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ダービー 395番図柄の二つのコーヒーカップ(1795−1805年頃)
Two Derby Coffee Cups with Pattern #395 Ca.1795-1805

 

 
                                                   Pattern 395 from the Derby Tea Pattern Book
 

 細いひねり縞(ダービーでは"Small Waved Flute"と呼ばれていた。)が全面に入ったコーヒーカップが2つ。シンプルなループハンドルとともに、典型的な18世紀ダービーのシェイプの一つである。描かれている図柄は、カップ用図柄の395番である。パターンブックの当該図柄には説明書きがあり、"Dresden Yellow Green /Cut up with Black / Done upon 2d, Ware"とある。前段は使用する色の指示であるが、面白いのは最後の"Done upon 2d, Ware"の部分である。「二級品に描かれる」ということだが、二級品用に特化した図柄というのは珍しい。さらに面白いのは、本作品の裏面マーク及びパターンナンバーの下にも(両方のカップとも)、きちんと"2d"と書かれている点である。

 本作品が二級品とされた原因がどこにあるのか見てみると、まず片方のカップの口縁に欠けがある(最後から2番目の写真)。欠けた上から金彩が引かれているので、製造時の瑕疵だと思われる。それから、同じカップの胴体に、ひねり縞がきちんと型押しされていない部分がある(最後の写真)。こうした点が考慮されたのだと思われる。ただし、もう一方のカップには、このような目立った瑕疵はなく、判然としない点はある。

 なお、この395番図柄が導入されたのは1795年頃だと考えられる。パターンブックにおいて、この周辺の番号では、393番がJohn Brewer(ダービーに来たのが1795年)に割り当てられ、また387番はJames Banford(ダービーを去ったのが1795年)に、413番の次の図柄(番号なし)がThomas Hill(ダービーに来たのが1795年)に、それぞれ割り当てられている。本作品の裏面には、金彩師番号が記載されていない。これはMichael Keanがダービーの経営に加わった1795年以降の特徴とされている。Keanは、経済面でのダービー窯の立て直しに力を入れたとされており、製造上の瑕疵があって不良ストックとなっていた二級品の売りさばきにも力を入れたのかもしれない。

 したがって、本作品の製造年代については、図柄が描かれたのは1795年以降(かつ暗褐色がマークに用いられた1805年頃までの間)であろうが、焼成されたのはそれよりかなり前だった可能性もある(ただし、裏面にアルファベットの陰刻があるので、この陰刻マークが導入された1787/88年頃以降の焼成ということになる)。

高さ(H):6.6cm

マーク:暗褐色で「交差バトンマーク」、その下に図柄番号「395」及びその下に「2d」。片方のカップ裏面に陰刻でアルファベットの「C」、もう一方には「F」。
Mark: Each cup is painted inside the foot rim, with a <Crown, CrossedBatons&Dots and D>, pattern number "395", and "2d", all in puce. An impressed "C" on one cup and an "F" on the other..



(2016年12月掲載)