F2 Chris & Daisuke around the world

<SouthAmerica TOP>
Trans Andes2, San Pedro de Atacama/アンデス越え2、サンペドロ・デ・アタカマ

(2004.03.11-2004.03.21)

 ボリビアの高山が遠くに見える

サルタを出発した日は気持ちのいい晴天で、アルゼンチン側最後の村サン・アントニオ・ロス・コブレスまでは道も舗装されており快調に進む。この村で一晩を過ごす手もあったが、まだ昼なので思い切ってアンデスを越えてチリのサンペドロ・デ・アタカマまで行くことにした。これが大失敗だった。昼食と給油をして村を出ると、柔らかい深砂とハードなコルゲーションがひどい悪路と変わる。果てしなく広がるアンデスの山々や広大な塩湖といった景観はこの世のものとは思えないほどの絶景だが、あまりにも道が悪くほとんど先に進めない。時速10km程度でへろへろと前に進むが、景色の広がりもあってか、まったく前に進んだ感じがしない。

照りつける太陽が砂地の道に反射して白く光り、よほど注意していないと砂溜まりを見逃してハンドルをとられる。こんな調子では日があるうちにサンペドロ・デ・アタカマに着けるかわからない。悪路と苦闘して、少し平らな地帯に出ると走りやすくなった。路面も砂が溜まっていれば認識できる程度で少しペースをあげた。もちろん、全神経は路面に集中して。ところがどうみても砂溜まりに見えない箇所で、いきなりハンドルをとられて右に左に叩きつけられるように転倒。。

やっちまった。。。車一台通らないアンデスの高原で仰向けになったまま、相当のダメージを覚悟した。

まず自分で立ち上がり、身体のダメージを確認する。少し腰を打ったようだが、無傷だ。バイクを起こして、外傷や動力のダメージを確認する。こちらも無傷だった。激しい転倒に感じたが、下が柔らかい砂地だったのとハンドルをとられると同時にスピードが完全に殺されていたようだ。この幸運に涙が出るほど感謝した。よろよろと先に進む道を行くと、しばらくしてアルゼンチン側の国境管理事務所が見えてくる。走行に全神経を集中させていて気づかなかったが、どうもまた高山病で頭痛が始まっている。手続きを済ませてさらに先に進む。道の悪さにやる気がそがれる。

標高4,000mの長い長い峠の直線道路を進むが、やはり思ったとおり日が暮れてきた。完全に日が沈んであたりが暗くなり始めたころは、すでに山道になっている。こんな高所で斜面しかないところは隠れるところもなく、野宿をするには不適切だった。それでも暗闇を進むのはもっと危険なので、道路から外れて少しでも平らな場所へ移動する。道路からその場所へは急な斜面を下る必要があり、また石がごろごろとして地面も割れている。だいぶ気まずいが、選択肢は他にない。頭痛で意識が遠のく中、なんとかテントを張るが夜になって山中は暴風となり厳しい。きしむテントの中、何かしら食べるものを作ろうとするが風でストーブに火が点かない。火を使わずに済む食料は持っていなかった。食はあきらめ、眠ろうとするが高山病で目が冴えて眠れない。頭痛と吐き気と寒さと空腹に耐えつつ、ただただ夜が明けるのを待った。なんと時が過ぎるのが遅いことか。

風が静まり、辺りが明るくなってきた。やっと動き出せる。鍋についだ水が凍っている。氷点下まで下がったらしい。風が止んでいるので撤収は楽だった。注意深く元の道路へと戻る。地獄のような闇夜から一転して果てしなく美しい風景が続くが、村まで一心に山を下っていったので景色がいいとか悪いとかはもうどうでも良かった。サンペドロ・デ・アタカマに到着し、宿をとるとまず食事に行った。宿の近くのパスタ屋に入るが、ごく普通のカルボナーラが激烈にまずい。24時間水以外何も口にしていない状態でありつけた食事がまずい。こんなことがあるだろうか。残念ながらアルゼンチン・チリでパスタ料理は食ってはならない。正直なところ料理なのか生ごみなのか、分からないレベルである。そのくらいまずい。その日の午後は宿でむさぼるように眠った。。

サンペドロ・デ・アタカマ−周囲にはフラミンゴのコロニーのあるアタカマ塩湖、タティオ間欠泉、月の谷と名だたる観光地が点在している。小さな村だが、これらを訪れる完全なツーリスト向けの村だ。休養も兼ねて、こうした観光ポイントをいくつか周ってみた。炎天下のアタカマ塩湖では20数羽のフラミンゴがのどかに餌をついばんでいた。季節外れなのか思ったほど群れてはいない。タティオ間欠泉では大地から吹き上げる源泉が地球の息吹を感じさせてくれて悪くない。入浴用の露天があるのだが、中途半端な管理で熱いか冷たいかのどちらかで気持ちよく湯浴みとはいかない。露天風呂としての環境は抜群なのだが、もったいない。月の谷は岩塩の混じるユニークな景観で、そこそこ面白い。

