2010年10月31日(日曜日)

 (00:30)もちろん菅首相が中国に振り回されている印象はするのだが、一皮剥いてみればおそらく温家宝首相も中国国内情勢に激しく揺さぶられていると考えるのが自然でしょう。

 最近の中国の一連の動きを見ていると、温家宝首相のイニシアチブになるものはすべて頓挫している。いや、させられている。東シナ海のガス田を巡る協議再開への動きは国内の保守派から激しく攻撃されたと伝えられているし、第12期5カ年計画(2011〜2015年)に関連して温家宝首相が提唱した所得倍増計画は胡錦濤主席、習近平副主席によって大幅に書き換えられたとされる。実際にこの言葉は案から消えていた。

 加えてあの中国でも「インターネットに示される民意」が明らかに軍や共産党と並ぶ主張主体になりつつある。政府もその動向に気を遣わざるを得ない。その意味では、非常に大きな中国政治の先行き予測上での重要ファクターだ。

 そうした国内の動きに加えて、中国は自国が置かれた外交的パワーバランスを考えざるを得ない。実に複雑な方程式の中に中国の政治家はいる訳で、「首相」という中国では中途半端な立ち位置にいる温家宝さんが今は一番苦しい、ということでしょう。中国側は当初の日中会談拒否の理由として

  1. 日本外交当局の責任者が別の国と一緒になって釣魚島(尖閣諸島の中国呼称)問題を大げさにした
  2. メディアを通じて中国の主権と領土を侵犯する言論を流した
  3. 東シナ海問題での原則的な合意を履行する中国側の立場を歪曲した
 の三点を指摘した(日経新聞の30日朝刊)。既に三番目に関しては、AFPが東シナ海のガス田を巡る前原外相の発言を間違って伝えたことを認めている。

 「1」は明らかに日米を指す。すなわちクリントン国務長官が尖閣諸島は「日米安保条約の対象」と言っていることを思わず中国は口に出してしまった。国内に伝えてしまったので、中国のネットには「日米が攻めてくる」といったは発言もあうという。

 「日中の問題にアメリカは口を出すな」というのが中国の主張だ。アメリカは中国がそう出てくることを承知で言っている。「2」は日中で真っ向から対立する問題で、二国間で解決の糸口はない。その意味で、三カ国会談を提唱したクリントン提案には意味がある。

 尖閣の問題が従来からあったのに今こうして先鋭化している背景は、やはり中国の国内事情でしょう。発展を急いでいたときには、日本のカネと技術が必要だった。

 しかし新幹線でも日本のそれより速いのを走らせることが出来るようになり、売り込みでも日本と競合するようになるようになった今は、「環境は変わった」とばかりに中国は自己主張を始めた、と見るのが自然です。やはり香港紙の報じるとおり、中国は「尖閣を核心的利益の中に含めた」と考えられる。

 温家宝首相は中国国内では「国際協調派、融和派」と呼ばれているらしい。そりゃ実際に政権を担っていますから、いろいろな国のトップとも親しくなるし、一つ一つの交渉では折れるところと折れないところを使い分ける。しかし使い分けは時に融和的と取られ、国内の強硬派勢力(主に軍など事を構えることが有利になる人々)から反撃される。

 今回のハノイでの会合では、「温家宝首相は菅首相と一緒に写真を撮られるのを明らかに嫌がっていた」という報道は興味深い。多分仲良く映っている写真が中国の新聞などに載るのが嫌なのだろう。後で格好の標的にされる。とすると、今の中国で日中関係を悪くしているのは温家宝首相らではなく、その動きを監視している連中だと言うことになる。

 読売新聞には次の記事がある。『中国外交は、日本との関係修復を重視する国際融和派の胡主席や温首相が、国内で保守強硬派に押されて主導権を失いつつあるとの観測を招いている。「温首相は菅首相とのツーショットを避けている」(外交筋)。記念撮影では日中首脳が並ぶ予定だったが、直前になって2人の間にオーストラリアとベトナムの首脳が入ることになった。』と。

 さらにこの記事は、『「懇談」はその直前、カメラが入らない首脳控室で行われた。しかも、中国側は懇談が行われたことすら公表していない。「反日世論への配慮というより、反日名目での自身への批判をかわしたかったのだろう」。香港の記者は解説する。』続く。

 では日本はどうすれば良いのか。相手は「 指桑罵槐(しそうばかい):桑の木をさして槐(エンジュ)の木を罵る」国である。その本意は分かりにくい。しかも国内にはいろいろな勢力がある。しかしそこを読みながら、どの勢力が潜在的味方か、どの勢力が冷静に先を読んでいるのかを見定める必要がある。

 なにせ相手は異形の、やっかいな国なのだから。


2010年10月30日(土曜日)

 (13:30)今ちょっと面白い問題が起きているので、皆さんにシェアしますね。今後の「引用」を考える上で面白い。

 先週の月曜日でしたが、頼まれていたのでIT雑誌に10000字くらいの文章を書いたのです。長い文章の中に新聞記事の引用を入れて送った。そしたらこの出版社はきちんとしていて、私にこうメールで聞いてきた。「許諾を得る関係で記事を調べましたが、伊藤さんが引用された文章はありましたが、最後の2行はございませんでした」と。

 出版社のメールに添付されていたのは新聞”紙”の記事のスキャニングした部分でした。確かにそこには私が引用した文章の最後の2行はなかった。で私は、「あれ、その引用は新聞社のネットの記事から採用したな」と思い出した。

 これはネットで新聞を読む人はよく分かると思うのですが、新聞社は時として紙の新聞に載せきれなかった部分についても、ネットには載せる。ネットで別料金をとっている日経さんなどはことさらそうです。

 新聞紙には絶対的に面積の制約がある。しかも最近は活字を大きくしているから、その分だけ記事の掲載スペースは減る。しかしネットはその制約がないので、記者が書いた記事の長さに近くなる。ということは、紙にすられた記事とネットに掲載された記事は長さやコンテンツが少し変わってくるのです。

 私はネットから引用した。当然コピーアンドドロップで。一方の出版社は許諾を得ようと紙の新聞を調べて、「この部分はない」となった。もっとも、紙かネットかの問題は別にして、一つの新聞社の記事にもいろいろなバージョンがあります。一刷りから最終刷りまでにはそれぞれ個性があるし、地域によっても違う。「新聞社の記事」といってもかなり違うのです。

 今はそれにネットが加わっているのですが、ネットの記事も分量などが変化する可能性がある。だって事実関係が詳細に分かってくるに従って、記事をアップデートする可能性があるからです。

 今は私が、「それはネットにありました」と返事をしている段階で、出版社がどのように新聞社から許諾を得るのか知りませんが、ちょっと面白いケースかなと。私の考え方によれば、紙であろうとネットであろうと、新聞社はいったん掲載した記事の引用については、原則的に認めるべきだと。


2010年10月29日(金曜日)

 (19:30)今日また講演で関西に赴きましたが、どえらい警備ですね。木曜日に横浜に行ったときも凄かったが。まあでもこれだけ大警備をしても、APECの成果がどのくらい大きなものになるのか予測がつかない。やはり外交には大きな方針がないと結果が出ないということでしょう。

 講演場所は新神戸の近くのホテルだったのですが、終わって時間があったので神戸異人館街をちょっと歩きました。ホテルから直ぐ近く。坂がきついが、まあ雰囲気のある良い場所でした。平日とあって人影はまばら。またゆっくり来たいものです。

 それにしても今日の日経に載っている「米アップル:売上高でも業界首位 株式総額に続きMS抜く」といったニュースを読むと、「企業というのはすさまじい潜在力を持っているものだ」と改めて感心します。だって、潰れる寸前の会社だったんですよ。それがトップを奪取する。

 一時は「モノを作る会社はもう駄目」と言われた。アップルはモノ以外も作っている。しかし製品としてあるのはモノであり、それに個性を与えるための仕掛けがソフトという位置づけ。「こうあるべきだ」「こうあらねばならない」というところを次々と突破して、新しい製品を作っている。新聞記事は次のように述べている。

ソフトウエア世界最大手の米マイクロソフト(MS)が28日発表した10年7〜9月期決算によると、売上高が個人向けパソコン用の最新型基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」などの販売増を受けて、前年同期比25.3%増の161億9500万ドル(約1兆3100億円)と、7〜9月期としては過去最高を更新した。ただ、ライバルの米アップルは、すでに同期の売上高が203億4300万ドルだったと発表しており、MSは株式時価総額に続き、売上高でもアップルにIT(情報技術)業界首位の座を初めて奪われた。急拡大する携帯端末市場で快走するアップルの勢いが鮮明になった。
 さて、「世の中進歩堂」の予告です。今回は『20年後のあなたの顔が予測できる!?最先端のCG技術に迫る!』と題して、テレビや映画に欠かせないCG技術を開発する最先端の研究現場に潜入します。

 具体的には、顔写真から未来の顔を予測できる技術や、誰でも映画の主人公になれてしまうというシステムなど驚きの技術が続々と登場します。我々の暮らしを楽しませてくれそうな、注目のCG技術の数々をお楽しみ下さい。


2010年10月28日(木曜日)

 (17:30)日経からの連絡によると、いろいろな反響を頂いた「NIKKEI特集 ルフトハンザ ドイツ航空presents 伊藤洋一のReal Europe」も、来月14日までの掲載のようです。

 まあそりゃそうですね。私としてはいつまでも掲載しておいて頂いて、いつでも皆さんにお聞き頂ければと思いますが、インタビューを受けられた方の権利もありますから。最初は4〜5回の予定で始めましたが、好評で回を重ねて9回までになった。残念ながら第4回のジローラモさんの回は氏のサイドの意向があって一足早く掲載中止となりましたが、その他は今も全部残っています。

 第9回は実際に日本とヨーロッパの間をキャビン・アテンダントとして飛んでいらっしゃるルフトハンザ・ドイツ航空の土出真由美さんが登場して下さっています。土井さんからはたまたま今日「友人達からも好評で、これもひとえに伊藤さんのリラックスさせて下さった雰囲気のおかげだと感謝しております。」というメールを頂きました。いえいえ、ご自身の資質でいらっしゃる。

 すべての回に思い出がありますし、それぞれ聞く人によって「面白い」と感じる部分があると思いますが、是非ネットから消える前にお聞き頂ければ幸甚です。多彩なメンバーが登場しますよ。世界的に活躍する女性指揮者の西村智美さん、世界的デザイナーの吉岡徳仁さん。

