームシェアリングの対象にしている自分の部屋のPCでitunes を立ち上げて、「映画」からアクションの「Transformers」のレンタルを開始して、ちょうど更新作業が終わったころのリビングのアップルTVに戻って「コンピューター」からitunes を選んだら「ムービー」の所にダウンした「Transformers」が既に再生可能に。ナイス。

 映画はPCの小さな画面で見るより絶対に大きな画面で見た方が良い。間違いなく。最初はアップルTVの映画はダウンロードが終わらなければ見れないと思っていたが、ツイッターの方々が、「ダウンロードが始まったらもう見れますよ」と教えてくれた。それは確かにPCではそうです。

 しかし今確認したら、アップルTVの場合はPCのitunes サイドでダウンロードが終了しないと、アップルTV上のPCライブラリのムービーとしては認識されないことが判明。やはりファイルのダウンロードが全部終わらないと、ファイルがそこにあるPCとは再生の条件が違うようです。

 いずれにせよ、アップルTVによってitunes にあるアセットが全部、それからその都度買えるネット上のソフトウエアが大型薄型テレビで見れるのはナイスです。特に映画は。あとは、どうみてもまだ充実しているとは言えないitunes の映画のタイトル数が増えて、見るに値するソフトウエアが揃うかどうかです。今のところ、「これはいい」という映画はitunes store には少ない。私にとって。アジアの映画を増やして欲しいな。

 綺麗に保存されたutube の映像はそれはそれは綺麗に見られるし、アクトビラなどよりはよほど素早いし、面白いのでは。ソニーのコクーンもそこに狙いがあったのでしょうが、かねて言われているようにTVとPCはこうした接続機器で、一体になっていくということです。

 しかし、このとっちらかるライン(線)はどうにかならないものかと。


2010年11月25日(木曜日)

 (18:44)今日のお題今日午後7時からの東京FM Timelineのお題は、右の写真です。番組のちょっと前に行きつけのカフェに行って「今日はこれです」と言ったら、知り合いのお店の方が書いてくれた。耳かきのようなもので。「ああ、こう書くんだ」と。でも、ナイスでしょ。

 実は私のケイタイには、実に様々なラテアートがたまってきている。これが実に良いのです。一つは全国テレビ放送に出たし、別のもあちこちで活躍している。今夜はFMラジオ放送なので、サイトやツイッターに登場してもらいます。

 ところで、ipad を最新OSに入れ替えたら、画面固定ボタンが音声のON、Offボタンに変わっていた。どえらい変更をするものだと思って、「それはいいが、固定ボタンはどこ」と思ったら、マルチタスク画面の一番左に。何もかもiphone4に似た形にipad がなったということです。

 ま、この二つは用途がだいぶ違いますが。使い方が似ているのは迷いがなくて良い。


2010年11月24日(水曜日)

 (15:44)今読んだウォール・ストリート・ジャーナルの「Attak tests South Korea's limits」という記事は興味深かったな。

 今日の早い時間に、韓国は北朝鮮に「これだけやられっぱなしでいいのか」という国民感情が出てくるのではないか、という話を私は書いたのですが、実は1953年以来韓国は北朝鮮に30回以上も挑発(しばしば死者を伴う)を受けていながら、一度も軍事的に報復を行ったことがない、と書いてある。

 私はうっすらとした記憶で書いたのだが、ウォール・ストリート・ジャーナルはちゃんと調べて書いたのでしょう。同紙には、

Since the Korean War ended in a cease-fire in 1953, North Korea has provoked the South more than 30 times with fatal or life-threatening violence.

It has assassinated members of the South's presidential cabinet and sent commandos to kill South Koreans. In March, an attack by a presumed North Korean submarine sank a South Korean patrol boat, killing 46 sailors.

South Korea's responses have varied from trade sanctions to cutoffs of communication and economic aid, but it has never retaliated militarily.

 と書いてある。そう言えば今年春の哨戒艇沈没では46人が死亡した。それでも韓国が北朝鮮に対してしたことと言えば、国連への提訴(中国、ロシアの反対で中途半端に非難に)や経済制裁だけ。最近では直ぐ米の支援の話が小規模だがまとまり始めていた。無論キャンセルになるだろうが。

 これはあまりにも非対称です。北朝鮮は、「韓国は戦争を恐れている。多少冒険しても仕返しはない。さらに、こちらが折れる姿勢を示せば経済援助でもしてくる」と考え始めている可能性が高い。だから今回一般市民も住む島(いくら係争の島と言っても)を攻撃して、一般人にも負傷者が出た。

 李明博政権もこれは考えどころですね。今回の事件は北朝鮮がやったことははっきりしている。大統領は「何倍にもしてやり返せ」と言いながら、軍には「拡大は防げ」と言っている。これで北朝鮮は、より挑発的な行動に出てくるかも知れない。より多くの支援や、六カ国協議の再開、アメリカとの交渉を求めて。

 北朝鮮には多分かなりの数の韓国人が進出工場などで働いている。韓国の人口のかなりの部分が住むソウルは非武装地帯から30キロの至近距離にある。韓国が動きにくいのは確かだ。しかし、この非対称を続けていたら、北朝鮮はますますつけあがる危険性がある。そこをどうマネッジするかも非常に重要な問題だ。


2010年11月24日(水曜日)

 (08:44)北朝鮮が韓国の大延坪島に砲弾を撃ち込んだ問題に関して、一番難しい立場に立つのは李明博率いる韓国政府です。「これだけやられっぱなしでいいのか」という国民感情の高まりに対して、「事態を悪化させたらせっかく好調な経済に暗雲」という背反的事情がある。

 朝鮮半島を巡る六カ国協議の参加国事情は、韓国以外は比較的はっきりしている。

  1. 北朝鮮=本当はアメリカと直接対話して、後継が進む体制の保証が欲しい。それに繋がる六カ国協議も自国経済への支援を受けられるなら歓迎。その為には、韓国に人的被害を与えても危機を演出する

  2. 中国=本当は北朝鮮の自国を無視したような行動に強い懸念を持っているが、今の北の存在を緩衝地帯としてそのままにしたい基本的方針からすると、一方的に北朝鮮を非難できないし、国連など国際社会の中では北朝鮮を追い込まないように注意して行動する。とにかく六カ国協議の場で北朝鮮とアメリカを出会わせたい

  3. ロシア=中国とはより薄い姿勢ながら、アメリカの北東アジアにおける覇権の増大に繋がるような状況は注意深く避け、時に北朝鮮を非難し、時に国際社会では曖昧な態度を取ってアメリカの勢力圏の拡大を警戒する

  4. アメリカ=アフガニスタンやイラン・イラクに加えて新たな国際紛争を抱えたくないという事情は隠しようがないが、無法な行動を行う北朝鮮に褒美を与えることも出来ないので、締め付けを強くする方向に向かう。当面六カ国協議には応ぜず、中国の北朝鮮に対する働きかけに期待する

  5. 日本=中国への働きかけをしたいが、両国関係は冷却化。アメリカと韓国との連携を基本とせざるを得ない
 しかし韓国は、今年春の韓国哨戒艇の沈没による40人以上の死者に加えて、今回も兵士2人が死亡した。言ってみれば「今年に入ってやられっぱなし」の状態。しかも今回は、大延坪島(一般住民1700人が住む)が砲撃の対象になった。韓国の一般住民が北朝鮮の砲撃の対象になったのは1953年以来だという。北朝鮮は尋常でないことをしている。「そんなのは許せない」という雰囲気が韓国の国内には満ちているはずだし、そう伝えられる。

 しかし戦線を拡大するにしても、韓国サイドにはシナリオがなければならない。北の体制を一気に追い込むのか、追い込まないでも金体制の転換を迫るのか(例えば集団統治など)、それともちょっと大規模なやり返しで済ますのか、このままの沈静化を願うか。

 多分今の韓国には「北の体制を一気に追い込む、崩壊させる」という覚悟は政権にも国民にもない。4900万の国民が2000万の国民を背負い込むのは政治理念(半島統一)としては魅力的だが、コストは大きい。韓国国民の間には、「せっかく得た生活水準を理念の為に手放すのは嫌だ」という意見が実際には強い。

 だったら、「どこで止めるのか」が重要。だから李明博大統領は、国民向けには「(北の攻撃に対して)何倍にもして返せ」と言っているが、軍に対しては「拡大を抑制しろ」と言っている。しかし、その姿勢の維持は「北が新たな攻撃を仕掛けない」という前提が必要だ。

 新たな攻撃がなければ、ウォンや韓国の株価は比較的短時間で戻る。改めて言うが、韓国が今一番失いたくないのは、「経済の好調」だろう。特に若者はそれを失いたくないと私は見ている。この舵取りが難しい。

 北朝鮮の姿勢は、「本当はアメリカと直接対話して、後継が進む体制の保証が欲しい。それに繋がる六カ国協議も自国経済への支援を受けられるなら歓迎。その為には、韓国に人的被害を与えても危機を演出する」というものだが、従来にない不確定要素がいくつも増えている。

  1. 金正日の健康が悪化し、金正恩への橋渡しを金体制としては急ぎたいが、何の実績もない金正恩を新しいトップに迎える雰囲気は国内、特に軍部、一般国民の間でもまだ弱いと思われる。彼は長子でもない

  2. それを確かにするためには、「外に危機」を作るのが一番だと考えている節がある。今回の攻撃はその一環と見られるが、危機を拡大してただでさえ急迫した国内経済を一層緊迫させる懸念もある。大延坪島への砲弾攻撃は、戦後の北朝鮮の政策から明らかに一線を踏み越えた。北朝鮮国内でも緊張が高まっていると思われる

