10年目 〜日の丸を背負って〜

今年は就任10年目を迎える。 早いものだ。J2とJ1でそれぞれ1度ずつ優勝し、カップ戦の2連覇も経験した。 昨年は待望の海外タイトルを手にする事もできた。 今年は何を目標にしたものか。

「か、会長。大変です。日本サッカー協会のカワブチ会長がお見えです。 代表監督のシーコさんもご一緒だそうです」 高嶋秘書の声が震えている。 新会長の就任挨拶?だとすればシーコ監督が何故同行しているのか。 「第1応接室へお通ししなさい」 まぁ、会ってみれば分ると言うものだ。

「私が代表監督ですって?」 カワブチ会長の話しとは私に対するU23監督の就任依頼だった。 来年のU23世界大会の為に、今年行われる予選から指揮を取ってくれと言う。 年代制限とは言え、日の丸を背負い日本を代表する監督に、この私が?

「少々考えさせて頂けないでしょうか」 2人を送り返した後もソファから立ち上がる事が出来ない。 監督経験の無い一介のクラブオーナーに何を期待すると言うのか。 しかし翌日の新聞紙面は一様に私の事を書き立てている。 クラブハウスには正月と言うのに電話対応の職員が右往左往。

品川シュトルツも本格的な世界進出を狙う大事な年だ。 しかし日本サッカー界にこの身が役に立てるなら。 それに、もう一度くらい夢を見るのも良いだろう。

内心気持ちを固めながら、月末の返事までは執務をこなす。 関東ガスから再度スポンサードを受けられる事になった。 更に電力会社、大手ディスカウント、地銀ともスポンサー契約を締結できた。 また今年からは全国ネットのジャパンテレビが試合を放送してくれると言う。 チーム人気も全国区と言う事だ。

今年契約更改を控えるのは8人。 一昨年まではプレイスキッカーを一手に担った大幡。彼も千代反田や宮田の台頭でやや影を潜めている。 昨年から僅か10百万の上乗せである220百万で1年契約。 そしてその宮田が60百万で5年契約。成長著しい和登も60百万で3年契約を結んだ。 費用対効果を考えると・・・

昨年の最優秀評価点を上げた長橋との交渉は難航し、契約不調と伝えた新聞社もあった。 結果的にはほぼ50%増の240百万の2年契約で何とかサインしてくれた。 同じく中盤でベストイレブンに何度も選ばれたバイティンガー。彼も50%増の 120百万で5年契約。

エース竹村はチームで30歳を迎え、複数年契約を希望してきたが 10%増の110百万の1年契約を押し切った。 最後は大野と喜沢だ。 昨年は路木、源の加入、山形の帰国と中盤の層は揃った。 バックアッパーとして何試合にも活躍してくれた大野に自由契約は忍びなく 125百万の減額提示を行ったが、結局大野はチームを去った。 対する喜沢は160百万の減額提示を渋々ながら了承。

選手たちとの契約を済ませ、今度は監督の人選だ。 ジャファール氏はワールドチャレンジカップの優勝をタテに留任を迫ってきたが、 私はアルゼンチンの智将メニリティ氏と総額10億強で5年契約の監督契約をとりつけた。 彼は4−4−2、中央突破が好みであり、正にシュトルツにうってつけの豪腕監督となってくれるだろう。

品川区からの強い要請で自然公園の造成のため、第3セクターにも2億円の出資。 幸い今年は好況の見通しで、建築費用も見積当時よりは安く上がりそうだ。 また品川アミューズメントテーマパークが計画通りオープンした。

新人獲得では昨年のユース選手権で大活躍した阿部勇樹(16歳)クンと 30百万で2年契約を結ぶ事が出来た。 大野の抜けた穴は新しい戦力で補っていくしかない。

「10周年記念誌の選手リストはまだ変更可能か?」 急遽、大幡のクウェートFC移籍(330百万)が決まったのだ。 J1優勝、カップ戦優勝を知る戦士がまた一人旅立つ。 メニリティ監督には新たなシュトルツの歴史を作ってもらおう。彼らと共に。