 ところで、それとは別に今日横浜の日産本社で私がインタビューさせて頂いた小枝至相談役名誉会長の回は、「グローバル経済と標準化の波」の第二回として、「世界のCEOは”複雑さ”を武器にし始めた」といった演題で11月19日にアップされる予定です。

 いや、楽しかったですよ。私の従兄弟が日産の村山工場で小枝さんの下で働いていたことが判明したりして、終始和やかな、しかし今の世界企業が直面しているピリッと辛い現実への対処など。アップされたら是非お読み頂ければと思っています。

 ところで、横浜行きの電車の中でグーグル・モバイルで音声検索したら、ジロッとこちらを見る人が。そんなにおかしいですかね。小声でやったつもりでしたが。そうだ。もう一つ「ははは」が。ここに出ている「CLASS C」の意味合いも、聞いてびっくり。ははは。


2010年10月27日(水曜日)

 (12:30)インターネットを調べても殆ど全く出てこないので、本当に珍しいんでしょうね。寿司好きの私も、東京では全く食べたことがなかったお寿司を神戸で食べました。その名は「鯛のほぐし」

 火曜日の夜は大阪の友達連中と神戸までちょっと足を伸ばして、お寿司屋さんに。7人で行ったのですが、その中のメンバーの一人が子供の頃から行っている寿司屋さんのご主人が高齢(80歳)を理由に今月末で店を閉めるので、最後の最後を堪能しようという話があって、「関西にはあまりうまい寿司屋さんがない」と思っていた私も、興味を持って仕事の後に加わって出かけたもの。

手鞠上の酢飯の上にのった鯛のほぐし  その店は神戸の元町の一角に小さくありました。先代からの有名な寿司屋さんで、今の大将はその店を継いだ。酢飯の酢が淡く、においをかいでも殆どしないほど。酢飯ではあるが、印象は弱い。関東の酢飯とは違う。

 握りの大きさは、今までで一番小さいかな。形は手まり状です。つまり普通の関東の握りの大きさの三分の2程度しかない御飯を、手まりのような丸い状態で握り、その上にネタをのせる。当然ネタも小さくなる。関東では「手鞠寿司」という形態そのものが少ない。

 ネタはいらくがなく、当然小鰭はない。その他はあまり変わらないネタで、イカ、トロ、赤身などが続いて、ふっと出てきたのが「鯛のくずし」

 これは鯛をちょっと塩を振った状態で焼いて、多分中落ちの部分の肉をほぐして、それをまとめて手鞠状態の酢飯の上に乗せたものです。私は全く初めてだったし、私より年上の世界を飛び回っていた元社長さんも、「初めて」と言っていた。もともと鯛(特にかぶと)の塩焼きは大好きなので、「おいしい」と思いました。

 無論寿司も所変われば品変わるで、本当にいろいろなネタが各地で使われている。北海道に行けば、寿司ネタ(例えば”ぶどう海老”など)も全く違うし、福岡も違う。神戸は良い鯛が取れる明石に非常に近いことは言うまでもない。

 しかし跡継ぎがいないので、今月末に閉めるには残念な気持ちがするほど良い寿司屋さんでした。口数は少ないが50年も一筋で仕事をしてきた好印象が強い大将で、最後は皆で拍手してお別れ。私は最後の最後でのご相伴でしたが、良かった。


2010年10月26日(火曜日)

 (12:30)私がBRICsの衝撃でこのところ取り上げているインドと日本がEPA(Economic Partership Agreement)を締結した。来日中のシン首相が菅首相との間で署名。重要な意味合いを持つと思う。

 二つ。まずは「ITとカースト-インド・成長の秘密と苦悩」でも書いたが、いろいろ問題を抱えていてもインドは非常に成長力のある国である。なにせスタート台がまだ低いから伸びしろが山ほどある。ITや医療に強かったり、面白い国で日本はインドとの関係を重視する必要があると思っているが、それが形になった。

 次に対中国という観点。膨張する中国に対応するには、周辺国はやはり力を合わせるのが良い。そういう意味では中国に続く新興国であるインドと、人口が十分の一で中国と台頭のGDPを持つ日本が提携することが良いし、中国にも無謀なことを思いとどませる意味合いもある。日本もインドも対中国ではいろいろな問題を抱えている。

 EPAは恐らく来年発効、10年かけて両国間の貿易・サービスに関する関税を平均94%の取引対象についてゼロにする。韓国がEUとのFTA締結など先行しているが、韓国が日本より先行しているからということではなくて、貿易立国としての日本もEPA、FTAは進めなければならない。その意味で、インドとの取り決めは大きな前進であると言える。

 そう言えば、この番組の偉い方の人が、「全く知らなかったんですが、娘が伊藤さんのインド本を図書館から借りてきていたビックリしました」と。若い人たちの間でインドへの興味が深まっているのなら、そして私の本がそれに役立っているのなら結構なことです。

 それはそうと、今日一番興味を持って読んだ記事は日経の5面に出ている「検証・緊迫のG20」です。この会議(韓国の慶州で週末に開催)に出席した人々をよく取材したことが分かる記事。私も「そうだろうな」と思ったのは「ドル安を巡ってアメリカが(自国通貨の高騰や過度な資本流入に直面する新興国から)集中砲火を浴びた」という点。新興国ブラジルや南アフリカなどが怒っているのは自国通貨高・ドル安であって、それは「アメリカの金融緩和策」がもたらしている。

 このことは、今週月曜日にも書いたのですが、途上国の一部には「アメリカの金融緩和は、ドル安誘導とも言える一種の市場介入である」といった意見もある。ガイトナー財務長官はG20直前のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューでは「sees no need for the dollar to sink more than it already has against the euro and yen....the U.S. is not pursuing a deliberate policy of devaluing the dollar」と述べて日本、ヨーロッパとの共同戦線樹立に尽力したが、新興国対策はなし。これでは新興国が怒るのは当然です。

 意外だったのは、準備通貨の責任に触れた以下の文章を提案したのがアメリカだったというこの記事の記述だ。私は声明(最後に添付)を読んだときに、「途上国の要求で入った」と思った。以下声明から。

Advanced economies, including those with reserve currencies, will be vigilant against excess volatility and disorderly movements in exchange rates. These actions will help mitigate the risk of excessive volatility in capital flows facing some emerging countries.
 しかしこの日経に記事によると、会議の冒頭から集中砲火を浴びたアメリカが「通貨の安定には責任を持つ」(ガイトナー財務長官)との意向を示し、かつ「準備通貨の責任」を明確にする文言を自ら声明に入れることを提案したというのです。

 これは重要なことです。「Advanced economies, including those with reserve currencies」と複数形になっているが、これは主要にはアメリカを指すことは間違いない。この表現はこの記事が指摘するようにG7ではあまり使わないもので、ずっとG7声明などを読んできた私も、「おや」と思った。

 こうした動きをバックグラウンドに、この記事は非常に重要なことを言っている。それは、「為替が一段と不安定になれば、日米欧の協調介入さえ現実味を帯びる可能性がある」というものだ。

 この一文はこの記事を書いた記者の勇気の表れであると見たい。なぜなら、日経を含めて「アメリカは一段の金融緩和を進める」「アメリカはドル安を放置する」という見方が強いからだ。しかし、見出しには持ってこなかった。もしかしたら、記者は見出しを希望したが、整理部のデスクが見出しを削ったのかも知れない。しかしこの記事のミソはここにある。

 日本ではドル安に「アメリカ経済もあんな状態だから」と理解を示す人が多い。しかしドル安で困っているのは別に日本だけではないし、ドル安がアメリカの経常収支を改善させている事実もない。ここまでドル安批判が高まれば、アメリカは放置は出来ないし、ガイトナーはG20後の記者会見で「アメリカの政策は強いドルを支えるものだ」と述べている。

 このガイトナー発言は、現実を見れば矛盾に満ちた言葉ではある。かつ議会などのアメリカの国内勢力の動きもある。しかし、物事の一面は突いているし、ガイトナーの「no need for the dollar to sink more than it already has against the euro and yen」が本音だとするならば、アメリカは長らくのドル安放置の政策から舵を切ってくる可能性もある、と見たい。いずれにせよ、この日経の記事は短いが事実を良く検証し、まとまっていると思う。


2010年10月25日(月曜日)

 (21:30)何気なく使っている言葉も、「なぜ」と知っていそうな人に問いかけると、思わぬ答えが帰ってくるものだと。

 月曜日は朝から「世の中進歩堂」の収録のあった日ですが、実にいろいろなことを勉強した。まず「八丁味噌」。なぜ「八丁」なのか知っていました。それをゲストの方がいとも簡単に「それは」と教えてくれたのです。聞けばちゃんと答えが返ってくる。

 それによると、現在八丁味噌を造っている店は二つしかない。それは 「カクキュー」(合資会社八丁味噌)と「まるや八丁味噌」の二軒なのだが、共に岡崎市八帖町の味噌蔵。では「八帖」なのか。それは昔、岡崎城から「八丁」の距離にある「八丁村」にあったことから、ということだそうです。まあ「八」は昔から末広がりで良いと思われていたのでしょう。一般的には八丁味噌は「愛知県岡崎市で生産されている味噌」とされ、色は赤い。名古屋では味噌と言えばこの「八丁味噌」だそうです。

 もう一つ勉強になったのは、「含浸技術」なる単語を覚えたこと。今まで全く知りませんでした。ゲストは、エフコムの桑総一郎社長だった。もともとは工業製品の部品に使われていた含浸技術を、食品に使おうというアイデアで会社を興していらっしゃる。

 チョコレートの味を染み込ませたかりんとうとか、ワインを染み込ませたリンゴとか。組み合わせは無限です。食材を豊にしてくれること間違いなしの面白いアイデアが一杯でした。

 私からは、「リンゴにリンゴジュースを染み込ませて、栄養価の高いリンゴなんてのは」と素人っぽい提案をしてみました。同社の製品はOEMで出ているのが幾つかあり

  1. ちょこかりんとう、ちょこいちご
  2. ホワイトストロベリー:ネットショップアンジェ
  3. ちょビ
 など。食品の分野にもいろいろな最新技術が登場してきている。非常に興味深い現象だなと思いました。詳しくは放送で。


2010年10月24日(日曜日)

 (09:30)今朝の日経に乗っていた小さな記事に、「へえ..」と思いました。それは、「中日-ロッテで30日に開幕するプロ野球の日本シリーズで、ナゴヤドームで開催される第一戦と31日の第二戦は地上波での全国中継が行われないことが23日分かった」というもの。