  3. 北朝鮮が欲しいのは、「アメリカによる体制保証」「困窮する経済に役立つ支援」(六カ国協議で得られるかも知れない)の二つである
 しかし、北朝鮮がやっていることには矛盾が発生している。韓国に米支援を求めながら、攻撃をしている。「韓国の方が先に砲撃した」と言っているが、支援を受けながら攻撃するというのは常識的には自己矛盾であり、支援を失うリスクを犯している。国民は飢える危険性がある(今の体制はそんなことは気にしないだろうが)。

 北朝鮮は「何かをすればアメリカが振り向く」と読んでいるようだが、その読みは外れ続け、事態の重大化に進まざるを得ない状況を作っている。後継者に金正恩をした今では、その旅立ちを祝いたいのだろうが、それも素直には進まない状況。

 とすれば、アメリカや日本が取る態度は明確だ。一つは北朝鮮の無法な行為に対して、決して褒美を与えない。その姿勢を堅持することだ。次は「体制の自壊」に備えることだろう。その点において、韓国を支援しないといけない。その場合は必ず「核抜き」でなければならない。核が朝鮮半島の統一政府に引き継がれるのは決して許してはならない。

 いずれにせよ、後継の最中にある、経済的に追い詰められている北朝鮮の情勢は、国内・対外とも極めて不安定化している。事態を「テレビなどの報道で知り」「声明も事態発生から7時間後」(夜中のアメリカは2時間後)の日本の政権には不安が残るが。


2010年11月23日(火曜日)

 (14:44)今週ですが、ある放送波に関する会合に出ていて、「一体波とは何か」を考えていました。日本もそうですが、電波は限られた資源として国家が管理しているケースが多い。その割り当ては凄く議論になる。

 しかし実際には映像とか音楽とか以前は「波に乗っていたコンテンツ」が大量に、多様にネットワークに乗って移動するようになっている。尖閣の映像もそうです。ユーチューブで散々流れた後参議院にほぼ同じ物が提出された。

 「波」の特徴は、一義的には「その時に、受信機の前、または側にいなければならない」ということです。しかしネットはクラウド化が進むと特にそうですが、その都度高速度でダウンロードすれば良い。映像でも音楽でも。つまり場所と時間を問わない。これは便利です。新幹線の中でも、DVDを持たずに映画が見られる。

 だからほっておけばネットがコンテンツの運び屋としてはますます重要性を増すと思う。私自身の場合がそうです。家でもオフィスでも、じっとテレビの前やラジオを横にして放送を聴く時間は短くなっている。ほっておけば本当に少なくなるかもしれない。ネットには独自のコンテンツも多い。

 しかしでは放送で流れた映像や音をあとで見たり聞いていないかというとそうではない。日本の女子がアジア大会で100メートルで優勝したと聞けば見たくなってネットで探す。そしてほぼ間違いなく見られる。NHKオンデマンドではNHKの良質の番組はよく時間を置いて見ている。しかし放送をONにして、「その時に見る」ことは減っている。

 では「波」に反撃のチャンスがないかと言えば、そうとも思えない。テレビ局が作るコンテンツに対する視聴率(というやつ)は全体的に落ち続けているが(特にドラマ系でしょうか)、だからといって高い率を誇るものはある。

 その種のコンテンツを見ていると、「視聴者は波に共通体験を求めているのではないか」とふと思った。共通体験とは、「その時、その局でしか見れない、良質の、心を掻き立てる、ワクワクするコンテンツ」です。だからナショナル・チームがからむスポーツの試合は、本当に良いコンテンツです。勝ちも、負けも日本に住む国民の共通の体験となる。

 だから「波」は絶対なくならないと思う。一気に同じコンテンツを流すツールは必要です。残る。しかし、時差視聴をしても全く問題ないようなコンテンツは徐々にネットにとって代わられるような気がする。最近はドラマの「まとめ見」の傾向が高まっているという。そりゃそうでしょう。毎週その時間に家にいてテレビを見られる人は少ない。

 皆が同じドラマを見ていたのは、そのドラマが翌日の朝から学校の、そして職場の話題になるケースです。話題に入りたいから。私はドラマを殆ど見ないので知らないが、そんなの今あります。だから、「まとめ見」で全く問題ない。

 まだまとまっていないアイデアですが。放送にとっては、「共通体験」が一つのキーワードだと思う。


2010年11月22日(月曜日)

 (18:44)先日、横浜の日産本社に出向いて行ったNIKKEI特集「グローバル経済と標準化の波」での小枝名誉会長に対する私のインタビュー記事がまとまり、アップされました。

 インタビュー記事そのものはここにありますが、いや正直楽しかったですよ。私の従兄弟が小枝さんの筋違いの部署ながら同じ工場で働いていたことが分かったりして。かつ、「私たちも実はやっていたんですよ」という形で、日産が「FUGA HYBRID」を発表した直後だったりして。

 今回のインタビューのキーワードは「複雑性」です。当然問題は複雑系になる。その中で企業の経営者がどうやって判断を下すか。例えば「中国は大きな市場だ。しかし政治的には不安定だ。そうどうする」のような問題も、従来の知識では必ずしも解けない。

 ご一読下さい。大企業の経営者が何を考えているかが分かると思います。無論簡単に分かれば苦労しない。しかし、日産は日本の企業の中では比較的早くこの「複雑性」と取り組んだ方でしょう。なにせ、非日本人をトップに迎えた。多くの試行錯誤があったはずです。

 ところで、最近盛んに本が読める。なぜだか。まあちょっと活字渇望状態だったか? いやいや、移動時間が増えたから。

 今日の午前中に読み終えた本は、「政治とカネ」(新潮新書)という最近の話題の言葉をそのまま題名にした本だ。「墓場にはもっていかない」話が書いてあるというので読み始めたが、まあ面白かった。

 いえ著者は、そう言いながら持って行くと言って最後は隠す話もいくつか出てくる。しかし、比較的素直に自分の政治生活を語っているとも思える。前回の選挙で落選した海部俊樹元首相がご自分の書いたのか、それとも口述筆記させたのか、いずれにせよご自身の政治人生を振り返っている。

 「あの時はそんなこともあったのか」と驚く面もあるが、「やはりあの時はそうだったのか」と納得し、思い出すシーンもある。文章の長さから言うと、やはり「政治とカネ」の今の主人公に対する記述が長い。

 海部さんによれば、その主人公は「付き合うとほとほと疲れる」そうだ。物事をがたがた自分中心に動かしている間はその主人公は生き生きしている。しかしそれが形になると、自分の存在感が薄くなってしまうので、それを壊しにかかる、と書いてあった。なぜ壊し屋なのかに関して、海部俊樹流の解説=自己存在希薄化回避説が面白い。

 ということは、この主人公さんは最終的には出来た形を壊すわけだから、総理大臣にはならない、いやなっても直ぐに辞めるということか。そうかもしれないと思う点もある。この主人公さんの人生を見ると、確かに出来上がりかかると壊す。自己顕示の為?

 「カネ」についても、それほど沢山ではないが、書いてある。札が立つという話が面白い。300万からだそうだ。確かに100万では立たない。立たないお金ははした金だとか。そういう自民党も変わってきている。

 最後は、今の日本の政治に対する心配で終わっている。柳田法務大臣の辞任に関しては、無論この本には書いてない。この本の著者はどう考えただろうか。いずれにせよ、日本の政治が少しは「しっかりしている」と思えるようにするにはどうしたら良いのか、ということに関して、なかなか見通しが立たない。

 一つ一つ出来る事からやっていくということなのだろうが、三すくみ、四すくみ。議員の定数を減らすというのはちょっと回り道ながら良いアイデアだと思うが、その方向性も見えない。

 しかし日本の政治を考える上では、ちょっと面白い本です。


2010年11月21日(日曜日)

 (23:44)「あらら」ってなもんですな。何の気なしにテレビをつけたらアジア大会の女子1万メートルの録画を流していて、日本の福士選手ともう一人日本人選手がいいところを走っていたのです。中国の選手もいなかったので、「おや、福士の優勝か」と思ったら、とんでもない。

 最後の500メートルでスルスルとインドの2選手が前に出て、福士は4番目(バーレーンの選手が一人)でフィニッシュ。インドの女子が1,2位フィニッシュ。正直ちょっとビックリ。

 確認の為に新聞を見ると、「インドが女子長距離で旋風を起こした」(朝日)とあり、私がテレビで見た女子1万メートルで1、2位を独占したのに加えて、「新種目の3000メートル障害もインドのS・シンが中国選手の猛追をかわし、初代女王に輝いた」と書いてある。

 女子1万メートルで優勝したスリードハランという選手は、自己ベストを14秒近く更新したそうで、いくら1万メートルと言っても凄い。前回大会で5位になり、北京五輪は25位だった選手が大きく伸びた。

 インドは先に英連邦競技大会をニューデリーで開催し、英連邦という範疇で大きな大会を開催したばかり。今回のアジア大会も、女子陸上選手などはインド政府の援助を受けて事前に広州で合宿したそうで、スリードハラン選手は「本当にうれしい。最後の2千メートルでペースを上げる作戦がうまくいった」とコメントした。

 筆者は、「ITとカースト―インド・成長の秘密と苦悩」(日本経済新聞出版社)を書いたときから、インドのスポーツにおける世界ランキングに興味を持っており、今までは「オリンピックでメダルを取れない国」(例えば中国に比べて)という範疇にしてきた。

 しかし、インド政府が長い目で「オリンピック開催」を国家目標に置く中で、徐々にインド選手の国際大会でのランキングは上がってくる予感がする。二つあと、つまり8年後のオリンピックなどではかなり活躍している可能性がある。そう思いました。まず女子から。

 インドに関しては、「伊藤 洋一のBRICsの衝撃」の第81回から、インドの特集を続けています。そちらもご覧ください。

 ところで、「グ−グルで必要なことは、みんなソニ−が教えてくれた」という長い題名の本は日曜日の午前中に読み終えましたが、ロケフリの顛末については何も書いてありませんでしたね。コクーンに関してはなぜ終了となったのか分かった。あれが出た段階では私は、「結構面白い」と思ったのに。

