ボウ フリルベース (1760-65年頃)
Bow Frill Vase Ca.1760-65
左右の側面部に女性の顔が、また全体に花と葉が取り付けられた壷である。蓋の上には鳥が配されている。「フリル・ベース」という名称の由来は、壷の下部に貝殻の形のフリル(本品では青、黄、紫で交互に彩色されている)がスカートように付けられていることである。さらに、蝶(蛾?)や毛虫などが描きこまれており、かなり装飾性の強い作品である。壷の肩の部分と蓋に穴が開けられており、用途はポプリ入れだったと考えられている。なお、壷本体の口縁は茶のエナメルで縁取られているが、蓋の縁には金彩がひかれている。この金彩は後世の修復の際に加えられたもので、オリジナルではないと思われる。
このようなフリル・ベースは、ボウ窯では1760年代の前半に多く作られたとされている。John Toulouseという"repairer"(成型された複数のパーツを組み合わせて作品に仕上げる役割を担う職人)がこの時期にボウにおり、彼との関連で語られることも多い。(なお、このJohn Toulouseという人物は、ボウからウースター、ブリストル、カーフレイ、チェンバレン・ウースターと渡り歩き、刻印の"T"マーク(あるいは"To"、"IT"マーク)を残したことで知られている。このマークは、かつてはTebo(Thibaud)という職人のマークだと考えられていたが、現在では、John Toulouse説が有力となっている。)
本品の裏面マークは、赤エナメルで錨と剣を描いたもので、1760-74年頃のボウ作品の一部に見られるものである。このマークについては不明な点が多いものの、絵付けが(ジェームズ・ジャイルズ工房などに)外部委託された作品に付けられたマークだと考えられている。(ボウ「B10」を参照。)
高さ:約28.5cm
Height:about 28.5cm(11 1/4 in)
マーク:壷の裏底に赤で「錨と剣」
Mark: <Anchor and Dagger> painted in red at the bottom of the vase
文献/Literature:
-Adams & Redstone "Bow Porcelain (rev.)" Color Plate L and Appendix X No.17
-Gabszewicz & Freeman "Bow Porcelain The Collection formed by Geoffrey Freeman" No.162
-Godden "British Porcelain An Illustlated Guide" Plate55
John Toulouseに関する文献
-Godden "Chamberlain-Worcester Porcelain 1788-1852" pp208-209
-Sandon "The Dictionary of Worcester Porcelain Volume I 1751-1851" p340
-Adams & Redstone "Bow Porcelain (rev.)" pp131-138
(2006年5月掲載)