土曜日の富士山麓で撮影した紅葉  加えて「11月4日に開催予定の第5戦も中継がない可能性もある」というのだ。「こんなことは初めてじゃないかな」と思ってこの小さな記事を読み進むと、「プロ野球界の最高峰イベントである日本シリーズで、地上波の全国中継がされないのは極めて異例」...と。「ということは、史上初じゃないんだ」と思いましたが、「地上波のプロ野球離れもここまで進んだか」というのが偽らざる感想。

 もっともNHKはBSの1やhiでやるでしょうし、見ようと思えば見れる。口の悪い人の中には、「ロッテ-中日なんて誰が見るんだ」という人も居るが、今までの常識で言えば誰もが見れる地上波での中継をどこかがしても良いものだが、NHKは「BSがあるから」と考え、民放は視聴率が取れないと考えたのでしょう。うーん、ロッテ対ソフトバンクなんて面白い試合はあったのですが。

 昨日の巨人-中日はちらちら見ていたのですが、巨人の投手が8回と9回に確か合計5個の四球を出したのにはあきれました。あれじゃ打線が打ったとしてもダメです。中日の投手はその間四球を出していなかったように思った。打たれてはいましたが。

 投手がこの状態で、打線が湿ったら巨人の勝ち目はない。最初からそれが見えていたシリーズでした。亀井もイスンヨクも全く存在感がなかった。

 中日もそんなに打てていた訳じゃない。主力選手の打率は中日、巨人とも低い。にもかかわらず中日の方が打点が多かったのは、中日の打者に対して巨人の投手の甘い球がほんのちょっとだが多かったと言うことと、中日の打者の方がそれを見逃さなかったということでしょう。ちょっとの差だが、それが点数差にちゃんと現れる。

 ところで、中国での「チベット語保護の動き」はよく分かるな。チベットの人達が「このままではチベット語はなくなってしまう」と言って暗い顔をしていたのを見ていましたから。

 意思表示があったのは、北京の中央民族大学というところだそうで、チベット族の学生約400人がチベット語保護を訴えるデモを行ったという。これに先立ち、中国青海省でチベット族高校生らが民族文化保護を求めるデモを行っている。北京のデモは、この青海省の動きに触発されたとみられる。

 北京でデモを行った学生らは「民族言語の保護を」などと書かれた横断幕を掲げ、約2時間にわたり校内を行進したという。尖閣を理由にした中国でのデモとは規模が違うが、こちらの動きにも関心を払っておきたいと思う。それにしても、北京でのチベット族学生のデモを当局が認めたのかどうかには興味がある。


2010年10月22日(金曜日)

 (17:30)昨日は興味深い日でした。おもろかったし、ツイッターが本来的に持つスピード感を改めて体感。初めての出会い(インタビュー)、それから食事まで展開し、かつそこにはツイッターつながりでさらに参加者がジョイン。発端はなんとデジタルネイティブ(17歳の高校生)でした。

 夜7時からの「TOKYOFM タイムライン」は「10代と語る」といった一週間の企画の最終日。私がITに強いと言うこともあって、umekenを放送局はぶつけてきた。なかなかナイスのアイデア。年齢差40以上。

 孫正義さんがツイッターを始めてすぐにリターン(確か三番目)。ツイートを返し合ったことからソフトバンクから会合やプレゼンに誘われ.....という形もあって、umekenはまずまず有名に。今は起業を目指す身で活発な動きを展開している。若手起業希望者。

 いや放送も面白かったんですよ。私も彼も同じような世界にいますから、こっちが聞きたいこと、こちらが答えられることはいっぱいある。放送は全枠が30分ですから時間はすぐにたった。「うーん、たりんな」と思ったので、食事に誘った。即「ではゴー」ということになった。

 二人ともツイッターがメチャ得意でiphone をスタジオに持ち込んでいましたので、放送しながらツイートもして、「今日の放送はデュアルだ....」とか言いながらやっていたのです。私はアナウンサーの今井さんが話している間にツイートし、彼は自分の出番じゃないときにツイートしていた。

 お互いのタイムラインに乗るわけです。それを見ていたのが、デジタル コンテンツ プロデューサー のshinichiro_beckさん(小林信一郎)。「いいな...」というツイート。私は彼のファンだし、彼もそう思っていたらしい。「それでは参加しますか」という形で即3人のパーティーが成立した。キッチン5に私とumeken がまず移動し、そこにshinichiro_beck氏が加わり、そこにさらにアナウンサーの今井ちゃんが加わり..。

 面白かったですよ。ツイッターの可能性を感じたな。umeken には日本の起業の可能性を感じたし、私よりもツイッター歴の長い小林さんには、いろいろな話しを聞けた。面白かった。onとoff はこういう交差をしないと面白くない。心からumeken の成功を祈り、何かあったら出来る範囲で助力したいと思いました。

 そこはそこで終わったのですが、食事中にメールが入って「近くの無垢にいるから来ないか」と萩谷のおじさま(先輩なので)から誘いがあったので、行ったら、これは収穫なことに下斗米伸夫先生が一緒にいらして、プーチンとメドベージェフの微妙になりつつある関係をちょっとお聞きし.....と。

 羽田の取材も面白かったですよ。その様子は来週の火曜日におはようコールで放送されるそうです。大阪から来た乾アナウンサーの諸相に触れて感激。ははは。

 エッセイがアップされました。英連邦競技大会後を巡るインドの評価といった形です。最近このコラムはビューが増えているようで、うれしい限りです。


2010年10月21日(木曜日)

 (17:30)羽田の新しい国際線ターミナルでのロケから帰ってきたばかりですが、このウォール・ストリート・ジャーナルとガイトナーとのインタビューはちょっと目を通しておきたかった。

 まあそうでしょうね。ガイトナーも、これ以上主要通貨間の為替関係を”ドル安”の方向には向けたくないでしょうね。そう思う。

Mr. Geithner divided world currencies into three groups. In one, he put countries with currencies "undervalued by any measure," especially China. He said, though, that if the pace of appreciation seen since September were sustained, it would help correct the undervaluation. Other emerging markets play a role, he said.

In a second group, he put "emerging economies with flexible exchange rates that intervene or impose taxes to try to reduce the risks of significant overvaluation, of bubbles and of inflationary pressures." The U.S. isn't objecting to such efforts.

In the third group, he put "the major currencies, which are roughly in alignment now," a suggestion that he sees no need for the dollar to sink more than it already has against the euro and yen. Mr. Geithner emphasized that the U.S. is not pursuing a deliberate policy of devaluing the dollar. Earlier this week, speaking in Palo Alto, Calif., he said that no country can "devalue its way to prosperity and competitiveness."

 彼が「the U.S. is not pursuing a deliberate policy of devaluing the dollar」と言っている部分も重要です。多分これは、G20での「先進国のスクラム構築」を狙ったものだと思うが、本心でもあると思う。あと私が現時点で注目したニュースは以下のものです。
中国共産党宣伝部が反日デモの再発を防ぐため、中国メディアに対し、国内での対日抗議行動を含む日本関連の報道を厳しく規制する5項目の通達を出したことが20日、分かった。中国紙関係者が明らかにした。日中関係への配慮のほか、報道に触発されてデモが続発し、社会不安が拡大するのを抑える狙いがあるとみられる。

 党宣伝部は国内メディアにほぼ毎日、指示を出しているが、日本関連の報道で5項目にわたる細かい通達を出すのは異例。各メディアが通達を受けたのは、四川省成都市に続き同省綿陽市で2日連続の反日デモが起きた翌日の18日で、関係者は「通達は(デモ続発の)現状に対する当局の焦りの表れ」と話している。

 内容は(1)反日デモの独自報道は禁止、国営通信新華社の記事に限定(2)日本の右翼勢力については中国外務省の見解に基づき報道(3)国内の反日デモ、日本の反中デモは1面など目立つ場所に掲載しない(4)日本関連の突発事件はメディア各社の幹部の指示を受けて処理(5)その他の日本に関係する報道は新華社の記事使用に限定―の5項目


2010年10月20日(水曜日)

 (19:30)今日はこれから「ザ・経済闘論×日経ヴェリタス 漂流する『円』〜戦略なきニッポンの行方〜」ですが、G20を控えてタイムリーだと思います。参加者は全員を存じ上げているのですが、いろいろな角度からの人がおり、面白いかも知れない。

 ついでに番組のお知らせです。「世の中進歩堂」(金曜日午後10時24分 BSジャパン)は、『普通のクッキーを好きな味に変えて、タイムスリップまで可能に!?バーチャル・リアリティの進歩に迫る』と題してお送りします。

 東京大学の廣瀬研究室のお話。同研究所では、バーチャル・リアリティの技術を利用して、人間の感覚を変えてしまう驚きのシステムを次々と開発している。その一つが“メタクッキー”というシステム。クッキーの見た目と匂いを変えることで、普通のクッキーなのにチョコやイチゴなどの味に変わって、様々な味を感じることができるというもの。

 さらにバーチャル・リアリティの技術で時空を超えた感覚になるタイムマシンまで開発してしまったという。人間の感覚を操作して、実際にはない感覚をリアルに体験することができるバーチャル・リアリティ研究の最前線。私は試食もしましたが、びっくりでした。お楽しみに。

 先週行きたかったのに行けなかった天神橋筋の蕎麦屋「たかま」に今週は行ってきました。確かに美味しい。特に焼き味噌は珍味でした。また行きたい蕎麦屋です。


2010年10月19日(火曜日)

 (13:30)中国で昨日終了した第17期党中央委員会第5回全体会議(5中全会)を概観すると、温家宝首相の力が著しく弱まったということではないかと思う。来年正式決定される第12次5カ年計画(2011〜15年)も、胡錦濤と習近平の二人で策定したと言われるし、温家宝さんが主張していた「所得倍増計画」も次の5年間の計画に入らなかった。

 胡錦濤総書記が次世代のトップにしたかったと見られる李克強さんを差し置いて習近平が中央軍事委副主席(中国のトップになる大条件)となったのは、党内の権力闘争の結果でしょう。軍を中心に、胡錦濤を筆頭とする共産主義青年団への強い反発もあったとされる。

 しかし温家宝と違って胡錦濤には中央軍事委主席の座があり、依然として中国の最高権力者である。温家宝さんに対しては、「パフォーマンスだけで何も実績がない」と中国でも批判的に見る人が増えているという。そう言えば彼の顔は最近なかなか厳しい。

