ここらで、ちょっと体操をしてみましょう。
といっても、この体操によって、飛行機の運動をちょっぴり解説します。

イスに深く腰掛け背筋を伸ばし、顎を引きます。
まず両耳を結んだ線を軸にする感じで
頭を前に下げたりげたり後ろに傾けてください。
この動きを”ピッチング”といいます。
そして、耳を結んだ線をピッチング軸といいます。
次に鼻のてっぺんを中心に回転させるするようなキモチで頭を左右に傾けてください。
右に傾けたときを”右バンク”、左に傾けた時を”左バンク”といい、
この運動を”ローリング”といいます。そして、
鼻を中心にした軸を”ロール軸”
といいます。
そして、こんどは首を中心にして頭を左右に回します。
これを”ヨーイング”といい、このときの首がヨー軸です。

飛行機の動きは、”ピッチ””ロール””ヨー”の動きであり、
これを意図的に制御するのが操縦です。
タダの体操でないことが判りましたか?
この名称と動きを、体操することによって、完全に身につけてください。

よく調整されたラジコン練習機は、一旦水平にまっすぐ飛び始めたら、
少々の外乱があっても、機体がまっすぐに戻り飛んでいきます。
これを”自立安定性”といいます。

たとえば、まっすぐ飛んでいるときに、すこし右へ機体がバンクしたばあいには、
どのようなことがおきると思いますか?
飛行機の場合、常に操縦席から見た右、左という表現をします。

ここで、主翼の上半角について話をしなくてはなりません。
飛行機を後ろから眺めますと、図のように、左右の主翼端が中央に比べ
持ち上がっています。
この角度を”上半角”といいます。

たとえば、機体がごくわずか右にバンクしたとします。
すると、右の翼は水平に近くなり、左の翼はさらに角度が増えますね?
では、その時に今度は機体の上から眺めると、主翼はどう見えますか?
ごくわずかではありますが、上半角があるおかげで、
機体を上から見たときの主翼投影面積が、右より左は小さくなるはずです。
さあ、面積のところで覚えたことを思い出してください。
面積が増えると、揚力が増えるのです。
この場合では、少し右バンクしたぶん、右翼の投影面積が増え左翼は減りますから、
右翼の揚力が増えることになります。
ということは、増えた方が持ち上がりますから、機体のバンクは自然にもとに
戻るのです。
ただし、これも限度があって、あまりこの性質を強くしすぎると
(上半角をつけすぎると)、
飛行機はターンができなくなったり、ダッチロールに入ったりしますので、
飛ばしにくくないようにほどほどに上半角はついているのです。
練習機では、自立安定性をやや強めにしてありますが、
スタント機では、バンクが付いたら、ついたまま飛んでいないと
スタントしにくいので、上半角はあまり付いていない機体がおおいです。
すなわち、その飛行機の目的によって、自立安定性を多めに取ったり
少な目にしたりしているのです。
ロール軸の自立安定性は上半角でとっていますので、
キットを組むときは、説明書通りの角度をつけましょう。
伊達や酔狂で角度がついているわけではないのですから。

機首を左右に振るヨーイングに対してはどうやって安定を取っているのでしょうか?
これは垂直尾翼の役目です。
飛行機の進行方向に対して、ちょっとだけ機首が右を向いたとします。
コックピットに座っているパイロットからみると、
機首は右を向き、飛行機が左へ横滑りしていきます。

このとき機体を上から見ると、垂直尾翼は
進行方向に対して前縁が右へちょっと向きます。
すると、垂直尾翼には揚力が発生します。垂直尾翼の右側が負圧になり
左側が正圧になりますから、垂直尾翼は機体の右側に引っ張られます。
すると、機首は左を向きますから、もとの進行方向に自動的に向き直るのです。
これは、ヨー軸の自立安定性ですが、特に”風見効果”といいます。
風見鶏とまさに同じことがおきるわけです。

そろそろ疑問が出ませんか?
風見鶏は、ヨー軸がどこにあるか見た目で判りますね?
では、飛行機のヨー軸やロール軸はいったいどこにあるのでしょうか?

それは、”機体重心”です。
飛行機の、ロール軸、ヨー軸、ピッチング軸は、すべて機体の重心を
貫通しています。
機体重心は、数学的に言えば、x、y、z、座標の(0,0,0,)にあたるのです。
では、その、”重心” はどこだ??
初心者向きの回答としては、機体の説明書、設計図を見ればかかれています。
これは、燃料を積まない状態で、エンジンや無線機をすべてのせた時の
重心です。
では、ピッチング軸の話は、次の重心のところで説明しましょう。
あ、いけねぇ、平面形の話しなくちゃ。
重心に行く前に、一つ増えました。


なお飛行機を自作するような中、上級者向きには、
ちょっとわかりにくい話ですが、M.A.C.の項目をご覧ください。