背番号名前ポジション年齢契約年数年俸身長(cm)/体重(kg)留学先
岩下圭次郎GK223/3100181/77アカプルコ
宮田正光DF221/560178/68リスボン
路木龍次DF192/223178/70
和登博士DF201/360173/70
千代反田充DF232/2190191/85
中村忠DF223/595175/69リスボン・ソフィア
森岡茂MF225/540174/70リスボン
長橋康弘MF261/2240178/70サンチャゴ
★9竹村裕次FW301/1110171/72
10山形恭平MF215/515167/61リスボン
11バイティンガーMF251/5120188/82リスボン
13大石康二FW192/383171/66
14源紫電MF201/1100178/72
16阿部勇樹MF161/230176/78
20佐藤浩GK183/320181/74アカプルコ
21原竜太FW202/315171/68
23喜沢順朗DF291/1160170/65
27水城知宏FW223/5100169/68サンチャゴ

カワブチ会長にはU23監督就任受諾のTELを入れた。 『U23の新監督は品川シュトルツ オーナー』 『カワブチ会長大抜擢。U23に新人監督』 『予選突破なるか、問われる手腕』 おいおい、結構メディアは辛口だな。 流石にジャパンテレビだけは好意的な報道が多かったとか。

さて2月だ。 先ずは監督最初の仕事、メンバーの選考だ。 品川シュトルツからはU23選手を全員連れていきたいのは山々だが、そうは行かない。 岩下、宮田、森岡、大石と各ポジション一人ずつ連れて行く事にする。 後は時間も無いのでスタッフの集めてくれたビデオを中心に選考しよう。

ポジション   名前     年齢   所属 ★はJ2

 GK    真田雅則    (21)(清水エスパルス)
 DF    保坂宣之    (22)(モンテディオ山形★) 
       海本慶治    (19)(名古屋グランパス★)
 MF    与那嶺ジョー  (22)(大宮アルディージャ)
       古嶋栄太郎   (22)(モンテディオ山形★)
       北澤豪     (22)(東京ヴェルディ)
       サムソン吉田  (19)(ジェフ市原★)
       人見俊哉    (22)(ヴァンフォーレ甲府)
       伊東輝悦    (21)(清水エスパルス)
 FW   ☆間中宏茂    (20)(ベガルタ仙台)
       水原清史    (19)(柏レイソル)
       呂比須ワグナー (22)(アビスパ福岡)
残念ながら柏レイソルの片切叡山は選考から漏れた。品川シュトルツからも原や阿部、源を 同行させてはどうか、と言う声もあったが先ずは彼ら16人で<U22 アジアトーナメント>に挑もう。 専門誌の前評判では 「オフェンス:4.1/ディフェンス:3.9/スタミナ:3.8/システム(4−4−2):4.0/戦術(中央突破):3.2」 と、まずまずであった。

緒戦はインドネシア代表。 急造チームのため、連携に不安を残したが地力の差は歴然で、間中の2ゴールなどもあり 4−0と大勝。多くの選手を試す事もできた。 続くカザフスタン代表では岩下が最後に1点許したものの、大石が後半に2得点を挙げ シュトルツ勢の面目躍如。5−1で不安は無い。 3戦目はオーストラリア代表の胸を借りる。 前試合の失点を糧に岩下がファインセーブを連発。大石のセンタリングに森岡がゴール。 監督として鼻が高い。2−0と言うスコア以上の差がついた試合だった。 最終戦は強豪サウジアラビア代表に真田が2点を先制される苦しい展開。 しかし前半の内に呂比須の4試合連続となるゴールを返し、 後半は大石が同点弾、キャプテン間中の勝ち越しゴールで3−2と勝負強さも発揮して見事 優勝に輝いた。

大阪エステーラのオーナーは臍を噛んでいるに違いない。 彼は私の監督就任に最後まで異を唱えつづけ、自チームの選手が代表に選出されなかった事を 恣意的な人選だと糾弾していた。私だけではなく選手たちにも、この優勝と言う結果は 最良の自信になった事だろう。