 はっきりしたのは、中国も北朝鮮も権力移行期に入る中で、北東アジアを巡る全体的な環境はやや先行き不透明、不安定になるということだ。日本の外交は従来の「米国追随」ではすまない難しい局面に入る。無論アメリカと隊列を組まねばならないことは明確として。

 今回の5中全会で私が一番注目した言葉は、「包容的成長」というものだ。胡錦濤が今の5カ年計画の中で提唱してきた「和諧社会」とどう違うのか。中国はその前は「小康社会」をターゲットに掲げていた。そして今回は「包容的成長」。

 「包容的成長」とはなにかをちょっとネットで調べたら、アジア開発銀行駐中国代表処の庄健(ジュアン・ジエン)主席エコノミストの話が載っていた。それによると、「やや早い経済成長を保持すると同時に、持続的、協調的、より社会領域を重視した成長を樹立すること」を意味していたという。

 また国家発展改革委員会マクロ経済研究院の馬暁河(マー・シャオホー)副院長という方は、「経済、政治、文化、社会、環境など各方面を配慮し、それらの協調を図る成長モデルが”包容的成長”と理解しています」とコメントしたという。

 私が2000年代の半ばに中国で取材したときには、「小康社会とは国民一人当たり3000ドル」と具体的に言っていた。社会科学院の方だ。中国は既に平均ではそれに達している。しかし格差は酷いものだ。だから「和諧社会」が出てきたのだろう。

 しかし格差は「和諧社会」の基盤を揺さぶった。そして今回「包容的成長」。胡錦濤が好きな「科学的」を前面に出して、「調和的かつ合理的な発展を図り、富の再分配を公平にすること」で低所得層に配慮しようというものだろう。それだけ中国国内の矛盾は増大している。それが国際的にどういう意味合いがあるのか、それが最後は包容的でなかった場合どうなるかは分からない。

 では中国はどの分野で経済を発展させ、包容的成長を計ろうとしているのか。ウォール・ストリート・ジャーナルに興味深い文章があったので、ここに引用しておく。

In a separate statement, the State Council, or China's cabinet, said the country will aim for certain new strategic industries to account for about 8% of the country's gross domestic product by 2015 and about 15% of GDP by 2020.

The industries include the energy-saving, environmental, information technology, biotechnology, high-end equipment manufacturing, new energy, new materials and new-energy vehicle sectors, according to the statement.

 日本が得意とする分野ではある。しかし、尖閣の問題がある。中国の今後に対日関係は、国民感情を含めて複雑さを増す、と考えるのが自然だ。


2010年10月18日(月曜日)

 (22:30)推薦されて読んでいる「この厄介な国、中国」は、無論初耳のこともあるし、時々私の知識と重なる部分もあって、良い本だなと思って読んでいます。全部を読んでから評論しようと思いますが、のっけから出てくる「指桑罵槐」(しそうばかい)は示唆に富む言葉だと思う。

 中国関連のニュースでは、今開かれている第17期党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で、習近平党国家副主席(57)が中央軍事委員会の副主席に就くことが決まった。胡錦濤の後釜はいろいろ綱引きがあったようですが、これで同氏が軍権掌握に向けて大きく前進、胡錦濤国家主席の後継者として次期最高指導者の地位に就くことが事実上確定した。

 しかしこれからの中国の舵取りは難しいですよ。「統治の正統性」は時の経過と共に希薄になる。経済成長を国民に保証しなければならないが、成長はしばしば果実の不均等分配を呼ぶ。それは社会不安の高まりを意味する。

 これは良く言われていることですが、胡錦濤としては自分とは系統の違う習近平をなるべく自分の後継に決定するのは先送りにしたかったでしょう。自分の後輩であり李克強への道を残しておきたかったの違いない。もしかしたら、今回の日本との一連の衝突・事件は、反胡錦濤一派の「指桑罵槐」だったのかも知れない。

 ところで今日は非常に珍しい食材に出会いました。サルナシ。ちっちゃな果物として出てきた。今まで食べたことがなかったが、「キューイ」の一種と聞いて納得した。よく似ているのです。ちょっと変わった味がする。


2010年10月17日(日曜日)

 (23:30)10月はやはり野球を見る機会が増える。この週末も4試合くらい見ました。レギュラーシーズンと違って、死力を尽くして短期決戦を勝ち抜こうと各チームとも力を込めるから、試合自体が面白いのだ。選手や監督など指導者の喜怒哀楽も良く分かる。日米とも。

 MLBはポスト・シーズンで残っている日本人選手が誰もいないのでちょっと力が入らず、どちらかに肩入れするということはないのにと思うが、気が付けばやはりどちらかを応援している。自然と。何故なんだろう。どっちかというと何らかの形で親しみのある方を応援している。

 土曜日のヤンキースの土壇場での大逆転はなかなか見応えがあった。カノーが去年よりも一回り大きく見えた。あの打線の迫力はいつものことだが。レンジャースも日曜日には逆襲していましたが。フィリーズ対ジャイアンツも面白かった。

 短期決戦はやはり選手の好不調の色合いが出る。打てない選手は本当に打てない。今のジャイアンツだと阿部とか亀井。ロッテでは西岡が本調子じゃない。阪神は打線全般がレギュラーシーズンの勢いがない。今日など金本の出番がないまま終わった。彼にしては不本意でしょう。

 ホームで2連敗の阪神には、ショックなクライマックス・シーズンだったと思う。阪神はCSになかなか勝てない。「ここ」というところで負ける、という意味では阪神も巨人も同じだと思っていたが、やはり抑えの差だろうか。

 久保田、藤川で5点取られたのは、さすがに痛い。心配なのは藤川だ。亀井でやっとアウトを取っていたが、その前の彼の直球は皆高めに浮いていた。亀井は成績が欲しいから打って出ていたが、そうでなかったら、つまり見られていたら厳しい状況だった。

 選手の力は、ある年齢を過ぎると徐々に落ちる。藤川がそうかどうかは不明だ。ヤンキースのリベラも数年前にはかなり弱った。肝心なところで打たれてのだ。しかし今年は非常に成功率が高い。だから藤川も蘇る可能性がある。今年のシーズンに関して藤川は、「悔いはない」と。

 真弓監督は続投するらしい。しかしこれは大阪のテレビでも言ったのですが、ブラウンほどではないにせよ、審判に抗議もしない監督はダメだと思う。彼が審判に抗議しているのを見たことがない。選手に「もうちょっと勝負強くなって欲しい」と言っているが、彼自身が監督として勝負強くなる必要がある。

 野球が面白いシーズンは続く。日米とも。日本は野球が終わるとサッカーくらいしかなくなる。それがちょっと寂しい。


2010年10月15日(金曜日)

 (23:30)今日私が興味を持って読んだ新聞記事は二つです。一つは産経新聞の7ページ目にある「中国軍増強の裏に利益集団あり」という鳥居民さん(中国現代史研究家)の文章と、もう一つはウォール・ストリート・ジャーナルの「Japan, Korea Tussle Over Won」という記事です。

 「最近の中国はどこかおかしい」と思っている方は多いでしょう。私もそうです。やっていることを見ると、どこか子供っぽい。見え見えの駆け引きを繰り返し、世界全体から見れば「何やっているんだ、この国は」と笑われる形になっている。

 ノーベル賞ごときでヨーロッパの一部の国と外交関係を傷つけるなんて常軌を逸している。と思うと、自分では「日本包囲網」を作っているつもりなのでしょうが、韓国の国防相を中国に招く方向だとか。つい最近まで米韓の軍事演習は激しく非難していたのに。

 私はずっと、「組織というのはほっておくと拡張主義に陥る」という考え方です。組織内の人間達の為に役職とご褒美原資が欲しい。秀吉も組織の必然的な拡張主義の結末として海外への道を選ばざるを得なかった、と考えている。

 そして重要なことは、その拡張主義が蹉跌したときにやっと組織の拡張は止まる、ということです。その蹉跌によって組織内に「ここで終わり」の雰囲気がやっと出来上がる。それまではどうしても組織はイケイケになる。日本の戦争に向かう道と終焉もそうだった。

 今の中国を考えると、二つの組織が重要です。それは共産党と軍。表裏一体です。中国の軍はまたホテルから何から経営する大きな利益・資本集団です。鳥居さんの文章はこの点を良く突いている。今の中国の海洋権益拡張主義には、中国内部の力が色濃く反映していると思う。

 問題は「その拡張主義がどこで止まるか」「何で止まるか」です。日本など周辺国家として望ましいのは、内部でそれを抑制する力が生まれることです。しかしそうなるとは限らない。もしかしたら、外への拡張主義を中国がトライし、そこで何かにぶつかって(例えばアメリカの軍事力)、そこでやっと止まるかも知れない。

 やや関心を呼ぶのは、ノーベル賞作家ばかりでなく中国の力のある元政府高官からも「民主化」を要求する動きが出ていることです。備忘のためにその関連記事を掲載しておきます。

 中国共産党の引退幹部ら23人が発起人となり、憲法が認める言論や出版の自由が厳格な統制を受けている国内の状況を痛烈に非難する公開書簡をインターネット上で発表した。

 発表は、服役中の民主活動家、劉暁波(りゅうぎょうは)氏へのノーベル平和賞授与決定直後の11日で、共産党政権は、民主化要求の高まりも警戒してネット上から削除した。

 発起人は、故毛沢東主席の秘書だった李鋭氏、党機関紙「人民日報」元社長の胡績偉氏ら。言論、出版、集会、結社の自由を保障した中国憲法35条が、共産党と政府機関が定める細則のために「絵に描いた餅」になっていると断じた。その上で、全国人民代表大会(国会)常務委員に対し、党中央宣伝部などによる検閲廃止やネット上での言論封鎖廃止などを求めた。

 こうした各方面での動きがどうマージし、中国で今日から始まる第17期党中央委員会第5回全体会議(5中全会)の方向性に少しでも影響を与えるかどうか。可能性としては小さいでしょう。もしそうなら、中国を動かす二つの組織(共産党と軍)の組織内論理の行き着く先を予想しなければならない。企業でもそうですが、組織はほっておけば必ず内向きになる。そして冒険を恐れなくなる。日本近海でスカーミッシュが起きる可能性は小さくはない。

 もう一つのウォール・ストリート・ジャーナルの記事の見出しに使われている「tussle」というのは、「(…と)激しく争う,取っ組み合う《 with... 》」という意味で、文字通り取ると「日本と韓国、ウォンレートで大口論」ということになる。ポイントの一つはここです。

