BLUE ANGEL


ある日、ラジコン技術をつらつらと読んでいた。
MKの広告ページでワタシは息が止まりそうな衝撃をうけた。
あの、あこがれの、幻の、BLUE ANGEL60 が、希望者多数のため
限定再生産開始と小さく出ていたのである。

「あのヒコーキが手にはいるかも!!」

ワタシは脱兎のごとく家を飛び出し、模型屋へと車を走らせたのである。

「BLUE ANGEL注文!注文!注文!」

「注文ったって、あれもうとっくに製造中止になってるよ。」

「いや、だからね、ほら、これみて! 再生産始まったんですよ!!
 注文!!!!!」

店のおやじはびっくりしながらも受け付けてくれた。
待つこと1ヶ月、あこがれのヒコーキはついに我が手に入ったのである。
しかも今度こそ飛ばすための条件は完全に整っている。
3度目の正直というやつである。
キットが入荷した時に、お店で箱を開けて、必要になるパーツや、
エンジンもその場で注文した。
いよいよ製作が始まった。
FLASHとちがい古いキット、スロット加工もほとんどなしなので、
製作は大変なのである。
当然、フィルムではなく、塗装仕上げにした。
この機体を作るためにボール盤(ホームセンターで7000円という
破格値で打っていた)やら、コンプレッサーまで購入しているのである。
塗装仕上げ以外は頭になかったのであった。
なにしろ、組んだり接着を待つ時間よりも、部品を眺めて考えている時間の方が
はるかにながい。
接着剤も、瞬間接着剤2種類、エポキシ2種類、ウッドグルー、セメダインCを
使い分け、ゆっくりゆっくり作ったのである。
塗装には、下塗りはイリサワのウレタンシーラー、
配色にTHCエアロカラー(アクリルウレタン)を使用。
全備重量3200gと、このクラスの塗装仕上げではかなり軽くあがった。



先日の日曜日、前夜からの霧雨は朝やみそうな気配。

「おお、今日こそは初飛行!」

待ちに待った好天。
飛行場に着くと、曇り空ではあるものの、ほとんど無風に近く、気温も低め。
エンジンの慣らしに&テスト飛行にはこれ以上ない条件。
早々に機体を組み立てると、みんなが寄ってくる。
まずはブレークインから。
スロットルをあけ、ニードルも開きキャブを親指で押さえてクランクし、
燃料を通わせる。
そしてスロットルを閉じ、ブースターをオン、スターターをキュン。
おおお、一発で始動じゃぁ!!
なんとさい先が良いことか。
スロットルをゆっくり開いていくと燃料が濃いのでもたつきながらも
回転はあがる。 開ききったところでブースターをはずし、ニードルを
少し絞る。
かなり甘い状態で1タンク回しきって、約8分であった。
少しエンジンを休ませて、しかし冷え切らない内に2タンク目へ。
今度も一発で始動。燃料を少し多めにキャブに呼び込んでおけば、
始動はいたって楽であることがわかる。
先ほどよりさらにニードルを絞り込み、ピークを出したり甘くしたりを繰り返す
もっともピークといっても、まだ完全に回りきってはいないのであるが。
この回は燃料は10分持たせることができた。
そして3回目。
燃料の呼び込みがチョット少なかったようで3度ほどスターターを当てると
始動。今度はいったんピークを出してそこからごくわずかだけ回転が下がる
あたりまでニードルを甘くする。
その状態でスロットルを操作し、スローがちゃんときいてスティックに
回転がついてくるかをチェック。
じぇんじぇん問題なし。スロットルを絞り込んだままにしても止まらず
いつまででもちゃんと回っている。
ニードル以外にいじる必要は全くなかったのである。

「これなら行ける!あげるぞ〜〜〜!!」


送信機でエンジンカットがちゃんと働くのを確認、燃料を足して、各舵の動き、
エンジン周りの緩みなどがないかすべてチェック。
エンジン再始動!
かなり甘いニードルではあるが、機首をあげても下げてもほとんど問題なし
なので、いよいよ空へ。

地上をタキシングしながら滑走路のスタート位置に着け、その間もう一度
舵の動きをチェック。

さぁ、行こう!

スロットルを ぐいい っとあけていくとあっという間に加速していく。
少し滑走が長く必要だったものの少し多めにエレベーターを引くと
青い天使号は大地を蹴ったのである。

この瞬間、25年の長きにわたった怨念は、ついに晴れたのであった!!!
最初のターンの後、各舵のトリムを取る。
何度か水平飛行とスロットルの具合を試した後に、3回ロール、正宙返り、
などを試す。
宙返りはごくわずかに右翼が下がる。これは予定したとおりである。
サイドマウントなので、左翼端にバラストを埋め込んだのだが、必要最小限に
したかったので、あえて完全にバランスがとれるよりも若干少な目
にしてあったのだ。後は何度か飛ばしてちょうどいい量を探し当てればOK。
3回ロールは、フラッシュRSよりも軸の通りがよく、設計図通りの
エルロン舵角で、3回にちょうどいい具合であった。逆に言えば、現行のスタント
には、エルロン舵角を増やした方が良さそうである。

あまり調子にのっちゃいけないと思っていると、外野の声が聞こえてくる。

「どんだけ長くやってるベテランだって、新作機の初飛行は緊張するんだからぁ。
いま、絶対に心臓 ”ばくばく” してるって。あはは。」

からかわれている。だぐぁ、そのとーりだもんね。足は震えそうだし、
心臓が口からせり出しそうになってるんだよぉぉぉ。
初回は早めにおろすのじゃ。
滑走路上を低空で脚を出して(カッコイイなぁ)一度パスさせてから場周飛行
、進入コースにのせて、着陸。
後ろから拍手が聞こえる。
ついに空を飛んだ青い天使号であった。(曇天だったけどね)


機体データ