しかし世界は広い。 予めカワブチ会長に依頼し、2月後半には強豪国との遠征試合を組んでいたのだが 旅疲れもあってか惨敗。 ドイツ代表との試合こそ、人見が1ゴール挙げたが イングランド代表、イタリア代表との試合は海本、伊東が退場となり正に手も足も出ずに90分が終った。 本当に彼らは22歳以下なのか? ちなみにスコアは vsドイツ(1−4)、vsフランス(0−3)、vsイングランド(0−6)、vsイタリア(0−3)。 これでは大阪エステーラのオーナーの喜ぶ顔が目に浮かぶ。

この頃、品川シュトルツには浦和レッズのトゥット(19歳)から入団を希望するオファーがあったそうなのだが、 私の好みの問題でこれを容れなかった。

帰国すると、<U22 アジアトーナメント>の殊勲と その後の海外遠征の体たらくで私の監督手腕には賛否両論と言うところであった。 7月の<世界スポーツ大会 予選>に向けて3月開幕のJリーグを観戦して新戦力を探さねばなるまい。

今年から新たにJ1リーグに挑むのはベガルタ仙台と横浜FCの2チーム。 横浜FCには、品川シュトルツで名を馳せた加東左京の甥である、加東右京(笑)が在籍している。 名勝負を繰り広げる事が出来るだろうか。 逆にJ1を去っていったのは大分トリニータと、何とジュビロ磐田。 磐田はFWには井上を擁するものの失点が多く、勝ち点を伸ばす事が出来ずにJ2降格の憂き目を見た。 メニリティ監督には入念に守備練習を課すように依頼した。 優勝した頃の堅守をもう一度、である。

3月には好況と言う事もあり、クラブハウスの増築にも踏み切った。 27億にまで手許資金が落ち込んだが、これだけあれば当座も何とかなるだろう。 今年はメニリティ監督の下、この様なスタメンで優勝を目指す。

                     (控え)    (留学)
         竹村  原        大石      水城(サンチャゴ)
 
バイティンガー  森岡  長橋  山形   阿部、源
 
       路木  宮田  和登     喜沢      中村(ソフィア)

          千代反田

           岩下                 佐藤(アカプルコ)

オフェンス:3.5/ディフェンス:3.2/スタミナ:3.5/システム:4.0/戦術:3.5
1stステージの大事な開幕戦。またしてもオープニングゴールはエース竹村が決めた。 やはり開幕戦に相性が良い様で何より。山形がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれる上々の滑り出しだ。 ホームスタジアムに詰めかけた満員のサポーターを前に優勝宣言。

しかし2節のヴァンフォーレ甲府戦でコロっと負ける辺りがシュトルツの甘さ。 メニリティ監督の指示がしっくり来なかったのか、U22代表選手である人見に先制を許す。 全員攻撃のゲキで一旦は同点に負いつくもののカウンターからとどめを刺されてしまった。

しかし名将は敗戦から学ぶ。 4月は大宮アルディージャ、横浜F・マリノスと連勝しチームの勢いも戻ってきた。 オフィスでホッと胸を撫で下ろしていると、スカウト部から強敵浦和レッズの井原(17歳)と 契約寸前まで話しが進んでいる旨の報告を受けた。 井原ねぇ。またしても私の一存でこの話しは水に流した。

大阪エステーラとの5節は0−0で延長突入し辛くもVゴール勝ち。 ただし内容は圧倒しており、山形、森岡、千代反田の3選手が10.0評価を得た。 とは言え、次のパープルサンガ京都にも延長Vゴール勝ちで勝ち点2を取り逃したと言う感がある。 U22監督としては、宮田が京都戦でJ1初ゴールを決めて、10.0評価のマン・オブ・ザ・マッチに 輝いた事に満足している。 中盤でベストイレブンに選ばれた山形も7月は代表に召集するか?