 The U.S. dollar has fallen 12.8% so far this year against the yen but is down only 4.8% against the won. The two traded nearly evenly against the U.S. dollar in 2007 but their performance diverged sharply in 2008 as investors worried about the global economy dove into currencies considered safe, like the yen, while moving out of currencies considered more speculative, like the won. The gap reached its widest point in January 2009, but is now almost as wide.
 日本の企業人ならウォンの動きが実に韓国の輸出企業に都合良く動いていることを苦々しく思っているでしょう。世界経済の危機に当たってはウォンは必ず真っ先に下落し、強さを保つ円との乖離が広がる。そのたびに日本企業の競争力は削がれる、という展開です。

 日本の政府当局者はやっとこの事に気がついた。その重要性に真っ先に気がついたのは、韓国の新聞で社説で日本政府の立場に異議を唱えている。日本の新聞はその重要性に気がついていない。G20での大きな論点になるでしょう。

 しかし一番重要なのは、アメリカがドルの下落をもっぱら自国に有利という立場から放置していることです。にもかかわらず、アメリカの貿易収支がちっとも改善しないのは、アメリカの輸出入の構造が為替弾性値の低いものになっていることを示している。もちろん為替を巡るパワーバランスは限りなく複雑系ですが、問題の放置は危険です。


2010年10月15日(金曜日)

 (11:30)今日はいろいろなリリースがあります。まず伊藤 洋一のReal Europeの第八回、「ドイツでヒット曲を連発するジャパニーズガール」として「SHANADOO」の回がリリースされました。この4人娘はひょんな形で集められて、意外な展開からドイツでヒット曲を連発するようになった。私もちょっと驚きました。

 収録の日。彼女らは派手な白か何かの服装で来るだろうと思って、私はクロをを着ていったら、彼女らも全部クロ。ははは、これにも驚きました。で、「全員が真っ黒」とか言いながら写真を撮った。「へえ、ヒット曲ってこんな形で出来るんだ」と驚くこともありますよ。

 PCからもipod siteからも聞くことが出来ます。文章起こしもされているので、ご自分が好きな形で聞き、読んで頂ければ幸甚です。この一つ前の吉岡徳仁さんの回は、ツイッターでも多くの方から「非常に面白かった」とコメントを頂きました。私もインタビューしていて、目から鱗でした。まだの方は8回と合わせてお聞き下さい。

 もう一つweb 関係を。man@bowのサイトに第27回として「介入、単独と協調と…」を書いたのがアップされました。今正に円が史上最高値(79円75銭)に近づこうとしている最中。タイムリーな記事だと思います。

 雑誌では、PHPの月刊誌VOICEの最新号に日下さんとの対談が載りました。日下さんとは久しぶりの対談ですが、相変わらずお元気で老人用のオムツの話など面白かった。二人の知識はかなり別の所にあるのですが、方向性が一致する。

 放送としてリリースされるのは、「世の中進歩堂」(BSジャパン、午後10時24分)で、今日は『異常な猛暑にテクノロジーが挑む!ヒートアイランド研究の最前線に迫る!』と題して、今年も私たちを苦しめたヒートアイランド研究、そして都市の高熱化をどう防ぐかの研究を紹介します。

 本当に酷かったですね、記録的な暑さが続いた今年の夏。「あんな暑さは懲りごり」と思っている皆さんに、とっておきの話題というわけです。今回、潜入取材するのは、東京工業大学の梅干野(ほやの)研究室。ここでは、テクノロジーを駆使した、ヒートアイランド現象の最前線の研究が行われているのです。

 ヒートアイランドを起こさない街をつくるためにはどうしたらいいか。環境の表面温度を見ることができる特殊なカメラや、最新鋭のシミュレーションソフトを使って導き出された、夏の暑さを防ぐ未来の街の姿を予測します。

 「世の中進歩堂」は10月から3年目に入っているのですが、今まで東京を中心に取材・録画をしてきたのをちょっと足を伸ばして、大阪や福岡での取材・収録を企画しています。番組の幅が広がるのでお楽しみに。

 伊藤 洋一のRoundup World Nowはいつもの通り午後10時45分からです。ラジオNIKKEIとipod サイトでお楽しみ下さい。

 フー、なんでこんなに金曜日はリリースが重なるのかな?


2010年10月14日(木曜日)

 (23:30)今日はチリでの救出劇など大きなニュースがあったのですが、私が「おやっ」と思ったのは「若い女性の収入、男性抜く 介護分野などで賃金上向き 09年調査 製造業と明暗、産業構造の変化映す 」という日経オンラインのニュースです。ちょっと引用させていただくと

 単身世帯を対象にした総務省の2009年の調査によると、30歳未満の女性の可処分所得は月21万8100円と男性を2600円上回り、初めて逆転した。男性比率の高い製造業で雇用や賃金に調整圧力がかかる一方、女性が多く働く医療・介護などの分野は就業機会も給与水準も上向きという産業構造の変化が背景にある。諸外国に比べ大きいとされてきた日本の男女の賃金格差も転換点を迎えつつある。

 総務省がまとめた09年の全国消費実態調査によると、勤労者世帯の収入から税金などを支払った後の手取り収入である可処分所得は、30歳未満の単身世帯の女性が21万8156円となった。この調査は5年ごとに実施しており、前回の04年に比べて11.4%増加した。同じ単身世帯の若年男性は21万5515円で、04年と比べ7.0%減少。調査を開始した1969年以降、初めて男女の可処分所得が逆転した。

 背景にあるのは産業構造の変化だ。円高や中国をはじめとする新興国の経済成長に伴い、製造業では生産拠点などの海外移転が加速。就業者数は09年までの5年間で77万人減少した。

 仕事を持つ男性の20%超は製造業で働いており、女性の10%と比べて比率が高い。

 となる。デパートで売り場が完全に女性優位になっているのは以前からの動きですが、このニュースの通り財布も女性の方が豊かだと言うことになると、買い物(売り場)の方向はますます女性向きということになる気がする。

 いろいろな見方が出来る統計ですが、「男性の20%超は製造業で働いており、女性の10%と比べて比率が高い」なんてのは今まであまり知らなかった。しかし男性も少し努力しないと、意欲でもなんでも女性に後れをとりそうですね。

 女性と言えば、「キャリアアップ講座」で10分ほどお話をしたのですが、すでにキャリアをかなり積んだように見える方々がさらにもう一歩ステップアップということで集まっておられた。今の時代、本当に女性が見ていて気持ちよいくらいアグレッシブです。

 ところで、私がずっと気にしていたインドの英連邦競技会が14日にエンディングになったようで。開始前のような悪評は聞こえてこないし、インドはバトミントン、射撃などで結構メダルを取ったようです。「インドは本番に強い?」。ま結果を見て、またこのサイトに評価を載せたいと思います。


2010年10月13日(水曜日)

 (17:30)こんなことは珍しいな。恐らく世界中のニュース媒体が、新聞、テレビ、ラジオ、ネットを問わず、チリの探鉱夫救出に実に多くのスペースと時間を割いている。

 でもええことじゃないですか。今起きていることは実に明るい。10週間も地下に閉じ込められていた人達が、カプセルに乗って一人、また一人と地上に上がって来ている。今日明日の世界中のニュースはこれで占拠されるだろう。暗いニュースが世界を覆うより良い。

 ところで、先日銀座話を書きましたが、今丸の内を仕事場にしているある方から「続編」として次の話題をいただきました。関心のある方はどうぞ。

 Y-Casterをいつも拝見しています。10月9日付の「銀座話」の感想と いくつかの情報です。
  1. 銀座5丁目から南側に出ている店の種類がかつてと大きく変わった事には同感です。銀座6丁目の外堀通沿いのバーの店主は、夜の人通りが減り、来る人の種類も変わったというような趣旨のことを言っていました
  2. また、「路面店なので、ふらっと入ってくる客もいるが、バーでの過ごし方、マナーが伝承されていないように思う。店の中では帽子を脱ぐ、店主から指定された以上に不要に荷物などで場所を占有しない、大声で騒がないなどのマナーが若い人たちに伝わっていない。」と。銀座で商売している人たちの危機感は強いと思います
  3. 2009年5月の連休明けにオフィスが品川から丸の内に戻りました。その頃は、丸の内のランチ価格は、おおむね1,000円以上で、八重洲、京橋、銀座一丁目とは100円から150円ぐらいの価格差がありました。最近は、丸の内のランチ価格も下がっており、価格差はほぼ無くなって来ました。今年の夏は異常な暑さもあって、丸の内からのランチ客の京橋、銀座一丁目への流れは随分細くなったのではと思います。おいしい個性的な店が京橋、銀座一丁目にはあるのですが
  4. 三菱地所が丸の内の再開発に着手し、年末のルミナリエを実施した頃は、東京駅から丸の内仲通りを通って国際フォーラムの中庭を経て有楽町、銀座へという人の流れを作り出すことを意識していたと思います。しかし、丸の内、特に仲通りの再開発が進んだこと、丸の内と丸の内以外の食べ物の価格差が縮んだことによりエリア内で人の流れが閉じているかもしれません
 ところで、『厄介な国、中国』(岡田英弘、ワック文庫)は読まれましたか。中国について様々な興味深い視点を提供してくれます。
 そうなんですよ。厄介な国は読もうと思っていた。推薦もされたので、今新幹線の中ですが、ネットで注文しました。今週末に読むのが楽しみ。


2010年10月12日(火曜日)

 (23:30)悲しかったことと、逆にちょっと嬉しかったこと。

 12日の昼間、ちょっと時間をかけて店を探しました。「この人の口は絶対大丈夫」と私が信頼を寄せる人から、「大阪でうまい蕎麦屋はここ」という店を教わったのです。それは、天神橋7丁目......にある、と。

 大のそば好き。東京でもうまい蕎麦屋を探し歩いてきた私としては、これは聞き逃せない。夏は絶対各種蕎麦ですが、最近のようにちょっと温度が下がってくると、釜揚げ鴨汁うどんを食べることも多いのですが、とにかくうまい蕎麦屋が好き。

 蕎麦だけでなく、その前に食べる蒲鉾や卵焼き、辛みを効かせたじゃこなどなどもも重要だと思っている人間ですが、「それらも含めて全部美味しい」とその人。「そりゃ行かないと」と思って、ちょっと時間を見つけて探したのです。

 天神橋筋商店街は、6丁目の三井住友銀行のところでアーケードが切れる。7丁目に行くとアーケードがない。そこまで歩いたのは初めてでしたが、どうも見つからない。銀行の人に聞いても埒があかない。