 著者が最後にいろいろ日本経済に関して自分の見解を展開しているのを、ある程度の共感を持って読みました。「これからだ」という意気込みにエールを送りたいと思いました。


2010年11月20日(土曜日)

 (23:44)「グ−グルで必要なことは、みんなソニ−が教えてくれた」という長い題名の本を読んでいる。コクーンとかロケフリとか、ソニーが提案し、私も一時注目したものの、その後ちっとも成長しなかった製品の裏話もあって面白い。

 著者は、ソニーに22年間勤めたあとにこの有名な日本の会社に愛想を尽かして辞め、ハローワーク通いを経た後にグーグルに誘われて入社、その後グーグル日本法人の社長になり、しかし社長は1年3ヶ月くらいで辞めて自分の会社を興した辻野晃一郎さん。

 なぜ社長を一年ちょっとで辞めたのかについては、まだそこまで読み進んでないので説明に接してないが、何かの理由があったのでしょう。はっきり言って著者の半生記です。ちょっとビジネス書としては事細かなことまで書いてある。「S」とか「A」とか個人名をぼかしてあるのは、知らない人間にとってはちょっと邪魔。

 しかしこの本が面白いのは、盛田さんに憧れてソニーに入った著者の思いの変遷、特にソニーという会社に対する考え方の変化が事細かく説明されている点だ。一年の留学から帰ったときの上司の態度など、当時から「社員の問題意識」を大事にしない社風がソニーで育っていたことが良く現れている。これじゃ、銀行の海外留学組に対する態度と同じだ。

 「組織はほっておけば必ず内向きになる」というが、この本を読むとソニーという会社が結局「ハードの呪縛」など多くの呪縛から長く抜け出ることが出来なかった理由が分かるような気がする。一つは成功体験であり、もう一つは社員の技術理解の共通化の失敗だろう。特にネットワークの。技術の会社でも、新しい技術への理解では数少ない人が大勢の人を率いなければならない日本企業的環境があることが分かる。

 この本にも書いてあるが、同じように銀座にショールームを持ちながら(正確には測ってないが、200メートルと離れていない)、一方には目を輝かせた若者がわんさといるのに、一方には時間潰しの観光客しかいないという状況は、ソニーという会社とアップルという会社の置かれている環境を端的に示している。

 この本を読んでいて思うのは、「新しい技術の可能性、その展開」に気付く社員は日本にもアメリカにも、そしてアジアにも欧州にもいる。問題はどこのどの企業が、それに気付いた社員のアイデアを企業という組織の中でサービスや製品に昇華できるのか、ということだ。多分それは何かに成功して出来上がった組織では難しい。

 なぜなら出来上がった組織には必ず官僚組織が出来上がるからで、それが変化を拒む。多分ソニーもそうだったのだろう、とこの本を読むと思う。著者のグーグルの社風に関する記述はおもしろい。そうなんだ。

 しかしその自由奔放さがなければ、今のグーグルはなかったとも思える。アップルは一回成功して組織が硬直化した。しかし潰れそうになって、ジョブズが戻ってきてそこを脱した。それが成功のベースになった、ということか。

 変化の激しい技術変化の中では、今の日本の硬直した企業組織ではなかなかそれは難しい。そこをどう柔軟化して乗り切れるのか。それが問題でしょう。


2010年11月19日(金曜日)

 (13:44)新しいエッセイが公開されましたので、ご一読下さい。伊藤洋一の『BRICsの衝撃』で、今回は「インド成長の四つの要因」を取り上げています。今朝の新聞には、インドのいろいろなスキャンダルが載っていますが、それとの関連の話は次回にでも書こうと思っています。

 テレビ番組の予告です。「世の中進歩堂」。BSジャパンの今夜10時24分からです。今回は、『世の中の問題をゲームで解決!?シリアスゲームの可能性に迫る』と題して、日本大学の古市研究室の研究を取り上げます。研究対象は、「シリアスゲーム」。楽しいだけではない。人の役に立つゲーム「シリアスゲーム」を紹介します。

 その研究室で開発されたゲームの一つが『ミューさんテーブル』。マルチユーザ・タッチパネルという、複数の人の入力を同時に認識できる特殊なタッチパネルを使って、コミュニケーションをとりながら音楽を演奏しようという画期的なゲームです。

 このゲームは、複数人数でプレイすることで協調性を深められ、音楽療法としての活用が期待されています。他にも、社会問題や国際問題を想定したシミュレーション形式のシリアスゲームも開発している。

 誰にでも操作しやすく、わかりやすいゲームの技術で、世の中の様々な問題を解決していこうという最先端の研究現場を紹介します。


2010年11月18日(木曜日)

 (18:44)今日の海外の新聞を読んでいて、「真逆だな」と。アメリカのコアの消費者物価は統計を取り始めて以来の「lowest」なのに、中国では食料品、燃料などの物価統制も検討と。デフレとインフレ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルが使っている「dust off」という単語がなかなかいい。もう誇りをかぶっている道具を引っ張り出して使う、という意味。中国はもともとは計画経済の国。その国が今までの放任経済を改めて、昔の手法を持ち出した、という意味だ。うまい。

 アメリカも食料品や燃料の価格統制をしたことがあるが、これはなかなかうまくいかない。なぜなら、価格が高騰している原因は需要過多か供給の過小。しかし、価格を統制すると供給はシュリンクする。価格を統制すると、需要は減らない。中国経済の抱える問題は深まっている。

 それにして、「民主党には優秀な若手が一杯いる」と一般的に言われているのに、何であの法務大臣なんでしょうね。自分もビックリの人事だったらしい。にもかかわらず菅総理大臣は罷免に消極的だとか。

 全部見ているわけではないが、あの法務大臣は国会審議でも言い直しが異常に多い。かつ「二つの答弁で十分」発言が証明しているとおり、自分の頭で考えている兆候が伺えない。野党が言うまでもなく、任命した菅首相が決断して罷免すべきでしょう。しかしそれも決断できない。

 国民の期待を受けて政権を担っているというのに、最近の民主党には全く「何をしたいのか」が見えない。国会審議を時々見ると、大写しになるのは「いかにも眠い」という感じの菅首相の顔。あれはないでしょう。

 自衛隊を「暴力装置」と仙石さんが言ったそうだ。昔の左翼用語だな、と。そう言えば参議院の委員会で委員長が「仙石総理大臣」と言っていたのを昨日聴いた。民主党政権は箍を締めないと、それこそ自壊しかねない。正念場だ。


2010年11月17日(水曜日)

 (20:44)一つ大阪の郊外で良いレストランを紹介します。御堂筋線の江坂駅を降りて、東急インの入っているビルの右サイドから駅から遠ざかる方向にまっすぐ歩く事8分くらいですかね。オーガラージュです。

 ガラ−ジュはそれこそ英語的日本語で言うなら、ガレージ、garageで車庫と言って良い。実際に以前はそこで車の商売をしていたそうで、今でも壁に porche とか車関係の単語が書いてある。そこを改装した。

 出てくる料理がユニークです。火曜日の夜に行ったのですが、このメニューの中では、

 「寒ブリのマリネ"ナム・プラー"風味ブロッコリー芽のサラダ添え」
 「鶏胸肉とポッシェ(ゆで)とフルーツトマトのサラダ」
 「鶏レバーのパテ」
 「牛ホホ肉のポアレ マスタードソース」

 などが美味しかったな。パスタも良かったし。6人で行って、大満足でした。また値段がリーゾナブルなのが良い。ワインを飲まなければ、もちろん1枚で済む。いつも大阪は北か南のレストランにしか行かないのですが、大阪は郊外にも良いレストランがあると感心しました。推薦です。


2010年11月16日(火曜日)

 (23:44)特に目的もなくitunes store に立ち寄ったら、ビートルズの大きな写真が。「そういえば未公開の曲が入ったとか聞いた」(そらみみでした)と思ってそれを探そうとしたら、先に1964年当時の懐かしいワシントンでの講演風景のビデオが。これが結構長い。懐かしい。

 しかも曲も随分ふんだんに聴かせてくれる。映画のタブを見ても、それほど増えているとは言えないが、それにしても「ミュージック」「映画」「app store」「podcast」「オーディオブック」「itunes u」「ping」と並ぶコンテンツはなかなか強力だと改めて思いました。明らかに集積がある。

 「このソフトの集積と戦うのは容易ではないな」とも。12月にはシャープが、来年にはパナソニックがスマートフォンの世界に入ってくると聞く。タブレットも当然出すのでしょう。アップル対抗商品の意味もあるが、ソフトは「集積」という点では今は同社が圧倒的にリードしている。当初はハードでとう勝てるかが勝負でしょう。

 シャープのガラちゃんは、ドコモ、au、ソフトバンクの三社扱いで登場したいらしいが、いろいろ問題が起きていると聞く。サイトを見ると、ガラちゃんを既に大きく宣伝しているのはソフトバンクだけ。3キャリア同時スタートはなかなか難しいようだ。

 そう思っていたら、東京新聞のサイトに「アップルがビートルズ配信を開始 アイチューンズ・ストアで」という記事があった。そうそう、レコードレーベルの「apple」とアップル・コンピューターとは係争関係にあったんだ。思い出した。itunes がビートルズの曲目を入れたこと自体がニュースだったんだ。

 米電子機器大手アップルは16日、音楽配信サイト「アイチューンズ・ストア」で、ビートルズの楽曲の販売を開始した。アップルはこれまでビートルズ側と係争関係にあり、曲を扱っていなかったが、ビートルズ側や経営難の英音楽大手EMIグループと合意に達した。