営業部長がチームの人気を考慮すると、入場料を3,000円に上げても満員になるだろうと進言してきた。 以前も3,000円に上げた時期があったけれど空席が目立つようになり、2,000円に下げたのであった。 入場料を上げて初めて迎えるホームの試合は7節のFC東京戦。 見事にスタジアムは満員のサポーターで埋め尽くされた。 大事な試合に限ってホームで苦戦するのがシュトルツの悪い癖。 原がレッドカードで退場となる苦しい展開になってしまった。 終始押されっぱなしだったものの、ハーフタイムでメニリティ監督から守りつつ 左からカウンターを狙う様に指示があり、長橋が後半に1点を挙げて勝利した。 営業部長も1億の収支を挙げて満足げであった。

8節は柏レイソルとのアウェーゲームでまたしても延長突入。 片切叡山はやはり良いところは無く。試合はVゴール勝ちだが勝ち点1を取りこぼし3位に転落。 ホームでの連続満員記録が途切れたのは9節のアビスパ福岡戦。 2位シュトルツと5位アビスパの好ゲームだったが100名分程度の空席があった。 試合は竹村にレッドカードが出されたものの、1−0で逃げ切り2位浮上。 しかしレッドカードは大概ホームゲームだなぁ。

10節の相手は今月の上旬にカップ戦で2連勝した浦和レッズ。 竹村の出場停止でスーパーサブの大石を先発出場させたものの、 エメルソンに良い様に走られ、1−2で星を落としてしまった。 2位はキープしたものの首位ガンバ大阪とは勝ち点差で11と大きく離されてしまった。

月間MVPは千代反田が選ばれ、ベストイレブンにもシュトルツから4人、ガンバ大阪からは5人と 両チームが1stステージを牽引する。今月は視聴率も16%後半を記録した様で、ジャパンテレビ幹部が 労をねぎらう一席を設けて下さった。(しっかり番組出演させられた後でね)

出場停止明けの11節は竹村がハットトリックと東京ヴェルディを4−0と圧倒した。 カップ戦の2回戦も大阪エステーラに2連勝し、危なげなくベスト8に名乗りを挙げ、 勢いは最高潮と思われた。 が、4位清水エスパルスに0−1で敗れた12節にガンバ大阪の1stステージ優勝が決まってしまった。

続くヴィッセル神戸にも0−1と無得点で敗れて3位後退。 今年も20百万ほど協力したお祭りで気晴らしでもするか。 ところが気晴らしの甲斐無く、最終節は優勝の決まったガンバ大阪に1−2と敗れて最終的に 5位にまで順位を下げてしまった。3位、4位、5位と勝ち点差が1なだけに、最終節に買ってさえいれば 3位だったのに。賞金も3億に止まってしまった。興業面からも是が非でも2ndステージでは優勝を狙って欲しい。

10年目 1stステージ
優勝 ガンバ大阪    勝ち点40 13勝1敗1分け 41得点 8失点
2位 ヴィッセル神戸  勝ち点33 10勝2敗3分け 35得点16失点
3位 浦和レッズ    勝ち点29 10勝4敗1分け 29得点16失点
4位 清水エスパルス  勝ち点28  8勝3敗4分け 30得点13失点
5位 品川シュトルツ  勝ち点27 10勝5敗0分け 22得点11失点

カップ戦も格下であるJ2の水戸ホーリーホックに先勝しながら アウェーで0−1と敗れ、通算1−1のため延長戦に突入。 宮田、長橋が10.0評価と奮闘し、何とか1点をもぎ取った。 辛くもベスト4進出だ。

『清水エスパルスの大黒柱、元日本代表の矢沖田 シュトルツに移籍か?』 衝撃的な1面記事にオフィスが騒然としたのは最終節の終った直後。 チーム監督との不和が原因だった様だが、シュトルツには一切の接触は無く、 清水エスパルスは監督交代を選んだそうだ。

その他6月には中村がソフィアから帰国し、和登がリスボンへ1年間の留学へ旅立った。 オールスターには千代反田、長橋、森岡が選出され、3人とも前半45分プレイした。 長橋がFKの1ゴール他、2アシストと大健闘でMIPに選ばれていた。 月末のニュースでは4ヶ月連続となる千代反田の月間MVPの報がもたらされた。 宮田も初のベストイレブン入り。