 アンデス越え この世とは思えない神秘的な風景が続く アタカマ塩湖のフラミンゴ達 双眼鏡を通してむりやり撮影 タティオ間欠泉 大地のエネルギーを感じる

サンペドロ・デ・アタカマはチリ有数の観光地であると同時に、ボリビアのウユニ塩湖へ続く「宝石の道」の始点でもある。横江にとっては南米最大のハイライトであるが、一歩踏みとどまって先にチリ北部の温泉をいくつか回ることにした。ボリビアへ入ってしまうと、また戻ってくるのが面倒だからだ。サンペドロ・デ・アタカマから西へカラマを経て、パンアメリカンハイウェイへと進んだ。首都サンティアゴ周辺のパンアメリカンとはうって変わって、砂漠の中の一本道だ。標高2,600mの涼しいサンペドロ・デ・アタカマから下りてくると、炎天下の砂漠はとても暑い。景色も数百キロ変わらず退屈だが、時折小さな竜巻が砂の大地を走っているのが見えて面白い。一度だけ道路を横切るように走っていた竜巻に巻き込まれたが、うおっと思ったものの小さいので大したことはない。

イキケ近郊のピカ温泉に寄ってみる。水温の低い、半分天然半分プールの温泉だ。いまいちな感じ。ピカ温泉の近くのキャンプ場で停泊するが、そこに向かう道の途中でバイクが砂に沈んでしまう。近くの子供たちがわーっと集まってきてくれて、みんなでバイクを砂から引きずり出して脱出。この子供たちも東洋人が相当珍しかったようで、その日は子供たちと食事をして球遊びをして過ごした。ピカ温泉をあとにして、チリ最北端の町アリカへと向かう。パンアメリカンは砂漠の大渓谷を走り、渓谷のわずかな緑地に村が点在する。観光地を巡るよりも、こういったありのままの風景、それも小さな島国育ちの日本人からすれば豪快すぎるほどの大自然の道を走るほうがよほど楽しいものだ。

海岸に面したアリカ要塞を見上げるように、アリカの町並みは広がり、国境の町らしく活気がある。数十キロも北へ行けばペルー国境だ。アリカからは日帰りでボリビア国境付近のラウカ国立公園に行ってみた。途中にあるプトゥレの村近くに、フアリ温泉という露天風呂がある。鄙びた湯治場の色合いを濃く残すフアリ温泉は、湧出する源泉をそのままに露天、内湯、プールという利用形態で悪くない。湯温も適切で快適だ。いい気分で露天に入っていると、施設のおやじが泥を塗れという。肌荒れがひどかったので、泥パックも悪くないかと思い薦めに応じると、おやじはその辺の土をシャベルですくって差し出す。この土が水分を含むとさらっとした手触りで、いかにも肌に良さそうだ。しかし肌への密着度が高く、あとで洗い流すのが大変だった。その時着用していた水着には、いまだにその泥の色が残っている。

ラウカ国立公園に入ると、ビクーニャやリャマなどの野生動物が高原で群れている。標高3,000mを越える高所だが、さすがに2回のアンデス越えで体が慣れたのか、もう高山病の気配はなかった。行きに寄った食堂で、コカの葉で淹れた茶を飲んだのも良かったのかも知れない。コカの葉は高山病に効くらしい。公園内はため息が出るほど美しい景観だったが、どうも天気が崩れてきて今一歩だった。運が悪いと思いつつ、アリカへと引き返した。

アリカからは来た道を戻り、マミーニャ温泉、イキケを経由して太平洋沿いを南下する。マミーニャ温泉は山あいの小さな村だが、共同浴場がありなかなか良かった。イキケにはソフリという免税地区があるので、国境で失くしたツールを買い直した。朝一番で行ってみたが、開場も開店もやたら遅く閉口する。チリの人は時間にルーズではないと聞いていたが、ひどいものだ。海岸線の道は太平洋からの冷たい風で涼しく気持ちがいい。鄙びた漁村らしきものをたまに見かけるくらいで、実に何もない。その日の夕刻、サンペドロ・デ・アタカマまで戻った。

 ピカ温泉近くの村道で砂中に沈む・・・ チリ最北端の町アリカ アリカ要塞 マミーニャ温泉 施設はしょぼいが泉質はいい フアリ温泉 最高の野天風呂!

 チリの温泉の道路標識はこんな感じ ラウカ国立公園内のビクーニャたち 太平洋沿いを南下 ほんとに何もない・・・ サンペドロ・デ・アタカマ リンカンカブール山夕景
 
<SouthAmerica TOP> <Previous> <Next>
<Previous>
<Next>