 今後、ビートルズの曲をアイチューンズを通じて購入し、デジタル携帯音楽プレーヤーiPod(アイポッド)などで楽しむことが可能になる。

 ビートルズが1968年に英国で始めたレコードレーベルの名称が「アップル」だったことから、ビートルズ側は米アップル(当時アップルコンピュータ)が商標権を侵害したと主張、係争が続いていた。


2010年11月15日(月曜日)

 (21:44)収録などでチェックできない間に、ちょっと驚きのニュースが二つ。一つは白鵬の連勝ストップ。もう一つは、日航の整理解雇着手に関する発表。

 白鵬については、昨日の栃の心戦を見ても「これは強い」という勝ち方で、双葉山の連勝記録に接近するにつれて緊張感の高まりなどが予想はされたが、九州場所の2日目で連勝ストップとは。

 まだVTRを見ていないので分かりませんが、ちょっと油断したんでしょうかね。「再び着手へ」ということでしょう。満身創痍の魁皇に初日が出たのは嬉しい。日曜日の取り組みは見ていて痛々しかった。

 白鵬が負けたのとほぼ同じ時間(午後6時前)に、会社更生手続き中の日本航空は「整理解雇によって人員規模の適正化を図らざるを得ないという決断に至った」と発表。『今後、解雇の基準などについて労働組合との協議に入るが、「時間が許す限り希望退職の応募を受け付ける」』(朝日)という。

 発表によれば、希望退職の最終募集にもかかわらず、「パイロット約110人、客室乗務員約90人の計約200人が目標に届かなかった」という。休職者など約50人を含め、「最大で計約250人が解雇の対象になり得る」という。

 「整理解雇」という言葉自体が凄まじい。日航と言えば、ずっと日本の就職市場で「もっとも人気のある企業」だった。それが企業の縮小を余儀なくされている。何が悪かったのか。深く考える価値がある。


2010年11月14日(日曜日)

 (23:54)狭山の霊園とその近くのレストランで叔母の三回忌。車で行ったのだが、結構車が多い。どうしてかなと思ったら、西武球場が満車。かつ、球場の周りをぞろぞろ人が歩いているが、軒並み犬を連れている。あとで調べたら「スーパードッグカーニバル2010」というイベントでした。しかし道路は渋滞はしていなかった。時間が良かったのか。

 日産を退職後GMに行って今はデトロイトに夫婦で住んでいる従兄弟が法要のために帰国していたのでしばらく話したのですが、結構面白かった。7年契約で行っていて、再来年くらいまでまだ契約が残っている。品質管理、特に新車のドア周りのライニングを管理しているそうで、部下のある身。

  1. 危機前のGMと危機後のGMはやはり相当変わったらしく、現象的には企業としての意思伝達がすべてデジタル化された。例えば会社からの通達から給与明細、保険関係の書類などすべてがデジタル化。全部当然英語だから、全部読むのは大変と
  2. 出張の領収書も直接送付することはなくて、ファックスで送ったで、おそらくそれをスキャナーで読み取っているらしい。紙が依然として企業の通達の主力を占めている日本の企業から見ればかなり進んでいる
  3. 部下のいる身なので、部下に関する勤務評定は当然しているのだが、下の人間も上の人間の勤務評定などをしているのだそうで、かつ第三者(納入業者)なども評価をするのだそうだ。いわゆるクロス評価の体系。複雑でしょうね
  4. 会社がああいう状況になって報酬の引き下げもあったらしいが、一方的ではなく「受諾 拒否」のどちらかを従業員に選ばせるのだそうだ。ただし「拒否」のケースはレイオフか
  5. 部下にはいろいろな人種の方々がいるらしい。それほど英語が堪能ではないので、まあ苦労している。しかし自分が依然として働けているのは、日本の技術の高さ故か.....
 など。彼から最初に「GMから誘われて....」という話を聞いたのは5年前くらいでしょうか。確か高円寺南口のコーヒーショップだった。「へえ」と思った。あれからもう5年もたったのかという気持ちですが、その間にGMで起きたことと言えば非常に大きかった。

 そのGMが中国の投資家を含めて、複数の国家ファンドにIPOをするかどうかと話題になっている。GMは単なる「米企業」ではないので、アメリカ政府も詳細を検討するでしょう。例えば外国資本の合計が何%を上回らないとか。

 しかしどっちにせよ、過去5年に変わってしまった同社の命運。今はGMの新車はアメリカでよりも中国で台数ベースでは売れるのだそうだ。GMは以前から中国ではよく売れる。あと5年たったら、世界の自動車市場は多分様変わりでしょう。

 HVが主力か、EVが主力か。いろいろな車が出てくるでしょうね。変化スピードは上がっている。


2010年11月13日(土曜日)

 (23:54)今週は馬に食わせるほどの国際会議と首脳同士の会談がソウルと横浜で行われ、今もまだ進行中のものもありますが、全体的な印象を言えば、「なんとか箍は外れなかった」が、しかし内側のどろどろ、蹴り合い殴り合いが収まったかと言えばそうではない、というものか。

 世界とはまあそんなものかもしれない。いつも問題を抱え、あちこちの国が自己主張を続けている。しかしそれが良いのか良くなかったかの問題は別にして、戦後のどの時期よりも強い傾向として顕現化し、流動化が加速しつつあるように見えるのは、私だけか。

 明らかに戦後をリードしたアメリカのリーダーシップは落ち、しかしだからと言って中国が世界をリードする国内政治体制を持っているわけでも、世界の公益を考えて行動しているわけでもない。残ったのは、「箍は外れていないが、何とも行方知らずの、かなり不安定な、リーダーシップ不在な世界」ということかもしれない。

 「G19+1」。ソウルで開かれたG20はそう揶揄されたが、実際に私の記憶でこれほどアメリカが経済の分野の会議で孤立したのを見たことはない。常にアメリカは世界最大の経済国であり、世界の多くの国にあっては「最大の輸出先国」だったから、それだけで存在感があった。

 今はアメリカの側が、「まだアメリカにお宅も輸出しているんでしょう。だからアメリカ経済が健全化するための金融緩和は必要なのよ」と語りかけて説得しているという図式だ。

 G7は明らかに外れつつある「アメリカという箍」の代わりに、「G20という頼りない、緩やかな箍を一応はめた」印象がする。イギリスのキャメロンは言う。「G20がなかったら、世界各国は勝手なことをしていた。だから意義があった」と。

 しかしだからといってソウルのG20が「成果があった」とは言えない。対立を残したまま来週の市場を迎えるわけにはいかないから、「対立よりも合意」を前面に押し出して会議を終えたが、一番難しい実質的な合意、拘束力のある合意を「一年後にできればいいね」と先送りした。アメリカの言う数値目標だ。一年たっても、中国やドイツが簡単に折れるとは思わない。

 APEC。ナイス。将来は共同体。ナイス。しかし、日韓、日中、日ロにこれだけ懸案があるなかで、共同体への深化は容易なことではない。EUは一応全部民主主義国家の固まりだ。しかしアジアで間もなく最大の経済国になる中国は、今回オバマが歴訪の対象から意図的に外したように、民主主義にはほど遠い異質な国だ。

 日本の菅首相は、中国ともロシアとも「会談」はした。22分と40分。どう考えても「お互いの原則的立場を述べあっただけでも過ぎ去る時間の会談」にしか見えないが、それでも「首脳同士が会った」ということは、決定的対立、または戦争という事態にならない努力が払われたということだ。

 しかし、日本と中国、日本とロシアの強力の基礎が固まり、両国関係が劇的に改善したわけではない。メドベージェフはツイッターで、「日本の首相に会い、解決できない論争より経済協力の方が有益だと伝えた」と書き込んだ。22分の日中会談を中国は「時候の挨拶」と正式な「会見」の中間に置いたという。1時間20分も会談した米中の会談とはやはり違う。

 ということは、首脳同士がちょっと会えたくらいで日中、日ロが劇的に関係改善を図ったというわけではない。テーブルの下では蹴り合いが続いている。しかし忘れてはならないのは、中国もロシアも「政治が国内世論(中国)や次の選挙(ロシア)に縛られている」ということだ。

 最近よく思う。実は世界で一番世論に弱い政治に陥っているのは中国ではないか、と。だって、あの国の政治家で国民からマンデートを受け取っている、つまり選挙で当選している指導者は誰もいない。

 4年に一度でもマンデートをもらえば、「だってあなたたちが私を選んだのでしょう」と言えるが、最近の中国では問題が起きるたびに「世論」(ネットを含めて)のマンデートをもらう、少なくとも承認をもらわなければならない状況になっている。これは危ういことだ。

 ASEANの会議でだったか、写真撮りでの温家宝は日本の菅首相との距離を保とうとしたという。並んで撮られて中国でその写真が批判に使われてはかなわない、という温家宝の秘書の思いだったという。この席で日中会談を拒んだのも、この秘書だったという。秘書は、「こんな国内政治情勢(中国の)の時に菅首相と会談するなんて、温家宝の中国での立場が危うくなる」と考えた、という。

 私は土曜日一日出ていたので見ていないが、菅首相と会った最初の方は胡錦濤の顔は硬直していたと聞いた。「14日にも反日デモを」という国内世論のあるなかでは、「にこりとも出来なかった」という事情もあったらしい。中国では今、「その時々のマンデートとも言える世論が政治を動かしている」ということだ。

 「世界はうまく行っていますよ」「うまく行かそうと努力していますよ」という一連の国際会議、そしてそこに出席する世界の首脳達の会談。そして「枠組みは一応残った」という状況。これは考えようによっては、キャメロンの言うように「ないよりまし」で良いことだ。国王が勝手に戦争を始められた時代よりは、よほど進化した。