サポータークラブも何と会員が8万人を突破したそうで、嬉しい限りだ。 1stステージの戦いを振り返ると、バイティンガーに元気が無いのが気がかりだ。 それだけ山形の成長を喜ぶべきなのか。 長橋、森岡にバイティンガー、山形を加えた中盤カルテットには2ndステージにもう一度頑張ってもらおう。 すると、阿部、源はまだベンチを暖める日々が続きそうだな。 契約期間の問題で留学にも出せない。来年以降で留学先を探しておかねばなるまいな。 ディフェンスを見ると、宮田が千代反田を凌駕する才能を発揮しそうだ。 二人の日の丸戦士は今後もチームの頼もしいDFとして活躍してくれるだろう。

さ、7月だ。<世界スポーツ大会 予選>の開幕。 シュトルツからは岩下、宮田、森岡、大石に加えてソフィアから帰った中村を加えた5人を選出。 間中が代表から漏れる形となった。間中だけではなく、この世代の代表として恥じないプレイを期待しよう。

ところが、いきなり頭を抱える事になってしまう。 カタール代表との緒戦で絶対的なエースである呂比須が負傷。 何と言うことだ。慌てて大石をピッチに送りだし、水原との2TOPを組ませる。 試合は森岡の10.0評価で3−0と白星発進。

ネパール代表との2試合目も森岡10.0評価で1−0、 続くタイ代表との3試合目では大石が4得点と大ブレイク。当然の10.0評価で4−0大勝。 2位にまで浮上。

3位中国代表との試合で首位浮上と行きたかったのだが、DF保坂が退場。 これを見逃す中国FWではなく、0−3と完敗。順位が入れ替わり中国代表が2位浮上。 邑久村大誉(29歳)のシュトルツへの移籍希望などに目もくれず、今は予選突破のみ。

怒涛の巻き返しが始まる。 タジキスタン代表は森岡の2得点で撃破。 続くグループ首位である韓国代表を大石の2ゴールで逆転で下し、 本戦出場を決めた。 良かった。本当に良かった。最終戦のシンガポール代表戦は4−0で有終の美を飾った。

<世界スポーツ大会 予選>
1位通過 日本代表    6勝1敗0分け 17得点 5失点
2位通過 中国代表    5勝1敗1分け 13得点 3失点
3位通過 韓国代表    5勝2敗0分け 22得点 6失点
4位通過 カタール代表  2勝2敗3分け  3得点 6失点
成田空港には多くのサポーターが我々の帰国を待っていてくれた。 大阪エステーラのオーナーも苦い顔でカワブチ会長ら、J1諸クラブの幹部とともに 我々を出迎えてくれた。 素直にありがたいことだ。記者の取材には、本戦に向けてJリーグでの更なる活躍を期待すると答えた。 さぁ、2ndステージが始まる。 戦いには終わりは無い。

その2ndステージを前に、水城がサンチャゴから帰ってきた。 これでFWが竹村、大石、原と合わせて4人体制となる。 メニリティ監督の起用法が見ものだ。 取敢えず空いた留学枠を活用せずに、喜沢をサテライトに落とす。 本来ならば源を留学に出したいところだが、契約期間の問題ではいたしかたあるまい。

2ndステージの開幕戦、竹村、岩下と言ったレギュラースタメンをコンディション不良で欠く 不安な出だしではあった。 大石、原の2TOPとGK佐藤のスタメンでベガルタ仙台とのアウェーゲームに臨んだが 山形の先制ヘッドで落ちついた。後半から入った水城が早速2ゴールと熾烈なFW争いに 強烈アピール。4−0と幸先のよい開幕戦となった。

ヴァンフォーレ甲府との2節には水城が先発出場し、しっかり1ゴール挙げる仕事人振り。 宮田と長橋が10.0評価をもらう危なげない試合運びであった。 この試合後、岡津スカウトの苦労の甲斐あり、クロアチアのU19代表 アシモビッチとの契約が成立した。 180百万で年俸が合意。バイティンガーの後継となるだろう。 クロアチアリーグではアシモビッチ旋風を呼び起こしたと言う逸材だ。 11月のチーム合流が楽しみだ。

8月はその後も熾烈なFW争いが良い結果を生み出す。 3節の大宮アルディージャ戦では後半から出場した竹村、大石がそれぞれゴールを決めて3−0。 横浜F・マリノスとの4節は初めて先制ゴールを安永に決められるものの、 やはり後半から入った大石、竹村が合わせて3ゴールを挙げて逆転勝利。