 7丁目の商店街に入ってしばらくしたら花屋さんがあったので、そこで聞いたら「見落とし易いから気をつけて」と言って教えてくれた。配達をする店の人は、その街の事をよく知っている。

 がしかし。一回行き過ぎて「おかしいな」と思って戻ったら、その店は何と定休日だった。天神橋筋商店街では、私が行く火曜日はけっこう休みの店が多い。しかし、しかし、と非常に残念。今度行って本当に美味しかったら、またこのコーナーで紹介します。「アンカー」の山本さんは知っていたな。「大阪は東京ほどはうまい蕎麦屋は少ない」と思っていただけに、その情報自体は嬉しい。開いていなかったのは悲しい。

 逆にちょっと嬉しかったことは、各週でこのサイトで書き続けているコラムですが、その編集部から

 お世話になっております。
日経BPでございます。

 先週木曜に公開させていただきました
「BRICsの衝撃」:日本が知らないインドの“実力”
http://premium.nikkeibp.co.jp/em/column/itou/81/index.shtml
今回も毎日、非常に高いページビューを獲得しています。

 手前どもが「環境」を専門にしたウェブサイトのため
場合によっては一日のアクセスが15000PVほどの日もあるのですが
今回、先生の記事だけで2万3000PVを獲得しています。

 改めて、インドという国への関心の高さに合わせて
先生の記事のおもしろさがPVを高めたと思っております。
ありがとうございます。

 またTwitterでの口コミが高いPVにつながっているのも
見逃せない傾向であると実感しております。

 と。まあせっかく書いても読まれないんじゃしょうがないので、読まれていると言うことは良いことだし、基本物書きだと思っている私にとっては、嬉しいメールです。「あれ、アップして何日だったっけ」と思ったりしました。

 よく続いている、と自分で思う一方で、まだまだ書きたいことは一杯あるなとも。まあせっかく多くの人が読んでいてくれるのなら続けてもいいかな、と。


2010年10月11日(月曜日)

 (16:30)レギュラー的な雑誌、ネットなどの原稿がふっと途切れた隙に、来年早々書き上げるく「新潮新書」本の章立てを考えています。やはり温めればアイデアは沸いてくるもので、まあ一歩前進かなと。

 新潮新書からはもう一冊「カウンターから日本が見える」という形で出しているので、分量などなどは分かっている。問題はいかに読んでもらえる、面白い、問題提起力のある本を書くかです。

 来年春には今のipad に加えて東芝からも、シャープからも、そしてソニーからも出ているだろう電子書籍端末でも読める電子ブックにすることが狙いですから、それなりきの工夫もしたい。まあ詳しくはまだ担当者とも話してないのですが、今月が終わる頃までにはアイデアを温めて、フォーマットも作りたいと思っています。

 本の書き方はいろいろあるでしょうが、私はどちらかと言えば全体像を描いて、それを章に割り、その上で各章の文章を書いていくというスタイルです。どこに何を書くかを想定するタイプ。それが興奮するくらいにうまく出来ると、自分では満足する本が書ける、という考えです。

 まあどうなりますか。新番組も一応始まって少し落ち着いてきたら腰を据えて本との取り組みです。


2010年10月11日(月曜日)

 (09:30)今朝のABCニュースアワーを見ていたら、昨日は「10.10.10」という3ゾロの日だったんですね。特にどうこうということはないのですが、何故かゾロ目好き。

 昨日の「地球アゴラ」では改めてアメリカの医療費の高さにビックリ。貧血で2日入院して170万円。あり得ない数字です。私の予想は40万円でしたから。「この大きな乖離はなに?」と思いました。

 「アメリカで年間に自己破産する人の数は150万人だが、そのうち6割の人は医療費が払えなくて....」というアメリカからの報告(緒方さん、吉田さん)があったのですが、「ここまで高いとそうだろうな」と思いました。

 首藤さんが示したフリップに、アメリカで全く無保険の人の割合が17%(約4600万人)という数字が出ていましたが、それを見ながら「アメリカでは7人に一人が貧困層に入る」という統計と良く符合するな、と思いました。

 アメリカの保険制度改革に関して緒方さんが「倫理的には正しい方向」と言っていたが、私は改革はアメリカ経済の景気を維持するという経済的側面からも正しいと思う。何故かというと、「いつ病気になって高額な医療費を支払わねばならない」と思っていたら、消費など出来ない。消費はある意味、将来への自信・安心の中で生じるので。

 国民の20%弱もの人が「いつか高い治療費、医療費を支払わねばならない」と考えて暮らしているとしたら、それはアメリカ経済全体としては大きな消費抑制効果を持つ。景気が良くて社会全体に自信があふれているときは何とかなる、という気分が生じるのでしょうが、反対の時は「使えなくなる」となる。アメリカ経済の浮揚力が弱い一因でしょう。

 だから、なるべく「いつ来るかもしれない医療費でお金に行き詰まるかもしれない」と考える人を少なくする必要がある。アメリカの二人のアゴラ-は、「保険に入れる人は増えるかもしれないが、医療費の抑制には」と言っていた。それも残る問題ですね。それにしても、紹介された in-store clinic でもジェームズさんが支払っていたお金が二万円近かった。

 うーん、「日本の病院や薬局で万札以上を出したことなんかないな.....」と思いながら見ていました。そういう意味では、日本の医療が抱える問題は確かに多いが、しかし保険のシステムはアメリカなどに比べれば良く出来ている、と。

 「地球アゴラ」には久しぶりで、スタジオも変わっていましたが、改めて情報量の多い良い番組という印象。そりゃ深くはないですよ。しかし、現場の人が実際に出てくるのが良い。彼らの報告が一番です。

 でも絵が時々乱れるのがやはり気になる。ネットの限界ですが、ハイビジョンの時代にあれはないだろうということで、総合への格上げもなかなかうまくいかないそうだ。うーん、まあ良い番組なので長く続いていること自体がナイスなことだと思う。


2010年10月09日(土曜日)

 (20:30)チベットで中国中央政府(共産党の支配下)による人権弾圧を間近に見てきた人間として、ノーベル賞委員会が中国で服役中の民主活動家・劉暁波氏にノーベル平和賞を授与したことを知ったときは、「やった」と思わず叫びました。と同時に、これは我々にも問題を投げかけている、と思いました。

 私が注目したのは授与理由です。ノーベル賞委員会のヤーグラン委員長は8日の記者会見で「今、中国での人権抑圧に目をつぶれば、世界での(人権の)基準を下げることに直結する」と述べた。これは、中国が世界第2の経済大国となるに伴い人権批判を弱めがちな国際社会に、改めて警鐘を鳴らすものだ。

 同委員長は「経済などの権益のため、人権という普遍的価値の基準を下げることがあってはならない。だからこそ、我々が声を上げた」と。実際の所、中国は「経済大国カード」を今も切りまくっている。ギリシャに行って「ギリシャ国債を買う」と言い、アメリカに行くと「ボーイングを何十機買う」と言う。

 今の先進国はどこも、職を生む商売が欲しい。日本もそう。その対象国は今伸びつつある中国だ、インドだと喧しい。ノーベル賞委員会はそこに警鐘を鳴らした。「商売や経済的利益だけで、言いたいことを引っ込めていいのか」と。正しい反骨精神ここにあり、という感じだ。

 対する中国の論理は、「ノーベル賞の選定者は中国の平和や団結を望まず、中国社会が無尽の紛争に陥り、ソ連式の分裂に向かうことを望んでいる」(人民日報系列の時事情報紙・環球時報)というものです。「中国がソ連のように崩壊したら、周辺の国には難民が雪崩れ込むし、経済も混乱して世界経済も大きな打撃を被るよ」というもの。

 しかしそうでしょうか。未来の話なので誰も正確には分からない。しかしわたしはこの問題について、そうはならないとの見方を書き、「人々は呆然と体制の変化を受け入れるものだ」と書いた。確かに国は割れるかもしれない。多少の混乱やデモはあるだろう。ソ連崩壊もそうだった。

 しかし、「自国民がノーベル賞を取ったことも知らせられない中国という国の安定」は、そもそも価値があるのか、持続性があるのかは問わなければならない。中国のメディアは劉暁波氏のノーベル平和賞受賞を報道せず、「劉暁波氏のノーベル平和賞受賞は、同賞への冒涜」という部分だけを知らせているという。当局が「知らせること自体を恐れている」ことを如実に示している。

 筆者には、自国民のノーベル賞受賞を知らせることが恐ろしくて出来ないような体制と、その体制が担保している「中国の平和や団結」はそもそも価値がないし、持続性もないと考える。

 今の中国では、ネットで「劉暁波」は検索できず、携帯メールでも「劉暁波」と打つとメールがそもそも流れないと報じられている。そんなことはあってはならないと思う。

 これはいろいろな人と意見が一致するのですが、中国共産党は戦後の混乱した中国に方向性を与え、時にはその方向性(文化大革命、改革開放など)を変えながら、中国をまずまずの経済的繁栄に導くには大きな力があった。しかし、これからの中国は国民の為にも、世界にコンフォームするためにも「新しい体制」が必要だと思う。そのポイントは民主化だ。

 人権に関しては保守派、開明派など中国共産党の中でもさらに分類できるが、全体的に言えば、「共産党の一党独裁」という体制そのものが時代遅れになっていると理解できる。欧州の共産党がそうであったように。

 国民に情報を知らせず、発言の自由も許さない体制に、未来への持続性はないと思う。劉暁波さんが起草した08憲章を今朝の朝日などで改めて読んでみただ(ネットではhttp://mikitogo.at.webry.info/200812/article_17.htmlなど)、別に過激でも何でもない。普通のことを言っている。

 今回の劉暁波氏のノーベル賞受賞と、それに反発する中国政府の姿勢は、今の中国の体制の異常性を明確に示した。ど同時に、中国に対して「経済で恩恵をもたらしてくれる」という理由で発言を抑え気味な今の世界に、強い警鐘を鳴らしたと言える。我々もこの点は深く考える必要がある。


2010年10月09日(土曜日)

 (16:30)大好きなタウンウォッチングの一環で、金曜日にゆっくり銀座の中央通りを歩き、二つのことに気が付きました。

 一つは1丁目から4丁目までの銀座(あくまで中央通り沿いということで、四丁目の交差点までです)と、その先の5丁目から8丁目までの銀座では、同じ銀座でも随分と色合いが違ってきているということと、その5丁目から8丁目の銀座中央通り沿いには従来の我々の感覚からすると想像を絶する安値店が出来ている、という点だ。今更という人も居るかもしれないが、私は改めてそれに気が付き驚愕した。