 しかし、問題は残った。G20で討議されなかった問題としては、欧州の債務危機があり、途上国のインフレを収めるプラセスで世界の市場が調整を余儀なくされる寸前のところにあることも明らかになった。金曜日に上海の株が5.2%落ち、金価格が1400ドルを割ったのは、いったんの相場の終わりを意味するかもしれない。

 しかし新興国や金市場に回っていたお金が、単純に先進国に戻ってくるとも思えない。そう一連の会議や会談は終わった。しかし、life goes on.........。

 菅政権は外交に政局の打開を図った。しかしそれが出来なかったことは明らかだ。支持率は20%台もあると聞く。菅首相は2回支持率を60%台に乗せた。しかしいずれもなった直後だ。その後は落ちる傾向が2回続いている。

 政権は、そろそろ指導力を発揮しないともたなくなる可能性がある。


2010年11月12日(金曜日)

 (16:11)とりあえず楽しみが増えたと言うことでしょうか。iphone ではちょっと苦しい。しかしipad でなら映画を見る気も起きる。ある程度スクリーンが大きいので。

 昨日忙しかったので出来なかったのですが、今日は「スタンバイ」で一つのネタとして取り上げたこともあって、出番の合間にいつも持って歩いているipad にitunes storeから映画をダウンして、見始めました。最初「ありゃ、どこに(ダウンロードサイトが)」と思ったが、itunes に「映画」というタブが出来ていた。

 1000タイトルというウリだったが、見るとあまり見たい映画がない。しかし先日ツイッターで紹介された「イヴの時間」がいいと思ってダウンロードを始めたのですが、何と30分以上かかった。TBSの無線LANが特に重いと言うことはないでしょうから、まあ「ダウンロードに時間はかかる」ということです。

 最初はストリーム方式がいいのに、と思ったのですが、気がついたらダウンロードもいいことに気がついた。例えば私の場合は大阪に行く新幹線に乗る前にレンタルで映画をipad にダウンしておけば、新幹線の中で見ることが出来るということになる。これはなかなか良い。ストリーミングだと切れる。

 朝からこの文章を書くまでの間に「イヴの時間」に加えてもう見たことがある「Sex and City」の二本をダウンロードしました。それを合間を見て見ました。後者は映り具合をチェックするため。PCで。ipad で「イヴの時間」を見ましたが、とっても綺麗。なかなかの実力だと思いました。

 「イヴの時間」も面白かった。アンドロイド・ロボットが限りなく人間に近づいた時代の、ロボットと人間の関わり、関わりのあり方を取り上げた作品で、ペットと人間の関係も複雑ですが、アンドロイド(人型ロボット)になったらもっとややこしくなるだろうな、というある意味切迫感のある映画です。この映画は、「間の取り方」が面白い。時間的にも映像的にも。

 課題は多いですよ。ダウンロードの時間がもっと短くならないか、もっとタイトルが増やせないか。ハリウッドの映画なんていいから、中国や韓国、それにインドやイランの映画がタイトルとして増えればいいな、と思いました。アクトビラとは暫くお別れですな。

 古い映画も増やせれば、それは「ロングテール」になる。いいことじゃないですか。12月にはシャープからガラちゃんが出る。ガラちゃんはどんなサービスを用意してくれているのか。

 楽しみ。


2010年11月11日(木曜日)

 (11:11)結構なゾロの日なので、せっかくという気持ちもあって午前11時11分に仕上がるように書いています。1111年11月11日11時11分に世界で何が起きていたのかは、タイムマシンがなければ分からない。

 大曲の駅を出たところです。秋田から東京の新幹線「こまち」はまだ乗っていなかったことに気がついたのと、大曲から秋田空港は1時間かかる。だったら大曲から新幹線に乗った方が....と思って。

 大曲の新幹線ホームは面白い。列車が入線してくる方向はブロックしてある。つまり列車は入線方向とは逆方向に大曲の駅を出て行く。大曲駅で列車の進行方向を入れ替えているのです。なぜだか知りませんが、盛岡での結合の為ですかね。

 大曲と言えば花火。講演会場が大曲だったので、主催者から「大曲の花火 ベストコレクション2010」というDVDを頂いちゃいました。昼花火が面白かった。この文章を書いたら列車の中で鑑賞する予定。昨日の講演後の懇親会場でも少しDVD紹介していた。自慢なんでしょうね。

 その気持ちは分かる。私も諏訪湖の近く、つまり花火で有名な街に生まれていますから。「来年は是非見に来て下さい」と誘われたので、機会があったらと思っています。どっちが凄いか....という問題意識を持って。

 ところで番組の紹介です。明日午後10時24分からのBSジャパン「世の中進歩堂」は、『食品開発の最前線に迫る!画期的な食品や食品開発技術が結集した一大イベントに潜入!』をお送りします。

 毎年約4万人の来場者を集める食の一大イベント“食品開発展2010”というのがあるのですが、今年も開催された。その名の通り、食品開発に関する最新技術が公開されており、画期的な食品も展示されていました。そこにカジマリが潜入。

 デザートのトッピングに適したビーズ状のゼリーや、世界で初めてニンニクを発酵させて作った黒ニンニク醗酵酢など、新しい食品や健康食品が続々登場。さらに食品開発のための最新装置も紹介。食品開発の分野で進む世の中の進歩を梶原麻利子のリポートでお送りします。

 もう一つエッセイです。man@bowの金融入門講座。ここでのエッセイ掲載も30回を迎えようとしている。


2010年11月10日(水曜日)

 (14:35)秋田は久しぶりです。多分2年ぶり。去年は確かもうちょっと南の天童だったと思った。しかし天童は山形なので、秋田はその前の年。日本海側には一年に一回くらいお邪魔する。

 今秋田空港から南に向かって秋田道を走っていますが、迎えに来て下さった方は、「今年の秋田は変なんです」と。夏から直接冬になったような感じで、木々が紅葉する前に、葉っぱが枯れて落ちてしまった。「急激に寒くなりすぎた」ということのようです。確かに山を見ると、もう葉っぱがない木が多い。

 伊丹から秋田空港を飛んでいる間で一番大きな出来事と言えば、今朝の読売が報じ、その後各紙が後追いした「尖閣ビデオは、神戸のインターネットカフェから投稿された」を裏付けるように、海保職員が「自分がやった」と上司に申し出た、というニュースでしょう。

 海上保安庁の鈴木久泰長官は10日午後の衆院予算委員会で、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐるビデオ映像が流出した問題で、「第5管区海上保安本部(神戸市中央区)の神戸海上保安部の巡視艇乗組員が『自分が流出させた』と上司に申し出たとの報告を受けた、と述べたという。

 この申し出が本当かどうかは今後の問題です。しかし限りなく本当のような気がする。実際に国境警備に当たっている巡視艇乗組員というのが気になる。もし本当だとすると、いろいろな思いがあったのでしょう。  守秘義務違反は確かに良くない。しかしそもそも敏速にあのビデオを公開していたら、こんな事件は起きなかった可能性も強い。それが私が持った印象です。

  1. 「日本の巡視船が進路を妨害したので中国の漁船が日本の巡視船と衝突した」という中国の主張は完全に間違っている
  2. 漁船と称する中国の船が、乗組員の態度を含めて「とても漁船には見えず、工作船のような印象を受けた」
 という私も持った印象が国際的にも広まった可能性が強い。一番重要なのは、「何が起こったのか」という事実関係です。この話が本当かどうか、どのような狙いで投稿されたのかにもよるでしょうが、私にはむしろこの巡視艇乗組員に対する同情論が高まる可能性もが高いと思う。一つ確かなのは、「菅政権の悩みの種が増えた」ということです。

 ところで、ちょっとニュースをチェックしていたら、「自由なき繁栄は貧困」というオバマの言葉がネットに。インドネシア訪問中のオバマの里帰りの言葉。ジャカルタ市内の大学で演説。民主化を進めながら経済成長も遂げたインドネシアを例に「自由なき繁栄は、貧困の別の姿に過ぎない」と述べた。

 民主主義と経済成長を両立させる重要性を強く訴えた。これは明らかに中国に対する皮肉です。いい言葉だと。まあ中国の首脳は、「じゃ、このでかい、統制しがたい中国人を誰がどうやって統治するのだ」と反論するでしょうが。


2010年11月09日(火曜日)

 (21:35)「ツイッター飲み」があるなら、これは「ツイッター見」

 久しく映画を見ていない、見る気がする映画がないと思っていたのですが、「そうだ、ツイッターで聞いてみよう」と今日の午後問いかけたのです。「最近のご推薦の映画は?」てな調子で。いくつかの候補を皆さんが出してくれて、今日はタイミング的、趣味的にNowhere boyを見ました。日本語のタイトルはいけていない。「行き場なき少年」といった感じ。

 良かった。ジョンの生い立ちについては今まで書いた物ではいくつか読んでいて知っていたが、「そういうことだったのか」と。無論、映画がすべてを語り尽くしているわけではない。しかし、凄まじい葛藤の中で彼が育ったことはこの映画で分かる。

 無論、リンゴはまだ出てこない。ジョンのサイドから見ているので、ジョンがいて、そこにポールが来て、そしてジョージが加わる。なかなかエクサイティングです。しかしあくまでもこの映画は、ジョンと彼を取り巻く人々の話です。ビートルズに関する話ではない。ハンブルクに行くところで終わっている。

 「Thanks To」の最初に「Yoko Ono」とあったのは自然でしょうし、当然でしょう。埼玉のビートルズなんとかは閉鎖されたが、ビートルズ、その中でもニューヨークの73丁目のダコタハウスの前で殺されたジョンには日本でファンが多い。あれは1980年12月8日でしたっけ。マンハッタンのタクシーの中で運転手から教わった。「撃たれたぞ」と。

 映画の中でジョンがポールに一発食わせた後、ポールを抱きしめるシーンがあって、その瞬間には、ポールがジョンに送ったレクイエムの「Here Today」を思い出していました。いい曲ですよ。

 エルビスを見て、ロックンロールにあこがれたジョン。そのジョンに音楽を教えた実の母。そして最初は拒否の姿勢を示しながら、最後はジョンに高価なギターを与えたミミ。俳優達のイギリス顔が記憶に。ちょっとしばらく思い出しそうな映画です。

 s_uemuraさんには感謝。ショーンはまだ音楽をやっていると聴きました。小野洋子さんもかなり歳はとったでしょうが、まだご健在。まだ蕎麦好き? そう言えば、2002年に「私のビートルズ論」なんて文章も書いたな。懐かしい。

 正直言って、今でも私のカラオケでの得意技の一つは、「Let it be」を日本語に訳しながら歌うことです。私の身の回りの一部の人には公開している。


2010年11月08日(月曜日)

 (12:35)ちょっと単純化しすぎているきらいはあるが、「うまいな」と思った文章は、ロイターの記事でした。

WASHINGTON (Reuters) - The Group of 20 is beginning to look more like the G19 plus 1 as emerging and rich countries alike accuse the United States of breaking a vow of unity.

