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ダービー 甘味皿を持つ女性像 (1756-57年頃)
Derby Lady Sweetmeat Figure Ca.1756-57
腰掛けた女性が貝の形をしたトレイを持つ人形である。トレイはキャンディーなどを入れるためのものと考えられている。全体に淡い色合いで彩色されている(両腕の袖から下とトレイは若干濃く彩色されているが、これは後世の修復によるものと思われる)。また、スカートのバラ図は、"Cotton-Stem Painter"の描き方とは異なる。台座は丸型に高く盛り上がった形をしており、裏面は中央部が若干へこんでおり、安定のために円周部分が削られている。中央の穴はやや大きい。
この作品の年代判定はなかなか悩ましい。アンドリュー・プランシェ期(1748?-55年)の「ドライ・エッジ(Dry Edge)」作品である可能性も捨てきれない。「ドライ・エッジ」(乾いた端)とは、釉薬が台座上部までしか掛けられず(台座裏面は無釉)、焼成後に台座の端の一部が無釉のビスケット状態になることを指し、プランシェ期の作品の大きな特徴となっている。
本品の台座にも、一部「ドライ・エッジ」が見られる(写真参照)。John Twitchett著"Derby Porcelain"には、本品と同じ型の作品(衣装などの絵付けは若干異なるものの、全体として極めてよく似た作品)が掲載されており、プランシェ期の1753-55年頃の作品とされている。一方、Dennis G. Rice著"Derby Porcelain The Golden Years 1750-1770"にも本品と同じ型と思われる作品(貝のトレイを持つ男性像とのペア)が掲載されているが、こちらはデュズベリー期に入ってからの"Pale Colour Family"の作品で製造年代は1756-57年頃とされている。
なお、プランシェ期の「五感(Five Senses)」と題される五体セットの人形(感覚(Feeling), 聴覚(Hearing), 味覚(Taste), 嗅覚(Smell), 視覚(Sight)と題される五体)のうち、作例が確認されていない「聴覚」について、候補の一つとして挙げられている「楽譜を持った女性像」が本品に非常に似ている(特に顔と上半身は同型ではないかと見られる)。上記Twitchettの著書では、この「楽譜を持った女性像」は明らかにプランシェ期の作品であるとされているが、Bradshaw著"Derby Porcelain Figures 1750-1848"では、この作品には「ドライ・エッジ」はあるものの、顔の造りが単純であることや薄い色合いなどから、デュズベリー期に入ってからの"Pale Colour Family"の作品ではないかと分析されている。
本品は、スカートのひだ部分の薄い黄色や緑色が"Pale Colour Family"としての特徴を強く表していることや、顔のやや平板な造りや全体の姿勢などが、活き活きとしたプランシェ期の造形とはやや異質に感じられることから、ここでは"Pale Colour Family"の作品とした。(ダービー「D1-11」を参照。)
高さ:約17cm
Height:17cm (6 5/8in)
マーク:なし
Mark:None
参照文献/References
-John Twitchett "Derby Porcelain" Plate 7 (p27)
-Dennis G. Rice "Derby Porcelain The Golden Years 1750-1770" Plate 47, pp40-45, p184
(2008年2月掲載)