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チェルシー又はダービー 壺(1760年代後半-70年代前半頃)
A Chelsea or Derby Vase C. later 1760s - earlier 1770s



 

 

 チェルシー(ゴールド・アンカー期)、あるいは、ダービー(チェルシー・ダービー期)の壺。

 丸い胴体に細い首と脚がつき、両肩に配された人間の顔の上から口縁までロココ調の取っ手が伸びている。本来は蓋があったはずであるが(ドーム型で穴が開き、輪の形をしたつまみがついたもの。下記Mackennaの文献に、蓋つきの作例が掲載されている。)、逸失している。

 胴体の地色は赤紫(クラレット)で、顔や取っ手などは白地のままとなっている。他の類似作品では金彩が施されているのだが、本品にはない(剥落したのか?)。胴体表裏の窓枠内には、人物と田園風景が多色彩で描かれている。

 本品の製造窯の判断には迷うところがある。全体の形状はロココ調(取っ手や肩などの装飾)と古典調(両肩の人物の顔や脚部など)が融合したもので、ロココ調を得意としたチェルシー作品のようにも見えるが、古典調への変遷を図りつつあったダービー作品かもしれない。地色のクラレットは、やはりチェルシーが得意としたものであるが、本品の地にはむらがあり、あまり上出来ではない。

 窓枠内の絵付けについては、このような人物画は、1772年頃にチェルシーからダービーに移った絵付師リチャード・アスキュー(Richard Askew)によるものとされることが多かったが、現在は(アスキューがその時期にダービーに移ったということ自体を含めて)疑問視されている。

 マークに関しては、錨のマークも含めて一切なく、ダービー作品特有のパッチマークも(少なくとも明瞭なものは)ない。

 本品は、壺3点セットの中央の壺として製造されたようで、その3点が揃ったものが、下記Mackennaの著書に掲載されている。両サイドの壺に関しては、それと同型のものがV&A美術館に収蔵されており、下記V&Aウェブサイトのリンクから見ることができるとともに、Rackham及びHoneyの著書においても解説されている(いずれでも、この壺はチェルシー・ダービー期の作品だとされている)。


高さ/Height: 33cm
マーク:なし
Marks:None
参照文献/References:
-F. Severne Mackenna "Chelsea Porcelain The Gold Anchor Wares" fig.68 (a vase with cover) and fig.71(a garniture of three vases)
-V&A Museum Website (a side vase):
 http://collections.vam.ac.uk/item/O165544/vase-derby-porcelain-factory/
-Bernard Rackham "Catalogue of the Herbert Allen Collection of English Porcelain (2nd Ed.)" Figure49 (p.29 & Plate13) - Illustration and description of the V&A vase above
-W. B. Honey "Old English Porcelain (2nd edition)" p.118 - Description of the V&A vase above



(2019年1月掲載)