This week's G20 summit will require every bit of President Barack Obama's diplomacy skills after the Federal Reserve embarked on a new $600 billion bond-buying spree, sparking criticism from four continents that the U.S. central bank was ignoring the global repercussions.

 G20は「G19+1」のように見える、という書き方です。それほど、アメリカのQE2(量的緩和第二弾)に対する各国の目は厳しいと言うことです。今朝このサイトに書いたのですが、それに対するアメリカの反論は
  1. 世界の多くの国はアメリカへの輸出によって自国経済を回している。QE2はそのアメリカ経済が健全性を高めるための措置であり、副作用を伴うものであるとしてもアメリカと世界の経済にとっては必要な措置だ
  2. 供給した流動性が一部の途上国で資産バブルやインフレ圧力を引き起こしていることは確かだが、インフラ整備や投資に必要な資金を潤沢に得られるという意味では、先進国の量的金融緩和措置は途上国にとってもメリットがある
 というものでしょう。しかし「G19+1」という状況は、アメリカが何らかの妥協をしなければ、自らが目標とする「不均衡是正の枠組み作り」を進められないことを意味する。今の世界構造から言って、「G19+1」が決定的に決裂することはあり得ない。どちらも相手方を必要としているので。

 どのような落としどころができるかが注目です。中国からは、周小川・中国人民銀行総裁の対FRB批判とは違う妥協的な発言が政府高官から出ている。不均衡是正は1970年代からの課題であって、建前としては否定できない。しかしそれを言い出しているアメリカが一方で「利己的な金融政策」(一部の途上国の主張)を実施しているから素直には飲めない、特に数値目標は飲めないという状況でしょう。

 それにしても、過剰流動性がますます増大する中で、多くの途上国が恐れているのはその規模ではなく、スピードでしょう。資金の動きはクリック速度です。あっという間に途上国一国のGDPの何%かが動く。これは途上国の当局の制御能力を遙かに超える。

 今週の一連の国際会議は、何らかの合意、声明を生み出すだろう。しかしこの絶対的に恐るべき規模に達した世界的な過剰流動性を減らす方向を示さないと、市場の動揺は続くと考える。

 今のところ世界の流動性が減少する方向に向かう可能性はない。


2010年11月07日(日曜日)

 (23:53)最初はあまり興味もなかったが、ロッテ応援基調で日本シリーズをしっかり見終えました。全体を通して言うと、内容は結構大味で、”凡”と感じる部分も多かったのですが、それでも最後の方の試合は緊迫していて面白かった。6戦は見終えて「なんか損した」と思いましたが、今夜の7戦は面白く全部見ました。

 非常に両チームが似ていると思ったのは、「いったい誰がスターだか分からない」という点です。ロッテでは西岡や成瀬がそうなんでしょうが、この二人が特に活躍したわけではない。今江、清田なんかの方が勝負強い印象がしたし、事実今江はMVPになった。最後の一点(8点目)は、あのバットを極端に短く持った岡田ですからね。いや素晴らしい当たりだったが、スターのバッティングではない。大道スタイル。

 中日だって和田はスターという印象はしないし、岩瀬はちょっと落ち目。浅尾は若すぎる感じだし、森野は最後にけがをしちゃった。スターは怪我をしてはいけないのです。

 セパで二〜三チームは格落ちがあるのだが、日本のプロ野球の上位半分のチームのチーム力は拮抗してきているということでしょう。あとは指導者がどう動機付けするか。西村さんはうまかったのでしょう。素晴らしい。

 何故ロッテを応援したかというと、好きだった今岡がたまに出てくるというのと、「3位からの日本シリーズ優勝は初めて」という点。いいじゃないですか。ロッテはシーズンも一生懸命戦って3位。パリーグの上位4チームは力は近い。

 力が似たチームが多いからパリーグは強くなるのか。思い出せば、交流戦もパリーグが上位6位を独占した。そして日本シリーズもパ3位のロッテがセの覇者の中日を破った。パリーグが強いと言うことでしょう。セリーグ人気はまた下がる?

 ところで、最近の一連の出来事で「下がっているだろうな」と思ったいましたが、今日のネットサイトで見ると、読売新聞社が5〜7日に全国世論調査(電話方式)を実施。それによると、菅内閣の支持率は35%となり、前回調査(10月1〜3日実施)の53%から急落した、という。

 これは参院選直後調査(7月12〜13日実施)の38%をも下回り、発足以来最低。不支持率は55%(前回37%)で、支持率を逆転した。「尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や円高・デフレの経済情勢、小沢一郎・民主党元代表の「政治とカネ」の問題への対応などで不満が高まり、内閣支持率を一気に引き下げた。菅首相は厳しい政権運営を強いられることになりそうだ」と読売。

 政党支持率は、民主が28%(前回36%)に落ち込み、自民は23%(同16%)に上がったという。まあまだどっちもどっち。この人には政治を託せるという人、政党はない。


2010年11月06日(土曜日)

 (23:53)なんか笑えるな。一方で気の毒なような。フジテレビも乗りかかった船でやめられなくなったのでしょう。だって、ロッテが優勝するかもしれない。

 しかし試合は5時間を超えた。午後11時過ぎ。フジテレビも4時間くらいは考えていたかもしれないが、その間に野球で契約したコマーシャルは全部消化して、後の時間は映画放送に関連して契約したCMのみ。となると、長くなった野球放送では流すCMがなくなった段階で「フジテレビはNHKになった」状態。

 しかしCMが全く流れない民放の放送をこれだけ長く見ることが出来るのは珍しい。いや全く珍しい。試合は緊迫していましたよ。2−2だから。しかしちょっとミスが多い。バントが3回連続で小フライ。決められない両チーム。

 結果が出たのは午後11時53分。引き分け。単純に計算して5時間43分の試合。ああーーーー疲れた。

 ところで、尖閣関連の流出映像を見た限りで私が重要だと思ったことは二点です。

  1. 「日本の巡視船が進路を妨害したので中国の漁船が日本の巡視船と衝突した」という中国の主張は完全に間違っている
  2. 漁船と称する中国の船が、乗組員の態度を含めて「とても漁船には見えず、工作船のような印象を受けた」
 でしょうか。あくまで私の印象ですが。最初からこのビデオを出していれば、中国が例の主張を展開するまでもなく、世界が中国の不法行為を認識できたし、日本国民もそう理解できたということです。何よりも重要なのは事実関係です。

 それにしても、民主党のいわゆる「政治主導」と称する間違った官僚たたき、官僚無視の手法が様々なデータの流出の遠因になっているような印象を受ける。無論流出そのものは良くない行為ですが。官僚の人にも高い意識をもって働いてもらわないと。

 今日気になったニュースは「中国雲南省で暴動、党機関紙が異例の報道」でしょうか。中国は相変わらず忙しい。ノーベル平和賞の式典に出席するなと各国に圧力をかけたり。そんなことをすれば逆効果なのに。ニュースは以下の通り。

 中国共産党機関紙、人民日報(電子版)は4日、中国雲南省昭通市で2日、地元で進む道路工事に反発した住民1000人余りが警官隊と衝突し、双方の十数人が負傷したと伝えた。住民らは道路を封鎖し、車両十数台を壊したという。同紙が住民の過激な集団抗議行動を報じるのは異例。

 反日デモの体制批判への転化や、中国語の強制使用に抵抗したチベット族のデモなど、中国各地で住民不満の噴出が相次いでいる。報道を通じ、住民生活を重視する党の姿勢をアピールし、国民の間で高まる政権不信を沈静化させる狙いがあるとみられる。

 中国人権民主化運動情報センター(本部・香港)の情報では、住民らは道路工事に伴う立ち退き補償に不満を持ち、パトカーなど車両50台以上を破壊。2000人超の武装警察官が出動し、一帯の警備を強化しているという。


2010年11月06日(土曜日)

 (11:00)それにしても、これだけ世界中からブーイングが飛んでくる金融緩和策も珍しい。基軸通貨国だからこそですが、QE2と言ったかっこいいネーミングはあるが、その実は「自国経済立て直し」を名目にしながら、世界中にインフレ圧力を輸出しかねないものだから、当然だろう。

 日経のサイトには、『仏AFP通信によると独ショイブレ財務相は4日、「こうした施策で米国の問題が解決できるとは思えない」と批判。「世界に余計な問題を課すことになるだろう」と語り、過剰流動性が膨らむことに懸念を示した。』とあり、さらに『仏ラガルド経済・産業・雇用相も同日、「米国の決定はユーロに悪い影響をもたらす」などと不満を表明した。』とある。