活気あるシュトルツFWに目をつけたのはテーグFC。 水城に470百万のオファーを提示してきた。 しかし彼には11月のU22代表で活躍してもら為にも国内にとどまってもらわねば。 シュトルツのオーナーとしてはFWの人材過多を感じないでもないが、とにかく丁重にお断りした。

水城がその期待を知ってか知らずか、大阪エステーラとの5節ではハットトリックを達成。 千代反田の退場をものともせぬ3−0の圧勝であった。 続くパープルサンガ京都戦ではサテライトから喜沢を呼び出し、CBで先発。 満員のホームスタジアムで久しぶりの勇姿を披露した。8月は6戦負け無しの首位で終える事が出来た。 しかし月間MVPはオルザデベが受賞。

9月に入ると総務部長からスタジアムを更に増築してはどうか、と言う意見も挙げられた。 これには財務スタッフから大反発。 それはそうだ、3月に増築したばかりだもの。どうやら好況に付き業者の煽りで、その気にさせられた様だ。 流石に35億の追加出費は否だ。 関東ガスの副社長に怒られてしまう。

スカウト部はオーストリア代表のシンドラー(20歳)と交渉に入ったが、 これ以上FWを増やす訳にはいかない。 水城、大石とU22代表FWもいる。ここは交渉を打ちきった。 メニリティ監督のチーム改造も進められた。 千代反田をリベロから外し、もとのCBへ。 代わって宮田をリベロに据えた。この判断、吉と出るか?

高嶋クンから品川区役所の区報をまとめてもらったところ、 住民は55万人にまで増えたと言う。 住宅も7%、スポーツも10%と比率を上げ、シュトルツの協力にも助役からの感謝の言葉が あったそうだ。

広報スタッフから、サポーターからスタジアムにゲームコーナーを希望する 声があるらしいとの連絡を受け、検討する事にした。 もう少し様子を見ながら慎重に考えよう。

そんな雑事に終われていると、緊急連絡が入った。 東京スタジアムからだ。 FC東京との7節の試合中に山形が負傷したと言う。 しかも今期絶望とか。11月の代表召集も、これでは見送らざるを得ないか。

FC東京戦は昨年も竹村がケガを負っている。 協会に異議申立てをしたが、却下されてしまった。 大事な選手たちを何だと思っているのか。 汚いプレーにはキャプテン竹村がキレた。 竹村はハットトリックの大活躍。山形の後に右MFに入ったのは大石。 正にスクランブル体制だが、これで整った。

首位をキープしたままで8節は柏レイソルが相手。 右MFとしてスタメンに名を連ねたのは阿部。山形が帰って来るのは いつになるか分らないが、医療スタッフとの連絡は密接に取り合う事にしよう。

9節のアビスパ福岡戦では、いよいよ水城も閃光を発するボレー炸裂。 アビスパ福岡の息の根を止める決勝ゴール。 首位固めも磐石かと思われたが、10節の浦和レッズ戦はホームで吉野に先制を許す苦しい立ち上がり。 浦和のカウンターの切れ味は相変わらず鋭い。 浦和FW渡部は勢い余ってレッドカードを受けるものの、10人になった浦和レッズはかえって 動きが良く2点目を取られ、シュトルツは完全に空中分解。手も足も出ずに0−2の完敗であった。 不幸中の幸いは2位ガンバ大阪も負けて勝ち点差が縮まらなかった事か。

敗戦の3日後にはカップ戦の準決勝1試合目が行われる。 気を取りなおしてヴィッセル神戸をホームに迎えよう。 右MFには阿部ではなく、大石を据えて迎撃体制は万全。 竹村が前半に1ゴール挙げ、後半は代わった原の追加点で2−0と先勝。

11節を挟んでカップ戦準決勝の2試合目。 アウェーでのゲームは熾烈なせめぎ合いの結果、1−1のドローで90分を終え トータル3−1で決勝戦に勝ち進んだ。

しかしこの疲れからか、12節の5位清水エスパルス戦は2−2で120分フルタイムドロー。 これで勝ち点2を失い、ガンバ大阪が勝利した為に首位陥落。 バイティンガーの評価点10.0も霞んでしまう。 9月もオルザデベが月間MVPを受賞。首位奪還の原動力と言えよう。