 私の見落としかもしれないが、和光からカルチエ、さらには橋までとホテル西洋、そこから道の反対側をとって返しての銀座三越までの中央通り沿いには、いわゆる高級店が並ぶ。和光があって、シャネル、カルチエがあって.....と。特に銀座2丁目の交差点に立つと、ブランドショップの固まりのように反対側にはルイビトン、ブルガリがある。そこから少し4丁目の方向に歩くと私が好きな伊東屋があって、さらに松屋、田屋、銀座三越と続く。

 しかし銀座三越を八丁目の方向に信号を渡ると、まず右手にユニクロが登場し、少し行くと松坂屋があって、その1階から5階には営業時間も価格帯も違うフォーエバー21がある。

 この店には珍しくゆっくり入って、どんなものがどんな価格帯で売っているのか調べました。びっくりしました。安いものは数百円で、高いものでも2000〜3000円までで大量に衣類が売られている。私が見たものはすべて中国製だった。

 正直「よく松坂屋はこれを入れたな」と思う一方で、午後7時半に閉まる松坂屋と午後9時までやっているフォーエバー21が同居というのも、珍しいというか、一つの建物、一つの小売店の形態としては極めて異例だな、と思いました。

 その後も8丁目に向けてはH&Mがあり、ZARAがあり、そしてアバクロがある。アバクロは店はユニークかもしれないが、「従業員の接客態度は問題」という声が銀座に長年店を開いている人の多く言っている。有楽町サイドから見て右の中央通り沿いは、高級と言われる店はLANVIN、モンブラン、あとは時計の専門ビルなど限られてくる。「何でも5250円」という店も相変わらずある。

 善し悪しを言っているのではなく、私の印象として同じ銀座と言っても、有楽町サイドから歩いて和光の角っこから中央通りを観察すると、「左と右では随分違ってきた」という印象を持ったのです。もっとも、有名なクラブなどは5丁目から8丁目にかけての、特に並木通り沿いにあることは今も同じです。

 街を見た後、しばらくご無沙汰していたお店に行き、そこのマスターとしばらく「銀座話」を展開しました。その人の話です。あくまで伝聞。

  1. ビルや建物にかなり空き(ビルの上は無論のこと、路面でも)があるなかで、家電量販店などが進出を計画しているが、銀座の”偉い方々”は、街としてそれを押し止めている

  2. 今の銀座を全般的に言うと、「よく人が入っている」と言える食べ物の店は値段が5000円程度までの蕎麦屋くらい。同伴もアフターも少なくなっている

  3. 銀座に人が来なくなった一つの原因は、線路の反対側、つまり丸の内サイドに有名ショップ街、レストランが出来たことも影響している
 といった話でした。「1」と「2」は日本経済全体が抱える問題とも通じる。つまりデフレ傾向と民間で流れるお金のベロシティの低下。「3」は、銀座という街の地理的なポジション変化です。私も有楽町のペニンシュラと電気ビルの間から丸ビルの裏までを時々歩くのですが、この丸の内中通り(でしたっけ)は本当にいろいろな店が揃っている。彼は、「財閥の力は恐ろしい」と表現。

 実際の所、東京駅を使う乗客はわざわざ銀座に出るよりは丸の内の大きな商店街で買い物をしたほうが便利です。足回りが。わざわざ銀座に出るのはなかなか大変。地下鉄を使わないと行けない。

 定点観測しているといろいろ分かる。そういえば先々週名古屋に行ったら、「プリウス景気」の話があったな。名古屋の街は、一時の苦境から抜けて、夜も人が多くなったと。対して相変わらず元気がないのが大阪だとか。そういえば最近福岡に行っていない。東京で聞く福岡に関する景気は、「かなり悪くなった」というものです。あの都市はちょっとディレイする。


2010年10月08日(金曜日)

 (13:30)今週は私にとって二つのレギュラー番組の始まりだったので、やはり気ぜわしい週でした。火曜日朝にはABC放送の「おはようコール」、木曜日の夜7時からは東京FMの「TIMELINE」。この二つが新しい番組として始まった。

 ABCの放送は一回やって、「朝起きること自体がチャレンジ」とまず思いました。東京では朝6時からの放送を今まで5年くらい木曜日にやっていましたが、「おはようコール」は開始がそれより更に1時間早い。さすがに月曜日の夜は早く寝なければならないと思いました。

 番組の形式は、朝のニュース番組の典型ですが、一つ違うのはテレ朝の「やじプラ」のようにはコメントする私のような人が複数はいないこと。基本的には私一人です。その点では、2000年代前半のフジテレビの「EZ!TV」に似ている。やりやすい面がある一方で、いろいろな見方を紹介する必要がある。最後は私の意見ですが。

 「TIMELINE」は私にとって初めてのFM放送でのレギュラーなので、一回通しをやったあと「そうか、別の番組とは違ってゆっくり喋ろう」と思って、木曜日はその方向で努力しました。うまくいったかどうか。聞いていた友人によれば、「全体的に感じは良かった」と。あとでメールをもらいました。

 両方の番組とも、スタッフはなかなか気持ちがよい。まあいつも何かを作っている人たちですから、私以上に「番組をいかにしたら良くできるか」を考えている。それが彼らの仕事ですから。そういう意欲と、私の能力が合致するのが一番良い。テレビは常に翌日には視聴率が出る。それがすべてではないのは当然ですが、火曜日の「おはようコール」は良かったそうです。

 新しい二つの番組が始まりましたが、従来の番組にも引き続き注力していきます。ラインアップから今日これからの番組を紹介すると、「世の中進歩堂」は、『ボードの上に立つだけで自由自在に移動可能!未来のスケボー登場』をお送りします。金曜日のBSジャパンの午後10時24分からです。

 私も知らなかったのですが、乗り物の常識を覆す様々な移動システムが芝浦工業大学の古川研究室で開発されているのです。その中の一つが、ボードの上に立って、重心移動で前後左右好きな方向に移動できる“超コンパクトモビリティ”

 まさに未来のスケボーという印象。将来的には、自転車やバイクなどの移動手段に代替することもできる乗り物として研究が進められている。さら研究室では、自動車の運転を支援するシステムの開発も行っている。最新技術を駆使して、移動を安全かつ快適にして、生活を便利に変えるための研究に迫ります。

 伊藤 洋一のラウンドアップは、放送は通常バージョンが夜10時45分からありますが、実はその前にITがらみの特集を一本収録します。ゲストはインターネットビジネス、ベンチャー企業論、産業クラスターを専門領域とする富士通総研主任研究員の湯川 抗さんです。湯川さんの話はいつも面白い。放送日が決まったらまた紹介します。

 さて、書き原稿です。日経BP Ecomanagementではこのところ中国が続いていたので、もう一つの私の大きな関心の的・インドを今回は取り上げました。日本ではほとんど報じられていないが、今インドでは英連邦競技大会が開かれている。これはインドの将来を見る上で非常に興味深いので、それを取り上げています。それと皆さん、「インドって、オリンピックでほとんどメダルを取れてない」って知ってました。人口は軽く10億人を超える。さて、何故でしょう。

 man@bowの私の連続コラムでは、今は第26回として「“介入”の効果と持続性」がアップされていますが、来週早々には最新アップとして、介入に関する次のエッセイ(第27回)がアップされます。

 いずれもお楽しみに。


2010年10月07日(木曜日)

 (13:30)去年もそうですが、今年もノーベル賞を複数の日本人が受賞したことは嬉しい限りですが、私には彼らが一様に言っていることが気になる。それは、『若者よ、海外に出よ』と言う言葉です。

 今年それを特に言っているのは、ノーベル化学賞の受賞が決まった根岸英一・米パデュー大学特別教授。ご自身はもう50年も前にアメリカに移られた。そして受賞した今、次のように述べている。

 「かつては日本の若い研究者が頻繁に(根岸氏の研究室を)訪れたが最近はほとんどない。『若者よ、海外に出よ』と言いたい。日本は居心地が良いし、海外の(研究機関の)方が優秀とは限らない。しかし日本を外から見る機会がこれからますます重要になる。日本はもっともっとノーベル賞をとっていいと思う。そのためにはそれなりの努力が必要。今後はその役に立つ活動をしたい」
 気になったのは、「かつては日本の若い研究者が頻繁に(根岸氏の研究室を)訪れたが最近はほとんどない」という部分かな。海外に頻繁に行き、広い世界を見た方が絶対いいのに、と私も思う。私も好んで海外に出る方なので。

 最近は私は先進国より途上国の方に行く。そこが居心地が悪くて綺麗じゃなくても、日本にないものなら、そこから学ぶことが多い。日本に居続けるよりよほど情報量を多くゲットできると考えているのです。

 多分学問の世界もそうです。今は日本から大量のノーベル賞受賞者が出ている。ナイス。しかしそのうち切れるのではないか、4〜5年後には逆に少なくなるのではないか、と心配なのです。日本はいつまでもノーベル賞の受賞者が出る国であって欲しい。


2010年10月05日(火曜日)

 (13:30)まだまだ大きな危うさは残るということでしょう。廊下での25分間の日中首相同士の会談が実現、首脳外交の再開では合意した。そりゃそうだ、11月には胡錦濤さんが横浜のAPECに来ないわけにはいかない。時間が迫りつつある。

 しかし報道によれば、『尖閣諸島に関して、菅首相は「わが国固有の領土であり、領土問題は存在しない」と表明。一方、中国外務省は5日、温首相が「中国固有の領土だ」と主張したと発表した』(読売)という。つまり真っ向から対立している。この点で歩み寄りはない。

 問題は、両国が今後この対立点を前面に出すのか、それとも後ろに置いておけるのかということだろう。香港紙の報道によれば中国は、「東シナ海をチベットや南沙諸島と同様に中国にとって核心的利益の場所」として今年の初めに決めたという。だとしたら、問題は尾を引くし、尖閣沖で今回のような問題が起こるたびに、「尖閣は中国の固有の領土」と主張するだろう。日本はそれを跳ね返すカードを持たなくてはいけない。

 ニュースが多い日で、日銀は「包括的金融緩和について」というpdf発表を行い、新たな金融緩和を行う姿勢を示した。

 実質的には「現在、年0・1%としている政策金利を年0〜0・1%とし、実質的なゼロ金利政策を実施する。物価の安定が展望できると判断するまで、実質的なゼロ金利政策を継続するとしている。金融機関が持つ資産を買い入れるための基金の創設も検討する」(同)というもの。