 一方中国人民銀行の周小川総裁は北京での講演で『米連邦準備理事会(FRB)の追加金融緩和策について「グローバルな観点からは必ずしも優れた選択といえず、世界経済に副作用を及ぼす」と述べた。米国の金融緩和で世界的に過剰流動性が膨らみ、中国など新興国に投機資金が流れ込みかねないことに懸念を表明したものだ。』と日経は伝えている。

 インドやオーストラリアがFOMCの直前に利上げしたのは米金融緩和に対する事前抗議の意味があるだろうし、昨日の商品市場では金相場が1400ドル直前まで上昇した。日米の金利ゼロに対して、インドを先頭に資源国・新興国で上昇する高い金利、その一方でアイルランドのように金融危機で高い金利を余儀なくされる国。どう考えても世界経済はゆがんでいる。

 FRBも苦しいところが。中間選挙に見られるように、米オバマ政権は政策に対する機動性をほぼ今後2年間失う。政府が機動性を失った中では、中央銀行への負荷は増す。プレッシャーは強くなるが、「では今の金融政策の継続でアメリカ経済が良くなる」という保証はない。

 このところのFOMCでずっと緩和策に対する反対票を一人で投じている米カンザスシティー連邦銀行のホーニッグ総裁は5日に、「将来のインフレ圧力を引き起こす恐れや、問題を引き起こすような安易な貸し付けなどを後押しするのではと懸念している」と述べた。金市場などを見ると、「既にインフレ圧力は起きている」と言える。

 先日の日経CNBCの経済闘論でも言ったのですが、私の見方は安易に金融緩和をしてもアメリカ経済は回復への軌道には乗れない、という見方です。だってアメリカ型の信用のベースが壊れている。それを修復しないとお金が機能的に回らずに、イージープロフィットを求めて海外に流出する。それが途上国や資源国でインフレ圧力となっている。

 ホーニッグ総裁が「バブルを起こさない健全な住宅市場のためには、政府の介入や公的補助金を廃止、低減すべき」と述べているのは重要な指摘です。ブッシュ時代にも政府は安易な景気刺激策として、「すべての人が家を持つことは良いことだ」と持ち家を促進した。70年代、80年代の日本もそうだった。

 しかし政府の政策で巨額商品の販売を促進するスキームを続けると、必ず本来買ってはいけない層にまで購買意欲が広まって、「借金での購入」が増える。その借金がシステムの先行きを不安定にする。「需要増→価格高騰→維持不可能→価格暴落→返済不能負債の増加」となって経済活動を長くにわたって不活発にする。

 しかし政治家は待てないのです。夢を売りすぎているから。世論も短期間の政治期間の間に、「この期間の経済のパフォーマンスが悪いのは、その時の政権を取っていたあいつだ」と傾く。かくして、政治は「夢を売り、しかしそれを達成できない人達の集まり」となって国民からそっぽを向かれる、という繰り返し。

 世界経済は激しいインフレの局地戦を各地で展開しながら、日本やアメリカを中心に「デフレ圧力との戦い」を継続することになる。このプラセスが均衡を保てるかには保証はない。物価水準が大きく違う国のグループが経済現象として睨み合っている面があるので、物価水準の変動がそれを徐々にならしていってくれると考えることも可能だが、もっとアジャイルなお金の動きが、なだらかさを失い、世界各地に異変を起こすかもしれない。少なくとも世界経済は不安定な展開をたどると言うことになる。

 ところで金曜日は実に久しぶりにバブちゃんshiraちゃんと三人がばかっぱなしの会を赤坂のロスプラトスで。この二人のサイトは長らく死んでいるが、サイト保持者はちゃんと元気で生きている。ロスプラトスは以前はもっと乃木坂に近い方にあってその時は何回も行ったが、今の場所に移転して以降は今回が初めて。

 ばかっぱなしといっても、この3人が集まれば経済、政治からITまで話に花が咲く。しばらく続いた話題は、「アメリカ経済の現状とそれに対するFRBの金融政策の有効性、その政策が世界に及ぼす影響」でした。

 一つだけ行動計画としてまとまったのは、ビッグバン時代のネット活用術を書いた仲間を中心に、年末か年始に集まろうという話。ちょっと懐かしい。楽しみが増えた。


2010年11月04日(木曜日)

 (16:00)ドル・円相場(80円台の後半)を上回るオーストラリアドル・円相場(81円台の前半)を見るのは、感慨深いものがありますね。対米ドル等価を上回る豪ドル。そういえば先日、「加熱するオーストラリアの不動産市場」という記事がウォール・ストリート・ジャーナルに載っていた。

 まあ円は対ドルで先行して上がっていたから、一気に80円を突破するようなことはないと見ていたので、81円アラウンドで動いているのは予想通りといえば予想通り。明日にまた関門が待っている。案外雇用統計が良ければ、ドルには反発のチャンスがある。

 それにしてもオバマは酷い負け方ですね。「雇用を増やせなかった」というのが敗因らしい。しかし、オバマのやり方にノーを突きつけて「やっぱり小さい政府だ」と言ったところで、職は多分増えない。

 ちょっと古い言い方をすれば、途上国との「大競争時代」ですから。結局先進国としてのアメリカが直面している問題は、日本がずっと直面してきた問題と同じです。圧倒的に安い労働賃金を持つ途上国の台頭のプロセスの中で、いかに国内で雇用を生み出すのか。そういう産業を揺籃するか。

 日本の場合は雇用を企業か抱え込んでいるケースが多い。善し悪しの問題は別にして。しかしアメリカ企業は増益の中でもレイオフと雇用カットをする。受け皿はサービス業と政府雇用ですが、「小さい政府」ということは、政府が雇用を吸収することが不可能なことを意味している。特に州財政の悪化の中で学校の先生などは首を切られている。ということは、いったい中間選挙の結果は何ももたらすかと言えば、おそらく3すくみ、4すくみの中で、アメリカの政治・経済の一層の混乱かもしれない。

 それにしても先進国の政治は、選挙ごとにスイングする。オバマもそうだが、政治家は最初の選挙の時に夢を売り過ぎる。しかしそんな夢は実現が困難だ。実現しないうちに「夢に騙された」と思う選挙民が増えて、「現職はけしからん」になる。その繰り返しのように見える。出口はどこにあるのか。まだ分からない。

 ところで、私の新しいエッセイが公開されました。http://eco.nikkeibp.co.jp/em/column/itou/83/index.shtmlにアップされています。好評だった中国特集から、今はインド特集に移っています。お読み頂ければ、幸甚です。


2010年11月04日(木曜日)

 (04:00)FOMCの金融緩和策は、微妙なところでマーケットの予想を上回ってきました。市場の新たな緩和策への「評価の分かれ目」とされた5000億ドルを1000億ドル上回る6000億ドルの新たな長期債買入策という強い緩和策。「毎月約750億ドルのペースで2011年第二四半期末までに」と。

 今回のFOMC声明の肝の一つは第三パラグラフの文章です。「the Committee intends to purchase a further $600 billion of longer-term Treasury securities by the end of the second quarter of 2011, a pace of about $75 billion per month. 」 多分、この部分の数字が新聞の見出しに踊る。

 もっとも声明を続けて読むと、この総額とペースも「まずはこれだけ」の金額で、「必要に応じて調整する」とある。「The Committee will regularly review the pace of its securities purchases and the overall size of the asset-purchase program in light of incoming information and will adjust the program as needed to best foster maximum employment and price stability. 」の部分だ。

 「最新情報次第で見直し、最大限の雇用と物価安定促進に必要な形で調整する」とある。「調整(adjust)」とはむろん減額の可能性もあるが、もっと可能性の高いのは増額される可能性があるということだ。つまり、「増額の可能性あり」で、それは「経済情勢次第」と読める。この部分が多分マーケットへの強いメッセージとなる。

 しかし筆者はもう一つの肝として、目新しい単語の登場に着目したい。それは「dual mandate」だ。つまりFRBの負っている使命について、「最大限の雇用」に加えて「物価安定」の二つがあると強調した部分だ。実は今回「おや」っと思って今年の声明全部に検索をかけてみたが、この「 dual mandate」という単語が登場するのは今月分が最初である。FOMC声明くらいになると、新しい単語が登場したことには必ず意味がある。

 実は今年九月の声明でも、それに近いことは言っている。「Measures of underlying inflation are currently at levels somewhat below those the Committee judges most consistent, over the longer run, with its mandate to promote maximum employment and price stability.」の部分だ。しかし「dual mandate」とは言っていなかった。

 それに関連して、筆者は二つのことに注目した。それは今のアメリカのインフレ率が「絶対的に低い」という判断をFRBが下していることが分かる文章になってきているという点だ。改めて引用するが、9月には「are currently at levels somewhat below those the Committee judges most consistent」としていた部分を、今回は「Currently, the unemployment rate is elevated, and measures of underlying inflation are somewhat low, relative to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run, with its dual mandate.」として「low」という単語を使っている。「below」と「low」では絶対性が違う。

 加えて、第二パラグラフの最後には「progress toward its objectives has been disappointingly slow」という表現もある。つまり、FOMCの考え方が最大限の雇用と双肩するほどに「price stability」が使命となっているが、「その物価水準は絶対的に低い」「それをどうにかしなければならないので、今回の思い切った緩和策をしている」と主張しているように思う。

 無論、「levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run, with its dual mandate.」という形で、FRBが「使命との長期的整合性のある望ましい水準」として考えるインフレ率を明示するようなことはしていない。そういう意味ではインフレターゲット論にまでは行っていない。しかし、今回の声明を見ながら、物価水準に対するFRBが関心が高まったことと、それを意識した政策運営の方向性が高まったようにも見える。

 これは遊びだが、今月のFOMCに「low」で検索をかけたら、7カ所で変色した。使われている単語は「slow」「lower」「low」の三種類だった。前回9月には登場していた「below」はなかった。「low」の綴りが頻繁に使われた声明だと言える。第一パラグラフの経済活動も、そしてインフレ率も低い。高いのは失業率。声明全文は以下の通り。

Release Date: November 3, 2010

For immediate release

Information received since the Federal Open Market Committee met in September confirms that the pace of recovery in output and employment continues to be slow. Household spending is increasing gradually, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. Business spending on equipment and software is rising, though less rapidly than earlier in the year, while investment in nonresidential structures continues to be weak. Employers remain reluctant to add to payrolls. Housing starts continue to be depressed. Longer-term inflation expectations have remained stable, but measures of underlying inflation have trended lower in recent quarters.

Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate is elevated, and measures of underlying inflation are somewhat low, relative to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run, with its dual mandate. Although the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, progress toward its objectives has been disappointingly slow.

To promote a stronger pace of economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate, the Committee decided today to expand its holdings of securities. The Committee will maintain its existing policy of reinvesting principal payments from its securities holdings. In addition, the Committee intends to purchase a further $600 billion of longer-term Treasury securities by the end of the second quarter of 2011, a pace of about $75 billion per month. The Committee will regularly review the pace of its securities purchases and the overall size of the asset-purchase program in light of incoming information and will adjust the program as needed to best foster maximum employment and price stability.

The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period.

The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to support the economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate.

Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Sandra Pianalto; Sarah Bloom Raskin; Eric S. Rosengren; Daniel K. Tarullo; Kevin M. Warsh; and Janet L. Yellen. Voting against the policy was Thomas M. Hoenig. Mr. Hoenig believed the risks of additional securities purchases outweighed the benefits. Mr. Hoenig also was concerned that this continued high level of monetary accommodation increased the risks of future financial imbalances and, over time, would cause an increase in long-term inflation expectations that could destabilize the economy.

 この声明には出ていないが、FRBが最初に米国国債買い入れを直近でやったのは2008年12月から2010年3月までで、その総額は1兆7500億ドル。今回の新たな保有増額に関しては「まずは6000億ドル」となっているが、実は毎月モーゲッジ証券を350億ドルずつ長期債に代えていくので、米国長期債の来年6月末までの買入総額は、9500億ドルに達する可能性がある。これで長期金利が下がらないとしたら、ちょっとおかしい。

 ただしこれはいつも議論になるが、FRBが一生懸命緩和してもそのお金が海外に流れて新興国市場でアセット価格の上昇を招き、その国の通貨を対ドルで上げてしまう副作用を起こしたのでは意味がない。しかしその危険性はある。だからインドやオーストラリアは金利を上げて流動性の引き締めをしている。オーストラリアは経済そのものが過熱し、不動産投資も活発だが、インドは明らかに今の世界の振興途上国が直面している「米金融緩和の副作用対策」としての利上げの側面が強い。

 Thomas M. Hoenigは相変わらずの反対。「increased the risks of future financial imbalances」と彼が言っている部分は、国内だけなのか海外も含めていっているのか興味がある。

 これを書いている現在のダウは小幅高、ドル・円は81円台の前半。しかしマーケットがFOMC声明を消化し終えたとは思わない。


2010年11月03日(水曜日)

 (13:45)アメリカが日本時間の4日早朝発表のFOMC声明で「どの程度の思い切った金融緩和(QE2)を行うか」「その後の日銀の金融政策決定会合では、FOMCの決定を受けた影響をどの程度緩和する措置が執られるのか」と注目を集めているときに、オーストラリアとインドの利上げ。今の世界経済の複雑な様相をよく示していると言える。

 インドは2カ月ぶり、豪州は6カ月ぶりの利上げで、リーマン・ショックを発端とする金融危機後では実にインドが6度目、豪州が7度目の利上げ。中味を見ると、インド準備銀行は商業銀行への貸出金利(レポ金利)を0.25%引き上げ、年6.25%とした。ゼロに近いところに金利を置いている日米から見ると、非常に高い水準である。

 準備銀行は、物価上昇率が高止まりしているうえ「先進国からの余剰資金がインド経済の資金吸収力を上回れば、金融市場の管理が難しくなる」(スバラオ総裁)と利上げ理由を説明した。つまり、市中の資金流通量を抑える利上げということだ。

 一方オーストラリア準備銀行は政策金利を0.25%引き上げ年4.75%にした。スティーブンス総裁は「直近のインフレ統計は予想の範囲内だが、中期的な物価上昇懸念が残る」と利上げの必要性を説明した。

 この両国の他にも、新興国では中国が10月に2年10カ月ぶりとなる利上げを決定。金融危機後で初の利上げを7月に実施した韓国では、10月の消費者物価指数の伸び率が高水準に達し、利上げ観測が高まっている。

 利上げは一層の自国通貨高を招きかねず、輸出など経済活動を冷やす恐れがあるだけに、ある意味FOMCを前にした勇気ある措置と言える。金利を上げれば資金も流入してくる。インフレ抑止にも悩む新興国の中央銀行は難しいかじ取りを迫られている。

 こうした複雑な世界各国の動きを踏まえた上で、今日が最終日のFOMCがどう動くかです。このサイトのも書きましたが、国債買い入れの当初目標は5000億ドルを上回るかどうか。FOMC控えで特に日本の市場は停止状態。

 ところで、今見たニューヨーク・タイムズには米中間選挙の開票速報として「Republicans See Big Gains in House  Tea Party Propels G.O.P. in Senate, but Democrats Are Holding Key States.」という一文が。まあ下院は民主党の大敗でしょう。NY TIMESのサイトには、獲得議席の動きがあって、共和党は上院ではちょっと半数確保は難しいかな、という状況。

 こちらは、日本時間の3日夕刻には決着する。


2010年11月02日(火曜日)

 (23:30)ちょっとした大検索作業に発展したきっかけの言葉は、「かんてき」でした。顔なじみ7人くらいで軽く一杯やっていた。誰かが「おまえはかんてきや」と言った。私に対してではなく、そこにいた一人に向かって。

 知りません。「それ何?」と私。だって、今まで聞いたこともない言葉。あれ、「かんてき知らないの」と大阪組(年長者)。最初に聞いた説明は、「怒りやすい奴を言う」と。でもなぜなのともう一押し。皆ケイタイを持ち出してググル大会。最初に調べたら「七輪(しちりん)、焜炉(こんろ)を関西地方でいう」とある。

 へえ、知らんかった。でもなぜ、関西で言う七輪が「かんてき」なのか。もうちょっと調べたら「かんてき」で、「かんしゃく。また、かんしゃくを起こしやすい人。かんてき者」という意味合いが出てきた。

 そうか、関西には「かんてき」という言葉が最初にあって、それが七輪に転用されたのか、と理解する。うーん、まあそうだ。しちりんは「火が熾りやすい」から、それが「怒り易い」。七輪は「すぐ火が熾きてかっとなる道具」だから、「かんてき」という言葉が援用された、と。洒落ているじゃないですか。

 同じような表現は関東にもある。それは、「彼は消し炭だ」です。確かに消し炭は直ぐに熾る。そこから「怒る」。その段階で、「かんてき」という言葉を知らない私などの間で話題が大盛り上がり。

 そこからもう一つ話題が展開した。ではなぜ「七輪」と言うのか。これも調べた。面白い解説がネットに載っていた。もともとは七厘だったらしい。諸説ある、とネットに載っている。

  1. 物を煮るのに、値段が七厘ほどの炭でまにあう意から
  2. 物を煮るのに、重さが七厘ほどの炭でまにあう意から
  3. 下の方に七つの穴があるから
 の三つが出てきた。知りません。七輪の下の方に七つの穴があるなんて数えたことがない。うーん、それにしてもなぜ「七厘」が「七輪」になったのか。形状が円形だから、「輪」になったとの解説には納得がいく。

 たわいのない会話をしていると、時々こういうのにぶち当たる。秋の夜長のあまり意味のない、しかし「へえ....」と思ってしまうググルでした。

 たわいのない会話をしていると、時々こういうのにぶち当たる。秋の夜長のあまり意味のない、しかし「へえ....」と思ってしまうググルの一夜でした。一人が、菅首相の外交政策は「かんてきか」(菅的か)と。「うーん」と皆でしばしばかみ砕き。


2010年11月01日(月曜日)

 (23:30)それにしても、今週は凄まじい日程です。マーケット関係のことを言っているのですが、日米欧のそれぞれの金融政策決定会合があり、その前にアメリカの中間選挙があって、週末には米10月の雇用統計が発表される。

 どれか一つでも大きな材料なのに、折り重なっている。意図的折り重ねもあった。というのも日本の金融政策決定会合は、11月中旬に予定されていたのを米FOMC(2〜3日)の直後にもってきた。米FOMC後の市場に「機敏に対処したい」という意図が見える。

 一番注目されるのはアメリカのFOMCだという人が多い。確かに量的金融緩和第二弾でQE2と呼ばれる措置が具体的にどうなるかは興味深い。総額は示されるのか、「毎月....」といった条件が付されるのか。

 しかし筆者は、その直後にわざわざ開催日が当初予定の11月中旬から前倒しされて開かれる日銀の金融政策決定会合に注目している。なぜなら、FOMCで仮にドル安・円高の動きが出てきたら、日銀はそれを打ち消す政策をこのFOMC直後の会合で持ち出す可能性が強いからだ。日銀も機敏性を増したものだ。

 FOMC後の日銀の政策に関しては、FOMC次第の面があるので予測が難しい。今日もそうだが、ドル・円相場は80円台をうろうろ。上がるでもなく、下がるでもない。まあでも関心は、ドルがいったん底値をつけるかでしょう。

 一番最初に出てくるのは中間選挙の結果?。日本時間の3日中にはほぼ明らかになる。そして次が日本時間4日早朝のFOMC声明ですか。私も出来る限り早く捕捉しようとしているのですが、起きられるかどうか。ははは。日本は3日は休みですか。



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