3年ぶりのカップ戦の決勝。 相手は躍進著しいアビスパ福岡。 もはやJ1強豪チームに名を連ねる侮れないチームだ。 しかし、勝負強さでは品川シュトルツが一日の長。 森岡が個人技でGKジーグをかわし決勝ゴールを叩きこむ。 反撃を凌ぎきって3年ぶり3度目のカップ戦優勝。 貴重なゴールを量産した水城が高々とカップを掲げる。 歓喜の輪の中に山形がいないのが残念でならないが、サポーターと喜びを分け合う夜となった。 大会のMVPは中村忠が選ばれた。地味な仕事人への評価は非常に励みになるだろう。

今年は、この喜びに慢心する事無く2ndステージの残り試合に集中しよう。 メニリティ監督も勝って兜の緒を締めて、先ずは13節のヴィッセル神戸戦へ取り組んでもらおう。 3位のヴィッセル神戸とのアウェーゲームであったが、2−0の横綱相撲。 ガンバはVゴール勝ちしたために勝ち点が34で並び総得点で辛うじて首位奪還。

14節の相手は9位の横浜FC。 これは絶対に落とせない。 プレッシャーから過去何度も格下相手に苦汁を飲まされてきたシュトルツだが、 メニリティ監督からシンプルにプレイする事を指示されたイレブンは 前半から効率よくゴールを挙げ、3−0できっちり勝利した。 路木が初めてマン・オブ・ザ・マッチに輝くと言う嬉しい知らせのおまけ付きだ。

最終節は2位ガンバ大阪との直接対決。 勝ち点で並んでいるため、この試合で優勝が決まる。 ホームスタジアムは満員。8割はシュトルツサポーターだが、流石に大阪からガンバ大阪大応援団が一角を占める。 大事な試合で退場者を出す悪癖は直らず、バイティンガーが前半に危険なタックルで一発退場。 この隙を逃さず、吉原が先制ゴール。 ハーフタイムにメニリティ監督から、10人でパス回しを早めに速攻の指示があったが ガンバ大阪のディフェンスに阻まれ、ここまでかと思ったロスタイム。 水城の起死回生の同点ゴール。これには2万人近くのシュトルツサポーターも狂気乱舞。 こうなれば勢いはホームのシュトルツ。 竹村のVゴールで2ndステージ優勝をもぎ取った。

一番喜んだのはバイティンガーだった。 竹村に駆け寄り、抱き合って喜ぶ。 宮田、水城、大石らはレギュラーとして味わう優勝に思わず涙ぐんでいる。 このシーズンは苦しい試合を良く戦った。 若手主体のチームながら、勝負強さを身につけたシュトルツの黄金時代がしばらく続くか?

13勝1敗1分けと言う成績も然る事ながら、34得点8失点と、やはり堅守が返ってきた事が大きい。 8失点はガンバ大阪と並んでJ1チーム唯二(?)の一桁失点であった。 2位は当然ガンバ大阪。同じく13勝ながら2敗を喫し、勝ち点2差の37でシーズンを終了した。

個人タイトルはオルザデベが個人二冠を達成。 25ゴールで吉原と得点王を分け合い、7.8点で年間最優秀評価点に輝いた。 シュトルツは18ゴールで竹村がランク7位。2ndステージからの水城が12ゴールの17位は立派なものだ。 長橋が8ゴール、森岡は7ゴールと2列目の得点が多い事も優勝の一因。 U22代表大石も5ゴールと要所で見せてくれた。

オルザデベには敵わなかったけれど、千代反田(7.6)、森岡(7.5)が2位、3位に続いた。 長橋、宮田に続いて山形が6.8点で16位にランクした事も嬉しいではないか。 2ndステージ優勝に際して電力会社から1億のボーナスが支払われた。 ありがたい。サポーターも9万人を突破し国内有数のチームに育ったと言えよう。

