子どもたちは夜と遊ぶ

辻村深月・講談社文庫

「冷たい校舎の時は止まる」が面白かったので、最新作「ロードムービー」も気になったのだが
先ずは図書館で見つけた本作を借りて帰った。
やっぱり好きだ。この謎めいた世界観。願わくばストンと落として欲しい。

これはミステリなのか、推理小説なのか。
とにかく「i」は誰だ? 浅葱に孝太を「i」と思わせつつ、それはミスリードで素直に恭司が「i」なのか?
浅葱を拾った! やっぱり恭司が「i」か、或いは孝太に届いた脅迫状から張っていたのか。
そろそろ種明かしに移行か。

ここからネタバレ御免。

伏線も次第に解けてくる。
月子はPCのパスワードを変えるためキーワードを探していて、恐らく藍か浅葱の英字に行き着いたか。
それが萩野にもらった蝶の名でもある? 萩野は孝太を好きだからこそ、何かに気付いていた?
じゃ怪しいのは孝太なのか? でも孝太には日向子がいるからな。
月子は紫乃が浅葱に会いに行った事を知っている。最後の章タイトルを考えるとやっぱり「i」は恭司か。
シータか。それに蝶の意味があるのか? 月子が浅葱に示した写真は、浅葱の背中にでもある蝶の形の痣か?

えー。狐塚月子かよ。幾らなんでも学生の苗字をここまで引っ張るのはどうかな。
菅原榊のパターンがあるから月子の苗字は気になってたけど。この人、これが好きなんだな。
んー、これはドンデン返しとしては強引さの方が鼻につく。
萩野だって、月子に遠慮しないよ…あ、月子ではなく既に真紀への気持ちを洞察してたの!?

正解はやはりアサギマダラ=シータだったか。萩野は月子が浅葱を好きなのを知って送ったんだな。
で、シータと掛けたのは誰のどんな意思?
あぁ、これは浅葱が自分で選んだのね。他のアドレスも気になるところだが。

これで恭司=「i」はなくなった。少なくとも浅葱実行犯としては…ん?
恭司は真紀を送ったんじゃなく、浅葱をやっていたのか。それとも秋先生が黒幕?
翼の帰還で語られた「i」は坂本が知らないって言うんだから秋先生は外れた。
恭司よりも年上そう。坂本は恭司を知ってるだろうし。でもそうすると、あとは誰だ?
…って、翼のフェイクかよ!

んー、最後の浅葱はどうなの。これも、「冷たい校舎の時は止まる」のラストの春子と一緒で蛇足だな。
だって本物の浅葱なら、逃げ出してさ警戒されてる中、ここには来れないでしょ。
恭司に殴られに出てきたのは自ら連絡入れたのにせよ、恭司に会える様な普通な場所にいたってのはねぇ。
ただ、全体的に読ませる本ではあった。恩田陸でもっと破綻するパターンにも耐性がついてるから大丈夫。
天童荒太の「家族狩り」の時くらいに怖い思いをした。

依存が良くないってテーマ…と一言にしちゃうと薄いな。楽しかったよ。萩野と紫乃の死で皆殺しの殺伐さもあるけれど。
タイトルの意味は? 夜は何のメタファーか?
浅葱の中の人格のドンデン返しも、ん〜微妙だな。
本質的な部分で私は紫乃と月子の確執を理解できて無い。これは女性心理なんだろうな。
この感情を1冊に膨らませたのが「冷たい校舎の時は止まる」でしょ。深月と春子の確執そのものだよね。
残された謎としては、秋先生の魔法のフレーズ。これは気になるな。 (ネタバレ謎解きはココココを)
無粋なツッコミとしては、孝太が底抜けにいい人過ぎる。
妹に危害を加えられたにも関わらず浅葱への対応は冷静すぎて、むしろ「情緒のネジが2,3本足らない」気がするよ。
恭司の抱えている過去も、中途半端なクローズアップだった気がする。

(08/11/03)


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