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ダービー パレス追悼サービスの皿(1812年頃)
A Derby Plate from the Pares Mourning Service C.1812

 ダービーの丸皿。中央部分には黒地に金彩で鳥が、その周囲の白磁部分には金彩で植物文様が描かれている。縁部分には黒地の上に金彩で連続する葉と小さな点を打った波目とが交差する文様が描かれている。この皿は、1812年に英国中部の都市レスター(Leicester)の裕福なビジネスマンであったジョン・パレス(John Pares)が注文したサービスのうちの一点である。黒と金という特異な色彩の組み合わせは、このサービスが、同年に亡くなった妻アグネスを悼むためのモーニング・サービス(mourning service)であることをよく示している。

 このサービス(同図柄でデザートサービスとティーサービスとがある)については、製造当時の記録が残っているわけではないが、パレス家の子孫が1893年にオークションで売却して以降、その存在が知られるようになった。そのときに売却されたのは、デザート・サービスが計45点、ティー・サービスが計22点であり、本品はデザート・サービスのうちの26枚の平皿の1枚だと思われる。金彩で描かれた鳥絵は作品ごとに異なるもので、飛んでいたり、木にとまっていたり、あるいは地面に立っていたりする。本作品の鳥は羽を半開きにして枝にとまった姿である。

 裏面には、ダービーで長く用いられた「交差バトンマーク」及び図柄番号397が赤色で記されている。デザート図柄は全部で408番まで記録されており、この397は最終盤の番号である。図柄番号が使用されたのはブルア期(1811〜48年)の最初の頃までと考えられており、397番図柄が1812年に注文されたサービスのために導入されたというのは、時期的にも齟齬はない。なお、図柄番号は、同じ図柄を継続して描くために導入するものなので、本サービスのような特殊な注文品の図柄に番号を付すのは若干不思議な気もする。ちなみに、このサービスの金彩は、当時金彩師番号の1と2を使用していたSamuel KeysとJames Clark(e)が担当したとされているが、本作品には金彩師番号が記されていない。また、中央の鳥絵についても、この二人の金彩師によって描かれた可能性があると思われる。

 ところで、かつて本サービスは「パレス家の娘・エリザベスの死を悼んで1812年に作られ」、「鳥絵はThomas Bewickの版画による」とされていた経緯がある。しかし、Gerald Pendredの調査(下記文献を参照)により、娘ではなく妻の死を悼んで注文されたこと、また鳥絵もBewickの版画によるものでないではない(元絵は不明)ことが明らかになった。

 以下は私的な余談であるが、この調査論文を発表したGerald Pendredは、私が2000年代初頭にダービー磁器国際学会(DPIS)に加入した当時、最初に親しくなった同学会メンバーだった。彼は退役軍人で日本駐在の経験もあったため、新規加入の日本人に親しみを感じてくれたようで、私に日本語で手紙を送ってきてくれた。それをきっかけに何度かやり取りをしたのだが、私は彼のパレス追悼サービスについての論文のことがとても気に入っていると書き送り、彼はそれを喜んでくれた。ダービー磁器を真剣に勉強し始めた頃の懐かしい思い出である。


直径(D):21.5cm

マーク:裏面に赤色で「王冠、交差するバトンと点及びD」と「397」
Marks:'Crown, Crossed-batons & dots and D' and '397' painted in red at the bottom.


参照文献 (References):
-Gerald Pendred "The Histry and Legend of the Pares Mourning Service" Derby Porcelain International Society Journal 4 (2000)
-John Twitchett "Derby Porcelain 1748-1848 An Illustrated Guide" (2002) p.218 and Colour Plate 205
-Franklin A. Barrett & Arthur L. Thorpe "Derby Porcelain" (1971) p.67 and Plate 165
-F. Brayshaw Gilhespy "Crown Derby Porcelain" (1951) p.93 and Fig.111
-Bamfords auction site (2 July, 2014; Lot 467)


(2026年1月掲載)