シュトルツの栄冠に喜んでばかりもいられない。 11月はU22代表監督として<U22 スーパーユースカップ>に挑まなければならない。 上旬は相変わらず強豪国との親善試合を組んでもらった。 相変わらず海外とのレベル差は如何ともし難く、全員守備でも守れず、全員攻撃でも点が取れず まったく試合にはならなかった。 vsブラジル(0−6)、vsアルゼンチン(0−6)、vsオランダ(0−3)、vsスペイン(0−3)と 散々だったが、FWに水城を連れていく決心がついた。水原に代えてユースカップに連れて行こう。

意気込んで迎えた緒戦はイングランド代表。 守りを固めてカウンターを狙ったものの、ホール、エドガー、ニコルズにゴールを割られ、 こちらはシュートが枠に飛ばず0−3での敗退となった。 優勝はイタリアU22代表だった。

帰国後はすぐにシュトルツのオーナーとしての職務が待っていた。 待望のアシモビッチのチーム帯同。 山形のケガからの復帰。 中盤の激しいレギュラー争いが再会だ。

アシモビッチの来日で割を食ったのはGKの佐藤。 15人枠の問題でサテライト行きを宣告されたのだ。 若い佐藤は口にこそ不平は漏らさなかったが、内心はいかばかりだろう。

12月に入るとJリーグ頂上をかけてガンバ大阪と最後の戦い。 先ずは大阪に乗り込んでアウェーの1戦目。 竹村が2ゴールを挙げ余裕の先勝。3−1でガンバ大阪サポーターをガッカリさせた。 ホームでの2試合目を前に、FW原のロッテルダムに半年留学が決まった。 佐藤をサテライトで燻らせているよりは、原を留学させる事で15人枠を空けようと メニリティ監督と話し合ったのだ。 こんな事なら10月の優勝後に旅立たせても良かった。逡巡が選手たちに迷惑をかけてしまった。 反省しなくては。11月の代表戦に気を取られすぎたか。

さて、ホームでチャンピオンシップ2試合目。 早速サテライトから昇格した佐藤がゴールマウスを守る。 しかし、その佐藤が吉原にゴールを許し試合は0−1と負けてしまった。 トータル3−2で辛くも総合優勝を決めた。 今度ばかりは山形も歓喜の輪の中に加わり、辛い事もあったシーズンを笑顔で締めくくった様だ。 関東ガスの副社長から、健闘に報いるべく1.5億のボーナスが支払われるとの朗報ももたらされた。 この賞金でクラブハウスに医務室を設置する事にした。少しでも選手の怪我防止に繋がれば良いのだが。

2ndステージからの緊張の糸が緩んだのか、 ニューイヤーカップはシード後の2回戦で大阪エステーラとPK戦にもつれ、 森岡、水城、千代反田の3人が止められ万事休す。 結局はガンバ大阪が優勝を決め、今年は国内タイトルを分け合う形となった。 Jリーグの通算勝ち点は77点とガンバ大阪の強さは圧巻であった。

ニューイヤーカップの優勝チームが決まった翌日、オフィスに一人の選手を迎える事になった。 「会長、今までお世話になりました。私は今年でユニフォームを脱ごうと思います」 喜沢からの引退の申し入れである。 29歳は選手生命としては短い方であろうが、本人はコーチとしての勉強を始めるために 3度目の優勝を味わった今年を区切りにしたいと言う。 右SDFとしてJ1昇格当時のディフェンスラインを支えてくれた事が昨日の様だ。 私は喜沢に深く頭を下げ、今までの労に感謝した。

高嶋クンと書類整理をしながら今年も仕事納めの日を迎えた。 今年も50万人以上の観客に来場頂き、優勝の後押しを頂いた。 サポータークラブは2万人以上も新規加入者を加え、9万人余の組織になった。 スタジアム増築にも関わらず、大会の優勝賞金もあり年間収支は7億と大黒字だ。 地元への融資の甲斐あり、品川の住民も57万人にまで増えていると言う。 シュトルツの成長ぶりは、オーナーとして何の心配も無い。 来年はいよいよ世界スポーツ大会本戦だ。 U23監督として、最善を尽くさなくてはなるまい。 国中の期待をこの双肩に担って。


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