 今週金曜日には米9月の雇用統計が発表される。11月の初めには次回のFOMCがある。日銀としてはアメリカに緩和の先を越されて、円高に移動するのが嫌だったのだろう。実際に日銀の発表を受けて、円はドルに対して若干弱くなっている。83円の防衛ライン(仙石官房長官の発言)にうろうろされて、やきもきしていたのだろう。

 しかしこれで問題が解決したとは言えない。むしろ、年末に向けて問題は複雑化すると考える。当面の課題は、アメリカ経済の動向である。


2010年10月04日(月曜日)

 (13:30)確かダークマターに関してツイッターに書き込んだ時に教えてもらったと思いますが、「インフレーション宇宙論」が家に来たので読み始めている。で、今日のここの文章は短いのですが、この本は面白い。本当に分かりやすいように書いてあるのが良い。

 宇宙とは不思議ですね。「銀河系はあと50億年後にアンドロメダ星雲と衝突する」と言われても、ピンと来ない。そりゃそうだ、気の遠くなるような遠い先の話なのだから、と思う。しかし一方で少し腹も立つ。まあ、人類も絶対に大きく変化しているはずだが。

 「仮説」が宇宙に関する物理学を進歩させると言った記述に、「これは他にも当てはまるのかな....」などという考えを起こさせる。「であるから、であるべきだ」といった考え方のルートを辿るのは、なかなか面白いと。

 ところで今私は、「アルカリ人」にちょっとはまっています。ネットで買える水で、普通の水とは違う。しかし、大部分の人(私もそれに入ります)が、「うまい」「ちょっと変わっているがすっきりしている」と褒める。

 また効能も知らずに普段飲む水の代わりとして飲んでいるのですが、気になる方はネットなどでお買い求めて頂けると良いと思います。


2010年10月03日(日曜日)

 (13:30)ちょうど一ヶ月がたちましたが、8月末から9月の初めにかけて行ってきたチベットに関する文章をこの週末にまとめることが出来ましたので、アップします。

 尖閣列島沖の接触事故で日中関係が緊迫している中で、「中国が東シナ海も”核心的利益”に格上げした」という報道がある。そうした中で、チベットの実情をお伝えできたらと思います。

 このchat のコーナー
 このサイト

 に「チベット=栄光と圧政を抱く民族の故郷、そして尖閣」として書きました。ご一読頂ければ幸甚です。


2010年10月02日(土曜日)

 (16:30)「ありゃ、このままではまた起きてしまうんだ」とがっかりしました。

 SECとCFTCが共同で現地時間の9月30日に発表した「5月6日に起きたフラッシュ・クラッシュに関する報告書」です。覚えている人は多いと思いますが、ニューヨークの株式市場がその日、たった30分ほどの間で特に明確な材料もなくダウ平均で往復1500ドル以上スイングした。この日、ニューヨークのダウは一時前日引値比998ドル安になり、それが世界的な市場の混乱の原因となった

 ニューヨークの株価の急落は当然ドル安要因で、日本で盛んだったFX取引で円ショートをしていた人のかなりの部分が、まずストップロス・オーダーで、次には口座の損失限度額オーバーでの強制カットで大きな損失を被ったと言われる。つまり、一人アメリカではなく世界のマーケットの問題だったのです。

 SECとCFTCはそれが起きた5月の中旬過ぎにも暫定レポートを出したが、私はこのコーナーの5月12日のところで、それに対しても「期待を裏切るものでした」と書きましたが、今回も同じです。再発防止は担保されていない。

 レポートはここにpdfとして存在しており、104ページもありますが、概要は最初の11ページほどを読めば分かる。分かり安い英語です。「5ヶ月という時間をかけて、分かったのはこれだけか」(当初言われていたことがかなり多い)、「防止策は明確にはないんだ」と分かる。

 もっと恐ろしいのは、フラッシュ・クラッシュを引き起こしたのは、誤注文でも、コンピューターの故障でもなく、「the large fundamental trader」の一つの注文だったというのです。そのトレーダーは、全ボリュームに対する自分の注文の執行限度を9%としただけで、価格に対する縛りをしなかった。それが故に、「ホット・ポテト現象」が起きたとこのレポートは指摘する。

 「ホット・ポテト(hot-potato)現象」とは、熱いポテトを投げられた人は、それが熱いが故にもっておられず次の人にまた投げる現象を指します。投げられた人はまた熱いからその次の人に投げる。この場合は売りの連鎖。

 つまり、「the large fundamental trader」、言うなればまっとうな市場参加者のオーダー(報告書にもmutual-fund company とあり、ウォール・ストリート・ジャーナルにはWaddell & Reed Financialと名前を書いてある)が、その時既に荒れていた、流動性の枯渇気味の市場では「ホット・ポテト」となって一気に下げを加速した。市場の短いブレークのあとは、今度は一気に上げに転じた、という展開。

 報告書は通常なら市場の下げの緩和機能を持つ

 ・high frequency traders (“HFTs”) and other intermediaries8 in the futures market;
 ・fundamental buyers in the futures market; and
 ・cross-market arbitrageurs who transferred this sell pressure to the equities markets by opportunistically buying E-Mini contracts and simultaneously selling products like SPY, or selling individual equities in the S&P 500 Index.

 が機能しなかった背景を説明し(6ページ)、さらに以下のようにアルゴリズムが抱える問題に触れている。

The Sell Algorithm used by the large trader responded to the increased volume by increasing the rate at which it was feeding the orders into the market, even though orders that it already sent to the market were arguably not yet fully absorbed by fundamental buyers or cross-market arbitrageurs. In fact, especially in times of significant volatility, high trading volume is not necessarily a reliable indicator of market liquidity.
 問題はここからです。5月6日のフラッシュ・クラッシュから得た教訓として報告書は以下のように主に二つ挙げている。

 教訓1=One key lesson is that under stressed market conditions, the automated execution of a large sell order can trigger extreme price movements, especially if the automated execution algorithm does not take prices into account. Moreover, the interaction between automated execution programs and algorithmic trading strategies can quickly erode liquidity and result in disorderly markets. As the events of May 6 demonstrate, especially in times of significant volatility, high trading volume is not necessarily a reliable indicator of market liquidity.

 教訓2=Another key lesson from May 6 is that many market participants employ their own versions of a trading pause-either generally or in particular products-based on different combinations of market signals. While the withdrawal of a single participant may not significantly impact the entire market, a liquidity crisis can develop if many market participants withdraw at the same time. This, in turn, can lead to the breakdown of a fair and orderly price-discovery process, and in the extreme case trades can be executed at stub-quotes used by market makers to fulfill their continuous two-sided quoting obligations.

 つまり価格の縛りをつけないアルゴリズム取引の危険性を指摘し、市場から多くの参加者が撤退(オーダーを引っ込めること)したときには流動性危機が発生し、それが「公正で秩序だった価格発見・形成プロセスの崩壊」(the breakdown of a fair and orderly price-discovery process)に繋がる、と。その結果起きるのは、「trades can be executed at stub-quotes used by market makers to fulfill their continuous two-sided quoting obligations.」(異常な価格での相場形成)だというのです。これに関連して言うならば、報告書には以下の記述がある。

Between 2:40 p.m. and 3:00 p.m., approximately 2 billion shares traded with a total volume exceeding $56 billion. Over 98% of all shares were executed at prices within 10% of their 2:40 p.m. value. However, as liquidity completely evaporated in a number of individual securities and ETFs,11 participants instructed to sell (or buy) at the market found no immediately available buy interest (or sell interest) resulting in trades being executed at irrational prices as low as one penny or as high as $100,000. These trades occurred as a result of so-called stub quotes, which are quotes generated by market makers (or the exchanges on their behalf) at levels far away from the current market in order to fulfill continuous two-sided quoting obligations even when a market maker has withdrawn from active trading.
 SECやCFTCの報告書発表に当たった人たちは、「このレポートは市場への信頼を高めた」と自画自賛しているが、そうでしょうか。ウォール・ストリート・ジャーナルが「a market so fragmented and fragile that a single large trade could send stocks into a sudden spiral」と言うように、私には「アメリカのコンピューター化された市場は基本的には脆弱なまま」「アルゴリズム取引への取り組みなどもうちょっと具体的な市場安定化策が必要」と考えた。ちょっとがっかりですね。


2010年10月01日(金曜日)

 (16:30)まだ一人残されているのは残念ですが、拘留されていたフジタの社員3人が帰国。喜ばしいことですが、私が興味があるのは、「一体現場で何が起こったのか?」「それはどの程度の犯罪だったのか?」です。

 数日前に書いたのですが、「軍事管理区域」に入ったと言うことで逮捕されたが、一体そこはどこで、どんなところなのか。普通の人が「ここは入っていけない場所」だと分かるのか、どうか。

 これも先日書いたように中国の「軍事施設」というのは、橋も含めてそこら中にある。私らもチベットを旅行している時に、間違って橋を撮影していたら、誰何されていたかもしれない。普通に見える橋が、「軍事施設」なのです。

 チベットの場合は兵士も街中に一杯いて、それも撮影禁止です。実際に我々の仲間でも誰何された人がいた。撮影対象に兵士は入っていなかったのに。だから、中国ではごく日常的に起きていることが、たまたまフジタの社員にも生じたような気がする。

 彼らが記者会見すれば、実際に何が起きたのか分かる。それを知りたい。だって、何においても、「事実関係」が一番重要じゃないですか。尖閣諸島周辺で起きた問題もそう。日本は漁船が急に方向を変えて巡視船にぶつかってきたと主張し、「ビデオもある」と示唆している。総理大臣がそれを見ていないとは驚いた。

 事実関係を示すのなら、それを早々に公表するのが当然だった。しかしそれを遅らせているうちに、「ビデオを公開することが是か非か」になってしまった。そういう意味では、二つの事件で事実関係があまりにもあいまいなまま過ぎ去っているのは問題だと思うのです。まずそれをはっきりさせないと。

 逆に嬉しいニュースはMRJの生産開始です。MRJはこのサイトの記録を見たら、昨年の8月05日に取材している。その時には、凄くシャープな座席の模型にも座らせて頂いて、その他いろいろな話を伺った。

 それが実際に生産開始。日本の航空機産業にとって非常に重要な出来事、一日だと思う。日本は戦後しばらく航空機を作れなかった。やっとYS11を作ったが、これはプロペラ機で、あまり人気も出ずに終わった。今度のMRJは、ボンバルなどと争うことになるが、私は勝機は十分あると思っている。

 日本の航空技術者の熱い期待を乗せたMRJが、早く世界の空を飛んで欲しいと思っています。



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